(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022137901
(43)【公開日】2022-09-22
(54)【発明の名称】高周波用給電線
(51)【国際特許分類】
H01B 11/00 20060101AFI20220914BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20220914BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
H01B11/00 J
H01B7/18 E
H01B7/00 310
H01B7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037618
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】石川 弘
【テーマコード(参考)】
5G309
5G313
【Fターム(参考)】
5G309KA02
5G309LA18
5G313AB04
5G313AC04
5G313AD08
5G313AE02
5G313AE04
(57)【要約】
【課題】端末加工を容易に行える高周波用給電線を提供する。
【解決手段】給電用の複数の導体と、絶縁体からなる長尺状の部材であって、複数の導体のそれぞれを互いに離隔させた状態で収容する複数の溝部が外周に設けられた絶縁介在物と、絶縁介在物の外周を囲うように構成されたシースと、を備え、複数の導体は、それぞれの外周が絶縁被覆されていない状態で溝部内に収容されている、高周波用給電線が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電用の複数の導体と、
絶縁体からなる長尺状の部材であって、前記複数の導体のそれぞれを互いに離隔させた状態で収容する複数の溝部が外周に設けられた絶縁介在物と、
前記絶縁介在物の外周を囲うように構成されたシースと、を備え、
前記複数の導体は、それぞれの外周が絶縁被覆されていない状態で前記溝部内に収容されている、
高周波用給電線。
【請求項2】
前記絶縁介在物は、前記複数の導体を、前記高周波用給電線の長手方向に垂直な断面のうち外周側の位置に配置するように構成されている、
請求項1に記載の高周波用給電線。
【請求項3】
前記絶縁介在物は、前記絶縁介在物の中心軸に沿って延びる中空部を有する、
請求項1または2に記載の高周波用給電線。
【請求項4】
前記中空部内には、前記導体が配置されていない、
請求項3に記載の高周波用給電線。
【請求項5】
前記中空部内には、前記導体とは異なる信号伝送用の信号線が配置されている、
請求項3または4に記載の高周波用給電線。
【請求項6】
前記絶縁介在物の外周を構成し、隣接する前記溝部間を離隔させる隔壁の外周端が、前記シースの内壁に到達している、
請求項1~5のいずれか1項に記載の高周波用給電線。
【請求項7】
前記隔壁の外周端と、前記シースの内壁と、が接着されている、
請求項6に記載の高周波用給電線。
【請求項8】
前記隔壁の外周端と、前記シースの内壁と、が非接着となっている、
請求項6に記載の高周波用給電線。
【請求項9】
前記溝部内に収容された前記導体と、前記シースの内壁と、の間には、空隙が存在する、
請求項1~8のいずれか1項に記載の高周波用給電線。
【請求項10】
前記導体の半径が、使用周波数帯における表皮厚さより小さい、
請求項1~9のいずれか1項に記載の高周波用給電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波用給電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の導電線と、絶縁物と、を有し、中心に位置する一の導電線の周囲に他の導電線を配置する高周波用給電線が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の高周波用給電線では、端末加工の際に、複数の導電線の1本1本について導電線の周囲を覆う被覆を除去する処理を行う必要があり、端末加工が煩雑であった。
そこで、本発明は、端末加工を容易に行える高周波用給電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、
給電用の複数の導体と、
絶縁体からなる長尺状の部材であって、前記複数の導体のそれぞれを互いに離隔させた状態で収容する複数の溝部が外周に設けられた絶縁介在物と、
前記絶縁介在物の外周を囲うように構成されたシースと、を備え、
前記複数の導体は、それぞれの外周が絶縁被覆されていない状態で前記溝部内に収容されている、
高周波用給電線が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、端末加工を容易に行える高周波用給電線を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態にかかる高周波用給電線10を長手方向に垂直な方向に沿った面で切断することで得られる断面を模式的に示す図であって、導体1が、単一の金属線により構成されている場合を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態にかかる高周波用給電線10を長手方向に垂直な方向に沿った面で切断することで得られる断面を模式的に示す図であって、導体1が、複数の撚り線により構成されている場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本発明の一実施形態>
(1)高周波用給電線10の構成例
本発明の一実施形態にかかる線状部材としての高周波用給電線10の構成例について説明する。
図1、
図2に示すように、本実施形態にかかる高周波用給電線10は、給電用の複数の導体1と、絶縁介在物2と、シース3と、を備えている。
【0009】
より具体的には、高周波用給電線10は、絶縁介在物2に設けられた複数の溝部2a内に、導体1を1本ずつ収容し、絶縁介在物2の外周をシース3で囲うように構成されている。
【0010】
絶縁介在物2は、長尺状の絶縁部材であり、高周波用給電線10の長手方向に沿うように設けられている。
【0011】
絶縁介在物2の外周(外周面)には、高周波用給電線10の長手方向に垂直な断面視において、略凹形状の溝部2aが、複数隣接して形成されている。溝部2aは、導体1を収容する部位であり、複数の導体1を1本ずつ収容するように構成されている。具体的には、溝部2aは、隣接する溝部2a間を離隔させる隔壁2bを有し、高周波用給電線10における周方向の寸法(隣接する隔壁2b間の寸法)の少なくとも一部が導体1の直径よりも小さく構成されている。本実施形態では、溝部2aは、周方向の寸法(隣接する隔壁2b間の寸法)が高周波用給電線10における径方向の中心に向かって小さくなるテーパ状となるように構成されている。なお、溝部2aは、隔壁2bの一部に突起を形成することで、周方向の寸法(隣接する隔壁2b間の寸法)の少なくとも一部が導体1の直径よりも小さく構成されてもよい。溝部2aは、導体1の直径よりも小さい隔壁2bと隔壁2bとの間に圧入された導体1を挟んで保持するように構成されている。導体1は、隔壁2bにより保持されることで、配置が崩れにくくなるので、相対的な配置の変化、および表皮効果と近接効果によっておきる電気抵抗の変動を小さくすることができる。隔壁2bの高さ(溝部2aの深さ)は、導体1の直径よりも大きく構成されていることが好ましい。複数の溝部2aは、それぞれ、高周波用給電線10の長手方向に沿って延在している。このように、絶縁介在物2は、複数の導体のそれぞれを互いに離隔させた状態で同方向となるように収容可能に構成されている。
【0012】
溝部2aの数は、特に限定されるものではなく、収容する導体1の数に応じて形成されることが好ましい。例えば、8本の導体1を収容する場合には、8個の溝部2aが形成されることが好ましい。
【0013】
溝部2aは、複数の導体1を、それぞれ、高周波用給電線10の長手方向に垂直な断面のうち外周側の位置に配置するように構成されている。本実施形態では、溝部2aは、複数の導体1を、それぞれ、シース3の近傍であって、この断面の外周方向に沿って所定の間隔で互いに離隔した位置に配置するように構成されている。ここで、「外周側の位置」とは、高周波用給電線10の長手方向に垂直な断面のうち、高周波用給電線10の半分の直径よりも外側の位置のことである。ここで、「所定の間隔」とは、例えば、均等な間隔のことをいう。
【0014】
絶縁介在物2の外周を構成し、隔壁2bの末端である外周端2cは、シース3の内壁3aに到達するように構成されている。ここで、「シース3の内壁3aに到達する」とは、外周端2cとシース3とが接触している場合だけでなく、わずかに離れている場合、例えば、隔壁2bの高さ(溝部2aの深さ)の10%程度の大きさを保って離れている場合も含む。また、「外周端2cとシース3とが接触している」とは、外周端2cとシース3とが、接着されている場合と、接着されていない場合のいずれの場合も含む。外周端2cとシース3とが接着されている場合には、溝部2aに収容されている導体1の配置が崩れにくくなるので、導体1の相対的な配置の変化、および表皮効果と近接効果によっておきる電気抵抗の変動を小さくすることができる。外周端2cとシース3とが接着されていない(非接着)の場合には、高周波用給電線10の耐屈曲性を向上させることができ、また、高周波用給電線10の端末部分から導体1を露出させる端末処理をする際に、容易にシース3を除去することできる。
【0015】
なお、外周端2cとシース3との接着方法は、特に限定されないが、例えば、熱融着や、エポキシ系接着剤、ポリエステル系接着剤等の熱硬化性樹脂により接着させることが好ましい。
【0016】
絶縁介在物2には、絶縁介在物2の中心軸に沿って延びる中空部2dが形成されている。中空部2dは、例えば、円筒状に形成されており、中空部2d内には、導体1が配置されないことが好ましい。中空部2d内は空洞なので、例えば、信号伝送用の信号線4を配置することにより、中空部2d内を有効活用することができる。ここで、信号線4とは、導体に限定されず、光ファイバ等を含むものであり、配置される信号線4の数は、単数もしくは複数本のいずれでもよい。
図1、
図2では、単一の信号線4が配置された場合を例示している。なお、本実施形態では、絶縁介在物2の中心軸は、高周波用給電線10の中心軸と一致することが好ましい。中空部2d内には、熱検知用電線が配置されていてもよい。熱検知用電線は、例えば、第1導線が第1絶縁被膜により被覆された第1被覆電線と第2導線が第2絶縁被膜により被覆された第2被覆電線とを備える。熱検知用電線は、高周波用給電線10内が高温化した際に第1絶縁被膜及び第2絶縁被膜が溶融し、第1導線と第2導線とが接触して導通することで、高周波用給電線10内の高温化を検知するものである。
【0017】
絶縁介在物2は、例えば、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)やテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、発泡PE、発泡PP等の誘電率が低い絶縁樹脂により構成されている。なお、絶縁介在物2は、例えば、公知の押出成形により形成することができる。
【0018】
複数の導体1は、それぞれ、溝部2a内に収容され、高周波用給電線10の長手方向に沿って延在している。導体1の断面形状は、略円形となっている。複数の導体1は、それぞれ、同じ径を有していることが好ましい。
【0019】
導体1は、単一の金属線、もしくは、複数(例えば7本)の金属素線を撚り合わせた撚り線により構成されている。単一の金属線の場合は、製造が容易であるため製造コストを抑えられるという利点がある。撚り線の場合は、単一の金属線よりも屈曲が容易であるため敷設しやすいという利点がある。本発明は、その用途に応じて、単線または撚り線のいずれにも適用することができる。
図1では、単一の金属線を用いた場合を例示し、
図2では、撚り線を用いた場合を例示している。
【0020】
複数の導体1は、それぞれの外周が絶縁体によって絶縁被覆されていない状態、いわゆる裸導体(裸素線)の状態で溝部2a内に収容されている。
【0021】
複数の導体1は、それぞれ、高周波用給電線10の長手方向に垂直な断面のうち外周側の位置に配置されている。本実施形態では、複数の導体1は、それぞれ、シース3の近傍であって、この断面の外周方向に沿って所定の間隔で互いに離隔した位置に配置されている。
【0022】
給電用である導体1の大きさは、特に限定されないが、その半径は、使用周波数帯における表皮厚さより小さいことが好ましい。
【0023】
導体1は、例えば、銅(Cu)、Cu合金、アルミニウム(Al)、Al合金により構成されている。複数の導体1は、それぞれ、同じ材料により構成されていることが好ましい。
【0024】
シース3は、絶縁介在物2の外周を囲うように構成され、高周波用給電線10の長手方向に沿って延在している。
【0025】
溝部2a内に収容された導体1と、シース3の内壁と、の間には、空隙5が形成されていることが好ましい。空隙5が形成されていることにより、端末処理をする際に、容易にシース3を除去することできる。
【0026】
シース3は、例えば、上述したFEP、PFA、PE、PPのほかPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体)により構成されている。
【0027】
(2)本実施形態の効果
本実施形態によれば、以下に述べる一つ又は複数の効果を奏する。
【0028】
(a)導体1を複数備えて導体全体の表面積を増加させ、これらの導体1をそれぞれ収容する溝部2aを、絶縁介在物2の外周に設けることにより、使用する導体の総量を増加させることなく、表皮効果による電気抵抗の増加を低減することが可能となる。さらに、外周が絶縁体によって被覆されない状態の導体1が溝部2a内に収容されていることにより、シース3を剥くだけで、導体1を露出させることができる。このように、端末加工をする際に、複数の導体1の1本1本について絶縁体を除去する処理を行う必要がないので、端末加工を容易に行うことが可能となる。
以上により、高周波用給電線10は、表皮効果による電流抵抗の増加を低減できるとともに、端末加工を容易に行うことが可能となる。
【0029】
(b)複数の導体1が、それぞれ、高周波用給電線10の長手方向に垂直な断面のうち外周側の位置に配置されることにより、使用する導体の総量を増加させることなく、表皮効果と近接効果による電気抵抗の増加をさらに低減することが可能となる。また、複数の導体1が、それぞれ、シース3の近傍であって、この断面の外周方向に沿って所定の間隔で互いに離隔した位置に配置されることにより、表皮効果と近接効果による電気抵抗の増加をさらに低減することが可能となる。
【0030】
(c)絶縁介在物2が、絶縁介在物2の中心軸に沿って延びる中空部2dを有することにより、高周波用給電線10の耐屈曲性、放熱性の向上と、軽量化を実現することが可能となる。
【0031】
(d)中空部2d内に、導体1が配置されていないことにより、高周波用給電線10の製造コストを下げることができ、軽量化を実現することが可能となる。
【0032】
(e)導体1の半径が、使用周波数帯における表皮厚さより小さいことにより、高周波信号の伝送効率を向上させることが可能となる。
【0033】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0034】
(付記1)
本発明の一態様によれば、
給電用の複数の導体と、
絶縁体からなる長尺状の部材であって、前記複数の導体のそれぞれを互いに離隔させた状態で収容する複数の溝部が外周に設けられた絶縁介在物と、
前記絶縁介在物の外周を囲うように構成されたシースと、を備え、
前記複数の導体は、それぞれの外周が絶縁被覆されていない状態で前記溝部内に収容されている、
高周波用給電線が提供される。
【0035】
(付記2)
付記1に記載の高周波用給電線であって、
前記絶縁介在物は、前記複数の導体を、前記高周波用給電線の長手方向に垂直な断面のうち外周側の位置に配置するように構成されている。
【0036】
(付記3)
付記1または2に記載の高周波用給電線であって、好ましくは、
前記絶縁介在物は、前記複数の導体を、前記高周波用給電線の長手方向に垂直な断面のうち前記シースの近傍であって、前記断面の外周方向に沿って所定の間隔で互いに離隔した位置に配置するように構成されている。
【0037】
(付記4)
付記1~3のいずれかに記載の高周波用給電線であって、
前記絶縁介在物は、前記絶縁介在物の中心軸に沿って延びる中空部を有する。
【0038】
(付記5)
付記4に記載の高周波用給電線であって、
前記中空部内には、前記導体が配置されていない。
【0039】
(付記6)
付記4または5に記載の高周波用給電線であって、
前記中空部内には、前記導体とは異なる信号伝送用の信号線が配置されている。
【0040】
(付記7)
付記1~6のいずれかに記載の高周波用給電線であって、
前記絶縁介在物の外周を構成し、隣接する前記溝部間を離隔させる隔壁の外周端が、前記シースの内壁に到達している。
【0041】
(付記8)
付記7に記載の高周波用給電線であって、
前記隔壁の外周端と、前記シースの内壁と、が接着されている。
【0042】
(付記9)
付記7に記載の高周波用給電線であって、
前記隔壁の外周端と、前記シースの内壁と、が非接着となっている。
【0043】
(付記10)
付記1~9のいずれかに記載の高周波用給電線であって、
前記溝部内に収容された前記導体と、前記シースの内壁と、の間には、空隙が存在する。
【0044】
(付記11)
付記1~10のいずれかに記載の高周波用給電線であって、
前記導体の半径が、使用周波数帯における表皮厚さより小さい。
【符号の説明】
【0045】
10 高周波用給電線
1 導体
2 絶縁介在物
2a 溝部
3 シース