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特開2022-137091リチウムアノードデバイススタック製造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137091
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】リチウムアノードデバイススタック製造
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/1395 20100101AFI20220913BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20220913BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
H01M4/1395
H01M4/66 Z
H01M4/38 Z
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022100076
(22)【出願日】2022-06-22
(62)【分割の表示】P 2020515943の分割
【原出願日】2018-09-12
(31)【優先権主張番号】62/561,442
(32)【優先日】2017-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヘール, スブラマニヤ ピー.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】金属電極、より具体的には、リチウム含有アノード、前述のリチウム含有電極を含む二次電池などの高性能電気化学デバイス、及びこれらを製造する方法を提供する。
【解決手段】第1の銅膜を含む電流コレクタの上にリチウム金属膜を形成することと、銅膜、ビスマス膜、スズ膜、又はこれらの組み合わせから選択される金属膜を前記リチウム金属膜の上に形成することであって、前記金属膜が、前記リチウム金属膜の上面及び側壁をコーティングし、かつ延在して、前記電流コレクタと直接接触する、形成することと、リチウムイオン伝導性セラミック、リチウムイオン伝導性ガラス、又はイオン伝導性液晶を含むリチウムイオン伝導性膜である保護膜を、前記金属膜の上に形成することと、酸化アルミニウム、オキシ窒化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム又は窒化アルミニウムを含むセラミック膜を前記保護膜の上に形成することとを含む方法である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅を含む電流コレクタと、
前記電流コレクタの上に形成されたリチウム金属膜と、
前記リチウム金属膜の上に形成された金属膜と、
前記金属膜の上に形成された保護膜と
を備えるアノード電極構造であって、
前記保護膜は、リチウムイオン伝導性セラミック、リチウムイオン伝導性ガラス、イオン伝導性高分子、リチウムイオン伝導性液晶、又はこれらの組み合わせを含む群から選択されるリチウムイオン伝導性膜で、
前記金属膜は銅膜、ビスマス膜、スズ膜、又はこれらの組み合わせから選択される、アノード電極構造。
【請求項2】
前記銅膜が、約5ナノメートルから約40ナノメートルの間の厚みを有する、請求項1に記載のアノード電極構造。
【請求項3】
前記銅膜が、約10ナノメートルから約20ナノメートルの間の厚みを有する、請求項2に記載のアノード電極構造。
【請求項4】
前記リチウムイオン伝導性膜は、酸化アルミニウム(Al)、LiPON、LiLaZr12(LLZO)、LiS-P、Li10GeP12、LiPS、(1-x)LiI-(x)LiSnS、xLiI-(1-x)LiSnS、(1-x)LiI-(x)LiSnS、(x)LiI-(1-x)LiSnS(ここで、0<x<1)のうちの一又は複数を含む、請求項2に記載のアノード電極構造。
【請求項5】
前記リチウム金属膜が、約1マイクロメートルから約20マイクロメートルの間の厚みを有する、請求項2に記載のアノード電極構造。
【請求項6】
前記電流コレクタが、約2マイクロメートルから約8マイクロメートルの間の厚みを有する、請求項5に記載のアノード電極構造。
【請求項7】
前記電流コレクタは、
第1のニッケル又はクロム含有膜と、
前記第1のニッケル又はクロム含有膜の上に形成され、約50ナノメートルから約500ナノメートルの間の厚みを有する銅膜と、
前記銅膜の上に形成され、約20ナノメートルから約50ナノメートルの間の厚みを有する第2のニッケル又はクロム含有膜と、
を備える、請求項1に記載のアノード電極構造。
【請求項8】
前記電流コレクタは、
ポリエチレンテレフタレート(PET)高分子基板と、
前記PET高分子基板の上に形成された銅膜と、
を備える、請求項1に記載のアノード電極構造。
【請求項9】
銅を含む電流コレクタと、
前記電流コレクタの上に形成されたシリコン黒鉛アノードと、
前記シリコン黒鉛アノードの上に形成されたリチウム金属の膜と、
前記リチウム金属の膜の上に形成された保護膜と、
を備えるアノード電極構造であって、
前記保護膜は、リチウムイオン伝導性セラミック、リチウムイオン伝導性ガラス、リチウムイオン伝導性高分子、リチウムイオン伝導性液晶、又はこれらの組み合わせを含む群から選択されるリチウムイオン伝導性膜である、アノード電極構造。
【請求項10】
銅を含む電流コレクタの上にリチウム金属膜を形成することと、
銅膜、ビスマス膜、スズ膜、又はこれらの組み合わせから選択される金属膜を前記リチウム金属膜の上に形成することと、
リチウムイオン伝導性セラミック、リチウムイオン伝導性ガラス、又はイオン伝導性液晶を含む群から選択されるリチウムイオン伝導性膜である保護膜を、前記金属膜の上に形成することと、
を含む方法。
【請求項11】
前記銅膜は、約5ナノメートルから約40ナノメートルの間の厚みを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記銅膜は、約10ナノメートルから約20ナノメートルの間の厚みを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記電流コレクタは、約2マイクロメートルから約8マイクロメートルの間の厚みを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記電流コレクタは、
第1のニッケル又はクロム含有膜と、
前記第1のニッケル又はクロム含有膜の上に形成され、約50ナノメートルから約500ナノメートルの間の厚みを有する銅膜と、
前記銅膜の上に形成され、約20ナノメートルから約50ナノメートルの間の厚みを有する第2のニッケル又はクロム含有膜と、
を備える、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記電流コレクタは、
ポリエチレンテレフタレート(PET)高分子基板と、
前記PET高分子基板の上に形成された銅膜とを備え、前記銅膜は物理的気相堆積処理によって堆積される、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本書に記載された実装は、概して、金属電極に関し、より具体的には、リチウム含有アノード、前述のリチウム含有電極を含む二次電池などの高性能電気化学デバイス、及びこれらを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
[0002] 再充電可能な電気化学貯蔵システムは、日常生活の多くの分野において益々貴重になってきている。リチウムイオン(Liイオン)電池などの高容量電気化学エネルギー貯蔵デバイスは、益々多くの用途において使用されており、それには、携帯用電子機器、医療、輸送、グリッド接続された大エネルギー貯蔵、再生可能エネルギー貯蔵、及び無停電電源(UPS)が含まれる。従来の鉛/硫酸蓄電池は、しばしば容量が不足し、このような成長分野の用途では十分にリサイクルできないことが多い。一方、リチウムイオン電池は、絶好の機会を有することになると考えられている。
【0003】
[0003] 一般的に、リチウムイオン電池は、安全上の理由から金属リチウムを含まず、代わりに、アノードとして黒鉛材料を使用する。しかしながら、充電状態で限界組成(limit composition)LiCまで充電することができる黒鉛を使用すると、金属リチウムを使用する場合と比較すると、結果的に容量は大幅に低くなる。現在、業界は、エネルギーセル密度を高めるため、黒鉛ベースのアノードからシリコン混合黒鉛へと移行している。しかしながら、シリコン混合黒鉛アノード(silicon blended graphite anode)は、第1サイクル容量損失を被る。したがって、シリコン混合黒鉛アノードの第1サイクル容量損失を補充するためのリチウム金属堆積が必要とされている。しかしながら、リチウム金属は、いくつかのデバイス集積化の課題に直面している。
【0004】
[0004] リチウムはアルカリ金属である。第1族の重元素同族体と同様に、リチウムは、様々な物質との強い反応性を特徴とする。リチウムは、水、アルコール及びプロトン性水素(protic hydrogen)を含有する他の物質と激しく反応し、しばしば発火する結果となる。リチウムは空気中で不安定であり、酸素、窒素及び二酸化炭素と反応する。リチウムは、通常、不活性ガス雰囲気(アルゴンのような希ガス)下で取り扱われ、リチウムは反応性が強いため、他の処理操作も不活性ガス雰囲気中で行うことが必要となる。結果として、リチウムには、処理、貯蔵、及び輸送に関して、いくつかの課題がある。
【0005】
[0005] リチウム金属のための保護用の表面処理が開発されている。リチウム金属の保護用の表面処理の1つの方法は、リチウム金属をワックス層、例えばポリエチレンワックスでコーティングすることである。しかしながら、一般的には、多量のコーティング剤が塗布されるため、リチウム金属膜のその後の処理を妨げる。
【0006】
[0006] 保護用の表面処理の別の方法では、連続的な炭酸コーティング、高分子コーティング、例えばポリウレタン、PTFE、PVC、ポリスチレン及びその他で安定化されたリチウム金属粉末(「SLMP」)を製造することが提案されている。しかしながら、これらの高分子コーティングは、電極材料をプレリチウム化(prelithiating)する際に問題を引き起こす可能性がある。
【0007】
[0007] したがって、エネルギー貯蔵システムのリチウム金属を堆積させ、また処理するための方法及びシステムが必要となる。
【発明の概要】
【0008】
[0008] 本書に記載の実装は、概して、金属電極に関し、より具体的には、リチウム含有アノード、前述のリチウム含有電極を含む二次電池などの高性能電気化学デバイス、及びこれらを製造する方法に関する。一実装では、アノード電極構造が提供される。アノード電極構造は、銅からなる電流コレクタと、電流コレクタの上に形成されたリチウム金属膜と、リチウム金属膜の上に形成された銅膜と、銅膜の上に形成された保護膜とを備える。保護膜は、リチウムイオン伝導性セラミック、リチウムイオン伝導性ガラス、又はイオン伝導性液晶を含む群から選択されるリチウムイオン伝導性膜である。
【0009】
[0009] 別の実装では、アノード電極構造が提供される。アノード電極構造は、銅を含む電流コレクタと、電流コレクタの上に形成されたシリコン黒鉛アノードと、シリコン黒鉛アノードの上に形成されたリチウム金属の膜と、リチウム金属膜の上に形成された保護膜とを含む。保護膜は、リチウムイオン伝導性セラミック、リチウムイオン伝導性ガラス、イオン伝導性高分子、イオン伝導性液晶、これらの複合的な組み合わせ、又はこれらの単位層の組み合わせを含む群から選択されるリチウムイオン伝導性材料である。
【0010】
[0010] さらに別の実装では、アノード電極構造が提供される。アノード電極構造は、銅を含む電流コレクタと、電流コレクタの上に形成されたリチウム金属膜と、リチウム金属膜の上に形成された保護膜スタックとを備える。保護膜スタックは、リチウム金属膜の上に形成された保護膜と、保護膜の上に形成された第1の高分子膜と、第1の高分子膜の上に形成されたセラミック膜と、セラミック膜の上に形成された第2の高分子膜とを含む。保護膜は、フッ化リチウム(LiF)、酸化アルミニウム、ビスマスカルコゲニド、銅カルコゲニド、炭酸リチウム(LiCO)、及びこれらの組み合わせの群から選択される。
【0011】
[0011] さらに別の実装では、アノード電極構造が提供される。アノード電極構造は、銅を含む電流コレクタと、電流コレクタの上に形成されたリチウム金属膜と、リチウム金属膜の上に形成された保護膜スタックとを備える。保護膜スタックは、リチウム金属膜の上に形成された第1の高分子膜と、第1の高分子膜の上に形成された誘電体膜と、セラミック膜の上に形成された第2の高分子膜とを含む。
【0012】
[0012] さらに別の実装では、アノード電極構造が提供される。アノード電極構造は、銅を含む電流コレクタと、電流コレクタの上に形成されたリチウム金属膜と、リチウム金属膜の上に形成された保護膜スタックとを備える。保護膜スタックは、リチウム金属膜の上に形成された銅膜、銅膜の上に形成された誘電体膜、及び誘電体膜の上に形成されたポリマー膜を含む。
【0013】
[0013] さらに別の実装では、方法が提供される。方法は、電流コレクタの上にリチウム金属膜を形成することを含む。電流コレクタは銅を含む。方法は、リチウム金属膜の上に銅膜を形成することと、銅膜の上に保護膜を形成することとをさらに含む。保護膜は、リチウムイオン伝導性セラミック、リチウムイオン伝導性ガラス、イオン伝導性高分子、イオン伝導性液晶、これらの複合的な組み合わせ、又はこれらの単位層の組み合わせを含む群から選択されるリチウムイオン伝導性膜である。
【0014】
[0014] さらに別の実装では、方法が提供される。方法は、電流コレクタ上にシリコン黒鉛膜を形成することを含む。電流コレクタは銅を含む。方法は、シリコン黒鉛アノードの上にリチウム金属の膜を形成することと、リチウム金属膜の上に保護膜を形成することとをさらに含む。保護膜は、リチウムイオン伝導性セラミック、リチウムイオン伝導性ガラス、イオン伝導性高分子、イオン伝導性液晶、これらの複合的な組み合わせ、又はこれらの単位層の組み合わせを含む群から選択されるリチウムイオン伝導性材料である。
【0015】
[0015] さらに別の実装では、方法が提供される。方法は、電流コレクタの上にリチウム金属膜を形成することを含む。電流コレクタは銅を含む。方法は、リチウム金属膜の上に保護膜スタックを形成することをさらに含む。保護膜スタックは、リチウム金属膜の上に保護膜を形成することと、保護膜の上に形成された第1の高分子膜を形成することと、第1の高分子膜の上に形成されたセラミック膜を形成することと、セラミック膜の上に第2の高分子膜を形成することとを含む。保護膜は、フッ化リチウム(LiF)、酸化アルミニウム、ビスマスカルコゲニド、銅カルコゲニド、炭酸リチウム(LiCO)、及びこれらの組み合わせの群から選択される。
【0016】
[0016] さらに別の実装では、方法が提供される。方法は、電流コレクタの上にリチウム金属膜を形成することを含む。電流コレクタは銅を含む。方法は、リチウム金属膜の上に保護の上に膜スタックを形成することをさらに含む。保護膜スタックは、リチウム金属膜の上に第1の高分子膜を形成することと、第1の高分子膜の上に誘電体膜を形成することと、誘電体膜の上に第2の高分子膜を形成することとを含む。
【0017】
[0017] さらに別の実装では、方法が提供される。方法は、電流コレクタの上にリチウム金属膜を形成することを含む。電流コレクタは銅を含む。方法は、リチウム金属膜の上に保護膜スタックを形成することをさらに含む。保護膜スタックは、リチウム金属膜の上に金属膜を形成することと、第1の高分子膜の上に誘電体膜を形成することと、誘電体膜の上に高分子膜を形成することとを含む。
【0018】
[0018] 上述の本開示の特徴を詳細に理解しうるように、上記で簡単に要約された実装のより具体的な説明が、実装を参照することによって得られ、一部の実装、添付の図面に例示されている。しかしながら、本開示は他の等しく有効な実装も許容しうるため、添付の図面は、本開示の典型的な実装のみを示しており、したがって、本発明の範囲を限定すると見なすべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本書に記載の実装により形成された電極構造を包含するエネルギー貯蔵デバイスの一実装の概略的な断面図である。
図2】本書に記載の実装により形成された両面アノード電極構造の一実装の断面図を示す。
図3】本書に記載の実装により形成された両面アノード電極構造の別の実装の断面図を示す。
図4】本書に記載の実装により形成された両面アノード電極構造の別の実装の断面図を示す。
図5】本書に記載の実装により形成された両面アノード電極構造の別の実装の断面図を示す。
図6】本書に記載の実装により形成された両面アノード電極構造の別の実装の断面図を示す。
図7】本書に記載の実装によるアノード電極構造を形成する方法の一実装の概要を表わす処理のフロー図である。
図8】本書に記載の実装によるアノード電極構造を形成する方法の一実装の概要を表わす処理のフロー図である。
図9】本書に記載の実装によるアノード電極構造を形成する方法の一実装の概要を表わすプロセスのフロー図である。
図10】本書に記載の実装によるアノード電極構造を形成する方法の一実装の概要を表わすプロセスのフロー図である。
図11】本書に記載の実装によるアノード電極構造を形成する方法の一実装の概要を表わす処理のフロー図である。
図12】本書に記載の実装によるアノード電極構造を形成するための一体型処理ツール概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[0031] 理解を容易にするために、可能な場合には、図に共通する同一の要素を指し示すのに同一の参照番号を使用した。一実装の要素及び特徴は、さらなる記述がなくとも、他の実装に有益に組み込まれうることがあると想定されている。
【0021】
[0032] 以下の開示はアノード電極、高性能電気化学セル及び電池について記述したもので、前述のアノード電極及びその製造方法を含む。本開示の様々な実施形態を完全に理解させるため、特定の詳細が以下の記載及び図1図12で提示される。多くの場合、電気化学セル及び電池に関連する周知の構造及びシステムを記述する他の詳細は、様々な実装の記述が無用に曖昧にならないように、以下の開示に記述されている。
【0022】
[0033] 図に示した詳細、寸法、角度及び他の特徴の多くは、特定の実装の例示にすぎない。したがって、他の実装は、本開示の本質及び範囲から逸脱することなく、他の詳細、構成要素、寸法、角度を有しうる。加えて、さらに本開示の実装は、以下で説明されるいくつかの詳細なしでも実行されうる。
【0023】
[0034] 本書に記載された実装は、TopMet(商標)、SMARTWEB(商標)、TopBeam(商標)などのリールツーリールコーティングシステムを参照して以下で説明される。これらすべては、カリフォルニア州サンタクララのApplied Materials,Inc.から入手可能である。物理的気相堆積処理(例えば、高速蒸着処理及びマグネトロンスパッタリング処理)が実行可能な他のツールも、本書に記載の実装の利点に適合されうる。しかも、本書に記載の物理的気相堆積処理を可能にする任意のシステムを使用して、利益をもたらすこともできる。本書に記載の装置の説明は、例示的なものであって、本書に記載された実装の範囲を制限するものとして理解又は解釈するべきではない。ここではリールツーリールプロセスとして説明されているが、本書に記載された実装は、個々の基板上でも実行しうることも理解されたい。
【0024】
[0035] エネルギー貯蔵デバイス、例えば電池は、典型的には、正極、多孔質セパレータによって分離されたアノード電極、及びイオン伝導性マトリックスとして使用される電解質からなる。黒鉛アノードは、現在の技術水準であるが、業界は、セルエネルギー密度を高めるために、黒鉛ベースのアノードからシリコン混合黒鉛アノードに移行している。しかしながら、シリコン混合黒鉛アノードは、しばしば、第1サイクル中に生じる不可逆的な容量損失を被る。したがって、この第1サイクル容量損失を補充するための方法が必要とされている。
【0025】
[0036] リチウム金属の堆積は、シリコン混合黒鉛アノードのこの第1サイクル容量損失を補充するための方法の1つである。リチウム金属堆積のための多くの方法(例えば、熱蒸着、積層、印刷など)があるが、特に大量生産環境において、デバイス積層前にスプール上に蒸着されたリチウム金属の取り扱いに対処する必要がある。一実装では、リチウムアノードデバイスを形成するための方法及びシステムが提供される。
【0026】
[0037] 本書に記載の実装を使用して、片面又は両面のいずれかの堆積されたリチウム金属は、下流のリールの巻き取り及び送り出し中に保護することができる。Liイオン伝導性高分子、イオン伝導性セラミック、又はイオン伝導性ガラスの薄膜の堆積は、いくつかの利点を有する。第1に、リチウム金属を含む電極のリールは、リチウム金属が隣接する電極に接触することなく巻き取られ、送り出されうる。第2に、安定な固体電解質界面(SEI)が、より良好な電池性能及びリチウム金属の高い電気化学的利用のために確立される。保護層はまた、特に高電流密度動作において、リチウムデンドライトを抑制又は排除に役立ちうる。さらに、保護膜の使用は、製造システムの複雑さを低減し、現在の製造システムと互換性がある。
【0027】
[0038] 図1は、本書に記載された実装に従って形成されたアノード電極構造が組み込まれたエネルギー貯蔵デバイス100の一実装の概略断面図を示す。エネルギー貯蔵デバイス100は、平面構造体として示されているが、層のスタックを巻回することによって円筒形に形成されていてもよく、さらに、他のセル構成(例えば、角柱セル、ボタンセル、又は積層電極セル)も形成されてよい。エネルギー貯蔵デバイス100は、アノード電極構造110とカソード電極構造120とを含み、それらの間にセパレータ膜130が配置される。カソード電極構造120は、カソード電流コレクタ140とカソード膜150とを含む。アノード電極構造110は、アノード電流コレクタ160と、アノード膜170と、さらに、保護膜175、リチウムイオン伝導性高分子膜180、セラミックコーティング185、結合多孔質高分子膜190のうちの少なくとも1つとを含む。
【0028】
[0039] カソード電極構造120は、カソード電流コレクタ140と、カソード電流コレクタ140上に形成されたカソード膜150とを含む。カソード電極構造120は、他の要素又は膜を含んでもよいことを理解されたい。
【0029】
[0040] カソード膜150及びアノード膜170それぞれの上の電流コレクタ140、160は、同一の電子伝導体であってもよく、又は異なった電子伝導体であってもよい。電流コレクタ140、160を構成しうる金属の例は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、ステンレス鋼、クラッド材、これらの合金、及びこれらの組み合わせを含む。一実装では、電流コレクタ140、160のうちの少なくとも1つが穿孔される。一実装では、電流コレクタ140、160のうちの少なくとも1つは、金属材料でコーティングされたポリエチレンテレフタレート(「PET」)高分子基板を含む。一実装では、アノード電流コレクタ160は、銅がコーティングされたPET膜である。別の実装では、アノード電流コレクタ160は、PET上の多重金属層である。多重金属層は、銅、クロム、ニッケルなどの組み合わせであってもよい。一実装では、アノード電流コレクタ160は、銅-ニッケルクラッド材料を含む多層構造である。一実装では、多層構造は、ニッケル又はクロムの第1の層と、第1の層上に形成された銅の第2の層と、第2の層上に形成されたニッケル、クロム、又はその両方を含む第3の層とを含む。一実装では、アノード電流コレクタ160は、ニッケルがコーティングされた銅である。さらに、電流コレクタは、任意のフォームファクタ(例えば、金属の箔、シート、又はプレート)、形状、及びミクロ/マクロ構造のものであってよい。一般的に、角柱セルでは、タブは電流コレクタと同一の材料で形成されるが、スタックの製造中に形成されてもよく、或いは後で付加されてもよい。いくつかの実装では、電流コレクタはスタックを越えて延在し、スタックを越えて延在する電流コレクタの部分は、タブとして使用することができる。電流コレクタ140及び160を除くすべての構成要素が、リチウムイオン電解質を含有している。一実装では、カソード電流コレクタ140は、アルミニウムである。別の実施では、カソード電流コレクタ140は、PET膜上に堆積されたアルミニウムを含む。一実装では、カソード電流コレクタ140は、約0.5μmから約20μm(例えば、約1μmから約10μm、約2μmから約8μm、約5μmから約10μm)の厚さを有する。一実装では、アノード電流コレクタ160は、銅である。一実装では、アノード電流コレクタ160は、約0.5μmから約20μm(例えば、約1μmから約10μm、約2μmから約8μm、約6μmから約12μm、約5μmから約10μm)の厚さを有する。
【0030】
[0041] カソード膜150又はカソードは、アノードと適合性のある任意の材料であってもよく、層間化合物、挿入化合物、又は電気化学的な活性のある高分子を含みうる。適切な層間材料には、例えば、リチウム含有金属酸化物、MoS、FeS、BiF、FeOF、MnO、TiS、NbSe、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、V13、及びVなどが含まれる。適切な高分子には、例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、及びポリチオフェンが含まれる。カソード膜150又はカソードは、リチウムコバルト酸化物などの層状酸化物、リン酸鉄リチウムなどのカンラン石、又はリチウムマンガン酸化物などの尖晶石から作製されうる。例示的なリチウム含有酸化物は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)などのように層状であってよく、或いは、LiNixCo1-2xMnO、LiNiMnCoO(“NMC”)、LiNi0.5Mn1.5、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O、LiMnなどの混合金属酸化物、並びにドープされたリチウムが豊富な層状材料であってもよい。ここで、xはゼロ又は非ゼロの数値である。例示的なリン酸塩は、鉄カンラン石(LiFePO)のこともあり、これは変種(LiFe(1-x)MgPO)、LiMoPO、LiCoPO、LiNiPO、Li(PO、LiVOPO、LiMP、又はLiFe1.5であってもよい。ここで、xはゼロ又はゼロ以外の数値である。例示的なフルオロリン酸塩は、LiVPOF、LiAlPOF、LiV(PO、LiCr(PO、LiCoPOF、又はLiNiPOFであってもよい。例示的なケイ酸塩は、LiFeSiO、LiMnSiO、又はLiVOSiOであってもよい。例示的な非リチウム化合物は、Na(POである。
【0031】
[0042] アノード電極構造110は、アノード電流コレクタ160を含み、アノード膜170がアノード電流コレクタ160上に形成される。アノード電極構造110は、保護膜175、リチウムイオン伝導性高分子膜180、セラミックコーティング185、及び結合多孔質高分子膜190のうちの少なくとも1つを任意に含んでもよい。図1に示す実施例では、保護膜175はアノード膜170上に形成される。保護膜175上には、リチウムイオン伝導性高分子膜180の膜が形成されている。セラミックコーティング185は、リチウムイオン伝導性高分子膜180上に形成される。セパレータ膜130とアノード膜170との間には、結合多孔質高分子膜190が形成されている。
【0032】
[0043] アノード膜170は、カソード膜150と適合性のある任意の材料であってもよい。アノード膜170は、372mAh/g以上、好ましくは、700mAh/g以上、最も好ましくは1000mAh/g以上のエネルギー容量を有しうる。アノード膜170は、黒鉛、シリコン含有黒鉛、リチウム金属、リチウム金属箔又はリチウム合金箔(例えば、リチウムアルミニウム合金)、或いは、リチウム金属及び/又はリチウム合金と、カーボン(例えば、コークス、黒鉛)、ニッケル、銅、スズ、インジウム、シリコン、これらの酸化物、又はこれらの組み合わせなどの材料との混合物から構成されうる。アノード膜170は、典型的に、リチウムを含む層間化合物又はリチウムを含む挿入化合物を含む。アノード膜170がリチウム金属を含むいくつかの実装では、リチウム金属は、本書に記載の方法を用いて堆積されうる。
【0033】
[0044] 一実装では、アノード膜170は、約10μmから約200μm(例えば、約1μmから約100μm、約10μmから約30μm、約20μmから約30μm、約1μmから約20μm、又は約50μmから約100μm)の厚みを有する。一実装では、アノード膜170は、リチウム金属膜である。
【0034】
[0045] いくつかの実装では、保護膜175はアノード膜170上に形成される。保護膜175は、フッ化リチウム(LiF)、金属膜(例えば、銅、ビスマス、スズ、又はこれらの組み合わせ)、銅カルコゲニド(例えば、CuS、CuSe、CuS)、ビスマスカルコゲニド(例えば、BiTe、BiSe)、及び炭酸リチウム(LiCO)のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実装では、保護膜175は、リチウムイオン及びリチウム原子のうちの少なくとも1つに対して透過性である。保護膜175は、アノード膜170の表面保護を提供し、これは、乾燥室内でのアノード膜の取り扱いを可能にする。理論によって制約されるものではないが、保護膜175は、リチウム伝導性電解質を取り込んで、デバイス製造中にゲルを形成することができると考えられている。これは、良質な固体電解質界面(SEI)の形成に有益であり、さらに抵抗の低下に役立つ。エネルギー貯蔵デバイス100が固体エネルギー貯蔵デバイスであるいくつかの実装では、保護膜175は、より良好なSEIを構築し、デバイス性能を改善するのに役立つ。保護膜175は、蒸着又はスパッタリングなどの物理的気相堆積(PVD)、原子層堆積(ALD)、スロットダイプロセス、ディップコーティング、薄膜転写プロセス、グラビアコーティング、又は三次元リチウム印刷プロセスによって、アノード膜170の上に直接堆積されうる。PVDは、保護膜175の堆積のための好適な方法である。
【0035】
[0046] いくつかの実装では、保護膜175は、金属膜である。金属膜は、極薄金属シード膜であってもよい。金属膜は、銅膜であってもよい。銅膜は、極薄銅膜であってもよい。
【0036】
[0047] 保護膜175は、1ナノメートルから2,000ナノメートルの範囲内(例えば、10ナノメートルから600ナノメートルの範囲内、50ナノメートルから100ナノメートルの範囲内、50ナノメートルから200ナノメートルの範囲内、100ナノメートルから150ナノメートルの範囲内)の厚みを有する被覆層又は離散層となりうる。保護膜175は、1ミクロンから50ミクロンの範囲内(例えば、1ミクロンから25ミクロンの範囲内)の厚みを有する離散膜である。
【0037】
[0048] 保護膜175は多孔質であってよい。いくつかの実装では、保護膜175はナノポアを有する。一実装では、保護膜175は、約10ナノメートル未満(例えば、約1ナノメートルから約10ナノメートル、約3ナノメートルから約5ナノメートル)の平均孔サイズ又は直径を有するようにサイズ決定された複数のナノポアを有する。別の実装では、保護膜175は、約5ナノメートル未満の平均孔サイズ又は直径を有するようサイズ決めされた複数のナノポアを有する。一実装では、保護膜175は、約1ナノメートルから約20ナノメートル(例えば、約2ナノメートルから約15ナノメートル、又は約5ナノメートルから約10ナノメートル)の範囲の直径を有する複数のナノポアを有する。
【0038】
[0049] いくつかの実装では、保護膜175の上には、リチウムイオン伝導性高分子膜180が形成されている。理論によって制約されるものではないが、リチウムイオン伝導性高分子膜180は、リチウムイオンを伝導し、また、アノード膜170から生じうる任意の樹枝状結晶をブロックすると考えられている。リチウムイオン伝導性高分子膜180を形成するために使用されうるイオン伝導性高分子の例には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド(PEO)、エチレンオキシド(EO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スクシノニトリル(C(CN))、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ(硫黄-ランダム)-トリアリルアミン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)イオン液体、及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
[0050] いくつかの実装では、セラミックコーティング185は、リチウムイオン伝導性高分子膜180の上に形成される。セラミックコーティング185は一又は複数の誘電体材料を含む。誘電体材料はセラミック材料であってもよい。セラミック材料は酸化物であってもよい。セラミック材料は、例えば、酸化アルミニウム(Al)、AlO、AlO、オキシ水酸化アルミニウムAlO(OH)、AlN(窒素環境下で堆積したアルミニウム)、炭酸カルシウム(CaCO)、二酸化チタン(TiO)、酸化ニオブ(Nb)、SiS、SiPO、酸化ケイ素(SiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、MgO、TiO、Ta、Nb、LiAlO、LiNbO、LiTaO、LiNbO、BaTiO、BN、イオン伝導性ガーネット、イオン伝導性ペロブスカイト、イオン伝導性逆ペロブスカイト、多孔質ガラスセラミックなど、又はこれらの組み合わせから選択されうる。一実装では、セラミック材料は、多孔質酸化アルミニウム、多孔質ZrO、多孔質SiO、多孔質MgO、多孔質TiO、多孔質Ta、多孔質Nb、多孔質LiAlO、多孔質LiNbO、多孔質LiTaO、多孔質LiNbO、多孔質BaTiO、イオン伝導性ガーネット、抗イオン伝導性ペロブスカイト、LiS-Pガラス、多孔質ガラス誘電体、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。セラミックコーティング185は結合剤なしの誘電体膜である。いくつかの実装では、セラミックコーティング185は多孔質酸化アルミニウム膜である。
【0040】
[0051] セラミックコーティング185は、リチウムイオン伝導性セラミック又はリチウムイオン伝導性ガラスであってもよい。Liイオン伝導性材料は、例えば、LiPON、LiLaZr12の結晶相又はアモルファス相のいずれかがドープされた変異体、ドープされた逆ペロブスカイト組成物、LiS-P、LiS、LiKSO、LiP、Li13、Li10GeP12、LiPS、LiNH、LiNO、水素化ホウ素リチウムアミドLi(BH1-x(NH、リン酸リチウムガラス、(1-x)LiI-(x)LiSnS、xLiI-(1-x)LiSnS、混合硫化物及び酸化物電解質(結晶性LLZO、アモルファス(1-x)LiI-(x)LiSnS混合物、及びアモルファスxLiI-(1-x)LiSnS)から構成されうる。一実装では、xは0と1の間(例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、及び0.9)である。リチウムイオン伝導性材料は、物理的気相堆積(PVD)、化学的気相(CVD)、スプレー、ドクターブレード、印刷、又は多数のコーティング方法のいずれかを用いて、リチウム金属膜上に直接堆積することができる。いくつかの実装に適切な方法はPVDである。いくつかの実装では、セラミックコーティング185は、イオン伝導性である必要はないが、電解質(液体、ゲル、固体、これらの組合せなど)で充填されると、多孔質基板と電解質の組合せはイオン伝導性になる。
【0041】
[0052] いくつかの実施形態では、セラミックコーティング185は、ジルコン酸リチウム(LiZrO)、LiPON、ガーネット型LiLaZr12の結晶相又はアモルファス相、LISICON(例えば、Li2+2xZn1-xGeO、ここで0<x<1)、NASICON(例えば、Na1+xZrSi3-x12、ここで0<x<3)、水素化ホウ素リチウム(LiBH)、ドープされた逆ペロブスカイト組成、硫化物を含むリチウム(例えば、LiS、LiS-P、Li10GeP12及びLiPS)、並びにリチウムアルジロダイト(例えば、XがCl、Br又はIであるLiPSX)からなる群から選択される。
【0042】
[0053] セラミックコーティング185は、1ナノメートルから2,000ナノメートルの範囲内(例えば、10ナノメートルから600ナノメートルの範囲内、50ナノメートルから100ナノメートルの範囲内、100ナノメートルから200ナノメートルの範囲内、100ナノメートルから150ナノメートルの範囲内)の厚みを有する。
【0043】
[0054] いくつかの実装では、結合多孔質高分子膜190が、セラミックコーティング185とセパレータ膜130との間に形成される。理論によって制約されるものではないが、結合多孔質高分子膜190は、一緒に接合されたときに、アノード電極構造110とセパレータ膜130との間の接着性を改善するのに役立つと考えられる。
【0044】
[0055] 結合多孔質高分子膜190用の高分子は、Liイオン電池業界で現在使用されている高分子から選択することができる。ゲル高分子膜を形成するために使用しうる高分子の例には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド(PEO)、エチレンオキシド(EO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スクシノニトリル(C(CN))、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)イオン液体、及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。理論によって制約されるものではないが、結合多孔質高分子膜190は、リチウム伝導性電解質を取り込んで、デバイス製造中にゲルを形成することができると考えられている。これは、良質な固体電解質界面(SEI)の形成に有益であり、さらに抵抗の低下に役立つ。いくつかの実装では、ゲル電解質又は液晶電解質は、温かい液体とリチウムイオン伝導性塩との混合物を使用することによって作製される。暖かい液体の混合物は、らせん状に巻かれた電極又は積層された電極に注入され、ネットワーク電極の細孔を満たし、電解質は、室温で固体又はゲルを形成する。結合多孔質高分子層190は、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、グラビアコーティング、又は印刷によって形成されうる。硫黄イオンを有する有機高分子(例えば、LiO混合物を有するポリフェニレンスルフィド)は、リチウム金属ベースのアノードに対して良好な結果を示し、場合によっては液晶電解質を形成する。
【0045】
[0056] 結合多孔質高分子膜190は、5ナノメートル~2,000マイクロメートルの範囲(例えば、10ナノメートル~600ナノメートルの範囲、50ナノメートル~100ナノメートルの範囲、100ナノメートル~200ナノメートルの範囲、100ナノメートル~150ナノメートルの範囲)の厚みを有しうる。
【0046】
[0057] セパレータ膜130は、アノード電極構造110とカソード電極構造120との間に形成される。セパレータ膜130は、細孔を有するイオン(例えば、セパレータ膜)を伝導することができる多孔質(例えば、微多孔質)高分子基板を含む。いくつかの実装では、多孔質高分子基板自体は、イオン伝導性である必要はないが、一旦、電解質(液、ゲル、固体、これらの組み合わせ等)で充填されると、多孔質基板と電解質との組み合わせが、イオン伝導性になる。一実装では、多孔質高分子基板は、多重膜高分子基板である。一実装では、細孔はマイクロポアである。いくつかの実装では、多孔質高分子基板は、任意の市販の高分子微多孔質膜(例えば、一重プライ又は多重プライ)からなる。例えば、これらの製品は、Polypore(ノースカロライナ州シャーロットのCelgard社)、東レ東燃(バッテリセパレータ膜(BSF))、SK Energy(リチウムイオンバッテリセパレータ(LiBS))、Evonik industries(SEPARION(登録商標)セラミックセパレータ膜)、旭化成(Hipore(商標)ポリオレフィン製平膜)、デュポン(Energain(登録商標))などによって製造されている。いくつかの実装では、多孔質高分子基板は、20~80%の範囲内(例えば、28~60%の範囲内)の多孔率を有する。いくつかの実装では、多孔質高分子基板は、0.02~5ミクロン(例えば、0.08~2ミクロン)の範囲の平均孔サイズを有する。いくつかの実装では、多孔質高分子基板は、15~150秒の範囲のガーレー数を有する。いくつかの実装では、多孔質高分子基板は、ポリオレフィン製である。例示的なポリオレフィンは、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はこれらの組み合わせを含む。
【0047】
[0058] エネルギー貯蔵デバイス100が固体電池であるいくつかの実装では、セパレータ膜130は、リチウムイオン伝導ガラスで置き換えられる。リチウムイオン伝導性材料は、リチウムイオン伝導性セラミック又はリチウムイオン伝導性ガラスであってもよい。Liイオン伝導性材料は、例えば、LiPON、LiLaZr12の結晶相又はアモルファス相のいずれかがドープされた変異体、ドープされた逆ペロブスカイト組成物、LiS-P、Li10GeP12、及びLiPS、リン酸リチウムガラス、(1-x)LiI-(x)LiSnS、xLiI-(1-x)LiSnS、混合硫化物及び酸化物電解質(結晶性LLZO、アモルファス(1-x)LiI-(x)LiSnS混合物、及びアモルファスxLiI-(1-x)LiSnS)から構成されうる。一実装では、xは0と1の間(例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、及び0.9)である。
【0048】
[0059] アノード電極構造110、カソード電極構造120及びセパレータ膜130に注入される電解質は、液体/ゲル又は固体高分子から構成することができ、それぞれが異なっていてもよい。いくつかの実装では、電解質は主として塩と媒質を含む(例えば、液体電解質では、媒質は溶媒と称されてもよく、ゲル電解質では、媒質は高分子マトリクスであってよい)。塩は、リチウム塩であってよい。リチウム塩には、例えば、LiPF、LiAsF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiBF、及びLiClO、BETTE電解質(ミネソタ州ミネアポリスの3M Corpから市販されている)及びこれらの組み合わせが含まれうる。溶媒には、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、EC/PC、2-MeTHF(2-メチルテトラヒドロフラン)/EC/PC、EC/DMC(ジメチルカーボネート)、EC/DME(ジメチルエタン)、EC/DEC(ジメチルカーボネート)、EC/EMC(エチルメチルカーボネート)、EC/EMC/DMC/DEC、EC/EMC/DMC/DEC/PE、PC/DME、及びDME/PCが含まれうる。高分子マトリクスには、例えば、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、PVDF:THF(PVDF:テトラヒドロフラン)、PVDF:CTFE(PVDF:クロロトリフルオロエチレン)、PAN(ポリアクリロニトリル)、及びPEO(ポリエチレン酸化物)が含まれうる。一実装では、電解質は塩中の溶剤であり、溶剤の割合は、典型的な電解質における溶剤の割合よりもはるかに低い。
【0049】
[0060] 図2は、本書に記載の実装により形成されたアノード電極構造200の一実装の断面図を示す。図2では、アノード電流コレクタ160がスタックを越えて延在するように示されているが、アノード電流コレクタ160がスタックを越えて延在する必要はないが、スタックを越えて延在する部分をタブとして使用しうることに留意されたい。アノード電極構造200は、両面電極構造として描かれているが、本書に記載の実装は、片面電極構造にも適用されうることを理解されたい。
【0050】
[0061] アノード電極構造200は、アノード電流コレクタ160、アノード電流コレクタ160の反対側に形成されたアノード膜170a、170b(総称して170)を有する。一実装では、アノード膜170は、リチウム金属膜である。一実装では、アノード膜170は、20マイクロメートル以下(例えば、約1マイクロメートル~約20マイクロメートル)の厚みを有する。金属膜210a、210b(総称して210)は、各アノード膜170a、170b上に形成される。一実装では、金属膜は、銅膜、ビスマス膜、又はスズ膜から選択される。一実装では、金属膜は、100ナノメートル以下(例えば、約5ナノメートル~約100ナノメートル、約5ナノメートル~約40ナノメートル、約10ナノメートル~約20ナノメートル、約50ナノメートル~約100ナノメートル)の厚みを有する極薄金属膜である。いくつかの実装では、図2に描かれているように、金属膜210は、アノード電流コレクタ160と接触するように延在するアノード膜170の露出した表面(例えば、上面及び側壁)をコーティングする。金属膜220a、220b(総称して220)は、各アノード膜210a、210b上に形成される。いくつかの実装では、保護膜220は、リチウムイオン及びリチウム原子のうちの少なくとも1つに対して透過性である。一実装では、保護膜220は、リチウムイオン伝導性セラミック、リチウムイオン伝導性ガラス、又はイオン伝導性液晶を含む群から選択される。保護膜220は、5ナノメートル~2,000マイクロメートルの範囲(例えば、10ナノメートル~600ナノメートルの範囲、50ナノメートル~100ナノメートルの範囲、100ナノメートル~200ナノメートルの範囲、100ナノメートル~150ナノメートルの範囲)の厚みを有しうる。
【0051】
[0062] 図3は、本書に記載の実装により形成されたアノード電極構造300の別の実装の断面図を示す。図3では、アノード電流コレクタ160がスタックを越えて延在するように示されているが、アノード電流コレクタ160がスタックを越えて延在する必要はないが、スタックを越えて延在する部分をタブとして使用しうることに留意されたい。アノード電極構造300は、両面電極構造として描かれているが、本書に記載の実装は、片面電極構造にも適用されうることを理解されたい。
【0052】
[0063] アノード電極構造300は、アノード電流コレクタ160、アノード電流コレクタ160の反対側に形成されたアノード膜170a、170b(総称して170)を有する。一実装では、アノード膜170は、シリコン黒鉛膜である。一実装では、アノード膜170は、約100マイクロメートル以下(例えば、約1μm~約100μm、約10μm~約30μm、約20μm~約30μm、約3μm~約20μm、又は約50μm~約100μm)の厚みを有する。リチウム金属膜310a、310b(総称して310)が、アノード膜170a,170bのそれぞれの上面320a、320b(総称して320)に形成されている。いくつかの実装では、リチウム金属膜310は、上面320及び側壁330a、330b(総称して330)を含むアノード膜170の露出表面上に形成される。リチウム金属膜310は、シリコン混合黒鉛アノードの第1サイクル容量損失を補充する。リチウム金属膜310は、20ナノメートル以下(例えば、約1ナノメートル~約20ナノメートル、約1ナノメートル~約10ナノメートル、又は約5ナノメートル~約10ナノメートル)の厚みを有する極薄リチウム膜である。
【0053】
[0064] いくつかの実装では、図3に描かれるように、保護膜340a、340b(総称して340)は、リチウム金属膜310の露出表面、及びアノード電流コレクタ160と接触するように延在するアノード膜170の露出表面(例えば、上面及び側壁)をコーティングする。いくつかの実装では、保護膜340は、リチウムイオン及びリチウム原子のうちの少なくとも1つに対して透過性である。一実装では、保護膜340は、リチウムイオン伝導性セラミック、リチウムイオン伝導性ガラス、又はイオン伝導性液晶を含む群から選択される。保護膜340は、5ナノメートル~2,000マイクロメートルの範囲(例えば、10ナノメートル~600ナノメートルの範囲、50ナノメートル~100ナノメートルの範囲、100ナノメートル~200ナノメートルの範囲、100ナノメートル~150ナノメートルの範囲)の厚みを有しうる。
【0054】
[0065] 図4は、本書に記載の実装により形成されたアノード電極構造400の別の実装の断面図を示す。図4では、アノード電流コレクタ160がスタックを越えて延在するように示されているが、アノード電流コレクタ160がスタックを越えて延在する必要はないが、スタックを越えて延在する部分をタブとして使用しうることに留意されたい。アノード電極構造400は、両面電極構造として描かれているが、本書に記載の実装は、片面電極構造にも適用されうることを理解されたい。
【0055】
[0066] アノード電極構造400は、アノード電流コレクタ160、アノード電流コレクタ160の反対側に形成されたアノード膜170a、170b(総称して170)を有する。一実装では、アノード膜170は、シリコン黒鉛膜である。一実装では、アノード膜170は、リチウム金属膜である。一実装では、アノード膜170は、約100マイクロメートル以下(例えば、約1μm~約100μm、約10μm~約30μm、約20μm~約30μm、約3μm~約20μm、又は約50μm~約100μm)の厚みを有する。保護膜スタック410a、410b(総称して410)は、アノード膜170の上に形成される。いくつかの実装では、保護膜スタック410は、アノード膜170の上面420a、420b(総称して420)及び側壁430a、430b(総称して430)を含むアノード膜170の露出面の上に形成される。保護膜スタック410は、保護膜440a、440b(集合的に440)、保護膜スタック410上に形成された第1の高分子膜450a、450b(集合的に450)、第1の高分子膜450上に形成されたセラミック膜460a、460b(集合的に460)、及びセラミック膜460上に形成された第2の高分子膜470a、470b(集合的に470)を含む。
【0056】
[0067] 保護膜440は、フッ化リチウム(LiF)、酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム(AlO(OH))、銅カルコゲニド(例えば、CuS、CuSe、CuS)、ビスマスカルコゲニド(例えば、BiTe、BiSe)、炭酸リチウム(LiCO)、及びこれらの組み合わせの群から選択される。一実装では、保護膜440は、炭酸リチウム膜(LiCO)である。一実装では、保護膜440は、20ナノメートル以下(例えば、約1ナノメートル~約20ナノメートル、約1ナノメートル~約10ナノメートル、又は約5ナノメートル~約10ナノメートル)の厚みを有する極薄膜である。いくつかの実装では、保護膜440は、アノード膜170の上面420a、420b(総称して420)及び側壁430a、430b(総称して430)を含むアノード膜170の露出面の上に形成される。
【0057】
[0068] 第1の高分子膜450は、保護膜440の上に形成される。第1の高分子膜450は、接合層として機能し、イオン伝導性を高める。一実装では、第1の高分子膜450は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド(PEO)、エチレンオキシド(EO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スクシノニトリル(C(CN))、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)イオン液体、及びこれらの組み合わせを含む群から選択される。一実装では、第1の高分子膜450は、20ナノメートル以下(例えば、約1ナノメートル~約20ナノメートル、約1ナノメートル~約10ナノメートル、又は約5ナノメートル~約10ナノメートル)の厚みを有する。いくつかの実装では、第1の高分子膜450は、保護膜440の上面及び側壁を含む保護膜440の露出面の上に形成される。
【0058】
[0069] セラミック膜460は、第1の高分子膜450の上に形成される。セラミック膜460は、リチウムイオン伝導促進剤(lithium-ion conducting enhancer)として機能し、樹枝状結晶をブロックする。一実装では、セラミック膜460は、多孔質膜である。セラミック膜460は、セラミックコーティング185と同様になりうる。一実装では、セラミック膜460は、LiPON、ガーネット型LiLaZr12の結晶相又はアモルファス相、LISICON(例えば、Li2+2xZn1-xGeO、ここで0<x<1)、NASICON(例えば、Na1+xZrSi3-x12、ここで0<x<3)、水素化ホウ素リチウム(LiBH)、ドープされた逆ペロブスカイト組成、硫化物を含むリチウム(例えば、LiS、LiS-P、Li10GeP12及びLiPS)、並びにリチウムアルジロダイト(例えば、XがCl、Br又はIであるLiPSX)からなる群から選択される。一実装では、セラミック膜460は、20ナノメートル以下(例えば、約1ナノメートル~約20ナノメートル、約1ナノメートル~約10ナノメートル、又は約5ナノメートル~約10ナノメートル)の厚みを有する。いくつかの実装では、セラミック膜460は、第1の高分子膜450の上面及び側壁を含む第1の高分子膜450の露出面の上に形成される。
【0059】
[0070] 第2の高分子膜470は、セラミック膜460の上に形成される。第2の高分子膜470は、接合層として機能し、イオン伝導性を高める。一実装では、第2の高分子膜470は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド(PEO)、エチレンオキシド(EO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スクシノニトリル(C(CN))、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)イオン液体、及びこれらの組み合わせを含む群から選択される。一実装では、第2の高分子膜470は、20ナノメートル以下(例えば、約1ナノメートル~約20ナノメートル、約1ナノメートル~約10ナノメートル、又は約5ナノメートル~約10ナノメートル)の厚みを有する。いくつかの実装では、第2の高分子膜470は第2の高分子膜470の上面及び側壁を含むセラミック膜460の露出面の上に形成される。
【0060】
[0071] 図5は、本書に記載の実装により形成されたアノード電極構造500の別の実装の断面図を示す。図5では、アノード電流コレクタ160がスタックを越えて延在するように示されているが、アノード電流コレクタ160がスタックを越えて延在する必要はないが、スタックを越えて延在する部分をタブとして使用しうることに留意されたい。アノード電極構造500は、両面電極構造として描かれているが、本書に記載の実装は、片面電極構造にも適用されうることを理解されたい。
【0061】
[0072] アノード電極構造500は、アノード電流コレクタ160、アノード電流コレクタ160の反対側に形成されたアノード膜170a、170b(総称して170)を有する。一実装では、アノード膜170は、シリコン黒鉛膜である。一実装では、アノード膜170は、約100マイクロメートル以下(例えば、約1μm~約100μm、約10μm~約30μm、約20μm~約30μm、約3μm~約20μm、又は約50μm~約100μm)の厚みを有する。一実装では、アノード膜170は、リチウム金属膜である。保護膜スタック510a、510b(総称して510)は、アノード膜170の上に形成される。いくつかの実装では、保護膜スタック510は、アノード膜170の上面520a、520b(総称して520)及び側壁530a、530b(総称して530)を含むアノード膜170の露出面の上に形成される。保護膜スタック510は、アノード膜170の露出面の上に形成された第1の高分子膜550a、550b(総称して550)、第1の高分子膜550の上に形成された誘電体膜560a、560b(総称して560)、及び誘電体膜560の上に形成された第2の高分子膜570a、570b(総称して570)を含む。
【0062】
[0073] 第1の高分子膜550は、アノード膜170の上に形成される。第1の高分子膜550は、接合層として機能し、イオン伝導性を高める。一実装では、第1の高分子膜550は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド(PEO)、エチレンオキシド(EO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スクシノニトリル(C(CN))、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)イオン液体、及びこれらの組み合わせを含む群から選択される。一実装では、第1の高分子膜550は、20ナノメートル以下(例えば、約1ナノメートル~約20ナノメートル、約1ナノメートル~約10ナノメートル、又は約5ナノメートル~約10ナノメートル)の厚みを有する。いくつかの実装では、第1の高分子膜550は、保護膜170の上面520及び側壁530を含むアノード膜170の露出面の上に形成される。
【0063】
[0074] 誘電体膜560は、第1の高分子膜550の上に形成される。誘電体膜560は、リチウムイオン伝導促進剤として機能し、樹枝状結晶をブロックする。一実装では、誘電体膜560は、多孔質膜である。誘電体膜560は、セラミックコーティング185と同様になりうる。一実装では、誘電体膜560は、LiPON、ガーネット型LiLaZr12の結晶相又はアモルファス相、LISICON(例えば、Li2+2xZn1-xGeO、ここで0<x<1)、NASICON(例えば、Na1+xZrSi3-x12、ここで0<x<3)、水素化ホウ素リチウム(LiBH)、ドープされた逆ペロブスカイト組成、硫化物を含むリチウム(例えば、LiS、LiS-P、Li10GeP12及びLiPS)、並びにリチウムアルジロダイト(例えば、XがCl、Br又はIであるLiPSX)からなる群から選択される。一実装では、誘電体膜560は、20ナノメートル以下(例えば、約1ナノメートル~約20ナノメートル、約1ナノメートル~約10ナノメートル、又は約5ナノメートル~約10ナノメートル)の厚みを有する。いくつかの実装では、誘電体膜560は、第1の高分子膜550の上面及び側壁を含む第1の高分子膜550の露出面の上に形成される。
【0064】
[0075] 第2の高分子膜570は、誘電体膜560の上に形成される。第2の高分子膜570は、接合層として機能し、イオン伝導性を高める。一実装では、第2の高分子膜570は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド(PEO)、エチレンオキシド(EO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スクシノニトリル(C(CN))、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)イオン液体、及びこれらの組み合わせを含む群から選択される。一実装では、第2の高分子膜570は、20ナノメートル以下(例えば、約1ナノメートル~約20ナノメートル、約1ナノメートル~約10ナノメートル、又は約5ナノメートル~約10ナノメートル)の厚みを有する。いくつかの実装では、第2の高分子膜570は、誘電体膜560の上面及び側壁を含む誘電体膜560の露出面の上に形成される。
【0065】
[0076] 図6は、本書に記載の実装により形成されたアノード電極構造600の別の実装の断面図を示す。図6では、アノード電流コレクタ160がスタックを越えて延在するように示されているが、アノード電流コレクタ160がスタックを越えて延在する必要はないが、スタックを越えて延在する部分をタブとして使用しうることに留意されたい。アノード電極構造600は、両面電極構造として描かれているが、本書に記載の実装は、片面電極構造にも適用されうることを理解されたい。
【0066】
[0077] アノード電極構造600は、アノード電流コレクタ160、アノード電流コレクタ160の反対側に形成されたアノード膜170a、170b(総称して170)を有する。一実装では、アノード膜170は、シリコン黒鉛膜である。一実装では、アノード膜170は、約100マイクロメートル以下(例えば、約1μm~約100μm、約10μm~約30μm、約20μm~約30μm、約3μm~約20μm、又は約50μm~約100μm)の厚みを有する。一実装では、アノード膜170は、リチウム金属膜である。保護膜スタック610a、610b(総称して610)は、アノード膜170の上に形成される。いくつかの実装では、保護膜スタック610は、アノード膜170の上面620a、620b(総称して620)及び側壁630a、630b(総称して630)を含むアノード膜170の露出面の上に形成される。保護膜スタック610は、アノード膜170の露出面の上に形成された金属膜650a、650b(総称して650)、金属膜650の上に形成された誘電体膜660a、660b(総称して660)、及び誘電体膜660の上に形成された高分子膜670a、670b(総称して670)を含む。
【0067】
[0078] 金属膜650は、アノード膜170の上に形成される。金属膜650は保護膜として機能する。金属膜650は、保護膜175と同様になりうる。一実装では、金属膜650は、極薄金属シード膜である。金属膜650は、銅膜であってもよい。銅膜は、極薄銅膜であってもよい。一実装では、金属膜650は、20ナノメートル以下(例えば、約1ナノメートル~約20ナノメートル、約1ナノメートル~約10ナノメートル、又は約5ナノメートル~約10ナノメートル)の厚みを有する。いくつかの実装では、金属膜650は、アノード膜170の上面620及び側壁630を含むアノード膜170の露出面の上に形成される。
【0068】
[0079] 誘電体膜660は、金属膜650の上に形成される。誘電体膜660は、リチウムイオン伝導促進剤として機能し、樹枝状結晶をブロックする。一実装では、誘電体膜660は、多孔質膜である。誘電体膜660は、セラミックコーティング185と同様になりうる。一実装では、誘電体膜660は、LiPON、ガーネット型LiLaZr12の結晶相又はアモルファス相、LISICON(例えば、Li2+2xZn1-xGeO、ここで0<x<1)、NASICON(例えば、Na1+xZrSi3-x12、ここで0<x<3)、水素化ホウ素リチウム(LiBH)、ドープされた逆ペロブスカイト組成、硫化物を含むリチウム(例えば、LiS、LiS-P、Li10GeP12及びLiPS)、並びにリチウムアルジロダイト(例えば、XがCl、Br又はIであるLiPSX)からなる群から選択される。一実装では、誘電体膜660は、20ナノメートル以下(例えば、約1ナノメートル~約20ナノメートル、約1ナノメートル~約10ナノメートル、又は約5ナノメートル~約10ナノメートル)の厚みを有する。いくつかの実装では、誘電体膜660は、金属膜650の上面及び側壁を含む金属膜650の露出面の上に形成される。
【0069】
[0080] 高分子膜670は、誘電体膜660の上に形成される。高分子膜670は、接合層として機能し、イオン伝導性を高める。一実装では、高分子膜670は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド(PEO)、エチレンオキシド(EO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スクシノニトリル(C(CN))、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)イオン液体、及びこれらの組み合わせを含む群から選択される。一実装では、高分子膜670は、20ナノメートル以下(例えば、約1ナノメートル~約20ナノメートル、約1ナノメートル~約10ナノメートル、又は約5ナノメートル~約10ナノメートル)の厚みを有する。いくつかの実装では、高分子膜670は、誘電体膜660の上面及び側壁を含む誘電体膜660の露出面の上に形成される。
【0070】
[0081] 図7は、本書に記載の実装による、アノード電極構造を形成するための方法700の一実装の概要を表わすプロセスのフロー図を示す。アノード電極構造は、図2に示すアノード電極構造200であってよい。工程710では、基板が提供される。一実装では、基板は図12に示したように材料の連続シート1250である。一実装では、基板は、アノード電流コレクタ160である。基板が構成されうる金属の例には、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、ステンレス鋼、クラッド材、これらの合金、及びこれらの組み合わせが含まれうる。一実装では、基板は銅材料である。一実装では、基板は穿孔されている。さらに、基板は、任意のフォームファクタ(例えば、金属の箔、シート、又はプレート)、形状、及びミクロ/マクロ構造のものであってよい。
【0071】
[0082] いくつかの実装では、基板は、電流コレクタの露出表面から有機材料を除去するためのプラズマ処理又はコロナ放電処理のうちの少なくとも1つを含む前処理プロセスに曝される。前処理プロセスは、基板上への膜堆積の前に実行される。
【0072】
[0083] 工程720では、リチウム金属膜が基板の上に形成される。一実装では、リチウム金属膜はアノード膜170であり、基板はアノード電流コレクタ160である。一実装では、リチウム金属膜は銅電流コレクタの上に形成される。いくつかの実装では、アノード膜が基板上に既に存在している場合には、リチウム金属膜はアノード膜の上に形成される。アノード膜170が存在しない場合には、リチウム金属膜が基板の上に直接形成されうる。リチウム金属の薄膜を堆積する任意の適切なリチウム堆積処理は、リチウム金属の薄膜の堆積に用いられうる。リチウム金属の薄膜の堆積は、蒸着などのPVDプロセス、スロットダイプロセス、転写プロセス、又は三次元リチウム印刷プロセスによってなされうる。リチウム金属の薄膜を堆積するためのチャンバは、電子ビーム蒸着器、熱蒸着器、又はスパッタリングシステムなどのPVDシステム、薄膜転写システム(グラビア印刷システムなどの大面積パターン印刷システムを含む)、又はスロットダイ堆積システムを含みうる。
【0073】
[0084] 工程730では、金属膜はリチウム金属膜の上に形成される。一実装では、金属膜は、銅膜、ビスマス膜、又はスズ膜である。図2を参照すると、金属膜は金属膜210であってもよく、リチウム金属膜はアノード膜170であってもよい。一実装では、金属膜は、銅膜、ビスマス膜、スズ膜、又はこれらの組み合わせから選択される。一実装では、金属膜は、100ナノメートル以下(例えば、約5ナノメートル~100ナノメートル、約10ナノメートル~約20ナノメートル、又は約50ナノメートル~約100ナノメートル)の厚みを有する極薄銅膜である。銅の薄膜を堆積するための任意の適切な銅膜堆積プロセスは、銅の薄膜を堆積するために使用されてもよい。銅の薄膜の堆積は、蒸着などのPVDプロセス、スロットダイプロセス、転写プロセス、又は三次元リチウム印刷プロセスによってなされうる。リチウム金属の薄膜を堆積するためのチャンバは、電子ビーム蒸着器、熱蒸着器、又はスパッタリングシステムなどのPVDシステム、薄膜転写システム(グラビア印刷システムなどの大面積パターン印刷システムを含む)、又はスロットダイ堆積システムを含みうる。
【0074】
[0085] 工程740では、保護膜は金属膜の上に形成されうる。図2を参照すると、保護膜は保護膜220であってもよく、銅膜は金属膜210であってもよい。いくつかの実装では、保護膜220は、リチウムイオン及びリチウム原子のうちの少なくとも1つに対して透過性である。一実装では、保護膜220は、リチウムイオン伝導性セラミック、リチウムイオン伝導性ガラス、イオン伝導性高分子、イオン伝導性液晶、これらの複合的な組み合わせ、又はこれらの単位層の組み合わせを含む群から選択される。保護膜220は、5ナノメートル~2,000マイクロメートルの範囲(例えば、10ナノメートル~600ナノメートルの範囲、50ナノメートル~100ナノメートルの範囲、100ナノメートル~200ナノメートルの範囲、100ナノメートル~150ナノメートルの範囲)の厚みを有しうる。保護膜220は、物理的気相堆積(PVD)、化学的気相堆積(CVD)、スプレー、ドクターブレード、印刷、又は多数のコーティング方法のいずれかを用いて、銅膜の上に直接堆積することができる。いくつかの実装に適切な方法はPVDである。いくつかの実装では、保護膜220は、イオン伝導性である必要はないが、電解質(液、ゲル、固体、これらの組み合わせなど)で充填されると、多孔質基板と電解質との組み合わせが、イオン伝導性になる。
【0075】
[0086] 図8は、本書に記載の実装による、アノード電極構造を形成するための方法800の一実装の概要を表わすプロセスのフロー図を示す。アノード電極構造は、図3に示すアノード電極構造300であってよい。工程810では、基板が提供される。一実装では、基板は、材料の連続シート1250である。一実装では、基板は、アノード電流コレクタ160である。基板が構成されうる金属の例には、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、ステンレス鋼、クラッド材、これらの合金、及びこれらの組み合わせが含まれうる。一実装では、基板は銅材料である。一実装では、基板は穿孔されている。さらに、基板は、任意のフォームファクタ(例えば、金属の箔、シート、又はプレート)、形状、及びミクロ/マクロ構造のものであってよい。
【0076】
[0087] いくつかの実装では、基板は、電流コレクタの露出表面から有機材料を除去するためのプラズマ処理又はコロナ放電処理のうちの少なくとも1つを含む前処理プロセスに曝される。前処理プロセスは、基板上への膜堆積の前に実行される。
【0077】
[0088] 工程820では、シリコン黒鉛膜が基板の上に形成される。一実装では、シリコン黒鉛膜はアノード膜170であり、基板はアノード電流コレクタ160である。一実装では、シリコン黒鉛膜は銅電流コレクタの上に形成される。シリコン黒鉛膜は、第1の処理チャンバ1210内に形成されうる(図12を参照)。シリコン黒鉛の薄膜を堆積するための任意の適切なシリコン黒鉛膜堆積プロセスは、シリコン黒鉛の薄膜を堆積するために使用されうる。シリコン黒鉛の薄膜の堆積は、蒸着などのPVDプロセス、スロットダイプロセス、転写プロセス、電気メッキ、又は三次元リチウム印刷プロセスによってなされうる。シリコン黒鉛の薄膜を堆積するためのチャンバは、電子ビーム蒸着器、熱蒸着器、又はスパッタリングシステムなどのPVDシステム、薄膜転写システム(グラビア印刷システムなどの大面積パターン印刷システムを含む)、又はスロットダイ堆積システムを含みうる。
【0078】
[0089] 工程830では、リチウム金属膜はシリコン黒鉛膜の上に形成される。図3を参照すると、一実装では、リチウム金属膜はリチウム金属膜310で、シリコン黒鉛膜はアノード膜170である。リチウム金属の薄膜を堆積する任意の適切なリチウム金属膜堆積処理は、リチウム金属の薄膜の堆積に用いられうる。リチウム金属の薄膜の堆積は、蒸着などのPVDプロセス、スロットダイプロセス、転写プロセス、又は三次元リチウム印刷プロセスによってなされうる。リチウム金属の薄膜を堆積するためのチャンバは、電子ビーム蒸着器、熱蒸着器、又はスパッタリングシステムなどのPVDシステム、薄膜転写システム(グラビア印刷システムなどの大面積パターン印刷システムを含む)、又はスロットダイ堆積システムを含みうる。
【0079】
[0090] 工程840では、保護膜はリチウム金属膜の上に形成されうる。図3を参照すると、保護膜は保護膜340であってもよく、リチウム金属膜はリチウム金属膜310であってもよい。いくつかの実装では、保護膜340は、リチウムイオン及びリチウム原子のうちの少なくとも1つに対して透過性である。一実装では、保護膜340は、リチウムイオン伝導性セラミック、リチウムイオン伝導性ガラス、イオン伝導性高分子、イオン伝導性液晶、これらの複合的な組み合わせ、又はこれらの単位層の組み合わせを含む群から選択される。保護膜340は、5ナノメートル~2,000マイクロメートルの範囲(例えば、10ナノメートル~600ナノメートルの範囲、50ナノメートル~100ナノメートルの範囲、100ナノメートル~200ナノメートルの範囲、100ナノメートル~150ナノメートルの範囲)の厚みを有しうる。保護膜340は、物理的気相堆積(PVD)、化学的気相堆積(CVD)、スプレー、ドクターブレード、印刷、又は多数のコーティング方法のいずれかを用いて、リチウム金属膜の上に直接堆積することができる。いくつかの実装に適切な方法はPVDである。いくつかの実装では、保護膜340は、イオン伝導性である必要はないが、電解質(液、ゲル、固体、これらの組み合わせなど)で充填されると、多孔質基板と電解質との組み合わせが、イオン伝導性になる。
【0080】
[0091] 図9は、本書に記載の実装による、アノード電極構造を形成するための方法900の一実装の概要を表わすプロセスのフロー図を示す。アノード電極構造は、図4に示すアノード電極構造400であってよい。工程910では、基板が提供される。一実装では、基板は図12に示したように材料の連続シート1250である。一実装では、基板は、アノード電流コレクタ160である。基板が構成されうる金属の例には、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、ステンレス鋼、クラッド材、これらの合金、及びこれらの組み合わせが含まれうる。一実装では、基板は銅材料である。一実装では、基板は穿孔されている。さらに、基板は、任意のフォームファクタ(例えば、金属の箔、シート、又はプレート)、形状、及びミクロ/マクロ構造のものであってよい。
【0081】
[0092] いくつかの実装では、基板は、電流コレクタの露出表面から有機材料を除去するためのプラズマ処理又はコロナ放電処理のうちの少なくとも1つを含む前処理プロセスに曝される。前処理プロセスは、基板上への膜堆積の前に実行される。
【0082】
[0093] 工程920では、リチウム金属膜が基板の上に形成される。一実装では、リチウム金属膜はアノード膜170であり、基板はアノード電流コレクタ160である。一実装では、リチウム金属膜は銅電流コレクタの上に形成される。いくつかの実装では、アノード膜が基板上に既に存在している場合には、リチウム金属膜はアノード膜の上に形成される。アノード膜170が存在しない場合には、リチウム金属膜が基板の上に直接形成されうる。リチウム金属の薄膜を堆積する任意の適切なリチウム金属膜堆積処理は、リチウム金属の薄膜の堆積に用いられうる。リチウム金属の薄膜の堆積は、蒸着などのPVDプロセス、スロットダイプロセス、転写プロセス、又は三次元リチウム印刷プロセスによってなされうる。リチウム金属の薄膜を堆積するためのチャンバは、電子ビーム蒸着器、熱蒸着器、又はスパッタリングシステムなどのPVDシステム、薄膜転写システム(グラビア印刷システムなどの大面積パターン印刷システムを含む)、又はスロットダイ堆積システムを含みうる。
【0083】
[0094] 工程930では、保護膜はリチウム金属膜の上に形成される。図4を参照すると、保護膜は保護膜440であってもよく、リチウム金属膜はアノード膜170であってもよい。一実装では、保護膜は、図1に関連して説明されている保護膜175に類似している。保護膜は、フッ化リチウム(LiF)、金属膜(例えば、銅、ビスマス、スズ、又はこれらの組み合わせ)、銅カルコゲニド(例えば、CuS、CuSe、CuS)、ビスマスカルコゲニド(例えば、BiTe、BiSe)、及び炭酸リチウム(LiCO)のうちの少なくとも1つを含む。保護膜175は、アノード膜170の表面保護を提供する。保護膜は、蒸着又はスパッタリングなどの物理的気相堆積(PVD)、原子層堆積(ALD)、スロットダイプロセス、ディップコーティング、薄膜転写プロセス、グラビアコーティング、コンマバーコーティング、キスロールコーティング、又は三次元リチウム印刷プロセスによって、アノード膜170の上に直接堆積されうる。PVDは、保護膜の堆積のための好適な方法である。保護膜は、1ナノメートル~2,000ナノメートルの範囲(例えば、10ナノメートル~600ナノメートルの範囲、50ナノメートル~100ナノメートルの範囲、50ナノメートル~200ナノメートルの範囲、100ナノメートル~150ナノメートルの範囲)の厚みを有するコーティング又は離散層のいずれかになりうる。保護膜は、5ミクロン~50ミクロンの範囲内(例えば、6ミクロン~25ミクロンの範囲内)の厚みを有する離散膜になりうる。
【0084】
[0095] 工程940では、第1の高分子膜は保護膜の上に形成される。図4を参照すると、第1の高分子膜は第1の高分子膜450であってもよく、保護膜は保護膜440であってもよい。第1の高分子膜は、接合層として機能し、イオン伝導性を高める。一実装では、第1の高分子膜は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド(PEO)、エチレンオキシド(EO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スクシノニトリル(C(CN))、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)イオン液体、及びこれらの組み合わせを含む群から選択される。一実装では、第1の高分子膜は、20ナノメートル以下(例えば、約1ナノメートル~約20ナノメートル、約1ナノメートル~約10ナノメートル、又は約5ナノメートル~約10ナノメートル)の厚みを有する。いくつかの実装では、第1の高分子膜は、保護膜の上面及び側壁を含む保護膜の露出面の上に形成される。第1の高分子膜は、蒸着又はスパッタリングなどの物理的気相堆積(PVD)、原子層堆積(ALD)、スロットダイプロセス、ディップコーティング、薄膜転写プロセス、グラビアコーティング又は三次元リチウム印刷プロセスによって保護膜の上に直接堆積されうる。
【0085】
[0096] 工程950では、セラミック膜は第1の高分子膜の上に形成される。図4を参照すると、セラミック膜はセラミック膜460であってもよく、第1の高分子膜は第1の高分子膜450であってもよい。セラミック膜は、リチウムイオン伝導促進剤として機能し、樹枝状結晶をブロックする。一実装では、セラミック膜は多孔質膜である。セラミック膜は、図1に関連して説明したセラミックコーティング185と同様になりうる。一実装では、セラミック膜は、LiPON、ガーネット型LiLaZr12の結晶相又はアモルファス相、LISICON(例えば、Li2+2xZn1-xGeO、ここで0<x<1)、NASICON(例えば、Na1+xZrSi3-x12、ここで0<x<3)、水素化ホウ素リチウム(LiBH)、ドープされた逆ペロブスカイト組成、硫化物を含むリチウム(例えば、LiS、LiS-P、Li10GeP12及びLiPS)、並びにリチウムアルジロダイト(例えば、XがCl、Br又はIであるLiPSX)からなる群から選択される。一実装では、セラミック膜は、20ナノメートル以下(例えば、約1ナノメートル~約20ナノメートル、約1ナノメートル~約10ナノメートル、又は約5ナノメートル~約10ナノメートル)の厚みを有する。いくつかの実装では、セラミック膜は、第1の高分子膜の上面及び側壁を含む第1の高分子膜の露出面の上に形成される。セラミック膜は、蒸着又はスパッタリングなどの物理的気相堆積(PVD)、原子層堆積(ALD)、スロットダイプロセス、ディップコーティング、薄膜転写プロセス、グラビアコーティング又は三次元リチウム印刷プロセスによって保護膜の上に直接堆積されうる。
【0086】
[0097] 工程960では、第2の高分子膜はセラミック膜の上に形成される。図4を参照すると、第2の高分子膜は第2の高分子膜470であってもよく、セラミック膜はセラミック膜460であってもよい。第2の高分子膜470は、接合層として機能し、イオン伝導性を高める。一実装では、第2の高分子膜は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド(PEO)、エチレンオキシド(EO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スクシノニトリル(C(CN))、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)イオン液体、及びこれらの組み合わせを含む群から選択される。一実装では、第2の高分子膜は、20ナノメートル以下(例えば、約1ナノメートル~約20ナノメートル、約1ナノメートル~約10ナノメートル、又は約5ナノメートル~約10ナノメートル)の厚みを有する。いくつかの実装では、第2の高分子膜は第2の高分子膜の上面及び側壁を含むセラミック膜の露出面の上に形成される。第2の高分子膜は、蒸着又はスパッタリングなどの物理的気相堆積(PVD)、原子層の堆積(ALD)、スロットダイプロセス、ディップコーティング、薄膜転写プロセス、グラビア印刷、又は三次元リチウム印刷プロセスによって、保護膜の上に直接堆積されうる。
【0087】
[0098] 図10は、本書に記載の実装による、アノード電極構造を形成するための方法1000の一実装の概要を表わすプロセスのフロー図を示す。アノード電極構造は、図5に示すアノード電極構造500になりうる。工程1010では、基板が提供される。一実装では、基板は図12に示したように材料の連続シート1250である。一実装では、基板はアノード電流コレクタ160である。基板が構成されうる金属の例には、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、ステンレス鋼、クラッド材、これらの合金、及びこれらの組み合わせが含まれうる。一実装では、基板は銅材料である。一実装では、基板は穿孔されている。さらに、基板は、任意のフォームファクタ(例えば、金属の箔、シート、又はプレート)、形状、及びミクロ/マクロ構造のものであってよい。
【0088】
[0099] いくつかの実装では、基板は、電流コレクタの露出表面から有機材料を除去するためのプラズマ処理又はコロナ放電処理のうちの少なくとも1つを含む前処理プロセスに曝される。前処理プロセスは、基板上への膜堆積の前に実行される。
【0089】
[0100] 工程1020では、リチウム金属膜が基板の上に形成される。一実装では、リチウム金属膜はアノード膜170であり、基板はアノード電流コレクタ160である。一実装では、リチウム金属膜は銅電流コレクタの上に形成される。いくつかの実装では、アノード膜が基板上に既に存在している場合には、リチウム金属膜はアノード膜の上に形成される。アノード膜170が存在しない場合には、リチウム金属膜が基板の上に直接形成されうる。リチウム金属の薄膜を堆積する任意の適切なリチウム金属膜堆積処理は、リチウム金属の薄膜の堆積に用いられうる。リチウム金属の薄膜の堆積は、蒸着などのPVDプロセス、スロットダイプロセス、転写プロセス、又は三次元リチウム印刷プロセスによってなされうる。リチウム金属の薄膜を堆積するためのチャンバは、電子ビーム蒸着器、熱蒸着器、又はスパッタリングシステムなどのPVDシステム、薄膜転写システム(グラビア印刷システムなどの大面積パターン印刷システムを含む)、又はスロットダイ堆積システムを含みうる。
【0090】
[0101] 工程1030では、第1の高分子膜はリチウム金属膜の上に形成される。図5を参照すると、第1の高分子膜は第1の高分子膜550であってもよく、リチウム金属膜はアノード膜170であってもよい。第1の高分子膜は、接合層として機能し、イオン伝導性を高める。一実装では、第1の高分子膜は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド(PEO)、エチレンオキシド(EO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スクシノニトリル(C(CN))、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)イオン液体、及びこれらの組み合わせを含む群から選択される。一実装では、第1の高分子膜は、20ナノメートル以下(例えば、約1ナノメートル~約20ナノメートル、約1ナノメートル~約10ナノメートル、又は約5ナノメートル~約10ナノメートル)の厚みを有する。いくつかの実装では、第1の高分子膜は、保護膜の上面及び側壁を含むリチウム金属膜の露出面の上に形成される。第1の高分子膜は、蒸着又はスパッタリングなどの物理的気相堆積(PVD)、原子層堆積(ALD)、スロットダイプロセス、ディップコーティング、薄膜転写プロセス、グラビアコーティング又は三次元リチウム印刷プロセスによって保護膜の上に直接堆積されうる。
【0091】
[0102] 工程1040では、誘電体膜は第1の高分子膜の上に形成される。図5を参照すると、誘電体膜は誘電体膜560であってもよく、第1の高分子膜は第1の高分子膜550であってもよい。誘電体膜は、リチウムイオン伝導促進剤として機能し、樹枝状結晶をブロックする。一実装では、誘電体膜は多孔質膜である。誘電体膜は、図1に関連して説明したセラミックコーティング185と同様になりうる。一実装では、誘電体膜は、LiPON、ガーネット型LiLaZr12の結晶相又はアモルファス相、LISICON(例えば、Li2+2xZn1-xGeO、ここで0<x<1)、NASICON(例えば、Na1+xZrSi3-x12、ここで0<x<3)、水素化ホウ素リチウム(LiBH)、ドープされた逆ペロブスカイト組成、硫化物を含むリチウム(例えば、LiS、LiS-P、Li10GeP12及びLiPS)、並びにリチウムアルジロダイト(例えば、XがCl、Br又はIであるLiPSX)からなる群から選択される。一実装では、誘電体膜は、20ナノメートル以下(例えば、約1ナノメートル~約20ナノメートル、約1ナノメートル~約10ナノメートル、又は約5ナノメートル~約10ナノメートル)の厚みを有する。いくつかの実装では、誘電体膜は、第1の高分子膜の上面及び側壁を含む第1の高分子膜の露出面の上に形成される。誘電体膜は、化学的気相堆積(CVD)、蒸着又はスパッタリングなどの物理的気相堆積(PVD)、原子層堆積(ALD)、スロットダイプロセス、ディップコーティング、薄膜転写プロセス、グラビアコーティング又は三次元リチウム印刷プロセスによって保護膜の上に直接堆積されうる。
【0092】
[0103] 工程1050では、第2の高分子膜は誘電体膜の上に形成される。図5を参照すると、第2の高分子膜は第2の高分子膜570であってもよく、誘電体膜は誘電体膜560であってもよい。第2の高分子膜570は、接合層として機能し、イオン伝導性を高める。一実装では、第2の高分子膜は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド(PEO)、エチレンオキシド(EO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スクシノニトリル(C(CN))、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)イオン液体、及びこれらの組み合わせを含む群から選択される。一実装では、第2の高分子膜は、20ナノメートル以下(例えば、約1ナノメートル~約20ナノメートル、約1ナノメートル~約10ナノメートル、又は約5ナノメートル~約10ナノメートル)の厚みを有する。いくつかの実装では、第2の高分子膜は第2の高分子膜の上面及び側壁を含むセラミック膜の露出面の上に形成される。第2の高分子膜は、蒸着又はスパッタリングなどの物理的気相堆積(PVD)、原子層の堆積(ALD)、スロットダイプロセス、ディップコーティング、薄膜転写プロセス、グラビア印刷、又は三次元リチウム印刷プロセスによって、保護膜の上に直接堆積されうる。
【0093】
[0104] 図11は、本書に記載の実装による、アノード電極構造を形成するための方法1100の一実装の概要を表わすプロセスのフロー図を示す。アノード電極構造は、図6に示すアノード電極構造600であってよい。工程1110では、基板が提供される。一実装では、基板は図12に示したように材料の連続シート1250である。一実装では、基板は、アノード電流コレクタ160である。基板が構成されうる金属の例には、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、ステンレス鋼、クラッド材、これらの合金、及びこれらの組み合わせが含まれうる。一実装では、基板は銅材料である。一実装では、基板は穿孔されている。さらに、基板は、任意のフォームファクタ(例えば、金属の箔、シート、又はプレート)、形状、及びミクロ/マクロ構造のものであってよい。
【0094】
[0105] いくつかの実装では、基板は、電流コレクタの露出表面から有機材料を除去するためのプラズマ処理又はコロナ放電処理のうちの少なくとも1つを含む前処理プロセスに曝される。前処理プロセスは、基板上への膜堆積の前に実行される。
【0095】
[0106] 工程1120では、リチウム金属膜が基板の上に形成される。一実装では、リチウム金属膜はアノード膜170であり、基板はアノード電流コレクタ160である。一実装では、リチウム金属膜は銅電流コレクタの上に形成される。いくつかの実装では、アノード膜が基板上に既に存在している場合には、リチウム金属膜はアノード膜の上に形成される。アノード膜170が存在しない場合には、リチウム金属膜が基板の上に直接形成されうる。リチウム金属膜は、第1の処理チャンバ1210及び/又は第2の処理チャンバ1220に形成されうる。リチウム金属の薄膜を堆積する任意の適切なリチウム金属膜堆積処理は、リチウム金属の薄膜の堆積に用いられうる。リチウム金属の薄膜の堆積は、蒸着などのPVDプロセス、スロットダイプロセス、転写プロセス、又は三次元リチウム印刷プロセスによってなされうる。リチウム金属の薄膜を堆積するためのチャンバは、電子ビーム蒸着器、熱蒸着器、又はスパッタリングシステムなどのPVDシステム、薄膜転写システム(グラビア印刷システムなどの大面積パターン印刷システムを含む)、又はスロットダイ堆積システムを含みうる。
【0096】
[0107] 工程1130では、金属膜はリチウム金属膜の上に形成される。図6を参照すると、金属膜は金属膜650であってもよく、リチウム金属膜はアノード膜170であってもよい。一実装では、金属膜は、100ナノメートル以下(例えば、約5ナノメートル~100ナノメートル、約10ナノメートル~約20ナノメートル、又は約50ナノメートル~約100ナノメートル)の厚みを有する極薄金属膜である。一実装では、金属膜は銅膜である。金属の薄膜を堆積するための任意の適切な金属膜堆積プロセスは、金属の薄膜を堆積するために使用されうる。金属膜の堆積は、蒸着などのPVDプロセス、スロットダイプロセス、転写プロセス、又は三次元リチウム印刷プロセスによってなされうる。金属膜を堆積するためのチャンバは、電子ビーム蒸着器、熱蒸着器、又はスパッタリングシステムなどのPVDシステム、薄膜転写システム(グラビア印刷システムなどの大面積パターン印刷システムを含む)、又はスロットダイ堆積システムを含みうる。
【0097】
[0108] 工程1140では、誘電体膜は金属膜の上に形成される。図6を参照すると、誘電体膜は誘電体膜660であってもよく、金属膜は金属膜650であってもよい。誘電体膜は、リチウムイオン伝導促進剤として機能し、樹枝状結晶をブロックする。一実装では、誘電体膜は多孔質膜である。誘電体膜は、図1に関連して説明したセラミックコーティング185と同様になりうる。一実装では、誘電体膜は、LiPON、ガーネット型LiLaZr12の結晶相又はアモルファス相、LISICON(例えば、Li2+2xZn1-xGeO、ここで0<x<1)、NASICON(例えば、Na1+xZrSi3-x12、ここで0<x<3)、水素化ホウ素リチウム(LiBH)、ドープされた逆ペロブスカイト組成、硫化物を含むリチウム(例えば、LiS、LiS-P、Li10GeP12及びLiPS)、並びにリチウムアルジロダイト(例えば、XがCl、Br又はIであるLiPSX)からなる群から選択される。一実装では、誘電体膜は、20ナノメートル以下(例えば、約1ナノメートル~約20ナノメートル、約1ナノメートル~約10ナノメートル、又は約5ナノメートル~約10ナノメートル)の厚みを有する。いくつかの実装では、誘電体膜は、第1の高分子膜の上面及び側壁を含む第1の高分子膜の露出面の上に形成される。誘電体膜は、化学的気相堆積(CVD)、蒸着又はスパッタリングなどの物理的気相堆積(PVD)、原子層堆積(ALD)、スロットダイプロセス、ディップコーティング、薄膜転写プロセス、グラビアコーティング又は三次元リチウム印刷プロセスによって保護膜の上に直接堆積されうる。
【0098】
[0109] 工程1150では、高分子膜は誘電体膜の上に形成される。図6を参照すると、高分子膜は高分子膜670であってもよく、誘電体膜は誘電体膜660であってもよい。高分子膜670は、接合層として機能し、イオン伝導性を高める。一実装では、高分子膜は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド(PEO)、エチレンオキシド(EO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スクシノニトリル(C(CN))、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)イオン液体、及びこれらの組み合わせを含む群から選択される。一実装では、高分子膜は、20ナノメートル以下(例えば、約1ナノメートル~約20ナノメートル、約1ナノメートル~約10ナノメートル、又は約5ナノメートル~約10ナノメートル)の厚みを有する。いくつかの実装では、高分子膜は、高分子膜の上面及び側壁を含む金属膜の露出面の上に形成される。高分子膜は、蒸着又はスパッタリングなどの物理的気相堆積(PVD)、原子層の堆積(ALD)、スロットダイプロセス、ディップコーティング、薄膜転写プロセス、グラビア印刷、又は三次元リチウム印刷プロセスによって、保護膜の上に直接堆積されうる。
【0099】
[0110] 図12は、本書に記載の実装によるアノード電極構造を形成するための一体型処理ツール1200の概略図を示す。一体型処理ツール1200は、Applied Materials社製のSMARTWEB(登録商標)であってよく、本書に記載の実装による、リチウムアノードデバイスの製造に適用されうる。一体型処理ツール1200は、送り出しモジュール1202、処理モジュール1204、及び巻取りモジュール1206を含む、ロールツーロールシステムとして構成されている。特定の実装では、処理モジュール1204は、一列に配置された複数の処理モジュール又はチャンバ1210、1220、1230及び1240を備えており、それぞれ、材料の連続シート1250に対して1つの処理操作を実行するように構成されている。一実装では、図12に描かれているように、処理チャンバ1210~1240は処理ドラム1255の周囲に放射状に配置されている。放射状以外の他の配置も考えられる。一実装では、処理チャンバ1210~1240は、独立型のモジュール式処理チャンバであり、各モジュール式処理チャンバは、他のモジュール式処理チャンバから構造的に分離されている。したがって、独立型のモジュール式処理チャンバは、それぞれ互いに影響を及ぼすことなく、個別に配置、再配置、交換、又は維持することができる。4つの処理チャンバ1210~1240が示されているが、任意の数の処理チャンバが、一体型処理ツール1200に含まれうることを理解されたい。
【0100】
[0111] 処理チャンバ1210~1240は、一体型処理ツール1200が本開示の実施形態に従ってリチウムアノードデバイスを堆積することを可能にする任意の適切な構造、構成、配置、及び/又は構成要素を含みうる。例えば、限定するものではないが、処理チャンバは、コーティング源、電源、個々の圧力制御装置、堆積制御システム、及び温度制御を含む適切な堆積システムを含みうる。典型的な実装によれば、チャンバは、個々のガス供給器を備える。チャンバは、典型的には、良好なガス分離を提供するために互いから分離される。本書に記載の実装による一体型処理ツール1200は、堆積チャンバの数に限定されない。例えば、限定するものではないが、一体型処理ツール1200は、3個、6個、又は12個の処理チャンバを含みうる。
【0101】
[0112] いくつかの実装では、一体型処理ツール1200の処理チャンバ1210~1240のいずれかは、マグネトロンスパッタリングなどのスパッタリングによって堆積を行うように構成されてもよい。本書で使用する「マグネトロンスパッタリング」とは、磁石アセンブリ、すなわち、磁場を発生させることができるユニットを使用して行われるスパッタリングを指す。典型的に、このような磁石アセンブリは永久磁石を含む。この永久磁石は、回転可能なターゲット表面の下方に発生する発生磁場の内部に自由電子が捕捉されるように、典型的に、回転可能なターゲットの内部に配置されるか又は平面ターゲットに連結される。このような磁石アセンブリは、平面カソードに配置連結されてもよい。
【0102】
[0113] マグネトロンスパッタリングは、限定するものではないが、TwinMag(商標)カソードアセンブリなどの、ダブルマグネトロンカソードによって実現されうる。いくつかの実装では、処理チャンバ内のカソードは、交換可能であってもよい。したがって、装置のモジュラー設計が提供され、これは、特定の製造要件のために装置を最適化することを容易にする。いくつかの実装では、スパッタリング堆積のためのチャンバ内のカソードの数は、一体型処理ツール1200の最適な生産性を最適化するために選択される。
【0103】
[0114] いくつかの実装では、処理チャンバ1210~1240のうちの一又は複数は、マグネトロンアセンブリなしでスパッタリングを実行するように構成されてもよい。特に、チャンバの一又は複数は、化学気相堆積、原子レーザ堆積又はパルスレーザ堆積などの他の方法によって堆積を実行するように構成されうる。
【0104】
[0115] 特定の実装では、処理チャンバ1210~1240は、材料の連続シート1250の両側を処理するように構成されている。一体型処理ツール1200は、水平に配向された材料の連続シート1250を処理するように構成されているが、一体型処理ツール1200は、種々の配向に位置付けされた基板、例えば、垂直に配向された材料の連続シート1250を処理するように構成されうる。特定の実装では、材料の連続シート1250は、可撓性のある導電性基板である。特定の実装では、材料の連続シート1250は、一又は複数の層がその上に形成された導電性基板を含む。特定の実装では、導電性基板は、その上に一又は複数のシリコン黒鉛層が形成された銅基板である。
【0105】
[0116] 特定の実装では、一体型処理ツール1200は、移送機構1252を備えている。移送機構1252は、処理チャンバ1210~1240の処理領域を通して、材料の連続シート1250を移動させることが可能な任意の移送機構を備えうる。移送機構1252は、共通搬送アーキテクチャを備えうる。共通搬送アーキテクチャは、巻取りモジュール1206内に配置された共通の巻取りリール1254と、処理モジュール1204内に配置された処理ドラム1255と、送り出しモジュール1202内に配置された供給リール1256とを有するリールツーリールシステムを含みうる。巻取りリール1254、処理ドラム1255、及び供給リール1256は、個別に加熱されてもよい。巻取りリール1254、処理ドラム1255、及び供給リール1256は、各リール又は外部熱源の中に配置された内部熱源を用いて、個別に加熱されてもよい。共通搬送アーキテクチャは、巻取りリール1254、処理ドラム1255と供給リール1256との間に配置された一又は複数の補助移送リール1253a、1253bをさらに備えうる。一体型処理ツール1200は、単一の処理領域を有するものとして示されるが、特定の実装では、個々の処理チャンバ1210~1240ごとに分離された又は別々の処理領域を有することが有利になりうる。別々の処理領域、モジュール、又はチャンバを有する実装では、共通搬送アーキテクチャは、各チャンバ又は処理領域が、個別の、巻取りリール及び供給リール、並びに巻取りリールと供給リールとの間に配置された一又は複数の任意選択的な中間移送リールを有するリールツーリールシステムであってもよい。共通搬送アーキテクチャは、軌道システムを備えうる。軌道システムは、複数の処理領域又は別々の複数の処理領域を通って延びる。軌道システムは、ウェブ基板又は別々の基板のいずれかを搬送するように構成されている。
【0106】
[0117] 一体型処理ツール1200は、異なる処理チャンバ1210~1240を通して材料の連続シート1250を移動させるための供給リール1256及び巻取りリール1254を含んでもよい。一実装では、第1の処理チャンバ1210及び第2の処理チャンバ1220は、それぞれ、リチウム金属膜の一部を堆積するように構成されている。第3の処理チャンバ1230は、銅膜を堆積するように構成されている。第4の処理チャンバ1240は、周囲の酸化剤からリチウム金属膜を保護するために、銅膜及びリチウム金属膜の上に保護コーティングを堆積するように構成されている。いくつかの実装では、完成した負電極は、図に示したように巻取りリール1254上に集められることはないが、バッテリセルを形成するために、セパレータ及び正電極と直接一体化されうる。
【0107】
[0118] 一実装では、処理チャンバ1210~1230は、リチウム金属の薄膜を材料の連続シート1250の上に堆積するように構成されている。リチウム金属の薄膜を堆積する任意の適切なリチウム堆積処理は、リチウム金属の薄膜の堆積に用いられうる。リチウム金属の薄膜の堆積は、蒸着などのPVDプロセス、スロットダイプロセス、転写プロセス、積層プロセス又は三次元リチウム印刷プロセスによってなされうる。リチウム金属の薄膜を堆積するためのチャンバは、電子ビーム蒸着器などのPVDシステム、薄膜転写システム(グラビア印刷システムなどの大面積パターン印刷システムを含む)、積層システム、又はスロットダイ堆積システムを含みうる。
【0108】
[0119] 一実装では、第4の処理チャンバ1240は、リチウム金属膜の上に保護膜を形成するように構成されている。第4の処理チャンバ1240は、リチウム金属膜の上に保護膜を形成するように構成されている。保護膜は、本書に記載のイオン伝導性材料であってもよい。保護膜は、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、グラビアコーティング、又は印刷によって形成されうる。一実装では、第4の処理チャンバ1240は、材料の連続シート1250の上にセラミック又は誘電体の層を堆積するように構成された蒸着チャンバ又はPVDチャンバである。一実装では、蒸着チャンバは、るつぼ内に配置されうる蒸着源を備えるように示されている処理領域を有する。これは、例えば、真空環境内の熱蒸着器又は(低温の)電子ビーム蒸着器であってもよい。
【0109】
[0120] 要約すると、本開示の利点のうちのいくつかは、現在利用可能な処理システムにリチウム金属堆積を効率良く一体化することを含む。現在、リチウム金属堆積は、乾燥室又はアルゴンガス雰囲気中で行われる。リチウム金属の揮発性のために、その後の処理操作はアルゴンガス雰囲気中で行われる。アルゴンガス雰囲気中でのその後の処理操作の性能は、現在の製造ツールの改造を含むであろう。本発明者らは、その後の処理の前にリチウム金属を保護膜でコーティングすることにより、真空下又は大気中のいずれかでその後の処理を行えることを見出した。保護膜によって、不活性ガス雰囲気中で追加の処理操作を行うことが不要になり、工具の複雑さが低減される。保護膜はまた、リチウム金属膜が形成された負極の移送、貯蔵、又はその両方を可能にする。さらに、保護膜がイオン伝導性膜である実装においては、イオン伝導膜を最終的な電池構造に組み込むことができ、電池形成プロセスの複雑さを低減する。これは、ツールの複雑さを減少させ、その後、所有コストを低減する。
【0110】
[0121] 本開示の要素、或いは、その例示的態様又は実装を紹介する場合、冠詞「a」、「an」、「the」、及び「said」は、一又は複数の要素が存在することを意味すると意図されている。
【0111】
[0122] 「備える(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という表現は、包括的であるように意図されており、列挙された要素以外にも追加の要素があってもよいことを意味する。
【0112】
[0123] 以上の記述は本開示の実装を対象としているが、本開示の基本的な範囲から逸脱することなく本開示の他の実装及び更なる実装が考案されてよく、本開示の範囲は、下記の特許請求の範囲によって決定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2022-07-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の銅膜を含む電流コレクタの上にリチウム金属膜を形成することと、
銅膜、ビスマス膜、スズ膜、又はこれらの組み合わせから選択される金属膜を前記リチウム金属膜の上に形成することであって、前記金属膜が、前記リチウム金属膜の上面及び側壁をコーティングし、かつ延在して、前記電流コレクタと直接接触する、形成することと、
リチウムイオン伝導性セラミック、リチウムイオン伝導性ガラス、又はイオン伝導性液晶を含むリチウムイオン伝導性膜である保護膜を、前記金属膜の上に形成することと、
酸化アルミニウム、オキシ窒化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム又は窒化アルミニウムを含むセラミック膜を前記保護膜の上に形成することと
を含む方法。
【請求項2】
前記金属膜が第2の銅膜であり、前記第2の銅膜が、約5ナノメートルから約40ナノメートルの間の厚みを有する、請求項1に記載の方法
【請求項3】
前記第2の銅膜が、約10ナノメートルから約20ナノメートルの間の厚みを有する、請求項2に記載の方法
【請求項4】
前記電流コレクタが、約2マイクロメートルから約8マイクロメートルの間の厚みを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電流コレクタが、
第1のニッケル又はクロム含有膜と、
前記第1のニッケル又はクロム含有膜の上に形成され、かつ約50ナノメートルから約500ナノメートルの間の厚みを有する前記第1の銅膜と、
前記第1の銅膜の上に形成され、約20ナノメートルから約50ナノメートルの間の厚みを有する第2のニッケル又はクロム含有膜と
を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電流コレクタは、
ポリエチレンテレフタレート(PET)高分子基板と、
前記PET高分子基板の上に形成された前記第1の銅膜と
を備え、前記第1の銅膜が物理的気相堆積処理によって堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記保護膜が、前記金属膜の上面及び側壁をコーティングする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
セラミックコーティングが、結合剤を含まない膜である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
電流コレクタ上に形成されたアノード膜の上にリチウム金属膜を形成することであって、前記電流コレクタが、第1の銅膜を含み、前記アノード膜が、黒鉛及びシリコン含有黒鉛から選択される、形成することと、
前記リチウム金属膜の上に金属膜を形成することであって、前記金属膜が、第2の銅膜、ビスマス膜、スズ膜、又はこれらの組み合わせから選択され、前記金属膜が、前記リチウム金属膜の上面及び側壁をコーティングし、かつ延在して、前記電流コレクタと直接接触する、形成することと、
リチウムイオン伝導性セラミック、リチウムイオン伝導性ガラス、又はイオン伝導性液晶を含むリチウムイオン伝導性膜である保護膜を、前記金属膜の上に形成することと、
酸化アルミニウム、オキシ窒化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム又は窒化アルミニウムを含むセラミックコーティングを前記保護膜の上に形成することと
を含む方法。
【請求項10】
前記金属膜が、第2の銅膜であり、前記第2の銅膜が、約10ナノメートルから約20ナノメートルの間の厚みを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記電流コレクタが、約2マイクロメートルから約8マイクロメートルの間の厚みを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記電流コレクタは、
第1のニッケル又はクロム含有膜と、
前記第1のニッケル又はクロム含有膜の上に形成され、かつ約50ナノメートルから約500ナノメートルの間の厚みを有する前記第1の銅膜と、
前記銅膜の上に形成され、約20ナノメートルから約50ナノメートルの間の厚みを有する第2のニッケル又はクロム含有膜と、
を備える、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記電流コレクタは、
ポリエチレンテレフタレート(PET)高分子基板と、
前記PET高分子基板の上に形成された前記第1の銅膜と
を備え、前記第1の銅膜が物理的気相堆積処理によって堆積される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記保護膜が、前記金属膜の上面及び側壁をコーティングする、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
セラミックコーティングが、結合剤を含まない膜である、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
第1の銅膜を含む電流コレクタの上にアノード膜を形成することと、
黒鉛又はシリコン含有黒鉛を含む前記アノード膜の上にリチウム金属膜を形成することと、
前記リチウム金属膜の上に保護膜スタックを形成することであって、前記保護膜スタックが、前記リチウム金属膜の上面及び側壁をコーティングし、かつ延在して、前記電流コレクタと直接接触し、前記保護膜スタックが:
前記リチウム金属膜上に堆積される保護膜であって、前記リチウム金属膜の上面及び側壁をコーティングし、かつ延在して、前記電流コレクタと直接接触する、保護膜と;
前記保護膜上に堆積される第1の高分子膜であって、前記保護膜の上面及び側壁をコーティングする、第1の高分子膜と;
前記第1の高分子膜の上に堆積するセラミック膜であって、前記第1の高分子膜の上面及び側壁をコーティングする、セラミック膜と;
前記セラミック膜の上に堆積される第2の高分子膜であって、前記セラミック膜の上面及び側壁をコーティングする、第2の高分子膜と
を含む、形成することと
を含む方法。
【請求項17】
前記保護膜が、フッ化リチウム、酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、銅カルコゲニド、ビスマスカルコゲニド、炭酸リチウム又はこれらの組み合わせを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の高分子膜及び前記第2の高分子膜の各々が、独立に、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、スクシノニトリル、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム又はこれらの組み合わせを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記セラミック膜が、酸化アルミニウム、オキシ窒化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム又は窒化アルミニウムを含む、請求項16に記載の方法。
【外国語明細書】