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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137454
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】ワイヤーハーネスおよび接地構造体
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/64 20060101AFI20220914BHJP
   H01R 13/74 20060101ALI20220914BHJP
   B60R 16/02 20060101ALN20220914BHJP
【FI】
H01R4/64 C
H01R13/74 B
B60R16/02 623
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036964
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】井上 郁哉
(72)【発明者】
【氏名】榊 直哉
(72)【発明者】
【氏名】大崎 祥司
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 正則
(72)【発明者】
【氏名】三吉 隆宜
(72)【発明者】
【氏名】石橋 慎一
(57)【要約】
【課題】可撓性導電部材を車体側に有する取付け箇所に容易に取り付けることができつつ、可撓性導電部材の電磁シールド効果を高めること。
【解決手段】導電性を有する管状体2と、管状体2の端面と電気的に接続される可撓性導電部材3と、管状体2および可撓性導電部材3に挿通される電線4と、可撓性導電部材3を保持する保持部51および、車両における所定の取付け箇所Aに取付けられる取付け部61を有するクランプ5とが備えられ、可撓性導電部材3は、電線4の管状体2からの延出部分から先端側部分まで該電線4を挿通する筒状であり、クランプ5は、可撓性導電部材3を保持するとともに取付け箇所Aに取り付けられた状態で可撓性導電部材3と取付け箇所Aとを導電する導電部7が備えられた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する管状体と、
前記管状体の端部に、電気的に接続される可撓性導電部材と、
前記管状体および前記可撓性導電部材に挿通される電線と、
前記可撓性導電部材を保持する保持部および、車両における所定の取付け箇所に取付けられる取付け部を有するクランプとが備えられ、
前記可撓性導電部材は、前記電線の前記管状体からの延出部分から先端側まで該電線を挿通する筒状であり、
前記クランプは、前記可撓性導電部材を保持するとともに前記取付け箇所に取り付けられた状態で前記可撓性導電部材と前記取付け箇所とを導電する導電部が備えられた
ワイヤーハーネス。
【請求項2】
前記保持部は、前記可撓性導電部材における、前記電線の先端側部分に相当する先端側部分を保持する構成とした
請求項1に記載のワイヤーハーネス。
【請求項3】
前記可撓性導電部材の前記先端側部分を前記管状体の側に向かって折り返し、該折り返し部分を先端側折返し部分に設定し、
前記保持部を、前記先端側折返し部分に対して外側から装着した
請求項2に記載のワイヤーハーネス。
【請求項4】
前記可撓性導電部材の前記先端側部分の付近に装着されるリング体が設けられ、
前記先端側折返し部分は、前記可撓性導電部材における前記リング体より先端側を前記リング体の外側に前記管状体の側に向かって折り返した部分である
請求項3に記載のワイヤーハーネス。
【請求項5】
前記取付け部は、前記取付け箇所に設けたアンカー穴に挿入して取付けるアンカー部で形成された
請求項1乃至請求項4のうちいずれかに記載のワイヤーハーネス。
【請求項6】
前記アンカー部は、
前記アンカー穴に挿入する挿入軸部と、
前記挿入軸部の先端側から基端側に向かって、前記挿入軸部から徐々に離間して延びるとともに、弾性を有する一対の係止アーム部とが設けられ、
前記導電部は、前記保持部に設けられ、前記可撓性導電部材と導電可能に接触する第1導電部と、
前記係止アーム部に設けられ、前記アンカー穴に挿入した状態で前記取付け箇所と導電可能に接触する第2導電部とが備えられ、
前記第1導電部と前記第2導電部は、電気的に接続された
請求項5に記載のワイヤーハーネス。
【請求項7】
前記第2導電部に、前記アンカー穴の縁部に係合する段部が設けられた
請求項6に記載のワイヤーハーネス。
【請求項8】
前記アンカー部に、前記第2導電部が設けられた前記係止アーム部を、前記アンカー穴の縁部の端面に向かって押付ける押付け部が設けられた
請求項6又は請求項7に記載のワイヤーハーネス。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のうちいずれかに記載のワイヤーハーネスが備えられ、
車両における所定の取付け箇所に前記取付け部が取付けられた
接地構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、導電性を有する管状体と、管状体の端部に電気的に接続される可撓性導電部材と、管状体および可撓性導電部材に挿通される電線とが備えられたワイヤーハーネス、および該ワイヤーハーネスを所定の取付け箇所に取り付けた接地構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に配索されるワイヤーハーネスは、電線を保護したり所定の配索経路に保持したりするため、多数の部品が備えられている。このため、ワイヤーハーネスを構成する部品点数を削減するために、電線を挿通可能に所定の剛性を有するパイプ(管状体)が備えられた構成が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のワイヤーハーネスは、前記パイプと、該パイプの端部に電気的に接続される、編組等からなる筒状の可撓性導電部材と、パイプおよび可撓性導電部材の内部に挿通されて可撓性導電部材の中間部から外側に引き出された電線とが備えられている。
【0004】
これにより、可撓性導電部材の中間部から外側に引き出された電線は、先端に接続された端子金具を車体に備えたバッテリーや電気機器等のコネクタに設けられた端子取付け部にボルト等により取り付けられる。一方、可撓性導電部材は、電磁シールド効果を得るために、先端に接続された端子金具を車体フレーム等の接地回路にアースボルトで締結することで接地(シールドアース)される。
【0005】
このように特許文献1の構成においては、アースボルトを必要とするため、その分、部品点数が増えるとともに可撓性導電部材を車体に対してアースボルトで締結する工数が増える点で改善の余地がある。
【0006】
また、特許文献1の構成においては、電線を可撓性導電部材の中間部から外側に引き出すことで、電線と、接地線としての可撓性導電部材とに分岐させる構成としているが、このような構成においては、電線の可撓性導電部材の中間部からの引き出し箇所から先端までの区間は、可撓性導電部材によって適切に電磁シールドされないため、この区間における電線の電磁シールド性を確保する点でも改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-102590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、可撓性導電部材を車体側に有する前記取付け箇所に容易に取り付けることができつつ、可撓性導電部材の電磁シールド効果を得ることができるワイヤーハーネスおよび接地構造体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のワイヤーハーネスは、導電性を有する管状体と、前記管状体の端部に、電気的に接続される可撓性導電部材と、前記管状体および前記可撓性導電部材に挿通される電線と、前記可撓性導電部材を保持する保持部および、車両における所定の取付け箇所に取付けられる取付け部を有するクランプとが備えられ、前記可撓性導電部材は、前記電線の前記管状体からの延出部分から先端側まで該電線を挿通する筒状であり、前記クランプは、前記可撓性導電部材を保持するとともに前記取付け箇所に取り付けられた状態で前記可撓性導電部材と前記取付け箇所とを導電する導電部が備えられたことを特徴とする。
【0010】
前記構成によれば、可撓性導電部材を前記取付け箇所に容易に取り付けることができつつ、可撓性導電部材の電磁シールド効果を得ることができる。
【0011】
詳述すると、可撓性導電部材を前記取付け箇所に、導電部を有するクランプを介して取り付けることで、例えば、従来のように、前記可撓性導電部材を電線と分岐させ、その先端部に接続された端子金具を車両における所定の取付け箇所にボルト(アースボルト)等で締結固定する必要がなく、可撓性導電部材を前記取付け箇所に容易に取り付けることができる。
【0012】
さらに、上述したように、前記可撓性導電部材と前記取付け箇所とを、導電部を有するクランプを介して電気的に接続するとともに、前記可撓性導電部材は、前記電線の前記管状体からの延出部分から先端側部分まで該電線が挿通されることで、前記可撓性導電部材および前記管状体の電磁シールド効果を得ることができる。
【0013】
この発明の態様として、前記保持部は、前記可撓性導電部材における、前記電線の前記先端側部分に相当する先端側部分を保持する構成としてもよい。
【0014】
前記構成によれば、前記可撓性導電部材における先端側部分に至るまで電磁シールド効果を得ることができる。
【0015】
詳しくは、前記構成によれば、前記管状体から外側へ延びる電線を、該電線の先端側部分に至るまで可撓性導電部材によってシールドするとともに、可撓性導電部材を、該可撓性導電部材の先端側部分において、導電部を有するクランプを介して車体に接地させることができるため、前記管状体から延びる電線から放射される電磁波および外部からの電磁波に対する遮蔽性能を高めることができる。
【0016】
また、前記電線の先端側部分も含めてクランプを介して車体の取付け箇所にしっかりと固定することができる。
【0017】
この発明の態様として、前記可撓性導電部材の先端側を前記管状体の側に向かって折り返し、該折り返し部分を先端側折返し部分に設定し、前記保持部を、前記先端側折返し部分に対して外側から装着してもよい。
【0018】
前記構成によれば、前記先端側折返し部分を折り返した状態に前記保持部によってしっかりと保持することができる。
【0019】
前記可撓性導電部材が前記金属素線を編み込んだ編組線である場合、折り返しによって編組線が解れることがないように先端側折返し部分をしっかりと固定することができる。
【0020】
ここで、前記保持部は、例えば、リング状部材(Oリング)、バンド(紐状又は環状のゴムを含む)、接着面を有するテープ、或いは、保持部を挟み込んで保持可能な一対の分割体から構成されるクリップ等を挙げることができる。
【0021】
この発明の態様として、前記可撓性導電部材の先端付近に装着されるリング体が設けられ、前記先端側折返し部分は、前記可撓性導電部材における前記リング体より先端側を前記リング体の外側に前記管状体の側に向かって折り返した部分である。
【0022】
前記構成によれば、電線の太さ(外径)のバラつきの影響を受けることなく、保持部とリング体との間に介在する前記先端側折返し部分を、これら保持部とリング体とによってしっかりと挟み込むように固定することができる。
【0023】
この発明の態様として、前記取付け部は、前記取付け箇所に設けたアンカー穴に挿入して取付けるアンカー部で形成された構成としてもよい。
【0024】
前記構成によれば、前記クランプを車両におけるアンカー穴に差し込むことで、該クランプによって保持される可撓性導電部材を車体に取付けることができるため、可撓性導電部材を、工具等を用いてボルト締結により車体に取り付ける場合と比して容易に取り付けることができる。また、可撓性導電部材は、ボルトを必要とせずに車体に取り付けることができるため、部品点数を削減することができる。
【0025】
さらに、前記構成によれば、可撓性導電部材を車体に接地するに際して、従来のように可撓性導電部材をシールドアース線として電線から分岐させて車体にボルト等で締結せずとも、アンカー部をアンカー穴に挿入することで可撓性導電部材は、クランプを介して電線ごと車体に取り付けることができる。
【0026】
これにより、電線の先端側を前記クランプを介して車体に仮固定することができるため、例えば、作業者が電線の先端側に接続された端子金具を、車体側に備えた端子取付け部に対して、工具を用いてボルト締めする際に、電線の先端側を把持する等して仮固定しておく必要がなく容易に接続することができる。
【0027】
この発明の態様として、前記アンカー部は、前記アンカー穴に挿入する挿入軸部と、前記挿入軸部の先端側から基端側に向かって、前記挿入軸部から徐々に離間して延びるとともに、弾性を有する一対の係止アーム部とが設けられ、前記導電部は、前記保持部に設けられ、前記可撓性導電部材と導電可能に接触する第1導電部と、前記係止アーム部に設けられ、前記アンカー穴に挿入した状態で前記取付け箇所と導電可能に接触する第2導電部とが備えられ、前記第1導電部と前記第2導電部は、電気的に接続された構成としてもよい。
【0028】
前記構成によれば、前記保持部に設けられた第1導電部と、前記係止アーム部に設けられた第2導電部とは、電気的に接続されるとともに、第2導電部は、一対の係止アーム部の弾性を利用して前記取付け箇所に設けたアンカー穴の縁部に圧接した状態でしっかりと取り付けられる。
【0029】
従って、前記可撓性導電部材はクランプを介して車体側に対して安定した導電状態を確保することができる。
【0030】
この発明の態様として、前記第2導電部に、前記アンカー穴の縁部に係合する段部が設けられた構成としてもよい。
【0031】
前記構成によれば、段部がアンカー穴の縁部に係合することで、一対の係止アーム部の弾性力で圧接したときの反力により前記アンカー部が前記アンカー穴から意に反して抜け出るなどして外れることを防ぐことができる。
従って、クランプを車体に対して電気的に接続することができる。
【0032】
この発明の態様として、前記アンカー部に、前記第2導電部が設けられた前記係止アーム部を、前記アンカー穴の縁部の端面に向かって押付ける押付け部が設けられた構成としてもよい。
【0033】
前記構成によれば、押付け部が前記係止アーム部をアンカー穴の縁部の端面に向かって押付けることで、一対の係止アーム部の弾性力で圧接したときの反力により前記アンカー部が前記アンカー穴から意に反して抜け出るなどして外れることを防ぐことができる。
従って、クランプを車体に対して、より安定して電気的に接続することができる。
【0034】
また、本発明の接地構造体は、上述したワイヤーハーネスが備えられ、車両における所定の取付け箇所に、前記取付け部が取付けられた構成であることを特徴とする。
【0035】
前記構成によれば、ワイヤーハーネスの可撓性導電部材を前記取付け箇所に容易に取り付けることができつつ、可撓性導電部材の電磁シールド効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0036】
この発明によれば、可撓性導電部材を車体側に有する前記取付け箇所に容易に取り付けることができつつ、可撓性導電部材の電磁シールド効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本実施形態のワイヤーハーネスの要部を示す側面図。
図2】(a)は図1の要部を一部断面で示した図1の要部拡大図、(b)は図2(a)のA-A線矢視断面図。
図3】(a)はクランプの要部を一部断面で示した正面図、(b)はクランプの要部を示した側面図。
図4】(a)は図3(a)のB-B線に沿った要部を示す矢視拡大断面図、(b)は図4(a)のC-C線に沿った要部を示す矢視拡大断面図。
図5】(a)はクランプを車体の取付け箇所に取り付け前の状態を示す説明図、(b)は取り付け後の状態を示す説明図。
図6】(a)は変形例Aのワイヤーハーネスの要部を示す図2(a)対応図、(b)は変形例Aのワイヤーハーネスの要部を示す図2(a)対応図。
図7】(a)は変形例2Aのワイヤーハーネスの要部を示す図1対応図、(b)は変形例2Bのワイヤーハーネスの要部を一部断面で示した側面図、(c)は変形例2Cのワイヤーハーネスの要部を示す図7(b)対応図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1に示すように、本実施形態のワイヤーハーネス1は、管状体2と、可撓性導電部材としての金属編組3と、複数(当例では2本)の電線4とクランプ5とが備えられている。
【0039】
管状体2は、内部に電線4(当例では2本の電線4)を挿通できる程度の内径を有するアルミニウム製の円筒状パイプであり、電線4を飛び石等から保護するとともに配索経路に沿って保持可能な所定の剛性を有している。
図示省略するが、管状体2は、該管状体2の両端部を除いて絶縁部材で覆われており、両端部のうち、後述するように金属編組3が配置される側と反対側の一端部は、車体側の接地回路に接地されている。但し、管状体2の一端部は、接地回路に接地されていない構成であってもよい。
【0040】
なお、本実施形態において、管状体2はアルミニウム製であるが、導電性を有していれば、アルミニウムに特に限定せず、鉄や銅、ステンレスなど配置箇所に応じた金属種を適宜選択してもよい。また、管状体2は、導電性を有する材料であれば、例えば、黒鉛など金属以外の材料を備えた構成としてもよい。
【0041】
金属編組3は、金属素線31を編組して形成した、可撓性を有する筒状の編組部材である。
なお、金属編組3を形成する金属素線として、本実施形態においては銅製の素線にスズメッキを施したスズメッキ軟銅線を採用している。但し、金属素線は、これに限らず、アルミニウム等他の金属種(すなわち、アルミ素線を編組して形成したアルミ編組)であってもよく、或いはメッキを施していないものであってもよい。
【0042】
金属編組3は、管状体2に対して直列に配置され、一端部3a(管状体2を有する側の端部)が管状体2の他端部2bと電気的に接続されている。本実施形態においては、筒状の金属編組3の一端部3aに、管状体2の他端部2bを該金属編組3の開口部32aを通じて挿通し、該挿通部分をバンド等の固定部材6によって外側から加締める等により、金属編組3の一端部3aは、管状体2の他端部2bを覆った状態で該管状体2の他端部2bに固着されている。
【0043】
本実施形態において、例えば上述したように、管状体2の一端部は、車体側の接地回路に接地されているため、管状体2および金属編組3は、全体として長尺な電磁シールド部をなし、電線4から放射される電磁波および外部からの電磁波を遮蔽する。
【0044】
なお、図示省略するが、管状体2および金属編組3は、全体が絶縁材料で形成された(すなわち、導電性を有しない)コルゲートチューブ等の絶縁部材で全周に亘って覆ってもよい。
【0045】
図1図2(a)(b)に示すように、金属編組3は、他端部3b側(管状体2を有する側と反対側の端部)において、開口部32bが備えられている。そして、金属編組3の他端部3b(開口部32bの周端)を、全周に亘って一端側に向かって外側に折り返した先端側折返し部分33が形成されている。
【0046】
これにより、金属編組3は、他端部3b付近において、先端側折返し部分33と、該先端側折返し部分33に対向する先端側対向部分35とが電線4の径方向において互いに重なり合って重複する重複編組34が形成される。
【0047】
このように金属素線31を解いた金属編組3の他端部3bを折り重ね合わせた重複編組34は、金属編組3の他の箇所よりも剛性が高く構成されている。
【0048】
なお、本実施形態では、重複編組34は、金属編組3の他端部3bを一度だけ折り返すことで、金属編組3の他端部3b付近が二重に重ね合わされているが、金属編組3の他端部3bを複数回折り返して重ね合わせても構わない。これにより、重複編組34の剛性をさらに向上させることができる。
【0049】
先端側折返し部分33の一端部(管状体2の側の端部)は、金属編組3の長手方向における、先端側折返し部分33に対して一端側で隣接する部分に亘って粘着テープ9が巻き付けられている。
このようにして先端側折返し部分33の一端部を固定することで、先端側折返し部分33の一端部が捲れたり、該一端部の金属素線31がさらに解れたりすることを防止することができる。
【0050】
なお、先端側折返し部分33の一端部の固定は、粘着テープ9に限らず、結束バンド等他の固定部材で締結してもよい。但し、固定部材は必須ではなく、先端側折返し部分33は、粘着テープを用いずに後述のクランプ5の保持部51のみで保持された構成としてもよい。
【0051】
2本(一対の)の電線4は、互いの間隔が長手方向に沿って略一定になるように、すなわち略並列(平行)に配置されている。図2(b)に示すように、これら2本の電線4は、管状体2および金属編組3によって一括して包囲されている。本実施形態において2本の電線4は構造および大きさが同じであるため、特に区別する場合と除いて一方の電線4に基づいて説明する。
【0052】
電線4は、電圧・大電流に対応可能な高圧電線であるとともに、管状体2および金属編組3に挿通されている。
【0053】
図2(a)(b)に示すように、電線4は、導電性を有する複数の芯線を束ねて構成された導体部11と、該導体部11の外周全体を覆う絶縁性を有する絶縁被覆部12とで構成されている。
【0054】
図1(b)、図2(a)に示すように、電線4の先端部(管状体2を有する側と反対側の端部)には、端子金具8が接続されている。
【0055】
また、電線4は、金属編組3に対して、管状体2からの延出部分から先端側(すなわち、他端側部分)まで挿通され、端子金具8を含めた先端部およびその付近のみが、該金属編組3の他端部30の側に形成された開口部32bを通じて該金属編組3から引き出されている。
【0056】
図2(a)に示すように、上述した端子金具8は、導電性を有する金属製の丸端子であって、車両に搭載される各種機器に接続される車体側接続部81と、電線4の末端部に接続する電線接続部82とを備えている。
【0057】
車体側接続部81は、ボルトを挿通する貫通穴81aを平面視で中央に有する円形の平板状に形成されている。そして、端子金具8は、図示省略する所定の端子取付け部に、車体側接続部81がボルト等を用いて締結される。
【0058】
なお、端子金具8の車体側接続部81は、接続対象となる箇所にボルト等を用いて接続する構成に限らず、接続対象となる箇所から突出するスタットボルトを貫通穴81aに挿通させ、ナット締めにより、接続対象となる箇所に対して電気的に接続する構成などとしてもよい。
【0059】
電線接続部82は、バレル片82aを有する、いわゆるオープンバレルであり、電線4の先端部において、絶縁被覆部12が剥がされて露出した導体部11に加締め付けられて接続(圧着)されている。
【0060】
図3(a)(b)、図4(a)(b)に示すように、クランプ5は、金属編組3を保持する保持部51と、車両における所定の取付け箇所A(図5(a)(b)参照)に取付けられる車体取付け部としてのアンカー部61とを有して構成される。
【0061】
保持部51は、被結束部材としての金属編組3に巻き付けられるバンド部53と、金属編組3に巻き付けたバンド部53をロックするバックル部54とを備えている。
【0062】
以下、クランプ5のより詳細な構成について、主に図3(a)(b)、図4(a)(b)を用いて説明するが、以下の説明において、バンド部53の幅方向と一致する方向をバックル部54の幅方向X、バックル部54とアンカー部61とが配設される方向(クランプ5の軸方向と一致する方向)を上下方向Z、バックル部54の幅方向Xと上下方向Zとに直交する方向をバックル部54の奥行方向Yに設定する。また、アンカー部61を平面視で該アンカー部61の中心(挿入軸部63)に対して内外側を径方向Rに設定する。
なお、バックル部54に対してアンカー部61を有する側を下方向に設定し、反対方向を上方向に設定する。
【0063】
図4(b)に示すように、バックル部54は、略直方体をしたブロック状に形成され、バックル部54の幅方向Xの一方側の面の上部には、バンド部53(厳密には、後述するバンド部53の樹脂部分531)の基部53aが一体に連結されている。バンド部53の基部53aの樹脂部分531の内面(上面)と該バックル部54の上面54uとが面一となるようにバンド部53は、バックル部54から延出している。
【0064】
バックル部54は、バンド部53の先端が挿通される挿通路55が奥行方向Yに貫通形成されている。挿通路55は、バックル部54の奥行方向Yの直交断面視において略中央に形成されている。
【0065】
図3(a)(b)に示すように、バンド部53の長手方向における基部53aと先端部との間に相当する部位には、長手方向に沿って所定間隔ごとに複数の係合穴56が配設されている。
【0066】
本実施形態において、この係合穴56は、バンド部53の厚み方向において貫通形成されているが、後述するロック爪57(図4(a)(b)参照)と係合可能であれば、この実施形態に限らず、バンド部53の内面に凹部または突起を設けた構成としてもよい。
【0067】
挿通路55の奥行方向Yにおけるバンド部53の出口側に相当する側の上壁55uには、挿通路55の空間(下方)に向けて舌片状に突き出したロック爪57が形成されている。このロック爪57は、挿通路55の奥行方向Yにおけるバンド部53の入口側に相当する側から挿通されたバンド部53に形成された複数の係合穴56のうち、所定の係合穴56の縁部と係合することで、挿通路55からのバンド部53の抜けを防止している(図4(b)参照)。
【0068】
保持部51は、金属編組3における、他端部32付近(電線4の先端側部分に相当する先端側部分)において、上述した重複編組34を保持する構成としている。
【0069】
具体的に、保持部51は、図2(a)(b)に示すように、金属編組3の他端部32付近に形成された重複編組34に対してバンド部53が外側から巻き付けられるとともに、重複編組34をバンド部53によって電線4の側へ締め付けた状態で図4(b)に示すように、ロック爪57と係合穴56の縁部とが係合される。これにより、保持部51は、金属編組3の重複編組34(先端側折返し部分33)に対して外側から装着される。
【0070】
図3(a)(b)、図4(a)(b)に示すように、アンカー部61は、バックル部54から下方へ突出するように形成されている。
具体的に、アンカー部61は、バックル部54の下面の正面視中央部から下方へ突出する弾性係止片62と、バックル部54の下面における弾性係止片62よりも外周側から下方ほど径方向R外側へ鍔状に広がる支持板部(傘部)67とを備えている。
【0071】
弾性係止片62は、後述するアンカー穴Ah(図5(a)(b)参照)に対して挿入する挿入軸部63と、撓み変形(弾性変形)可能な一対の係止アーム部64とが設けられている。一対の係止アーム部64は、挿入軸部63の下端(先端)の周方向において、挿入軸部63を隔てて対峙する部位に設けられている。
【0072】
そして、一対の係止アーム部64は、挿入軸部63の下部(先端)から上方(基端)に向かって、挿入軸部63から徐々に離間するように径方向R外側へ延びている。本実施形態においては、一対の係止アーム部64は、上端が支持板部67の下端に達するまで延びている。
【0073】
図3(b)、図4(a)に示すように、係止アーム部64の先端部(上端部)における、径方向R外面(径方向Rにおいて挿入軸部63を有する側と反対側の面)には、該先端部の周辺部位の径方向R外面に対して径方向R内側へ切り欠き状に凹んだ段部65が形成されている。
【0074】
この段部65は、係止アーム部64の先端部の周辺部位の径方向R外面よりも径方向R内側に位置する段差面65aと、段差面65aの下端と先端部の周辺部位の径方向R外面の上端とを直線状に連結する縦壁状の段落ち面65bとで形成されている。
【0075】
本実施形態の段部65は、該段部65の全体、すなわち段差面65aと段落ち面65bとの双方が導電性部材で形成されているが、本発明の段部は、この構成に限らず、段部における、アンカー穴Ahの縁部Aaへ当接する部分の少なくとも一部が導電性部材で形成された構成であればよい。
【0076】
例えば、クランプ5のアンカー部61を、車両における所定の取付け箇所Aに取り付けた状態において、アンカー穴Ahの縁部Aaの下面Acに当接する段落ち面65bを第2導電部72の一対の弾性突出片74の一部として導電性部材で形成する一方で、段差面65aについては、係止アーム部64の樹脂部分641の一部を成すように形成された構成を採用してもよい。
【0077】
また、同図に示すように、本実施形態のクランプ5は、係止アーム部64と挿入軸部63との間の隙間に、これらを繋ぐように延びるリブ66が形成されている。
【0078】
リブ66は、後述するようにアンカー穴Ahの縁部Aaの端面Abに係止アーム部64が圧接時に、係止アーム部64を、該端面Abに向かって押付ける押付け部として機能する。但し、係止アーム部64と挿入軸部63との間には、リブ66は必須ではなく設けない構成としてもよい。
【0079】
支持板部67は、弾性係止片62の基部外側に全周に亘って配置され、該支持板部67を上下方向Zに圧縮時に下方へ開口する内部空間が潰れるように弾性変形可能に薄肉に形成されている。
【0080】
図5(a)(b)に示すように、上述したクランプ5は、係止アーム部64が車体の取付け箇所Aに有する、例えば金属フレーム等に設けられたアンカー穴Ahにアンカー部61を挿入することにより、アンカー穴Ahの縁部Aaに取り付けられる。
【0081】
具体的には、図5(a)に示すように、上述したクランプ5の弾性係止片62をアンカー穴Ahに差し込むと、係止アーム部64の径方向R外面がアンカー穴Ahの縁部Aaの端面Abに当接する。さらに、弾性係止片62をアンカー穴Ahに差し込むと、係止アーム部64は、下部から上方へアンカー穴Ahの縁部Aaの端面Abに、順に当接しながら径方向R内側へ撓み変形する。そして、係止アーム部64の上端(先端)にアンカー穴Ahの縁部Aaの端面Abが位置すると、図5(b)に示すように、該上端に設けた段部65がアンカー穴Ahの縁部Aaに係合した状態となる。
【0082】
このとき、係止アーム部64の段部65の段差面65aは、アンカー穴Ahの縁部Aaの端面Abに係止アーム部64の弾性力を利用して圧接するとともに、アンカー穴Ahの縁部Aaに対して、支持板部67と段部65の段落ち面65bとで上下各側から挟み込むことで、クランプ5は、アンカー穴Ahの縁部Aaに対してしっかりと取り付けられる。
すなわち、金属編組3の他端部をクランプ5を介して車体に取り付けることができる。
【0083】
クランプ5は、金属編組3を保持するとともに、取付け箇所Aに取り付けられた状態で金属編組3と取付け箇所Aとを導電する導電部7が備えられている。
【0084】
図3(a)(b)、図4(a)(b)に示すように、導電部7は、金属編組3と導電可能に接触する第1導電部71と、アンカー穴Ahに挿入した状態で取付け箇所Aと導電可能に接触する第2導電部72とが備えられている。第1導電部71と第2導電部72は、電気的に接続されている。
【0085】
第1導電部71は、保持部51、すなわち、バンド部53およびバックル部54に備えられ、バンド部53およびバックル部54の各樹脂部分531,541(図3(a)(b)参照)とインサート成形等により一体に形成されている。第1導電部71は、可撓性を有する薄肉かつ長尺の板状に形成されるとともに、バンド部53とバックル部54とに亘って延びている。
【0086】
具体的に、第1導電部71は、長手方向の基部がバックル部54の上面54uに配置され、バックル部54の奥行方向Yの一端側から延出している。そして、第1導電部71のバックル部54からの延出部分(基部より先端側部分)は、バンド部53の内面において該バンド部53の長手方向に沿って配置されている。
【0087】
また、図3(a)(b)に示すように、第1導電部71には、複数の係合穴56に対応して複数の貫通穴56aが長手方向に沿って配設されている。一方、バンド部53の樹脂部分531の内面においても、複数の係合穴56に対応して複数の貫通穴56bが長手方向に沿って配設されている。そして、バンド部53の樹脂部分531の内面に第1導電部71が取り付けられた状態において、複数の係合穴56の夫々に対応して、第1導電部71側の貫通穴56aとバンド部53の樹脂部分531側の貫通穴56bとが互いに連通することで、上述した係合穴56が形成される。
【0088】
上述したバンド部53を金属編組3の外側から巻き付けた状態において、金属編組3と第1導電部71とが電気的に接続される。
【0089】
第2導電部72は、アンカー部61およびバックル部54の一部をなすように、これらアンカー部61およびバックル部54の樹脂部分とインサート成形等により一体に形成されている。
【0090】
図4(a)(b)に示すように、第2導電部72は、バネ特性を有する金属板材を曲げ加工する等して、基部73と、一対の弾性突出片74とで一体に形成された所謂金属バネであり、少なくとも一対の弾性突出片74が撓み変形(弾性変形)可能に形成されている。
【0091】
第2導電部72の基部73は、バックル部54と、アンカー部61の挿入軸部63とに亘って、これらの内部に埋設されている。第2導電部72の基部73は、夫々上下方向Zに直線状に延びるとともに幅方向Xに間隔を隔てて互いに平行に配置された一対の脚部75と、一対の脚部75の上部を連結する連結部76とで下方が開口する門形形状に一体形成されている(図4(a)参照)。
【0092】
図4(a)に示すように、一対の脚部75は、挿通路55を幅方向Xに隔てた各側の位置において、バックル部54の上部からアンカー部61の下端に亘って上下方向Zに延びている。連結部76は、バックル部54における、挿通路55よりも上方の位置において、上述したように一対の脚部75の上部を連結するように幅方向Xに水平かつ直線状に延びている。
【0093】
連結部76は、上面76uがバックル部54の上面54uの一部を形成するように該上面76u以外の部位がバックル部54の樹脂部分541に埋設され、該連結部76の上面76uがバックル部54の樹脂部分541に対して露出するように配置されている。なお、連結部76の上面76uは、バックル部54の上面54uと面一となるように形成されている。
【0094】
一方、バンド部53の一部を形成する第1導電部71の基部は、上述したようにバックル部54の上面54uに配置されている。このため、図4(a)(b)に示すように、第2導電部72の上面(すなわち、連結部76の上面76u)と、第1導電部71の基部73の下面とは、例えば、溶接等により固着され、互いに電気的に接続されている。なお、第1導電部71と第2導電部72とは、他の手段で固着してもよく、また、単一の導電性部材により一体に形成された構成としてもよい。
【0095】
図4(a)に示すように、第2導電部72の一対の弾性突出片74は、一対の脚部75下部から一対の係止アーム部64の夫々に対応して挿入軸部63に対して離間する側(径方向R外側)へ突出形成されている。
【0096】
第2導電部72の一対の弾性突出片74は、係止アーム部64の径方向R外側かつ下側の面に沿って係止アーム部64の基端(下端)から先端(上端)まで連続して延びている。第2導電部72における一対の弾性突出片74は、夫々に対応する係止アーム部64の一部をなすように係止アーム部64の樹脂部分641(図4(a)参照)に対してインサート成形等により、該係止アーム部64の樹脂部分641と共に一体に撓み変形可能に形成されている。
【0097】
ここで、第2導電部72の弾性突出片74は、係止アーム部64の先端部の径方向R外面に位置する段部65に至るまで延びており、段部65における段差面65aおよび段落ち面65bは、弾性突出片74の先端部によって形成されている。
【0098】
これにより、図5(b)に示すように、クランプ5のアンカー部61を、アンカー穴Ahの縁部Aaに取り付けた状態において、係止アーム部64の段部65の段差面65aが、アンカー穴Ahの縁部Aaの端面Abに対して係止アーム部64の弾性力を利用して圧接する。さらに、アンカー穴Ahの縁部Aaを支持板部67と段部65の段落ち面65bとで挟み込むように段落ち面65bがアンカー穴Ahの縁部Aaの下面Acに当接する。
【0099】
このため、クランプ5のアンカー部61と車体側の接地回路(金属製の車体フレーム等に設けたアンカー穴Ahの縁部Aa)とが電気的に接続される。
すなわち、図5(b)に示すように、ワイヤーハーネスにおける金属編組3とアンカー穴Ahの縁部Aaとが、導電性を有するクランプ5を介して電気的に接続された接地構造体10を構成することができる。
【0100】
また、上述により、金属編組3は、クランプ5を介して車体側の接地回路に電気的に接続されるため、電線4の通電に伴って発生する電磁ノイズがシールド部材としての管状体2および金属編組3に吸収され、これにより、シールド部材に蓄えられた電荷は、導電性を有するクランプ5を介して車体側の接地回路へ放出される。
【0101】
図1に示すように、上述した本実施形態のワイヤーハーネス1は、導電性を有する管状体2と、管状体2の他端部2bと電気的に接続される金属編組3(可撓性導電部材)と、管状体2および金属編組3に挿通される電線4と、金属編組3を保持する保持部51および、車両における所定の取付け箇所A(図5(a)(b)参照)に取付けられるアンカー部61(取付け部)を有するクランプ5とが備えられ、図1図2(a)(b)に示すように、金属編組3は、電線4の管状体2からの延出部分から先端側部分まで該電線4を挿通する筒状であり、図1図2(a)(b)、図3(a)(b)、図4(a)(b)に示すように、クランプ5は、金属編組3を保持するとともに取付け箇所Aに取り付けられた状態で金属編組3と取付け箇所Aとを導電する導電部7が備えられたことを特徴とする。
【0102】
前記構成によれば、金属編組3を取付け箇所Aに容易に取り付けることができつつ、金属編組3の電磁シールド効果を高めることができる。
【0103】
詳述すると、前記構成によれば、金属編組3を取付け箇所Aに、導電部7を有するクランプ5を介して取り付けることで、例えば、従来のように、金属編組を電線と分岐させ、その先端部に接続された端子金具を車両における所定の取付け箇所にボルト(アースボルト)等で締結固定する必要がなく、金属編組3を取付け箇所Aに容易に取り付けることができる。
【0104】
さらに、上述したように、金属編組3と取付け箇所Aとを、導電部7を有するクランプ5を介して電気的に接続するとともに、電線4の管状体2からの延出部分から先端側部分までの部分を、金属編組3に挿通することで、電線4の電磁シールド効果を高めることができる。
【0105】
また、図1図2(a)(b)に示すように、保持部51は、金属編組3における他端部3b(電線4の先端側部分に相当する先端側部分)を保持する構成としたものである。
【0106】
前記構成によれば、管状体2から延びる電線4を、該電線4の先端部分に至るまで金属編組3によってシールドすることができる。
【0107】
このように、管状体2から外側へ延びる電線4の極力全体を金属編組3によって覆うことで、管状体2から外側へ延びる電線4をしっかりと電磁シールドすることができる。
【0108】
さらに、金属編組3を、導電部7を有するクランプ5を介して車体に固定することで、金属編組3を車体に固定できることに加えて、金属編組3と車体との導電性を確保できるため、金属編組3を車体(アース)に接地させることができる。
【0109】
このように、金属編組3を車体に接地することで、金属編組3の電磁シールド効果を高めることができる。
【0110】
加えて、前記構成によれば、金属編組3の極力他端部3b側において、導電性を有するクランプ5を介して車体に接地させることで、金属編組3の電磁シールド効果をより一層高めることができる。
【0111】
より詳しくは、金属編組3のクランプ5によって保持される部分(すなわち、クランプ5を介して車体に接地させる部分)から他端部3bまでの区間が長ければ長い程、当該区間において、電磁ノイズを吸収することによって蓄えられた電荷が、導電性を有するクランプ5を介して適切に車体(アース)に適切に放出されないおそれが生じるため、結果として電線4から放射される電磁波をしっかりと遮蔽できないことが懸念される。
【0112】
これに対して、前記構成によれば、このような電気的に開放された状態となる区間を極力排除し、蓄えられた電荷を適切に車体(アース)に放出できる。
【0113】
従って、金属編組3の極力他端部3b側に至るまで電磁シールド効果を高めることができる。
【0114】
また、図2(a)(b)に示すように、金属編組3の他端部3b付近(他端側)は、該他端部3bを管状体2の側に向かって折り返し、該折り返し部分を先端側折返し部分33に設定し、クランプ5における、保持部51を、先端側折返し部分33に対して外側から装着する構成としている。
【0115】
前記構成によれば、先端側折返し部分33を保持部51によって折り返した状態にしっかりと保持することができる。
【0116】
さらに、金属素線31編み込んだ金属編組3の他端部3bが折り返しによって解れることがないように先端側折返し部分33をしっかりと固定することができる。
【0117】
また、図5(a)(b)に示すように、取付け部は、取付け箇所Aに設けたアンカー穴Ahに挿入して取付けるアンカー部61で形成されている。
【0118】
前記構成によれば、クランプ5を車両におけるアンカー穴Ahに差し込むことで、該クランプ5によって保持される金属編組3を車体に取付けることができるため、金属編組3を、工具等を用いてボルト締結により車体に取り付ける場合と比して容易に取り付けることができる。
【0119】
また、金属編組3は、ボルトを必要とせず車体に取り付けることができるため、部品点数を削減することができる。
【0120】
さらに、前記構成によれば、金属編組3を車体に接地させるに際して、従来のように、金属編組をシールドアース線として電線から分岐させて車体にボルト等で締結せずとも、アンカー部61をアンカー穴Ahに挿入することで金属編組3は、クランプ5を介して電線4ごと車体に取り付けることができる。
【0121】
これにより、電線4の先端側をクランプ5を介して車体に仮固定することができるため、例えば、作業者が電線4の先端側に接続された端子金具8を、車体側に設けられた端子取付け部に、工具を用いてボルト締めする際に、電線4の先端側を把持する等して仮固定しておく必要がなく容易に接続することができる。
【0122】
また、図4(a)(b)に示すように、アンカー部61は、アンカー穴Ah(図5(a)(b)参照)に挿入する挿入軸部63と、挿入軸部63の先端側から基端側に向かって、挿入軸部63から徐々に離間して延びるとともに、弾性を有する一対の係止アーム部64とが設けられ、導電部7は、保持部51に設けられ、金属編組3と導電可能に接触する第1導電部71と、係止アーム部64に設けられ、アンカー穴Ahに挿入した状態で取付け箇所Aと導電可能に接触する第2導電部72とが備えられ、第1導電部71と第2導電部72は、電気的に接続されたものである。
【0123】
前記構成によれば、保持部51に設けられた第1導電部71と、係止アーム部64に設けられた弾性突出片74(第2導電部72)とが、電気的に接続されるとともに、第2導電部72を、一対の係止アーム部64の弾性を利用して取付け箇所Aに設けたアンカー穴Ahの縁部Aaに圧接することができるため、該取付け箇所Aにしっかりと取り付けることができる。
【0124】
従って、金属編組3はクランプ5を介して車体側に対して安定した導電性を確保することができる。
【0125】
また、図5(b)に示すように、係止アーム部64に設けられた第2導電部72には、アンカー穴Ahの縁部Aaに係合する段部65が設けられている。
【0126】
前記構成によれば、段部65がアンカー穴Ahの縁部Aaに係合することで、一対の係止アーム部64の弾性力で圧接したときの反力によりアンカー部61がアンカー穴Ahから意に反して抜け出るなどして外れることを防ぐことができる。
従って、クランプ5を車体に対して電気的に接続することができる。
【0127】
また、図5(b)に示すように、アンカー部61に、第2導電部72が設けられた係止アーム部64を、アンカー穴Ahの縁部Aaに向かって押付ける押付け部としてのリブ66が設けられている。
【0128】
前記構成によれば、リブ66が係止アーム部64をアンカー穴Ahの縁部Aaに向かって押付けることで、一対の係止アーム部64の弾性力で圧接したときの反力によりアンカー部61がアンカー穴Ahから意に反して抜け出るなどして外れることを防ぐことができる。
従って、クランプ5を車体に対して電気的に接続することができる。
【0129】
また、図5(b)に示すように、接地構造体10は、上述したワイヤーハーネス1が備えられ、車両における所定の取付け箇所Aに、取付け部としてのアンカー部61が取付け箇所Aに取付けられている。
【0130】
前記構成によれば、ワイヤーハーネス1の金属編組3を取付け箇所Aに容易に取り付けることができつつ、金属編組3の電磁シールド効果を高めることができる。
【0131】
このように、この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
例えば、本発明のアンカー部は、上述した実施形態のアンカー部61のように、挿入軸部63と一対の係止アーム部64とが、樹脂部材と導電性部材とで形成された構成に限らず、図示省略するが、少なくとも一対の係止アーム部64が導電性部材および弾性を有して形成されていれば、挿入軸部63と一対の係止アーム部64との全体が導電性部材によって形成された構成としてもよい。
【0132】
また、金属編組3の他端部の構成に関して、上述した実施形態のワイヤーハーネス1における構成に限定せず、図6(a)(b)に示す変形例Aに係るワイヤーハーネス1Aのように、金属編組3の他端部3b付近に装着されるリング体20を備えた構成を採用してもよい。
【0133】
リング体20は、金属編組3の他端部3b付近における、先端側対向部分35の外径よりも若干長い短軸方向の長さを有する長円形状に形成され、導電性を有する部材(例えば、アルミニウム製の部材)により形成されている。
【0134】
リング体20は、このようにアルミニウム等の金属材料で形成することで、例えば、樹脂等で形成する場合と比して剛性を確保できるとともに、経年劣化を防ぐことができる。但し、リング体20は、金属等の導電性を有する部材で形成するに限らず、樹脂等の絶縁部材で形成してもよい。
【0135】
リング体20は、金属編組3の他端部3b付近において、該先端側対向部分35と先端側折返し部分33との間に介在している。
【0136】
このように、リング体20を内部に備えた重複編組34は、金属編組3の他端部3b付近にリング体20を装着し、リング体20よりも他端側(先端側)を、リング体20の他端を起点として該リング体20の外側に全周に亘って折り返すことで形成することができる。
【0137】
さらに、上述した実施形態と同様に、先端側折返し部分33の一端部(管状体2の側の端部)は、金属編組3の長手方向における、先端側折返し部分33に対して一端側で隣接する部分に亘って粘着テープ9で固定されている。
これにより、上述した実施形態において、先端側折返し部分33の一端部を粘着テープ9で固定したことによる効果と同様の効果を得ることができる。但し、当例においても粘着テープ9で固定することは必須ではなく、また、他の固定手段で固定してもよい。
【0138】
上述したように、重複編組34の内部にリング体20を備えた構成とすることで、電線4の太さ(外径)のバラつきの影響を受けることなく、保持部51とリング体20との間に介在する先端側折返し部分33を、これら保持部51とリング体20とによってしっかりと挟み込むように固定することができる。
【0139】
特に、電線4の太さが所定の太さよりも小径である場合においても、先端側折返し部分33は、保持部51とリング体20との間に介在するため、保持部51によって先端側折返し部分33をリング体20の側へしっかりと加締めることができる。また、例えば、金属編組3を保持部51によって締め付けるなどしても該金属編組3が電線4の側(内側)へ変形しないようにリング体20によって規制できるため、該金属編組3を解れ難くすることができる。
【0140】
また、本発明の管状体は、本実施形態において、管状体2を金属製(アルミニウム製)のパイプとしているが、導電性を有していれば、特に限定されない。そのため、本発明の管状体は、他の金属種(銅など)で構成された金属製のパイプで形成してもよい。また、図7(a)に示す変形例Baに係るワイヤーハーネス1Baのように、管状体として、可撓性及び導電性を有するシールドコルゲート25を備えた構成としてもよい。
【0141】
これにより、ワイヤーハーネス1Baは、上述のワイヤーハーネス1の効果に加えて、例えば電線4の一端側を湾曲したい場合に、電線4に追従してシールドコルゲート25を湾曲させることができる。このため、電線4を確実に保護しつつ、所望の配索経路に沿って電線4を配索することができる。
【0142】
なお、図示省略するが、シールドコルゲート25としては、例えば、合成樹脂製のコルゲートチューブの内周面に筒状の編組部材や金属箔が備えられた構成を採用することができる。
【0143】
また、本発明の可撓性導電部材は、本実施形態において、金属編組3としているが、可撓性及び導電性を有していれば、特に限定されない。
【0144】
例えば、図7(a)に示す変形例Bbに係るワイヤーハーネス1Bbのように、可撓性導電部材として、例えば、金属編組3の代わりに導電性を有するシールドコルゲート26を備えた構成を採用してもよい。
【0145】
この構成によれば、ワイヤーハーネス1Bbは、上述のワイヤーハーネス1の効果に加えて、金属編組3に比べて管状体2から延出した電線4をより確実に保護することができる。
【0146】
また、言うまでもなく図7(c)に示す変形例Bcに係るワイヤーハーネス1Bcのように、本実施形態の管状体2と金属編組3の代わりに、夫々に適した剛性、可撓性を有するシールドコルゲート25,26を備えた構成、すなわち、変形例Baと変形例Bbとを組み合わせた構成を採用してもよい。
【0147】
また、本実施形態の電線4に備えた導体部11は、銅又はその合金から成る複数の素線を束ねて銅芯線として形成されたものを採用しているが、導体部11の材料は、目的等に応じ、銅又はその合金以外の材料を採用してもよく、或いは導体部11は、表面のみ導電率の高い導体としてもよい。また、導体部11は、一本の素線から形成されたものを採用してもよい。
【0148】
また、本実施形態において、2本の電線4は、金属編組3にまとめて挿通されているが、電線4ごとに金属編組3を備え、個別に金属編組3に挿通した構成としてもよい。さらにまた、2本の電線4は、例えば、電源ケーブルのように、一対の導体部11が互いに独立しつつも絶縁被覆部12でまとめて被覆されたものであってもよい。
【0149】
また、2本の電線4は、互いに撚り合されて形成されるツイストペア電線を採用してもよい。
【0150】
言うまでもなく、本実施形態のワイヤーハーネス1は、2本の電線4を備えたが、本発明のワイヤーハーネス1は、2本に限らず、1本、或いは3本以上の複数本が備えられた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0151】
1,1A,1Ba,1Bb,1Bc…ワイヤーハーネス
2…管状体
3…金属編組(可撓性導電部材)
4…電線
5…クランプ
7…導電部
3b…金属編組の他端部(可撓性導電部材における、電線の先端側部分に相当する先端側部分)
20…リング体
33…先端側折返し部分
61…アンカー部(取付け部)
25,26…シールドコルゲート(可撓性導電部材)
51…保持部
63…アンカー穴に挿入する挿入軸部
64…係止アーム部
66…リブ(押付け部)
71…第1導電部
72…第2導電部
A…車両における所定の取付け箇所
Ah…取付け箇所に設けたアンカー穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7