(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136597
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】アクリル樹脂フィルム及びナンバープレート
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20220913BHJP
B60R 13/10 20060101ALI20220913BHJP
C08F 20/26 20060101ALI20220913BHJP
C08F 20/02 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
C08J5/18 CEY
B60R13/10
C08F20/26
C08F20/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036289
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】中谷 文紀
【テーマコード(参考)】
3D024
4F071
4J100
【Fターム(参考)】
3D024CA01
4F071AA33X
4F071AA77
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4J100AB02Q
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4J100JA01
4J100JA28
(57)【要約】
【課題】印刷適合性、エンボス加工性及び透明性に優れたアクリル樹脂フィルム、及び前記アクリル樹脂フィルムを用いたナンバープレートを提供することを目的とする。
【解決手段】ナンバープレートに用いるアクリル樹脂フィルム1において、反応性基含有アクリル樹脂(A-1)を含有するアクリル樹脂層(I)3と、アクリル樹脂層(II)4とを有し、反応性基含有アクリル樹脂(A-1)が、アミノ基、メチロール基、イソシアネート基又はエポキシ基に対する反応性置換基を有する単量体単位を含有し、引張弾性率が10~1000MPaである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性基含有アクリル樹脂(A-1)を含有するアクリル樹脂層(I)を少なくとも有し、
前記反応性基含有アクリル樹脂(A-1)が、アミノ基、メチロール基、イソシアネート基又はエポキシ基に対する反応性置換基を有する単量体単位を含有し、
引張弾性率が10~1000MPaである、アクリル樹脂フィルム。
【請求項2】
前記アクリル樹脂層(I)のゲル分率が0~90%である、請求項1に記載のアクリル樹脂フィルム。
【請求項3】
前記アクリル樹脂層(I)の230℃、49N荷重におけるメルトフローレートが0.1~100g/10分である、請求項1又は2に記載のアクリル樹脂フィルム。
【請求項4】
前記反応性基含有アクリル樹脂(A-1)中の前記反応性置換基を有する単量体単位の含有率が、前記反応性基含有アクリル樹脂(A-1)の総質量に対して、3質量%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のアクリル樹脂フィルム。
【請求項5】
前記反応性置換基が2級水酸基である、請求項1~4のいずれか一項に記載のアクリル樹脂フィルム。
【請求項6】
厚さが10~100μmである、請求項1~5のいずれか一項に記載のアクリル樹脂フィルム。
【請求項7】
ナンバープレート用である、請求項1~6のいずれか一項に記載のアクリル樹脂フィルム。
【請求項8】
請求項7に記載のアクリル樹脂フィルムを備えるナンバープレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル樹脂フィルム及びナンバープレートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナンバープレートに装飾を付与した柄入りのナンバープレートが使用されている。特許文献1には、接着層、基材及び印刷画像を有するナンバープレート用グラフィックフィルムを、ナンバープレートのベースプレートに貼り合わせた後、文字部となるエンボス部を形成し、前記エンボス部の表面に印刷層を形成し、クリアーコートを全面に適用したナンバープレートが開示されている。特許文献2には、カルボキシル基及びシラノール基、架橋剤を含む樹脂等を含有するグラフィックフィルムを用いた表面保護層を備えるナンバープレートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-210286号公報
【特許文献2】特開2019-81330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ナンバープレートの表面保護層として用いられるフィルムには、印刷適合性に優れ、表面に形成される印刷層との密着力が高いことや、エンボス加工性に優れ、フィルムのエンボス部の部分に割れや剥がれが生じないことが求められる。しかし、特許文献1、2のような従来のフィルムでは、特に柄入りのナンバープレートで印刷適合性とエンボス加工性を両立させることは難しい。また、柄入りのナンバープレートに適用するフィルムには、下地の柄を視認できる透明性を有することも求められる。
【0005】
本発明は、印刷適合性、エンボス加工性及び透明性に優れたアクリル樹脂フィルム、及び前記アクリル樹脂フィルムを用いたナンバープレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]反応性基含有アクリル樹脂(A-1)を含有するアクリル樹脂層(I)を少なくとも有し、
前記反応性基含有アクリル樹脂(A-1)が、アミノ基、メチロール基、イソシアネート基又はエポキシ基に対する反応性置換基を有する単量体単位を含有し、
引張弾性率が10~1000MPaである、アクリル樹脂フィルム。
[2]前記アクリル樹脂層(I)のゲル分率が0~90%である、[1]に記載のアクリル樹脂フィルム。
[3]前記アクリル樹脂層(I)の230℃、49N荷重におけるメルトフローレートが0.1~100g/10分である、[1]又は[2]に記載のアクリル樹脂フィルム。
[4]前記反応性基含有アクリル樹脂(A-1)中の前記反応性置換基を有する単量体単位の含有率が、前記反応性基含有アクリル樹脂(A-1)の総質量に対して、3質量%以上である、[1]~[3]のいずれかに記載のアクリル樹脂フィルム。
[5]前記反応性置換基が2級水酸基である、[1]~[4]のいずれかに記載のアクリル樹脂フィルム。
[6]厚さが10~100μmである、[1]~[5]のいずれかに記載のアクリル樹脂フィルム。
[7]ナンバープレート用である、[1]~[6]のいずれかに記載のアクリル樹脂フィルム。
[8][7]に記載のアクリル樹脂フィルムを備えるナンバープレート。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、印刷適合性、エンボス加工性及び透明性に優れたアクリル樹脂フィルム、及び前記アクリル樹脂フィルムを用いたナンバープレートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態のアクリル樹脂フィルムを示した断面図である。
【
図2】他の実施形態のアクリル樹脂フィルムを示した断面図である。
【
図3】実施形態のナンバープレートを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、「単量体」とは、重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物を意味する。
「単量体単位」とは、単量体1分子が重合することによって形成される、単量体に基づく構成単位を意味する。
「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を示す。
【0010】
[アクリル樹脂フィルム]
本発明のアクリル樹脂フィルムは、反応性基含有アクリル樹脂(A-1)を含有するアクリル樹脂層(I)を少なくとも有する。本発明のアクリル樹脂フィルムは、ナンバープレート用の表面保護フィルムとして有用であり、柄入りのナンバープレート用として特に有用である。
【0011】
本発明のアクリル樹脂フィルムは、アクリル樹脂層(I)を有していれば、単層フィルムであってもよく、積層フィルムであってもよい。本発明のアクリル樹脂フィルムとしては、例えば、
図1に示すアクリル樹脂フィルム1、
図2に示すアクリル樹脂フィルム2を例示できる。
図1に示すように、アクリル樹脂フィルム1は、アクリル樹脂層(I)3と、アクリル樹脂層(II)4とが積層された2層構成の積層フィルムである。
図2に示すように、アクリル樹脂フィルム2は、アクリル樹脂層(I)3からなる単層フィルムである。
なお、説明において例示する図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0012】
本発明のアクリル樹脂フィルムの引張弾性率は、10~1000MPaである。なかでも、該引張弾性率は100MPa以上であることが好ましく、300MPa以上であることがより好ましく、一方、800MPa以下であることが好ましく、300MPa以下であることがより好ましい。引張弾性率が前記範囲の下限値以上であれば、アクリル樹脂フィルム同士のブロッキングが抑制され、また、フィルムに適度な剛性が付与されて取り扱い性が良好となる。引張弾性率が前記範囲の上限値以下であれば、アクリル樹脂フィルムの柔軟性が向上し、エンボス加工性に優れる。
なお、引張弾性率は、ISO 527:2012に従い、幅15mmに切り出したフィルムを試験片とし、温度23℃、引張速度100mm/分、チャック間距離100mmの条件で引張試験を行うことで測定される。
【0013】
本発明のアクリル樹脂フィルムの引張破断伸度は、製膜性及びフィルムの取り扱い性、エンボス加工性の点から、5%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、100%以上がさらに好ましい。引張破断伸度の上限は、例えば1000%以下である。
なお、引張破断伸度は、ISO 527:2012に従い、幅15mmに切り出したフィルムを試験片とし、温度23℃、引張速度100mm/分、チャック間距離100mmの条件で引張試験を行うことで測定される。
【0014】
本発明のアクリル樹脂フィルムの曇価は、20以下が好ましく、10以下がより好ましい。曇価が前記上限値以下であれば、例えば、ナンバープレートの表層に使用した際に下地となる化粧層の柄が曇ることがなく、意匠性に優れたナンバープレートを得ることができる。
【0015】
(アクリル樹脂層(I))
アクリル樹脂層(I)は、反応性基含有アクリル樹脂(A-1)を含有する層である。アクリル樹脂層(I)に含有される反応性基含有アクリル樹脂(A-1)は、1種でもよく、2種以上でもよい。なお、本発明において「アクリル樹脂」とは樹脂を構成する単量体単位のうち、5質量%以上が、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルからなる樹脂を意味するものとする。
【0016】
反応性基含有アクリル樹脂(A-1)は、アミノ基、メチロール基、イソシアネート基又はエポキシ基に対する反応性置換基を有する単量体(以下、「単量体(m1)」ともいう。)単位を含有するアクリル樹脂である。
【0017】
反応性基含有アクリル樹脂(A-1)が有する反応性置換基は、インキとの密着性を発現する。そのため、反応性基含有アクリル樹脂(A-1)を含有するアクリル樹脂層(I)は、印刷適合性に優れており、エンボス加工を行っても印刷層の割れや剥がれが抑制される。例えばナンバープレート用のインキ、具体的には、ウレタン系、エポキシ系、メラミン系の熱硬化インキを印刷し、加熱して硬化させることで、アクリル樹脂層(I)の表面に印刷層を密着させることができる。
【0018】
本発明のアクリル樹脂フィルムがアクリル樹脂フィルム1のような積層フィルムである場合、アクリル樹脂層(I)を被貼合体側とは反対に向けて表面層とし、アクリル樹脂層(II)を被貼合体に向け、アクリル樹脂層(I)の表面に印刷を施すことで、表面の印刷層の割れや剥がれを抑制できる。
【0019】
反応性基含有アクリル樹脂(A-1)は、単量体(m1)単位を含有していれば、特に限定されない。反応性基含有アクリル樹脂(A-1)は、単量体(m1)単位に加えて、反応性置換基を有しない単量体単位を有していてもよい。反応性置換基を有しない単量体としては、例えば、反応性置換基を有しない芳香族ビニル単量体(以下、「芳香族ビニル単量体(m2)」ともいう。)を例示できる。反応性基含有アクリル樹脂(A-1)は、単量体(m1)及び芳香族ビニル単量体(m2)以外の他の単量体単位を有していてもよい。
【0020】
単量体(m1)が有する反応性置換基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、酸無水物基、イミド基、エポキシ基を例示できる。反応性基含有アクリル樹脂(A-1)が有する反応性置換基は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0021】
反応性置換基の反応温度は、触媒の有無やpH値等によっても異なるが、50~200℃が好ましく、110~170℃がより好ましい。ナンバープレート用の熱硬化インキは、通常110~170℃の温度で硬化される。そのため、反応性置換基の反応温度が110~170℃であれば、アクリル樹脂層(I)に熱硬化インキを塗布して加熱することで、アクリル樹脂層(I)と熱硬化インキとを十分に接着させることができる。
【0022】
単量体(m1)としては、例えば、水酸基を有する単量体((メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等)、カルボキシル基を有する単量体((メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルオキシアルキルカルボン酸、(メタ)アクリロイルオキシ芳香族カルボン酸等)、アミノ基を有する単量体((メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル等)、アミド基を有する単量体((メタ)アクリル酸アルキルアミドアルキルエステル等)、酸無水物単量体(無水マレイン酸等)、マレイミド単量体(マレイミド、アルキルマレイミド等)、エポキシ基含有単量体(グリシジル(メタ)アクリレート等)を例示できる。反応性基含有アクリル樹脂(A-1)に用いる単量体(m1)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0023】
接着性の点から、単量体(m1)としては、水酸基を有する単量体、カルボキシル基を有する単量体、酸無水物基を有する単量体、又はエポキシ基を有する単量体が好ましい。また、酸無水物等の加水分解性部位を有さず、乳化重合、懸濁重合等の水系重合において効率的に重合体を製造できる点から、単量体(m1)としては、水酸基を有する単量体、カルボキシル基を有する単量体、又はエポキシ基を有する単量体がより好ましい。また、溶融成形時の架橋防止の点から、単量体(m)としては、水酸基を有する単量体がさらに好ましい。また、溶融成形時の架橋を特に低減できる点から、単量体(m1)としては、2級水酸基を有する単量体が特に好ましい。
【0024】
水酸基を有する単量体としては、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシ-1-メチルエチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸2-ヒドロキシ-1-メチルエチル、アクリル酸ヒドロキシブチルが好ましい。溶融成形時の架橋反応によってフィルム外観が不良となることを抑制できる点では、2級水酸基を有する、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピルがより好ましい。さらに、メタクリル酸メチルを始めとする他の単量体との共重合性が良好である点では、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピルが特に好ましい。
【0025】
反応性基含有アクリル樹脂(A-1)中の単量体(m1)単位の含有率は、反応性基含有アクリル樹脂(A-1)の総質量に対して、3質量%以上が好ましく、4質量%以上がさらに好ましく、10質量%以上が特に好ましい。単量体(m1)単位の含有率が前記下限値以上であれば、印刷層の接着性に優れる。また、反応性置換基の極性のために、ガソリン等の低極性溶剤との親和性が低下し、耐薬品性が向上する。一方、反応性基含有アクリル樹脂(A-1)中の単量体(m1)単位の含有率の上限は100質量%であるが、80質量%以下がより好ましく、30質量%以下が特に好ましい。単量体(m1)単位の含有率が80質量%以下であれば、反応性置換基による副反応を抑制しやすい。また、アクリル樹脂層(I)中の他の成分との相溶性が向上し、アクリル樹脂フィルムの外観が悪化や、曇価の増大を抑制しやすい。また、単量体(m1)が水溶性である場合には、非水溶性モノマーを併用することで水への溶解を抑制でき、乳化重合、懸濁重合等の水系重合において効率的に重合体を製造できる。
【0026】
芳香族ビニル単量体(m2)としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、o-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレンを例示できる。なかでも、重合性や重合体の耐久性の点から、スチレン、が好ましい。反応性基含有アクリル樹脂(A-1)に用いる芳香族ビニル単量体(m2)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0027】
反応性基含有アクリル樹脂(A-1)中の芳香族ビニル単量体(m2)単位の含有率は、小さい方が好ましく、0質量%でもよい。そのため、反応性基含有アクリル樹脂(A-1)の総質量に対して、0~3質量%が好ましく、0~1質量%がより好ましく、0~0.1質量%がさらに好ましい。芳香族ビニル単量体(m2)単位の含有率が前記上限値以下であれば、アクリル樹脂フィルム及びナンバープレートの耐候性が良好となる。
【0028】
単量体(m1)及び芳香族ビニル単量体(m2)以外の他の単量体(以下、「他の単量体(m3)」ともいう。)としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリルn-酸ブチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル系単量体を例示できる。なかでも、アクリル樹脂層(I)中の他の成分との相溶性、アクリル樹脂層(II)との密着性の点から、メタクリル酸メチルが好ましい。反応性基含有アクリル樹脂(A-1)に用いる他の単量体(m3)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0029】
反応性基含有アクリル樹脂(A-1)中の他の単量体(m3)単位の含有率は、反応性基含有アクリル樹脂(A-1)の総質量に対して、0質量%以上であり、なかでも20質量%以上であることが好ましい。一方、該含有率は、97質量%以下が好ましい。他の単量体(m3)単位の含有率が前記範囲内であれば、反応性置換基による架橋等の反応を抑制しやすい。
【0030】
反応性基含有アクリル樹脂(A-1)のガラス転移温度(Tg)は、60~120℃が好ましく、70~100℃がより好ましく、75~90℃が特に好ましい。Tgが前記範囲の下限値以上であれば、本発明のアクリル樹脂フィルムを使用したナンバープレートの耐熱性、耐水性、耐薬品性が良好となる。また、耐ブロッキング性が向上し、フィルムロールからの巻き出しが容易で取り扱い性に優れるうえ、ブロッキング跡による外観不良が生じにくくなり、アクリル樹脂フィルムの外観が向上する。Tgが前記範囲の上限値以下であれば、熱硬化インキの硬化時の温度が低温でも、熱硬化インキとアクリル樹脂層(I)との接着性がより良好となる。すなわち、アクリル樹脂フィルムに塗布した熱硬化インキを硬化させる際の条件が緩和される。
【0031】
なお、Tgは、反応性基含有アクリル樹脂(A-1)が共重合体、又はその混合物である場合、反応性基含有アクリル樹脂(A-1)を構成する各成分の単独重合体のTgの数値を用いて、以下のFox式から求めることができる。
1/(273+Tg)=Σ(wi/(273+Tgi))
前記式中、Tgは共重合体(又は、その混合物)のTg(℃)、wiは単量体iの質量分率、Tgiは単量体iの単独重合体のTg(℃)である。
【0032】
単独重合体のTgの数値としては、POLYMER HANDBOOK THIRD EDITION(WILEY INTERSAIENAE)に記載の数値、又は、モノマーメーカーのカタログ値を用いる。なお、単量体が架橋性単量体を含有する場合には、架橋性単量体を除いた単量体について、Tgを求めることとする。
【0033】
反応性基含有アクリル樹脂(A-1)の製造方法は、特に限定されず、例えば、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、溶液重合等の各種重合法を採用できる。ただし、単量体(m1)として、酸無水物、イミド構造を有する単量体を用いる場合には、重合時に加水分解が生じるため、懸濁重合や乳化重合などの水系重合では製造できない。重合時には、連鎖移動剤、その他の重合助剤等を使用してもよい。連鎖移動剤としては特に限定されないが、メルカプタン類が好ましい。
【0034】
アクリル樹脂層(I)は、反応性基含有アクリル樹脂(A-1)に加えて、反応性基含有アクリル樹脂(A-1)以外の他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、コアシェルゴム(A-2)、熱可塑性重合体(A-3)、添加剤(A-4)を例示できる。
【0035】
コアシェルゴム(A-2)としては、多層構造の粒子であればよく、内層(コア)としての弾性共重合体(a-1)を含む層の外側に、外層(シェル)としての硬質重合体(a-2)を含む層が形成された2層以上の多層構造のゴム粒子が好ましい。コアシェルゴム(A-2)は、弾性共重合体(a-1)を含む層と硬質重合体(a-2)を含む層との間に、中間重合体(a-3)を含む層を1層以上備えていてもよい。
コアシェルゴムの材質としては、アクリルゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム等を例示できる。なかでも、透明性や耐候性の点から、アクリルゴムが好ましい。
【0036】
弾性共重合体(a-1)としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む単量体組成物を重合して得られる重合体が好ましく、アクリル酸アルキルエステルを含む単量体組成物を重合して得られる重合体がより好ましい。
【0037】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数1~8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-オクチル等)、炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等)が好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0038】
弾性共重合体(a-1)には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外に、架橋性単量体を使用してもよい。架橋性単量体としては、例えば、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸1,3-ブチレングリコール、ジメタクリル酸1,4-ブチレングリコール、ジメタクリル酸プロピレングリコール、グラフト交叉剤を例示できる。グラフト交叉剤としては、例えば、α,β-不飽和カルボン酸又は不飽和ジカルボン酸のアリルエステル、メタリルエステル又はクロチルエステル;トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートを例示できる。架橋性単量体としては、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0039】
また、弾性共重合体(a-1)には、スチレン、アクリロニトリル等の他のビニル単量体を使用してもよい。他のビニル単量体としては、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0040】
弾性共重合体(a-1)中の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位の含有率は、弾性共重合体(a-1)の総質量に対して、80~100質量%が好ましい。弾性共重合体(a-1)中のアクリル酸アルキルエステル単位の含有率は、弾性共重合体(a-1)の総質量に対して、30~99.9質量%が好ましく、50~95質量%がより好ましい。弾性共重合体(a-1)中のメタクリル酸アルキルエステル単位の含有率は、弾性共重合体(a-1)の総質量に対して、0~69.9質量%が好ましく、0~40質量%がより好ましい。
【0041】
弾性共重合体(a-1)中の架橋性単量体単位の含有率は、弾性共重合体(a-1)の総質量に対して、0.1~10質量%が好ましく、0.5~5質量%がより好ましい。
弾性共重合体(a-1)中の他の単量体単位の含有率は、弾性共重合体(a-1)の総質量に対して、0~20質量%が好ましい。
【0042】
硬質重合体(a-2)としては、メタクリル酸アルキルエステルを少なくとも含み、必要に応じて、アクリル酸アルキルエステル、及び、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の他の単量体を含む単量体組成物を重合して得られる重合体が好ましい。硬質重合体(a-2)に用いるメタクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルが好ましい。硬質重合体(a-2)に用いるアクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数1~8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0043】
硬質重合体(a-2)中のメタクリル酸アルキルエステル単位の含有率は、硬質重合体(a-2)の総質量に対して、51~100質量%が好ましい。硬質重合体(a-2)中のアクリル酸アルキルエステル単位及び他の単量体単位の合計の含有率は、硬質重合体(a-2)の総質量に対して、0~49質量%が好ましい。
【0044】
中間重合体(a-3)としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを少なくとも含み、必要に応じて(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の他の単量体、架橋性単量体を含む単量体組成物を重合して得られる重合体が好ましい。中間重合体(a-3)に用いるメタクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルが好ましい。中間重合体(a-3)に用いるアクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数1~8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0045】
中間重合体(a-3)中のメタクリル酸アルキルエステル単位の含有率は、中間重合体(a-3)の総質量に対して、10~90質量%が好ましい。中間重合体(a-3)中のアクリル酸アルキルエステル単位の含有率は、中間重合体(a-3)の総質量に対して、10~90質量%が好ましい。中間重合体(a-3)中の他の単量体単位の含有率は、中間重合体(a-3)の総質量に対して、0~20質量%が好ましい。中間重合体(a-3)中の架橋性単量体単位の含有率は、中間重合体(a-3)の総質量に対して、0~10質量%が好ましい。
【0046】
コアシェルゴム(A-2)中の弾性共重合体(a-1)の含有率は、コアシェルゴム(A-2)の総質量に対して、10~90質量%が好ましく、20~70質量%がより好ましい。コアシェルゴム(A-2)中の硬質重合体(a-2)の含有率は、コアシェルゴム(A-2)の総質量に対して、10~90質量%が好ましく、30~70質量%がより好ましい。コアシェルゴム(A-2)中の中間重合体(a-3)の含有率は、コアシェルゴム(A-2)の総質量に対して、0~35質量%が好ましく、0~20質量%がより好ましい。
【0047】
コアシェルゴム(A-2)の平均粒子径は、0.01~0.5μmが好ましく、0.08~0.3μmがより好ましい。特に製膜性の点では、平均粒子径は0.08μm以上が好ましい。
アクリル樹脂層(I)に含有されるコアシェルゴム(A-2)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0048】
コアシェルゴム(A-2)の製造方法としては、特に限定されず、例えば、乳化重合法を採用できる。また、乳化重合後、外層の重合時に懸濁重合系に転換させる乳化懸濁重合を採用してもよい。
【0049】
熱可塑性重合体(A-3)は、反応性基含有アクリル樹脂(A-1)、コアシェルゴム(A-2)以外の熱可塑性重合体であり、フッ素系樹脂又はアクリル系樹脂が好ましい。フッ素系樹脂としてはフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、(メタ)アクリル酸フッ素化アルキルエステルを含む単量体を重合して得られる重合体が挙げられ、中でも、フッ化ビニリデンの単独重合体であるポリフッ化ビニリデン樹脂が好ましい。アクリル系樹脂としてはメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、及び、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の他の単量体を重合して得られる重合体がより好ましい。耐薬品性の観点からは、熱可塑性樹脂(A-3)はフッ素系樹脂であることが好ましい。
【0050】
熱可塑性重合体(A-3)に用いるフッ素系単量体としては、例えば、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、(メタ)アクリル酸フッ素化アルキルエステルを例示できる。これらの単量体は、1種でもよく、2種以上を併用してもよい。しかしながら、透明性及び耐熱性、耐薬品性に優れたフィルムが得られることから、フッ化ビニリデンを主な構成単位とする重合体が好ましく、フッ化ビニリデンの単独重合体であるポリフッ化ビニリデン樹脂が特に好ましい。
【0051】
ポリフッ化ビニリデン樹脂としては、アルケマ(株)製のKynar720(フッ化ビニリデンの含有率:100質量%、結晶融点:169℃)、Kynar710(フッ化ビニリデンの含有率:100質量%、結晶融点:169℃);(株)クレハ製のKFT#850(フッ化ビニリデンの含有率:100質量%、結晶融点:173℃);ソルベイスペシャリティポリマーズ(株)製のSolef1006(フッ化ビニリデンの含有率:100質量%、結晶融点:174℃)、Solef1008(フッ化ビニリデンの含有率:100質量%、結晶融点:174℃)が挙げられる。
【0052】
熱可塑性重合体(A-3)に用いるメタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルを例示できる。アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルを例示できる。他の単量体としては、例えば、スチレン等の芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドを例示できる。熱可塑性重合体(A-3)に用いるこれらの単量体は、1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
熱可塑性重合体(A-3)としては、炭素数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位が50~99.9質量%、アクリル酸アルキルエステル単位が0.1~50質量%、及び、他の単量体単位が0~49.9質量%の重合体(合計100質量%)が好ましい。
【0054】
熱可塑性重合体(A-3)の質量平均分子量は、10,000以上300,000以下が好ましい。質量平均分子量が下限値以上であれば、アクリル樹脂フィルムの取り扱い性に優れる。質量平均分子量が上限値以下であれば、製膜性が良好である。
アクリル樹脂層(I)に含有される熱可塑性重合体(A-3)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0055】
熱可塑性重合体(A-3)の製造方法は、特に限定されず、例えば、懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の各種重合法を採用できる。重合時に、連鎖移動剤、その他の重合助剤等を用いてもよい。連鎖移動剤は特に限定されないが、メルカプタン類が好ましい。
【0056】
添加剤(A-4)としては、特に限定されず、例えば、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃向上剤、発泡剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤を例示できる。アクリル樹脂層(I)に含有される添加剤(A-4)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0057】
アクリル樹脂層(I)は、印刷適合性の点では、反応性基含有アクリル樹脂(A-1)及びコアシェルゴム(A-2)の両方を含有することが好ましい。この場合、反応性基含有アクリル樹脂(A-1)が多いほど反応性置換基の含有量が増加し、印刷適合性が向上する。また、コアシェルゴム(A-2)が多いほど、アクリル樹脂層(I)内部の破壊が抑制されるため、印刷適合性が向上する。また、コアシェルゴム(A-2)が多いほど、アクリル樹脂層(I)の靭性が向上し、アクリル樹脂フィルムの取り扱い性が良好となる。
【0058】
鉛筆硬度が上昇して耐傷付き性が向上し、また溶融成形時の熱劣化によるゲル化物の生成が抑制されて異物が減少し、フィルム外観が良好となる点では、コアシェルゴム(A-2)が少ないほど好ましい。耐薬品性の点では、反応性基含有アクリル樹脂(A-1)及び、熱可塑性重合体(A-3)が多く、コアシェルゴム(A-2)が少ないほど好ましい。反応性基含有アクリル樹脂(A-1)が多いほど反応性置換基の含有量が増加し、樹脂の極性が向上するため、ガソリンやオイル等の薬品に対する耐性が向上する。反応性基含有アクリル樹脂(A-1)が多いほど、アクリル樹脂層(I)の表面の反応性置換基の量が増加して親水性が向上し、表面付着物が雨水により洗い流されやすくなり、防汚性が向上する。熱可塑性重合体(A-3)が多いほど、ガソリンやオイル等の薬品に対する耐性が向上する。
【0059】
アクリル樹脂層(I)としては、反応性基含有アクリル樹脂(A-1)、コアシェルゴム(A-2)及び熱可塑性重合体(A-3)の合計100質量%に対して、反応性基含有アクリル樹脂(A-1)を10~100質量%、コアシェルゴム(A-2)を0~90質量%、熱可塑性重合体(A-3)を0~90質量%含有し、かつ、反応性基含有アクリル樹脂(A-1)、コアシェルゴム(A-2)及び熱可塑性重合体(A-3)の合計100質量部に対して、添加剤(A-4)を0~50質量部含有する層が好ましい。
【0060】
アクリル樹脂層(I)においては、印刷適合性及び防汚性、耐薬品性、耐傷つき性の点では、反応性基含有アクリル樹脂(A-1)、コアシェルゴム(A-2)及び熱可塑性重合体(A-3)の合計100質量%に対して、反応性基含有アクリル樹脂(A-1)を10~90質量%、コアシェルゴム(A-2)を0~60質量%、熱可塑性重合体(A-3)を0~90質量%含有することが好ましく、反応性基含有アクリル樹脂(A-1)を20~90質量%、コアシェルゴム(A-2)を0~50質量%、熱可塑性重合体(A-3)を40~80質量%含有することがより好ましい。また、反応性基含有アクリル樹脂(A-1)、コアシェルゴム(A-2)及び熱可塑性重合体(A-3)の合計100質量部に対して、(A-4)を0.01~10質量部含有することが好ましく、添加剤(A-4)を0.1~5質量部含有することがより好ましい。
【0061】
アクリル樹脂層(I)のゲル分率は、0~90%が好ましく、5~80%がより好ましい。ゲル分率が高いほどフィルムの靭性が向上し、フィルムの取り扱い性や製膜性が改善する。また、ゲル分率が低いほど樹脂の熱劣化異物の生成が抑制され、フィルム外観が良好となる。フィルム靭性の点では、アクリル樹脂層(I)のゲル分率は、45~80%がさらに好ましく、50~80%が特に好ましい。また、フィルム外観及び耐薬品性の観点では、アクリル樹脂層(I)のゲル分率は、0~30%がさらに好ましく、0~5%が特に好ましい。
【0062】
アクリル樹脂層(I)の230℃、49N荷重におけるメルトフローレート(MFR)は、0.1~100g/10分が好ましく、0.5~50g/10分がより好ましく、2.0~15g/10分がさらに好ましい。アクリル樹脂層(I)のMFRが前記範囲の下限値以上であれば、押出成形における生産性が向上し、また、フィルムの表面平滑性が向上し外観品質が良好となる。アクリル樹脂層(I)のMFRが前記範囲の上限値以下であれば、押出成形における安定性が向上し、フィルムの膜厚精度が良好となる。
【0063】
(アクリル樹脂層(II))
アクリル樹脂層(II)は、コアシェルゴム(B-1)を含有する層である。コアシェルゴム(B-1)を含有するアクリル樹脂層(II)は、耐ストレス白化性及び柔軟性に優れる。そのため、アクリル樹脂層(I)に加えてアクリル樹脂層(II)を備えるアクリル樹脂フィルムとすることで、アクリル樹脂フィルムを貼り合わせたナンバープレートをエンボス加工した際の白化や剥離を抑制しやすくなる。
【0064】
コアシェルゴム(B-1)としては、アクリル樹脂層(I)に含有されるコアシェルゴム(A-2)と同じものを例示でき、好ましい態様も同じである。アクリル樹脂層(II)に含有されるコアシェルゴム(B-1)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0065】
アクリル樹脂層(II)は、コアシェルゴム(B-1)に加えて、コアシェルゴム(B-1)以外の他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、熱可塑性重合体(B-2)、添加剤(B-3)を例示できる。
【0066】
熱可塑性重合体(B-2)としては、アクリル樹脂層(I)に含有される熱可塑性重合体(A-3)と同じものを例示でき、好ましい態様も同じである。アクリル樹脂層(II)に含有される熱可塑性重合体(B-2)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0067】
添加剤(B-3)としては、アクリル樹脂層(I)に含有される添加剤(A-4)と同じものを例示でき、好ましい態様も同じである。アクリル樹脂層(II)に含有される添加剤(B-3)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0068】
アクリル樹脂層(II)としては、コアシェルゴム(B-1)と熱可塑性重合体(B-2)との合計100質量%に対して、コアシェルゴム(B-1)を5.5~100質量%、熱可塑性重合体(B-2)を0~94.5質量%含有し、かつ、コアシェルゴム(B-1)と熱可塑性重合体(B-2)との合計100質量部に対して、添加剤(B-3)を0~20質量部含有することが好ましい。
【0069】
アクリル樹脂層(II)中のコアシェルゴム(B-1)の含有量は、コアシェルゴム(B-1)と熱可塑性重合体(B-2)との合計100質量%に対して、5.5~100質量%が好ましく、10~100質量%がより好ましく、15~100質量%がさらに好ましい。コアシェルゴム(B-1)の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、アクリル樹脂層(II)に靭性がより付与され、アクリル樹脂フィルムの生産時にフィルム切れが起こりにくく、生産性が良好になる。また、アクリル樹脂フィルムの取り扱い性が良好である。
【0070】
アクリル樹脂層(II)中の熱可塑性重合体(B-2)の含有量は、コアシェルゴム(B-1)と熱可塑性重合体(B-2)との合計100質量%に対して、0~94.5質量%が好ましく、0~90質量%がより好ましく、0~85質量%がさらに好ましい。
【0071】
アクリル樹脂層(II)中の添加剤(B-3)の含有量は、コアシェルゴム(B-1)と熱可塑性重合体(B-2)との合計100質量部に対して、0~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましく、1~8質量部がさらに好ましい。
【0072】
本発明のアクリル樹脂フィルムの厚さは、5~100μmが好ましく、10~60μmがより好ましく、25~40μmがさらに好ましい。アクリル樹脂フィルムの厚さが前記範囲の下限値以上であれば、アクリル樹脂フィルムの製造が容易であり、ナンバープレートに充分な耐候性を付与しやすい。アクリル樹脂フィルムの厚さが前記範囲の上限値以下であれば、アクリル樹脂フィルムが適度な柔軟性を有するため、アクリル樹脂フィルムを貼り合わせたナンバープレートをエンボス加工した際の剥離を抑制しやすい。また、単位面積あたりの質量の点で、経済的に有利である。さらに、製膜性が安定してアクリル樹脂フィルムの製造が容易になる。
【0073】
アクリル樹脂層(I)の厚さは、0.1~99μmが好ましく、1~30μmがより好ましく、2~10μmがさらに好ましく、3~5μmが特に好ましい。アクリル樹脂層(I)の厚さが前記範囲の下限値以上であれば、印刷適合性及び耐薬品性に優れる。アクリル樹脂層(I)の厚さが前記範囲の上限値以下であれば、単位面積あたりの質量の点で、経済的に有利である。
【0074】
アクリル樹脂層(II)の厚さは、1~99.9μmが好ましく、2~50μmがより好ましく、3~30μmがさらに好ましい。アクリル樹脂層(II)の厚さが前記範囲の下限値以上であれば、製膜性が安定してアクリル樹脂フィルムの製造が容易になる。また、アクリル樹脂層(II)が厚いほど、アクリル樹脂層(II)に配合する紫外線吸収剤の濃度が低くても充分な耐候性を付与することができる。アクリル樹脂層(II)の厚さが前記範囲の上限値以下であれば、単位面積当たりの質量の点で、経済的に有利である。アクリル樹脂層(II)の厚さが前記範囲内であれば、充分な印刷適合性と耐候性を両立でき、工業的利用価値がさらに高いアクリル樹脂フィルムとなる。
【0075】
本発明のアクリル樹脂フィルムを製造する方法としては、特に限定されない。例えば、アクリル樹脂層(I)及びアクリル樹脂層(II)の積層フィルムとする場合、生産性及び膜厚安定性の点から、フィードブロックダイ又はマルチマニホールドダイを介した共押出法が好ましい。また、アクリル樹脂層(I)及びアクリル樹脂層(II)を、それぞれTダイを用いた溶融押出法等によってフィルム状に成形し、それらのフィルムを熱ラミネート法によって積層する方法を用いてもよい。アクリル樹脂層(I)及びアクリル樹脂層(II)のいずれか一方をフィルム状にし、その後に他方を溶融押出法によって積層する押出ラミネーション法を用いてもよい。溶融押出を行う場合には、アクリル樹脂層(I)及びアクリル樹脂層(II)を形成する樹脂組成物から表面欠陥の原因となる核や不純物を取り除くために、200メッシュ以上のスクリーンメッシュで溶融状態にある樹脂組成物を濾過しながら押出することもできる。
【0076】
アクリル樹脂層(I)の熱劣化を防止する点から、フィルム状に成形されたアクリル樹脂層(II)上に、アクリル樹脂層(I)を形成する樹脂組成物を含む溶液を塗布してアクリル樹脂層(I)を積層する塗工法を用いることが好ましい。例えば、アクリル樹脂層(I)を形成する樹脂組成物を有機溶媒等の溶媒に溶解させた溶液を、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等の印刷方法や、ブレードコート法、ロッドコート法等のコート法によってアクリル樹脂層(II)上に塗布し、加熱乾燥を行って溶媒を除去する方法を例示できる。なお、フィルム状に成形されたアクリル樹脂層(I)上に、アクリル樹脂層(II)を形成する樹脂組成物を含む溶液を塗布してアクリル樹脂層(II)を積層してもよい。
【0077】
[ナンバープレート]
本発明のナンバープレートは、本発明のアクリル樹脂フィルムを備えている。本発明のナンバープレートは、本発明のアクリル樹脂フィルムを備える以外は、公知の態様を採用できる。
【0078】
以下、本発明のナンバープレートの一例を示して説明する。
図3に示すように、実施形態のナンバープレート10は、ベースプレート12と、ベースプレート12の表面に設けられた接着層14と、接着層14と加飾層16を介して貼り付けられたアクリル樹脂フィルム1と、アクリル樹脂フィルム1上に設けられた印刷層18と、を備えている。
【0079】
ナンバープレート10において、アクリル樹脂フィルム1は、アクリル樹脂層(II)4がベースプレート12側に向けられ、アクリル樹脂層(I)3がベースプレート12側とは反対に向けられている。また、ナンバープレート10には、アクリル樹脂フィルム1側に向かって凸となるエンボス部20が形成されており、エンボス部20のアクリル樹脂層(I)3の表面に印刷層18が設けられている。
【0080】
ベースプレート12としては、特に限定されず、例えば、金属板(アルミニウム板等)、樹脂板(ポリカーボネート板等)を例示できる。
接着層14は、ナンバープレート10の文字以外の背景部分に絵柄、パターン等を形成するための層である。接着層14は、例えば、溶剤系インクやUV硬化型インクを用い、インクジェットプリンタ、スクリーン印刷、オフセット印刷等で形成できる。
【0081】
加飾層16を形成する接着剤としては、特に限定されず、例えば、ナンバープレートに使用される公知の接着剤を使用できる。
印刷層18を形成するインキとしては、ナンバープレート用の公知のインキを使用でき、例えば、ウレタン系、エポキシ系、メラミン系の熱硬化インキを例示できる。
【0082】
以上説明したように、本発明のアクリル樹脂フィルムは、アクリル樹脂層(I)を少なくとも有しいている。アクリル樹脂層(I)は特定の反応性置換基を有するため、ナンバープレートの登録番号等の印刷層に用いられる熱硬化インキに対する密着性に優れているため、本発明のアクリル樹脂フィルムは印刷適合性に優れている。また、本発明のアクリル樹脂フィルムは、引張弾性率が特定の範囲に制御され、充分な柔軟性を有しているため、エンボス加工性に優れており、柄入りのナンバープレートでエンボス加工を行ってもフィルムに割れや剥がれが生じにくく、白化も生じにくい。
【0083】
本発明のアクリル樹脂フィルムは透明性にも優れているため、柄入りのナンバープレートに適用した場合には、下地の柄を容易に視認することができる。また、本発明のアクリル樹脂フィルムは、溶融押出により製造が可能であり、取り扱い性も良好である。また、本発明のアクリル樹脂フィルムは、アクリル樹脂層(I)とアクリル樹脂層(II)の積層フィルムとすることで、柔軟なフィルムとしやすいうえ、耐候性を容易に向上させることができる。
【実施例0084】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。実施例において、「部」は「質量部」を表す。
【0085】
[略号]
実施例中の略号は以下の通りである。
MMA:メタクリル酸メチル
MA:アクリル酸メチル
BA:アクリル酸n-ブチル
St:スチレン
AMA:メタクリル酸アリル
HPMA:メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル
LPO:ラウリルパーオキサイド
RS610NA:モノ-n-ドデシルオキシテトラオキシエチレン燐酸ナトリウム(商品名:「フォスファノールRS-610NA」、東邦化学工業(株)製)
OTP:花王(株)製、「ぺレックスOT-P」(商品名)
nOM:n-オクチルメルカプタン
CHP:日油(株)製、「パークミルH」(商品名)
tBH:日油(株)製、「パーブチルH」(商品名)
LA-31:(株)ADEKA製、「アデカスタブLA-31RG」(商品名)
TV1600:BASF製、「Tinuvin1600」(商品名)
TV234:BASF製、「Tinuvin234」(商品名)
C2020:BASF製、「Chimassorb2020」(商品名)
R976:日本アエロジル(株)製、「AEROSIL R976」(商品名)
P551A:三菱ケミカル(株)製、「メタブレンP551A」(商品名)
L1000:三菱ケミカル(株)製、「メタブレンL1000」(商品名)
Irg1076:BASF製、「Irganox1076」(商品名)
T850:(株)クレハ製、「KFT#850」(商品名)
【0086】
[測定方法]
実施例における各種物性の測定は、以下の方法に従って実施した。
(1)全光線透過率、曇価
全光線透過率は、JIS K7361-1に準拠して測定した。曇価は、JIS K7136に準拠して測定した。
【0087】
(2)印刷適合性
ブロックイソシアネート成分としてデュラネートTPA-B80D(旭化成(株)製、固形分:80質量%、有効NCO:8.0質量%、酢酸ブチル及びブタノール)と、ポリオール成分として下記の成分(i)からなる重合体の酢酸ブチル溶液とを、NCO/OH比率が1.0となる比率で混合して、熱硬化インキを作成した。バーコーターを用いて、各例のアクリル樹脂フィルムのアクリル樹脂層(I)側に前記熱硬化インキを塗布し、20℃で18時間、次いで、60℃で1時間乾燥させた後、150℃で1時間加熱することで塗膜を硬化させた。硬化後の塗膜厚さは30μmであった。硬化後、20℃に冷却した塗膜に対し、カッターナイフによって、塗膜は貫通し、フィルムは貫通しない深さで、縦横に1mm間隔で直線状の切り込みを入れてマスを100個形成した。これら100個のマスにセロハンテープ(ニチバン(株)製)を貼り付けた後に剥がし、剥離していないマスの数を計数した。
(成分(i))
St 20.0部
メタクリル酸2-エチルヘキシル 23.2部
アクリル酸2-エチルエヘキシル 21.0部
メタクリル酸2-ヒドロキシエチル 34.8部
メタクリル酸 1.0部
【0088】
(3)エンボス加工性
各例のアクリル樹脂フィルムの、アクリル樹脂層(II)面に対し、粘着剤層と剥離ライナーからなる両面粘着テープ(日東電工(株)製、No.585)を貼り付け、粘着シート作成した、次いで、剥離ライナーを剥離し、粘着剤層側をナンバープレートのベースプレートに貼り付け、エンボス加工を行った後、以下の基準でエンボス加工性を評価した。
(評価基準)
○(良好):エンボス部でフィルムの割れ、剥がれ、白化などが見られない。
×(不良):エンボス部でフィルムの割れ、剥がれ、白化などが見られる。
【0089】
(4)アクリル樹脂フィルムの各層の厚さ
アクリル樹脂フィルムを適当な大きさに切り出し、反射分光膜厚計 FE3000(商品名、大塚電子(株)製)を用いて、アクリル樹脂層(I)及びアクリル樹脂層(II)の厚さを測定した。
【0090】
(5)引張試験
各例のアクリル樹脂フィルムから、製膜方向を長辺とする150mm×15mmの試験片に切り出し、オートグラフ引張試験機(商品名、島津製作所(株)製)を用いて、チャック間距離100mm、引張速度100mm/分にて引張試験を実施し、フィルムの引張弾性率及び引張破断伸度を測定した。
【0091】
[製造例1:コアシェルゴム(A-21)]
窒素雰囲気下、還流冷却器付き反応容器に脱イオン水153部を入れ、80℃に昇温した。下記の成分(ii)を添加し、撹拌しながら下記の成分(iii)を添加した。その後、1時間保持して重合を行い、重合体ラテックスを得た。
重合体ラテックスにソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1部を加えた。その後、15分間保持し、窒素雰囲気下、80℃で撹拌しながら下記の成分(iv)を添加した。その後、1時間保持して重合を行い、コアシェルゴム(A-21)のラテックスを得た。コアシェルゴム(A-21)の平均粒子径は0.12μmであった。このコアシェルゴム(A-21)のラテックスを、酢酸カルシウム水溶液を用いて凝析させ、濾過、水洗、乾燥してコアシェルゴム(A-21)を得た。
【0092】
(成分(ii))
ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.4部
硫酸第一鉄 0.00004部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.00012部
(成分(iii))
BA 50.9部
St 11.6部
AMA 0.56部
tBH 0.19部
RS610NA 1.0部
(成分(iv))
MMA 35.6部
MA 1.9部
tBH 0.056部
nOM 0.16部
RS610NA 0.25部
【0093】
[製造例2:反応性基含有アクリル樹脂(A-11)の製造]
撹拌機、還流冷却器、及び窒素ガス導入口等の付いた反応容器内に、以下の成分(v)を仕込んだ。容器内を充分に窒素ガスで置換した後、撹拌しながら75℃まで加熱し、窒素ガス気流中で重合反応を進行させた。2時間後に95℃に昇温してさらに60分保持して重合を完結させた。得られた重合体ビーズを、脱水、乾燥して反応性基含有アクリル樹脂(A-11)を得た。
(成分(v))
MMA 80部
BA 5部
HPMA 15部
nOM 0.25部
LPO 0.4部
MMA/メタクリル酸塩/メタクリル酸エチルスルホン酸塩の共重合体 0.02部
硫酸ナトリウム 0.3部
イオン交換水 145部
【0094】
[製造例3:コアシェルゴム(B-11)の製造]
撹拌機、冷却管、熱電対、窒素導入管を備えた重合容器内に、脱イオン水195部を投入後、以下に示す成分(vii)を投入し、60℃に昇温した。昇温後、脱イオン水5部、以下に示す成分(vi)を投入し、重合を開始した。ピーク温度確認後、15分間反応を継続させ、弾性重合体の重合を完結した。
続いて、以下に示す成分(viii)を120分間にわたって重合容器内に滴下した。その後、60分間反応を継続させ、第二弾性重合体の重合を完結した。続いて、以下に示す成分(ix)を120分間にわたって重合容器内に滴下し、60分間反応を継続させ、ラテックス状のゴム含有多段重合体を得た。
ラテックス状のゴム含有多段重合体を、酢酸カルシウム3.8部を含む70℃の熱水300部中に滴下して、ラテックスを凝析した。さらに、95℃に昇温して5分保持し、固化した。得られた凝析物を分離洗浄し、70℃で24時間乾燥して、粉体状のコアシェルゴム(B-11)を得た。
【0095】
(成分(vi))
ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.2部
硫酸第一鉄 0.0001部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.0003部
(成分(vii))
MMA 0.3部
BA 4.7部
AMA 0.082部
CHP 0.025部
OTP 1.0部
(成分(viii))
MMA 3.0部
BA 47.0部
AMA 0.82部
CHP 0.05部
(成分(ix))
MMA 40.5部
BA 4.5部
t-BH 0.061部
n-OM 0.3部
【0096】
[製造例4:コアシェルゴム(B-12)の製造]
撹拌機を備えた容器に脱イオン水8.5部を仕込んだ後、撹拌を行いながら以下に示す成分(xi)を加え、20分間撹拌して乳化液を調製した。
次に、冷却器付き重合容器内に、脱イオン水191.5部と、以下に示す成分(x)を投入し、70℃に昇温した。次いで、窒素下で撹拌しながら、調製した乳化液を8分間にわたって重合容器内に滴下した後、15分間反応を継続させた。続いて、以下に示す成分(xii)を、90分間にわたって前記重合容器内に滴下した後、60分間反応を継続させ、弾性共重合体のラテックスを得た。なお、弾性共重合体単独のTgは-48℃であった。
【0097】
続いて、以下に示す成分(xiii)を、45分間にわたって前記重合容器内に滴下した後、60分間反応を継続させ、弾性共重合体の上に中間重合体を形成した。なお、中間重合体単独のTgは20℃であった。
続いて、以下に示す成分(xiv)を、140分間にわたって前記重合容器内に滴下した後、60分間反応を継続させ、中間重合体の上に硬質重合体を形成した。以上の工程により、コアシェルゴム(B-12)100部を含むラテックスを得た。なお、硬質重合体単独のTgは84℃であった。また、重合後に測定したコアシェルゴム(B-12)の平均粒子径は0.12μmであった。
このコアシェルゴム(B-12)のラテックスを、酢酸カルシウムを用いて凝析、凝集、固化反応を行い、ろ過、水洗し、乾燥してコアシェルゴム(B-12)を得た。
【0098】
(成分(x))
ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.2部
硫酸第一鉄 0.0001部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.0003部
(成分(xi))
MMA 0.3部
BA 4.5部
AMA 0.05部
BDMA 0.2部
CHP 0.025部
RS-610NA 1.1部
(成分(xii))
MMA 1.5部
BA 22.5部
AMA 0.25部
BDMA 1.0部
CHP 0.016部
(成分(xiii))
MMA 6.0部
BA 4.0部
AMA 0.075部
CHP 0.013部
(成分(xiv))
MMA 55.2部
BA 4.8部
n-OM 0.22部
t-BH 0.075部
【0099】
[製造例5:樹脂組成物(A1)の製造]
製造例1で得たコアシェルゴム(A-21)を40部と、製造例2で得た反応性基含有アクリル樹脂(A-11)を60部と、P551Aを2部と、LA-31を2.1部と、C2020を0.45部と、Irg1076を0.1部と、を予備混合し、35mmφのスクリュ型2軸押出機(L/D=26)を用いて、シリンダー温度200℃~240℃、ダイ温度240℃の条件下で溶融混練し、ペレット化して、樹脂組成物(A1)を得た。
【0100】
[製造例6]
製造例2で得た反応性基含有アクリル樹脂(A-11)を32部と、T850を68部と、Irg1076を0.1部と、を予備混合し、35mmφのスクリュ型2軸押出機(L/D=26)を用いて、シリンダー温度200℃~240℃、ダイ温度240℃の条件下で溶融混練し、ペレット化して、樹脂組成物(A2)を得た。
【0101】
[製造例7、8]
表1に示す組成に変更した以外は、製造例5と同様にして樹脂組成物(B1)、(B2)を得た。
【0102】
【0103】
[実施例1]
製造例5で得た樹脂組成物(A1)と、製造例7で得た樹脂組成物(B1)とを、それぞれ80℃で一昼夜乾燥した。シリンダー温度を240℃に設定した30mmφの押出機で樹脂組成物(A1)を可塑化した。また、シリンダー温度を240℃に設定した40mmφの押出機で樹脂組成物(B1)を可塑化した。次いで、240℃に設定した2種2層用マルチマニホールドダイを用い、アクリル樹脂層(I)とアクリル樹脂層(II)とを有する厚さ50μmのアクリル樹脂フィルム(積層フィルム)を製膜した。アクリル樹脂層(I)の厚さは5μm、アクリル樹脂層(II)の厚さは45μmであった。
【0104】
[実施例2]
樹脂組成物(A1)に代えて、樹脂組成物(A2)を用いた以外は、実施例1と同様にしてアクリル樹脂フィルム(積層フィルム)を製膜した。
【0105】
[比較例1]
製造例7で得た樹脂組成物(B1)を80℃で一昼夜乾燥した。シリンダー温度を240℃に設定した40mmφの押出機で樹脂組成物(B1)を可塑化し、240℃に設定した単層Tダイで、厚さ50μmのアクリル樹脂フィルム(単層フィルム)を製膜した。
【0106】
[比較例2]
樹脂組成物(B1)に代えて、樹脂組成物(B2)を用いた以外は、実施例1と同様にしてアクリル樹脂フィルム(積層フィルム)を製膜した。
【0107】
各例のアクリル樹脂フィルムの構成、及び評価結果を表2に示す。なお、表2の印刷適合性の欄において、「100/100」は、100個のマスのうちの剥がれていないマスの数が100個であることを意味し、「0/100」は、100個すべてのマスが剥がれたことを意味する。
【0108】
【0109】
表2に示すように、アクリル樹脂層(I)を有し、引張弾性率が1000MPa以下である実施例1、2のアクリル樹脂フィルムは、柔軟でエンボス加工性に優れるうえ、印刷適合性にも優れていた。一方、アクリル樹脂層(I)を有しない比較例1のアクリル樹脂フィルムは印刷適合性が不良であった。また、比較例2のアクリル樹脂フィルムは、引張弾性率が1000MPaを超えており、エンボス加工性に劣っていた。
1,2…アクリル樹脂フィルム、3…アクリル樹脂層(I)、4…アクリル樹脂層(II)、10…ナンバープレート、12…ベースプレート、14…接着層、16…加飾層、18…印刷層、20…エンボス部。