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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137331
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】インキ供給監視機構を備えた印刷機
(51)【国際特許分類】
   B41F 33/00 20060101AFI20220914BHJP
   B41F 31/02 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
B41F33/00 234
B41F31/02 A
B41F33/00 620
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036807
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】坂本 瑞樹
【テーマコード(参考)】
2C250
【Fターム(参考)】
2C250DB02
2C250DC02
2C250DC04
2C250EA17
2C250EA23
2C250EB28
2C250EC03
(57)【要約】
【課題】
印刷機の移しローラが駆動する回数(頻度)をリアルタイムで計数しあらかじめ設定している駆動回数と比較し、その結果を出力する機能を付与することで、刷色濃淡による品質異常を防止するとともに、設備異常を早期に発見する
【解決手段】
移しローラの近傍に設置された近接センサによって移しローラの駆動回数を計数する計数部と、予め設定された移しローラの駆動回数と計数部で計数された駆動回数を比較演算し出力する演算部と、演算部から出力された演算結果が不一致の場合、印刷機の稼働を停止する制御部を少なくとも有することを特徴とするインキ供給監視機構を備えた印刷機
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキを練合するダクトローラ、練りローラ、前記ダクトローラ上のインキを前記練りローラへ供給するために前記ダクトローラの周面に所定の時間だけ接触する動作と、前記練りローラの周面に所定の時間だけ接触する動作と、前記ダクトローラ及び前記練りローラ間を駆動する動作をあらかじめ設定された駆動回数に応じて周期的に行なう移しローラ及び前記練りローラで練合されたインキを版面へ供給する版付ローラからなるインキ供給機構を備えた印刷機において、
前記移しローラの近傍に設置された近接センサによって前記移しローラの駆動回数を計数する計数部と、
予め設定された前記移しローラの駆動回数と前記計数部で測定された駆動回数を比較演算し出力する演算部と、
前記演算部から出力された演算結果が不一致の場合、前記印刷機の稼働を停止する制御部を少なくとも有することを特徴とするインキ供給監視機構を備えた印刷機。
【請求項2】
前記演算結果が不一致の場合、警報を発報する警報部を更に有することを特徴とする請求項1に記載のインキ供給監視機構を備えた印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキ供給機構を有する印刷機において、移しローラの動作をリアルタイムで監視し、動作不良等を検知した場合は、刷色不良等の品質異常を管理し、安定した印刷状態を管理するシステムを備えたインキ供給監視機構を有する印刷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷機においては、インキ供給量によって印刷物の濃度が左右されるため、インキ供給量を安定化することが重要となる。印刷機におけるインキ供給機構は、一例として、図1に示すように、インキを練合するダクトローラ(4)、ダクトローラ(4)近傍に設けられ、ダクトローラ(4)との間にインキを滞留させるためのインキ壺(3)を形成するインキ壺ブレード(1)、インキ壺ブレード(1)の下部に設置されインキ出し量を調整するインキ壺キー(2)、ダクトローラ(4)のインキを練りローラ(6)へ供給するためにダクトローラ(4)の周面に所定の時間だけ接触する動作と、練りローラ(6)の周面に所定の時間だけ接触する動作と、それらのローラ間を駆動する動作を周期的に行なう移しローラ(5)、移しローラ(5)により供給されたインキを皮膜が均一になるよう練り上げる練りローラ(6)、練りローラ(6)で練り上げられたインキを版面(8)へ供給する版付ローラ(7)及びインキを印刷媒体へ転写する版面(8)から構成される。
【0003】
ダクトローラ(4)から練りローラ(6)へインキを供給するために移しローラ(5)が駆動する頻度は、一例として印刷機のオペレーションスタンドにおいて設定された駆動回数(例えば印刷機が何回転するごとに1回移しローラ(5)を駆動させるかを決める値)により設定する。例えば、駆動回数を10に設定すれば、印刷機が20回転するごとに1回移しローラ(5)が駆動し、インキを供給することで刷色調整を行う。
【0004】
移しローラ(5)が駆動する仕組みを、図2及び図3に示す。駆動回数の回数まで印刷機が回転すると、シリンダ(9)が上下に動作する。シリンダ(9)が下に動作した際、ストッパー(10)が外れ、カムフォロアー(11)が動作するに従い、移しローラ(5)が駆動する。その後、シリンダ(9)が元の位置に戻り、移しローラ(5)は次の駆動回数まで待機する。
【0005】
印刷機のオペレータは、印刷後の製品点検を行うなかで、刷色が見本と異なる場合、駆動回数を変更し、インキの供給量を調整することで刷色調整を行っている。
【0006】
しかし、上述した印刷機では、移しローラ(5)を駆動させるシリンダ(9)の故障や動作不良により、移しローラ(5)の駆動に異常が発生すると、駆動回数に関わらず、移しローラ(5)の駆動する頻度が狂うため、刷色濃淡による品質異常が発生していた。
【0007】
例えば、シリンダ(9)が下に動作しない場合は、移しローラ(5)が駆動できずに版面(8)に供給されるインキが少なくなり、刷色淡刷が発生する。また、シリンダ(9)が下に動作した後、元の位置に戻らない場合、移しローラ(5)が何度も駆動し、版面(8)にインキを過剰に供給するため、刷色濃刷が発生する。
【0008】
上記により品質異常が発生した場合、製品の品質点検により異常を発見するまで品質異常の製品が印刷されてしまうため、品質異常・設備異常の発見が遅れていた。
【0009】
また、刷色濃淡による品質異常を防止する方法として、特許文献1にあるようにダクトローラに移しローラが接触した後に形成されたインキ層を測定しダクトローラにおける周方向のインキ膜厚分布を得る方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特願2000-236364
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、前述の特許文献1の課題として、ダクトローラのインキ膜厚が数μm単位の場合もあるため、正確なインキ膜厚分布を得ることができない。また、ダクトローラ上のインキ膜厚を測定するものであることから、移しローラの動作不良による刷色濃淡を検出することは出来ず、移しローラの動作不良を確実に検出することが困難である。
【0012】
本発明は、上記課題の解決を目的とするものであり、印刷機の移しローラ(5)が駆動する回数(頻度)をリアルタイムで計数しあらかじめ設定している駆動回数と比較し、その結果を出力する機能を付与することで、刷色濃淡による品質異常を防止するとともに、設備異常を早期に発見するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、インキを練合するダクトローラ、練りローラ、ダクトローラ上のインキを練りローラへ供給するためにダクトローラの周面に所定の時間だけ接触する動作と、練りローラの周面に所定の時間だけ接触する動作と、ダクトローラ及び練りローラ間を駆動する動作をあらかじめ設定された駆動回数に応じて周期的に行なう移しローラ及び練りローラで練合されたインキを版面へ供給する版付ローラからなるインキ供給機構を備えた印刷機において、移しローラの近傍に設置された近接センサによって移しローラの駆動回数を計数する計数部と、予め設定された移しローラの駆動回数と計数部で計数された駆動回数を比較演算し出力する演算部と、演算部から出力された演算結果が不一致の場合、印刷機の稼働を停止する制御部を少なくとも有することを特徴とするインキ供給監視機構を備えた印刷機である。
【0014】
本発明は、演算結果が不一致の場合、警報を発報する警報部を更に有することを特徴とするインキ供給監視機構を備えた印刷機である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、印刷機の移しローラ(5)が駆動する回数(頻度)をリアルタイムで計数し、更に計数値が異常の場合は、電気信号として出力する機能を付与することで、移しローラ(5)の駆動不良を早期発見することが可能となった。よって、品質異常(刷色濃淡)の未然防止による損紙率低減が図れる。更に、移しローラ(5)の駆動不良が発生した際、従来では印刷物の刷色濃淡により異常を発見していたところが、移しローラ(5)の異常を早期に発見可能となったことで、シリンダ(9)が完全に故障する前に修理を行うことができるため、メンテナンス性の向上といった更なる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一般的なインキ供給装置の概略図を示す図である。
図2】一般的な移しローラの動作仕組を示す図である。
図3】一般的な移しローラの動作仕組を示す図である。
図4】本発明における移しローラの駆動不良を検知する仕組を示す図である。
図5】本発明における移しローラの駆動不良を検知する仕組を示す図である。
図6】本発明におけるインキ供給監視機構を示すブロック図である。
図7】本発表におけるインキ供給監視機構を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好ましい実施形態について、図面に基づき詳細に説明する。しかしながら、本願発明は以下に述べる実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載における技術的思想の範囲内であれば、その他様々な形態がある。
【0018】
図4及び図5に示すように、移しローラ(5)の側部には、移しローラ(5)を着脱させる際、その可動域を制限するための呼び出しレバー(13)が搭載されている。本発明では、呼び出しレバー(13)の近傍に近接センサ(12)を設けている。図5に、移しローラ(5)着脱時の呼び出しレバー(13)の位置関係を示す。図5-Aの脱状態(移しローラ(5)が練りローラ(6)の周面に接触している状態)では、近接センサ(12)と呼び出しレバー(13)の位置が離れているため、近接センサ(12)は未検知となる。図5-Bの着状態(移しローラ(5)がダクトローラ(4)の周面に接触している状態)では、近接センサ(12)と呼び出しレバー(13)の位置が近くなり、近接センサ(12)が検知される仕組みである。
【0019】
図6に、本発明における印刷機のインキ供給監視機構(以下「インキ供給監視機構」という。)のブロック図を示す。
【0020】
インキ供給監視機構(20)は、すべてシーケンサの信号によって制御される。
【0021】
インキ供給監視機構(20)は、設定部(21)、計数部(22)、演算部(23)、制御部(24)及び警報部(25)を有している。
【0022】
設定部(21)は、例えば、印刷機のオペレーションスタンドにおいて移しローラ(5)の駆動回数を設定する。
【0023】
計数部(22)は、移しローラ(5)が実際に駆動した回数(例えば設定した印刷機の回転数内に何回移しローラ(5)が駆動したか)を近接センサ(12)によって計数する。機械の回転数はシーケンサ内で計数し、規定の回転数で移しローラ(5)が駆動しているかを近接センサで検知する。
【0024】
演算部(23)は、設定部(21)で設定した駆動回数と計数部(22)で計数した駆動回数を比較し、相違がないかの演算を行い、演算結果を制御部(24)へ出力する。
【0025】
制御部(24)は、演算部(23)から出力された演算結果が一致の場合、印刷を継続する。不一致の場合は、印刷機を停止させるとともに、警報部(25)を通して例えばオペレーションスタンドに異常を表示し警報を発報させることでオペレータに異常の発生を知らせる。
【0026】
図7に、インキ供給監視機構(20)によって着肉不良を防止させる機構のフローチャートを示す。ただし、本フローチャートは、1サイクルのみを示すものとする。
【0027】
STEP1では、印刷機が何回転するごとに1回移しローラ(5)が駆動するかを設定するとともに、STEP2で印刷機を稼働させることで印刷を開始する。
【0028】
次にSTEP3で、印刷機の回転回数が駆動回数の設定回数に到達すると、移しローラ(5)が駆動する。
【0029】
STEP4では近接センサ(12)により、移しローラ(5)が実際に駆動した回数を計数する。
【0030】
STEP5では、STEP2で設定した駆動回数と、STEP4で計数された駆動回数を比較する。
【0031】
STEP6―1では、STEP5で比較した値が一致した場合、印刷を継続する。
【0032】
一方、STEP6―2では、STEP5で比較した値が不一致であった場合、印刷機を停止させるとともに、STEP7として、警報を発報するとともにオペレーションスタンドに異常が発生したことを表示する。
【符号の説明】
【0033】
1 インキ壺ブレード
2 インキ壺キー
3 インキ壺
4 ダクトローラ
5 移しローラ
6 練りローラ
7 版付ローラ
8 版面
9 シリンダ
10 ストッパー
11 カムフォロアー
12 近接センサ
13 呼び出しレバー
20 インキ供給監視機構
21 設定部
22 計数部
23 演算部
24 制御部
25 警報部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7