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特開2022-137514製造情報管理システムおよび製造情報管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137514
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】製造情報管理システムおよび製造情報管理方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037037
(22)【出願日】2021-03-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】森川 桂一
【テーマコード(参考)】
3C100
【Fターム(参考)】
3C100AA22
3C100AA38
3C100BB13
3C100BB33
3C100BB40
3C100CC02
3C100DD05
3C100DD13
3C100DD22
3C100DD32
3C100DD33
(57)【要約】
【課題】製造情報の管理性を向上させる。
【解決手段】製造情報管理システムは、指示書の識別子を読み取り、製造予定の製品の識別情報を取得する識別読取部と、識別情報に応じて所定の処理を行う処理装置から、処理状態情報を取得する情報制御部と、情報制御部に接続され、識別情報に関連付けて処理状態情報を集約する管理サーバと、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指示書の識別子を読み取り、製造予定の製品の識別情報を取得する識別読取部と、
前記識別情報に応じて所定の処理を行う処理装置から、処理状態情報を取得する情報制御部と、
前記情報制御部に接続され、前記識別情報に関連付けて前記処理状態情報を集約する管理サーバと、
を有する
製造情報管理システム。
【請求項2】
前記識別読取部は、
前記指示書を保持するホルダと、
前記ホルダ内への前記指示書の挿入を検知する挿入検知部と、
前記挿入検知部が前記指示書の挿入を検知したときに、前記指示書の前記識別子を読み取るリーダと、
前記識別子に基づいて取得された前記識別情報を、前記情報制御部に送信する中継部と、
を有する
請求項1に記載の製造情報管理システム。
【請求項3】
前記リーダが前記識別子を読み取る読取方向は、前記ホルダ内の前記指示書の沿面方向に対して傾斜している
請求項2に記載の製造情報管理システム。
【請求項4】
前記情報制御部は、前記指示書の前記識別子を読み取るよう前記識別読取部に指示可能に構成されている
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の製造情報管理システム。
【請求項5】
前記識別読取部および前記情報制御部は、複数の処理装置にそれぞれ対応するよう複数組設けられている
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の製造情報管理システム。
【請求項6】
指示書の識別子を読み取り、製造予定の製品の識別情報を取得する工程と、
前記識別情報に応じて所定の処理を行う処理装置から、処理状態情報を取得する工程と、
前記識別情報に関連付けて前記処理状態情報を管理サーバに集約する工程と、
を有する
製造情報管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造情報管理システムおよび製造情報管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の製品の製造工程において、複数の処理を行うことがある。この場合には、各処理における処理状態を記録した製造履歴を管理することが求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、製造情報の管理性を向上させることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様によれば、
指示書の識別子を読み取り、製造予定の製品の識別情報を取得する識別読取部と、
前記識別情報に応じて所定の処理を行う処理装置から、処理状態情報を取得する情報制御部と、
前記情報制御部に接続され、前記識別情報に関連付けて前記処理状態情報を集約する管理サーバと、
を有する
製造情報管理システムが提供される。
【0005】
本発明の他の態様によれば、
指示書の識別子を読み取り、製造予定の製品の識別情報を取得する工程と、
前記識別情報に応じて所定の処理を行う処理装置から、処理状態情報を取得する工程と、
前記識別情報に関連付けて前記処理状態情報を管理サーバに集約する工程と、
を有する
製造情報管理方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、製造情報の管理性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る製造システムを示す概略図である。
図2図2は、識別読取部を示す概略図である。
図3図3(a)は、本発明の一実施形態に係る識別読取部を示す概略図であり、図3(b)は、比較例1の識別読取部を示す概略図であり、図3(c)は、比較例2の識別読取部を示す概略図である。
図4図4は、情報制御部を示すブロック図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る製造情報管理方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<発明者の得た知見>
まず、発明者の得た知見について説明する。
【0009】
従来では、所定の製品の製造工程において、例えば、紙からなる指示書に基づいて複数の処理を行っていた。
【0010】
すなわち、指示書の役割として、例えば、処理装置を動かす条件および設定などを作業者が知ることが可能となり、いま処理装置で何が処理されているかを作業者とその周りで他の作業をしている人が知ることが可能となり、また、指示書を処理装置を該指示書通りに動かしたことの証拠とすることが可能となっていた。
【0011】
また、所定の製品の製造工程では、各処理の処理状態、処理時の特記事項、次の作業者への伝達事項などを、指示書に直接書き込むことがあった。また、作業者が、所定の製品に係る指示書とともに各処理装置を移動し、複数の処理装置のそれぞれにおいて順次処理を行っていた。作業者が指示書を参照しながら各処理を行うことで、処理のミス発生を抑制することが可能となっていた。
【0012】
このように、従来では、指示書を用いて製造情報を管理していた。
【0013】
一方で、製造履歴などの製造情報を電子化して管理するため、複数の処理装置全体としてのIoT(Internet of Things)化が望まれている。
【0014】
しかしながら、既存の処理装置によっては、IoT化に対応していない場合があった。このため、全ての処理装置において処理状態情報を管理する共通のインフラを整備することは困難であった。例えば、全ての処理装置を共通の管理サーバに直接接続することが困難となっていた。また、全ての処理装置をIoT化させるためには、多大なコストが必要であった。
【0015】
したがって、IoT化を徐々に進める過渡期において、IoT化されていない既存の処理装置が残存する状況下で、指示書の長所を維持しつつ、製造情報を効率よく管理することができるシステムが望まれていた。
【0016】
本発明は、発明者等が見出した上記知見に基づくものである。
【0017】
[本発明の実施形態の詳細]
次に、本発明の一実施形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0018】
<本発明の一実施形態>
(1)製造システム、製造情報管理システム
本発明の一実施形態に係る製造情報管理システムについて、図1図2および図4を用いて説明する。
【0019】
[製造システム]
図1に示すように、本実施形態の製造システム10は、例えば、複数の処理を行うことで所定の製品を製造するよう構成されている。具体的には、製造システム10は、例えば、複数の処理装置400と、製造情報管理システム20と、を有している。つまり、製造システム10のうち処理装置400を除いた部分を、「製造情報管理システム20」と呼ぶ。
【0020】
(処理装置)
本実施形態における処理装置400は、例えば、所定の製品を製造するため、製品の識別情報に応じて所定の処理を行うよう構成されている。ここでいう「処理」としては、例えば、材料の混合、混練、粉砕、造粒、フィルタリング、押出、焼成、成膜、改質、切削、研磨、その他の加工、測定、検査などが挙げられる。
【0021】
処理装置400は、例えば、処理状態を測定(取得)可能に構成されている。ここでいう「処理状態」としては、例えば、処理条件、処理温度、処理速度、処理時間、処理結果などが挙げられる。
【0022】
また、処理装置400は、例えば、後述の情報制御部300に接続され、処理状態に係る情報(以下、「処理状態情報」)を後述の情報制御部300に送信するよう構成されている。
【0023】
本実施形態では、上述の構成を有する処理装置400は、例えば、複数設けられている。複数の処理装置400を、例えば、処理装置400a、400b、400c・・・とする。
【0024】
本実施形態では、複数の処理装置400は、例えば、後述の通信回線を介したネットワークに接続されていない。すなわち、複数の処理装置400は、例えば、互いに非接続であるとともに、後述の管理サーバ500と非接続である。
【0025】
[製造情報管理システム]
本実施形態の製造情報管理システム20は、例えば、製造予定の製品の識別情報に関連付けて処理状態情報を管理サーバ500に集約することで、製造情報を管理するよう構成されている。
【0026】
具体的には、図1に示すように、製造情報管理システム20は、例えば、識別読取部200と、情報制御部300と、管理サーバ500と、を有している。
【0027】
なお、以下において、「製造情報」とは、製品の製造に関する情報のことであり、製品名、製品種別、製品の識別情報(識別番号)、製造履歴などを含む総称である。「製造履歴」とは、全ての処理状態情報を集約した履歴のことである。
【0028】
(識別読取部)
図1および図2に示すように、識別読取部200は、例えば、指示書100の識別子120を読み取り、製造予定の製品の識別情報を取得するよう構成されている。識別読取部200の設置場所は、特に限定されないが、例えば、所定の処理装置400の制御盤の扉などの視認容易な位置に、識別読取部200が設置されることが好ましい。
【0029】
ここでいう「指示書100」とは、所定の処理を指示する書面のことであり、ワーキングシートと呼ばれることもある。指示書100としては、例えば、秤量指示書などが挙げられる。
【0030】
指示書100には、例えば、所定の処理装置400で行う処理の手順または処理条件と、該指示書100に割り当てられた識別子120と、が記載(印刷)されている。ここでいう「処理条件」とは、例えば、材料、材料の配合量、処理温度、処理速度、処理時間などが挙げられる。
【0031】
また、「識別子120」とは、1つの指示書100に割り当てられた固有の識別パターンのことであり、製造予定の1つの製品に対応している。識別子120としては、例えば、バーコード(1次元コード)、または2次元コードなどが挙げられる。識別子120は、例えば、指示書100の上辺付近に記載されていることが好ましい。
【0032】
また、「識別情報」とは、例えば、1つの指示書100に割り当てられた固有の識別番号であり、製造予定の1つの製品の識別番号に対応している。
【0033】
識別読取部200は、例えば、識別子120に基づいて取得された識別情報を、情報制御部300に送信するよう構成されている。なお、識別読取部200の構成については、詳細を後述する。
【0034】
(情報制御部)
図1および図4に示すように、情報制御部300は、例えば、識別情報に応じて所定の処理を行う処理装置400から、処理状態情報を取得するよう構成されている。
【0035】
情報制御部300は、例えば、コンピュータとして構成されている。情報制御部300を構成するコンピュータとしては、例えば、ラズベリーパイ(Raspberry Pi)(登録商標)等のシングルボードコンピュータなどが挙げられる。
【0036】
具体的には、情報制御部300は、例えば、CPU(Central Processing Unit)310と、RAM(Random Access Memory)320と、記憶装置330と、I/Oポート340と、入出力部350と、を有している。RAM320、記憶装置330、およびI/Oポート340は、CPU310とデータ交換可能に構成されている。
【0037】
I/Oポート340は、例えば、有線または無線の通信回線を介して、識別読取部200、処理装置400および管理サーバ500に接続されている。
【0038】
記憶装置330は、例えば、少なくとも製造情報管理プログラムを記憶するよう構成されている。さらに、記憶装置330は、例えば、識別情報および処理状態情報を記憶するよう構成されていてもよい。記憶装置330は、例えば、HDD(Hard disk drive)またはSSD(Solid State Drive)などである。
【0039】
RAM320は、CPU310によって記憶装置330から読み出されるプログラムや情報等が一時的に保持されるよう構成されている。
【0040】
CPU310は、記憶装置330に格納された所定のプログラムを実行することで、例えば、読取指示部311、識別取得部312、状態取得部314、送信部316および履歴表示部318として機能するように構成されている。
【0041】
読取指示部311は、例えば、指示書100の識別子120を読み取るよう識別読取部200に指示可能に構成されている。
識別取得部312は、例えば、製造予定の製品の識別情報を識別読取部200から取得するよう構成されている。
状態取得部314は、例えば、識別情報に応じて所定の処理を行う処理装置400から、処理状態情報を取得するよう構成されている。
送信部316は、例えば、識別情報に関連付けて処理状態情報を管理サーバ500に送信する構成されている。
履歴表示部318は、例えば、管理サーバ500にアクセスし、識別情報に関連付けられた製品の製造履歴を入出力部350に表示可能に構成されている。
【0042】
上述の情報制御部300の各部による製造情報管理方法については、詳細を後述する。
【0043】
上述の情報制御部300の各部を実現するためのプログラムは、例えば、情報制御部300が構成するコンピュータにインストールして用いられる。プログラムは、例えば、そのインストールに先立ち、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納されて提供されるものであってもよい。或いは、プログラムは、例えば、所定の通信手段を通じて当該コンピュータへ提供されるものであってもよい。
【0044】
入出力部350は、例えば、タッチパネルを有している。すなわち、入出力部350は、例えば、作業者による入力を受け付け、識別情報、処理状態情報および製造履歴などの製造情報を表示するよう構成されている。なお、上述したコンピュータを構成する各部は、可搬性を有するタブレット型端末として、当該入出力部350と一体化されていてもよい。
【0045】
本実施形態では、上述した識別読取部200および情報制御部300は、例えば、複数の処理装置400にそれぞれ対応するよう複数組設けられている。処理装置400a、400b、400cにそれぞれ対応する識別読取部200および情報制御部300を、識別読取部200a、200b、200c、および情報制御部300a、300b、300cとする。
【0046】
(管理サーバ)
図1に示すように、管理サーバ500は、例えば、情報制御部300に接続され、識別情報に関連付けて処理状態情報を集約するよう構成されている。管理サーバ500は、例えば、集約した処理状態情報を記憶する記憶装置を有している。
【0047】
本実施形態では、管理サーバ500は、複数の情報制御部300のそれぞれに接続されている。管理サーバ500は、例えば、複数の情報制御部300のそれぞれから得た複数の処理状態情報を、識別情報に関連付けて集約するようになっている。
【0048】
(2)識別読取部
本実施形態の識別読取部200の構成について、図2および図3を用いて説明する。なお、図3(a)~(c)は、実際のホルダ220の配置とは異なり、ホルダ220を水平に示している。
【0049】
図2に示すように、本実施形態の識別読取部200は、例えば、ホルダ220と、挿入検知部240と、リーダ260と、中継部280と、を有している。
【0050】
ホルダ220は、例えば、指示書100を保持するよう構成されている。ホルダ220は、例えば、指示書100を挿入可能な開口を有する箱状体として構成されている。ホルダ220の少なくとも正面側は、例えば、指示書100の記載内容が視認可能となるように透明になっており、具体的には、透明な樹脂からなっている。なお、ホルダ220のその他の部分は、金属製であってもよい。
【0051】
ホルダ220内には、例えば、バインダ(不図示)に挟まれた状態で指示書100が挿入される。これにより、後述の挿入検知部240による検知精度を向上させることができる。
【0052】
また、ホルダ220は、例えば、指示書100の上辺付近に記載された識別子120が、該ホルダ220の開口よりも外側に位置するように、指示書100を保持することが好ましい。これにより、該識別子120を、後述のリーダ260により容易に読み取ることができる。
【0053】
挿入検知部240は、例えば、ホルダ220内への指示書100の挿入を検知するよう構成されている。挿入検知部240は、指示書100の記載面に干渉しないように、ホルダ220の背面側に設けられていることが好ましい。なお、挿入検知部240は、ホルダ220内への指示書100の挿入を検知すればよいため、紙としての指示書100自体を検知するのではなく、上述のバインダを検知してもよい。挿入検知部240としては、例えば、光学式センサ、磁気式センサ、静電式センサが挙げられる。
【0054】
挿入検知部240は、例えば、中継部280に接続され、ホルダ220内への指示書100の挿入を検知したときにシート検知信号を中継部280に送信するよう構成されている。
【0055】
リーダ260は、例えば、挿入検知部240が指示書100の挿入を検知したときに、指示書100の識別子120を読み取るよう構成されている。すなわち、リーダ260は、例えば、挿入検知部240から中継部280を介してシート検知信号を受信したときに、該シート検知信号をトリガーとして、指示書100の識別子120の読み取りを開始するように構成されている。なお、「識別子120を読み取る」とは、識別子120を撮像し、識別子120の画像に基づいて識別情報を取得することを意味する。また、リーダ260は、例えば、取得した識別情報を中継部280に送信するよう構成されている。
【0056】
リーダ260は、例えば、光学式のイメージスキャナとして構成されている。具体的には、リーダ260は、識別子120に光を照射する発光素子と、識別子120を撮像する撮像素子と、を有している。リーダ260において、発光素子が光を照射し、且つ、撮像素子が撮像する光軸方向を、以下ではリーダ260が識別子120を読み取る「読取方向」という。
【0057】
本実施形態では、図2および図3(a)に示すように、リーダ260が識別子120を読み取る読取方向は、ホルダ220内へ挿入される指示書100の識別子120の位置に予め向けられている。
【0058】
また、本実施形態では、リーダ260が識別子120を読み取る読取方向は、例えば、ホルダ220内の指示書100の沿面方向に対して傾斜している。リーダ260の本体は、例えば、ホルダ220の正面側において、開口よりも下側(図3(a)では左側)に固定されている。これにより、ホルダ220の開口からリーダ260までのクリアランスを広くすることができる。その結果、ホルダ220内へ指示書100を挿入し易くすることができる。
【0059】
本実施形態では、ホルダ220内の指示書100の沿面方向に対してリーダ260の読取方向が傾斜した傾斜角度θは、例えば、40°以上50°以下であることが好ましい。傾斜角度θを上記範囲内とすることで、リーダ260の干渉を抑制し、ホルダ220内へ指示書100を容易かつ安定的に挿入することができる。
【0060】
中継部280は、例えば、識別子120に基づいて取得された識別情報を、情報制御部300に送信するよう構成されている。中継部280からの送信を行う通信回線は、上述のように、有線であってもよいし、無線であってもよい。
【0061】
さらに、中継部280は、例えば、挿入検知部240およびリーダ260に電力を供給するよう構成されている。中継部280は、情報制御部300を介してこれらに電力を供給してもよいし、電源から直接得た電力を供給してもよい。
【0062】
(3)製造情報管理方法
次に、図5を用い、本実施形態の製造情報管理方法について説明する。
【0063】
本実施形態の製造情報管理方法は、例えば、準備工程S10と、識別読取工程S20と、処理状態取得工程S30と、集約工程S40と、終了判断工程S50と、を有している。以下、各処理の情報に関する動作は、それぞれの情報制御部300により制御される。
【0064】
(S10:準備工程)
まず、本実施形態の製造情報管理システム20を準備する。具体的には、上述の識別読取部200および情報制御部300を、複数の処理装置400にそれぞれ対応するよう配置する。また、所定の通信回線を介して、それぞれの情報制御部300を識別読取部200、処理装置400および管理サーバ500に接続する。
【0065】
(S20:識別読取工程)
準備が完了したら、所定の処理装置400に対応する識別読取部200において、製造予定の製品に係る指示書100の識別子120を読み取り、製造予定の製品の識別情報を取得する。
【0066】
具体的には、作業者は、指示書100を所持しつつ、所定の処理装置400に移動する。処理装置400に到着したら、作業者は、識別読取部200のホルダ220内に指示書100を挿入する。
【0067】
このとき、挿入検知部240が、ホルダ220内への指示書100の挿入を自動的に検知し、中継部280を介してリーダ260にシート検知信号を送信する。リーダ260は、シート検知信号をトリガーとして、指示書100の識別子120の読み取りを開始する。リーダ260は、指示書100の識別子120を読み取り、製造予定の製品の識別情報を取得し、該識別情報を中継部280に送信する。その後、中継部280は、識別子120に基づいて取得された識別情報を、情報制御部300に送信する。
【0068】
情報制御部300は、識別読取部200から識別情報を取得し、該識別情報を入出力部350に表示する。なお、このとき、情報制御部300は、管理サーバ500にアクセスし、識別情報に関連付けられた、これまでの製造履歴を入出力部350に表示してもよい。
【0069】
なお、識別読取部200の挿入検知部240が指示書100の挿入を検知しなかった場合には、作業者は、指示書100の識別子120を読み取るよう情報制御部300から識別読取部200に指示してもよい。
【0070】
(S30:処理状態取得工程)
次に、製造予定の製品の識別情報に応じて所定の処理を行う処理装置400から、処理状態情報を取得する。
【0071】
具体的には、作業者は、製造予定の製品の識別情報に応じて、処理装置400において、指示書100で指示された処理を行う。例えば、作業者は、秤量指示書としての指示書100に基づいて、所定配合量の材料を混合装置としての処理装置400に投入し、該処理装置400により材料を混合する。
【0072】
このとき、情報制御部300は、上述の処理装置400から処理状態情報を取得する。処理情報を取得したら、情報制御部300は、識別情報とともに処理状態情報を入出力部350に表示する。また、情報制御部300は、識別情報に関連付けて処理状態情報を管理サーバ500に送信する。
【0073】
なお、情報制御部300が処理状態情報を取得するタイミングとしては、例えば、所定の処理工程において処理状態情報をリアルタイムで連続的に取得してもよいし、所定の処理工程の完了後に処理状態情報を取得してもよい。
【0074】
(S40:集約工程)
上述のように処理状態情報を取得したら、識別情報に関連付けて処理状態情報を管理サーバ500に集約する。すなわち、管理サーバ500が処理装置400から処理状態情報を直接取得するのではなく、管理サーバ500が情報制御部300を介して処理状態情報を取得し、これを集約する。このようにして集約した処理状態情報は、製造履歴として読み出し可能な状態で、管理サーバ500に記憶される。
【0075】
(S50:終判断工程)
上述の処理装置400における処理が完了したら、次の処理があるか否かを判断する。
【0076】
次の処理がある場合には(S50でYes)、作業者は、指示書100とともに次の処理装置400に移動し、当該次の処理装置400において、上述の識別読取工程S20、処理状態取得工程S30および集約工程S40を実施する。
【0077】
次の処理がない場合には(S50でNo)、所定の識別情報が付与された製品の製造を終了する。
【0078】
以上により、本実施形態の製造情報管理工程を終了する。
【0079】
(4)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0080】
(a)本実施形態では、識別読取部200は、指示書100の識別子120を読み取り、製造予定の製品の識別情報を取得する。情報制御部300は、識別情報に応じて所定の処理を行う処理装置400から、処理状態情報を取得する。管理サーバ500は、情報制御部300に接続され、識別情報に関連付けて処理状態情報を集約する。これにより、集約した処理状態情報を、製品の製造履歴として管理するとともに、識別情報に基づいて製造履歴を即座に参照することができる。
【0081】
例えば、識別情報に関連付けられた製品の製造履歴を参照することで、各処理が所定の処理基準を満たしていたかを検証することができ、すなわち、製品の品質を容易に検証することができる。また、例えば、不良な製品が生じたときに、識別情報に関連付けられた製品の製造履歴を参照することで、不良の原因となった処理を特定するなどの、トラブルシューティングを行うことができる。
【0082】
このように、識別情報に関連付けて処理状態情報を集約した製造履歴を管理することで、製造情報の管理性を向上させることが可能となる。
【0083】
(b)本実施形態では、上述のように、製造情報の管理において、指示書100を用いることで、従来からの指示書100の長所を維持することができる。
【0084】
すなわち、上述したように、指示書の役割として、例えば、処理装置の条件および設定などを知り、処理装置の現在の状況を知り、また、指示書を処理の証拠とすることが可能となる。
【0085】
また、作業者により処理関連事項を指示書100に直接書き込むことができる。また、指示書100を参照しつつ処理を行うことで、処理のミス発生を抑制することができる。
【0086】
また、識別読取部200により指示書100の識別子120を読み取り、識別情報を取得することで、識別情報の誤入力を抑制することができる。これにより、識別情報の誤入力に起因した誤った処理を抑制することができる。また、識別情報と処理状態情報とを誤って関連付けることを抑制することができる。
【0087】
(c)本実施形態では、管理サーバ500が処理装置400から処理状態情報を直接取得するのではなく、管理サーバ500が情報制御部300を介して処理状態情報を取得し、これを集約することができる。すなわち、たとえ処理装置400自体がIoT化されていなくても、処理装置400とは別に構築した製造情報管理システム20において、製造情報を管理することができる。
【0088】
すなわち、本実施形態によれば、IoT化されていない既存の処理装置が残存する状況下であっても、指示書100の長所を維持しつつ、製造情報を効率よく管理することができる。したがって、本実施形態の製造情報管理システム20は、例えば、IoT化を徐々に進める過渡期において特に有効である。
【0089】
(d)本実施形態の識別読取部200では、挿入検知部240が、ホルダ220内への指示書100の挿入を自動的に検知する。リーダ260は、シート検知信号をトリガーとして、指示書100の識別子120を読み取り、製造予定の製品の識別情報を取得する。その後、中継部280は、識別子120に基づいて取得された識別情報を、情報制御部300に送信する。
【0090】
このように、ホルダ220内に指示書100が挿入されただけで、製造予定の製品の識別情報を自動的に取得し、情報制御部300介して管理サーバ500に識別情報を送信することができる。これにより、作業者による識別情報の入力作業を実質的に不要とし、且つ、識別情報の誤入力を抑制することができる。その結果、製造情報を容易かつ確実に管理することが可能となる。
【0091】
(e)本実施形態では、リーダ260が識別子120を読み取る読取方向は、ホルダ220内の指示書100の沿面方向に対して傾斜している。これにより、ホルダ220の開口からリーダ260までのクリアランスを広くすることができる。その結果、ホルダ220内へ指示書100を挿入し易くすることができる。
【0092】
(f)本実施形態では、ホルダ220内の指示書100の沿面方向に対してリーダ260の読取方向が傾斜した傾斜角度θは、40°以上50°以下である。
【0093】
ここで、図3(a)~図3(c)を用い、本実施形態と、比較例1および2とを比較する。
【0094】
図3(b)に示すように、比較例1の識別読取部920aでは、リーダ926aの読取方向の傾斜角度が50°超であり、例えば、90°である。すなわち、リーダ926aが、指示書100の識別子120に対して正面に配置されている。このため、リーダ926aおよびその支持部が、ホルダ922aの開口を塞ぐように張り出している。このような配置のため、ホルダ922a内へ指示書100を挿入するときに、リーダ926aおよびその支持部が指示書100に干渉してしまう。その結果、ホルダ922a内へ指示書100を挿入し難くなる。
【0095】
一方で、図3(c)に示すように、比較例2の識別読取部920bでは、リーダ926bの読取方向の傾斜角度が40°未満であり、例えば、0°である。すなわち、リーダ926bの読取方向が指示書100の沿面方向に対して平行である。比較例2では、リーダ926bは、ミラー928bを介して、指示書100の識別子120を読み取るよう構成されている。このため、ミラー928bが、ホルダ922aの開口を塞ぐように張り出している。このような配置のため、ホルダ922b内へ指示書100を挿入するときに、ミラー928bが指示書100に干渉してしまう。その結果、ホルダ922b内へ指示書100を挿入し難くなる。
【0096】
これに対し、本実施形態では、図3(a)に示すように、読取方向の傾斜角度θを40°以上とすることで、ミラーなどを介さずに、リーダ260が有する光学系のみにより、指示書100の識別子120を読み取ることができる。一方で、傾斜角度θを50°以下とすることで、リーダ260およびその支持部が、ホルダ220の開口側に張り出すことを抑制することができる。これらにより、ホルダ220内へ指示書100を挿入するときに、リーダ260およびその支持部などが指示書100に干渉することを抑制することができる。その結果、ホルダ220内へ指示書100を容易かつ安定的に挿入することができる。
【0097】
(g)本実施形態の情報制御部300は、指示書100の識別子120を読み取るよう識別読取部200に指示可能に構成されている。これにより、任意のタイミングであっても、識別読取部200により指示書100の識別子120を読み取ることができる。例えば、識別読取部200の挿入検知部240が指示書100の挿入を検知しなかった場合に、識別子120を読み取るよう識別読取部200に指示することができる。すなわち、挿入検知部240の検知不良が生じたとしても、識別情報を確実に取得し、製造情報の管理に係る遅延を抑制することができる。
【0098】
(h)本実施形態では、識別読取部200および情報制御部300は、複数の処理装置400にそれぞれ対応するよう複数組設けられている。すなわち、処理装置400ごとに識別読取部200および情報制御部300を設けることで、識別情報に関連付けて複数の処理状態情報を容易に集約することができる。その結果、本実施形態の製造情報管理システム20を容易に構築することができる。例えば、処理装置400の増設、撤去または変更が生じた場合であっても、製造情報管理システム20の構築が容易となる。
【0099】
(5)本発明の一実施形態の変形例
上述の実施形態は、必要に応じて、以下に示す変形例のように変更することができる。以下、上述の実施形態と異なる要素についてのみ説明し、上述の実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0100】
上述の実施形態では、作業者が指示書100に基づいて処理装置400を操作する場合について説明したが、以下の変形例のように、製造情報管理システム20が処理装置400の操作に関与してもよい。
【0101】
変形例の製造情報管理システム20では、例えば、管理サーバ500に、予め、製造予定の製品の識別情報に応じた処理条件(装置運転条件など)が格納されている。
【0102】
情報制御部300は、例えば、識別読取部200から取得した識別情報に基づいて、管理サーバ500に格納された処理条件を読み込み、処理装置400に処理条件を設定するよう構成されている。
【0103】
変形例の識別読取工程S20では、識別読取部200は、ホルダ220内への指示書100の挿入を検知したことをトリガーとして、指示書100の識別子120を読み取り、識別子120に基づいて取得された識別情報を、情報制御部300に送信する。
【0104】
処理状態取得工程S30では、情報制御部300は、識別読取部200から取得した識別情報に基づいて、管理サーバ500に格納された処理条件を読み込み、処理装置400に処理条件を設定する。その後、情報制御部300は、当該情報制御部300自身が設定した処理条件に基づいて所定の処理を行う処理装置400から、処理状態情報を取得する。
【0105】
以上の変形例によれば、ホルダ220に指示書100を入れることをきっかけとして、管理サーバ500に格納された処理条件を読み込み、処理装置400に処理条件を自動的に設定することができる。これにより、作業者が処理装置400の処理条件を設定せずに、処理装置400の処理条件を設定することができる。その結果、処理条件の設定ミスを低減することが可能となる。
【0106】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0107】
上述の実施形態では、処理装置400が処理状態を測定可能に構成されている場合について説明したが、この場合に限られず、処理装置400自体が処理状態を測定できなくてもよい。例えば、処理装置400に対して別の測定装置が取り付けられていてもよい。または、情報制御部300が処理装置400の処理状態を測定し、該情報制御部300自身により処理装置400の処理状態を取得するよう構成されていてもよい。
【0108】
上述の実施形態では、情報制御部300が、ラズベリーパイにより構成されている場合について説明したが、この場合に限られない。情報制御部300は、例えば、汎用のコンピュータにより構成されていてもよい。また、入出力部350は、タッチパネルを有する場合に限られず、ディスプレイ、キーボードおよびマウスを有していてもよい。
【符号の説明】
【0109】
10 製造システム
20 製造情報管理システム
100 指示書
120 識別子
200、200a~200c 識別読取部
220 ホルダ
240 挿入検知部
260 リーダ
280 中継部
300、300a~300c 情報制御部
310 CPU
311 読取指示部
312 識別取得部
314 状態取得部
316 送信部
318 履歴表示部
320 RAM
330 記憶装置
340 I/Oポート
350 入出力部
400、400a~400c 処理装置
500 管理サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-04-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指示書の識別子を読み取り、製造予定の製品の識別情報を取得する識別読取部と、
前記識別情報に応じて所定の処理を行う処理装置から、処理状態情報を取得する情報制御部と、
前記情報制御部に接続され、前記識別情報に関連付けて前記処理状態情報を集約する管理サーバと、
を有し、
前記識別読取部は、
前記指示書を保持するホルダと、
前記ホルダ内への前記指示書の挿入を検知する挿入検知部と、
前記挿入検知部が前記指示書の挿入を検知したときに、前記指示書の前記識別子を読み取るリーダと、
前記識別子に基づいて取得された前記識別情報を、前記情報制御部に送信する中継部と、
を有する
製造情報管理システム。
【請求項2】
前記リーダが前記識別子を読み取る読取方向は、前記ホルダ内の前記指示書の沿面方向に対して傾斜している
請求項に記載の製造情報管理システム。
【請求項3】
前記情報制御部は、前記指示書の前記識別子を読み取るよう前記識別読取部に指示可能に構成されている
請求項1または請求項2に記載の製造情報管理システム。
【請求項4】
前記識別読取部および前記情報制御部は、複数の処理装置にそれぞれ対応するよう複数組設けられている
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の製造情報管理システム。
【請求項5】
指示書の識別子を読み取り、製造予定の製品の識別情報を取得する工程と、
前記識別情報に応じて所定の処理を行う処理装置から、処理状態情報を情報制御部により取得する工程と、
前記情報制御部に接続された管理サーバに、前記識別情報に関連付けて前記処理状態情報を集約する工程と、
を有し、
前記識別情報を取得する工程は、
前記指示書をホルダに保持させる工程と、
前記ホルダ内への前記指示書の挿入を挿入検知部により検知する工程と、
前記挿入検知部が前記指示書の挿入を検知したときに、前記指示書の前記識別子をリーダにより読み取る工程と、
前記識別子に基づいて取得された前記識別情報を、中継部により前記情報制御部に送信する工程と、
を有する
製造情報管理方法。