IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社荏原製作所の特許一覧

特開2022-137844水運搬方法、水運搬装置及び水運搬システム
<>
  • 特開-水運搬方法、水運搬装置及び水運搬システム 図1
  • 特開-水運搬方法、水運搬装置及び水運搬システム 図2
  • 特開-水運搬方法、水運搬装置及び水運搬システム 図3
  • 特開-水運搬方法、水運搬装置及び水運搬システム 図4
  • 特開-水運搬方法、水運搬装置及び水運搬システム 図5
  • 特開-水運搬方法、水運搬装置及び水運搬システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137844
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】水運搬方法、水運搬装置及び水運搬システム
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/46 20060101AFI20220914BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
B64G1/46
H05H1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037530
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】能見 基彦
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA00
2G084AA22
2G084BB11
2G084CC23
2G084CC32
2G084DD01
2G084DD12
2G084FF02
2G084FF12
2G084FF27
2G084GG07
2G084GG14
2G084GG18
(57)【要約】
【課題】低コストで水を地球周回軌道に運搬する水運搬方法、水運搬装置及び水運搬システムを提供することを目的とする。
【解決手段】水運搬方法は、水蒸気を水プラズマにするプラズマ化工程P1と、水プラズマを成層圏Sから地球周回軌道ORBに向けて放出することで水プラズマを氷結させた氷粒の群である氷粒ビームBを形成する氷粒ビーム形成工程P2と、地球周回軌道ORB上において、氷粒ビームBを回収する氷粒回収工程P3と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気を水プラズマにするプラズマ化工程と、
前記水プラズマを成層圏から地球周回軌道に向けて放出することで前記水プラズマを氷結させた氷粒の群である氷粒ビームを形成する氷粒ビーム形成工程と、
地球周回軌道上において、前記氷粒ビームを回収する氷粒回収工程と、を含む
水運搬方法。
【請求項2】
前記氷粒ビーム形成工程は、前記成層圏における空気中の水蒸気を抽出する水蒸気抽出工程を含む
請求項1に記載の水運搬方法。
【請求項3】
水蒸気を水プラズマにするプラズマ化部と、
前記水蒸気の流路を有し、前記水プラズマを放出するノズルを有する筒状のケーシングと、
前記水プラズマを電磁気的な作用により加速させるプラズマ加速部と、を備える
水運搬装置。
【請求項4】
前記ノズルは、ラバールノズルである
請求項3に記載の水運搬装置。
【請求項5】
前記プラズマ化部は、前記流路に設けられる陰極と、陽極となる前記ノズルとの間に、アークを発生させる電源を備える
請求項3又は請求項4に記載の水運搬装置。
【請求項6】
飛行体を備える
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の水運搬装置。
【請求項7】
請求項3から請求項6までのいずれか1項に記載の前記水運搬装置と、
前記水運搬装置から放出された前記水プラズマが氷結した氷粒ビームを回収する回収部を有する宇宙飛行体と、
を備える水運搬システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水運搬方法、水運搬装置及び水運搬システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水は、地球上で容易に採取できる。水は、水素と酸素に分解して、燃料電池の燃料として利用できる。また、水は、水素と酸素に分解して、液体燃料ロケットエンジンの推進剤又は燃焼剤として利用できる。さらに、水は、人間の飲料用、生活用等に不可欠である。このように、水は、採取が容易であり、人間にとって不可欠である上、多様な用途があるので、地球周回軌道上の宇宙開発においても利用される。
従来、水を地球周回軌道に運搬するための方法として、水を収めた水タンクを、地上からロケットで打ち上げられるシャトル等により運搬する方法があった(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-186500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水タンクをロケットで打ち上げられるシャトル等で運搬する方法は、少量の水の運搬に対して非常に多くのコストを要する。よって、低コストで水を地球周回軌道に運搬する方法が望まれる。
【0005】
本発明は、低コストで水を地球周回軌道に運搬する水運搬方法、水運搬装置及び水運搬システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
(1)本発明に係る一態様の水運搬方法は、水蒸気を水プラズマにするプラズマ化工程と、前記水プラズマを成層圏から地球周回軌道に向けて放出することで前記水プラズマを氷結させた氷粒の群である氷粒ビームを形成する氷粒ビーム形成工程と、地球周回軌道上において、前記氷粒ビームを回収する氷粒回収工程と、を含む。
(2)上記(1)において、前記氷粒ビーム形成工程は、前記成層圏における空気中の水蒸気を抽出する水蒸気抽出工程を含んでよい。
(3)本発明に係る一態様の水運搬装置は、水蒸気を水プラズマにするプラズマ化部と、前記水蒸気の流路を有し、前記水プラズマを放出するノズルを有する筒状のケーシングと、前記水プラズマを電磁気的な作用により加速させるプラズマ加速部と、を備える。
(4)上記(3)において、前記ノズルは、ラバールノズルであってよい。
(5)上記(3)又は(4)において、前記プラズマ化部は、前記流路に設けられる陰極と、陽極となる前記ノズルとの間に、アークを発生させる電源を備えてよい。
(6)上記(3)から(5)のいずれかにおいて、飛行体を備えてよい。
(7)本発明に係る一態様の水運搬システムは、上記(3)から(6)のいずれかの前記水運搬装置と、前記水運搬装置から放出された前記水プラズマが氷結した氷粒ビームを回収する回収部を有する宇宙飛行体と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低コストで水を地球周回軌道に運搬する水運搬方法、水運搬装置及び水運搬システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る水運搬システム及び水運搬方法の説明図である。
図2】水運搬装置の説明図である。
図3】宇宙飛行体の説明図である。
図4】宇宙飛行体と宇宙水タンクとのドッキング状況を示す説明図である。
図5】第2実施形態に係る水運搬システム及び水運搬方法の説明図である。
図6】第3実施形態に係る水運搬システム及び水運搬方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、第1実施形態に係る水運搬システム100及び水運搬方法を説明する。図1は、第1実施形態に係る水運搬システム100及び水運搬方法の説明図である。図2は、水運搬装置10の説明図である。図3は、宇宙飛行体20の説明図である。
【0010】
(水運搬方法)
図1に示すように、第1実施形態に係る水運搬方法は、水蒸気VAPを水プラズマWPにするプラズマ化工程P1と、水プラズマWPを成層圏Sから地球周回軌道ORBに向けて放出することで水プラズマWPを氷結させた氷粒の群である氷粒ビームBを形成する氷粒ビーム形成工程P2と、地球周回軌道ORB上において、氷粒ビームBを回収する氷粒回収工程P3と、を含んでいる。
第1実施形態に係る水運搬方法は、以降に示す水運搬システム100の使用に適している。
【0011】
次に、第1実施形態に係る水運搬方法の工程を順に個別に説明する。
まず、適宜、地表Eにおいて、水運搬装置10に、地球周回軌道ORBまで運搬する水を搭載する。なお、空気中の水蒸気VAPを直接的に摂取してもよい。なお、空気中から直接的に摂取した水蒸気VAPを水凝集装置(不図示)によって凝縮して貯めてもよい。
そして、図1に示すように、地表Eから成層圏Sにおける30kmから50km程度の高い高度まで水運搬装置10を上昇させる。この際、例えば、気球等の飛行体10Fによって上昇させる。
【0012】
(プラズマ化工程P1)
次に、図2に示すように、水運搬装置10によって、水蒸気VAPをプラズマ化する。具体的には、ケーシング12の流路12Cに水蒸気VAPを供給する。そして、電源113により高電圧をかけ、陽極112となるノズル12Nと陰極111との間にアークARCを生じさせる。すると、流路12Cを流れる水蒸気VAPの水分子は、陽イオンと電子とに電離してプラズマ化し、水プラズマWPとなってノズル12Nから放出される。この際、水プラズマWPは、流路断面積が狭くなる絞り部分を有するノズル12Nを経るので、高速で放出される。
【0013】
(氷粒ビーム形成工程P2)
続いて、水プラズマWPを成層圏Sから地球周回軌道ORBに向けて放出する。すると、成層圏Sにおける高い高度では、気温が低いので、放出された水プラズマWPは、氷結し、氷粒ビームBとなる。すなわち、水プラズマWPを成層圏Sから地球周回軌道ORBに向けて放出すると、水プラズマWPを氷結させた氷粒の群である氷粒ビームBが形成される。また、この際、成層圏Sにおける高い高度では、空気抵抗がほとんどないので、水運搬装置10から放出された直後の氷粒ビームBの速度を維持できる。したがって、氷粒ビームBを第1宇宙速度以上で放出すれば、地球周回軌道ORBに到達させることができる。
ここで、宇宙飛行体20の地球周回軌道ORBに沿うように、宇宙飛行体20と氷粒ビームBとの相対速度がほとんどゼロになるように、氷粒ビームBを放出する。
【0014】
ここで、氷粒ビーム形成工程P2は、成層圏Sにおける空気中の水蒸気VAPを抽出する水蒸気抽出工程P21を含んでもよい。これにより、水の補給を受けるために地表Eに水運搬装置10を帰還させる回数を減らすことができる。よって、低コストで水を運搬できる。
【0015】
(氷粒回収工程P3)
そして、水運搬装置10から放出されて地球周回軌道ORBに到達した氷粒ビームBを、宇宙飛行体20によって回収する。
詳細には、図3(A)に示すように、宇宙飛行体20の地球周回軌道ORB上において、例えば、数km/hの相対速度で、宇宙飛行体20を氷粒ビームBに近づける。
そして、図3(B)に示すように、宇宙飛行体20の回収部21を展開して回収面21aを氷粒ビームBに向けた状態で、宇宙飛行体20を移動する。すると、氷粒ビームBは、回収面21aに衝突し、衝突した氷粒ビームBは、向きを変えて、宇宙飛行体20の中央に集まる。このようにして、地球周回軌道ORB上の氷粒ビームBを宇宙飛行体20によって回収する。
なお、宇宙飛行体20によって回収した氷粒ビームBを、適宜、図4に示すように、地球周回軌道ORB上の宇宙水タンク22に移送する。
【0016】
このように、第1実施形態に係る水運搬方法又は水運搬システム100によれば、水蒸気VAPを水プラズマWPにするので、水を、成層圏Sから地球周回軌道ORBに向けて、高速で放出できる。また、第1実施形態に係る水運搬方法又は水運搬システム100によれば、水プラズマWPを、気温が低い成層圏S(例えば、高度30kmから50km)で放出するので、水プラズマWPを氷結させて、氷粒の群である氷粒ビームBを形成できる。また、第1実施形態に係る水運搬方法又は水運搬システム100によれば、地球周回軌道ORB上において、氷粒ビームBを回収するので、地球周回軌道ORB上において水を貯えることができる。
よって、第1実施形態に係る水運搬方法又は水運搬システム100は、地表Eから地球周回軌道ORBまでシャトル等で水を収めた水タンクを直接的に運搬する方法に比べて、低コストで水を運搬できる。
【0017】
(水運搬システム100)
水運搬システム100は、上述の第1実施形態に係る水運搬方法の実施に直接使用することに適している。
具体的には、図1に示すように、水運搬システム100は、水運搬装置10と、水運搬装置10から放出された水プラズマWPが氷結した氷粒ビームBを回収する回収部21を有する宇宙飛行体20と、を備えている。これにより、地表Eから地球周回軌道ORBまで水を収めた水タンクを直接的に運搬するシャトル等に比べて、低コストで水を地球周回軌道ORBまで運搬できる。
【0018】
(水運搬装置10)
図2は、水運搬装置10の説明図である。なお、図2は、水運搬装置10の端部における断面を模式的に示しており、他部の図示を省略している。
図2に示すように、水運搬装置10は、水蒸気VAPを水プラズマWPにするプラズマ化部11と、水蒸気VAPの流路12Cを有し、水プラズマWPを放出するノズル12Nを有する筒状のケーシング12と、水プラズマWPを電磁気的な作用により加速させるプラズマ加速部13を備えている。
【0019】
水運搬装置10は、水蒸気VAPを水プラズマWPにするプラズマ化部11を備えている。これにより、水を原料として水プラズマWPを生じさせることができ、第1宇宙速度に相当するような高速で放出できる。よって、水を成層圏Sから地球周回軌道ORB上に運搬できる。
【0020】
詳細には、プラズマ化部11は、例えば、流路12Cに設けられる陰極111と、陽極112となるノズル12Nとの間に、アークARCを発生させる電源113を備えている。これにより、ノズル12Nを陽極112として利用して、ケーシング12の流路12CにアークARCを発生させることができる。よって、流路12Cを流れる水蒸気VAPを効率的に水プラズマWPに変化させることができる。
【0021】
水運搬装置10は、水蒸気VAPの流路12Cを有し、水プラズマWPを放出するノズル12Nを有する筒状のケーシング12を備えている。
【0022】
ケーシング12のノズル12Nは、ラバールノズルであることが好ましい。これにより、ノズル12Nを通る水蒸気VAPの流速を加速させることができる。
【0023】
水運搬装置10は、飛行体10Fを備えてよい。飛行体10Fは、少なくとも高度30kmから50km程度までの成層圏Sを飛行できる浮力又は揚力を発生できるものが好ましい。飛行体10Fは、例えば、気球であってよい。飛行体10Fは、水運搬装置10のケーシング12に取り付けられていてよい。なお、飛行体10Fの動力は、飛行体10Fに搭載された太陽電池又は原子炉から供給されるものであってよく、地表Eからレーザ照射により供給されるものであってもよい。このように、水運搬装置10は、飛行体10Fを備えているので、水運搬装置10を、例えば、30kmから50km程度の高度まで上昇させることができる。これにより、空気抵抗等の影響をあまり受けることなく、水運搬装置10から地球周回軌道ORBに向けて水プラズマWPを放出できる。また、水運搬装置10は、飛行体10Fを備えているので、水運搬装置10から90kmから100km程度の地球周回軌道ORBまでの距離をできるだけ短くできるので、水運搬装置10から放出する水プラズマWPの拡散を抑制でき、宇宙飛行体20によって効率的に収集させることができる。
なお、水運搬装置10は、水プラズマWPを放出するエネルギーの反作用によって飛行体10F又は宇宙飛行体20を推進させる推進装置として利用してもよい。
【0024】
水運搬装置10は、水プラズマWPを電磁気的な作用により加速させるプラズマ加速部13を備えている。
プラズマ加速部13は、例えば、電磁石又は超電導磁石であってよい。プラズマ加速部13は、例えば、ノズル12Nを囲むように配置される。これにより、ノズル12Nの流路12Cに磁場を発生させて、ノズル12Nを通過する水プラズマWPにローレンツ力を作用させることができる。よって、水プラズマWPを加速させることができる。
【0025】
なお、プラズマ加速部13は、磁場を可変させて、水プラズマWPが放出される方向が、放射的にならず、平行になるように制御する制御部を有していてもよい。これにより、氷粒ビームBを直線状にでき、空間的に拡散させずに集約できるので、宇宙飛行体20によって回収する効率を向上できる。
【0026】
なお、プラズマ加速部13は、磁場を可変させて、水プラズマWPの流れが、あたかもラバールノズルを通過する流れと同じになるように制御する制御部を有していてもよい。これにより、ラバールノズルのように流路12Cを狭くしなくても、水運搬装置10から放出される水プラズマWPの速度を高めることができる。
【0027】
水運搬装置10は、水を水蒸気VAPに変えるボイラー14を備えていてもよい。
ボイラー14は、水を水蒸気VAPに変え、ケーシング12の流路12Cに供給する。なお、ボイラー14は、例えば、水にパルスレーザを照射することにより蒸発させる高出力の発振装置であってよい。このように、ボイラー14で水を蒸発させることにより、水蒸気圧を発生させることができ、流路12Cを通過する水蒸気VAPの速度及びノズル12Nから放出する水プラズマWPの速度を上げることができる。
【0028】
(宇宙飛行体20)
図3は、宇宙飛行体20の説明図ある。図3(A)は、地球周回軌道ORB上の氷粒ビームBと宇宙飛行体20とが、相対的に近づいている状況を示している。図3(B)は、地球周回軌道ORBにおいて宇宙飛行体20が氷粒ビームBを収集している状況を示している。
図3に示すように、宇宙飛行体20は、水運搬装置10から放出された水プラズマWPが氷結した氷粒ビームBを回収する回収部21を有している。
詳細には、回収部21は、氷粒ビームBを衝突させて中央に集める回収面21aを有している。回収部21は、例えば、傘のような放物曲面を有する構造体、球冠状面を有する構造体、又は、円錐面状の面を有する構造体であってよい。これにより、水運搬装置10から放出され、地球周回軌道ORB上に到達した氷粒ビームBを回収できる。
【0029】
図4は、宇宙飛行体20と宇宙水タンク22とのドッキング状況を示す説明図である。
宇宙飛行体20は、回収部21で回収した氷粒ビームBを貯留する宇宙水タンク22を備えていてもよい。
または、図4に示すように、地球周回軌道ORB上において、宇宙水タンク22と宇宙飛行体20を独立させて飛行させておき、氷粒ビームBを回収した宇宙飛行体20と宇宙水タンク22とをドッキングし、宇宙飛行体20に貯留された氷粒ビームB(水)を、宇宙水タンク22に移送してもよい。これにより、宇宙飛行体20を、氷粒ビームBの回収として、機動的に活用できる。
【0030】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の水運搬方法及び水運搬システム200について説明する。なお、以下、第1実施形態と共通する特徴については説明が省略される場合がある。なお、以下、第1実施形態と同様の構成については第1実施形態と同じ記号又は符号が付される場合がある。
【0031】
図5は、第2実施形態に係る水運搬システム200及び水運搬方法の説明図である。
図5に示すように、第2実施形態に係る水運搬システム200は、水運搬装置210と、宇宙飛行体20と、を備えている。
水運搬装置210は、飛行体210Fと、ロケット211を備えている。
このような水運搬システム200を用いて、第2実施形態に係る水運搬方法を次のように実施できる。
【0032】
(B1)まず、飛行体210Fには、氷粒ビームBを形成する水プラズマWPの原料となる水を積載しておく。
【0033】
(B2)そして、地表Eからロケット211の推力により、水運搬装置210を備えた飛行体210Fを、高度30kmから100km程度の高い高度まで打ち上がるように、弾道飛行させる。
【0034】
(B3)飛行体210Fが高い高度に到達したら、地球周回軌道ORB上の宇宙飛行体20に向けて、水運搬装置210から氷粒ビームBを放出する。
宇宙飛行体20は、氷粒ビームBを回収部21によって回収する。
【0035】
(B4)氷粒ビームBの放出を終えると、飛行体210Fは、重力により弾道飛行を継続し、地表Eに帰還する。
そして、(B1)から(B4)までの工程を繰り返す。このようにして、水を地表Eから地球周回軌道ORB上まで、順次、運搬する。
このように、ロケット211を備えた水運搬装置210によっても、地球周回軌道ORB上に水を運搬することができる。
【0036】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態の水運搬方法及び水運搬システム300について説明する。なお、以下、第1実施形態と共通する特徴については説明が省略される場合がある。なお、以下、第1実施形態と同様の構成については第1実施形態と同じ記号又は符号が付される場合がある。
【0037】
図6は、第3実施形態に係る水運搬システム300及び水運搬方法の説明図である。
図6に示すように、第3実施形態に係る水運搬システム300は、水運搬装置310を備えた第1飛行体311Fと、水タンク340を備えた第2飛行体312Fと、宇宙飛行体20と、を備えている。
このような水運搬システム300を用いて、第3実施形態に係る水運搬方法を次のように実施できる。
【0038】
(C1)水運搬装置310を備えた第1飛行体311Fを、成層圏Sにおける比較的低い低高度SL(例えば、10kmから30km程度)から成層圏Sにおける比較的高い高高度SH(例えば、20kmから50km程度)まで上昇させ、高度を維持させる。
【0039】
(C2)第1飛行体311Fには、氷粒ビームBを形成する水プラズマWPの原料となる水を水タンク340に積載しておく。なお、第1飛行体311Fは、空気中の水蒸気VAPを凝集する水凝集装置(不図示)を備えていてもよい。
【0040】
(C3)続いて、気球の浮力等により、水タンク340を備えた第2飛行体312Fを、地表Eから低高度SLまで上昇させる。
【0041】
(C4)第2飛行体312Fを低高度SLに到達させたら、低高度SLまで、第1飛行体311Fを下降させて、第2飛行体312Fに接近させる。
【0042】
(C5)第1飛行体311Fと第2飛行体312Fとが接近した状態で、空中で、両者の間をホース350で連結する。そして、第2飛行体312Fの水タンク340に積載された水を、ホース350を介して、第1飛行体311Fに移送する。
【0043】
(C6)移送を終えたら、第1飛行体311Fを高高度SHまで上昇させる。なお、第2飛行体312Fを、低高度SLで飛行を続けさせて、水凝集装置で空気中の水蒸気VAPを凝集させ、随時、凝集した水を水タンク340に貯めさせてもよい。なお、第2飛行体312Fを、地表Eに帰還させ、水を補給して、再び低高度SLに戻るようにしてもよい。
【0044】
(C7)第1飛行体311Fが高高度SHに到達したら、地球周回軌道ORB上の宇宙飛行体20に向けて、水運搬装置310から氷粒ビームBを放出する。
宇宙飛行体20は、氷粒ビームBを回収部21によって回収する。
【0045】
(C8)氷粒ビームBの放出を終えると、第1飛行体311Fは、高高度SHと低高度SLとの間の高度を維持するか、低高度SLまで降下する。そして、第1飛行体311Fは、第2飛行体312Fからの次の水の補給まで待機する。
そして、(C1)から(C8)までの工程を繰り返す。このようにして、水を地表Eから地球周回軌道ORB上まで、順次、運搬する。
【0046】
このように、成層圏Sを飛行して地球周回軌道ORBまで水を運搬する飛行体を、第1飛行体311Fと第2飛行体312Fに分けた。そして、第2飛行体312Fにより、地表Eから成層圏Sにおける低高度SLまで水を運搬し、第1飛行体311Fにより成層圏Sにおける高高度SHから地球周回軌道ORBまで氷粒ビームBとなる水プラズマWPを放出して水を運搬し、役割を分担させた。これにより、第2飛行体312Fを、地表Eから低高度SLまでの間を往復させて水の補給をさせることができるので、水タンク340の容量を小さくでき、高い高度に到達させるための性能を要しないため、低コストにできる。また、第1飛行体311Fを、氷粒ビームBとなる水プラズマWPを放出する高高度SHから第2飛行体312Fが到達する低高度SLまでの間を往復させて、地表Eに着陸することなく飛行している状態を維持したまま、水の補給と水プラズマWPの放出を繰り返しさせることができる。よって、第3実施形態に係る水運搬方法又は水運搬システム300によれば、低コストで、地表Eから地球周回軌道ORB上に水を運搬することができる。
【0047】
以上、図面を参照して第1実施形態から第3実施形態について説明したが、本発明は上述のものに限られない。実施形態として挙げられた複数の特徴を、自由に組み合わせてもよい。
【0048】
本実施形態に係る水運搬方法は、水蒸気VAPを水プラズマWPにするプラズマ化工程P1と、水プラズマWPを成層圏Sから地球周回軌道ORBに向けて放出することで水プラズマWPを氷結させた氷粒の群である氷粒ビームBを形成する氷粒ビーム形成工程P2と、地球周回軌道ORB上において、氷粒ビームBを回収する氷粒回収工程P3と、を含んでいる。これにより、地表Eから地球周回軌道ORBまでシャトル等で水を収めた水タンクを直接的に運搬する方法に比べて、低コストで水を運搬できる。よって、低コストで水を地球周回軌道ORBに運搬する水運搬方法を提供できる。
【0049】
本実施形態に係る水運搬装置10,210,310は、水蒸気VAPを水プラズマWPにするプラズマ化部11と、水蒸気VAPの流路12Cを有し、水プラズマWPを放出するノズル12Nを有する筒状のケーシング12と、水プラズマWPを電磁気的な作用により加速させるプラズマ加速部13と、を備えている。これにより、水を水プラズマWPに変えて、氷粒ビームBとして、成層圏Sから地球周回軌道ORBまで放出できる。したがって、地表Eから地球周回軌道ORBまでシャトル等で水を収めた水タンクを直接的に運搬する方法に比べて、低コストで水を運搬できる。よって、低コストで水を地球周回軌道ORBに運搬する水運搬装置を提供できる。
【0050】
本実施形態に係る水運搬システム100,200,300は、水運搬装置10,210,310と、水運搬装置10,210,310から放出された水プラズマWPが氷結した氷粒ビームBを回収する回収部21を有する宇宙飛行体20と、を備えている。これにより、地表Eから地球周回軌道ORBまでシャトル等で水を収めた水タンクを直接的に運搬する方法に比べて、低コストで水を運搬できる。よって、低コストで水を地球周回軌道ORBに運搬する水運搬システムを提供できる。
【符号の説明】
【0051】
100,200,300 水運搬システム
10,210,310 水運搬装置
10F,210F 飛行体
311F 第1飛行体
312F 第2飛行体
11 プラズマ化部
12 ケーシング
12C 流路
12N ノズル
13 プラズマ加速部
14 ボイラー
111 陰極
112 陽極
113 電源
20 宇宙飛行体
21 回収部
21a 回収面
22 宇宙水タンク
211 ロケット
340 水タンク
350 ホース
ARC アーク
B 氷粒ビーム
E 地表
ORB 地球周回軌道
P1 プラズマ化工程
P2 氷粒ビーム形成工程
P3 氷粒回収工程
S 成層圏
SH 高高度
SL 低高度
VAP 水蒸気
WP 水プラズマ
図1
図2
図3
図4
図5
図6