(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136706
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】段ボールベッドおよび居住ユニット
(51)【国際特許分類】
E04H 1/12 20060101AFI20220913BHJP
A47C 17/02 20060101ALI20220913BHJP
A47C 19/00 20060101ALI20220913BHJP
A47C 19/12 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
E04H1/12 302Z
A47C17/02 Z
A47C19/00 B
A47C19/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036440
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】510274430
【氏名又は名称】コトブキシーティング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501241645
【氏名又は名称】学校法人 工学院大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】相田 憲昭
(72)【発明者】
【氏名】江藤 大蔵
(57)【要約】
【課題】組立の容易性を確保しつつ、居住性にも優れた段ボールベッドおよび居住ユニットを提供する。
【解決手段】段ボールベッド100は、互いに隣接して配置される、矩形状の複数の下パネル片10と、互いに隣接して配置される、矩形状の複数の上パネル片20と、少なくとも一つの開口部36、37を有し、複数の下パネル片10と複数の上パネル片20との間に配置され、且つ、複数の下パネル片10及び複数の上パネル片20によって形成される領域を囲う段ボール製の側壁30と、を備える。下パネル片10の少なくとも隅部には、下方に突出して、内部に下側被係合部14を形成する下側凸部12が形成され、側壁30は、複数の下パネル片10の各下側被係合部14と係合可能な複数の下側係合部32を有し、側壁30の複数の下側係合部32が、隣接して配置される複数の下パネル片10の各下側被係合部14と係合することで、複数の下パネル片10が連結される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接して配置される、矩形状の複数の下パネル片と、
互いに隣接して配置される、矩形状の複数の上パネル片と、
少なくとも一つの開口部を有し、前記複数の下パネル片と前記複数の上パネル片との間に配置され、且つ、前記複数の下パネル片及び前記複数の上パネル片によって形成される領域を囲う段ボール製の側壁と、
を備える段ボールベッドであって、
前記下パネル片の少なくとも隅部には、下方に突出して、内部に下側被係合部を形成する下側凸部が形成され、
前記側壁は、前記複数の下パネル片の各下側被係合部と係合可能な複数の下側係合部を有し、
前記側壁の複数の下側係合部が、前記隣接して配置される複数の下パネル片の各下側被係合部と係合することで、前記複数の下パネル片が連結される、
段ボールベッド。
【請求項2】
前記側壁は、前記複数の上パネル片の各外縁部に形成される上側溝部と係合可能な複数の上側係合部を有し、
前記側壁の複数の上側係合部が、前記隣接して配置される複数の上パネル片の各上側溝部と係合することで、前記複数の上パネル片が連結される、
請求項1に記載の段ボールベッド。
【請求項3】
前記複数の下側係合部のうち、隣接する二つの下側係合部の間に下側切り込み部が形成され、
前記複数の下側係合部が、隣接して配置される二つの下パネル片の各下側被係合部と係合した状態において、前記下側切り込み部が、前記二つの下パネル片が対向した対向部にまたがる、請求項1または2に記載の段ボールベッド。
【請求項4】
前記複数の下側係合部のうち、少なくとも一つの下側係合部が折り曲げられ、前記複数の下側被係合部のうちの一つと係合する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の段ボールベッド。
【請求項5】
上下段に積み重ねられ、上方から見て互いの前記開口部が異なる位置に配置される、請求項1から4のいずれか1項に記載の1組の段ボールベッドと、
前記上段の段ボールベッドの開口部の下方で、且つ前記下段の段ボールベッドの長手側面に隣接して配置される段ボール製の階段部材と、
を備える居住ユニット。
【請求項6】
矩形状の上パネルと、
矩形状の下パネルと、
少なくとも一つの開口部を有し、前記下パネルと前記上パネルとの間に配置され、且つ、前記下パネル及び前記上パネルによって形成される領域を囲う段ボール製の側壁と、を備え、
前記開口部が形成される長手側面が互いに反対側を向くようにして上下段に積み重ねられる1組の段ボールベッドと、
前記上段の段ボールベッドの開口部の下方で、且つ前記下段の段ボールベッドの長手側面に隣接して配置される段ボール製の階段部材と、
を備える居住ユニット。
【請求項7】
前記側壁の各隅部から短手方向に延び、且つ、前記長手側面と対向するように折り曲げられる複数の外壁部材をさらに備える、
請求項6に記載の居住ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボールベッドおよび居住ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然災害等の不測の事態に備え、避難所の充実化が求められている。既存の避難所には種々の問題が存在するが、生活空間の確保、プライバシーの確保等、居住性の一層の充実が求められている。
【0003】
上記のような問題に鑑み、組み立ての容易なベンチ、ベッドなどを実現した、種々の組立式の家具が提案されている。例えば、特許文献1から5は、段ボール、合成樹脂等により構成された板材を用いた組立式の家具、災害備蓄セット、カプセルルームなどの組立式ユニットを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3222348号公報
【特許文献2】特開2012-235819号公報
【特許文献3】実用新案登録第3219523号公報
【特許文献4】特開2015-209684号公報
【特許文献5】特開2008-126021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1から5に代表される従来の組立式ユニットは、生活空間の確保、プライバシーの確保等が十分でなく、必ずしも居住性に優れたものではない。
【0006】
本発明は、組立の容易性を確保しつつ、居住性にも優れた段ボールベッドおよび居住ユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の段ボールベッドは、
互いに隣接して配置される、矩形状の複数の下パネル片と、
互いに隣接して配置される、矩形状の複数の上パネル片と、
少なくとも一つの開口部を有し、前記複数の下パネル片と前記複数の上パネル片との間に配置され、且つ、前記複数の下パネル片及び前記複数の上パネル片によって形成される領域を囲う段ボール製の側壁と、
を備える段ボールベッドであって、
前記下パネル片の少なくとも隅部には、下方に突出して、内部に下側被係合部を形成する下側凸部が形成され、
前記側壁は、前記複数の下パネル片の各下側被係合部と係合可能な複数の下側係合部を有し、
前記側壁の複数の下側係合部が、前記隣接して配置される複数の下パネル片の各下側被係合部と係合することで、前記複数の下パネル片が連結される。
【0008】
本発明の居住ユニットは、
上下段に積み重ねられ、上方から見て互いの前記開口部が異なる位置に配置される、上述の1組の段ボールベッドと、
前記上段の段ボールベッドの開口部の下方で、且つ前記下段の段ボールベッドの長手側面に隣接して配置される段ボール製の階段部材と、を備える。
【0009】
本発明の居住ユニットは、
矩形状の上パネルと、
矩形状の下パネルと、
少なくとも一つの開口部を有し、前記下パネルと前記上パネルとの間に配置され、且つ、前記下パネル及び前記上パネルによって形成される領域を囲う段ボール製の側壁と、を備え、
前記開口部が形成される長手側面が互いに反対側を向くようにして上下段に積み重ねられる1組の段ボールベッドと、
前記上段の段ボールベッドの開口部の下方で、且つ前記下段の段ボールベッドの長手側面に隣接して配置される段ボール製の階段部材と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、段ボールベッドにおいて、側壁の複数の下側係合部が、隣接して配置される複数の下パネル片の各下側被係合部と係合することにより、複数の下パネル片が連結される。よって、組立の容易性を確保しつつ、居住性にも優れた段ボールベッドおよび居住ユニットを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る段ボールベッドの斜視図である。
【
図6】
図6は、開口部を有する側壁の展開図である。
【
図7】
図7は、
図4のA-A、B-B線に示す上縁の一部および
図5のC-C、D-Dに示す下縁の一部を破断して示す段ボールベッドの正面図である。
【
図8】
図8は、段ボールベッドを含む居住ユニットの斜視図である。
【
図11】
図11は、二つの段ボールベッドを上下段に積み重ねた状態において、上パネル片および下パネル片の積層状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した段ボールベッドおよび居住ユニットの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1~
図5に示すように、本発明の一実施形態に係る段ボールベッド100は、長手方向X、短手方向Y、高さ方向Zによって画定される、略直方体状の形状を有している。段ボールベッド100は、例えばカプセルホテルの一室と同等の大きさを有しており、少なくとも一人の人が、段ボールベッド100の内部に形成された直方体状の空間に横たわることが可能である。
【0014】
段ボールベッド100は、後述する通り、段ボールパネル、樹脂パネル等のパネルを組み立てることによって形成される組立式のベッドであり、特別な道具を必要とせず、部品点数も少ない。よって、作業者は、段ボールベッド100を容易に組み立てることが可能である。例えば、災害の発生時において、段ボールベッド100は、被災地の体育館等の場所に速やかに設置可能であり、災害への迅速な対応に寄与する。また、段ボールベッド100は分解も容易であり、分解した各パネルを積層することにより、保管、運搬なども容易に行うことが可能である。
【0015】
段ボールベッド100は、矩形状の二つの下パネル片10と、矩形状の二つの上パネル片20と、二つの下パネル片10と二つの上パネル片20との間に配置される側壁30と、下パネル片10の上に載置される床板40,41と、を備える。よって、段ボールベッド100の内部には、下パネル片10と、上パネル片20と、側壁30と、床板40,41とによって、外部からの視線を遮断可能な直方体状の空間が確保される。例えば、段ボールベッド100が被災地に設置された場合において、被災者が、外部からの視線が遮断された段ボールベッド100の内部の空間で横たわることが可能である。よって、段ボールベッド100は、被災者のためにプライバシーを確保した生活空間を提供することができ、災害の発生後の被災者の生活の質を向上させることができる。
【0016】
なお、段ボールベッド100の適用場面は、災害の発生時に限られず、例えば、通常の家屋の内部に設置することにより、仕事部屋のように、より孤立性を高めた空間を提供することができる。すなわち、段ボールベッド100は、あらゆる場面において、プライバシーを要する空間の提供に利用可能である。
【0017】
図5及び
図7に示すように、矩形状の下パネル片10は、例えば、樹脂材料により構成される樹脂パネルによって形成される。本実施形態においては、二つの下パネル片10が互いに隣接して配置され、段ボールベッド100の下パネルを構成する。
【0018】
下パネル片10は、平面視矩形状の少なくとも隅部に、ベース面に対して下方に突出する略四角錐台状の下側凸部12を有する。本実施形態においては、四つの隅部、各辺の中間部、及びベース面中央部の合計九つの下側凸部12が下方に突出している。下側凸部12の存在により、下パネル片10の強度が向上する。また、複数の下側凸部12を設けることにより、下パネル片10を安定的に地面に配置することが可能となる。
【0019】
図7に示すように、下側凸部12の内部には、後述する側壁30の下側係合部32(
図6参照)と係合する下側被係合部14が形成される。具体的には、側壁30の下側係合部32は、その外壁面を下側被係合部14の外向き側面に接触させつつ、さらに、下側被係合部14の該外向き側面に直交する、互いに対向する二つの側面及び底面によって保持されて係合する。
また、下側凸部12の底面12Aには、その中央部分において上方に突出する中央凸部15が形成され、この中央凸部15は、下方から見て底面12Aから凹んだ嵌合凹部16を形成する。嵌合凹部16は、後述する通り、一組の段ボールベッド100を上下段に積み重ねた場合において(
図11参照)、後述する上パネル片20の嵌合凸部22と嵌合可能である。
【0020】
また、矩形状の下パネル片10の平面視における輪郭を形成する外縁部において、隣接する下側凸部12間には、下側溝部18が外縁部に沿って形成されており、後述する側壁30の下側係合部32間の下縁部を挟持して係合している。
【0021】
下パネル片10は、例えば樹脂材料のブロー成型、射出成型などの手法により形成することが可能であるが、材料、製造方法などは特に限定されない。
【0022】
また、二つの下パネル片10のベース面上には、段ボール製のパネルからなる平坦な床板41がそれぞれ配置され、さらに、二つの床板41の上部に、二つの床板41の合計面積と略等しい段ボール製のパネルからなる一つの平坦な床板40が配置される。
【0023】
図4及び
図7に示すように、矩形状の上パネル片20は、例えば、樹脂材料により構成される樹脂パネルによって形成される。本実施形態においては、二つの上パネル片20が互いに隣接して配置され、段ボールベッド100の上パネルを構成し、段ボールベッド100の屋根の機能を提供することができる。
【0024】
矩形状の上パネル片20の平面視における輪郭を形成する外縁部には、上側溝部24が外縁部に沿って形成されており、この上側溝部24が後述する側壁30の上側係合部34を挟持して係合することで、二つの上パネル片20が連結されている。
【0025】
また、上パネル片20は、ベース面に対して上方に突出する少なくとも一つの嵌合凸部22を有する。本実施形態においては、四つの隅部、各辺の中間部、及びベース面中央部の合計九つの嵌合凸部22が上方に突出している。上述した通り、嵌合凸部22は、一組の段ボールベッド100を上下段に積み重ねた場合において(
図11参照)、下パネル片10の嵌合凹部16と嵌合可能である。
【0026】
上パネル片20は、下パネル片10と同様に、例えば樹脂材料のブロー成型、射出成型などの手法により形成することが可能であるが、材料、製造方法などは特に限定されない。
【0027】
図6に示すように、側壁30は、段ボール製のパネルによって実現される。側壁30は、二つの下パネル片10と二つの上パネル片20との間に配置され、且つ、二つの下パネル片10および二つの上パネル片20によって形成される領域を囲う。本実施形態では、段ボールベッド100は、
図6に示す大きさの段ボールパネルを二つ用いることにより、側壁30を形成することができる。
【0028】
側壁30は、少なくとも一つの開口部を有する。本実施形態では、側壁30は、二つの円形状の開口部36、37を有している。開口部36は開口部37より開口面積が大きい。大径の開口部36は人が出入りする出入口の役割を果たし、小径の開口部37は、段ボールベッド100の内部に入った人が、外側の風景を眺めるための窓の役割を果たす。開口部の数、形状、形成位置などは特に限定されない。
【0029】
側壁30は、第1の折り曲げ線L1および第2の折り曲げ線L2で折り曲げることが可能である。側壁30が折り曲げられた状態で、複数の下パネル片10と複数の上パネル片20との間に配置されることにより、第1の折り曲げ線L1および第2の折り曲げ線L2に挟まれた領域A1が、長手方向Xに沿った段ボールベッド100の正面(
図1参照)を形成する。一方、第1の折り曲げ線L1および第2の折り曲げ線L2の外側に位置する領域A2および領域A3が、短手方向Yに沿った段ボールベッド100の側面を形成する。
また、一方の側壁30の領域A3の部分は、他方の側壁30の領域A2の部分と重なって配置されている。
【0030】
側壁30は、下縁に複数の下側係合部32を有する。下側係合部32は、例えば、側壁30の素材である矩形状の段ボールパネルの下縁を部分的にカットすることにより形成され、タブのような形状を有する。下側係合部32は、下パネル片10の各下側被係合部14(
図1および
図5参照)と係合可能である。
【0031】
例えば、作業者は、地面上に二つの下パネル片10を隣接して配置する。さらに作業者は、第1の折り曲げ線L1および第2の折り曲げ線L2で折り曲げた側壁30を、二つの下パネル片10に取り付ける。この際、作業者は、側壁30の各下側係合部32の位置が、二つの下パネル片10の下側凸部12および各下側被係合部14の位置に合致するように、位置調整をしながら側壁30を、二つの下パネル片10に取り付ける。この作業により、側壁30の複数の下側係合部32が、二つの下パネル片10の各下側被係合部14と係合する。
【0032】
隣接して配置された二つの下パネル片10は、側壁30を介して連結される。換言すれば、二つの下パネル片10は、特別な工具、連結部材などを用いることなく連結されることになる。よって、作業者は、二つの下パネル片10により所定の広さをもつ空間を確保し、居住性に優れた段ボールベッド100を容易に組み立てることができる。
【0033】
上述した態様で、二つの側壁30が、複数の下パネル片10によって起立して配置されることにより、段ボールベッド100の側壁を実現する。ただし、二つの側壁30の双方が、必ずしも開口部36、37を有する必要はない。例えば、本実施形態の段ボールベッド100は、開口部36、37を有する側壁30と、開口部36、37を有さない側壁30を組み合わせることにより組み立てられる(
図2および
図3参照)。この場合、段ボールベッド100の正面のみに開口部が形成され、背面に開口部は形成されない。よって、段ボールベッド100に入る人の利便性を確保しつつ、段ボールベッド100に入った人のプライバシーを確保することが容易となる。
【0034】
本実施形態においては、下側切り込み部33が、複数の下側係合部32のうち、側壁30の領域A1の長手方向における中央において、隣接する二つの下側係合部32、32の間に形成されている。
図7に示すように、下側切り込み部33は、下側係合部32が、二つの下パネル片10の各下側被係合部14と係合した状態において、下側切り込み部33が、二つの下パネル片10が対向した対向部P1にまたがる。下側切り込み部33の最深部は、対向部P1における二つの下パネル片10の壁と同じ高さ、或いは壁よりも高い位置にあり、二つの下パネル片10の壁と干渉しないため、側壁30を二つの下パネル片10に円滑に取り付けることができる。
【0035】
さらに本実施形態においては、複数の下側係合部32のうち、少なくとも一つの下側係合部32、本実施形態では二つの下側係合部32が折り曲げられ、複数の下側被係合部14のうちの一つと係合する。折り曲げられた下側係合部32は、下パネル片10の隅部に配置された下側被係合部14と係合する。折り曲げられた下側係合部32が、段ボールベッド100の隅部に位置することになるため、段ボールベッド100の強度を向上させることができる。
【0036】
さらに側壁30の上縁部には、複数の上側係合部34を有する。本実施形態においては、複数の上側係合部34は、側壁30の素材である矩形状の段ボールパネルの上縁を部分的にカットして後述する上側切り込み部35を形成することにより得られる。上側係合部34は、上パネル片20の上側溝部24(
図7参照)と接続可能である。
【0037】
例えば、作業者は、二つの下パネル片10への側壁30の取り付け後、二つの上パネル片20を側壁30の上縁に取り付ける。この際、作業者は、上パネル片20の上側溝部24が、側壁30の上側係合部34の位置に合致するように、位置調整をしながら二つの上パネル片20を、側壁30に取り付ける。この作業により、側壁30の複数の上側係合部34が、二つの上パネル片20の各上側溝部24と係合する。
【0038】
隣接して配置された複数の上パネル片20(本実施形態では二つの上パネル片20)は、側壁30を介して連結される。換言すれば、二つの上パネル片20は、特別な工具、連結部材などを用いることなく連結されることになる。よって、作業者は、二つの上パネル片20により、空間を閉じる蓋を確保し、プライバシー確保に優れた段ボールベッド100を容易に組み立てることができる。
【0039】
本実施形態においては、上側切り込み部35が、側壁30の領域A1の長手方向における中央において、二つの上側係合部34、34の間に形成されている。
図7に示すように、上側切り込み部35は、上側係合部34が、二つの上パネル片20の各上側溝部24と係合した状態において、上側切り込み部35が、二つの上パネル片20が対向した対向部P2にまたがる。上側切り込み部35の最深部は、対向部P2における二つの上パネル片20の壁と同じ位置、或いは壁よりも低い位置にあり、二つの上パネル片20の壁と干渉しないため、二つの上パネル片20を側壁30に円滑に取り付けることができる。
【0040】
なお、
図1及び
図7等において、符号45は、側壁30と下パネル片10、及び側壁30と上パネル片20をそれぞれ連結するためのロック部である。
【0041】
本実施形態では、二つの下パネル片10および二つの上パネル片20が、それぞれ互いに隣接して配置されている。しかしながら、三つ以上の下パネル片10を隣接して配置してもよいし、三つ以上の上パネル片20を隣接して配置してもよい。複数の下パネル片10および複数の上パネル片20を隣接して配置することにより、段ボールベッド100の内部空間を拡げることができる。また、複数の下パネル片10および複数の上パネル片20を、長手方向であるX方向及び短手方向であるY方向の双方にマトリックス状に配置してもよい。側壁30の長手方向の長さを変化させることにより、連結させる下パネル片10および複数の上パネル片20の数を変更することが可能である。
【0042】
図8~
図10に示すように、上述した段ボールベッド100を用いた居住ユニット200は、1組の(二つの)段ボールベッド100と、段ボール製の階段部材50とを少なくとも備えている。居住ユニット200は、1組の段ボールベッド100と、階段部材50の様な付属の部材を用いて構成することにより、より快適な居住性を実現するとともに、追加的な機能をも実現するユニットである。
【0043】
1組の段ボールベッド100は上下段に積み重ねられ、上方から見て互いの開口部36、37が異なる位置に配置されている。具体的には、二つの段ボールベッド100が、開口部36、37が形成される側壁30の長手側面が、互いに反対側を向くようにして上下段に積み重ねられている。
【0044】
1組の段ボールベッド100が上下段に積み重ねられているため、単体の段ボールベッド100の平面面積(
図4、
図5に示す二つの下パネル片10または二つの上パネル片20の面積)と変わらない専有面積により、二人の人が横たわる空間を実現することができる。よって、設置場所の空間をより有効に活用することが可能となる。また、二つの段ボールベッド100が、開口部36、37が形成される側壁30の長手側面が、互いに反対側を向くように配置されている。よって、上段の段ボールベッド100に入る人と、下段の段ボールベッド100に入る人が、互いに異なる側において居住ユニット200に対し出入りすることとなり、両者が出会うことなく円滑な出入りを可能とするとともに、プライバシーをより高いレベルで確保することも可能となる。
【0045】
階段部材50は、側壁30と同様に段ボール製であり、積み重ねられた1組の段ボールベッド100のうち、上段の段ボールベッド100の開口部36の下方で、且つ下段の段ボールベッド100の長手側面に隣接して配置される。上段の段ボールベッド100を用いる人は、階段部材50を伝って上段の段ボールベッド100の開口部36に入るとともに開口部36から出ることができる。一方、下段の段ボールベッド100に対しては、階段部材50は不要であるため、下段の段ボールベッド100の開口部36がある長手側面には、階段部材50は設置されていない(
図10参照)。
【0046】
さらに居住ユニット200は、側壁30の各隅部から短手方向に延び、且つ、長手側面と対向するように折り曲げられる複数の外壁部材60を備えている。外壁部材60は、外部からの視線を遮断するため、プライバシーをより高いレベルで確保することを可能とする。
なお、外壁部材60の高さは任意であり、例えば、上段の段ボールベッド100と略同じ高さであってもよい。
【0047】
また、板状のテーブル70が外壁部材60に取り付けられており、居住ユニット200の機能、利便性を向上させることができる。外壁部材60、テーブル70も、段ボールパネルによって作製することができる。
【0048】
図11に示すように、上下段に積み重ねられた1組の段ボールベッド100においては、下パネル片10が、上パネル片20の上に積み重ねられる。この際、上述した通り、下パネル片10の嵌合凹部16が、上パネル片20の嵌合凸部22と嵌合する。これにより、1組の段ボールベッド100は、安定した積層状態を維持することができる。
【0049】
図12及び
図13に示すように、階段部材50は、人が足をのせるステップ面の下に、複数の段ボール片52を、格子状に組み合わせることにより構成することができる。これにより、階段部材50の強度を向上させ、人が乗ってもつぶれる危険性を抑制し、安全性を向上させることができる。
【0050】
さらに、
図12及び
図13に示すように、居住ユニット200には、例えば、段ボール製の二つの椅子80を追加することもできる。椅子80はテーブル70に隣接するように設けられ、椅子80に腰かけた人は、テーブル70を利用して種々の作業を行うことが可能となり、居住ユニット200の機能、利便性を向上させることができる。
【0051】
なお、居住ユニット200において利用する段ボールベッド100は、
図1~
図7に示すような、複数の下パネル片10および複数の上パネル片20を必ずしも必要としない。一つの矩形状の上パネルおよび一つの矩形状の下パネルにより構成される段ボールベッド100を用いて居住ユニット200を組み立ててもよい。また、強度が確保されれば、三つ以上の段ボールベッド100を積層することも可能である。
【0052】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
例えば、居住ユニット200において、上段の段ボールベッド100と下段の段ボールベッド100の出入りするための開口部36は、上方から見て互いに異なる位置に配置されるものであれば、同じ側の長手側面に配置されてもよい。なお、この構成においても、上段の段ボールベッド100と下段の段ボールベッド100において、側壁30の領域A1の部分の表裏面が互いに異なるように側壁30を折り曲げることで、共通の側壁30を使用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 下パネル片
12 下側凸部
14 下側被係合部
16 嵌合凹部
18 下側溝部
20 上パネル片
22 嵌合凸部
24 上側溝部
30 側壁
32 下側係合部
33 下側切り込み部
34 上側係合部
35 上側切り込み部
50 階段部材
60 外壁部材
70 テーブル
80 椅子
100 段ボールベッド
200 居住ユニット