(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136698
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置およびそのメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20220913BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20220913BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20220913BHJP
C23C 16/50 20060101ALI20220913BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/302 101C
C23C16/44 B
C23C16/50
H05H1/46 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036428
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】森川 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大地
(72)【発明者】
【氏名】土居 謙太
(72)【発明者】
【氏名】中村 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】恩地 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 実
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
2G084BB01
2G084BB25
2G084BB30
2G084BB32
2G084CC03
2G084CC09
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2G084DD03
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2G084FF40
4K030CA04
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4K030EA05
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4K030FA01
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4K030LA15
5F004BB13
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5F045EH20
(57)【要約】
【課題】。
【解決手段】プラズマ処理装置10であって、減圧した内部で被処理体Sのプラズマ処理をおこなうチャンバ11と、被処理体を載置する平板状の内部電極12と、チャンバの上蓋13を形成する誘電体板を挟んで内部電極と対向しチャンバ外に配置された螺旋状の外部電極E2,E3と、外部電極に交流電圧を印加するプラズマ形成電源B,Cと、上蓋のガス導入口15からチャンバ内にプロセスガスGを導入するガス導入手段100と、ガス導入手段としてガス導入口を貫通するノズル110と、ノズルを覆ってノズルの周囲で上蓋に密着するシールシールド120と、ノズルとシールシールドとの間および上蓋とシールシールドとの間をシールするシール部160と、シール部によって形成されたシール空間170を減圧する減圧手段150と、を備え、減圧手段によってシール空間を減圧してシールシールドによってノズルを上蓋に押圧して位置設定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置であって、
内部の減圧が可能で、前記内部で被処理体に対してプラズマ処理されるように構成されるチャンバと、
前記チャンバ内に配され、前記被処理体を載置する平板状の内部電極と、
前記チャンバ外に配置され、前記チャンバの上蓋を形成する誘電体板を挟んで、前記内部電極と対向するように配置された螺旋状の外部電極と、
前記外部電極に対して、所定の周波数の交流電圧を印加するプラズマ形成電源と、
前記上蓋に配置されたガス導入口から、前記チャンバ内にプロセスガスを導入するガス導入手段と、
前記ガス導入手段として前記ガス導入口を貫通するノズルと、
前記ノズルを覆って前記ノズルの周囲で前記上蓋に密着するシールシールドと、
前記ノズルと前記シールシールドとの間および前記上蓋と前記シールシールドとの間をシールするシール部と、
前記シール部によって前記ノズルと前記シールシールドとの間および前記上蓋と前記シールシールドとの間に形成されたシール空間を減圧する減圧手段と、
を備え、
前記減圧手段によって前記シール空間を減圧して前記シールシールドによって前記ノズルを前記上蓋に押圧して位置設定する、
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記ノズルが、前記ガス導入口を貫通する貫通部と、前記貫通部から径方向外側に向けて拡径されて前記上蓋の外部表面に接触するフランジ部を有し、
前記シール空間の減圧時に、前記フランジ部が前記上蓋の外部表面に接触するとともに前記シールシールドが前記フランジ部に接触する、
ことを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記シールシールドが、前記シール空間の減圧時に、前記フランジ部に接触するシールフランジ部と、前記シールフランジ部の外縁に前記フランジ部の径方向外側位置で前記上蓋の外部表面に接触する外周端部と、を有する、
ことを特徴とする請求項2記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記シールシールドには、前記シール空間と前記減圧手段とを接続する減圧接続部が設けられる、
ことを特徴とする請求項3記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記シール部が、
前記シールフランジ部と前記フランジ部とが接する位置において前記減圧接続部よりも径方向内側に設けられる内周表面シール部と、
前記外周端部と前記上蓋とが接する位置において前記減圧接続部よりも径方向外側に設けられる外周シール部と、
前記フランジ部と前記上蓋とが接する位置において前記減圧接続部よりも径方向内側に設けられる内周裏面シール部と、
を有する、
ことを特徴とする請求項4記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記シールシールドの外周に接して、前記ガス導入手段と前記外部電極との位置決めをおこなう位置決めリングを有する、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記シールシールドを覆い前記位置決めリングに固定されるガイドリングを有する、
ことを特徴とする請求項6記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記減圧手段が、前記チャンバ内を減圧する排気手段に接続可能である、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記上蓋には、前記シールシールドが接する凹部が前記ガス導入口の周りに設けられ、前記シールシールドが前記外部電極から前記ノズルをシールド可能である、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記シールシールドが前記外部電極からシールド可能なシールド材から構成される、
ことを特徴とする請求項9記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
内部の減圧が可能で、前記内部で被処理体に対してプラズマ処理されるように構成されるチャンバと、
前記チャンバ内に配され、前記被処理体を載置する平板状の内部電極と、
前記チャンバ外に配置され、前記チャンバの上蓋を形成する誘電体板を挟んで、前記内部電極と対向するように配置された螺旋状の外部電極と、
前記外部電極に対して、所定の周波数の交流電圧を印加するプラズマ形成電源と、
前記上蓋に配置されたガス導入口から、前記チャンバ内にプロセスガスを導入するガス導入手段と、
前記ガス導入手段として前記ガス導入口を貫通するノズルと、
前記ノズルを覆って前記ノズルの周囲で前記上蓋に密着するシールシールドと、
前記ノズルと前記シールシールドとの間および前記上蓋と前記シールシールドとの間をシールするシール部と、
前記シール部によって前記ノズルと前記シールシールドとの間および前記上蓋と前記シールシールドとの間に形成されたシール空間を減圧する減圧手段と、
前記シールシールドの外周に接して、前記ガス導入手段と前記外部電極との位置決めをおこなう位置決めリングと、
を備え、
前記ノズルが、前記ガス導入口を貫通する貫通部と、前記貫通部から径方向外側に向けて拡径されて前記上蓋の外部表面に接触するフランジ部を有し、
前記シールシールドが、前記フランジ部の径方向外側位置で前記上蓋の外部表面に接触する外周端部と、前記シール空間と前記減圧手段とを接続する減圧接続部と、を有するプラズマ処理装置におけるメンテナンス方法であって、
前記ノズルを前記ガス導入口に貫通させ、前記シールシールドを前記フランジ部に被せて、
前記減圧接続部を介して前記シール空間を前記減圧手段によって減圧し、前記シールシールドによって前記ノズルを前記上蓋に押圧するガス導入手段固定工程と、
前記シールシールドに前記位置決めリングを嵌め合わせて前記ノズルと前記外部電極との位置あわせをするセンタリング工程と、
を有する、
ことを特徴とするプラズマ処理装置のメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマ処理装置およびそのメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライエッチング法により半導体基板に、深溝のトレンチ構造や、アスペクト比(貫通孔の深さ/貫通孔の開口径)の大きな貫通孔などを形成するため、らせん状のアンテナ構造から形成される対向電極を備えたプラズマ処理装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1記載の装置では、らせん状のアンテナ14の中央にガスを供給するガス導入口15が設けられている。ガス導入の詳細としては、プラズマ処理チャンバの構成要素が知られている(特許文献2)。
【0004】
特許文献2記載におけるガス導入では、例えば、石英窓15にボルト20で固定されている。また、RFシールド18により、ガス注入器16の内部でプラズマが形成されないようにシールドしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/114232号
【特許文献2】特許第6215217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、石英窓にボルトによる固定をおこなうと、プラズマ形成時の熱応力によりクラックが発生する等の不具合の可能性があり、これを回避したいという要求があった。
また、プラズマ形成空間であるチャンバへのガス導入と、アンテナからのRF印加との位置設定は、形成されるプラズマ状態への影響が極めて大きい。このため、成膜状態等へのプラズマ処理条件の正確性を維持するために、ガス導入位置とRF印加位置との正確性は、プラズマ形成制御への条件設定としての極めて高い正確性が要求されている。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成しようとするものである。
1.ガス導入位置とRF印加位置との正確性を維持可能とすること。
2.プラズマ形成状態の正確性および再現性を維持すること。
3.熱応力による不具合発生を回避すること。
4.ガス漏洩をより一層防止すること。
5.ノズル内へのRFシールドを少ない部品点数でおこなうこと。
6.メンテナンス等における装置の組み立てに必要な作業時間を短縮すること。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプラズマ処理装置は、
プラズマ処理装置であって、
内部の減圧が可能で、前記内部で被処理体に対してプラズマ処理されるように構成されるチャンバと、
前記チャンバ内に配され、前記被処理体を載置する平板状の内部電極と、
前記チャンバ外に配置され、前記チャンバの上蓋を形成する誘電体板を挟んで、前記内部電極と対向するように配置された螺旋状の外部電極と、
前記外部電極に対して、所定の周波数の交流電圧を印加するプラズマ形成電源と、
前記上蓋に配置されたガス導入口から、前記チャンバ内にプロセスガスを導入するガス導入手段と、
前記ガス導入手段として前記ガス導入口を貫通するノズルと、
前記ノズルを覆って前記ノズルの周囲で前記上蓋に密着するシールシールドと、
前記ノズルと前記シールシールドとの間および前記上蓋と前記シールシールドとの間をシールするシール部と、
前記シール部によって前記ノズルと前記シールシールドとの間および前記上蓋と前記シールシールドとの間に形成されたシール空間を減圧する減圧手段と、
を備え、
前記減圧手段によって前記シール空間を減圧して前記シールシールドによって前記ノズルを前記上蓋に押圧して位置設定する、
ことにより上記課題を解決した。
本発明のプラズマ処理装置は、
前記ノズルが、前記ガス導入口を貫通する貫通部と、前記貫通部から径方向外側に向けて拡径されて前記上蓋の外部表面に接触するフランジ部を有し、
前記シール空間の減圧時に、前記フランジ部が前記上蓋の外部表面に接触するとともに前記シールシールドが前記フランジ部に接触する、
ことができる。
本発明のプラズマ処理装置は、
前記シールシールドが、前記シール空間の減圧時に、前記フランジ部に接触するシールフランジ部と、前記シールフランジ部の外縁に前記フランジ部の径方向外側位置で前記上蓋の外部表面に接触する外周端部と、を有する、
ことができる。
本発明のプラズマ処理装置は、
前記シールシールドには、前記シール空間と前記減圧手段とを接続する減圧接続部が設けられる、
ことができる。
本発明のプラズマ処理装置は、
前記シール部が、
前記シールフランジ部と前記フランジ部とが接する位置において前記減圧接続部よりも径方向内側に設けられる内周表面シール部と、
前記外周端部と前記上蓋とが接する位置において前記減圧接続部よりも径方向外側に設けられる外周シール部と、
前記フランジ部と前記上蓋とが接する位置において前記減圧接続部よりも径方向内側に設けられる内周裏面シール部と、
を有する、
ことができる。
本発明のプラズマ処理装置は、
前記シールシールドの外周に接して、前記ガス導入手段と前記外部電極との位置決めをおこなう位置決めリングを有する、
ことができる。
本発明のプラズマ処理装置は、
前記シールシールドを覆い前記位置決めリングに固定されるガイドリングを有する、
ことができる。
本発明のプラズマ処理装置は、
前記減圧手段が、前記チャンバ内を減圧する排気手段に接続可能である、
ことができる。
本発明のプラズマ処理装置は、
前記上蓋には、前記シールシールドが接する凹部が前記ガス導入口の周りに設けられ、前記シールシールドが前記外部電極から前記ノズルをシールド可能である、
ことができる。
本発明のプラズマ処理装置は、
前記シールシールドを前記外部電極からシールド可能なシールド材から構成される
ことができる。
本発明のプラズマ処理装置のメンテナンス方法は、
内部の減圧が可能で、前記内部で被処理体に対してプラズマ処理されるように構成されるチャンバと、
前記チャンバ内に配され、前記被処理体を載置する平板状の内部電極と、
前記チャンバ外に配置され、前記チャンバの上蓋を形成する誘電体板を挟んで、前記内部電極と対向するように配置された螺旋状の外部電極と、
前記外部電極に対して、所定の周波数の交流電圧を印加するプラズマ形成電源と、
前記上蓋に配置されたガス導入口から、前記チャンバ内にプロセスガスを導入するガス導入手段と、
前記ガス導入手段として前記ガス導入口を貫通するノズルと、
前記ノズルを覆って前記ノズルの周囲で前記上蓋に密着するシールシールドと、
前記ノズルと前記シールシールドとの間および前記上蓋と前記シールシールドとの間をシールするシール部と、
前記シール部によって前記ノズルと前記シールシールドとの間および前記上蓋と前記シールシールドとの間に形成されたシール空間を減圧する減圧手段と、
前記シールシールドの外周に接して、前記ガス導入手段と前記外部電極との位置決めをおこなう位置決めリングと、
を備え、
前記ノズルが、前記ガス導入口を貫通する貫通部と、前記貫通部から径方向外側に向けて拡径されて前記上蓋の外部表面に接触するフランジ部を有し、
前記シールシールドが、前記フランジ部の径方向外側位置で前記上蓋の外部表面に接触する外周端部と、前記シール空間と前記減圧手段とを接続する減圧接続部と、を有するプラズマ処理装置におけるメンテナンス方法であって、
前記ノズルを前記ガス導入口に貫通させ、前記シールシールドを前記フランジ部に被せて、
前記減圧接続部を介して前記シール空間を前記減圧手段によって減圧し、前記シールシールドによって前記ノズルを前記上蓋に押圧するガス導入手段固定工程と、
前記シールシールドに前記位置決めリングを嵌め合わせて前記ノズルと前記外部電極との位置あわせをするセンタリング工程と、
を有する、
ことができる。
【0009】
本発明のプラズマ処理装置は、
プラズマ処理装置であって、
内部の減圧が可能で、前記内部で被処理体に対してプラズマ処理されるように構成されるチャンバと、
前記チャンバ内に配され、前記被処理体を載置する平板状の内部電極と、
前記チャンバ外に配置され、前記チャンバの上蓋を形成する誘電体板を挟んで、前記内部電極と対向するように配置された螺旋状の外部電極と、
前記外部電極に対して、所定の周波数の交流電圧を印加するプラズマ形成電源と、
前記上蓋に配置されたガス導入口から、前記チャンバ内にプロセスガスを導入するガス導入手段と、
前記ガス導入手段として前記ガス導入口を貫通するノズルと、
前記ノズルを覆って前記ノズルの周囲で前記上蓋に密着するシールシールドと、
前記ノズルと前記シールシールドとの間および前記上蓋と前記シールシールドとの間をシールするシール部と、
前記シール部によって前記ノズルと前記シールシールドとの間および前記上蓋と前記シールシールドとの間に形成されたシール空間を減圧する減圧手段と、
を備え、
前記減圧手段によって前記シール空間を減圧して前記シールシールドによって前記ノズルを前記上蓋に押圧して位置設定する。
これにより、石英等の誘電体板にヘリサート等を形成してボルト等によるネジ止めをおこなうことなくガス導入手段を上蓋に固定することが可能となる。したがって、上蓋に対するノズルおよびシールシールドの位置決めおよび固定を減圧手段による減圧をおこなうだけで何回でも繰り返し、また、正確性を担保して、かつ、確実に固定をおこなうことができる。これにより、ヘリサート等に起因して、プラズマ形成時の熱応力によるクラック発生などの不具合が生じることがない。
また、ノズルを石英等から構成することにより、フッ素系等のガスを用いるプラズマ処理におけるプラズマ形成状態の正確性を維持することが可能となる。同時に、外部電源からチャンバ内部に供給されるRF(高周波)電力をシールシールドによってノズルに対してシールドし、ノズル内でプラズマが形成されてしまうことを防止できる。
【0010】
本発明のプラズマ処理装置は、
前記ノズルが、前記ガス導入口を貫通する貫通部と、前記貫通部から径方向外側に向けて拡径されて前記上蓋の外部表面に接触するフランジ部を有し、
前記シール空間の減圧時に、前記フランジ部が前記上蓋の外部表面に接触するとともに前記シールシールドが前記フランジ部に接触する。
これにより、貫通部がガス導入孔を貫通してフランジ部が上蓋の外部表面に当接した状態で、シールシールドと上蓋とに挟持されることで、ノズルの位置設定およびノズルの上蓋への固定をおこなうことができる。また、シール空間を減圧するだけで、シースシールドによってフランジ部を上蓋の外部表面に向けて押圧し、フランジ部と上蓋の外部表面とが接触して互いに押圧した状態となることにより、ノズルと上蓋とを互いに固定することが可能である。したがって、ヘリサート等を設ける必要がなく、石英等からなる上蓋に不必要な熱応力が作用してクラック発生などの不具合が発生することを防止できる。
【0011】
本発明のプラズマ処理装置は、
前記シールシールドが、前記シール空間の減圧時に、前記フランジ部に接触するシールフランジ部と、前記シールフランジ部の外縁に前記フランジ部の径方向外側位置で前記上蓋の外部表面に接触する外周端部と、を有する。
これにより、シールフランジ部とその外縁の外周端部によってフランジ部を覆い、フランジ部をシール可能とするとともに、外周端部が上蓋の外部表面に接触することで、外周端部と上蓋の外部表面とを密閉してシール空間を形成することが可能となる。同時に、シール空間の減圧時にシールフランジ部がフランジ部に接触するとともに押圧して、フランジ部を上蓋に押圧固定することが可能となる。
【0012】
本発明のプラズマ処理装置は、
前記シールシールドには、前記シール空間と前記減圧手段とを接続する減圧接続部が設けられる。
これにより、減圧接続部からシール空間を減圧した状態で、ノズルおよびシールシールドの位置固定、および、外部電極との位置設定をおこなった状態を維持することができる。これによって、シール空間を減圧した状態を維持しているので、ノズルおよび上蓋等のクラック発生などによりチャンバ内部からのガスが漏洩しそうになった場合、シール空間および減圧接続部を介して、これを吸引して、チャンバ内部から外部にガスが漏洩することを二重に防止することができる。
【0013】
本発明のプラズマ処理装置は、
前記シール部が、
前記シールフランジ部と前記フランジ部とが接する位置において前記減圧接続部よりも径方向内側に設けられる内周表面シール部と、
前記外周端部と前記上蓋とが接する位置において前記減圧接続部よりも径方向外側に設けられる外周シール部と、
前記フランジ部と前記上蓋とが接する位置において前記減圧接続部よりも径方向内側に設けられる内周裏面シール部と、
を有する。
これにより、それぞれのシール部と、内周表面シール部よりも径方向外側となるシールフランジ部の上蓋に対向する面と、シールフランジ部に隣接する外周端部の内周面と、外周シール部よりも径方向内側となる外周端部の上蓋に対向する面と、内周表面シール部よりも径方向外側となるフランジ部の外部に向いた面と、フランジ部の外周面と、内周裏面シール部よりも径方向外側となるフランジ部の上蓋に対向する面と、外周シール部よりも径方向内側で内周裏面シール部よりも径方向外側となる上蓋の表面と、で囲まれたシール空間を密閉するとともに、減圧接続部に接続された減圧手段によって、シール空間を減圧することが可能となる。
同時に、内周表面シール部と外周シール部と内周裏面シール部とはいずれも、シール空間の減圧によってそれぞれ押しつけられて変形し、密閉に必要なシール状態を維持することができる。
【0014】
本発明のプラズマ処理装置は、
前記シールシールドの外周に接して、前記ガス導入手段と前記外部電極との位置決めをおこなう位置決めリングを有する。
これにより、外部電極の位置決めをおこなう位置決めリングをシールシールドの外周と一致するように嵌め込むことにより、上蓋の表面に沿った方向におけるシールシールドと外部電極との位置決めをおこなうことができる。これによって、上蓋の表面に沿った方向におけるノズルと外部電極との位置決めをおこなって、ガス導入手段からのチャンバ内部へのガス供給位置と、外部電極からのRF印加位置との中心を一致させることが可能となり、プラズマ形成状態を中心に対して対称に制御して、プラズマ処理の制御性を向上することが可能となる。
ここで、位置決めリングには、外部電極を上蓋に対して所定の位置に配置するために位置設定をおこなう構成、たとえは、らせん状に多重に巻回された外部電極を径方向に延在して支持する支持径部等が接続されていることができる。
【0015】
本発明のプラズマ処理装置は、
前記シールシールドを覆い前記位置決めリングに固定されるガイドリングを有する。
これにより、ノズルとシールシールドとの位置決めをして、これらに対して位置決めシリングおよび接続された外部電極の位置決めをおこなって、これらをガイドリングによって固定することで、ガス導入手段と外部電極との一固定をおこなうことが可能となる。したがって、ガス導入手段と外部電極との位置再現性を向上することが可能となる。
【0016】
本発明のプラズマ処理装置は、
前記減圧手段が、前記チャンバ内を減圧する排気手段に接続可能である。
これにより、ガス導入手段の位置設定、つまり、ノズルとシールシールドとの固定のためにシール空間を減圧する際に、チャンバ内を減圧する際に用いられる排気手段を共通して用いることができる。このため、部品点数を削減して装置構成を簡単にするとともに、チャンバの減圧中には、ノズルとシールシールドとの故知位置が変化しないようにすることもできる。
【0017】
本発明のプラズマ処理装置は、
前記上蓋には、前記シールシールドが接する凹部が前記ガス導入口の周りに設けられ、前記シールシールドが前記外部電極から前記ノズルをシールド可能である。
これにより、ノズルの貫通部をガス導入口に挿入し、および、ノズルのフランジ部とシースシールドの外周端部を凹部の底部に接触させることによって、アライメントをおこなうための位置設定をすることができる。さらに、シールシールドの外周端部が上蓋の厚さ方向における凹部の中に位置していることにより、上蓋の外部表面に接するかそれよりもチャンバ内部よりも離間するつまり外側に位置する外部電極から供給されるRF電力がノズル内に印加されて、ノズル内部でプラズマが形成されてしまうことを防止できる。
【0018】
本発明のプラズマ処理装置は、
前記シールシールドが前記外部電極からシールド可能なシールド材から構成される。
例えば、シールド材として、鉄、銅、アルミニウム等、あるいはこれらの合金、SUSなどの金属から構成されることにより、外部電極からノズルへと至るRFをシールフラ二部と外周端部とでシールドすることができる。
つまり、本発明のプラズマ処理装置は、
シールシールドによって、ガス導入手段の固定、ガス漏洩の防止、ノズルへのRFシールド、という三つの機能を同時に呈することが可能となる。
【0019】
本発明のプラズマ処理装置のメンテナンス方法は、
内部の減圧が可能で、前記内部で被処理体に対してプラズマ処理されるように構成されるチャンバと、
前記チャンバ内に配され、前記被処理体を載置する平板状の内部電極と、
前記チャンバ外に配置され、前記チャンバの上蓋を形成する誘電体板を挟んで、前記内部電極と対向するように配置された螺旋状の外部電極と、
前記外部電極に対して、所定の周波数の交流電圧を印加するプラズマ形成電源と、
前記上蓋に配置されたガス導入口から、前記チャンバ内にプロセスガスを導入するガス導入手段と、
前記ガス導入手段として前記ガス導入口を貫通するノズルと、
前記ノズルを覆って前記ノズルの周囲で前記上蓋に密着するシールシールドと、
前記ノズルと前記シールシールドとの間および前記上蓋と前記シールシールドとの間をシールするシール部と、
前記シール部によって前記ノズルと前記シールシールドとの間および前記上蓋と前記シールシールドとの間に形成されたシール空間を減圧する減圧手段と、
前記シールシールドの外周に接して、前記ガス導入手段と前記外部電極との位置決めをおこなう位置決めリングと、
を備え、
前記ノズルが、前記ガス導入口を貫通する貫通部と、前記貫通部から径方向外側に向けて拡径されて前記上蓋の外部表面に接触するフランジ部を有し、
前記シールシールドが、前記フランジ部の径方向外側位置で前記上蓋の外部表面に接触する外周端部と、前記シール空間と前記減圧手段とを接続する減圧接続部と、を有するプラズマ処理装置におけるメンテナンス方法であって、
前記ノズルを前記ガス導入口に貫通させ、前記シールシールドを前記フランジ部に被せて、
前記減圧接続部を介して前記シール空間を前記減圧手段によって減圧し、前記シールシールドによって前記ノズルを前記上蓋に押圧するガス導入手段固定工程と、
前記シールシールドに前記位置決めリングを嵌め合わせて前記ノズルと前記外部電極との位置あわせをするセンタリング工程と、
を有する。
これにより、ガス導入手段固定工程において、減圧手段によってシール空間を減圧するだけで、ノズルの位置設定を何度でもおこない、また、上蓋にはヘリサート等を設けることなくノズルを固定することが可能となる。同時に、ノズルとシールシールドの位置設定および固定をおこなった後に、チャンバ内部の減圧をおこなうことができる。また、プラズマ形成工程およびプラズマ処理工程においてチャンバ内部が温度上昇して、上蓋に熱応力が生じた場合でも、ヘリサート等によってノズルを肯定していないので、クラック発生等の不具合が生じることがない。
ノズルとシールシールドとの上蓋に対する位置設定と、外部電極の位置設定とをおこなって、これらの芯出しをおこなうセンタリング工程とを繰り返しても、これらの精密性および正確性が低下することがない。したがって、メンテナンスなどによってチャンバの再組み立てにおける作業時間を短縮することができる。
また、プラズマ形成の再現性を向上して、プラズマ処理における処理の再現性を向上することが容易となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、チャンバへのガス導入位置とRF印加位置との正確性を維持可能とし、プラズマ形成状態の正確性および再現性を維持し、熱応力による不具合発生を回避し、ガス漏洩を防止可能とし、ノズル内へのRFシールドを少ない部品点数で可能とし、メンテナンス等における装置の組み立てに必要な作業時間を短縮可能とすることができるという効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態を示す模式断面図である。
【
図2】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態における外部電極を示す模式平面図である。
【
図3】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態における外部電極とガス導入手段とを示す斜視図である。
【
図4】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態におけるガス導入手段を示す断面図である。
【
図5】本発明に係るプラズマ処理装置の第2実施形態におけるガス導入手段を示す断面図である。
【
図6】本発明に係るプラズマ処理装置の第2実施形態におけるガス導入手段を示す断面斜視図である。
【
図7】本発明に係るプラズマ処理装置の第3実施形態における支持部とガス導入手段とを示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るプラズマ処理装置およびそのメンテナンス方法の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態におけるプラズマ処理装置を示す模式断面図である。
図2は、
図1の装置において、内周側と外周側に2つのスパイラル状電極を配置し、各電極にそれぞれ異なる周波数の電源を接続する位置を示す平面図である。図において、符号10は、プラズマ処理装置である。
【0023】
本実施形態におけるプラズマ処理装置10は、Dual frequency ICPとされる。プラズマ処理装置10は、
図1に示すように、たとえば排気手段(減圧手段)TMPにより減圧可能なチャンバ11内において被処理体(シリコン基板)Sに対してプラズマ処理する装置である。
プラズマ処理装置10は、チャンバ11と、平板状の第一電極(内部電極;基板の支持手段)12と、高周波電源(プラズマ形成電源)Aと、上蓋13と、螺旋状の第二電極E2(アンテナAT2)と、螺旋状の第三電極E3(アンテナAT3)と、ガス導入口15と、ガス導入手段(不図示)と、を備えている。なおここで螺旋状とは1ターンのみの同心円形状のものも含む。
【0024】
第一電極(内部電極)12は、チャンバ11内に配され、被処理体Sを載置する。高周波電源(第一の高周波電源)Aは、第一電極12に対して、周波数(第一の周波数)λ1のバイアス電圧を印加可能である。
螺旋状の第二電極E2(外部電極;アンテナAT2)と、螺旋状の第三電極E3(外部電極;アンテナAT3)とは、いずれもチャンバ11の外側に配される。
【0025】
螺旋状の第二電極E2と螺旋状の第三電極E3とは、チャンバ11の上蓋13を形成する石英等の誘電体板を挟んで、第一電極12と対向するように配置される。螺旋状の第二電極E2は上蓋13に沿って中央部に配置され、螺旋状の第三電極E3は上蓋13に沿って第二電極E2より外周部に配置される。
プラズマ処理装置10において、第二電極E2は印加する周波数が高い方の電極であり、第三電極E3は印加する周波数が低い方である。すなわち、プラズマ処理装置10では、第二の周波数λ2と第三の周波数λ3が、λ2>λ3の関係にあり、ガス導入手段が上蓋13の中央部に配置されている。
【0026】
プラズマ処理装置10では、チャンバ11内において、固体ソース20aの配置される領域が、第三電極E3と重なる位置にあり、かつ、印加する周波数が低い方の電極(第三電極E3)を少なくとも覆うように配置されており、固体ソース20aがチャンバ11の上蓋13と別体として設けられている。
【0027】
高周波電源(第二の高周波電源)Bは、第二電極E2に対して、周波数(第二の周波数)λ2の交流電圧を印加可能である(
図1)。第二電極E2は、螺旋状の内周端に配置され、第二の高周波電源Bから高周波電力を印加する第一の部位と、螺旋状の外周端に配置され、アースに接地される第二の部位とを有する(
図2)。
【0028】
高周波電源(第三の高周波電源)Cは、第三電極E3に対して、周波数(第三の周波数)λ3の交流電圧を印加可能である(
図1)。第三電極E3は、螺旋状の内周端に配置され、第三の高周波電源Cから高周波電力を印加する第三の部位と、螺旋状の外周端に配置され、アースに接地される第四の部位とを有する(
図2)。
【0029】
第二の高周波電源Bは、第二電極E2に対して、第二の周波数λ2の交流電圧を印加する。第三の高周波電源Cは、第三電極E3に対して、第三の周波数λ3の交流電圧を印加する。
【0030】
プラズマ処理装置10においては、ガス導入手段100が上蓋13の中央部に配置される。プラズマ処理装置10におけるガス導入手段100は、上蓋13に配されたガス導入口15から、チャンバ11内にフッ素(F)を含有するプロセスガスGを導入する。
プラズマ処理装置10は、チャンバ11内において、チャンバ11の上蓋13側、かつ、第一電極12と対向する位置に、スパッタリング用の固体ソース20を有する。特に、プラズマ処理装置10では、固体ソース20の配置される領域が外周側に配された第三電極E3と重なる位置に設けられている。
【0031】
図3は、本実施形態のプラズマ処理装置を示すにおける外部電極とガス導入手段とを示す斜視図である。
図4は、本実施形態のプラズマ処理装置におけるガス導入手段を示す断面図である。
プラズマ処理装置10においては、
図3に示すように、ガス導入手段100と、螺旋状の第二電極E2(アンテナAT2)と、螺旋状の第三電極E3(アンテナAT3)との位置が、いずれも同一の中心を有するようにセンタリングされている。
【0032】
ガス導入手段100は、
図3,
図4に示すように、ノズル110と、シールシールド120と、位置決めリング130と、ガイドリング140と、減圧手段150と、を有する。
ガス導入手段100は、ガス導入口15に対して同心位置つまり、センタリングされている。
上蓋13には、ガス導入口15の周りに凹部13aが設けられる。凹部13aは、ガス導入口15が上蓋13を貫通する方向に平面視して、略円形の輪郭を有する。ガス導入口15は凹部13aの中央に位置する。
【0033】
ノズル110は、
図4に示すように、ガス導入手段100としてガス導入口15を貫通する。ノズル110は、プラズマ形成ガスに対して耐蝕性を有するものとされる。ノズル110は、プラズマに対して耐性を有するものとされる。具体的には、ノズル110が、石英、セラミックなどから形成されることができる。
【0034】
ノズル110は、貫通部111と、フランジ部112とを有する。貫通部111は、筒状とされてガス導入口15を貫通する。貫通部111は、ガス導入口15が上蓋13を貫通する方向に平面視して、略円形の輪郭を有する。貫通部111の外径はガス導入口15の内径とほぼ同じ寸法を有する。貫通部111は、ガス導入口15の内径よりもやや小さい外径を有することができる。貫通部111は、中心軸線に沿った中心位置に上蓋13の厚さ方向に貫通する貫通孔111bを有する。貫通部111は、チャンバ11の内部に露出した先端にガス噴出口111aを有する。
貫通孔111bは、ガス導入口15が上蓋13を貫通する方向に平面視して、略円形の輪郭を有する。
【0035】
ガス噴出口111aは、貫通部111の先端面に複数設けられる。また、ガス噴出口111aは、ガス導入口15よりもチャンバ11内部に突出した貫通部111の側面に設けられてもよい。ガス噴出口111aは、貫通部111の中心軸線に沿った中心位置に上蓋13の厚さ方向に貫通する貫通孔111bに連通している。ガス噴出口111aは、貫通孔111bよりの小さい径寸法を有する。貫通部111の先端は、複数のガス噴出口111a以外は閉塞されている。
【0036】
貫通孔111bには、接続ノズル114が嵌め込まれる。接続ノズル114は、接続ノズル114の中心軸線に沿った中心位置に上蓋13の厚さ方向に貫通する接続貫通孔114bを有する。接続貫通孔114bには、さらに、ガス供給管115が嵌め込まれる。ガス供給管115は、図示しないガス供給部に接続されて、プロセスガスGをノズル110へと供給可能とされる。
【0037】
接続ノズル114には、
図4に示すように、接続貫通部114cと接続フランジ114aとを有する。接続貫通部114cには接続貫通孔114bが貫通している。接続貫通部114cは貫通孔111bに嵌め込まれる。接続フランジ114aは接続貫通部114cから径方向外側に向けて拡径されて、後述するシールフランジ部122に接触する。
【0038】
フランジ部112は、ガス導入口15が上蓋13を貫通する方向に平面視して、略円形の輪郭を有する。フランジ部112は、貫通部111から径方向外側に向けて拡径されて凹部13aの底部13bに接触する。フランジ部112は、上蓋13の外部表面、つまり、凹部13aの底部13bと平行に形成される。フランジ部112は、後述するシール空間170の減圧時に、凹部13aの底部13bに押圧される。
【0039】
シールシールド120は、
図3,
図4に示すように、ノズル110を覆ってノズル110の周囲で上蓋13の外部表面に密着する。
シールシールド120が、外部電極E2,E3から印加される高周波電力をシールド可能なシールド材から構成される。具体的には、シールシールド120が、鉄、銅、アルミニウム、あるいはこれらの合金、SUSなどから構成される。
シールシールド120が、シールフランジ部122と、外周端部121と、を有する。 シールシールド120は、中心に穴の開いたカップ状に形成されている。シールフランジ部122と外周端部121とは、フランジ部112を覆っている。
【0040】
シールフランジ部122は、ガス導入口15が上蓋13を貫通する方向に平面視して、略円形の輪郭を有する。シールフランジ部122は、フランジ部112と平行に形成される。シールフランジ部122は、シール空間170の減圧時に、フランジ部112の表面112aに接触する。シールフランジ部122の中央には、接続貫通部114cが貫通する。
シールフランジ部122には、シール空間170と減圧手段150とを接続する減圧接続部123が設けられる。
【0041】
外周端部121は、ガス導入口15が上蓋13を貫通する方向に平面視して、略円形の輪郭を有する。外周端部121は、シールフランジ部122の外縁に形成される。外周端部121は、円筒状に形成される。外周端部121は、シールフランジ部122の外縁から凹部13aの底部13bに向けて周設される。外周端部121は、フランジ部112の外周よりも径方向外側に位置する。外周端部121の内周面121cは、フランジ部112の外周とほぼ等しいかやや大きい径寸法を有する。
【0042】
外周端部121の先端は、フランジ部112の径方向外側位置で凹部13aの底部13bに接触する。外周端部121の先端は、その全周が凹部13aの底部13bに接触する。
シールフランジ部122の上蓋13に対向する面から外周端部121の先端までの長さは、フランジ部112の厚さ寸法と等しくなるように設定される。
減圧接続部123には、減圧手段150が接続される。減圧手段150は、減圧接続部123を介して、後述するシール空間170を減圧する。
【0043】
シール部160は、
図4に示すように、ノズル110とシールシールド120との間および上蓋13とシールシールド120との間(隙間)をシールする。
シール部160は、内周表面シール部161と、外周シール部162と、内周裏面シール部163と、接続シール部164と、を有する。シール部160は、それぞれOリングとされる。
【0044】
内周表面シール部161は、シールフランジ部122とフランジ部112とが接する位置において減圧接続部123よりも径方向内側に設けられる。外周シール部162は、外周端部121と上蓋13とが接する位置において減圧接続部123よりも径方向外側に設けられる。内周裏面シール部163は、フランジ部112と上蓋13とが接する位置において減圧接続部123よりも径方向内側に設けられる。接続シール部164は、フランジ部112と接続フランジ114aとの間に設けられる。
【0045】
内周表面シール部161と外周シール部162と内周裏面シール部163と接続シール部164とは、いずれも貫通孔111bの周囲を囲むように周設される。
シール部160は、ノズル110とシールシールド120との間および上蓋13とシールシールド120との間にシール空間170を形成する。
【0046】
シール空間170は、
図4に示すように、内周表面シール部161と、内周表面シール部161の径方向外側で互いに対向するフランジ部112の表面112aおよびシールフランジ部122の裏面122bと、フランジ部112の外周面112cと、外周端部121の内周面121cと、外周シール部162の径方向内側で互いに対向する外周端部121の先端面121dおよび凹部13aの底面(底部)13bと、外周シール部162と、内周裏面シール部163の径方向外側で互いに対向するフランジ部112の裏面112bおよび凹部13aの底面13bと、内周裏面シール部163と、によって囲まれている。
【0047】
シール空間170は、減圧接続部123を介して減圧手段150によって減圧可能である。
減圧手段150は、シール部160によってノズル110とシールシールド120との間および上蓋13とシールシールド120との間に形成されたシール空間170を減圧する。
減圧手段150は、チャンバ11内をプラズマ形成状体にまで減圧する減圧手段に接続可能である。特に、減圧手段150は、排気手段TMPに接続されること、例えばチャンバ11の減圧工程における初期に用いるドライポンプに接続することが好ましい。なお、減圧手段150は、排気手段TMPとは別の構成とすることもできる。
【0048】
シール空間170には、内周表面シール部161を介して、さらに密閉空間171が隣接して形成される。
密閉空間171は、シールシールド120と接続ノズル114における接続貫通部114cの外周との間に形成される。
密閉空間171は、内周表面シール部161と、内周表面シール部161の径方向内側で互いに対向するフランジ部112の表面112aおよびシールフランジ部122の裏面122bと、接続貫通部114cの外周面114eと、シールフランジ部122において接続貫通部114cに対向する貫通孔の内周面122eと、接続シール部164の径方向内側で互いに対向するシールフランジ部122の表面122aと接続フランジ114aの裏面と、接続シール部164と、によって囲まれている。
密閉空間171は密閉されており、プロセスガス等が外部に漏出することを防止している。
【0049】
ガス導入手段100は、
図3,
図4に示すように、シールシールド120の外周に接して、ガス導入手段100と外部電極E2,E3との位置決めをおこなう位置決めリング130を有する。
位置決めリング130には、
図3に示すように、径方向外向きに延びる複数本の支持部131が接続されている。平棒状の支持部131は、外部電極E2,E3を支持している。支持部131は、外部電極E2,E3と上蓋13との間に配置される。支持部131は、上蓋13の表面13c上に載置されている。または、支持部131は、上蓋13の表面13c上からさらに離間して配置されている。支持部131は、径方向外側がチャンバ11に対して固定される。このチャンバ11に対する支持部131の径方向外側位置での固定は、上蓋13ではなく、径方向でさらにその外側位置においておこなわれる。
【0050】
位置決めリング130には、シールシールド120および位置決めリング130を覆うとともに、位置決めリング130に固定されるガイドリング140を有する。なお、
図3においては、ガイドリング140を省略している。ガイドリング140は、接続フランジ114aを覆っている。ガイドリング140は、接続フランジ114aを上蓋13に向けて押圧する状態で固定される。
【0051】
本実施形態におけるガス導入手段100は、減圧手段150によってシール空間170を減圧することで、大気圧により押圧されるシールシールド120によってノズル110を上蓋13に向かって押圧して位置設定する。
したがって、シール空間170を減圧することでガス導入手段100の上蓋への固定をおこない、また、シール空間170の減圧を解除することでガス導入手段100の上蓋への固定を解除することができる。
【0052】
これにより、ガス導入手段100の位置決め、特に、外部電極E2,E3に対するセンタリングを正確におこなうことが可能となる。
同時に、石英板等で構成される上蓋13に対して、ヘリサート等を設けてネジ止めすることなく、ガス導入手段100と上蓋13との固定をおこなうことができる。したがって、プラズマ形成工程における上蓋13での熱応力などにより、上蓋13にクラック発生などの悪影響が生じることを防止できる。
【0053】
また、上蓋13では、表面13cよりも底部13bがチャンバ11のプラズマ形成空間に近接している。上蓋13では、表面13cにおける厚さ寸法よりも底部13bにおける厚さ寸法が小さく形成されている。
凹部13aの底部13bには、フランジ部112の裏面112bおよび外周端部121の先端面121dが接している。これに対して、外部電極E2,E3は、上蓋13の表面13cから少なくとも支持部131の厚さ以上に離間している。
【0054】
つまり、上蓋13の厚さ方向において、外部電極E2,E3よりも外周端部121の先端面121dがチャンバ11のプラズマ形成空間に近接している。
したがって、シールド材から形成されたシールシールド120は、外部電極E2,E3からの高周波電力を遮蔽してノズル110へと到達することをシールド可能である。これにより、ノズル110内部でプラズマが形成されることを防止できる。
【0055】
さらに、シール空間170が減圧されており、同時に、密閉されている。同時に、密閉空間171が密閉されている。これらにより、ガス導入口15付近からのプロセスガスやプラズマ等がチャンバ11の外部に漏洩することを防止できる。
【0056】
本実施形態におけるプラズマ処理装置10は、後述するようにノズル110およびシールシールド120などのガス導入手段100を、外部電極E2,E3に対してセンタリングして固定した後、プラズマ処理をおこなう。
【0057】
プラズマ処理装置10におけるプラズマ処理では、ガス導入手段100により、ガス導入口15からチャンバ11内にフッ素(F)を含有するプロセスガスGを導入する。
プラズマ処理装置10においては、チャンバ11内の上蓋13側に、第二電極E2によるプラズマP2と第三電極E3によるプラズマP3が生じる。そして、プラズマ処理装置10では、固体ソース20の配置される領域が外周側に配された第三電極E3と重なる位置に設けられているので、固体ソース20は主にプラズマP3によってスパッタリングされる。固体ソース20として酸化シリコンを設けることにより、固体ソース20からプラズマ(特にプラズマP3)の中に、不足するたとえば酸素元素が逐次導入される。
【0058】
ここで、酸素元素(O)及びフッ素元素(F)の発光分光強度、並びにこれらの比率O/Fとの関係を所定の状態とするために、高周波(13.56MHz)電力の電源パワーを2kWに固定し、低周波(2MHz)の電源パワーを0W~3kWの範囲で変更することができる。
これにより、プラズマ処理装置10におけるプラズマ処理、プラズマ成膜、ドライエッチング、アッシング、プラズマドーピング、表面改質、原子層エッチング(Atomic Layer Etching;ALE、原子層堆積(Atomic Layer Deposition: ALD)等の処理をおこなうことが可能となる。
【0059】
以下、本実施形態におけるプラズマ処理装置のメンテナンス方法を説明する。
【0060】
本実施形態のメンテナンス方法は、ガス導入手段固定工程と、センタリング工程と、を有する。
【0061】
ガス導入手段固定工程は、ノズル110をガス導入口15に貫通させ、シールシールド120をフランジ部112に被せて、減圧接続部123を介してシール空間170を減圧手段150によって減圧し、減圧されたシール空間170と大気圧との差によって押圧されたシールシールド120により、ノズル110を上蓋13に向けて押圧する。
【0062】
センタリング工程は、シールシールド120に位置決めリング130を嵌め合わせて、ノズル110と位置決めリング130との位置あわせをする。
位置決めリング130には、支持部131を介して外部電極E2,E3が取り付けられているため、ノズル110と外部電極E2,E3との位置あわせをすることができる。
ここで、外部電極E2,E3の位置設定は、支持部131の径方向外側位置で調節し、チャンバ11に対して固定処理をおこなうことができる。
【0063】
本実施形態のメンテナンス方法においては、これらのガス導入手段固定工程とセンタリング工程とによってガス導入手段100との外部電極E2,E3との位置あわせをおこない、チャンバ11内に噴出するプロセスガスと、外部電極E2,E3から供給する高周波電力との位置あわせ、具体的には、センタリングをおこなうことができる。
なお、ガス導入手段固定工程とセンタリング工程とをおこなう順番は特に限定されない。
【0064】
さらに、本実施形態においては、たとえ、Oリングが劣化し、プロセスガスが漏洩した場合でも、真空チャック域であるシール空間170よりすみやかに排気されることで、化学活性の高いプロセスガスが外部に放出されないという効果を奏することができる。
【0065】
以下、本発明に係るプラズマ処理装置およびそのメンテナンス方法の第2実施形態を、図面に基づいて説明する。
図5は、本実施形態のプラズマ処理装置におけるガス導入手段を示す断面図である。
図6は、本実施形態のプラズマ処理装置におけるガス導入手段を示す斜視断面図である。本実施形態において、上述した第1実施形態と異なるのは、位置決めピンに関する点であり、これ以外の上述した第1実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0066】
本実施形態のプラズマ処理装置におけるガス導入手段100は、
図5,
図6に示すように、位置決めピン180を有する。
位置決めピン180は、円柱状の棒状とされる。位置決めピン180は、石英等、上蓋と熱膨張率が同じ材質から構成されることができる。位置決めピン180は、上蓋13に形成された位置決め穴13gに挿入される。位置決めピン180は、位置決め穴13gから上蓋13の外部に向かって立設される。位置決め穴13gは、凹部13aの底部13bに形成される。位置決めピン180は、上蓋13の厚さ方向に軸線を有するように配置される。
【0067】
位置決めピン180は、フランジ部112に形成された切欠112gの内部に配置される。切欠112gは、フランジ部112の縁部に形成される。切欠112gは、フランジ部112の厚さ方向の全長に形成される。切欠112gは、フランジ部112の内周裏面シール部163よりも径方向外側に形成される。切欠112gは、フランジ部112の内周表面シール部161よりも径方向外側に形成される。切欠112gは、位置決めピン180よりも大きな径寸法となるように形成される。切欠112gは、シール空間170の減圧時に、位置決めピン180に接触しないことができる。切欠112gは、位置決め穴13gと同じかやや大きい断面形状として形成されてもよい。
位置決めピン180は、フランジ部112の表面112aよりも、さらに上蓋13から離間する位置まで延在する。
【0068】
位置決めピン180は、シールシールド120の位置決め凹部123gの内部に配置される。位置決め凹部123gは、フランジ部112に向けて開口する。位置決め凹部123gは、フランジ部112の内周表面シール部161よりも径方向外側に形成される。位置決め凹部123gは、少なくとも位置決めピン180が配置される位置で、位置決めピン180よりも大きな径寸法となるように形成される。位置決め凹部123gは、シール空間170の減圧時に、位置決めピン180に接触しないことができる。
位置決め凹部123gは、切欠112gと同じかやや大きい断面形状として形成されてもよい。位置決め凹部123gは、減圧接続部123に接続していてもよい。減圧接続部123に接続していない位置決め凹部123gは、シールフランジ部122の表面122aには貫通していない。
【0069】
本実施形態のメンテナンス方法は、センタリング工程において、上蓋13の位置決め穴13gに位置決めピン180を挿入する。次いで、ノズル110をガス導入口15に挿入する。この際、切欠112gを位置決めピン180にあわせる。さらに、シールシールド120をノズル110に被せる。この際、位置決め凹部123gを位置決めピン180にあわせる。これにより、ガス導入手段100の初期位置あわせをおこなうことが容易になる。
【0070】
本実施形態によれば、石英板等で構成される上蓋13に対して、ヘリサート等を設けてネジ止めすることなく、ガス導入手段100と上蓋13との固定をおこなうことができる。同時に、位置決めピン180により、上蓋13、ノズル110、シールシールド120の初期位置あわせを容易おこない、その後、精密なセンタリングをおこなうことが可能となる。したがって、プラズマ形成工程における上蓋13での熱応力などにより、上蓋13にクラック発生などの悪影響が生じることを防止できる。
【0071】
本実施形態においては、上述した実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0072】
以下、本発明に係るプラズマ処理装置およびそのメンテナンス方法の第3実施形態を、図面に基づいて説明する。
図7は、本実施形態のプラズマ処理装置におけるガス導入手段を示す断面斜視図である。本実施形態において、上述した第1および第2実施形態と異なるのは、シールシールドに関する点であり、これ以外の上述した第1および第2実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0073】
本実施形態においては、シールシールド120がノズル110のみならずガス供給管115まで覆っている。また、シール部160として、接続シール部164に換えて、シール部165が設けられる。
【0074】
これにより、接続ノズル114を設けることなく、高周波電力を遮断して、プラズマ形成をチャンバ11内部のみでおこなうことができる。
【0075】
本実施形態においては、上述した実施形態と同等の効果を奏することができるとともに、さらに、金属汚染を防止できる、放電遮蔽により、Oリングへのダメージが防止でき、シール性を長く確保することができるという効果を奏することができる。
【0076】
なお、上記の実施形態においては、外部電極E2,E3に異なる周波数の高周波電力を供給したが、同じ周波数であってもよく、さらに、外部電極が内側と外側で分割されていない構成とすることや、さらに径方向に分割すること、あるいは、いずれかの領域で上下に電極(アンテナ)を重ねて配置する構成とすることなどもできる。
【0077】
あるいは、上記の実施形態に加えて、密閉空間171を減圧すること、例えば、シール空間170を減圧する減圧手段150に接続することや、チャンバ11の排気手段TMPに接続することもできる。
【0078】
また、上蓋13に凹部13aを設けずに、外周端部122が表面13cに接触する構成としてもよい。この場合、外部電極E2,E3が上蓋13の表面13cから離間していることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の活用例として、凍結乾燥、熱CVD等、あるいは減圧下でのプロセスに関わらない、例えば超臨界成膜など加圧下の工程等を挙げることができる。
【符号の説明】
【0080】
10…プラズマ処理装置
11…チャンバ
13…上蓋
13a…凹部
13b…底部
13c…表面
15…ガス導入口
100…ガス導入手段
110…ノズル
111…貫通部
112…フランジ部
112a…表面
112b…裏面
112c…外周面
114…接続ノズル
115…ガス供給管
120…シールシールド
121…外周端部
121c…内周面
121d…先端面
122…シールフランジ部
122a…表面
122b…裏面
122e…内周面
123…減圧接続部
130…位置決めリング
131…支持部
140…ガイドリング
150…減圧手段
160…シール部
161…内周表面シール部
162…外周シール部
163…内周裏面シール部
164…接続シール部
170…シール空間
171…密閉空間
180…位置決めピン
E2…外部電極(第二電極)
E3…外部電極(第三電極)
G…プロセスガス
S…被処理体
TMP…排気手段(減圧手段)