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  • 特開-揚げ物衣材用食感改良剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136546
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】揚げ物衣材用食感改良剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/157 20160101AFI20220913BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20220913BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20220913BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L5/00 F
A23L5/00 N
A23L29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036213
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】山内 優輝
(72)【発明者】
【氏名】梁田 健一
(72)【発明者】
【氏名】安田 健一
【テーマコード(参考)】
4B025
4B035
【Fターム(参考)】
4B025LB05
4B025LB07
4B025LG04
4B025LG21
4B025LG28
4B025LG44
4B025LK03
4B025LP01
4B025LP10
4B025LP20
4B035LC03
4B035LE17
4B035LG04
4B035LG21
4B035LG32
4B035LG35
4B035LG42
4B035LK15
4B035LP07
4B035LP27
4B035LP59
(57)【要約】
【課題】本発明は、サクサク感があり歯切れの良い食感を有する揚げ物を提供することを課題とする。
【解決手段】揚げ物衣材に五環性トリテルペンを含有する揚げ物衣材用食感改良剤を使用することで上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
五環性トリテルペンを含有する、揚げ物衣材用食感改良剤。
【請求項2】
五環性トリテルペンがオレアナン型トリテルペン、ウルサン型トリテルペン、ルパン型トリテルペン及びホパン型トリテルペンからなる群から選択されるいずれか1以上である、請求項1に記載の揚げ物衣材用食感改良剤。
【請求項3】
澱粉質原料と請求項1又は請求項2に記載の揚げ物衣材用食感改良剤とを含有する、揚げ物衣材用澱粉質原料組成物。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の揚げ物衣材用食感改良剤又は請求項3に記載の揚げ物衣材用澱粉質原料組成物を含有する、揚げ物用バッターミックス粉。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の揚げ物衣材用食感改良剤又は請求項3に記載の揚げ物衣材用澱粉質原料組成物を含有する、揚げ物用ブレッダーミックス粉。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の揚げ物衣材用食感改良剤、請求項3に記載の揚げ物衣材用澱粉質原料組成物、又は請求項4に記載の揚げ物用バッターミックス粉を含有する、揚げ物用バッター。
【請求項7】
揚げ種の少なくとも一部が請求項5に記載の揚げ物用ブレッダーミックス粉又は請求項6に記載の揚げ物用バッターで被覆された、未油ちょう揚げ物。
【請求項8】
揚げ種の少なくとも一部を請求項4に記載の揚げ物用ブレッダーミックス粉又は請求項6に記載の揚げ物用バッターで被覆して未油ちょう揚げ物を得る工程、該未油ちょう揚げ物を加熱調理する工程を含む、揚げ物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚げ物衣材用食感改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
唐揚げや天ぷら、或いはパン粉付けしたフライなどの揚げ物は、サクサク感のある歯切れのよい食感を有する揚げ衣が好まれる。また、揚げたての、さくみのある食感が望まれる。
このような揚げ物を得るために、種々検討されている。特許文献1では、膨張剤及びジグリセリン脂肪酸エステルを主成分とする天ぷら衣用改良剤およびこれを含有する天ぷら衣用油脂組成物が開示されている。特許文献2では、植物性ステロール及びレシチンを含有する天ぷら用小麦粉組成物が開示されている。何れも天ぷらの衣の食感を改良する優れた技術である。
近年、健康志向の高まりから、食品への合成乳化剤などの添加物の配合は敬遠される傾向にある。また、油浴でフライして製造する揚げ物は油分の含有量が多くなりがちであり、揚げ種にえびや食肉類などを使用した場合にはコレステロールの摂食量が多くなることもあり、最近では摂取量を控える消費者も少なくない。
一方、五環性トリテルペンの1種であるマスリン酸は、抗肥満作用(非特許文献1)及び脂質代謝改善作用(非特許文献2)といった様々な生理機能を有していることが知られている。このような生理機能を有するマスリン酸を食品に使用する試みがなされている。特許文献3では、炭水化物と、コロソリン酸、マスリン酸及びトルメンティック酸からなる群より選択少なくとも1種のトリテルペンと、を含有する食品原料及びかかる食品原料を含有する食品が開示されており、グリセミック指数を低減することができることが記載されている。特許文献4では、五環性トリテルペン類およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体からなる群から選ばれる化合物を有効成分として含有する皮膚の美白用飲食物又は経口美白剤が開示されており、メラニンの生成が抑制されたことが記載されている。いずれの発明についても生体におけるマスリン酸の生理学的機能の発揮を期待したものであり、これまで五環性トリテルペンが食品の食感や物性に影響を与える知見はなく、油ちょう済み揚げ物の衣の食感を改善することは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-275921号公報
【特許文献2】特開2000-175643号公報
【特許文献3】特開2006-121949号公報
【特許文献4】再表2002-043736号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Liou CJ et al., FASEB J. 2019.Nov;33(11):11791-11803
【非特許文献2】Perez-Jimenez A et al., Phytomedicine. 2016. Nov 15;23(12):1301-1311
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、サクサク感があり歯切れの良い食感を有する揚げ物を提供することを課題とする。e
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、揚げ物衣材に五環性トリテルペンを含有する揚げ物衣材用食感改良剤を使用することにより、サクサク感があり歯切れがよい衣を有する揚げ物が出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
〔1〕五環性トリテルペンを含有する、揚げ物衣材用食感改良剤。
〔2〕五環性トリテルペンがオレアナン型トリテルペンウルサン型トリテルペン、ルパン型トリテルペン及びホパン型トリテルペンからなる群から選択されるいずれか1以上である、〔1〕記載の揚げ物衣材用食感改良剤。
〔3〕澱粉質原料と〔1〕又は〔2〕に記載の揚げ物衣材用食感改良剤とを含有する、揚げ物衣材用澱粉質原料組成物。
〔4〕〔1〕又は〔2〕に記載の揚げ物衣材用食感改良剤又は〔3〕記載の揚げ物衣材用澱粉質原料組成物を含有する、揚げ物用バッターミックス粉。
〔5〕〔1〕又は〔2〕に記載の揚げ物衣材用食感改良剤又は〔3〕記載の揚げ物衣材用澱粉質原料組成物を含有する、揚げ物用ブレッダーミックス粉。
〔6〕〔1〕又は〔2〕に記載の揚げ物衣材用食感改良剤、〔3〕記載の揚げ物衣材用澱粉質原料組成物、又は〔4〕記載の揚げ物用バッターミックス粉を含有する、揚げ物用バッター。
〔7〕揚げ種の少なくとも一部が〔5〕記載の揚げ物用ブレッダーミックス粉又は〔6〕記載の揚げ物用バッターで被覆された、未油ちょう揚げ物。
〔8〕揚げ種の少なくとも一部を〔5〕記載の揚げ物用ブレッダーミックス粉又は〔6〕記載の揚げ物用バッターで被覆して未油ちょう揚げ物を得る工程、該未油ちょう揚げ物を加熱調理する工程を含む、揚げ物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、五環性トリテルペンを含有する揚げ物衣材用食感改良剤を使用することにより、サクサク感があり歯切れがよい衣を有する揚げ物を提供することができる。
更には本発明により、揚げ物を摂食しつつも抗肥満及び脂質代謝改善といった健康機能が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】揚げ物衣材用食感改良剤1(オリーブ果実由来オレアナン型トリテルペン粉末)のHPLC分析チャートである。Aのピークはマスリン酸、Bのピークはオレアノール酸である。ピークの同定は、標準品とのリテンションタイムの比較及びLC/MS解析により行った。定量値は、標準品のピーク面積を基準に算出した。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において「揚げ物」は、畜肉や魚介類、野菜類等の揚げ種に衣材を付着させた後、熱した油浴中で油ちょう(乾熱加熱)して得られる食品であり、そのような食品として、天ぷら、から揚げ、カツ、フライ、フリッター等が挙げられる。
【0011】
本発明において「揚げ物用衣材」とは揚げ物に使用される衣材であり、小麦粉等の穀粉やコーンスターチ等の澱粉を主体とする澱粉質原料組成物又はそれと副原料を含む揚げ物用バッターミックス粉に加水して均質化し、バッターとして調製した後に揚げ種に付着させるものと、前記澱粉質原料組成物又はそれと副原料を含む揚げ物用ブレッダーミックス粉をブレッダーとして揚げ種に付着させるものが含まれる。
【0012】
<五環性トリテルペン>
本発明の揚げ物衣材用食感改良剤は五環性トリテルペンを含有する。
トリテルペンは炭素数30を基本骨格とする化合物であり、その代表例として五環性トリテルペンが挙げられる。五環性トリテルペンは、イソプレン単位6個から成る五環性の化合物で、炭素数は30個を基本とするが、生合成過程で転位、酸化、脱離あるいはアルキル化され炭素数が前後するものも含まれる。五環性トリテルペンは、一般に、その骨格により分類されている。例えば、オレアナン型トリテルペン、ウルサン型トリテルペン、ルパン型トリテルペン、ホパン型トリテルペン、セラタン型トリテルペン、フリーデラン型トリテルペン、タラキセラン型トリテルペン、タラキサスタン型トリテルペン、マルチフロラン型トリテルペン、ジャーマニカン型トリテルペン等が挙げられる。
【0013】
オレアナン型トリテルペンは、下記式1であらわされる構造を基本骨格として有する五環性トリテルペンであり、マスリン酸(式2)、オレアノール酸(式3)、グリチルレチン酸(式4)等がその一群に分類される。
【化1】
(式1)オレアナン型(Oleanane)トリテルペン
【化2】
(式2)マスリン酸(Maslinic acid)
【化3】
(式3)オレアノール酸(Oleanolic acid)
【化4】
(式4)グリチルレチン酸(Glycyrrhetinic acid)
【0014】
ウルサン型トリテルペンは、下記式5であらわされる構造を基本骨格として有する五環性トリテルペンであり、コロソリン酸(式6)、ウルソール酸(式7)等がその一群に分類される。
【化5】
(式5)ウルサン型(Ursane)トリテルペン
【化6】
(式6)コロソリン酸(Corosolic acid)
【化7】
(式7)ウルソール酸(Ursolic acid)
【0015】
ルパン型トリテルペンは、下記式8であらわされる構造を基本骨格として有する五環性トリテルペンであり、ベツリン酸(式9)、アルフィトール酸(式10)等がその一群に分類される。
【化8】
(式8)ルパン型(Lupane)トリテルペン
【化9】
(式9)ベツリン酸(Betulinic acid)
【化10】
(式10)アルフィトール酸(Alphitolic acid)
【0016】
ホパン型トリテルペンは、下記式11であらわされる構造を基本骨格として有する五環性トリテルペンであり、ロイコチル酸(式12)等がその一群に分類される。
【化11】
(式11)ホパン型(Hopane)トリテルペン
【化12】
(式12)ロイコチル酸(Leucotylic acid)
【0017】
本発明の揚げ物衣材用食感改良剤において、五環性トリテルペンは好ましくはオレアナン型トリテルペン、ウルサン型トリテルペン、ルパン型トリテルペン及びホパン型トリテルペンからなる群から選択されるいずれか1以上であり、より好ましくはオレアナン型トリテルペン及びウルサン型トリテルペンからなる群から選択されるいずれか1以上であり、更に好ましくはマスリン酸、オレアノール酸及びウルソール酸からなる群から選択される1以上である。なお、その分子内にカルボキシル基を有する場合、一般に五環性トリテルペン酸と称されるが、本明細書において五環性トリテルペン酸は五環性トリテルペンに含まれる。
【0018】
五環性トリテルペンは、各種の植物により生合成され、その植物の果実、花弁、子葉、茎、根などに遍在又は局在している。例えば、オレアナン型トリテルペンの一群に分類されるマスリン酸は、オリーブ果実及び葉、ナツメ、アーモンド、バナバ葉、セージ、リンゴ、クランベリー、カリン等に含まれる。オレアナン型トリテルペンの一群に分類されるオレアノール酸は、オリーブ果実及び葉、ブドウ、ビート、ナツメ、アーモンド、バナバ葉、セージ、サンザシ、ラズベリー、カリン、ローズマリー葉、グァバ、シソ葉、ブルーベリー、プルーン、ビワ、ザクロ、レモンバーム、バジル、ローズヒップ、カキ、センブリ等に含まれる。ウルサン型トリテルペンの一群に分類されるウルソール酸は、リンゴ、バジル、ビルベリー、クランベリー、エルダーフラワー、ペパーミント、ローズマリー、ラベンダー、オレガノ、タイム、サンザシ、プルーン等に含まれる。
【0019】
五環性トリテルペンは、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、ケトン基等の官能基を有しており、植物体内ではこれら官能基が各種の化合物により修飾あるいは分子内架橋されて存在している。例えば、甘草に含まれ、甘味料として利用されるグリチルリチンは、オレアナン型トリテルペンに分類されるグリチルレチン酸の3β水酸基を介して2つのグルクロン酸がエーテル結合した配糖体である。一般的にこのような官能基を修飾している化合物は抽出、分画、精製の過程で脱離し、抽出、分画、精製の過程を経て得られる五環性トリテルペンは概ね遊離型となる。
【0020】
五環性トリテルペンは、それを含有する植物から公知の方法で抽出、分画、精製して得ることができるほか、化学合成によって得ることもできる。また、市販品も好適に利用することができる。薬理学的に許容される塩及び/又は誘導体の形態で使用することもできる。五環性トリテルペンは、単独の成分又は2以上の種類の成分の混合物(組合せ)であっても良い。
【0021】
五環性トリテルペンは、それを含有する植物の抽出物の形態で用いても良い。オレアナン型トリテルペンであれば、その含有率が相応に高く、古くからの食経験があり、搾油後の二次利用が可能なことから、オリーブ果実抽出物やアーモンド種実抽出物等の形態で用いることが好適である。ウルサン型トリテルペンであれば、搾汁や食品加工後の二次利用が可能なことから、リンゴ果皮抽出物の形態で用いることが好適である。
【0022】
当該オリーブ果実抽出物は、主要トリテルペンとしてマスリン酸とオレアノール酸とを含有する。例えば、乾燥又は水分を含む半乾燥ないしは未乾燥のオリーブ果実や、搾油工程で発生するオリーブオイル搾り粕等を出発原料として、マスリン酸を抽出、精製することができる。さらに、オリーブ乾燥物をn-ヘキサン等の脂溶性有機溶媒で油分を除去した脱脂物を出発原料とすることもできる。使用するオリーブの品種には特に限定はなく、国内産、外国産等の産地、栽培用、搾油用を問わず使用できる。具体的には、これらの原料からマスリン酸が抽出可能な低級アルコール(例えば、エタノール、メタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール等)又はその含水低級アルコールでオレアナン型トリテルペンを抽出する。必要であれば、ケン化処理、中和を行い、吸着剤としてオクタデシルシリカ(ODS)、シリカゲル、合成吸着剤等を使用して、分画、精製することによりマスリン酸及び/又はオレアノール酸を主成分として含むトリテルペンの混合物を得ることもできる。このようにしてオリーブ果実から抽出されるトリテルペンには、概ねマスリン酸とオレアノール酸とが4:1の割合で含まれているが、オリーブ果実の生育状況や生育地域、あるいは搾油条件等により、当該比が1:1~7:1になる場合もある。
【0023】
当該アーモンド種実抽出物であれば、アーモンドそれ自体や、アーモンド油の搾油粕、スナック菓子等の加工食品の製造で排出される副産物、あるいはアーモンドの脱穀時に排出される殻や外皮などの副産物を出発原料として、低級アルコール又は含水低級アルコールで五環性トリテルペンを抽出し、必要であれば、ケン化処理、中和を行い、吸着剤としてオクタデシルシリカ(ODS)、シリカゲル、合成吸着剤等を使用して、分画、精製することによりマスリン酸及び/又はオレアノール酸を主成分として含むトリテルペンの混合物を得ることもできる。なお、一般的にアーモンドの殻は燃料材料、外皮は堆肥などに使用されている。
【0024】
当該リンゴ果皮抽出物であれば、リンゴ果汁の搾汁粕や食品工場等で剥皮されたリンゴ果皮などの副産物を出発原料として低級アルコール又は含水低級アルコールで五環性トリテルペンを抽出し、任意にケン化処理や中和処理を行い、吸着剤としてオクタデシルシリカ(ODS)、シリカゲル、合成吸着剤等を使用して分画、精製することによりウルソール酸を主成分として含む五環性トリテルペンの混合物を得ることもできる。
【0025】
オリーブ果実やアーモンド、リンゴ果皮以外の他の植物を出発原料とする場合には、原料として使用する植物に適した方法で五環性トリテルペンを得ることができる。また、得られる五環性トリテルペンの成分の種類及びその構成比は原料として使用する植物に依存する。
【0026】
なお、マスリン酸やオレアノール酸等のオレアナン型トリテルペンの精製画分を濃縮乾固したものは、白色から茶褐色の粉末状であり、不純物の含有量に依存して茶褐色が強くなる。これらは何れも含水アルコール等に溶解する。
【0027】
また、五環性トリテルペンの生理学的に許容される塩としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、ピロ硫酸、メタリン酸等の無機酸との塩;クエン酸、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、スルホン酸等の有機酸との塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0028】
<揚げ物衣材用食感改良剤>
本発明の揚げ物衣材用食感改良剤は、上記五環性トリテルペンを含有する。揚げ物衣材用食感改良剤は、五環性トリテルペンから成っていてもよく、他の成分を含んでいてもよい。本発明の揚げ物衣材用食感改良剤は、揚げ物衣材用澱粉質原料組成物、揚物用バッターミックス粉、揚げ物用ブレッダーミックス粉、揚げ物用バッター液等を調製する際の作業性を良くする上で、包接化合物、担体、油脂、乳化剤、賦形剤等との混合物であることが好ましい。例えば、サイクロデキストリンや高度分岐環状デキストリン等の包接化合物に包接させた包接組成物;穀粉や澱粉等の可食性担体に担持させた担持体組成物;食用油脂に溶解又は分散させた油脂溶体組成物;油脂と水分と乳化剤とのW/O型又はO/W型乳化組成物;精製水、アルコール、グリセリン、デキストリン、乳糖、マンニトール、澱粉、水飴、蜂蜜等の賦形剤との賦形組成物として用いることができる。揚げ物衣材用食感改良剤における五環性トリテルペンの含有量は特に制限されるものではなく、揚げ物を製造した際に本発明の効果が得られるように適宜調節することができ、例えば、揚げ物衣材用食感改良剤全量に対して1質量%以上であればよく、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、更に好ましくは20質量%以上であり、より更に好ましくは50質量%以上である。
【0029】
<揚げ物衣材用澱粉質原料組成物>
本発明の揚げ物衣材用澱粉質原料組成物は、上記揚げ物衣材用食感改良剤と澱粉質原料とを含む。ここで、前記澱粉質原料は、穀粉類及び/又は澱粉類からなる。「穀粉類」とは、普通小麦、デュラム小麦、米、ライ麦、大麦、とうもろこし、そば、大豆、ひえ、あわ、アマランサス等の穀物由来の穀粉;馬鈴薯、里芋、キャッサバあるいは甘藷、山芋等の穀物に準ずる主食となる農作物である塊茎粉あるいは塊根粉などであり、好ましくは小麦粉を主体とし、任意に小麦粉以外の穀粉や塊茎粉あるいは塊根粉を含むものを使用する。「澱粉類」とは、穀物、塊茎、塊根、樹幹等及びそれらのワキシー種又はハイアミロース種から分離精製された澱粉(小麦澱粉、米澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉等、及びそれらのワキシー澱粉並びにハイアミロース澱粉)、及び、前記澱粉をα化、エーテル化、エステル化、アセチル化、架橋、酸化処理、熱処理、酵素処理等並びにそれらの組合せを行った変性澱粉などをいう。
前記澱粉質原料は、穀粉類からなってもよく、澱粉類からなってもよく、穀粉類と澱粉類との混合物であってもよく、製造する揚げ物の種類あるいは食感改良や経時耐性等の付与したい機能に応じて適宜選択でき、配合割合を適宜調節することができる。例えば、澱粉質原料として小麦粉のみを使用した場合であれば揚げ立てのサクサクした衣の食感になるところ、衣にドライで歯切れの良い食感を付与する場合であればコーンスターチ等の澱粉類を配合し、比較的硬くザクザクとした食感を付与する場合であれば米粉等の小麦粉以外の穀粉を配合し、ザクザク感が強く硬い食感を付与する場合であればリン酸架橋澱粉等の加工澱粉を配合することが一般的である。
本発明の揚げ物衣材用澱粉質原料組成物における五環性トリテルペンの含有量は特に制限されるものではない。好ましくは澱粉質原料と揚げ物衣材用食感改良剤との合計に対して0.01質量%以上であり、より好ましくは0.03~10質量%であり、更に好ましくは0.05~7質量%であり、より更に好ましくは0.1~5質量%であり、最も好ましくは0.3~5質量%である。揚げ物衣材用澱粉質原料組成物に五環性トリテルペンが含まれていれば、歯切れが良くサクサクとした食感に優れた揚げ物を得ることができる。
【0030】
<揚げ物用バッターミックス粉>
本発明の揚げ物用バッターミックス粉は、前記揚げ物衣材用澱粉質原料組成物を含む。一般的に、ミックス粉は、その使用用途に応じて、揚げ物衣材用澱粉質原料組成物に、化学膨張剤、調味料、香料、色素等の粉末原料、任意に油脂類などを混合したものをいう。本発明の揚げ物用バッターミックス粉は、前記揚げ物衣材用澱粉質原料組成物に加えて、ブドウ糖、果糖、乳糖、砂糖、イソマルトースなどの糖類;卵黄、卵白、全卵及びそれらを粉末化したものやその他の卵に由来する成分である卵成分;粉乳、脱脂粉乳、大豆粉乳等の乳成分;ショートニング、ラード、マーガリン、バター、パーム油、大豆油、コーン油、菜種油、オリーブ油、アマニ油等の油脂類;ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン、サポニン等の乳化剤;ベーキングパウダー、重曹等の膨張剤;キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、ペクチン、カラギーナン、グアガム、タマリンドガム、アラビアガム等の増粘多糖類;メチルセルロース等のセルロース誘導体;食塩等の無機塩類;保存料;香料;香辛料;ビタミン;カルシウム等の強化剤等の通常揚げ物用衣材類製造に用いる副原料を含むことができる。
本発明の揚げ物バッターミックス粉における五環性トリテルペンの含有量は特に制限されるものではない。好ましくは揚げ物バッターミックス粉に含まれる澱粉質原料と揚げ物衣材用食感改良剤との合計質量に対して0.01質量%以上であり、より好ましくは0.03~10質量%であり、更に好ましくは0.05~7質量%であり、より更に好ましくは0.1~5質量%であり、最も好ましくは0.3~5質量%である。揚げ物バッターミックス粉に五環性トリテルペンが含まれていれば、歯切れが良くサクサクとした食感に優れた揚げ物を得ることができる。
【0031】
<揚げ物用ブレッダーミックス粉>
本発明の揚げ物用ブレッダーミックス粉は、前記揚げ物衣材用食感改良剤を含有する。
一般的に、ミックス粉は、その使用用途に応じて、揚げ物衣材用澱粉質原料組成物に、化学膨張剤、調味料、香料、色素等の粉末原料、任意に油脂類などを混合したものをいう。本発明の揚げ物用ブレッダーミックス粉は、前記揚げ物衣材用食感改良剤に加えて、ブドウ糖、果糖、乳糖、砂糖、イソマルトースなどの糖類;卵黄、卵白、全卵及びそれらを粉末化したものやその他の卵に由来する成分である卵成分;粉乳、脱脂粉乳、大豆粉乳等の乳成分;ショートニング、ラード、マーガリン、バター、パーム油、大豆油、コーン油、菜種油、オリーブ油、アマニ油等の油脂類;ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン、サポニン等の乳化剤;ベーキングパウダー、重曹等の膨張剤;キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、ペクチン、カラギーナン、グアガム、タマリンドガム、アラビアガム等の増粘多糖類;メチルセルロース等のセルロース誘導体;食塩等の無機塩類;保存料;香料;香辛料;ビタミン;カルシウム等の強化剤等の通常揚げ物用衣材類製造に用いる副原料を含むことができる。
本発明の揚げ物ブレッダーミックス粉における五環性トリテルペンの含有量は、特に制限されるものではない。好ましくは揚げ物ブレッダーミックス粉に含まれる澱粉質原料と揚げ物衣材用食感改良剤との合計質量に対して0.01質量%以上であり、より好ましくは0.03~10質量%であり、更に好ましくは0.05~7質量%であり、より更に好ましくは0.1~5質量%であり、最も好ましくは0.3~5質量%である。揚げ物衣材用澱粉質原料組成物に五環性トリテルペンが含まれていれば、歯切れがよくサクサクとした食感に優れた揚げ物を得ることができる。
【0032】
<揚げ物用バッター液>
本発明の揚げ物用バッター液は、前記揚げ物衣材用澱粉質原料組成物又は前記揚げ物用バッターミックス粉を含む。前記揚げ物衣材用澱粉質原料組成物を揚げ物用バッター液に使用する場合、揚げ物衣材用澱粉質原料組成物に加えて任意にブドウ糖、果糖、乳糖、砂糖、イソマルトースなどの糖類;卵黄、卵白、全卵及びそれらを粉末化したものやその他の卵に由来する成分である卵成分;粉乳、脱脂粉乳、大豆粉乳等の乳成分;ショートニング、ラード、マーガリン、バター、パーム油、大豆油、コーン油、菜種油、オリーブ油、アマニ油等の油脂類;ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン、サポニン等の乳化剤;ベーキングパウダー、重曹等の膨張剤;キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、ペクチン、カラギーナン、グアガム、タマリンドガム、アラビアガム等の増粘多糖類;メチルセルロース等のセルロース誘導体;食塩等の無機塩類;保存料;香料;香辛料;ビタミン;カルシウム等の強化剤等の通常揚げ物用衣材類製造に用いる副原料を添加することができる。
【0033】
本発明の揚げ物用バッター液は、前記揚げ物衣材用澱粉質原料組成物又は前記揚げ物用バッターミックス粉に水分を加えて混合することにより得ることができる。水分量は特に制限されるものではなく、製造する揚げ物と揚げ物用バッターミックス粉の構成成分に応じて適宜調節することができる。例えば、前記揚げ物衣材用澱粉質原料組成物又は前記揚げ物用バッターミックス粉に含まれる澱粉質原料100質量部に対して130~200質量部の水分を加えて均質になるまで混合することにより得ることができる。天ぷら等において良好な花咲きとサクサクとした食感を得る目的で、揚げ物用組成物又は揚げ物用バッターミックス粉と水分とを意図的にダマが形成されるように混合してもよい。用いる水分は特に限定されるものではなく、飲料水、牛乳等の家禽乳、果汁、果菜汁、だし汁、電解水、加糖水などが挙げられ、好ましくは飲料水又は飲料水を主体とした水分である。
【0034】
<未油ちょう揚げ物>
本発明の未油ちょう揚げ物は、揚げ種の全部又は一部に前記揚げ物用ブレッダーミックス粉又は前記揚げ物用バッター液を被覆させることにより得ることができる。被覆させる方法は特に限定されるものもではなく、公知の方法であれば何れも適用することができる。例えば、粉粒状の揚げ物用ブレッダーミックス粉であれば、揚げ種の一部又は全部にまぶす方法や振りかける方法等を採用することができる。揚げ物用バッター液であれば、揚げ種を浸漬する方法や浮遊させて部分的に付着させる方法、あるいは、揚げ種の一部又は全部に揚げ物用バッター液を塗布する方法や吹き付ける方法等を採用することができる。
また、揚げ種に、任意に粉末調味料あるいは粉末調味料及び/又は液体調味料を含有する調味液で下味をつけ、任意に小麦粉等の穀粉類やコーンスターチ等の澱粉類を主体とする打ち粉を付着させた後、揚げ物用バッター液又は揚げ物用ブレッダーミックス粉を被覆させてもよい。更には、揚げ種を揚げ物用バッター液で被覆した後にパン粉を付着させて、パン粉付き未油ちょう揚げ物とすることもできる。
揚げ種は特に限定されるものではなく、一般に揚げ物の製造に使用される揚げ種であれば何れも好適に使用することができる。そのような揚げ種としては、牛肉、豚肉、鶏肉などの畜肉類;魚、イカ、ホタテ貝柱などの魚介類;ピーマン、シシトウ、カボチャなどの果菜類;シソ葉、大葉などの葉野菜類;里芋、甘藷、山芋、馬鈴薯などの塊茎類又は塊根類;ショウガ、ニンニク、ミョウガなどの香味野菜類等が挙げられる。
本発明の未油ちょう揚げ物は、加熱前にチルド保存又は冷凍保存してもよい。
【0035】
<揚げ物の製造方法>
本発明において、揚げ物の製造方法は特に限定されず、公知の方法であれば何れも適用することができる。前記揚げ物用ブレッダーミックス粉、揚げ物衣材用澱粉質原料組成物又は揚げ物用バッターミックス粉を用いて前記のごとく未油ちょう揚げ物を得、任意にチルド保存又は冷凍保存の後、予熱した油浴に未油ちょう揚げ物を投入してフライすることにより得ることができる。また、熱した揚げ油を未油ちょう揚げ物に連続的に噴霧して揚げ物を得ることもできる。このようにして得られる揚げ物としては、天ぷら、から揚げ、カツ、フライ、かき揚げ、フリッター等が挙げられる。また、得られた揚げ物を公知の方法により常温保存、チルド保存または冷凍保存した後、油ちょうや電子レンジ加熱等により再加熱してもよい。
【実施例0036】
以下本発明を具体的に説明する為に実施例を示すが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0037】
<製造例1 揚げ物衣材用食感改良剤1の製造>
(1)オリーブ果実をコールドプレス法によりオリーブオイルを搾油し、オリーブ果実搾油粕を得た。
(2)オリーブ果実搾油粕100質量部に250質量部の90%含水エタノール(v/v)を加え、70℃で攪拌しながら2時間加熱し、固液分離により得られた液体部分をエバポレーターで減圧留去して濃縮液を得た。
(3)濃縮液を水に分散させ、合成吸着樹脂アンバーライトXAD4(オルガノ株式会社)を担体としたカラムクロマトグラフィーに供し、50%含水エタノールから100%エタノールに至る10%刻みのステップワイズ溶出によりトリテルペン高含有画分を分取した。
(4)トリテルペン高含有画分を減圧留去し、液油体状のオリーブ果実由来オレアナン型トリテルペン含有液を調製した。
(5)このオレアナン型トリテルペン含有液100質量部に20%含水エタノール100質量部を加えて十分に混合して溶解し、4℃で一晩静置して析出させ、析出物を濾過により回収及び洗浄し、減圧乾燥した後ピンミルを用いて粉末化することにより揚げ物衣剤用食感改良剤1を得た。
(6)1gの揚げ物衣材用食感改良剤1をメタノールに溶解してHPLC分析に供した。 図1はそのHPLCチャートであり、Aのピークはマスリン酸、Bのピークはオレアノール酸であった。なお、ピークの同定は標準品とのリテンションタイムの比較及びLC/MS解析により行い、定量値は標準品のピーク面積を基準に算出した。その結果、揚げ物衣材用食感改良剤1(オリーブ果実由来オレアナン型トリテルペン粉末)にはマスリン酸が50質量%、オレアノール酸が30質量%含まれていることが判った。
【0038】
<製造例2 揚げ物衣材用食感改良剤2の製造>
(1)上記ステップワイズ溶出に替えて50%含水エタノールから100%エタノールに至るグラディエント溶出を行った以外は製造例1に従って液油体状のオリーブ果実由来オレアナン型トリテルペン含有液を調製し、粉末化して揚げ物衣材用食感改良剤2を得た。
(2)得られた揚げ物衣材用食感改良剤2をHPLC分析に供したところ(HPLCチャートは省略)、オレアナン型トリテルペンの含有率は90質量%、マスリン酸の含有率は90質量%、オレアノール酸の含有率は0質量%であった。
【0039】
<製造例3 揚げ物衣材用食感改良剤3の製造>
(1)製造例1工程5に用いた液油体状のオリーブ果実由来オレアナン型トリテルペン含有液100質量部と400質量部の高度分岐環状デキストリン(クラスターデキストリン、グリコ栄養食品株式会社)とをミキサーに投入して均質になるまで混合し、500質量部の粉末状の揚げ物衣材用食感改良剤3を得た。
(2)得られた揚げ物衣材用食感改良剤3をHPLC分析に供したところ(チャートは省略)、オレアナン型トリテルペンの含有率は16質量%、マスリン酸の含有率は10質量%、オレアノール酸の含有率は、6質量%であった。
【0040】
<製造例4 エビ天ぷらの製造>
(1)99質量部の小麦粉(株式会社ニップン、ハート)と1質量部の揚げ物衣材用食感改良剤1(マスリン酸0.5質量部、オレアノール酸0.3質量部)とをミキサーに投入し、均質になるまで混合して揚げ物衣材用小麦粉組成物(揚げ物衣材用澱粉質原料組成物)を得た。
(2)得られた揚げ物衣材用小麦粉組成物全量に膨張剤1質量部、食塩1質量部を加えてミキサーで均質になるまで混合して揚げ物用バッターミックス粉を得た。
(3)揚げ物用バッターミックス粉100質量部に対して160質量部の水分を加え、ミキサーで均質になるまで混合して揚げ物用バッター液を得た。
(4)15gのエビ(10本平均)に打ち粉(薄力小麦粉)を付着させ、揚げ物用バッター液に浸漬して未油ちょうエビ天ぷらを得た。なお、打ち粉を付着させる前後でエビの重量を測定したところ、エビ15gに対して1gの打ち粉が付着していた。また、揚げ物用バッター液への浸漬前後で揚げ物用バッター液の重量を測定したところ、エビ15g当たり8gの揚げ物用バッター液で被覆されていた。
(5)得られた未油ちょうエビ天ぷらを170℃に予熱した油浴に投入し、2分間フライし、油切りバットに重ならないように並べて油切りしてエビ天ぷらを得た。
【0041】
評価例1 エビ天ぷらの官能評価
得られたエビ天ぷらを10名の熟練パネラーにより下記基準に従って評価した。なお、揚げ物衣材用食感改良剤を使用せず、小麦粉のみの揚げ物用小麦粉組成物を用いて製造したエビ天ぷら(参考例1)の評価点を3点とした。
【0042】
食感
【0043】
歯切れ
【0044】
試験例1 エビ天ぷらの衣の食感に与えるオレアナン型トリテルペンの影響
表1記載の質量部の揚げ物衣材用食感改良剤を用いた以外は製造例4に従ってバッターミックス粉を調製し、エビ天ぷらを製造し、評価例1に従って評価した。なお、何れのバッターミックス粉においても揚げ物衣材用食感改良剤と小麦粉との合計を100質量部とした。
その結果、食感改良剤1を用いた実施例1~5ではオレアナン型トリテルペンの含有率の増加に伴ってエビ天ぷらの食感及び歯切れ良好になった。食感改良剤2を用いた実施例6はオレアナン型トリテルペンとしてマスリン酸のみが1.6質量部であり、その食感及び歯切れの評価はオレアナン型トリテルペンとしてマスリン酸とオレアノール酸との合計が1.6質量部の実施例4と同等であった。このことから、バッター中にオレアナン型トリテルペンが含まれることによりエビ天ぷらの衣のサクサク感及び歯切れが改善されることが判った。オレアナン型トリテルペンを4.5質量部含む実施例7では優れた衣の食感と歯切れであったが、オレアナン型トリテルペンを3.2質量部含む実施例5よりもやや改善されるにとどまった。
【0045】
表1

OTTはオレアナン型トリテルペンの略であり、マスリン酸とオレアノール酸の合計を示す。
【0046】
試験例2 エビ天ぷらの衣の食感に与えるオレアナン型トリテルペン組成物の影響
表2記載の揚げ物衣材用食感改良剤3又は高度分岐環状デキストリンを用いた以外は製造例4に従ってエビ天ぷらを製造し、評価例1に従って評価した。
その結果、高度分岐環状デキストリンを用いた比較例1及び2では、衣のサクサク感及び歯切れ共に改善されていた。食感改良剤3を用いた実施例8及び9では、比較例1及び2よりも更にサクサク感及び歯切れが良好に改善されていた。実施例8及び9の評価が実施例3及び4と比較例1及び2との相加になっていないのは、オレアナン型トリテルペンが高度分岐環状デキストリンに包接されているためであると考えられた。包接性の化合物に替えてデキストリンや乳糖等の賦形剤、穀粉や澱粉等の担体などを用いることによりオレアナン型トリテルペンの本来有する衣の改良効果が発揮されると考えられた。
【0047】
表2

デキストリンは高度分岐環状デキストリンの略である。
【0048】
<製造例5 ブレッダーを用いた鶏から揚げの製造>
(1)99質量部の小麦粉(株式会社ニップン、ハート)と1質量部の揚げ物衣材用食感改良剤1、食塩5質量部、グルタミン酸ナトリウム2質量部、ブラックペッパー粉末0.5質量部とをミキサーに投入し、均質になるまで混合して揚げ物用ブレッダーミックス粉を得た。
(2)300gの鶏モモ肉塊を約30gの鶏モモ肉片10個に切り分けた。
(3)醤油4質量部、みりん2質量部、生姜汁0.5質量部、水4質量部を合わせてマリネート液を調製し、鶏モモ肉片を漬け込み30分間タンブリングして下味を付けた。
(4)下味を付けた鶏モモ肉片10個と揚げ物用ブレッダーミックス粉36gを樹脂製袋に投入し、鶏モモ肉片に満遍なくから揚げ用まぶし粉が付着するように混合した。
(5)得られた未油ちょう鶏から揚げを170℃に予熱した油浴に投入し、4分間油ちょうし、金属製の油切りバットに重ならないように並べ、油切りして鶏から揚げを得た。
【0049】
試験例3 鶏から揚げの衣の食感に与えるオレアナン型トリテルペンの影響
表3記載の揚げ物衣材用食感改良剤を用いた以外は製造例5に従って鶏から揚げを製造し、評価例1に準じて評価した。なお、何れのブレッダーミックス粉においても食感改良剤と小麦粉との合計を100質量部とした。また、揚げ物衣材用食感改良剤を使用しない参考例2の食感及び歯切れを3点とした。
その結果、オレアナン型トリテルペンの含有量に依存してサクサクとした食感及び歯切れが良好になった。オレアナン型トリテルペンの使用量が同じ実施例12及び13の評価はほぼ同等であった。以上のことから、揚げ物用ブレッダーミックス粉であっても、オレアナン型トリテルペンの何れかが含まれていれば、その総量に依存して衣の食感を改良できることが判った。
【0050】
表3

OTTはオレアナン型トリテルペンの略である。
【0051】
<製造例6 揚げ物衣材用食感改良剤3の製造>
(1)リンゴ果実からリンゴ果皮を剥皮し、卓上ミキサーに投入してリンゴ果皮粉砕物を得た。
(2)リンゴ果皮粉砕物を出発原料とした以外は製造例2に従って揚げ物衣材用食感改良剤3を得た。
(3)得られた揚げ物衣材用食感改良剤3をHPLC分析に供したところ(HPLCチャートは省略)、ウルサン型トリテルペンの含有率は90質量%、ウルソール酸の含有率は90質量%であった。
【0052】
試験例4 エビ天ぷらの衣の食感に与えるウルサン型トリテルペンの影響
表4記載の質量部の揚げ物衣材用食感改良剤を用いた以外は製造例4に従ってバッターミックス粉を調製し、エビ天ぷらを製造し、評価例1に従って評価した。なお、何れのバッターミックス粉においても揚げ物衣材用食感改良剤と小麦粉との合計を100質量部とした。結果を表4に示す。実施例1及び3は再掲である。
その結果、ウルサン型トリテルペンであるウルソール酸を使用した実施例14及び15では、その使用量に依存して衣の食感及び歯切れ共に良好になった。その衣の食感の改良効果は、オレアナン型トリテルペンの組合せを用いた実施例1及び3とほぼ同等であった。
【0053】
表4
【0054】
五環性トリテルペンがどのような作用機序で食感改良効果を発揮しているかを解明するには猶予が必要ではあるが、親油性の五環性トリテルペン骨格とその骨格に付属している水酸基やカルボキシル基等の親水性の官能基とによる両親媒性の性質と、五環性トリテルペン骨格自身の性質とが相まって、揚げ物の衣の食感を改良するという功を奏したものと考えられた。一般的に五環性トリテルペンは、その骨格内に水酸基やカルボキシル基等の親水性の官能基を有していることから、その何れもが揚げ物の衣の食感改良効果を有しているものと推察された。
図1