(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138317
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】端子付き電線、ワイヤハーネス、及び端子
(51)【国際特許分類】
H01R 4/18 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
H01R4/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038129
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】和田 卓十
(72)【発明者】
【氏名】平岩 徹也
(72)【発明者】
【氏名】河中 裕文
(72)【発明者】
【氏名】竹下 隼矢
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏和
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB03
5E085BB12
5E085CC03
5E085DD16
5E085EE11
5E085FF01
5E085HH06
5E085JJ06
(57)【要約】
【課題】 圧着時の素線の広がりを抑制すると共に、素線を保護することが可能な端子付き電線等を提供する。
【解決手段】 端子付き電線10は、端子1と被覆導線11とが電気的に接続されて構成される。被覆導線11は、抗張力体14と、導線13と、抗張力体14及び導線13を被覆する被覆部15とを有する。導線13は、複数の素線13aからなる。端子本体3を除く部位の端子1は、被覆導線11の先端の被覆部15から露出する導線13が圧着される導線圧着部7と、導線圧着部7と被覆部15との間に位置し、導線圧着部17及び被覆部15から露出する導線13を覆う保護部8とを具備する。保護部8は非圧着部である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆導線と端子とが電気的に接続される端子付き電線であって、
前記被覆導線は、抗張力体と、導線と、前記抗張力体及び前記導線を被覆する被覆部とを有し、
前記端子は、前記被覆導線の先端の前記被覆部から露出する前記導線が圧着される導線圧着部と、前記導線圧着部と前記被覆部との間に位置し、前記導線圧着部及び前記被覆部から露出する前記導線を覆う保護部と、を具備し、
前記保護部が非圧着部であることを特徴とする端子付き電線。
【請求項2】
前記被覆導線の前記被覆部が圧着される被覆圧着部を有し、前記保護部は、前記導線圧着部と前記被覆圧着部との間に配置されることを特徴とする請求項1記載の端子付き電線。
【請求項3】
前記導線圧着部、前記保護部及び前記被覆圧着部が一体で構成されることを特徴とする請求項2記載の端子付き電線。
【請求項4】
前記導線圧着部と前記保護部が、周方向に閉じた管状であって一体で構成されることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の端子付き電線。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の端子付き電線を含む、複数の端子付き電線が一体化されたことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項6】
被覆導線と電気的に接続される端子であって、
前記被覆導線の先端の被覆部から露出する導線が圧着される導線圧着部と、前記被覆導線の前記被覆部が圧着される被覆圧着部と、前記導線圧着部と前記被覆圧着部との間に位置し、前記導線圧着部及び前記被覆部から露出する前記導線を覆う保護部と、を具備し、
前記導線圧着部と前記保護部は、周方向に閉じた管状であって一体で構成され、前記保護部の径が、前記導線圧着部の径よりも大きく、
前記被覆圧着部がオープンバレルタイプであることを特徴とする端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等に用いられる端子付き電線等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、自動車用ワイヤハーネスは、被覆導線の導体に圧着端子が接続された後に束ねられて、自動車等の信号線などとして配索される。一般的な被覆導線と圧着端子は、被覆導線の先端部の被覆が除去され、露出させた導体と導線圧着部とが圧着されて接続される。
【0003】
ここで、使用される電線が細くなると、電線を構成する導体だけでは強度を保つのが難しいため、抗張力体入りの電線が検討されている。例えば、引張強度が30N程度である導体からなる電線を使用する場合において、自動車用電線で要求される80Nを超える引張強度を確保する為に、抗張力体入りの電線として、金属製や非金属製の抗張力体の外周に導線が螺旋状に巻かれているものが提案されている。
【0004】
このような抗張力体入りの電線としては、例えば、抗張力体としての炭素繊維の周囲に、複数本の軟銅素線が配置された高張力電線が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図12は、このような抗張力電線と端子とを圧着する工程を示す図である。被覆導線111は、導線113が被覆部115で覆われた構造である。また、圧着される端子101は、端子本体103と、導線113が圧着される導線圧着部107とを有する。
【0007】
端子101と被覆導線111とを圧着するためには、まず、
図12(a)に示すように、被覆導線111の端部において被覆部115を除去し、内部の導線113を露出させる。
図13(a)は、
図12(a)のA-A線断面図である。導線113は、抗張力体114の外周に、複数の素線113aが撚り合わせられて構成される。
【0008】
次に、
図12(b)に示すように、露出した導線113を導線圧着部107に挿入する。
図13(b)は、
図12(b)のB-B線断面図である。導線圧着部107は、例えば管状であり、導線113の径よりも内径が大きい。
【0009】
次に、
図12(c)に示すように、導線圧着部107をかしめて、導線圧着部107によって導線113を圧着する。
図13(c)は、
図12(c)のC-C線断面図である。導線圧着部107を圧着することで、素線113aがつぶれて導線圧着部107の内面と密着する。このため、素線113aと導線圧着部107とが導通する。
【0010】
ここで、抗張力体114は、素線113aと比較して、圧着時の変形が少ない。すなわち、導線圧着部107を圧縮すると、抗張力体114に対して、素線113aが優先的に潰れて変形する。この際、素線113aは、変形によって断面積が減少するとともに軸方向に伸びる。一方、抗張力体114はほとんど伸びないため、端子101と被覆部115までの距離はほとんど変化せずに、素線113aのみが軸方向に伸びる。この結果、
図12(c)に示すように、端子101の後端部において、素線113aが径方向に広がることとなる。
【0011】
このように、素線113aが径方向に広がると、端子101の端部のエッジや、他の部材との接触等によって断線の恐れがある。一方、抗張力体114を有しない電線であれば、導線113は略一様に長手方向に伸びるため、このような広がりは抑制することができる。しかし、前述したように、特に細径の被覆導線は、引張強度を確保するために、抗張力体をなくすことができない場合がある。このため、抗張力体を用いた被覆導線に対しても、圧着時において、このような素線113aの広がりを抑制すると共に、素線113aを保護する方法が望まれる。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、圧着時の素線の広がりを抑制すると共に、素線を保護することが可能な端子付き電線等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達するために第1の発明は、被覆導線と端子とが電気的に接続される端子付き電線であって、前記被覆導線は、抗張力体と、導線と、前記抗張力体及び前記導線を被覆する被覆部とを有し、前記端子は、前記被覆導線の先端の前記被覆部から露出する前記導線が圧着される導線圧着部と、前記導線圧着部と前記被覆部との間に位置し、前記導線圧着部及び前記被覆部から露出する前記導線を覆う保護部と、を具備し、前記保護部が非圧着部であることを特徴とする端子付き電線である。
【0014】
前記被覆導線の前記被覆部が圧着される被覆圧着部を有し、前記保護部は、前記導線圧着部と前記被覆圧着部との間に配置されてもよい。
【0015】
前記導線圧着部、前記保護部及び前記被覆圧着部が一体で構成されてもよい。
【0016】
前記導線圧着部と前記保護部が、周方向に閉じた管状であって一体で構成されてもよい。
【0017】
第1の発明によれば、被覆導線が、導線と抗張力体とを有することで、抗張力体によって導線の引張強度を確保することができる。また、導線圧着部の端部と被覆部の端部の間に露出する導線を覆う保護部を設け、保護部が非圧着部であるため、導線圧着部と被覆部との間において、導線が広がることを抑制することができる。
【0018】
この場合、被覆圧着部を別に設けてもよい。被覆圧着部を有していても、導線圧着部と被覆部の間において、導線が広がることを抑制することができる。
【0019】
また、この場合には、導線圧着部と保護部と前記被覆圧着部とを一体で構成することもできる。このようにすることで、各部の間に隙間が形成されず、より確実に導線の露出を抑制することができる。
【0020】
また、導線圧着部が管状であれば、導線を、全周から確実に圧着することができる。このため、圧着時に、導線へ局所的な応力(変形)が生じることを抑制することができる。また、保護部も周方向に隙間が形成されていないため、素線の一部が外部に飛び出すことを抑制することができる。
【0021】
第2の発明は、第1の発明にかかる端子付き電線を含む、複数の端子付き電線が一体化されたことを特徴とするワイヤハーネスである。
【0022】
第2の発明によれば、例えば細径の電線が複数束ねられたワイヤハーネスを得ることができる。
【0023】
第3の発明は、被覆導線と電気的に接続される端子であって、前記被覆導線の先端の被覆部から露出する導線が圧着される導線圧着部と、前記被覆導線の前記被覆部が圧着される被覆圧着部と、前記導線圧着部と前記被覆圧着部との間に位置し、前記導線圧着部及び前記被覆部から露出する前記導線を覆う保護部と、を具備し、前記導線圧着部と前記保護部は、周方向に閉じた管状であって一体で構成され、前記保護部の径が、前記導線圧着部の径よりも大きく、前記被覆圧着部がオープンバレルタイプであることを特徴とする端子である。
【0024】
第3の発明によれば、導線圧着部が管状であり、保護部と一体であるため、導線を、全周から確実に圧着することができるとともに、保護部においても、周方向に隙間が形成さないため、素線の一部が外部に飛び出すことをより確実に抑制することができる。また、被覆圧着部がオープンバレルタイプであるため、被覆部を被覆圧着部に配置するのが容易である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、圧着時の素線の広がりを抑制すると共に、素線を保護することが可能な端子付き電線等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】(a)は、端子付き電線10を示す断面図、(b)は(a)のX-X線断面図。
【
図4】(a)、(b)は、端子付き電線10の導線圧着部7の圧着工程を示す図。
【
図8】(a)、(b)は、端子付き電線10aの導線圧着部7及び被覆圧着部9の圧着工程を示す図。
【
図11】圧着前の端子1bと被覆導線11を示す図。
【
図12】(a)~(c)は、従来の導線圧着部107の圧着工程を示す図。
【
図13】(a)は、
図12(a)のA-A線断面図、(b)は、
図12(b)のB-B線断面図、(c)は、
図12(c)のC-C線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、端子付き電線10を示す斜視図であり、
図2(a)は、端子付き電線10の断面図、
図2(b)は、被覆導線11の断面図であって、
図2(a)のX-X線断面図である。端子付き電線10は、端子1と被覆導線11とが電気的に接続されて構成される。
【0028】
図2(b)に示すように、被覆導線11は、抗張力体14と、導線13と、抗張力体14及び導線13を被覆する被覆部15とを有する。導線13は、複数の素線13aからなる。なお、導線13の素線数は特に限定されない。
【0029】
抗張力体14は、引張加重に対して張力を受ける部材である。図示した例では、例えば、被覆導線11の長手方向に垂直な断面において、少なくとも1本の抗張力体14が被覆導線11の略中心に位置し、複数の素線13aが抗張力体14の外周部に配置される。さらに、抗張力体14の外周部に、素線13aが、被覆導線11の長手方向に螺旋状に撚られていてもよい。
【0030】
なお、抗張力体14の配置は、
図2(b)に示す例には限られない。例えば、導線13(素線13a)と複数の抗張力体14とを撚り合わせるように配置してもよい。また、抗張力体14を導体で被覆した導線13を複数本撚り合わせてもよい。また、中央の抗張力体14の外周に被覆するように導体を配置してもよい。すなわち、抗張力体入りの被覆導線11の場合には、少なくとも1本の導線と少なくとも1本の抗張力体を有すれば、その断面形態は特に限定されない。
【0031】
なお、抗張力体14は、鋼線などの金属線であってもよく、樹脂や繊維強化樹脂であってもよい。また、抗張力体14としては、アラミド繊維などの複数の繊維を束ねたものであってもよい。
【0032】
導線13は、例えば、銅、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である導線13と、導線13を被覆する被覆部15からなる。なお、導線13は、抗張力体14と比較して、圧着時の変形量が大きい。特に、抗張力体14が非金属製である場合には、導線13と比較して、抗張力体14はほとんど変形しない。すなわち、抗張力体14は、導線13に対して相対的に硬い材料(例えば高ヤング率)で構成される。
【0033】
ここで、本実施形態は、導線13の断面積(素線13aの断面積の総計)は、0.3sq以下である場合に効果的である。また、例えば導線13が抗張力体14とともに用いられるため、導線13の断面積は0.05sq以下であってもよい。抗張力体14を用いることで、例えば、導線13の断面積は0.05sq以下であっても、導線圧着部7における導線の引張強度として、50N以上を確保することができる。
【0034】
端子1は、端子本体3と導線圧着部7とが連結されて構成される。端子1は、例えば銅、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。端子本体3は、丸型端子であってボルト締結部が設けられる。なお、端子本体3は、前端部から雄型端子などが挿入される雌型端子であってもよく、雄型端子の挿入タブであってもよい。
【0035】
端子本体3を除く部位の端子1は、被覆導線11の先端の被覆部15から露出する導線13が圧着される導線圧着部7と、導線圧着部7と被覆部15との間に位置し、導線圧着部7及び被覆部15から露出する導線13を覆う保護部8とを具備する。本実施形態では、導線圧着部7と保護部8は、周方向に閉じた管状(略円筒状)であって、一体で構成される。
【0036】
端子1の導線圧着部7は、被覆導線11の先端側に被覆部15から露出する導線13を圧着する部位である。なお、導線圧着部7の内面の一部には、周方向(長手方向に垂直な方向)に、図示を省略したセレーションが設けられてもよい。このようにセレーションを形成することで、導線13を圧着した際に、導線13の表面の酸化膜を破壊しやすく、また、導線13との接触面積を増加させることができる。
【0037】
一方、保護部8は非圧着部である。すなわち、保護部8においては、導線13は圧着されない。このため、導線圧着部7が非円形の場合には、保護部8の高さが、導線圧着部7の高さよりも高い。すなわち、保護部8の外径及び内径は、導線圧着部7の外径及び内径よりも大きい。なお、保護部8においては、導線13と保護部8の内面において隙間が形成されていてもよい。
【0038】
保護部8の先端部は、被覆部15の端部の一部を覆うように配置される。すなわち、被覆部15の先端部は、保護部8の内部に位置する。この際、保護部8と被覆部15とは接触していてもよいし、隙間が形成されていてもよい。
【0039】
次に、端子付き電線10の製造方法について説明する。
図3は、圧着前の端子1と被覆導線11を示す斜視図である。前述したように、端子1は、端子本体3と管状部7aとを有する。管状部7aは、周方向に閉じた管状である。管状部7aは、例えば、板部材を丸めて端部同士を突き合わせて、長手方向に溶接によって接合してもよく、管状部材を展開して端子1を形成してもよい。なお、管状部7aが、導線圧着部7と保護部8とに対応する。
【0040】
まず、前述したように、被覆導線11の先端部の被覆部15を剥離して、先端部の導線13を露出する。次に、導線13を、被覆部15の先端部の一部が、管状部7aに挿入されるまで管状部7aへ挿入する。この際、導線13の先端が管状部7aの先端からはみ出してもよい。
【0041】
なお、導線13を管状部7aに挿入する前に、導線13の先端部に端末処理部を形成してもよい。端末処理部は、導線13の各素線がばらけないように一体化する処理部である。端末処理部としては、例えば、導線13の少なくとも先端部を、外周側から圧縮することで形成することができる。このように、導線13の先端部が外周側から圧縮されることで、素線13aがばらけることが抑制され、管状部7aへの挿入が容易である。
【0042】
また、端末処理部として、導線13の少なくとも先端部に、素線13aを一括して又は別々にめっき処理を施してもよい。このように、導線13の先端部に外周からめっき処理が施されていることで、素線13aがばらけることが抑制され、管状部7aへの挿入が容易である。なお、端末処理部は、圧縮やめっきによる方法には限られず、例えば、導線13の先端を半田処理や溶接処理によって素線13aのばらけを抑制してもよい。また、外周からの圧縮と一括めっきなどの複数の端末処理を併用してもよい。
【0043】
次に、被覆導線11を導線圧着部7に配置した端子1を金型にセットする。
図4(a)は、圧着前における端子付き電線10を製造するための金型21a、21bを示す断面図である。金型21a、21bは、例えば、長手方向に延びる略半円柱状の空洞を有し、導線圧着部7に対応する部位が、圧着後の略円形断面となるように形成される。なお、金型21a、21bの先後端(導線圧着部7の先後端に対応する部位)は、テーパ形状としてもよい。このようにすることで、圧着後に、導線圧着部7の先後端が徐々に拡径する形状(いわゆるベルマウス形状)とすることができる。
【0044】
この状態で、
図4(b)に示すように、金型21aと金型21bを噛み合わせて、導線圧着部7(管状部7a)を圧縮すると、導線圧着部7が導線13に圧着される。例えば、管状の導線圧着部7では、略円形に導線13が圧着される。すなわち、端子1は、被覆導線11と電気的に接続される。
【0045】
この際、金型21a、21bの圧着部の長さは、圧着前の管状部7aの長さよりも短い。また、金型21a、21bの圧着範囲は、圧着前の管状部7aの先端側(端子本体3側)に合わせられる。したがって、圧着前の管状部7aの後端部の一部は圧着されずに圧着前の形態に近い形状を維持する。
【0046】
なお、導線圧着部7が圧着されるため、その変形によって保護部8もやや縮径するが、少なくとも保護部8においては、導線13が圧着されることがない。例えば、導線圧着部7においては、導線13の断面が端子内面形状に沿って変形し、両者が完全に密着する。一方、保護部8の内部において、導線13同士の間や、抗張力体14と導線13との間や、導線13と保護部8との間に、多少の隙間が形成され、導線13と保護部8とが完全に密着することがない。
【0047】
本発明では、このように、導線13の断面が端子内面形状に沿って変形し、両者が完全に密着している部位を圧着部とし、導線13の断面変形や端子との密着が弱い(隙間があって不完全である)部位を非圧着部とする。すなわち、保護部8は、非圧着部となる。
【0048】
なお、前述したように、被覆部15の先端部は、保護部8の内部に位置するため、導線圧着部7と被覆部15との間に存在する導線13は、保護部8で覆われて、外部に露出することがない。このように、圧着前の端子1の管状部7aの長さは、導線圧着部7として必要な圧着長さと、導線圧着部7と被覆部15先端までの間の導線13を完全に覆うことが可能な長さ以上に設定される。
【0049】
以上により、端子付き電線10を得ることができる。さらに、得られた端子付き電線10を含む、複数の端子付き電線が一体化されたワイヤハーネスを得ることができる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態によれば、内部に抗張力体14を有する被覆導線11を用いるため、細径であっても十分な引張強度を確保することができる。また、圧着時に、抗張力体14に対して導線13が優先的に変形するため、導線13が導線圧着部7の先後端側に伸びるが、少なくとも被覆部15との間において、導線13は保護部8で覆われて、外部に露出しない。このため、素線13aの広がりを抑制すると共に、保護部8によって素線13aが保護されるため、導線13が端子1のエッジや、他の部品等と接触することで損傷することを抑制することができる。
【0051】
また、導線圧着部7と保護部8とを一体で構成することで、端子1の製造が容易である。また、圧着後においても、導線圧着部7と保護部8との間に隙間が形成されず、内部の導線13が外部に飛び出すことを抑制することができる。
【0052】
また、導線圧着部7が管状であるため、導線13の全周360°から確実に圧着することができる。また、前述したように、導線13の先端部に端末処理部を形成することで、細径の導線13であっても容易に導線13を管状部7aへ挿入することができる。なお、導線圧着部7への導線13の挿入性をさらに向上させるため、圧着前の管状部7aの後端部(導線13を挿入する側であって保護部8に対応する部位)を拡径してもよい。
【0053】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図5は、第2の実施形態にかかる端子付き電線10aの斜視図であり、
図6は、端子付き電線10aの断面図である。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同様の機能を奏する構成については、
図1~
図4と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0054】
端子付き電線10aは、端子付き電線10と略同様の構成であるが、端子1に変えて端子1aが用いられる点で異なる。端子1aは、導線圧着部7に加えて、さらに被覆圧着部9を有する。被覆圧着部9は、被覆導線11の被覆部15が圧着される部位である。すなわち、端子1aは、被覆導線11の先端側に被覆部15から露出する導線13を圧着する導線圧着部7と、被覆導線11の被覆部15を圧着する被覆圧着部9と、導線圧着部7と被覆圧着部9との間に配置される保護部8とを有する。
【0055】
次に、端子付き電線10aの製造方法について説明する。
図7は、圧着前の端子1aと被覆導線11を示す斜視図である。本実施形態では、導線圧着部7及び保護部8は、周方向に閉じた管状部7aからなり、一体で構成される。また、被覆圧着部9はオープンバレルタイプである。なお、保護部8の内径は、導線圧着部7の内径よりも大きい。このため、導線13の挿入が容易である。
【0056】
次に、被覆導線11を導線圧着部7に配置した端子1aを金型にセットする。
図8(a)は、圧着前における端子付き電線10を製造するための金型21a、21bを示す断面図である。本実施形態では、金型21a、21bは、導線圧着部7に対応する部位と、被覆圧着部9に対応する部位が、それぞれ導線圧着部7の管状形状と被覆圧着部9のオープンバレル形状に対応した形状を有する。
【0057】
この状態で、
図8(b)に示すように、金型21aと金型21bを噛み合わせて、導線圧着部7及び被覆圧着部9を圧縮すると、導線圧着部7が導線13に圧着され、被覆圧着部9が被覆部15に圧着される。なお、保護部8に対応する部位の管状部7aは、上型である金型21bと接触しなくてもよい。
【0058】
なお、上下の金型21a、21bの間隔は、導線圧着部7、被覆圧着部9、保護部8のそれぞれに対応する部位が順に広くなる。すなわち、導線圧着部7、被覆圧着部9、保護部8の順に高さが低くなる。
【0059】
このように、導線圧着部7と被覆圧着部9との間には非圧着部である保護部8が形成される。すなわち、保護部8の内部において、導線13同士の間や、抗張力体14と導線13との間や、導線13と保護部8との間には、多少の隙間が形成されてもよく、導線13と保護部8とが完全に密着することがない。以上により、端子付き電線10aを製造することができる。
【0060】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、導線圧着部7の後方に保護部8を設ければ、被覆圧着部9を設けてもよい。
【0061】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
図9は、第3の実施形態にかかる端子付き電線10bを示す図であり、
図10は、端子付き電線10bの断面図である。端子付き電線10bは、端子付き電線10aと略同様の構成であるが、端子1aに変えて端子1bが用いられる点で異なる。
【0062】
端子1bは、導線圧着部7、保護部8及び被覆圧着部9が、周方向に閉じた管状であって一体で構成される。すなわち、導線圧着部7、保護部8及び被覆圧着部9との間に隙間が形成されない。なお、導線圧着部7の高さが最も低く、保護部8の高さが最も高い。
【0063】
図11は、圧着前の端子1bと被覆導線11を示す斜視図である。本実施形態では、導線圧着部7、保護部8及び被覆圧着部9が、周方向に閉じた管状部7aからなる。なお、保護部8及び被覆圧着部9の内径は、導線圧着部7の内径よりも大きい。このようにすることで、導線13の挿入が容易である。この状態で、前述した方法と同様に、金型によって導線圧着部7と被覆圧着部9とを圧着することで、端子付き電線10bを得ることができる。
【0064】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、導線圧着部7、保護部8及び被覆圧着部9を全て一体で構成することで、各部の間に隙間が生じることがなく、確実に導線13の露出を抑制することができる。
【0065】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0066】
例えば、導線圧着部7及び保護部8は、全て管状に一体で形成したが、これには限られない。例えば、導線圧着部7において導線13を圧着することができ、保護部8において導線13を全周から覆うことができれば、管状ではなく、オーバーラップ型等の他の形態であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1、1a、1b………端子
3………端子本体
7………導線圧着部
7a………管状部
8………保護部
9………被覆圧着部
10、10a、10b……端子付き電線
11………被覆導線
13………導線
13a………素線
14………抗張力体
15………被覆部
21a、21b………金型
101………端子
103………端子本体
107………導線圧着部
111………被覆導線
113………導線
113a………素線
114………抗張力体
115………被覆部