(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136501
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】電極群、蓄電池、組電池及び電動車
(51)【国際特許分類】
H01M 10/06 20060101AFI20220913BHJP
H01M 50/463 20210101ALI20220913BHJP
H01M 4/14 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
H01M10/06 Z
H01M2/18 R
H01M4/14 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036140
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】武部 智紀
(72)【発明者】
【氏名】村松 将典
【テーマコード(参考)】
5H021
5H028
5H050
【Fターム(参考)】
5H021AA06
5H021AA07
5H021CC09
5H021CC20
5H021HH10
5H028AA05
5H028CC07
5H028CC08
5H028CC11
5H028CC26
5H050AA02
5H050AA19
5H050BA09
5H050CA06
5H050CB15
5H050DA02
5H050DA19
5H050FA07
5H050FA15
5H050GA25
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】正極のずれを抑制できる電極群、蓄電池、組電池及び電動車を提供する。
【解決手段】電極群3は、正極10、セパレータ13及び負極12を備える。正極10は、集電体14及び正極材16を収容する筒状体15を有する。セパレータ13は、ベース部31と、ベース部31に設けられ、セパレータ13の厚さ方向において第1主面31aから突出する突出部32と、を有する。突出部32は、第3方向Zにおいて所定の間隔をあけて配置される。突出部32は、複数のリブ33を含む。複数のリブ33は、第2方向Yにおいて所定の間隔をあけて配置される。正極10の筒状体15と複数のリブ33のうちの少なくとも一部とが接触する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に順に重なる正極、セパレータ及び負極を備え、
前記正極は、前記第1方向に直交する第2方向に延在し、集電体及び正極活物質を収容する筒状体を有し、
前記セパレータは、前記第1方向において前記正極に対向する表面と前記第1方向において前記負極に対向する裏面とを含むベース部と、前記ベース部に設けられ、前記セパレータの厚さ方向において前記表面から突出する第1突出部と、を有し、
前記第1突出部は、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向において所定の間隔をあけて配置され、
前記第1突出部は、複数の第1リブを含み、
複数の前記第1リブは、前記第2方向において所定の間隔をあけて配置され、
前記正極の前記筒状体と複数の前記リブのうちの少なくとも一部とが接触する、電極群。
【請求項2】
複数の前記第1リブのそれぞれは、先細りの形状を呈している、請求項1に記載の電極群。
【請求項3】
複数の前記第1突出部が前記第3方向において配置されている数は、複数の前記筒状体の本数よりも多い、請求項1又は2に記載の電極群。
【請求項4】
複数の前記第1リブは、前記第1方向から見て、千鳥状に配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載の電極群。
【請求項5】
前記筒状体の外表面に窪みが設けられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の電極群。
【請求項6】
前記筒状体の外表面に凹凸が設けられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の電極群。
【請求項7】
前記筒状体は、筒状本体部と、前記筒状本体部よりも厚い肉厚部とを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の電極群。
【請求項8】
前記セパレータは、前記ベース部に設けられ、前記セパレータの厚さ方向において前記裏面から突出する第2突出部を有し、
前記第2突出部は、前記第3方向において所定の間隔をあけて配置され、
前記第2突出部は、複数の第2リブを含み、
複数の前記第2リブは、前記第2方向において所定の間隔をあけて配置され、
前記負極には、前記セパレータと対向する表面に凹凸が設けられ、
前記負極の前記表面と前記第2リブの少なくとも一部とが接触する、請求項1~7のいずれか一項に記載の電極群。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の電極群を備える、蓄電池。
【請求項10】
請求項9に記載の蓄電池を複数備える、組電池。
【請求項11】
請求項9に記載の蓄電池を備える、電動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極群、蓄電池、組電池及び電動車に関する。
【背景技術】
【0002】
電極群を含んで構成される蓄電池は、産業用又は民生用の二次電池として広く用いられており、特に、電気車用鉛蓄電池(いわゆるバッテリー)、又は、UPS(Uninterruptible Power Supply)、防災(非常)無線、電話等のバックアップ用鉛蓄電池の需要が多い。
【0003】
鉛蓄電池は、正極、負極及びセパレータを含む電極群と、電極群を収容する電槽と、を具備する。正極は、筒状体と、筒状体に挿入され棒状を呈する芯金と、筒状体の内部に充填され活物質を含む電極材と、を備える(例えば、特許文献1参照)。セパレータは、正極と負極との短絡を防止するために、正極と負極との間に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の電極群では、セパレータと正極の筒状体とが接触する。筒状体は、正極が平板状の構造(格子体に電極材が保持されている構造)に比べて、セパレータとの接触面積が小さい。そのため、正極が筒状体を備える構成での電極群では、蓄電池の高さ方向において、正極の位置のずれが発生するおそれがある。
【0006】
本発明の一側面は、正極の位置ずれを抑制できる電極群、蓄電池、組電池及び電動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る電極群は、第1方向に順に重なる正極、セパレータ及び負極を備え、正極は、第1方向に直交する第2方向に延在し、集電体及び正極活物質を収容する筒状体を有し、セパレータは、第1方向において正極に対向する表面と第1方向において負極に対向する裏面とを含むベース部と、ベース部に設けられ、セパレータの厚さ方向において表面から突出する第1突出部と、を有し、第1突出部は、第1方向及び第2方向に直交する第3方向において所定の間隔をあけて配置され、第1突出部は、複数の第1リブを含み、複数の第1リブは、第2方向において所定の間隔をあけて配置され、正極の筒状体と複数のリブのうちの少なくとも一部とが接触する。
【0008】
本発明の一側面に係る電極群では、セパレータが第1突出部を有する。第1突出部が第2方向において所定の間隔をあけて配置された複数の第1リブを含み、正極の筒状体と複数のリブのうちの少なくとも一部とが接触する。これにより、電極群では、筒状体に対して第1リブが引っ掛かる(筒状体が第1リブによって係止される)ため、セパレータによって、第2方向への筒状体の移動が規制される。したがって、電極群では、正極の位置ずれを抑制できる。
【0009】
一実施形態においては、複数の第1リブのそれぞれは、先細りの形状を呈していてもよい。この構成では、正極の筒状体に対して第1リブが引っ掛かりやすくなる。したがって、正極の位置ずれをより一層抑制できる。
【0010】
一実施形態においては、複数の第1突出部が第3方向において配置されている数は、複数の筒状体の本数よりも多くてもよい。この構成では、正極の筒状体とリブとをより確実に接触させることができる。
【0011】
一実施形態においては、複数の第1リブは、第1方向から見て、千鳥状に配置されていてもよい。この構成では、正極の筒状体に対して第1リブが引っ掛かりやすくなる。したがって、正極の位置ずれをより一層抑制できる。
【0012】
一実施形態においては、筒状体の外表面に窪みが設けられていてもよい。この構成では、正極の筒状体に対して第1リブが引っ掛かりやすくなる。したがって、正極の位置ずれをより一層抑制できる。
【0013】
一実施形態においては、筒状体の外表面に凹凸が設けられていてもよい。この構成では、正極の筒状体に対して第1リブが引っ掛かりやすくなる。したがって、正極の位置ずれをより一層抑制できる。
【0014】
一実施形態においては、筒状体は、筒状本体部と、筒状本体部よりも厚い肉厚部とを有していてもよい。この構成では、正極の筒状体に対して第1リブが引っ掛かりやすくなる。したがって、正極の位置ずれをより一層抑制できる。
【0015】
一実施形態においては、セパレータは、ベース部に設けられ、セパレータの厚さ方向において裏面から突出する第2突出部を有し、第2突出部は、第3方向において所定の間隔をあけて配置され、第2突出部は、複数の第2リブを含み、複数の第2リブは、第2方向において所定の間隔をあけて配置され、負極には、セパレータと対向する表面に凹凸が設けられ、負極の表面と第2リブの少なくとも一部とが接触してもよい。この構成では、負極に対して第2リブが引っ掛かる(負極が第2リブによって係止される)ため、セパレータによって、第2方向への負極の移動が規制される。したがって、負極の位置ずれを抑制できる。
【0016】
本発明の一側面に係る組電池は、上記の蓄電池を複数備える。
【0017】
本発明の一側面に係る電動車は、上記の蓄電池を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一側面によれば、正極の位置ずれを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る組電池を搭載したフォークリフトを示す図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る蓄電池の一部を破断して示す斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、第1方向から見た正極を示す図であり、
図3(b)は、
図3(a)のIIIb-IIIb線に沿った拡大断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る負極を示す平面図である。
【
図5】
図5(a)は、セパレータシートを示す平面図であり、
図5(b)は、
図5(a)のVb-Vb線に沿った概略断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る負極を示す平面図である。
【
図7】
図7は、電極群の一部を示す拡大平面図である。
【
図8】
図8は、第1変形例に係る筒状体を示す概略図である。
【
図9】
図9は、第1変形例に係る電極群の一部の拡大概略断面図である。
【
図10】
図10は、第2変形例に係る電極群の一部の拡大概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
図1は、組電池を搭載したフォークリフトを示す図である。
図1に示されるように、フォークリフト(電動車)100は、組電池200を搭載している。フォークリフト100は、組電池200から供給される電力によって駆動される。組電池200は、複数の蓄電池1を備えて構成される。
【0022】
図2は、本実施形態に係る蓄電池の一部を破断して示す斜視図である。
図2に示されるように、蓄電池1は、例えば、鉛蓄電池である。蓄電池1は、フォークリフト100に限らず、例えば自動車のバッテリー、停電時等に利用されるバックアップ用電源に用いられ得る。本実施形態では、蓄電池1は、例えば、クラッド式電極を備えるクラッド式蓄電池である。
【0023】
蓄電池1は、電極群3と、正極端子5Aと、負極端子5Bと、補水栓6と、ケース7とを備える。ケース7は、本体8と、蓋9とを有する。本体8は、箱状を呈している電槽である。本体8は、例えばポリプロピレン等の材料で形成されている。本体8は、電極群3及び電解液を収容する。本体8は、4つの側面部と、底部(詳細は後述)とにより構成されている。蓋9は、本体8の開口部を覆う。蓋9には、正極端子5Aと、負極端子5Bと、電解液(液体)を補液可能である補水栓6とが設けられる。正極端子5Aと負極端子5Bとの間には、補水栓6が設けられる。
【0024】
電極群3は、複数の正極10と、複数の負極12と、複数のセパレータ13とを有する。電極群3では、正極10と負極12とが交互に配置されている。隣り合う正極10と負極12との間には、セパレータ13が位置する。このため、正極10、セパレータ13及び負極12は、所定方向において順に重なる。本実施形態では、電極群3において、正極10、負極12及びセパレータ13の配列方向(以下、単に「配列方向」もしくは「積層方向」と称することもある)の端部には、負極12が配置されている。加えて、正極10と、負極12と、セパレータ13との集合体は、電池用電極群(極板群)とも呼称される。電極群3及び電解液が本体8に収容されるとき、電解液は、正極10とセパレータ13との隙間、セパレータ13内等に存在する。
【0025】
以下では、複数の正極10と、複数の負極12と、複数のセパレータ13とが互いに重なる方向(積層方向)を第1方向Xとする。また、第1方向Xに直交する方向を第2方向Yとし、第1方向X及び第2方向Yに直交する方向を第3方向Zとする。本実施形態では、第3方向Zは、電極群3がケース7に収容される方向に相当する。第2方向Yと第3方向Zとは互いに直交しているが、これに限られない。第2方向Yと第3方向Zとは、互いに交差していればよい。
【0026】
図3(a)は、第1方向から見た正極を示す図であり、
図3(b)は、
図3(a)のIIIb-IIIb線に沿った拡大断面図である。
図2及び
図3(a),(b)に示されるように、正極10は、例えば、クラッド式正極板(第2極板)である。蓄電池1においては、各正極10は、正極端子5Aと電気的に接続されている。各正極10と正極端子5Aとは、正極ストラップ(正極連結部材)17によって電気的に接続されている。正極10は、集電体14と、集電体14の一部を収容する複数の筒状体15(チューブ)と、筒状体15に収容される正極材16と、集電体14に装着される上部連座21及び下部連座22と、を有する。
【0027】
集電体14は、複数の芯金14aと、複数の芯金14aを連結する連結部(不図示)と、連結部から突出する正極耳部14cとを有する。集電体14は、例えば鋳造によって形成される。集電体14の構成材料は、導電性材料であればよく、例えば、鉛-カルシウム-錫系合金、鉛-アンチモン-ヒ素系合金等の鉛合金が挙げられる。鉛合金は、セレン、銀、ビスマス等を含んでもよい。
【0028】
複数の芯金14aは、第3方向Zに沿って延在する棒状部分であって、第2方向Yに沿って一列に配列されている。第3方向Zにおける各芯金14aの一端は、上部連座21に覆われる連結部に接続される。第3方向Zにおける各芯金14aの他端は、下部連座22に固定される。各芯金14aの長さは、例えば170~650mmである。各芯金14aの長さは、600mm以下でもよいし、450mm以下でもよい。連結部は、芯金14a及び正極耳部14cを支持する部分であり、第2方向Yに沿って延在する。正極10がケース7に収容されるとき、連結部は、第3方向Zにおける正極端子5A側に配置される。正極耳部14cは、連結部から第3方向Zに突出する端子部であり、正極ストラップ17に接続されている。第3方向Zにおいて、正極耳部14cの突出方向は、芯金14aの突出方向の反対側である。なお、正極10がケース7に収容されるとき、正極耳部14cは、第3方向Zにおける蓋9側に位置する。
【0029】
複数の筒状体15は、活物質保持用チューブ(クラッドチューブ)群を構成する絶縁部材である。活物質保持用チューブ群は、いわゆる「ガントレット」とも称される筒状の多孔体チューブの集合体である。このため、各筒状体15には、複数の孔が設けられる。本実施形態では、筒状体15の厚さは均一であるが、これに限られない。各筒状体15は、第3方向Zに沿って延在しており、対応する芯金14aを収容する。
【0030】
筒状体15は、円筒状を呈する。なお、筒状体15は、楕円筒状、又は、角筒状(例えば、角丸四角筒状)等を呈していてもよい。筒状体15の内径は、例えば4mm以上であってもよい。筒状体15の内径は、例えば10mm以下であってもよい。筒状体15の直径(外径)は、例えば5mm以上であってもよい。筒状体15の直径は、例えば12mm以下であってもよい。筒状体15の厚さは、例えば100μm以上であってもよい。筒状体15の厚さは、例えば2000μm以下であってもよい。
【0031】
筒状体15は、多孔質体で形成されている。筒状体15は、例えば、織布、不織布等の基材で形成されていてもよい。筒状体の11の外表面には、窪み又は凹部(エンボス加工)が設けられていてもよい。基材の材料としては、耐酸性を有する材料を用いることができる。基材の材料としては、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂、ガラス繊維、炭化ケイ素、アルミナ等の無機材料が挙げられる。筒状体15は、サイクル特性を向上させやすい観点から、熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、ポリエステルを含むことがより好ましい。
【0032】
筒状体15では、基材上に樹脂が保持されていてもよい。樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、スチレン樹脂等が挙げられる。樹脂は、基材の内表面上若しくは外表面上、又は、基材における細孔内の表面上に保持されていてもよく、基材上に付着していてもよい。樹脂は、基材上の一部に保持されていてもよく、基材上の全部に保持されていてもよい。
【0033】
筒状体15は、ガラスチューブであってもよい。ガラスチューブは、筒状(例えば円筒状)の多孔体チューブから構成されている。ガラスチューブは、アルカリガラス(Cガラス)を含んでよい。ガラスチューブは、例えば、ガラス繊維を含んでいてもよい。ガラスチューブは、ガラス繊維束を含んでいてもよい。ガラス繊維束は、集束剤を含有していてもよく、例えば、集束剤を用いてガラス繊維を集束させることにより得ることができる。ガラスチューブは、ガラス繊維束を編組して得られてよい。ガラス繊維束を編組して構成されたガラスチューブの外表面には、凹凸が設けられていてもよい。
【0034】
ガラスチューブは、樹脂成分を含有してよい。樹脂成分としては、フェノール樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。ガラスチューブは、樹脂成分の付着のムラの発生を抑制しやすい観点、及び、優れた放電性能を得やすい観点から、フェノール樹脂を含有することが好ましい。樹脂成分としては、硬化性樹脂を用いてよい。
【0035】
正極材16は、芯金14aと共に、筒状体15の内部に充填されている。このため、芯金14a及び正極材16は、筒状体15に収容される。
図3(b)に示されるように、正極材16は、筒状体15の内部にて芯金14aを囲っている。正極材16は、活物質を含む。活物質には、化成後の活物質及び化成前の活物質の原料の双方が包含される。正極材16は、化成後の活物質を含有している。化成後の正極材16は、例えば、正極活物質の原料を含む。本実施形態では、正極材16は、正極活物質と、添加剤とを含み得る。正極活物質は、例えば、鉛粉、鉛丹等である。添加剤としては、炭素材料、又は、補強用短繊維等が挙げられる。化成後の正極活物質は、例えば二酸化鉛等である。
【0036】
上部連座21は、集電体14の連結部に装着される絶縁構造体であり、第3方向Zから見て連結部を覆う。上部連座21は、第3方向Zにおける各筒状体15の一端を封止する。例えば、上部連座21は各筒状体15に溶着しているが、これに限られない。上部連座21と各筒状体15とは、例えば、接着剤等を介して互いに固定されてもよい。上部連座21は、例えば絶縁性を有する樹脂部材を集電体14に溶着することによって設けられる。下部連座22は、集電体14の複数の芯金14aに装着される絶縁構造体である。下部連座22は、例えば、集電体14の芯金14aを絶縁性を有する樹脂部材に挿入及び嵌合することによって、集電体14に装着される。下部連座22は、第3方向Zにおける各筒状体15の他端を封止する。これにより、正極10における各筒状体15の位置が、上部連座21及び下部連座22によって固定される。例えば、下部連座22は各筒状体15に溶着しているが、これに限られない。下部連座22と各筒状体15とは、例えば、接着剤等によって互いに固定されてもよい。
【0037】
図4は、実施形態に係る負極を示す平面図である。
図4に示されるように、負極12は、蓄電池1における負極板(第1極板)であり、負極端子5Bと電気的に接続されている。各負極12と負極端子5Bとは、負極ストラップ(負極連結部材)18によって電気的に接続されている。負極12は、集電体12aと、負極材12bとを有する。集電体12aは、例えば鋳造によって形成され、負極格子体12cと、負極耳部12dとを有する。負極格子体12cは、負極12における本体部であり、負極材12bを保持する。本実施形態では、負極12において負極材12bが保持される部分の厚さは、負極格子体12cの厚さよりも大きいが、これに限られない。
【0038】
負極材12bは、負極活物質と、添加剤とを含み得る。負極活物質は、例えば、海綿状鉛等である。添加剤としては、硫酸バリウム、炭素材料、リグニン、又は、補強用短繊維等が挙げられる。負極耳部12dは、第3方向Zに沿って負極格子体12cから突出する端子部であり、負極ストラップ18に接続されている。負極耳部12dと負極格子体12cとは、第1方向Xにおいて互いに重なっていない。本実施形態では、負極格子体12cは、セパレータ13によって覆われている。負極格子体12cには、凸部12e,12fが設けられている。凸部12e,12fは、所定の間隔をあけて配置されており、負極格子体12cから外側に向かって突出している足部である。凸部12e,12fは、負極耳部12dの突出方向と反対側の方向に沿って突出している。本実施形態では、負極耳部12dの突出方向と、凸部12e,12fの突出方向とのそれぞれは、配列方向に対して直交している。また、負極耳部12dと負極格子体12cとは、配列方向において互いに重なっていない。
【0039】
図2に戻って、セパレータ13は、正極10と負極12との短絡を防止するための電池用部材(電池用セパレータ)である。セパレータ13は、正極10と負極12との間を電気的には絶縁する一方でイオンを透過させ、且つ、正極10側における酸化性及び負極12側における還元性に対する耐性を備えるものであれば、特に制限されない。このようなセパレータ13の材料(材質)としては、ガラス繊維、樹脂、無機物等が挙げられる。本実施形態では、セパレータ13は負極12の負極格子体12c及び凸部12e,12fを覆っており、且つ、負極12の負極耳部12dはセパレータ13から露出している。
【0040】
ここで
図5(a)及び
図5(b)を参照しながら、セパレータ13の加工前製品であるセパレータシートの構造について説明する。
図5(a)は、セパレータシートを示す平面図であり、
図5(b)は、
図5(a)のVb-Vb線に沿った概略断面図である。
図5(a)及び
図5(b)に示されるように、セパレータシート30は、ベース部31を有する。
【0041】
ベース部31は、セパレータシート30の主要部となるシート状部分であり、可撓性を有する。ベース部31は、第1主面31aと、第1方向Xにおいて第1主面31aの反対側に位置する第2主面31bとを有する。本実施形態では、第1主面31a及び第2主面31bは、第1方向Xから見て矩形状を呈するが、これに限られない。ベース部31には、複数の突出部(第1突出部)32が設けられる。
【0042】
複数の突出部32は、例えば、セパレータシート30の耐久性向上、ケース7内における電解液の流動性向上等を図るために設けられる。複数の突出部32は、第2方向Yに沿ってベース部31上に配列されており、且つ、セパレータシート30の厚さ方向に沿って第2主面31bから突出している。複数の突出部32のそれぞれは、第3方向Zにおけるセパレータシート30の一端から他端まで設けられる。複数の突出部32の第3方向Zにおける数は、正極10の筒状体15の本数よりも多い。
【0043】
本実施形態では、複数の突出部32のそれぞれは、互いに離間する複数のリブ(第1リブ)33の群から構成される。このため、各突出部32は、第1主面31aから突出している部分(すなわち、リブ33)と、第1主面31aから突出していない部分(すなわち、リブ33同士が離間する隙間)とを含む。セパレータ13のイオン伝導性と、セパレータ13の耐久性との両立の観点から、平面視にて、突出部32において複数のリブ33が占める割合は、例えば5%以上50%以下である。当該割合は、10%以上でもよいし、15%以上でもよいし、45%以下でもよいし、40%以下でもよい。
【0044】
複数のリブ33は、第1主面31aから第1方向Xに沿って突出する突起であり、第1方向Xから見て第1主面31a上に千鳥状に設けられる。第3方向Zにおいて隣り合うリブ33の間の距離は、筒状体15の直径よりも小さい。第2方向Yから見て、第1主面31a上において複数のリブ33が占める割合は、例えば10%以上50%以下である。当該割合は、15%以上でもよいし、20%以上でもよいし、45%以下でもよいし、40%以下でもよい。第3方向Zに沿って隣り合う2つの突出部32において、一方の突出部32に含まれるリブ33と、他方の突出部32に含まれるリブ33とは、第3方向Zに沿って互いに重ならない。各突出部32において、複数のリブ33は、第2方向Yに沿って周期的に配列されており、互いに離間している。
【0045】
各リブ33は、先細りの形状を呈している。第1方向Xから見て、各リブ33は、略三角形状を有する。これにより、突出部32は、鋸歯状を成している。第1方向Xから見て、各リブ33は、矩形状でもよいし、台形状でもよいし、点形状(ドット形状)でもよいし、円形状でもよいし、楕円形状でもよいし、多角形状でもよい。また、第2方向Yに対して直交するリブ33の断面は、矩形状を呈するが、これに限られない。当該断面は、例えば、台形状でもよいし、逆台形状でもよい。第3方向Zに沿ったリブ33の寸法(幅)は、例えば、第3方向Zに沿ったセパレータシート30の寸法の0.30%以上2.5%以下である。第1方向Xに沿ったリブ33の寸法(高さ)は、例えば、第1方向Xに沿ったベース部31の寸法(厚さ)の100%より大きく1000%以下である。
【0046】
次に、
図6を参照しながら、電極群3に含まれる、負極12とセパレータ13とを組み合わせた構造について詳細に説明する。
図6は、セパレータに包まれる負極を示す平面図である。
図6に示されるように、セパレータ13は、セパレータシートの袋状加工物に相当し、負極12を包んでいる。上述したように、負極12の負極耳部12dは、セパレータ13から露出しており、負極12の凸部12e,12fは、セパレータ13に覆われる。セパレータ13は、例えば、1枚のセパレータシート30を第2方向Yに沿って二つ折りした後、所望の箇所が封止されることによって形成される。このとき、負極12がセパレータシート30にて挟まれるように、第2方向Yにおける負極12の凸部12e,12f側にてセパレータシート30が折り返される。第3方向Zにおけるベース部31の両端部は、負極12の外側に位置する。作業性向上の観点から、負極12の移動に伴ってセパレータシート30が二つ折りされてもよい。セパレータ13は、主部41と、一対の接合部42,43と、屈曲部44と、シール部45とを有する。
【0047】
主部41は、負極12の負極格子体12cを収容する部分である。主部41は、セパレータシート30のベース部31(
図5(a)を参照)から構成される。このため本明細書では、主部41は、ベース部31と言い換えることが可能であり、複数の突出部32が設けられる第1主面31aと、第2主面31bとを有する。第2主面31bが内面になるようにセパレータシート30を二つ折りすることによって、主部41が形成される。
【0048】
一対の接合部42,43は、セパレータシート30が二つ折りされる状態を維持するための部分である。第3方向Zにおける主部41の一端に接合部42が設けられ、第3方向Zにおける主部41の他端に接合部43が設けられる。接合部42,43のそれぞれは、第3方向Zにおいて負極12の外側に位置する。接合部42,43のそれぞれは、第2方向Yに延在している。これにより、第3方向Zに沿った負極12の移動が、接合部42,43によって抑制できる。接合部42,43では、完全に密封されなくてもよい。セパレータ13内における電解液の流動性の観点から、接合部42,43の少なくとも一方では、電解液が通過可能な領域が設けられてもよい。接合部42,43は、例えば、超音波溶着部、ヒートシール部、コールドシール部、ギアシール部等である。ギアシール部は、ギアを用いた加圧によって機械的に貼り合わされる部分である。本実施形態では、接合部42,43のそれぞれは、第2方向Yにおけるセパレータ13の一端から他端まで延在するギアシール部である。
【0049】
屈曲部44は、セパレータシート30において折り返される部分である。屈曲部44の少なくとも一部は、負極格子体12cに当接し得る。屈曲部44の一部には、開口部44aが設けられる。開口部44aは、例えば、セパレータ13内における電解液の流動性を向上するために設けられる部分である。開口部44aは、第2方向Yにおいて凸部12e,12fのいずれにも重ならない位置に設けられる。開口部44aは、例えば第3方向Zにおけるセパレータ13の中央部に設けられるが、これに限られない。例えば、屈曲部44の一部が切断されることによって、開口部44aが形成される。
【0050】
シール部45は、接合部42,43と同様に、二つ折りされたセパレータシート30の状態を維持するための部分である。シール部45は、主部41の第1面41Aの一部と第2面41Bの一部とを接合する部分である。このため、シール部45は、第2方向Yにおけるセパレータ13の一端側であって、第1方向Xから見て負極12の外側に位置する。シール部45は、第2方向Yにて負極12の負極格子体12cに対向し、且つ、第3方向Zにおいて負極耳部12dに対向する。蓄電池1においては、少なくともシール部45は、第2方向Yにおいて負極12よりも蓋9側に位置する。また、シール部45は、第3方向Zに沿って延在している。具体的には、シール部45は、第3方向Zにおけるセパレータ13の一端から他端に向かって延在しており、主部41及び接合部42に設けられる。すなわち、シール部45の一部は、接合部42に重なる。
【0051】
以下では、
図7を参照しながら、電極群3に含まれる正極10、負極12及びセパレータ13の積層状態の詳細について説明する。
図7は、電極群の一部の拡大概略断面図である。
図7では、第2方向Yに対して直交する断面が示される。
【0052】
上述した
図6に示されるように、負極12はセパレータ13によって包まれている。このため
図7に示されるように、電極群3においては、第1方向Xに沿って、正極10と、セパレータ13の一部13aと、負極12と、セパレータ13の他部13bとが順に積層される。加えて、各正極10は、第1方向Xにおいて互いに異なる2つのセパレータ13に挟まれる。このため各正極10は、第1方向Xにおいて、一のセパレータ13によって包まれる一の負極12と、別のセパレータ13によって包まれる別の負極12とに挟まれる。一の負極12と別の負極12とは互いに同一構成を有し、一のセパレータ13と別のセパレータ13とは互いに同一構成を有する。このため、例えば一のセパレータ13に含まれるベース部31と、別のセパレータ13に含まれるベース部31とは、互いに同一形状を有する。
【0053】
第1方向Xにおいて、各セパレータ13の第1主面31aが正極10に対向し、各セパレータ13の第2主面31bが負極12に対向する。このため、電極群3においては、各第1主面31aが第1方向Xにおいて正極10に対向する表面として用いられ、各第2主面31bが第1方向Xにおいて負極12に対向する裏面として用いられる。
【0054】
本実施形態では、第1主面31aに設けられる複数の突出部32のそれぞれにおいて、複数のリブ33のうちの少なくとも一部は、セパレータ13の厚さ方向において正極10の筒状体15と接触する。
【0055】
続いて、本実施形態における蓄電池1の製造方法の一例を簡潔に説明する。まず、セパレータシート30及び負極12を準備する。このとき、セパレータシート30の第2主面31bと負極12とを対向させる。続いて、セパレータシート30を二つ折りすることによって、屈曲部44を形成すると共にセパレータシート30によって負極12を挟み込む。このとき、負極12の負極格子体12cがセパレータシート30の第2主面31bにて完全に覆われると共に、負極12の負極耳部12dの一部がセパレータシート30から露出する。続いて、セパレータシート30に接合部42,43及びシール部45を形成する。接合部42,43は、例えば、ギアシール等によって形成される。シール部45は、例えば、ホーンを含む超音波溶着装置を用いた超音波溶着等によって形成される。続いて、屈曲部44に開口部44aを形成することによって、負極12を包むセパレータ13が形成される。
【0056】
次に、正極10と、セパレータ13に包まれる負極12とのそれぞれを複数準備する。続いて、正極10と、セパレータ13に包まれる負極12とを交互に積層する。このとき、セパレータ13の厚さ方向において突出部32と筒状体15とが重なるように、正極10、セパレータ13及び負極12を第1方向Xに重ねる。続いて、正極10の耳部10aに正極ストラップ17を電気的に接続させると共に、負極12の負極耳部12dに負極ストラップ18を電気的に接続させる。これにより、複数の正極10と、複数の負極12と、複数のセパレータ13が含まれる電極群3を形成する。続いて、電極群3を本体8に収容する。続いて、本体8を蓋9によって封止する。このとき、各正極10を正極端子5Aと電気的に接続させると共に、各負極12を負極端子5Bと電気的に接続させる。続いて、補水栓6を経由して電解液をケース7内に供給し、初充電を実施する。これにより、蓄電池1が製造される。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る蓄電池1では、セパレータ13が突出部32を有する。突出部32が第2方向Yにおいて所定の間隔をあけて配置された複数のリブ33を含み、正極10の筒状体15と複数のリブ33のうちの少なくとも一部とが接触する。これにより、蓄電池1では、筒状体15に対してリブ33が引っ掛かる(筒状体15がリブ33によって係止される)ため、セパレータ13によって、第2方向Yへの筒状体15の移動が規制される。したがって、蓄電池1では、正極10の位置ずれを抑制できる。
【0058】
正極10の位置ずれについて、以下の実験を行った。本実施形態に係る蓄電池1のセパレータ13と、比較例のセパレータを準備した。比較例のセパレータは、第2方向Yにおいて連続するリブからなる突出部を有する。当該リブは、第2方向Yに沿って延在している。本実施形態に係るセパレータ13上にリブ33と対向するように正極10を配置し、正極10に重りをつけて、セパレータ13に対して正極10が移動(摺動)を開始する重りの重量を確認した。同様に、較例に係るセパレータ上にリブと対向するように正極10を配置し、正極10に重りをつけて、比較例のセパレータに対して正極10が移動(摺動)を開始する重りの重量を確認した。本実施形態に係るセパレータ13では、重りが313.3gで正極10が移動した。比較例に係るセパレータでは、重りが271.5gで正極10が移動した。これらの結果により、本実施形態に係るセパレータ13では、正極10の移動を抑制できることが確認できた。したがって、本実施形態に蓄電池1では、上記のセパレータ13を備えることにより、正極10の位置ずれが抑制できる。
【0059】
本実施形態に係る蓄電池1では、複数のリブ33のそれぞれは、先細りの形状を呈している。この構成では、正極10の筒状体15に対してリブ33が引っ掛かりやすくなる。したがって、正極10の位置ずれをより一層抑制できる。
【0060】
本実施形態に係る蓄電池1では、複数の突出部32が第3方向Zにおいて配置されている数は、複数の筒状体15の本数よりも多い。この構成では、正極10の筒状体15とリブ33とをより確実に接触させることができる。
【0061】
本実施形態に係る蓄電池1では、筒状体15の外表面に窪みが設けられていてもよいし、筒状体15の外表面に凹凸が設けられていてもよい。この構成では、正極10の筒状体15に対してリブ33が引っ掛かりやすくなる。したがって、正極10の位置ずれをより一層抑制できる。
【0062】
本実施形態に係る蓄電池1では、複数のリブ33は、第1方向Xから見て、千鳥状に配置されている。この構成では、正極の筒状体に対してリブが引っ掛かりやすくなる。したがって、正極の位置ずれをより一層抑制できる。
【0063】
以下では、
図8~
図10を参照しながら、上記実施形態の変形例について説明する。以下の変形例において、上記実施形態と重複する箇所の説明は省略する。したがって以下では、上記実施形態と異なる箇所を主に説明する。
【0064】
図8は、第1変形例に係る筒状体を示す概略図である。
図8に示されるように、筒状体15Aは、帯状基材50の巻回物(スパイラルチューブ)であり、例えば円筒形状を有する。筒状体15Aは、楕円筒形状を有してもよいし、多角形筒形状を有してもよい。
図8においては、筒状体15Aの軸方向が第2方向Yに相当し、筒状体15Aの径方向が第1方向X及び第3方向Zに相当する。筒状体15Aは、帯状基材50によって構成される筒状本体部51と、筒状本体部51よりも厚い肉厚部52とを有する。筒状本体部51は、第2方向Yに沿って延在する筒状部分である。
【0065】
肉厚部52は、帯状基材50の一部と別の一部とが重なる部分に相当し、例えば第2方向Yに沿ってらせん状に延在する。第2方向Yから見て、肉厚部52は、帯状基材50よりも外部に向かって突出する。換言すると、第2方向Yから見て、肉厚部52は、筒状本体部51よりも径方向外側に向かって突出する。筒状体15Aのイオン伝導性等の観点から、肉厚部52の表面積は、筒状体15Aの外周面の表面積のうち50%未満でもよいし、40%以下でもよいし、30%以下でもよいし、20%以下でもよい。活物質の露出を防止する観点から、肉厚部52の表面積は、筒状体15Aの外周面の表面積のうち3%以上でもよいし、5%以上でもよいし、10%以上でもよい。なお、筒状体15Aの外周面は、第2方向Yにおける筒状体15Aの各端面を含まない。
【0066】
図9は、第1変形例に係る電極群の一部の拡大概略断面図である。
図9では、第3方向Zに対して直交する電極群の断面が示される。
図9に示されるように、電極群3Aの正極10Aに含まれる筒状体15Aは、上記実施形態と同様に、第1方向Xにおいて互いに異なる2つのセパレータ13によって挟まれる。電極群3Aでは、筒状体15Aは、上記2つのセパレータ13に接触する。上述したように、筒状体15Aの肉厚部52は、筒状本体部51よりも径方向外側に向かって突出する。このため、肉厚部52とリブ33とが係合し得る。
【0067】
以上に説明した第1変形例においても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて第1変形例では、筒状体15Aは、筒状本体部51と、筒状本体部51よりも厚い肉厚部52とを有する。このため、肉厚部52とリブ33とが係合し得るので、正極10の位置ずれがより一層抑制される。
【0068】
図10は、第2変形例に係る電極群の一部の拡大概略断面図である。
図10では、第2方向Yに対して直交する断面が示される。
図10に示されるように、電極群3Bに含まれるセパレータ13Aのベース部31Aには、セパレータ13Aの厚さ方向において第2主面31bから負極12に向かって突出する複数の突出部(第2突出部)34が設けられる。第2変形例では、各突出部34は、第1方向Xに沿って突出する。
【0069】
複数の突出部34は、突出部32と同様に、第3方向Zに沿ってベース部31A上に配列されている。複数の突出部34のそれぞれは、互いに離間する複数のリブ(第2リブ)35の群から構成される。このため、各突出部34は、第1主面31aから突出している部分(すなわち、リブ35)と、第1主面31aから突出していない部分(すなわち、リブ35同士が離間する隙間)とを含む。
【0070】
複数のリブ35は、第2主面31bから突出する突起であり、第2主面31bに直交する方向から見て第2主面31b上に千鳥状に設けられる。このため、リブ33と同様に、第3方向Zにおいて隣り合う2つの突出部34において、一方の突出部34に含まれるリブ35と、他方の突出部34に含まれるリブ35とは、第3方向Zにおいて互いに重ならない。各突出部34において、複数のリブ35は、第2方向Yに沿って周期的に配列されており、互いに離間している。第1方向Xから見て、各リブ35は略矩形状を有するが、これに限られない。また、第2方向Yに対して直交するリブ35の断面は、矩形状を呈するが、これに限られない。当該断面は、例えば、台形状でもよいし、逆台形状でもよい。リブ35の大きさの範囲は、例えばリブ33の大きさの範囲と同一である。
【0071】
突出部32,34は、セパレータ13Aの厚さ方向において互いに重なる。加えて、突出部32に含まれる各リブ33は、当該厚さ方向において突出部34に含まれる各リブ35に重なる。このため、リブ33が設けられる箇所におけるセパレータ13Aの厚さは、リブ33の高さと、ベース部31Aの厚さと、リブ35の高さとの合計に相当する。一方、リブ33が設けられない箇所におけるセパレータ13Aの厚さは、ベース部31Aの厚さ、もしくは、ベース部31Aの厚さとリブ35の高さとの合計に相当する。なお、ベース部31Aの厚さは、特に限定されないが、例えば上記実施形態よりも5%以上50%以下程度薄くてもよい。
【0072】
電極群3Bにおいて、各セパレータ13Aに含まれる複数の突出部34の少なくとも一部は、負極12に接触する。より具体的には、リブ35の少なくとも一部は、負極12に接触する。
【0073】
以上に説明した第2変形例においても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて第2変形例では、セパレータ13Aのベース部31Aには、セパレータ13Aの厚さ方向において第2主面31bから負極12に向かって突出する複数の突出部34が設けられている。これにより、負極12と突出部34のリブ35とが接触する。化成後の負極12の表面には、凹凸が設けられる。そのため、負極12に対してリブ35が引っ掛かる(負極12がリブ35によって係止される)ため、セパレータ13Aによって、第2方向Yへの負極12の移動も規制される。したがって、蓄電池1では、正極10及び負極12の位置ずれを抑制できる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0075】
上記実施形態及び上記変形例では、第2方向に沿ってセパレータシートが二つ折りされているが、これに限られない。例えば、電極群の寸法等によっては、第1方向に沿ってセパレータシートが二つ折りされてもよい。この場合、セパレータの屈曲部に開口部が設けられなくてもよい。
【0076】
上記実施形態及び上記変形例では、セパレータは袋状加工物であるが、これに限られない。例えば、セパレータは筒状加工物でもよい。この場合、第2方向における両側にシール部が設けられてもよいし、第2方向における一方側のみにシール部が設けられてもよい。
【0077】
上記実施形態及び上記変形例では、セパレータは1枚のセパレータシートから形成されるが、これに限られない。例えば、セパレータは、複数枚のセパレータシートから形成されてもよい。この場合、第1方向におけるセパレータの両端側にシール部が形成されてもよいし、第1方向における一方側のみにシール部が形成されてもよい。また、第2方向におけるセパレータの両側に接合部が形成されてもよいし、第2方向における一方側のみに接合部が形成されてもよい。よって、セパレータが複数枚のセパレータシートから形成される場合、当該セパレータは、袋状加工物でもよいし、筒状加工物でもよいし、袋状加工物及び筒状加工物とは異なる加工物でもよい。
【0078】
上記実施形態及び上記変形例では、ケース内には複数のセパレータが含まれるが、これに限られない。例えば、電極群に含まれる複数の正極と複数の負極とは、1枚のセパレータシートによって隔てられてもよい。この場合、例えば、セパレータシートは、配列方向において蛇腹状に折りたたまれる。電極群においては、正極は、蛇腹状のセパレータシートの第1主面にて挟まれるように配置され、負極は、当該セパレータシートの第2主面にて挟まれるように配置される。
【0079】
上記実施形態及び上記各変形例では、電動車として、フォークリフト100を一例に説明した。しかし、電動車は、例えば、ゴルフカート等であってもよい。また、フォークリフト100に組電池200が搭載されている形態を一例に説明したが、蓄電池1が搭載されていてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1…蓄電池、3,3A,3B…電極群、10,10A…正極、12…負極、14…集電体、13,13A…セパレータ、15,15A…筒状体、31,31A…ベース部、32…突出部(第1突出部)、33…リブ(第1リブ)、34…突出部(第2突出部)、35…リブ(第2リブ)、52…肉厚部、100…フォークリフト(電動車)、200…組電池、X…第1方向、Y…第2方向、Z…第3方向。