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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137834
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】光硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/16 20060101AFI20220914BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20220914BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20220914BHJP
   C08G 18/71 20060101ALI20220914BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20220914BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20220914BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20220914BHJP
【FI】
C08L75/16
C08K5/09
C08G18/32 006
C08G18/32 012
C08G18/32 028
C08G18/32 034
C08G18/71 010
C08F290/06
C09D11/101
C09D11/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037518
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 夕佳
(72)【発明者】
【氏名】古田 智嗣
(72)【発明者】
【氏名】杉原 克幸
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
4J039
4J127
【Fターム(参考)】
4J002CK051
4J002EF046
4J002EF047
4J002FD146
4J002FD147
4J002GQ00
4J034CA04
4J034CA15
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC02
4J034CC26
4J034CC45
4J034CC52
4J034CC62
4J034HA04
4J034HA18
4J034QB10
4J034QB14
4J034QB19
4J034RA07
4J034RA14
4J039AD21
4J039BE27
4J039EA04
4J039EA43
4J039EA46
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB031
4J127BB032
4J127BB111
4J127BB112
4J127BB221
4J127BC022
4J127BC031
4J127BC121
4J127BC122
4J127BC141
4J127BD141
4J127BD172
4J127BD391
4J127BE511
4J127BE51Y
4J127BF531
4J127BF53Y
4J127BG041
4J127BG042
4J127BG04Y
4J127BG102
4J127BG10Y
4J127BG122
4J127BG12Y
4J127BG171
4J127BG17Y
4J127BG301
4J127BG30Y
4J127CB151
4J127CB152
4J127CB283
4J127CB284
4J127CC021
4J127CC022
4J127CC023
4J127CC024
4J127CC274
4J127FA08
4J127FA18
(57)【要約】
【課題】
無機基材に対する密着性が良く、低反りで、且つイオンマイグレーション耐性の良好な硬化物を形成可能な光硬化性組成物を提供する。
【解決手段】
単官能アクリルモノマー(A)、
多官能アクリルモノマー(B)、および
ダイマー酸から誘導された構造単位を有し、末端に(メタ)アクリロイルを有する化合物(D)、を含有する光硬化性組成物であって、
化合物(D)におけるダイマー酸から誘導された構造単位は、ダイマージオール構造単位またはダイマージアミン構造単位であってもよく、
組成物に対する各成分の含有量は、
単官能アクリルモノマー(A):組成物100重量%に対して10~80重量%
多官能アクリルモノマー(B):組成物100重量%に対して5~50重量%
化合物(D):組成物100重量%に対して10~80重量%
である光硬化性組成物、およびそれを含有する活性エネルギー線硬化型インク組成物等。
【選択図】 無し
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単官能アクリルモノマー(A)、
多官能アクリルモノマー(B)、および
ダイマー酸から誘導された構造単位を有し、末端に(メタ)アクリロイルを有する化合物(D)、を含有する光硬化性組成物であって、
化合物(D)におけるダイマー酸から誘導された構造単位は、ダイマージオール構造単位またはダイマージアミン構造単位であってもよく、
組成物に対する各成分の含有量は、
単官能アクリルモノマー(A):組成物100重量%に対して10~80重量%
多官能アクリルモノマー(B):組成物100重量%に対して5~50重量%
化合物(D):組成物100重量%に対して10~80重量%
である光硬化性組成物。
【請求項2】
前記化合物(D)が、
ダイマージオール構造単位を有し、ダイマージオールが式(1)および式(2)から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、請求項1に記載の光硬化性組成物。


(式中、RおよびRは何れも炭素数1以上のアルキルであり、aおよびbはそれぞれ独立して1以上の整数であり、かつRおよびRに含まれる各炭素数と、aおよびbの合計は38以下であり、式中の任意のC-C間の結合が二重結合に置き換わっていてもよい。)

(式中、RおよびRは何れも炭素数1以上のアルキルであり、cおよびdはそれぞれ独立して1以上の整数であり、かつRおよびRに含まれる各炭素数と、cおよびdの合計は42以下であり、式中の任意のC-C間の結合が二重結合に置き換わっていてもよい。)
【請求項3】
前記化合物(D)が、
前記ダイマージオールと、(メタ)アクリロイルを有するイソシアネートとの反応物である、ウレタンジ(メタ)アクリレート化合物(D-1)であることを特徴とした、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
前記化合物(D)が、
ダイマージアミン構造単位を有し、ダイマージアミンが式(3)および式(4)から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、請求項1に記載の光硬化性組成物。


(式中、RおよびRは何れも炭素数1以上のアルキルであり、eおよびfはそれぞれ独立して1以上の整数であり、かつRおよびRに含まれる各炭素数と、eおよびfの合計は38以下であり、式中の任意のC-C間の結合が二重結合に置き換わっていてもよい。)

(式中、RおよびRは何れも炭素数1以上のアルキルであり、gおよびhはそれぞれ独立して1以上の整数であり、かつRおよびRに含まれる各炭素数と、gおよびhの合計は42以下であり、式中の任意のC-C間の結合が二重結合に置き換わっていてもよい。)
【請求項5】
前記化合物(D)が、
前記ダイマージアミンと、(メタ)アクリロイルを有するイソシアネートとの反応物である、ウレアジ(メタ)アクリレート化合物(D-3)であることを特徴とした、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
さらに、組成物100重量%に対して0.1~30重量%の水酸基価調整剤(C)を含有し、
光硬化性組成物の水酸基価が1~100mgKOH/gである、請求項1~5のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
前記単官能アクリルモノマー(A)が、縮合環式炭化水素基、多環式炭化水素基および単環式炭化水素基からなる群のうち一または複数を有する(メタ)アクリレートを含有している、請求項1~6のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項8】
前記単官能アクリルモノマー(A)が、下記式(7)で表される単官能アクリルモノマーである、請求項7に記載の光硬化性組成物。

(式(7)中、R11は水素またはメチルであり、R12は縮合環式炭化水素基を有する炭素数4~30の1価の有機基、多環式炭化水素基を有する炭素数6~30の1価の有機基、または単環式炭化水素基を有する炭素数4~30の1価の有機基であり、nは0~10の整数である。)
【請求項9】
前記式(7)中のR12が下記式(8)~(11)のいずれか1つで表される基である、請求項8に記載の光硬化性組成物。

(式(8)~(11)中、R13は、それぞれ独立に水素または炭素数1~6のアルキルであり、*は結合手である。)
【請求項10】
前記多官能アクリルモノマー(B)が、下記式(12)で表される二官能アクリルモノマーである、請求項1~6のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。

(式(12)中、R14はそれぞれ独立に水素またはメチルであり、R15は縮合環式炭化水素基を有する炭素数4~30の1価の有機基、多環式炭化水素基を有する炭素数6~30の1価の有機基、または単環式炭化水素基を有する炭素数4~30の1価の有機基
であり、nはそれぞれ独立に0~10の整数である。)
【請求項11】
前記式(12)中のR15が下記式(13)~(16)のいずれか1つで表される基である、請求項10に記載の光硬化性組成物。

(式(13)~(16)中、*は結合手である。)
【請求項12】
前記水酸基価調整剤(C)は、
水酸基価が100~300mgKOH/gであり、
重量平均分子量が100~5000である、請求項6に記載の光硬化性組成物。
【請求項13】
さらに、光重合開始剤(E)を組成物100重量%に対し5~15重量%含有する請求項1~12のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項14】
水酸基価が5~40mgKOH/gである請求項1~12のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を含有する、活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を含有する、インクジェット用インク組成物。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を光硬化させて得られる硬化物。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を光硬化させた後、さらに熱硬化させて得られる硬化物。
【請求項19】
請求項17または18に記載の硬化物を含む電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、表示素子や、プリント配線板、フレキシブル配線板、半導体パッケージ基板および太陽電池基板などの電子回路基板の製造に好適に用いられる光硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築資材や電気・電子分野などで用いられる各種樹脂板、ガラス板、金属板などの基材表面に皮膜を形成し、基材を傷付きや汚染などから守ることを目的としたコーティング剤の研究が種々行われている。コーティング剤としては熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂が用いられるが、光硬化性樹脂を用いた場合には、表面硬度の高い硬化物が得られることが多く、また光照射により瞬時に硬化し生産性が高いことから、有機基材の表面保護用として光硬化性樹脂がしばしば使用されている。しかし、光硬化性樹脂を用いた硬化物は、一般に無機基材に対する密着性が十分ではないことが多い。そこで、無機基材に対する密着性を向上させることが種々検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、特定の単官能重合性モノマー成分(A)と、多官能重合性モノマー(B)と、重合開始剤(C)とが、それぞれ所定の量で含まれる光硬化性インクジェットインクが記載されている。当該光硬化性インクジェットインクを用いることにより、無機基材に対する密着性が良好な硬化物を形成することができる。
【0004】
しかし、電子部品の薄型化、小型化に伴い、特許文献1に記載の光硬化性インクジェットインクを用いた硬化膜によっては、十分ではない場合が生じてきた。例えば、EMIシールドと金属配線とを絶縁する、膜厚10μm程度の硬化膜を特許文献1の光硬化性インクジェットインクを用いて形成した場合、信頼性試験時にイオンマイグレーションが発生することが分かった。ここで、イオンマイグレーションとは、配線や電極として使用された金属がイオン化して、移動し成長する現象であり、電子部品の短絡の原因となる。このため、イオンマイグレーションを防ぐことは、電子部品の信頼性の観点から重要である。
【0005】
また、一般に、電子機器などに用いられるプリント配線板において、不必要な部分にはんだが付着するのを防止すると共に、回路の導体が露出して酸化や湿気により腐食されるのを防ぐために、回路パターンの形成された基板上の接続孔を除く領域にソルダーレジストが形成される。
【0006】
基板上に所望のパターンのソルダーレジストを形成する方法の一つとして、フォトリソグラフィ技術を利用した形成方法が用いられている。例えば、アルカリ現像型の光硬化性樹脂組成物からなる感光性ソルダーレジストを、パターンマスクを通して露光した後、アルカリ現像することにより、露光部と非露光部とに生じたアルカリ現像液への溶解性の差を利用してパターンを形成することができる。
【0007】
ソルダーレジストの形成にあたって、光および熱硬化の少なくとも何れか一方によって収縮し寸法が変化するとソルダーレジストと基板との密着性等が損なわれ、クラックや剥がれが発生し易いことから、材料樹脂組成物には低硬化収縮性が求められている。このような特性を改良するために、従来のソルダーレジストは、低硬化収縮性を発現させるためシリカ等のフィラーを充填し、硬化物の熱膨張係数を低下させていた(例えば、特許文献2、3)。
【0008】
しかしながら、より高い効果を得るためにフィラーを高充填すると、硬化物の可撓性や下地に対する密着性が低下する場合があることから、フィラーの配合以外でも、材料樹脂組成物の低硬化収縮性を改良する手段が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許公開2013/015125号
【特許文献2】特開2001-053448号公報
【特許文献3】特開2002-236363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、無機基材に対する密着性が良く、低反りで、且つイオンマイグレーション耐性の良好な硬化物を形成可能な光硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記問題点を解決すべく検討した結果、特定の成分の組み合わせにより無機基材に対する密着性が良く、低反りで、且つイオンマイグレーション耐性の良好な硬化物を形成可能な組成物となることを見出した。本発明は、当該知見に基づいたものであり、以下の構成を備えている。
【0012】
[1] 単官能アクリルモノマー(A)、
多官能アクリルモノマー(B)、および
ダイマー酸から誘導された構造単位を有し、末端に(メタ)アクリロイルを有する化合物(D)、を含有する光硬化性組成物であって、
化合物(D)におけるダイマー酸から誘導された構造単位は、ダイマージオール構造単位またはダイマージアミン構造単位であってもよく、
組成物に対する各成分の含有量は、
単官能アクリルモノマー(A):組成物100重量%に対して10~80重量%
多官能アクリルモノマー(B):組成物100重量%に対して5~50重量%
化合物(D):組成物100重量%に対して10~80重量%
である光硬化性組成物。
【0013】
[2] 前記化合物(D)が、
ダイマージオール構造単位を有し、ダイマージオールが式(1)および式(2)から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、前記[1]項に記載の光硬化性組成物。
【0014】
【0015】
(式中、RおよびRは何れも炭素数1以上のアルキルであり、aおよびbはそれぞれ独立して1以上の整数であり、かつRおよびRに含まれる各炭素数と、aおよびbの合計は38以下であり、式中の任意のC-C間の結合が二重結合に置き換わっていてもよい。)
【0016】
【0017】
(式中、RおよびRは何れも炭素数1以上のアルキルであり、cおよびdはそれぞれ独立して1以上の整数であり、かつRおよびRに含まれる各炭素数と、cおよびdの合計は42以下であり、式中の任意のC-C間の結合が二重結合に置き換わっていてもよい。)
【0018】
[3] 前記化合物(D)が、
前記ダイマージオールと、(メタ)アクリロイルを有するイソシアネートとの反応物である、ウレタンジ(メタ)アクリレート化合物(D-1)であることを特徴とした、前記[1]項に記載の光硬化性組成物。
【0019】
[4] 前記化合物(D)が、
ダイマージアミン構造単位を有し、ダイマージアミンが式(3)および式(4)から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、前記[1]項に記載の光硬化性組成物。
【0020】
【0021】
(式中、RおよびRは何れも炭素数1以上のアルキルであり、eおよびfはそれぞれ独立して1以上の整数であり、かつRおよびRに含まれる各炭素数と、eおよびfの合計は38以下であり、式中の任意のC-C間の結合が二重結合に置き換わっていてもよい。)
【0022】
【0023】
(式中、RおよびRは何れも炭素数1以上のアルキルであり、gおよびhはそれぞれ独立して1以上の整数であり、かつRおよびRに含まれる各炭素数と、gおよびhの合計は42以下であり、式中の任意のC-C間の結合が二重結合に置き換わっていてもよい。)
【0024】
[5] 前記化合物(D)が、
前記ダイマージアミンと、(メタ)アクリロイルを有するイソシアネートとの反応物である、ウレアジ(メタ)アクリレート化合物(D-3)であることを特徴とした、前記[1]項に記載の光硬化性組成物。
【0025】
[6] 前記記載の光硬化性組成物が、
さらに、組成物100重量%に対して0.1~30重量%の水酸基価調整剤(C)を含有し、
光硬化性組成物の水酸基価が1~100mgKOH/gである、前記[1]~[5]項のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【0026】
[7] 前記単官能アクリルモノマー(A)が、縮合環式炭化水素基、多環式炭化水素基および単環式炭化水素基からなる群のうち一または複数を有する(メタ)アクリレートを含有している、前記[1]~[6]項のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【0027】
[8] 前記単官能アクリルモノマー(A)が、下記式(7)で表される単官能アクリルモノマーである、前記[7]項に記載の光硬化性組成物。
【0028】
【0029】
(式(7)中、R11は水素またはメチルであり、R12は縮合環式炭化水素基を有する炭素数4~30の1価の有機基、多環式炭化水素基を有する炭素数6~30の1価の有機基、または単環式炭化水素基を有する炭素数4~30の1価の有機基であり、nは0~10の整数である。)
【0030】
[9] 前記式(7)中のR12が下記式(8)~(11)のいずれか1つで表される基である、前記[8]項に記載の光硬化性組成物。
【0031】
【0032】
(式(8)~(11)中、R13は、それぞれ独立に水素または炭素数1~6のアルキルであり、*は結合手である。)
【0033】
[10] 前記多官能アクリルモノマー(B)が、下記式(12)で表される二官能アクリルモノマーである、前記[1]~[6]項のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【0034】
【0035】
(式(12)中、R14はそれぞれ独立に水素またはメチルであり、R15は縮合環式炭化水素基を有する炭素数4~30の1価の有機基、多環式炭化水素基を有する炭素数6~30の1価の有機基、または単環式炭化水素基を有する炭素数4~30の1価の有機基
であり、nはそれぞれ独立に0~10の整数である。)
【0036】
[11] 前記式(12)中のR15が下記式(13)~(16)のいずれか1つで表される基である、前記[10]項に記載の光硬化性組成物。
【0037】
【0038】
(式(13)~(16)中、*は結合手である。)
【0039】
[12] 前記水酸基価調整剤(C)は、
水酸基価が100~300mgKOH/gであり、
重量平均分子量が100~5000である、前記[6]項に記載の光硬化性組成物。
【0040】
[13] さらに、光重合開始剤(E)を組成物100重量%に対し5~15重量%含有する前記[1]~[12]項のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【0041】
[14] 組成物の水酸基価が5~40mgKOH/gである前記[1]~[12]項のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【0042】
[15] 前記[1]~[14]項のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を含有する、活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【0043】
[16] 前記[1]~[14]項のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を含有する、インクジェット用インク組成物。
【0044】
[17] 前記[1]~[16]項のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を光硬化させて得られる硬化物。
【0045】
[18] 前記[1]~[16]項のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を光硬化させて得られる硬化物を、さらに熱硬化させて得られる硬化物。
【0046】
[19] 前記[17]または[18]項に記載の硬化物を含む電子部品。
【0047】
本発明は、さらに下記の2項も含む。
【0048】
[3-2] 化合物(D)が、
前記ダイマージオールと、(メタ)アクリロイルを有する化合物との反応物である、アルキルジ(メタ)アクリレート化合物(D-2)であることを特徴とした、前記[1]項に記載の光硬化性組成物。
【0049】
[5-2] 前記化合物(D)が、
式(5)で表される化合物(D-4)であることを特徴とした、前記[1]項に記載の光硬化性組成物。
【0050】
【0051】
(式中、Zは独立して、下記式(6)で表される構造単位(ダイマー酸から誘導された構造単位)、Yは独立して、置換または被置換の脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、Xは独立して、アクリレート、メタアクリレートである。nは0~10である。)
【0052】
【0053】
(式中、RおよびR10は何れも独立して、炭素数1以上のアルキルであり、iおよびjはそれぞれ独立して1以上の整数であり、かつRおよびR10に含まれる各炭素数ならびにiおよびjの合計は38以下である。)
【0054】
なお、本明細書で「(メタ)アクリロイル」という場合、アクリロイルおよびメタクリロイルのいずれかの基であることを意味する。「(メタ)アクリレート」も場合も同様で、アクリレートおよびメタクリレートのいずれかの化合物を意味する。本発明の化合物(D)中の(メタ)アクリロイルは、アクリロイルおよびメタクリロイルのいずれでもよいが、アクリロイルを選択した場合は、本発明の光硬化性組成物の硬化速度は速くなり、メタクリロイルを選択した場合は遅くなる、という傾向を示す。したがって、この選択により、本発明の光硬化性組成物の硬化速度を調節することができる。
【発明の効果】
【0055】
本発明の光硬化性組成物は、単官能アクリルモノマー(A)と、多官能アクリルモノマー(B)と、ダイマー酸から誘導された構造単位を有し末端に(メタ)アクリロイルを有する化合物(D)を含有している。このため、光硬化性組成物により形成された硬化物は、無機基材に対する密着性が良く、低反りで、且つイオンマイグレーション耐性の良好なものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の光硬化性組成物(以下「組成物」ともいう。)は、単官能アクリルモノマー(A)、多官能アクリルモノマー(B)およびダイマー酸から誘導された構造単位を有し末端に(メタ)アクリロイルを有する化合物(D)を含有している。以下、それらの各成分について説明する。
【0057】
1. 化合物(D):ダイマー酸から誘導された構造単位を有し末端に(メタ)アクリロイルを有する化合物
本発明の組成物は、ダイマー酸から誘導された構造単位を有し末端に(メタ)アクリロイルを有する化合物(D)を含有している。(以下、単に「化合物(D)」ともいう。)
【0058】
(1-1) ダイマー酸から誘導された構造単位
本明細書に記載の「ダイマー酸から誘導された構造単位」とは、ダイマー酸の少なくとも1個の末端カルボン酸基を除いた構造を意味する。ダイマー酸から誘導された構造単位として、具体的にはダイマー酸構造単位、ダイマージオール構造単位(ダイマー酸の還元により得られる)やダイマージアミン構造単位(ダイマー酸またはそのエステルを還元的にアミノ化することで得られる)を例示することができる。
【0059】
一般に「ダイマー酸」とは、不飽和脂肪酸の分子間重合反応によって得られる二塩基酸であり、例えば、炭素数が11~22の不飽和脂肪酸を粘土触媒等にて二量化して得られる二塩基酸であり、炭素数36の二塩基酸を主成分としたものがよく知られている。工業的に得られるダイマー酸には、炭素数36程度の二塩基酸の他、精製の度合いに応じ任意量のトリマー酸、モノマー酸も含有する。ダイマー酸の市販品としては、例えば、Pripol(登録商標)1009、1025、1004(いずれもクローダ社製)やEMPOL(登録商標)1008(BASF社)等を挙げることができる。
【0060】
(1-2) ダイマージオール構造単位
化合物(D)は、ダイマージオール構造単位を有するものであってもよい。なお、本明細書に記載の「ダイマージオール構造単位」とは、ダイマージオールの少なくとも1個の末端水酸基を除いた構造を意味する。
【0061】
一般に「ダイマージオール」とは、ダイマー酸および/またはその低級アルコールエステルを触媒存在下で還元して、ダイマー酸のカルボン酸部分をアルコールとしたジオールを主成分としたものであり、炭素数36のジオールを主成分としたものが市販品としてよく知られている。ここでダイマー酸とは、不飽和脂肪酸の分子間重合反応によって得られる二塩基酸であり、例えば、炭素数が11~22の不飽和脂肪酸を粘土触媒等にて2量化して得られる。工業的に得られるダイマー酸には、炭素数36程度の2塩基酸の他、精製の度合いに応じ任意量のトリマー酸、モノマー酸も含有する。ここで主成分とは、50質量%以上存在することを意味し、炭素数36のジオール以外にも、炭素数22~44で炭素数36ではないジオールが存在する場合が知られている。本明細書における「ダイマージオール」には、ダイマー酸のカルボン酸部分をアルコールとした炭素数36のものを主成分としたジオールのみならず、ダイマー酸由来の炭素-炭素2重結合を水素化した水添ダイマージオールも含まれるものと定義する。本発明におけるダイマージオールとしては、ダイマー酸由来の炭素-炭素2重結合を水素化した水添ダイマージオールが特に好ましい。ダイマージオールの市販品としては、例えば、Pripol(登録商標)2033(クローダ社製)やSovermol(登録商標)908(コグニス社製)等を挙げることができる。
【0062】
ダイマージオールの代表的な化合物の構造としては、例えば、以下の式(1)、式(2)が挙げられる。
【0063】
【0064】
(式中、RおよびRは何れも炭素数1以上のアルキルであり、aおよびbはそれぞれ独立して1以上の整数であり、かつRおよびRに含まれる各炭素数と、aおよびbの合計は38以下であり、式中の任意のC-C間の結合が二重結合に置き換わっていてもよい。)
【0065】
【0066】
(式中、RおよびRは何れも炭素数1以上のアルキルであり、cおよびdはそれぞれ独立して1以上の整数であり、かつRおよびRに含まれる各炭素数と、cおよびdの合計は42以下であり、式中の任意のC-C間の結合が二重結合に置き換わっていてもよい。)
【0067】
(1-3) 化合物(D-1):ウレタンジ(メタ)アクリレート化合物
本発明に記載の化合物(D)は、前記ダイマージオールと、(メタ)アクリロイルを有するイソシアネートとの反応物、すなわちウレタンジ(メタ)アクリレート化合物(D-1)であってもよい。ダイマージオールの水酸基と、イソシアネートが反応することで、ウレタン結合が生成される。この反応は、公知のウレタン化反応を用いることができる。このように、ダイマージオールの両末端に、ウレタン結合によりアクリロイルが付加された、ウレタンジ(メタ)アクリレート化合物(D-1)を生成することができる。
【0068】
本発明に用いられる(メタ)アクリロイルを有するイソシアネートとしては、例えば式(17)で表される化合物が挙げられる。(メタ)アクリロイルを有するイソシアネートの市販品としては、例えば、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製カレンズ(登録商標)AOI)、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製カレンズ(登録商標)MOI)、2-(2-メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート(昭和電工社製カレンズ(登録商標)MOI-EG)等が挙げられる。
【0069】
【0070】
(式中、R16はHまたはCHを表し、R17は炭素数2~12の炭化水素基を表す。)
【0071】
式(17)中、R16=Hの場合、本発明の化合物(D)は、分子末端にアクリロイルを有することを意味する。また、R16=CHの場合、分子末端にメタクリロイルを有することを意味する。式(17)中のR17は、本発明の光硬化性組成物の硬化速度を速くするという観点から、炭素数2~8の炭化水素基であることが好ましく、さらに好ましくは、炭素数2~6の炭化水素基である。
【0072】
本発明の化合物(D)として、前記のウレタンジメタクリレートを用いることにより、本発明の光硬化性組成物の反応性を高くすることができる。例えば、少ない露光量で、短時間で硬化物を得ることが可能となる。さらに、光硬化反応後の未反応のアクリロイルが低減することができ、硬化物のイオンマイグレーション耐性を高くすることができる。これは、ウレタン構造の水素結合による凝集により、アクリロイルが集まりやすくなることで、ラジカル重合の反応性が高くなるためであると考えられる。
【0073】
(1-4) 化合物(D-2):アルキルジ(メタ)アクリレート化合物
本発明の化合物(D)は、前記ダイマージオールと、(メタ)アクリロイルを有する化合物との反応物である、アルキルジ(メタ)アクリレート化合物(D-2)であってもよい。
【0074】
前記、アルキルジ(メタ)アクリレート化合物(D-2)は、前記ダイマージオールと、(メタ)アクリルロイルを有するカルボン酸、その酸クロライドまたはエステルを原料として、脱水縮合法、酸クロライド法、エステル交換法などの一般的なエステル合成法により得ることができる。
【0075】
化合物(D)として、前記のアルキルジ(メタ)アクリレート化合物(D-2)を用いることにより、本発明の光硬化性組成物を光硬化することで得られる硬化物の弾性率を高くすることができる。さらに、エステル構造を有することで耐酸性を付与することができる。
【0076】
(1-5) ダイマージアミン構造単位
本発明の化合物(D)は、ダイマージアミン構造単位を有するものであっても良い。なお、本明細書に記載の「ダイマージアミン構造単位」とは、ダイマージアミンの少なくとも1個の末端アミノ基を除いた構造を意味する。
【0077】
一般に「ダイマージアミン」とは、上述のダイマー酸および/またはその低級アルコールエステルを還元的アミノ化反応し、ダイマー酸のカルボン酸部分をアミノ化したジアミンを主成分としたものであり、炭素数36のジアミンを主成分としたものが市販品としてよく知られている。この反応は、例えば、アンモニアおよび触媒を使用する還元法等、公知の方法(例:特開平9-12712号公報)によって行うことができる。ここで主成分とは、50質量%以上存在することを意味し、炭素数36のジアミン以外にも、炭素数22~44で炭素数36ではないジアミンが存在する場合が知られている。本明細書における「ダイマージアミン」には、ダイマー酸のカルボン酸部分をアミノ化した炭素数36のものを主成分としたジアミンのみならず、ダイマー酸由来の炭素-炭素2重結合を水素化した水添ダイマージアミンも含まれるものと定義する。本発明におけるダイマージアミンとしては、ダイマー酸由来の炭素-炭素2重結合を水素化した水添ダイマージアミンが特に好ましい。ダイマージアミンの市販品としては、例えば、Priamine(登録商標)1074等(クローダ社製)やバーサミン551(商品名、BASFジャパン(株))、バーサミン552(商品名、BASFジャパン(株))を挙げることができる。
【0078】
ダイマージアミンの代表的な化合物の構造としては、例えば以下の式(3)、式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0079】
【0080】
(式中、RおよびRは何れも炭素数1以上のアルキルであり、eおよびfはそれぞれ独立して1以上の整数であり、かつRおよびRに含まれる各炭素数と、eおよびfの合計は38以下である。)
【0081】
【0082】
(式中、RおよびRは何れも炭素数1以上のアルキルであり、gおよびhはそれぞれ独立して1以上の整数であり、かつRおよびRに含まれる各炭素数と、gおよびhの合計は42以下である。)
【0083】
(1-6) 化合物(D-3):ウレアジ(メタ)アクリレート
本発明の化合物(D)は、前記ダイマージアミンと、(メタ)アクリロイルを有するイソシアネートとの反応物、すなわちウレアジ(メタ)アクリレート化合物(D-3)であっても良い。ダイマージアミンのアミノ基と、(メタ)アクリロイルを有するイソシアネートのイソシアネート基が反応することで、ウレア結合が生成される。この反応は、公知のウレア化反応を用いることができる。このように、ダイマージアミンの両末端に、ウレア結合によりアクリロイルが付加された、ウレアジ(メタ)アクリレート化合物(D-3)を生成することができる。
【0084】
本発明に用いられる(メタ)アクリロイルを有するイソシアネートとしては、例えば上述の式(17)で表される化合物が挙げられる。(メタ)アクリロイルを有するイソシアネートの市販品の例も上述の通りである。
【0085】
化合物(D)として、前記のウレアジ(メタ)アクリレート化合物(D-3)を用いることにより、本発明の光硬化性組成物の反応性を高くすることができる。例えば、少ない露光量で、短時間で硬化物を得ることが可能となる。さらに、硬化物中の未反応アクリロイルを低減することができ、硬化物のイオンマイグレーション耐性を高くすることができる。これは、ウレア構造の水素結合による凝集により、アクリロイルが集まりやすくなることで、ラジカル重合の反応性が高くなるためであると考えられる。
【0086】
また、化合物(D)として、前記のウレアジ(メタ)アクリレートを用いることにより、本発明の組成物の粘度を高くすることができる。組成物を塗布する際に、例えば、ダイコート法やジェッティング法などの塗布方法に適した粘度に調整することが可能となる。これは、ウレア構造の水素結合による凝集により、アクリロイルが集まりやすくなることで、組成物の粘度が高くなるものと考えられる。
【0087】
(1-7) 化合物(D-4)
本発明の化合物(D)が、式(5)で表される化合物(D-4)であっても良い。
【0088】
【0089】
(式中、Zは独立して、下記式(6)で表される構造単位(ダイマー酸構造単位に相当)、Yは独立して、置換または被置換の脂肪族、アリール、またはヘテロアリールであり、Xは独立して、アクリレート、メタアクリレートである。nは0~10である。)
【0090】
【0091】
(式中、RおよびR10は何れも炭素数1以上のアルキルであり、iおよびjはそれぞれ独立して1以上の整数であり、かつRおよびR10に含まれる各炭素数ならびにiおよびjの合計は38以下であり、式中の任意のC-C間の結合が二重結合に置き換わっていてもよい。)
【0092】
化合物(D-4)の市販品としては、例えば、PEAM-104;ポリエステルアクリレートメタクリレートオリゴマー(商品名;PEAM-1044、Designer Mоlecules社、水酸基価0mgKOH/g、粘度;4,850mPa・s)などが挙げられる。
【0093】
化合物(D)として、式(5)で表される化合物(D-4)を用いることにより、本発明の組成物の粘度を低くすることができる。組成物を塗布する際に、例えば、インクジェット法やスプレーコート法などの塗布方法に適した粘度に調整することが可能となる。さらに、エステル構造を有することで耐酸性を付与することができる。
【0094】
(1-8) 化合物(D)の含有量
本発明の組成物は、組成物の成分の重量の和100重量%に対して10~80重量%の化合物(D)を含有している。本発明の組成物をインクとして用いた場合の塗工性を良好にし、低反り性に優れる硬化物を形成する観点から、化合物(D)の含有量は、組成物100重量%に対し、10~80重量%であることが好ましく、10~60重量%であることがより好ましい。
【0095】
2. 単官能アクリルモノマー(A)
本発明の組成物は、組成物の成分の重量の和100重量%に対して10~80重量%の単官能アクリルモノマー(A)を含有している。
【0096】
本発明の組成物をインクとして用いた場合の塗工性を良好にし、耐熱性および基板に対する密着性、およびイオンマイグレーション耐性等にバランス良く優れる硬化物を形成する観点から、成分(A)の含有量は、組成物100重量%に対し、20~80重量%であることが好ましく、30~80重量%であることがより好ましい。
【0097】
耐熱性および基板、特にガラス基板やシリコン基板やこれらの基板上に金属配線、電極などの導体が形成された基板との密着性およびイオンマイグレーション耐性を良好にする観点から、単官能アクリルモノマー(A)は、縮合環式炭化水素基、多環式炭化水素基および単環式炭化水素基からなる群のうち一または複数を有する(メタ)アクリレートを含有していることが好ましい。
【0098】
(2-1) 縮合環式炭化水素基または多環式炭化水素基を有する単官能アクリルモノマー(a-1)
縮合環式炭化水素基または多環式炭化水素基を有する単官能アクリルモノマー(a-1)としては、特に制限されないが、縮合環式炭化水素基または多環式炭化水素基を有する炭素数7~50の有機基を含む単官能アクリルモノマーであることが好ましく、縮合環式炭化水素基または多環式炭化水素基を有する炭素数7~30の有機基を含む単官能アクリルモノマーであることがさらに好ましい。
なお、「単官能アクリルモノマー」とは、1分子中に1つの(メタ)アクリロイルを有するモノマーのことをいう。
【0099】
また、「縮合環式炭化水素基」とは、環を2つ以上有する炭化水素(炭素原子と水素原子とからなる)基であり、ある環を構成し、同時に他の環をも構成する炭素原子を少なくとも1つ有する炭化水素基のことをいい、「多環式炭化水素基」とは、環を2つ以上有する炭化水素基であり、ある環と他の環とが単結合または炭素数1~10のアルキレンで結合した炭化水素基のことをいう。
【0100】
さらに、「前記縮合環式炭化水素基または多環式炭化水素基を有する炭素数7~50の有機基」とは、例えば、式(7)で表される化合物における、(メタ)アクリロイル以外のn個の繰り返し単位およびR12を含む基のことをいう。
【0101】
【0102】
(式(7)中、R11は水素またはメチルであり、R12は縮合環式炭化水素基を有する炭素数4~30の1価の有機基、多環式炭化水素基を有する炭素数6~30の1価の有機基、または単環式炭化水素基を有する炭素数4~30の1価の有機基であり、nは0~10の整数である。)
【0103】
前記モノマー(a-1)としては、式(7)で表される化合物を用いることが、耐熱性および基板との密着性およびイオンマイグレーション耐性に優れる硬化物が得られる等の点から好ましい。
【0104】
式(7)中、R12は、好ましくは、非極性であり、(式(7)中、R11は水素またはメチルであり、R12は縮合環式炭化水素基を有する炭素数4~30の1価の有機基、多環式炭化水素基を有する炭素数6~30の1価の有機基、または単環式炭化水素基を有する炭素数4~30の1価の有機基であり、より好ましくは、式(8)~(11)のいずれか1つで表される基である。また、nとしては0または1が好ましい。
【0105】
【0106】
(式(8)~(11)中、R13は、それぞれ独立に水素または炭素数1~6のアルキルであり、*は結合手である。)
【0107】
前記式(8)~(11)中、R13としては水素が好ましい。なお、*は結合手であり、前記式(7)の右末端のO-と結合する。
【0108】
前記モノマー(a-1)としては、さらに下記化合物群(I)から選ばれる少なくとも一種の化合物を例示することもできる(これらの化合物の一部は、上記の式(8)~(11)以外の構造を含むものがある)。
【0109】
【0110】
これらの中でも、得られる硬化物の基板との密着性、耐熱性およびイオンマイグレーション耐性を考慮すると以下の化合物(101)~(110)がより好ましく、化合物(101)および(107)がさらに好ましい。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
前記モノマー(a-1)は上述した化合物等から選ばれる一種の化合物であってもよく、またこれらの二種以上の混合物であってもよい。化合物(101)と(107)の混合物が好ましく、両者を併用する場合、化合物(101):化合物(107)の重量比は、5:10~10:5が好ましく、7:10~10:7がより好ましく、9:10~10:9がさらに好ましい。
【0118】
前記モノマー(a-1)としては、公知の方法で製造した化合物を用いてもよいし、また、ジシクロペンタニルアクリレート(商品名;ファンクリルFA-513AS:日立化成工業(株))、ジシクロペンタニルメタクリレート(商品名;ファンクリルFA-513M:日立化成工業(株))、ジシクロペンテニルアクリレート(商品名;ファンクリルFA-511AS:日立化成工業(株))、ジシクロペンテニルメタクリレート(商品名;ファンクリルFA-511M:日立化成工業(株))、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(商品名;ファンクリルFA-512AS:日立化成工業(株))、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(商品名;ファンクリルFA-512M:日立化成工業(株))、イソボルニルアクリレート(商品名;IB-XA:共栄社化学(株))、イソボルニルメタクリレート(商品名;IBXMA:共栄社化学(株))、および1-アダマンチルメタクリレート(商品名;アダマンテートM-104:出光興産(株))等の市販品を用いてもよい。
【0119】
(2-2) 単環式炭化水素基を有する単官能重合性モノマー(a-2)
「単環式炭化水素基」とは、環(芳香環を含む)を1つ有する炭化水素基のことをいう。
前記モノマー(a-2)としては、公知の方法で製造した化合物を用いてもよいし、また、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート(商品名;V#155:大阪有機化学工業(株))、シクロヘキシルメタクリレート(商品名;ライトエステルCH:共栄社化学(株))等の市販品を用いてもよい。
【0120】
3. 多官能アクリルモノマー(B)
本発明の組成物は、組成物100重量%に対し10~30重量%の多官能アクリルモノマー(B)を含有している。「多官能アクリルモノマー」とは、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイルを有するモノマーのことをいう。
【0121】
前記モノマー(B)の具体例としては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、ならびに前記式(12)で表される化合物が挙げられる。
【0122】
【0123】
(式(12)中、R14はそれぞれ独立に水素またはメチルであり、R15は縮合環式炭化水素基を有する炭素数4~30の1価の有機基、多環式炭化水素基を有する炭素数6~30の1価の有機基、または単環式炭化水素基を有する炭素数4~30の1価の有機基であり、nはそれぞれ独立に0~10の整数である。)
【0124】
組成物により形成される硬化物のイオンマイグレーション耐性を良好にする観点から、前記式(12)中のR15が前記式(13)~(16)のいずれか1つで表される基である化合物が好ましく、前記式(12)で表される基であることがより好ましい。また、nとしては0または1が好ましい。
【0125】
【0126】
(式(13)~(16)中、*は結合手である。)
【0127】
前記モノマー(B)は上述した化合物等から選ばれる一種の化合物であってもよく、またこれらの二種以上の混合物であってもよい。
【0128】
光硬化性に優れる組成物が得られ、また、耐熱性および基板に対する密着性およびイオンマイグレーション耐性にバランス良く優れる硬化物が得られるため、本発明の組成物において、前記モノマー(B)の含有量は、組成物100重量%に対し、5~50重量%が好ましく、5~30重量%がより好ましく、8~25重量%がさらに好ましい。
【0129】
4. 水酸基価調整剤(C)
本発明の組成物は、水酸基価調整剤(C)を含有してもよい。ここで、水酸基価調整剤(C)は、前記成分(A)、(B)と、水酸基価が異なる化合物であり、前記成分(A)、(B)よりも水酸基価が高い化合物が好ましい。成分(C)の水酸基価と、成分(A)の水酸基価との差は、100mgKOH/g以上300mgKOH/g以下が好ましく、150mgKOH/g以上280mgKOH/g以下がより好ましい。成分(C)の水酸基価と、成分(B)の水酸基価との差は、150mgKOH/g以上250mgKOH/g以下が好ましく、100mgKOH/g以上200mgKOH/g以下がより好ましい。水酸基価調整剤(C)は、一種または二種以上の混合物として用いてもよい。
【0130】
本発明の組成物は、例えば、水酸基を有さない単官能アクリルモノマー(A)および水酸基を有さない多官能アクリルモノマー(B)に、水酸基を有する水酸基価調整剤(C)を配合して、組成物全体の水酸基価を調整してもよい。この場合、イオンマイグレーション耐性が良好な硬化物を形成する観点から、水酸基価調整剤(C)の含有量は、組成物100重量%に対して0.1~30重量%が好ましく、0.3~25重量%がより好ましく、0.5~20重量%がさらに好ましい。
【0131】
上述した好ましい配合量で組成物の水酸基価を所定の範囲に調整することが容易であることから、水酸基価調整剤(C)の水酸基価は、100~300mgKOH/gが好ましく、150~250mgKOH/gがより好ましい。前記、水酸基調整剤(C)の具体例として、OT-2503;アクリルオリゴマー(アロニックスOT-2503;商品名、東亜合成(株)、重量平均分子量1000、水酸基価172mgKOH/g、Tg94℃)、M305;ペンタエリスリトールトリアクリレートおよびペンタエリスリトールテトラアクリレート(アロニックスM305;商品名、東亜合成(株)、重量平均分子量323、水酸基価116mgKOH/g、Tg107℃)、EA-5422LC;ジシクロペンタジエンジメタノールグリシジルエーテルアクリル酸付加物(商品名;NKオリゴEA-5422LC、新中村化学工業(株)、水酸基価248mgKOH/g)等が挙げられる。
【0132】
本発明は、水酸基価調整剤(C)を用いて、前記成分(A)、成分(B)および化合物(D)を含有する組成物の水酸基価を1~100mgKOH/gとしているから、インクジェット用インクとして用いる場合の吐出性、光硬化性に優れ、かつ、耐熱性および基板、特にシリコン基板やガラス基板やこれらの基板上に金属配線、電極などの導体が形成された基板との密着性およびイオンマイグレーション耐性に優れる硬化物を形成することができる。イオンマイグレーション耐性に優れる硬化物とする観点から、組成物の水酸基価は、2~40mgKOH/gであることがより好ましく、5~40mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0133】
水酸基価調整剤(C)により組成物の水酸基価を調整して、イオンマイグレーション耐性に優れる硬化物を形成する観点から、前記成分(A)、成分(B)および化合物(D)はいずれも、水酸基価が100mgKOH/g以下であることが好ましく、10mgKOH/g以下であることがより好ましく、0mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0134】
5. 光重合開始剤(E)
本発明の組成物は、さらに、光重合開始剤(E)を含有していてもよい。
光重合開始剤は、本発明の組成物が含有するモノマー成分の重合を開始し得る、紫外線、可視光線、電磁波等の照射によってラジカルを発生する化合物であればよく、一般に用いられるものを使用できる。光重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4′-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-エチルアントラキノン、アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-4′-イソプロピルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1′-(メチレン-ジ-4,1-フェニレン)ビス(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパノン)、カンファーキノン、ベンズアントロン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-(4-メチルベンジル)-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1,4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4′-ジ(tert-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4′-トリ(tert-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2-(4′-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(3′,4′-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(2′,4′-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(2′-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4′-ペンチルオキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、4-[p-N,N-ジ(エトキシカルボニルメチル)]-2,6-ジ(トリクロロメチル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(2′-クロロフェニル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(4′-メトキシフェニル)-s-トリアジン、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、3,3′-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、2-(o-クロロフェニル)-4,4′,5,5′-テトラフェニル-1,2′-ビイミダゾール、2,2′-ビス(2-クロロフェニル)-4,4′,5,5′-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2′-ビイミダゾール、2,2′-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4′,5,5′-テトラフェニル-1,2′-ビイミダゾール、2,2′-ビス(2,4-ジブロモフェニル)-4,4′,5,5′-テトラフェニル-1,2′-ビイミダゾール、2,2′-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4′,5,5′-テトラフェニル-1,2′-ビイミダゾール、3-(2-メチル-2-ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6-ビス(2-メチル-2-モルホリノプロピオニル)-9-n-ドデシルカルバゾール、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、3,3′,4,4′-テトラ(tert-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′-テトラ(tert-ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′-ジ(メトキシカルボニル)-4,4′-ジ(tert-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4′-ジ(メトキシカルボニル)-4,3′-ジ(tert-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4′-ジ(メトキシカルボニル)-3,3′-ジ(tert-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどである。市販品として、例えば、BASF製、製品名:Irgacure379EG、Irgacure127、Irgacure184、IGMResinsB.V.製、製品名:Omnirad379EG、Omnirad127、Omnirad184などが挙げられる。これらの中でも、2-(4-メチルベンジル)-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オンが好ましい。
【0135】
光重合開始剤(E)は、イオンマイグレーション耐性の良好な硬化物を形成する観点から、組成物100重量%に対し5~15重量%が好ましく、7~12重量%がより好ましい。光重合開始剤(D)は、一種の化合物であっても、二種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0136】
6. 活性エネルギー線硬化型インク組成物、インクジェット用組成物
本発明は、本発明の組成物を含有する活性エネルギー線硬化型インク組成物として、実施することもできる。ここで活性エネルギー線とは、活性種を発生する化合物を分解して活性種を発生させることのできるエネルギー線をいう。このような活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線、電子線などの光エネルギー線が挙げられる。
【0137】
本発明の組成物をインクジェット用組成物として用いる場合、吐出性を良好にする観点から、25℃における粘度が1~100mPa・sであることが好ましく、3~70mPa・sであることがより好ましい。
【0138】
本発明の組成物は、各種特性を向上させるために、難燃剤、フェノール性水酸基を含有する樹脂、メラミン樹脂、エポキシ化合物、オキセタン化合物、硬化剤、界面活性剤、着色剤、重合禁止剤および溶媒などのその他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で含んでもよい。
【0139】
7.硬化物
本発明の硬化物は、本発明の組成物を光硬化させることで得られる。
【0140】
硬化物の形成は、例えば、組成物を基板に塗布することによって行うことができる。塗布する方法は、特に制限されないが、インクジェット法、ジェッティング法、スピンコート法、ロールコート法、スリットコート法、ディッピング法、スプレーコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、キスコート法、リバースキスコート法、エアナイフコート法、カーテンコート法などが利用できる。
【0141】
また、前記基板としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)などからなるポリエステル系樹脂基板;ポリエチレンおよびポリプロピレンなどからなるポリオレフィン樹脂基板;ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネートおよびポリイミドなどからなる有機高分子フィルム;セロハン;金属箔;ポリイミドと金属箔との積層フィルム;目止め効果があるグラシン紙、パーチメント紙、ポリエチレン、クレーバインダー、ポリビニルアルコール、でんぷんまたはカルボキシメチルセルロース(CMC)などで目止め処理した紙;シリコン基板;およびガラス基板を挙げることができる。
【0142】
本発明は、本発明の組成物を含有するインクジェット用インク組成物、インクジェット用インク組成物を含有する活性エネルギー線硬化型インク組成物として、実施することもできる。
【0143】
本発明の組成物をインクジェット用インクとして用いる場合、以下の工程1および2を含む方法により硬化物を製造することができる。
(工程1)インクジェット法により本発明の組成物を基板上に塗布して塗膜を形成する工程
(工程2)工程1で得られた塗膜に光を照射して塗膜を硬化し、基板上に硬化物を形成する工程
【0144】
前記インクジェット法としては、特に制限されず、公知のインクジェット法を用いることができる。前記基板は、本発明のインクが塗布される対象となり得るものであれば特に限定されず、その形状は平板状に限られず、曲面状等であってもよい。
【0145】
インクジェット法を用いることにより、本発明のインクを予め定められたパターン状に容易に塗布することができ、均一なパターンを大きな基板上に形成することができる。
【0146】
インクジェット塗布装置で吐出する際の温度は、好ましくは10~120℃である。該温度における本発明のインクの粘度は1~100mPa・sであることが好ましく、3~70mPa・sであることがより好ましい。
【0147】
25℃における粘度が30mPa・sを超えるインクを使用する場合は、インクジェットヘッドを加熱して吐出時のインクの粘度を下げることで、より安定した吐出が可能になる。インクジェットヘッドを加熱してジェッティングを行う場合は、加熱温度は40~120℃が好ましい。インクジェットヘッドを加熱する場合は、溶媒を含まないインクを用いることが好ましい。
【0148】
得られる塗膜の厚みは所望の用途に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは1~50μmであり、より好ましくは5~30μmである。
【0149】
紫外線や可視光線等を照射する場合、照射する露光量は、本発明の組成物の組成に応じて適宜調節すればよいが、Opsytec社製UVモニター(「UV―Pad」、波長:UV-A(315-400nm))を用いて測定した場合、100~10,000mJ/cm程度が好ましく、150~5000mJ/cm程度がより好ましく、180~3000mJ/cm程度がさらに好ましく、200~2000mJ/cm程度が特に好ましい。また、照射する紫外線や可視光線等の波長は、200~500nmが好ましく、300~450nmがより好ましい。
【0150】
なお、光を照射する際には露光機を用いればよく、露光機としては、UV-LEDランプ、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ、またはブラックライトランプ等を搭載し、200~500nmの範囲で、紫外線や可視光線等を照射する装置であることが好ましい。
【0151】
また、必要に応じて、光の照射により硬化した硬化物をさらに加熱・焼成してもよい。通常80~250℃で10~60分間加熱・焼成することによって、より強固な硬化物を得ることができる。
【0152】
本発明の硬化物の厚みは所望の用途に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは1~50μmであり、より好ましくは5~30μmである。
【0153】
本発明の硬化物は、耐熱性、基板との密着性およびイオンマイグレーション耐性に優れる硬化物であるため、液晶表示素子またはEL表示素子などの表示素子や、プリント配線板、フレキシブル配線板、半導体パッケージ基板および太陽電池基板などの電子回路基板における保護膜、絶縁膜として好適に用いられる。さらに、本発明の硬化物は所定の回路パターンをなす金属配線、電極等の導体を保護するカバーレイフィルムやソルダーレジストなどに好適に用いられる。
【0154】
8.電子部品
本発明の電子部品は、前記本発明の硬化物を含み、前記工程1および工程2を含む方法で製造されることが好ましい。本発明の硬化物は耐熱性および基板との密着性、イオンマイグレーション耐性等に優れるため、本発明の電子部品は、電気特性および長期信頼性等に優れる電子部品となる。
【実施例0155】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0156】
実施例および比較例において、以下の成分を用いた。適宜、以下に示す略号を用いて、各成分を示す。
[単官能アクリルモノマー(A)]
FA-513AS;ジシクロペンタニルアクリレート、(商品名;ファンクリルFA-513AS、日立化成工業(株)、水酸基価0mgKOH/g、ホモポリマーのガラス転移点(Tg)120℃)
IB-XA;イソボルニルアクリレート(商品名;IB-XA;共栄社化学(株)、水酸基価0mgKOH/g、Tg97℃)
【0157】
[多官能アクリルモノマー(B)]
IRR214-K;トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(水酸基価0mgKOH/g、Tg190℃)
【0158】
[水酸基価調整剤(C)]
EA-5422LC;ジシクロペンタジエンジメタノールグリシジルエーテルアクリル酸付加物(商品名;NKオリゴEA-5422LC、新中村化学工業(株)、水酸基価248mgKOH/g)
【0159】
[化合物(D-4)]
PEAM-104;ポリエステルアクリレートメタクリレートオリゴマー(商品名;PEAM-1044、Designer Mоlecules社、水酸基価0mgKOH/g、粘度;4,850mPa・s)
【0160】
[光重合開始剤(E)]
Irg379;2-(4-メチルベンジル)-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(IRGACURE379;商品名、BASFジャパン(株))
【0161】
[合成例1]
[ウレタンジ(メタ)アクリレート化合物(D-1)]
ダイマージオールから誘導させるウレタンジ(メタ)アクリレート化合物(D-1)は、以下の方法にて合成した。
窒素雰囲気下、還流冷却器、温度計及び滴下ロートを装着した三口フラスコ(100mL)に、ダイマージオール(クローダジャパン社製;Pripol 2033、23、7g、48mmol)を80℃に加熱を行った後に、AOI(2-イソシアナトエチルアクリラート、昭和電工(株)製;カレンズAOI、16.3g、105mmol)を滴下ロートに導入し、速やかに滴下し、反応を開始し、同温度で3時間攪拌した。その後、MEOH(3.1g、96mmol、関東化学(株)製)を加え30分攪拌し、フラスコをバスアップすることで室温まで冷却することで、ウレタンジ(メタ)アクリレート化合物(D-1)を得た。得られた反応液は透明であり、GPC分析により求めた重量分子量は1,200、分子量分布は1.0であり、E型粘度計(東機産業(株)TV-22、以下同じ)より求めた25℃における粘度は、540mPa・sであった。
【0162】
[合成例2]
[アルキルジ(メタ)アクリレート化合物(D-2)]
ダイマージオールから誘導させるアルキルジ(メタ)アクリレート化合物(D-2)は、以下の方法にて合成した。
ダイマージオール(クローダジャパン社製;Pripol 2033、284.4g、500mmol)を、メカニカルスターラーと、滴下ロートとを備えた1リットルの 三つ口フラスコ中の乾燥アセトン(450ml)中に窒素下にて溶解させた。トリエチルアミン(101.2g、1 mol)をこの溶液に加え、溶液を氷浴上で4℃に冷却した。乾燥アセトン(100ml)中で溶媒和したアクリロイルクロリド(90.5g、1mol)を滴下ロート中に投入し、撹拌反応溶液に60分間の過程にわたって、内部温度T<10℃を維持しながら滴下した。この溶液を氷上でさらに2時間撹拌した後、温度を室温に戻し、4時間撹拌させた。大部分の溶媒をエバポレーターによって除去し、残留する残渣をCH2Cl2(1リット ル)中で溶媒和させた。更に、この溶液を5%HCl水溶液 (800ml)とH2O(1200ml)とによって洗浄させた。単離させた有機物質を無水MgSO4上で乾燥させて濾過し、エバポレーターにより溶媒除去した後、アルキルジ(メタ)アクリレート化合物(D-2)を得た。E型粘度計(東機産業(株)TV-22、以下同じ)より求めた25℃における粘度は、126mPa・sであった。
【0163】
[合成例3]
[ウレアジ(メタ)アクリレート化合物(D-3)]
ダイマージアミンから誘導させるウレアジ(メタ)アクリレート化合物(D-3)は、以下の方法にて合成した。
窒素雰囲気下、還流冷却器、温度計及び滴下ロートを装着した三口フラスコ(100mL)に、ダイマージアミン(クローダジャパン社製;Priamine 1074、21、3g、43mmol)、IBXA(24g、108mmоl)、フェノチアジン(0.3g、1.5mmоl、関東化学(株)製)を投入した。氷浴上で5℃に冷却した後、AOI(2-イソシアナトエチルアクリラート、昭和電工(株)製;カレンズAOI、14.7g、95mmol)を滴下ロートに導入し、撹拌反応溶液に30分間の過程にわたって、内部温度T<20℃を維持しながら滴下した。その後、氷浴を外して室温に戻したのち、50℃に加熱し、1時間撹拌した。その後、モルフォリン(1.5g、17mmol、関東化学(株)製)を加え30分攪拌し、フラスコをバスアップすることで室温まで冷却することで、ウレアジ(メタ)アクリレート化合物(D-3)を60wt%含む溶液を得た。得られた溶液は透明であり、GPC分析により求めたウレアジ(メタ)アクリレート化合物の重量分子量は1,200、分子量分布は1.1であった。得られた溶液のE型粘度計(東機産業(株)TV-22、以下同じ)より求めた25℃における粘度は、8,930mPa・sであった。
【0164】
[実施例1]
<光硬化性組成物の調製>
単官能アクリルモノマー(A)として、FA-513ASを35gおよびIB-XAを35gと、多官能(二官能)アクリルモノマー(B)として、IRR214-Kを20gと、水酸基価調整剤(C)として、EA-5422LCを10gと、化合物(D)として合成例(1)で得られたウレタンジ(メタ)アクリレート(D-1)を20g、光重合開始剤(E)として、Irg379を12gとを混合し、溶液を得た後、孔径0.2μmの超高分子量ポリエチレン(疎水性)製のメンブレンフィルター(日本インテグリス(株))でろ過し、ろ液(「光硬化性組成物1」として使用する)を得た。E型粘度計(東機産業(株)TV-22、以下同じ)を用い、25℃における光硬化性組成物の粘度を測定した結果、29.2mPa・sであった。
【0165】
[実施例2~6]
表1に示す材料を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、光硬化性組成物2~6を調製した。E型粘度計(東機産業(株)TV-22、以下同じ)を用い、25℃における光硬化性組成物の粘度を測定した結果を表2に示した。なお、表中の(A)、(B)、(C)および(D)成分の含有量を表す数値は、すべて重量%である。
【0166】
[比較例1]
表1に示す材料を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、光硬化性組成物7を調製した。E型粘度計(東機産業(株)TV-22、以下同じ)を用い、25℃における光硬化性組成物の粘度を測定した結果、を表2に示した。なお、表中の(A)、(B)、(C)および(D)成分の含有量を表す数値は、すべて重量%である。
【0167】
<硬化物の形成>
得られた光硬化性組成物1~7を、10cm角のアルミ箔上に2.5mL滴下し、バーコータ(ロッドNо.75)を用いて均一な膜厚の塗膜を作成した。得られた塗膜に、UV-LEDランプ「LSS-08aAUV」光源:UV-LED(シーシーエス社製、ランプ波長:365nm)を用いて、波長365nmの紫外線を2000mJ/cmのUV露光量(Opsytec社製UVモニター(「UV-Pad」)で測定、波長:UV-A(315-400nm))で照射することで塗膜を光硬化し、クリーンオーブンDT-610(ヤマト科学(株)製)200℃で60分間加熱焼成することで、厚さ約50μmの硬化膜1~7を得た。
【0168】
<硬化膜単体の評価>
得られた硬化膜1~7をアルミ箔から剥離し、硬化膜単体1~7を得た。得られた硬化膜単体の破断伸度およびガラス転移温度の評価を行った。
各試験方法および評価基準は以下のとおりであり、評価結果を表2に示す。
【0169】
(引張試験)
硬化膜単体を幅5mm長さ50mmの短冊状に切り出し、引張試験機(島津製作所製)を用い、一対のチャックで試料の両端部を把持し、25℃-50%RHの雰囲気下、引張速度50mm/分の条件で測定を実施し、試料が破断したときの長さを求め、下記式より破断伸度を求めた。なお、初期長さは15mm(試験開始時の一対のチャック間距離)である。
(破断伸度)=((破断した時の長さ)-(初期長さ))/(初期長さ)
【0170】
(ガラス転移温度の測定)
硬化膜単体を幅5mm長さ50mmの短冊状に切り出し、粘弾性測定装置を用い、一対のチャックで試料の両端部を把持し、昇温スピード10℃/分、周波数1Hzの条件で動的粘弾性の測定を実施した。ガラス転移温度は、粘弾性測定で得られる貯蔵弾性率E’と損失弾性率E”の比で表されるtanδのピーク位置の中で、最もピーク強度が大きいtanδの温度を読み取った値である。なお、tanδは下記式より求めることができる。
(tanδ)=((貯蔵弾性率E’)/(損失弾性率E”))
【0171】
<IMG評価基板の作製>
得られた光硬化性組成物1~7を、対向くし型電極パターン付基板(レイテック(株)製、L/S=18μm/18μm)上に塗布し、回転数1,000~3,000rpmでスピンコートし、くし型電極の重ね代を覆う塗膜を得た。得られた基板に、UV-LEDランプ「LSS-08aAUV」(シーシーエス社製、ランプ波長:365nm)を用いて、波長365nmの紫外線を2000mJ/cmのUV露光量(Opsytec社製UVモニター(「UV-Pad」)で測定、波長:UV-A(315-400nm))で照射することで塗膜を光硬化し、クリーンオーブンDT-610(ヤマト科学(株)製)200℃で60分間加熱焼成することで、銅電極上の塗膜の厚さが約10μmのIMG評価基板1~7を得た。
【0172】
<密着性評価基板の作製>
得られた光硬化性組成物1~7を、フレキシブル銅張積層板(コネクテックジャパン(株)製、以後銅基板と呼ぶ)上に塗布し、回転数1,000~3,000rpmでスピンコートし、塗膜を得た。得られた銅基板に、UV-LEDランプ「LSS-08aAUV」(シーシーエス社製、ランプ波長:365nm)を用いて、波長365nmの紫外線を2,000mJ/cmのUV露光量(Opsytec社製UVモニター(「UV-Pad」)で測定、波長:UV-A(315-400nm))で照射することで塗膜を光硬化し、クリーンオーブンDT-610(ヤマト科学(株)製)200℃で60分間加熱焼成することで、塗膜の厚さが約10μmの密着性評価基板1~7を得た。
【0173】
<膜応力評価基板の作製>
得られた光硬化性組成物1~7を、4cm×4cmのガラス(EagleXG)上に塗布し、回転数1,000~3,000rpmでスピンコートし、塗膜を得た。得られた基板に、UV-LEDランプ「LSS-08aAUV」(シーシーエス社製、ランプ波長:365nm)を用いて、波長365nmの紫外線を2,000mJ/cmのUV露光量(Opsytec社製UVモニター(「UV-Pad」)で測定、波長:UV-A(315-400nm))で照射することで塗膜を光硬化し、クリーンオーブンDT-610(ヤマト科学(株)製)200℃で60分間加熱焼成することで、硬化膜の厚さが約10μmの膜応力評価基板1~7を得た。
【0174】
<硬化基板の評価>
上記で得られたIMG評価基板1~7、密着性評価基板1~7および膜応力評価基板1~7を用いて、それぞれイオンマイグレーション耐性、銅基板対する密着性および膜応力を評価した。
各試験方法および評価基準は以下のとおりであり、評価結果を表2に示す。
【0175】
(イオンマイグレーション耐性試験)
上記で得られたIMG評価基板1~7について、イオンマイグレーション耐性を以下の方法により評価した。
得られたMG評価基板とイオンマイグレーションテスターMIG-87(IMV(株)製)を配線にて接続し、HASTチャンバーEHS-411M(エスペック(株)製)内に設置した後、130℃×85%の環境下、30Vの直流電圧を100時間印加した。
【0176】
(評価基準)
IMG評価基板の各4個について上記試験を行い、100時間の印加終了時、抵抗値が1×10以上を示した試料をパスした試料とした。試験をパスした試料の個数によりイオンマイグレーション耐性を評価した。
X/4:IMG試料4個のうち、試験をパスしたものがX個
【0177】
(密着性:碁盤目剥離試験)
密着性評価基板上に得られた硬化物を、1mm×1mmの正方形状(碁盤目)状にクロスカットして、切り目に囲まれた100個の領域を作製した。その領域の上から粘着性のある剥離用のテープを貼り付けて、剥がした時の剥がれた領域の数により評価を行った。その結果を下記評価基準にのっとり評価した。剥離用のテープは、Scotch#610(製品名、スリーエム社製)、402N/100mm(縦方向)を使用した。
(評価基準)
◎:100個の領域のうち1個も剥がれない
〇:欠損エリア(剥がれた領域)が5%以下
△:欠損エリアが5%を超えて50%以下
×:欠損エリアが51%を超える
【0178】
(膜応力の測定)
膜応力評価基板の塗膜形成前のガラスおよび硬化膜形成後の基板表面について、段差計(P-16+;ケーエルエー・テンコール(株)製)を用いて、基板の対角線上(4cm)のプロファイルを計測した。得られたプロファイルより、硬化膜形成前後の曲率半径を算出し、下記式(X1)より膜応力を、下記式(X2)からガラスの反り変化量を求めた。
【0179】
【0180】
(式中のσは膜応力(MPa)、Eはガラス基板の弾性率、tsは硬化膜の膜厚、tは硬化膜の膜厚、νはガラスのポアソン比、Rは硬化膜形成後基板の曲率半径、Rはガラス基板の曲率半径を表す。)
【0181】
(反り変化量)=(塗布後基板の反り量)-(塗布前基板の反り量) 式(X2)
【0182】
(インクの吐出性試験)
各実施例および比較例で得られた光硬化性組成物1~7の吐出性を評価した。光硬化性組成物1~7をインクジェットカートリッジDMC-11610(FUJIFILM社製)に注入し、これをインクジェット装置(FUJIFILM社のDMP-2831)に装着し、吐出電圧(ピエゾ電圧)17~25V、ヘッド温度32~70℃、駆動周波数5kHz、塗布回数1回の吐出条件で評価基準は以下のとおりである。評価結果を表2に示す。
〇:連続した12以上のノズルの吐出が良好
△:連続した4~11のノズルの吐出が良好
×:連続した4以下のノズルの吐出が良好
【0183】
(光硬化性試験)
得られた光硬化性組成物1~7を、4cm×4cmのガラス(EagleXG)上に塗布し、回転数1,000~3,000rpmでスピンコートし、光硬化性試験用塗膜1~7を作製した。得られた塗膜に、UV-LEDランプ「LSS-08aAUV」(シーシーエス社製、ランプ波長:365nm)を用いて、波長365nmの紫外線を2,000mJ/cmのUV露光量(Opsytec社製UVモニター(「UV-Pad」)で測定、波長:UV-A(315-400nm))で照射した。塗膜表面を指で接触し、タック性の有無を評価した。
(評価基準)
◎:タック性なし
〇:タック性あり
×:液状(未硬化)
【0184】
【表1】
【0185】
【表2】
【0186】
表1、2に示すように、化合物(D)を含有する組成物とすることにより、硬化物のイオンマイグレーション耐性(以下、適宜「IMG耐性」という)および密着性を維持したまま、膜応力、反り量が低減した。この結果から、ダイマー酸の構造により硬化収縮による応力を緩和させ、硬化膜の膜応力と反り量を低減させたと考えられる。
【0187】
また、ダイマー酸から誘導された構造単位を有し末端に(メタ)アクリロイルを有する化合物(D)の構造により、光硬化性組成物の粘度を調整することが可能であり、例えば、ウレタン構造を有する化合物(D)を含む実施例1や、イミド骨格を有する化合物(D)を含む実施例では、組成物の粘度を低く抑えることが可能で、インクジェットインクとして好適に使用することができる。一方、ウレア構造を有する化合物(D)を含む実施例5は、粘度を高くすることが可能であり、アプリケーターやジェットディスペンサーを使用した塗布方法を想定したインクとして好適に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0188】
本発明の光硬化性組成物は、シリコン基板、ガラス基板、ポリイミド基板やこれらの基板上に金属配線、電極などの導体が形成された基板との密着性およびイオンマイグレーション耐性および低反り性に優れる硬化物の形成に利用することができる。