(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137335
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】面取りカッター
(51)【国際特許分類】
B26D 3/02 20060101AFI20220914BHJP
B26D 7/08 20060101ALI20220914BHJP
B26D 7/20 20060101ALI20220914BHJP
B26D 1/04 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
B26D3/02
B26D7/08 D
B26D7/20
B26D1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036814
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】村上 一志
【テーマコード(参考)】
3C021
3C027
【Fターム(参考)】
3C021GA04
3C027GG02
3C027GG07
3C027GG08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、凹版印刷機における印圧のムラ取りを行うために、加工対象物の貼り込みを行う面取り作業において、薄手の加工対象物を簡易に加工可能な機構を設けた、面取りカッターを提供する。
【解決手段】面取りカッターSは、加工対象物の切屑W1を排出する開口部(間隙M)を有する上面部1と、上面部1に対して対向して設けた加工対象物を載置する底面部3と、上面部1と底面部3を一体として固定する内壁部2からなる面取りカッターSにおいて、上面部1に、底面部3との間隔及び角度を調整可能に取り付けた固定刃5と、加工対象物を底面部3に対して上面部1から垂直方向に抑える弾性体6を有したガイド部4を少なくとも備える。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物の切屑を排出する開口部を有する上面部と、前記上面部に対して対向して設けた前記加工対象物を載置する底面部と、前記上面部と前記底面部を一体として固定する内壁部からなる面取りカッターにおいて、
前記上面部に、前記底面部との間隔及び角度を調整可能に取り付けた固定刃と、前記加工対象物を前記底面部に対して前記上面部から垂直方向に抑える弾性体を有したガイド部を少なくとも備えた面取りカッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機における圧胴の仕立材に使用するシート材のバリや厚みのムラを削り取るためのカッターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に凹版印刷を行う際には、凹版印刷機における圧胴の金属面と、版胴の版面との衝撃を避けて版面に適当な弾力を持たせ、版面と被印刷物との接触を一定にするようにすることを目的とし、圧胴の表面に紙、布などのパッキング材を巻き付けて胴径を微調整して所定の胴径に仕上げている。さらに版胴に取り付けた版面の画線の深度により、印圧不足になり易い箇所には、印圧のムラを取ることを目的とし、紙、フィルム及びプレスボード等の仕立材(以下、「加工対象物」という。)で部分的に圧胴面に貼り込みをする必要がある。
【0003】
加工対象物の切断面においては、角が立っていると、印圧を分散できずに、加工対象物が破損したり、版面を傷つけたりする恐れがある。よって、加工対象物を圧胴面に貼り込む前に、バリやかえりを削り取る、面取り作業を行う必要がある。
【0004】
従来、面取り作業は、ナイフを用いて手作業で行っているが、版面の表面積の大きさに伴い、用いる加工対象物も表面積が大きくなることから、処理範囲が多く、均一な面取り精度を得ることが難しいという問題点があった。また、加工対象物の厚みが0.2~0.5mmと薄いため、削り過ぎというミスに繋がり易く、作業者には高い技術が要求されていた。
【0005】
また、面取り作業を行う場合、一方の手でナイフを持ち、他方の手で加工対象物が動かないように抑えた状態で作業を行うため、誤ってナイフで他方の手を損傷する場合があるという問題が発生していた。
【0006】
この問題点を解消する方法として、面取り作業用の鉋が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この鉋は、鉋本体に対して面取りに適した所定の取付角度で固定された刃と、ひねるだけで刃の突出量を調整して面取り幅を1mmから簡易に変更可能とする調整部を設けることで、作業効率を向上させた技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の鉋は、加工対象物が比較的厚いものを対象としていたことから、面取り幅を1mm以下に設定することができず、1mm以下の加工対象物を面取りする際には、加工対象物が刃によって切り離されないよう、手作業の場合と同様に作業者には高い技術が要求されていた。
【0009】
併せて、鉋本体に設けた溝に加工対象物の縁(側面)を当接させた後、切削を行う構成である。よって、加工対象物が薄い場合、鉋本体を当接することが難しく、作業自体が困難であるか、作業台自体を切削して損傷してしまうという問題があった。
【0010】
さらに、面取り作業を行う場合、一方の手で鉋本体を持ち、他方の手で加工対象物が動かないように抑えた状態で作業を行うため、誤って鉋本体で他方の手を損傷する問題については依然発生していた。
【0011】
本発明は、上記課題の解決のため、具体的には、圧胴の加工対象物の面取り作業において、薄手の加工対象物を簡易に加工可能な機構を設けた、面取りカッターを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、加工対象物の切屑を排出する開口部を有する上面部と、上面部に対して対向して設けた加工対象物を載置する底面部と、上面部と底面部を一体として固定する内壁部からなる面取りカッターにおいて、上面部に、底面部との間隔及び角度を調整可能に取り付けた固定刃と、加工対象物を底面部に対して上面部から垂直方向に抑える弾性体を有したガイド部を少なくとも備えた面取りカッターである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の面取りカッターは、面取り作業を行う角度と切削量の両方を変更可能とすることで、作業者の技量を問わず薄手の加工対象物に対しても、均一かつ高精度な面取りを行うことが可能となった。
【0014】
また、加工時においても刃先が支持枠の内部にあるため、使用者や作業台を傷付けないで切削作業を行うことが可能となった。
【0015】
さらに、面取り作業を行う場合、加工対象物を面取りカッター自体で固定して行うため、他方の手で加工対象物が動かないように抑えた状態で作業を行う必要が無く、誤って刃で他方の手を損傷することなく作業を行うことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の面取りカッター(S)を示す平面図。
【
図3】異なる大きさの加工対象物(W)を示す模式図。
【
図5】ガイド部(4)における形状の一例を示す模式図。
【
図6】異なる厚さの加工対象物(W)を示す模式図。
【
図8】固定刃(5)における底面部(3)との角度変更方法を示す模式図。
【
図9】固定刃(5)における底面部(3)との距離変更方法を示す模式図。
【
図10】本発明の面取りカッター(S)を用いた切削作業を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好ましい実施形態について、図面に基づき詳細に説明する。しかしながら、本願発明は、以下に述べる実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載における技術的思想の範囲内であれば、その他様々な形態がある。
【0018】
図1は、本発明における面取りカッター(S)の平面図であり、
図2は、
図1に示す面取りカッター(S)のX方向からの側面図である。面取りカッター(S)は、
図2に示すように上面部(1)と、内壁部(2)と底面部(3)を備え、上面部(1)は、ガイド部(4)、固定刃(5)及び弾性体(6)を有している。
【0019】
上面部(1)は、面取り作業時に加工対象物(W)をガイド部(4)及び弾性体(6)で底面部(3)に押し付ける手段である。内壁部(2)は、上面部(1)と底面部(3)を対向して配置するための接続部としての役割と、加工対象物(W)と接する面を面取り加工の基準位置となる手段である。
【0020】
上面部(1)に設けたガイド部(4)及び弾性体(6)で加工対象物(W)を固定させることで、面取り作業時において、作業者は加工対象物(W)が動かないように抑えた状態で作業を行う必要が無く、誤って固定刃(5)で他方の手を損傷することなく作業を行うことが可能となる。
【0021】
図2に示すように、固定刃(5)は、切削角度を調整する角度調整手段(7)と、切削量を調整する間隔調整手段(8)と、切削を行う刃(9)を有し、上面部(1)に、角度調整手段(7)により固定設置される。上面部(1)は、固定刃(5)が底面部(3)に向けて貫通する間隙(M)を有し、
図2に示す、ガイド部(4)の上下移動を阻害しないものとする。間隙(M)、角度調整手段(7)及び間隔調整手段(8)を設けることで、詳細には
図8及び
図9を用いて説明するが、固定刃(5)の切削角度と、切削量を調整するための底面部(3)との間隔を変更するとともに、加工時に発生する切り屑を排出することが可能となる。
【0022】
図2に示すように、上面部(1)と底面部(3)の一端が、上面部(1)の厚み方向(h1)及び底面部(3)の厚み方向(h3)に対向して配置されることで、内壁部(2)でコの字型となるよう接続されている。コの字型に配置することで、加工対象物(W)を、上面部(1)、内壁部(2)及び底面部(3)の三面で挟み込むように固定することが可能となる。以下、上面部(1)、内壁部(2)及び底面部(3)を総称する際には「支持枠」という。支持枠の材質は曲がりや歪みのような変形が少ないステンレスのような剛性のある材質が好ましい。併せて、支持枠における加工対象物(W)と接触する表面は、面取り加工時の負荷を軽減するために、摩擦係数の低いポリテトラフルオロエチレンコーティングが施されることが好ましい。
【0023】
底面部(3)は薄い板状であり、作業台との段差を小さくすることで加工対象物(W)をセットする際に生じる、加工対象物(W)の反りを抑制する。また、底面部(3)の角は面取り処理を行うことで加工対象物(W)との接触抵抗を減らすものとする。なお、上面部(1)、内壁部(2)及び底面部(3)の厚さは同じでも異なっていても良い。
【0024】
弾性体(6)は、上面部(1)における固定刃(5)及び間隔(M)の邪魔にならない箇所に設置する。
図3は、異なる大きさの加工対象物(W)を示す模式図である。なお、
図3において、固定刃(5)は、角度調整手段(7)及び間隔調整手段(8)の記載を省略し、刃(9)のみを記載している。内壁部(2)を有しないことで、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、加工対象物(W)の大きさ(表面積)が異なった場合でも、支持枠で挟み込むように固定することが可能となる。
【0025】
上面部(1)の材質は、面取り加工時の強い負荷に耐え、曲がりや歪みのような変形の少ない材質にて構成されるものであり、固定刃(5)の固定治具は、面取り加工時の負荷によって固定刃(5)と加工対象物(W)の間で継続的に発生するびびり振動を防ぐために、ステンレスのような剛性のある材質が好ましい。
【0026】
図4は、
図1におけるY方向からの側面図である。ガイド部(4)は、加工対象物(W)を上面部(1)から底面部(3)に対して押し付ける手段であり、上面部(1)に弾性体(6)を介して備える。
【0027】
図5は、ガイド部(4)における形状の一例を示す模式図であり、
図5(a1)、
図5(b1)及び
図5(c1)は、Y方向側の側面図であり、
図5(a2)、
図5(b2)及び
図5(c2)は、X方向側の側面図である。
【0028】
ガイド部(4)は、加工対象物(W)の厚みに合わせて、弾性体(6)を介して上下に移動し、加工対象物(W)と底面部(3)が密着するように垂直方向から押し付けることが必要とされる。密着するように押し付けることで、加工対象物(W)とガイド部(4)の摩擦抵抗が大きくなり、加工対象物(W)をしっかりと抑えることが可能となる。そのため、ガイド部(4)は加工対象物(W)との接触面積が広い形状とすることが好ましく、例えば、
図5(a2)より
図5(b2)の方が好ましい。
【0029】
なお、ガイド部(4)の形状は、加工対象物(W)の厚みに合わせて、弾性体(6)を介して上下に移動し、加工対象物(W)と底面部(3)が密着するように、上面部(1)側から底面部(3)側に垂直方向から押し付けることが可能な形状であれば、円筒形状に限らない。
【0030】
図5(a1)及び
図5(a2)に示すように、ガイド部(4)は棒形状としても良い。棒形状とすることで、仕組みが容易であり軽量となる。また、ガイド部(4)が小型化しやすいため、配置の自由度が高くなる。ただし、ガイド部(4)が長くなるため、加工対象物(W)を押さえる力及び材質については、加工対象物(W)の表面積及び厚みに併せて、加工対象物(W)と底面部(3)が密着するように適宜調整をする。
【0031】
また、
図5(b1)及び
図5(b2)に示すように、立方体形状としても良い。立方体形状とすることで、加工対象物(W)を面で押さえるため、面取り加工時の位置決め精度が優れる。ただし、ガイド部(4)が大型化し重量が増すためと、加工対象物(W)との摩擦抵抗については、ガイド部(4)の大きさ及び形状に併せて、加工対象物(W)と底面部(3)が密着するように、ガイド部(3)の形状及び材質を適宜調整する。例えば、同じ材質であるならば、形状は大きい方が良く、同じ形状であるならば、摩擦抵抗の高い材質が良い。
【0032】
さらに、
図5(c1)及び
図5(c2)に示すように、スキージ形状としても良い。スキージ形状とすることで、波打ちや反りがある加工対象物(W)をガイド部(4)の下に差し込む場合、立方体形状と比べて、加工対象物(W)とガイド部(4)の接触面積が少なくなり、面取り開始時にセットしやすい。なお、他の形状よりも、曲げ応力が多くガイド部(4)にかかるため、材質については、加工対象物(W)の大きさ及び形状に併せて、加工対象物(W)と底面部(3)が密着するように適宜調整をする。例えば、同じ形状の場合、柔らかい材質であれば、曲げ応力が大きく、面取り開始時にセットしやすい。一方、硬い材質であれば、曲げ応力が少なく、加工対象物(W)をセットする際に、スキージ形状が折れてしまう場合があり注意が必要である。
【0033】
加工対象物(W)と接するガイド部(4)の材質は、耐摩耗性に優れ、摩擦係数の少ないポリテトラフルオロエチレンが好ましい。
【0034】
弾性体(6)は、上面部(1)に設置されており、加工対象物(W)に対してガイド部(4)を保持し、底面部(3)に向けて押し付ける手段である。弾性体(6)を設けることで、加工対象物(W)の反りや浮きを抑えて適正な面取り加工を可能とする。
【0035】
弾性体(6)は、
図2に示すバネ形状のように、ガイド部(4)を加工対象物(W)に押し付けた際に、押すと縮まり、押すのをやめると元に戻るような復元力が生じる形状とする。例えば、弾性体(6)は、ガイド部(4)の両端を挟持し、上面部(1)から吊り下げるバネ形状の部材とする。
【0036】
図6は、異なる厚さの加工対象物(W)の面取り作業を示す模式図である。なお、
図6において、固定刃(5)は角度調整手段(7)及び間隔調整手段(8)の記載を省略し、刃(9)のみを記載している。弾性体(6)を、ガイド部(4)の変位に伴って圧縮される際に、復元力が生じる形状とすることで、ガイド部(4)が、加工対象物(W)の厚みに合わせて、弾性体(6)を介して上下に移動する構成となる。よって、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、加工対象物(W)の厚さが異なった場合でも、加工対象物(W)と底面部(3)が密着するように垂直方向から押し付けることが可能となる。
【0037】
弾性体(6)は上面部(1)とガイド部(4)の間に設置される。
【0038】
弾性体(6)の材質は、ガイド部(4)が加工対象物(W)を傷付けずに反りや浮きを押さえる程の復元力を有する物が好ましい。一例として、弾性体に圧縮コイルばねを使用する場合は、ステンレス鋼やピアノ線の、線径が細く小径のものが挙げられる。
【0039】
図6(a)に示すように、固定刃(5)は、上面部(1)の間隙(M)を通し、内壁部(2)と底面部(3)の交点(N)に刃先が位置するよう設置される。設置した固定刃(5)は、面取り加工中に常に固定されている。固定刃(5)の刃先が支持枠の内部にあるため、使用者や作業台を傷付けないで切削作業を行うことが可能となる。
【0040】
図7は、固定刃(5)を示す平面図及び分解図である。
図7(a)に示す固定刃(5)は加工対象物(W)の角を切り落とす、面取りを行う部材である。
図7(b)、
図7(c)及び
図7(d)は、固定刃(5)を分解した図であり、刃(9)、スライド手段(10)、固定手段(11)、角度調整手段(7)及び間隔調整手段(8)を有する。
【0041】
刃(9)は少なくとも一方の端部に刃を有する薄板状の部材であり、固定手段(11)とネジにより連結するための穴(9a)を有する。スライド手段(10)の一方の端部に、スライド及び着脱可能に格納され、スライド手段(10)の他方の端部にねじ状の部品である固定手段(11)を設置し、固定手段(11)と刃(9)に設けた穴(9a)をねじ止めすることで、刃(9)の交換は容易に行える。刃は、例えば、カッターナイフのL型刃(替刃大)の使用を可能とする。
【0042】
固定刃(5)の材質には刃物用合金工具鋼を使用するが、面取り加工時の抵抗を軽減するために、刃物用合金工具鋼の表面にフッ素加工を施して切削抵抗を軽減した材質の使用が好ましい。
【0043】
図8は、固定刃(5)における底面部(3)との角度変更方法を示す模式図であり、
図1における、Z方向から視認した斜視図である。角度調整手段(7)は、底面部(3)に対する刃(9)の角度を調整する手段であり、調整ガイド(7a)及び固定ネジ(7b)を有する。調整ガイド(7a)は、円弧状のスリットを有する板状部材であり、固定刃(5)のスライド手段(10)を挟持し、上面部(1)に設置する。スライド手段(10)には、凹部(図示せず)を設けることで、調整ガイド(7a)を介して固定ネジ(7b)を凹部にネジ留めすることで、刃(9)の角度を固定させる。刃(9)の角度を変更したい場合は、固定ネジ(7b)を緩めて、調整ガイド(7a)に沿って、例えば、
図8(b)に示すように、スライド手段(10)の角度をα1からα2に変更した後、再度固定ネジ(7b)をネジ留めすることで、刃先である交点(N)を原点とした角度変更を簡易に行うことが可能となる。
【0044】
なお、刃(9)は面取り加工が効果的に行えるように、内壁部(2)と底面部(3)の交点(N)に対して刃先が位置するよう設置した後、面取りカッター(S)の進行方向から見て底面部(3)に対する刃(9)の角度(α1、α2)を30°~60°の取付角度で固定する。
【0045】
図9は、固定刃(5)における底面部(3)との間隔変更方法を示す模式図であり、
図1における、Z方向から視認した斜視図である。間隔調整手段(8)は、底面部(3)に対する刃(9)の間隔を調整する手段であり、調整ガイド(8a)及び固定ネジ(8b)を有する。調整ガイド(8a)は、底面部(3)の面方向と垂直する方向に直線状のスリットを有する板状部材であり、角度調整手段(7)と上面部(1)の間に設置する。間隔調整手段(8)に、凹部(図示せず)を設けることで、調整ガイド(8a)を介して固定ネジ(8b)を凹部にネジ留めすることで、底面部(3)と刃(9)の間隔を一定に保つ。
【0046】
底面部(3)と刃(9)の間隔を変更したい場合は、固定ネジ(8b)を緩めて、調整ガイド(8a)に沿って、例えば、
図9(b)に示すように、底面部(3)と刃(9)の間隔をV1からV2へ変更した後、再度固定ネジ(8b)をネジ留めすることで、刃先である交点(N)を原点とした間隔変更を簡易に行うことが可能となる。
【0047】
厚みが同じ加工対象物(W)を切削する場合、底面部(3)に対する間隔が広い場合、例えば、
図9においては、
図9(a)に示す、間隔V1よりも、
図9(b)に示す間隔V2の方が、加工対象物(W)と刃(9)の間隔が狭くなることで、刃(9)が加工対象物(W)に入り込むことで、切削量が多くなる。このように、底面部(3)と固定刃(5)の間隔を変更することで、切削量を容易に変更することが可能となる。
【0048】
次に、本発明の面取りカッター(S)を用いた、面取り方法を説明する。
【0049】
図10、本発明における面取りカッター(S)を用いた切削作業を示す平面図であり、
図11は、
図10に示す切削作業のX方向からの側面図であり、
図12は、
図10に示す切削作業時のY方向からの側面図である。
【0050】
上面部(1)、内壁部(2)及び底面部(3)はステンレス製とし、溶接により一体加工をした。ガイド部(4)は合成樹脂製とし、形状は、
図4に示した円筒形状とした。また、弾性体(6)は、ステンレス鋼製の圧縮コイルばねとし、上面部(1)に形成した窪みに対して、弾性体(6)の端部を溶接により連結させて設置した。固定刃(5)は、刃物用合金工具鋼製のカッターナイフのL型刃とした。
【0051】
まず、角度調整手段(7)により、底面部(3)に対する固定刃(5)の角度を調整する。一例として、45度に調整する。次に、間隔調整手段(8)により、底面部(3)に対する固定刃(5)の間隔である、固定刃(5)における刃(9)の先端と底面部(3)の間隔を調整する。一例として、0.4mmに調整する。
【0052】
次に、加工対象物(W)を、上面部(1)で押さえて、底面部(3)上に固定した。一例として、加工対象物(W)は、厚さ0.5mmのプレスボードとする。
【0053】
次に、作業者が、支持枠を握り、進行方向であるX方向に引くことで、上面部(1)に設けた間隙(M)から、切屑(W1)を排出した。
【0054】
切削後の加工対象物(W)の厚さを測定すると、0.4mmであった。
【0055】
以上のように、面取りカッター(S)において、上面部(1)に、底面部(3)との間隔及び角度を調整可能に取り付けた固定刃(5)と、加工対象物(W)を底面部(3)に対して垂直方向に抑える弾性体(6)を有したガイド部(4)を少なくとも備えることで、面取り作業時において、固定刃(5)を取り付けた間隙により切削量を変更し、併せて角度調整により面取り角度が変更可能となった。
【符号の説明】
【0056】
1 上面部
2 内壁部
3 底面部
4 ガイド部
5 固定刃
6 弾性体
7 角度調整手段
7a、8a 調整ガイド
7b、8b 固定ネジ
8 間隔調整手段
9 刃
10 スライド手段
S 面取りカッター
M 間隙