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特開2022-137416導電性シリコーン組成物、接着剤及び導電性シリコーン硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137416
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】導電性シリコーン組成物、接着剤及び導電性シリコーン硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/05 20060101AFI20220914BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20220914BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
C08L83/05
C08L83/07
C08K3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036916
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 将太
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP04W
4J002CP14X
4J002DA036
4J002EX017
4J002FD116
4J002FD347
4J002GQ02
(57)【要約】
【課題】 少量のカーボンブラック配合量であっても、高い導電率を有する硬化物を与える導電性シリコーン組成物を提供する。
【解決手段】 (A)ヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合を有する基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン:100質量部、(B)SiH基を1分子中に平均2~20個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(B)成分中のSiH基の数が、(A)成分中のヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合1個に対して0.5~10.0個となる量、(C)白金族金属触媒:組成物全体に対して白金族金属の含有量が0.01~500質量ppmとなる量、(D)カーボンブラック:1~50質量部、を含むものである導電性シリコーン組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合を有する基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)SiH基を1分子中に平均2~20個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(B)成分中のSiH基の数が、(A)成分中のヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合1個に対して0.5~10.0個となる量、
(C)白金族金属触媒:組成物全体に対して白金族金属の含有量が0.01~500質量ppmとなる量、
(D)カーボンブラック:1~50質量部、
を含むものであることを特徴とする導電性シリコーン組成物。
【請求項2】
前記(B)成分が、下記式(1)で表される平均構造を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることを特徴とする請求項1に記載の導電性シリコーン組成物。
(R SiO1/2(R HSiO1/2(RHSiO)(R SiO)(HSiO3/2(RSiO3/2(SiO4/2 (1)
(式(1)中、各Rはヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合を含まない同一又は異なっていても良い、置換又は非置換の1価の炭化水素基である。a、b、c、d、e、f、gはそれぞれ、a≧0、b≧0、c≧0、d≧0、e≧0、f≧0及びg≧0を満たす数であり、20≧b+c+e≧2、かつ、100≧a+b+c+d+e+f+gである。各シロキサン単位の配列順は任意である。)
【請求項3】
前記(D)成分が、BET比表面積50~200m/g、かつ、DBP吸油量100~280ml/100gのカーボンブラックであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の導電性シリコーン組成物。
【請求項4】
更に、(E)接着助剤を含むものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の導電性シリコーン組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の導電性シリコーン組成物からなる接着剤。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の導電性シリコーン組成物の硬化物である導電性シリコーン硬化物。
【請求項7】
デュロメータタイプA硬度が5以上であることを特徴とする請求項6に記載の導電性シリコーン硬化物。
【請求項8】
体積抵抗率が1~1,000Ω・cmであることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の導電性シリコーン硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性シリコーン組成物、接着剤及び導電性シリコーン硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、付加硬化型シリコーン組成物は、その優れた耐熱性や耐候性・耐寒性から、ポッティング材、コーティング材、接着剤、成型材など幅広い用途で用いられている。また、本来絶縁性であるシリコーンに、カーボンブラック・金属・導電性金属酸化物などの導電性物質を配合することにより導電性を付与した形での利用も広くなされている。
【0003】
カーボンブラックは安価な導電性フィラーとして、帯電防止材、ロール材や接点材などに広く用いられている。付加硬化型シリコーン組成物により高い導電性を付与するためには、一般にカーボンブラックをより多く配合する必要があるが、同時に粘度の著しい上昇や硬化性・接着性の低下など好ましくない影響を伴う。特に少量で導電性を発現可能なカーボンブラックは高度にストラクチャーが発達していることにより、粘度の上昇と流動性の低下をもたらしやすい。また、大きな比表面積を有するカーボンは、付加硬化型シリコーン組成物の硬化阻害を引き起こしたり、接着性付与成分の吸着により接着剤の接着特性を損なう場合がある。
【0004】
こうした点から、付加硬化型シリコーン組成物を導電性の接着剤として用いる場合、可能な限り少量のカーボンブラックを配合することが望ましい。少量のカーボン配合で高い導電性を得る方法としては、グラフェン、カーボンナノチューブなどのナノカーボンを添加する方法(特許文献1)が知られているが、これらは組成物の粘度上昇が極めて大きく、液状であることが求められる接着剤としての用途へは不適である。また、カーボンブラックと比べ非常に高価である点も実用上の問題として挙げられる。
【0005】
この他、高導電性を得る方法として、付加硬化型シリコーン組成物にフェニル基を含有するケイ素化合物を添加する方法(特許文献2)や揮発性の低分子オルガノシロキサンの添加を行う方法(特許文献3)、シリコーン中にメチルスチリル基などフェニル基含有基を導入する方法(特許文献4)などが知られているが、いずれもカーボンブラックの充填量を増すための方法であって、カーボンブラックの増量による硬化性や接着性への負の影響については解決されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-245329号公報
【特許文献2】特公平3-47663号公報
【特許文献3】特公平4-28009号公報
【特許文献4】特開2010-043282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カーボンブラックを高い割合で含む付加硬化型シリコーン組成物からなる導電性接着剤は、十分な硬化性を担保するために多量の触媒を添加し、更に多量の反応制御剤の添加を必要とするとともに、低温での保管を要するなどの制約が多い問題があった。加えて、銀粉等を高い割合で含む付加硬化型シリコーン組成物は、空気欠乏条件下で硬化性が悪化する傾向があり、このような導電性組成物を接着剤として使用した場合、80~150℃程度の比較的低温で加熱した際に貼り合わせ部の内部が硬化しない問題があった。この傾向は反応制御剤を添加した際に顕著であり、保存性と硬化性との両立が困難という問題があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、少量のカーボンブラック配合量であっても、高い導電率を有する硬化物を与える導電性シリコーン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、
(A)ヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合を有する基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)SiH基を1分子中に平均2~20個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(B)成分中のSiH基の数が、(A)成分中のヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合1個に対して0.5~10.0個となる量、
(C)白金族金属触媒:組成物全体に対して白金族金属の含有量が0.01~500質量ppmとなる量、
(D)カーボンブラック:1~50質量部、
を含むものであることを特徴とする導電性シリコーン組成物を提供する。
【0010】
このように特定された導電性シリコーン組成物であれば、少量のカーボンブラック配合量であっても、高い導電率を有する硬化物を与える導電性シリコーン組成物とすることができる。
【0011】
このとき、前記(B)成分が、下記式(1)で表される平均構造を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることが好ましい。
(R SiO1/2(R HSiO1/2(RHSiO)(R SiO)(HSiO3/2(RSiO3/2(SiO4/2 (1)
(式(1)中、各Rはヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合を含まない同一又は異なっていても良い、置換又は非置換の1価の炭化水素基である。a、b、c、d、e、f、gはそれぞれ、a≧0、b≧0、c≧0、d≧0、e≧0、f≧0及びg≧0を満たす数であり、20≧b+c+e≧2、かつ、100≧a+b+c+d+e+f+gである。各シロキサン単位の配列順は任意である。)
【0012】
導電性シリコーン組成物では、(B)成分として、このようなものを用いることにより、より効果的に、少量のカーボンブラック配合量であっても、高い導電率を有する硬化物を与える導電性シリコーン組成物とすることができる。
【0013】
また、前記(D)成分が、BET比表面積50~200m/g、かつ、DBP吸油量100~280ml/100gのカーボンブラックであることが好ましい。
【0014】
このようなカーボンブラックのBET比表面積の範囲は、導電性に優れ、低粘度のポリシロキサンに対する配合が容易であり、接着成分の吸着による接着性低下を抑制することができる。また、このようなDBP吸油量の範囲のカーボンブラックを用いることにより、より導電性と流動性に優れる導電性シリコーン組成物となる。
【0015】
また、本発明の導電性シリコーン組成物は、更に、(E)接着助剤を含むものであることが好ましい。
【0016】
このようなものであれば、樹脂に対する接着性を高めることができる。
【0017】
また、本発明では、上記のいずれかの導電性シリコーン組成物からなる接着剤を提供する。
【0018】
このような接着剤は、少量のカーボンブラック配合量であっても、高い導電率を有する硬化物を与えることから、カーボンブラックによる粘度上昇や硬化性・接着性の低下のおそれがない接着剤とすることができる。
【0019】
また、本発明では、上記のいずれかの導電性シリコーン組成物の硬化物である導電性シリコーン硬化物を提供する。
【0020】
このような導電性シリコーン硬化物は、少量のカーボンブラック配合量であっても、高い導電率を有するものとすることができる。
【0021】
このとき、本発明の導電性シリコーン硬化物は、デュロメータタイプA硬度が5以上であることが好ましい。
【0022】
このような導電性シリコーン硬化物は、硬化物の架橋度が十分であり、導電性が発現しやすい。
【0023】
また、本発明の導電性シリコーン硬化物は、体積抵抗率が1~1,000Ω・cmであることが好ましい。
【0024】
このような導電性シリコーン硬化物であれば、十分な導電性を有するものとなる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の導電性シリコーン組成物は、少量のカーボンブラック配合量であっても、高い導電率を有する硬化物を与えることから、カーボンブラックによる粘度上昇や硬化性・接着性の低下のおそれがなく、このような特性を有する本発明の導電性シリコーン組成物は、導電性接着剤や導電ペーストとして、電子部品や素子の基盤への接着等に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
上述のように、少量のカーボンブラック配合量であっても、高い導電率を有する硬化物を与える導電性シリコーン組成物の開発が求められていた。
【0028】
本発明者は、上記問題について鋭意検討を重ねた結果、付加硬化型シリコーンに特定量のカーボンブラックを充填した導電性組成物において、特定の構造を有する架橋剤を使用することで、導電性に優れる硬化物を与える導電性シリコーン組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0029】
即ち、本発明は、
(A)ヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合を有する基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)SiH基を1分子中に平均2個以上20個以下有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(B)成分中のSiH基の数が、(A)成分中のヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合1個に対して0.5~10.0個となる量、
(C)白金族金属触媒:組成物全体に対して白金族金属の含有量が0.01~500質量ppmとなる量、
(D)カーボンブラック:1~50質量部、
を含むものであることを特徴とする導電性シリコーン組成物である。
【0030】
本発明の導電性シリコーン組成物は、下記(A)~(D)成分を含むものである。
【0031】
[(A)成分]
本発明の導電性シリコーン組成物における(A)成分は、ヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合を有する基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンである。
【0032】
(A)成分としては、例えば、下記平均式(2)で示されるオルガノポリシロキサンを用いることができる。
(R SiO1/2(R SiO1/2i(RSiO)j(R SiO)k(RSiO3/2l(RSiO3/2(SiO4/2n ・・・(2)
【0033】
式(2)中、Rはヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合を有する基であり、Rはヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合を含まない同一又は異なっていても良い、置換又は非置換の1価の炭化水素基である。ただし、h、i、j、k、l、m、nはそれぞれ、h≧0、i≧0、j≧0、k≧0、l≧0、m≧0及びn≧0を満たす数であり、ただし、i+j+l>0であり、かつ、h+i+j+k+l+m+n=1を満たす数である。また、各シロキサン単位の配列順は任意である。
【0034】
のヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合を有する基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、ノルボルニル基、イソノルボルニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられ、好ましくは炭素原子数2~10、より好ましくは2~6のアルケニル基であり、特にビニル基が好ましい。
【0035】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1分子中に少なくとも2個、好ましくは2~6個の、ヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合を有する基を含む。これらの基は、(A)成分の分子鎖末端及び分子鎖側鎖(分子鎖非末端)のどちらか一方にのみ位置していても、その両方に位置していてもよい。
【0036】
としては、ヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合を含まないものであれば特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、s-ペンチル基、2-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基、トリフルオロメチル基、3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等の、好ましくは炭素原子数が1~12、より好ましくは1~10、更に好ましくは1~8の、非置換又はハロゲン置換の1価の炭化水素基が挙げられ、特にメチル基が好ましい。
【0037】
(A)成分の具体的な例としては、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン、両末端ジメチルビニルシロキサン・環状メチルビニルシロキサン共重合体、環状メチルビニルシロキサン、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・環状ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・環状メチルフェニルシロキサン共重合体、両末端メチルフェニルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン、両末端メチルフェニルビニルシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン、両末端メチルフェニルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルシロキサン、両末端メチルフェニルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・環状ジフェニルシロキサン共重合体、(CH=CH)(CHSiO1/2単位と(CHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。(A)成分は一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0038】
(A)成分の動粘度は特に限定されないが、好ましくは10~100,000mm/s、より好ましくは100~10,000mm/sの範囲である。なお、動粘度は、例えば、ウベローデ粘度計又はキャノン・フェンスケ型粘度計を用いた25℃における測定値とすることができる。このような範囲であれば組成物の取り扱い性に優れる。
【0039】
[(B)成分]
本発明の導電性シリコーン組成物における(B)成分は、(A)成分中に含まれるヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合とヒドロシリル化反応により架橋する架橋剤である。(B)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を1分子中に平均2~20個、好ましくは平均3~18個、より好ましくは平均4~16個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。1分子当たりに含まれるSiH基がこの範囲にあることにより架橋点が十分に分散し、良好な導電性を有する硬化物が得られる。SiH基が1分子当たり平均2個未満である場合、組成物の硬化性が不十分となる虞があり、平均20個を超える場合、得られる硬化物の導電性が低下する。
【0040】
(B)成分としては、例えば、下記式(1)で表される平均構造を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることができる。
(R SiO1/2(R HSiO1/2(RHSiO)(R SiO)(HSiO3/2(RSiO3/2(SiO4/2 ・・・(1)
【0041】
式(1)中、各Rはヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合を含まない同一又は異なっていても良い、置換又は非置換の1価の炭化水素基である。ただし、a、b、c、d、e、f、gはそれぞれ、a≧0、b≧0、c≧0、d≧0、e≧0、f≧0及びg≧0を満たす数である。また、20≧b+c+e≧2であり、好ましくは18≧b+c+e≧3であり、より好ましくは16≧b+c+e≧4である。また、a+b+c+d+e+f+gは100以下であり、50以下であることが好ましい。また、各シロキサン単位の配列順は任意である。
【0042】
の具体例としては、上記Rと同様の基が挙げられ、好ましくは炭素原子数が1~12、より好ましくは1~10、更に好ましくは1~8の、非置換又はハロゲン置換の1価の炭化水素基が挙げられ、特にメチル基が好ましい。
【0043】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが直鎖状構造を有する場合、SiH基は、分子鎖末端及び分子鎖側鎖(分子鎖非末端)のどちらか一方にのみ位置していても、その両方に位置していてもよい。
【0044】
(B)成分の具体的な例としては、例えば、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・環状メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンシロキサン、両末端ジメチルフェニルシロキシ基封鎖メチルフェニルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端ジメチルフェニルシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端メチルフェニルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサン、両末端メチルフェニルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジフェニルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体等が挙げられる。
【0045】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、単独で用いても二種以上併用してもよい。
【0046】
(B)成分の動粘度は、特に限定されないが、好ましくは10~1,000mm/s、より好ましくは10~100mm/sの範囲である。なお、動粘度は、例えば、ウベローデ粘度計又はキャノン・フェンスケ型粘度計を用いた25℃における測定値とすることができる。このような範囲であれば組成物の取り扱い性に優れる。
【0047】
(B)成分の配合量は、(A)成分中のヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合1個に対して(B)成分中のSiH基の数が、0.5~10.0個、好ましくは1.0~5.0の範囲内となる量である。(B)成分が少なすぎる場合、硬化性が不十分となるおそれがあり、多すぎると硬化物の物理特性が悪化する場合がある。
【0048】
[(C)成分]
本発明の導電性シリコーン組成物における(C)成分は、白金族金属触媒であり、上記(A)成分中のヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合と、(B)成分中のSiH基との付加反応を促進するためのヒドロシリル化反応触媒として作用する。
【0049】
前記白金族金属触媒としては、前記付加反応を促進させるものであれば特に制限はなく、公知の白金族金属触媒を用いることができる。具体的には、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;HPtCl・nHO、HPtCl・nHO、NaHPtCl・nHO、KHPtCl・nHO、NaPtCl・nHO、KPtCl・nHO、PtCl・nHO、PtCl、NaHPtCl・nHO(ただし、化学式中のnは0~6の整数であり、0又は6であることが好ましい。)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸;塩化白金酸とオレフィンとの錯体;白金黒、パラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させた触媒;ロジウム-オレフィン錯体;ウィルキンソン触媒〔クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム〕;塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサンとの錯体等が挙げられる。これらの白金族金属触媒は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらの白金族金属触媒の中でも、白金、白金化合物が好ましい。
【0050】
(C)成分の配合量は、本発明の導電性シリコーン組成物の質量の合計に対して、(C)成分中の白金族金属換算で0.01~500質量ppmの範囲であり、0.05~100質量ppmの範囲がより好ましく、0.05~50質量ppmの範囲がより一層好ましい。(C)成分の配合量が前記下限未満になると、前記反応を十分に促進できない場合がある。また、前記上限を超える量の触媒を配合しても、硬化速度の更なる向上が期待できない場合があり、また、多量の反応制御剤の添加を必要とする場合がある。
【0051】
[(D)成分]
本発明の導電性シリコーン組成物における(D)成分は、カーボンブラックであり、シリコーン組成物及びその硬化物に導電性を付与する成分である。
【0052】
カーボンブラックとしては、その製造法により、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラックなどが挙げられる。この内アセチレンブラックは不純物が少なくストラクチャーの発達による高導電から好適である。これらのカーボンブラックは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0053】
カーボンブラックのBET比表面積は50~200m/gであることが好ましく、より好ましくは50~100m/gである。BET比表面積の大きなカーボンブラックは少量で導電性を発現し易い一方で分散性に劣るが、このようなBET比表面積の範囲であれば導電性に優れ、低粘度のポリシロキサンに対する配合が容易であり、接着成分の吸着による接着性低下を抑制することができる。なお、カーボンブラックのBET比表面積はJIS K6217に準拠して測定することができる。
【0054】
カーボンブラックのDBP(フタル酸ジブチル)吸油量は100~280ml/100gであることが好ましく、より好ましくは120~200ml/100gである。DBP吸油量が大きいカーボンブラックはストラクチャーが発達しており、少量で導電性が発現し易い一方で流動性に劣るが、このような範囲であれば、より導電性と流動性に優れる組成物となる。なお、カーボンブラックのDBP吸油量はJIS K6217に準拠して測定することができる。
【0055】
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して1~50質量部、好ましくは5~30質量部、より好ましくは10~20質量部である。カーボンブラック配合量が多すぎる場合、粘度の著しい上昇や接着性の低下を招く場合があり、カーボンブラック配合量が少なすぎる場合は導電性が不十分となる。
【0056】
[(E)成分]
本発明の導電性シリコーン組成物には、樹脂に対する接着性を高めるために、(E)接着助剤を添加してもよい。接着助剤としては、付加反応硬化型である本発明の導電性シリコーン組成物に自己接着性を付与する観点から、接着性を付与する官能基を含有するシラン、シロキサン等の有機ケイ素化合物、非シリコーン系有機化合物等が用いられる。
【0057】
接着性を付与する官能基の具体例としては、ケイ素原子に結合した炭素-炭素不飽和結合を有する重合性基、炭素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基(例えば、γ-グリシドキシプロピル基、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基等)や、アルコキシシリル基(例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基等)等が挙げられる。
【0058】
(E)成分はSiH基を含んでいてもよく、1分子当たりに含まれるSiH基の数は2以上20以下であることが好ましい。
【0059】
上記官能基群のうちの少なくとも1種及びオルガノシロキサン骨格を含む化合物の例として、下記構造式で表されるものが挙げられる。なお、式中においてMeはメチル基を表す。
【0060】
【化1】
【0061】
また、非シリコーン系有機化合物としては、例えば、下記構造式で表される有機酸アリルエステル化合物及びアリルエーテル化合物などが挙げられる。
【0062】
【化2】
【0063】
その他の非シリコーン系接着助剤としては、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物等が挙げられる。
【0064】
有機チタン化合物の例としては、チタン酸テトラエチル、チタン酸テトラプロピル、チタン酸テトラブチル、チタニウムテトラアセチルアセトネート、ジイソプロポキシチタニウムビス(アセチルアセトナト)などが挙げられる。
【0065】
有機ジルコニウム化合物の例としては、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムプロポキシド、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセチルアセトネート、ビスアセタトオキソジルコニウムなどが挙げられる。
【0066】
有機アルミニウム化合物の例としては、アルミニウムエトキシド、アルミニウムプロポキシド、アルミニウムブトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトネートなどが挙げられる。
【0067】
[その他の成分]
本発明の導電性シリコーン組成物には、必要に応じて(A)~(E)以外の成分を添加してもよい。具体的には、反応制御剤・補強材・充填材・分散剤・着色剤・耐熱助剤・難燃助剤などが挙げられる。
【0068】
<反応制御剤>
本発明の組成物には(C)成分の付加反応触媒に対して反応制御効果を持つ公知の反応制御剤を使用してもよい。反応制御剤としては、トリフェニルホスフィン等のリン含有化合物;トリブチルアミンやテトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール等の窒素含有化合物;硫黄含有化合物;アセチレン系化合物;ハイドロパーオキシ化合物;マレイン酸誘導体等が例示される。
【0069】
<補強材・充填材>
本発明の導電性シリコーン組成物には引張強度、伸び、引き裂き強度などを向上させるために補強材として煙霧質シリカ(乾式シリカ)、沈降シリカ(湿式シリカ)などの微粉末シリカを配合してもよい。微粉末シリカはそのまま使用してもよいが、組成物に良好な流動性を付与するため、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン等のメチルクロロシラン類、ジメチルポリシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルテトラビニルジシラザン等のヘキサオルガノジシラザン等の有機ケイ素化合物で処理したものを使用することが好ましい。補強性シリカは単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0070】
この他、既知の充填材として結晶性シリカ、珪藻土、酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの無機充填材を配合しても良い。また、Cu、Ni、Ag、Al及びそれらの合金等の金属の他、各種絶縁粒子上に金属を製膜した金属コート粒子・導電性金属酸化物などの各種導電性充填材を併用しても良い。
【0071】
本発明の導電性シリコーン組成物は、(A)~(E)及びその他の成分が予め混合された一液型、各成分を任意に2液に分割し使用前に混合する二液型、又はその他の多成分系とすることができる。
【0072】
[接着剤]
本発明の導電性シリコーン組成物は、接着剤として用いることができる。このような接着剤は、少量のカーボンブラック配合量であっても、高い導電率を有する硬化物を与えることから、カーボンブラックによる粘度上昇や硬化性・接着性の低下のおそれがない接着剤とすることができる。
【0073】
[導電性シリコーン硬化物]
本発明では、上記の導電性シリコーン組成物の硬化物である導電性シリコーン硬化物を提供する。
【0074】
本発明の導電性シリコーン硬化物の硬度はJIS K 6253に規定するデュロメータタイプA硬度で5以上が好ましく、より好ましくは10以上である。このような導電性シリコーン硬化物であれば、硬化物の架橋度が十分であり導電性が発現し易い。
【0075】
本発明の導電性シリコーン組成物の硬化物は、その体積抵抗率が1~1,000Ω・cmであることが好ましい。このような導電性シリコーン硬化物であれば、十分な導電性を有するものとなる。
【実施例0076】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、25℃における動粘度はウベローデ粘度計又はキャノン・フェンスケ型粘度計により測定した。カーボンブラックのBET比表面積及びDBP吸油量はJIS K6217に準拠して測定した値である。
【0077】
[実施例1~6、比較例1~3]
下記に示される(A)~(C)成分、f-1成分及びg-1成分を、表1に示す配合量にてプラネタリ―ミキサーを用いて混練した後、三本ロールで一回処理することによりベース材を得た。このベース材に(D)成分を、同じく表1に示す配合量にてプラネタリーミキサーを用いて混合し、導電性シリコーン組成物を調製した。なお、表1中の各成分の数値は質量部を示す。
【0078】
[(A)成分]
a-1:両末端ジメチルビニルシリル基封鎖ジメチルポリシロキサン(25℃における動粘度10,000mm/s)
【0079】
[(B)成分]
b-1: テトラメチルシクロテトラシロキサン
【0080】
b-2:平均構造が下記式(3)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化3】
(式中、括弧内のシロキサン単位の配列順は不定である。)
【0081】
b-3:平均構造が下記式(4)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化4】
【0082】
b-4:平均構造が下記式(5)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化5】
(式中、括弧内のシロキサン単位の配列順は不定である。)
【0083】
b-5:平均構造が下記式(6)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化6】
(式中、括弧内のシロキサン単位の配列順は不定である。)
【0084】
b-6:平均構造が下記式(7)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化7】
【0085】
b-7:平均構造が下記式(8)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化8】
(式中、括弧内のシロキサン単位の配列順は不定である。)
【0086】
[(C)成分]
c-1:六塩化白金酸と1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンとの反応生成物の、ジメチルポリシロキサン(粘度600mPa・s)溶液(白金原子として1.0質量%含有)
【0087】
[(D)成分]
d-1:カーボンブラックENSACO260G(IMERYS社製、BET比表面積:70m/g、DBP吸油量:190ml/100g)
d-2:カーボンブラック デンカブラック(粒状)(デンカ株式会社製、BET比表面積:70m/g、DBP吸油量:130ml/100g)
【0088】
[その他の成分]
f-1:1-エチニル-1-メチルデシルカルビノール(反応制御剤)
g-1:BET比表面積130m/gの疎水性処理された微粉末シリカ(補強材)
【0089】
導電性シリコーン組成物、及びその硬化物の特性は次のようにして評価した。
【0090】
[デュロメーターA硬度]
得られたシリコーン組成物について試験用シートをプレス成型にて作製した。成型圧力2MPaで120℃/10分間の加熱の後、120℃/50分間のポストキュアを行った。得られたシートについてJIS-K6249に準じてデュロメーターA硬度の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0091】
[体積抵抗率]
上記デュロメーターA硬度測定において作製した硬化物について、三菱化学アナリテック社製ロレスターGXにより四探針法での体積抵抗率測定を行った。その結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
表1の結果より、本発明の導電性シリコーン組成物を硬化して得られたシート(実施例1~6)は、同量のカーボンブラックを配合した比較例の組成物を使用した場合と比較し、体積抵抗率が低く、高導電のものであることが分かる。
【0094】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。