(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138338
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
H01L21/78 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038161
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】高木 敦史
(72)【発明者】
【氏名】大森 崇史
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA02
5F063AA48
5F063DE02
5F063DE17
5F063DE23
5F063DE33
(57)【要約】 (修正有)
【課題】処理送り方向に対する分割予定ラインの傾きを所定角度以内に収めなくてはならないという制約がなく、100%のマッチング度が期待でき、時間的なロスが低減される処理装置を提供する。
【解決手段】処理装置2は、チャックテーブル6と、ウエーハ4に処理を施す処理手段8と、処理送り手段と、ウエーハを撮像し処理すべき領域を検出する撮像手段10と、制御手段12と、を備える。撮像手段は、顕微鏡と撮像素子とを含む。制御手段は、パターンマッチングを実行するためのターゲットパターンを記憶するターゲットパターン記憶部38と、撮像素子からの画像に基づき直線領域を検出する直線領域検出部40と、を備え、直線領域検出部によって検出された直線領域の方向と処理送り方向とのズレ角度を算出して、ターゲットパターン記憶部に記憶されたターゲットパターンとウエーハ上の特徴パターンとの相対角度を調整し、パターンマッチングを実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハに処理を施す処理装置であって、
ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハに処理を施す処理手段と、該チャックテーブルと該処理手段とを相対的に処理送りする処理送り手段と、該チャックテーブルに保持されたウエーハを撮像し処理すべき領域を検出する撮像手段と、制御手段とを備え、
該撮像手段は、顕微鏡と、該顕微鏡に連結され画像を捕らえる複数の画素からなる撮像素子とを含み、
該制御手段は、パターンマッチングを実行するためのターゲットパターンを記憶するターゲットパターン記憶部と、該撮像素子からの画像に基づき直線領域を検出する直線領域検出部とを備え、
該直線領域検出部によって検出された直線領域の方向と処理送り方向とのズレ角度を算出して、該ターゲットパターン記憶部に記憶されたターゲットパターンとウエーハ上の特徴パターンとの相対角度を調整し、パターンマッチングを実行する処理装置。
【請求項2】
該制御手段は、該チャックテーブルを該ズレ角度回転させ、該相対角度を調整する請求項1記載の処理装置。
【請求項3】
該制御手段は、該ターゲットパターン記憶部に記憶されているターゲットパターンを画像処理で該ズレ角度回転させ、該相対角度を調整する請求項1記載の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハに処理を施す処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、分割された各デバイスチップは携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
ダイシング装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持されたウエーハを切削する切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と、チャックテーブルと切削手段とを相対的に処理送りする処理送り手段と、チャックテーブルに保持されたウエーハを撮像して切削すべき領域を検出する撮像手段と、撮像手段からの信号に基づきウエーハの分割予定ラインを切削ブレードの処理送り方向に一致させるアライメントを実行する制御手段とを少なくとも備え、ウエーハを高精度に分割することができる(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
また、レーザー加工装置は、ダイシング装置における切削手段に代えてレーザー加工手段を備えると共に、ダイシング装置と同様、アライメントの実行によってウエーハに高精度な加工を施すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記したアライメントにおいては、ウエーハの表面に形成されたデバイスの特徴的なパターンをターゲットパターンとして記憶し、撮像手段によって撮像されたウエーハの画像に基づき、記憶したターゲットパターンと、ウエーハ上の特徴的なパターンとのパターンマッチングによって分割予定ラインを検出している。このため、分割予定ラインの方向が処理送り方向から大きくズレていると、記憶したターゲットパターンと、ウエーハ上の特徴パターンとのマッチング度が低くなり、記憶したターゲットパターンと同じパターンをデバイスから見つけることができず、アライメントエラーが発生するという問題がある。
【0007】
この問題を解決するために、処理送り方向に対する分割予定ラインの傾きが±3°以内に収まるようにウエーハをチャックテーブルに保持させ、画像処理上でウエーハを1°ずつ回転させながら、パターンマッチングを実行してマッチング度が一番高いパターンをターゲットパターンと同じパターンとしてアライメントを実行している。
【0008】
しかしながら、処理送り方向に対する分割予定ラインの傾きを±3°以内に収めなくてはならないという制約があること、100%のマッチング度が期待できないこと、時間的なロスがあること、という問題がある。
【0009】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、上記の問題を解消することができる処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、上記課題を解決する以下の処理装置が提供される。すなわち、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハに処理を施す処理装置であって、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハに処理を施す処理手段と、該チャックテーブルと該処理手段とを相対的に処理送りする処理送り手段と、該チャックテーブルに保持されたウエーハを撮像し処理すべき領域を検出する撮像手段と、制御手段とを備え、該撮像手段は、顕微鏡と、該顕微鏡に連結され画像を捕らえる複数の画素からなる撮像素子とを含み、該制御手段は、パターンマッチングを実行するためのターゲットパターンを記憶するターゲットパターン記憶部と、該撮像素子からの画像に基づき直線領域を検出する直線領域検出部とを備え、該直線領域検出部によって検出された直線領域の方向と処理送り方向とのズレ角度を算出して、該ターゲットパターン記憶部に記憶されたターゲットパターンとウエーハ上の特徴パターンとの相対角度を調整し、パターンマッチングを実行する処理装置が提供される。
【0011】
好ましくは、該制御手段は、該チャックテーブルを該ズレ角度回転させ、該相対角度を調整する。該制御手段は、該ターゲットパターン記憶部に記憶されているターゲットパターンを画像処理で該ズレ角度回転させ、該相対角度を調整するのが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の処理装置は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハに処理を施す処理装置であって、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハに処理を施す処理手段と、該チャックテーブルと該処理手段とを相対的に処理送りする処理送り手段と、該チャックテーブルに保持されたウエーハを撮像し処理すべき領域を検出する撮像手段と、制御手段とを備え、該撮像手段は、顕微鏡と、該顕微鏡に連結され画像を捕らえる複数の画素からなる撮像素子とを含み、該制御手段は、パターンマッチングを実行するためのターゲットパターンを記憶するターゲットパターン記憶部と、該撮像素子からの画像に基づき直線領域を検出する直線領域検出部とを備え、該直線領域検出部によって検出された直線領域の方向と処理送り方向とのズレ角度を算出して、該ターゲットパターン記憶部に記憶されたターゲットパターンとウエーハ上の特徴パターンとの相対角度を調整し、パターンマッチングを実行するので、処理送り方向に対する分割予定ラインの傾きを所定角度以内に収めなくてはならないという制約がなく、100%のマッチング度が期待できると共に、時間的なロスが低減され、アライメントにおける上述の問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に従って構成された処理装置の斜視図。
【
図2】
図1に示す撮像手段およびウエーハの拡大図。
【
図3】(a)
図2に示すウエーハの直線領域(分割予定ライン)と、
図1に示す処理装置の処理送り方向(X軸方向)とのズレ角度がθである状態におけるウエーハを撮像した画像の模式図、(b)(a)に示す状態からチャックテーブルをズレ角度θ回転させた状態を示す画像の模式図。
【
図4】(a)ターゲットパターン記憶部に記憶されているターゲットパターンの模式図、(b)(a)に示す状態からターゲットパターンを画像処理でズレ角度θ回転させた状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に従って構成された処理装置の好適実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1を参照して説明すると、全体を符号2で示す処理装置は、ウエーハ4を保持するチャックテーブル6と、チャックテーブル6に保持されたウエーハ4に処理を施す処理手段8と、チャックテーブル6と処理手段8とを相対的に処理送りする処理送り手段(図示していない。)と、チャックテーブル6に保持されたウエーハ4を撮像し処理すべき領域を検出する撮像手段10と、制御手段12とを備える。
【0016】
処理装置2によって処理が施されるウエーハ4は、たとえば、シリコン等の適宜の半導体材料から形成される。
図2に示すとおり、ウエーハ4の表面4aには、直線領域である分割予定ライン14が複数設けられており、複数の分割予定ライン14は全体として格子状に組み合わされている。そして、格子状の分割予定ライン14によってウエーハ4の表面4aが複数の矩形領域に区画され、複数の矩形領域のそれぞれにはIC、LSI等のデバイス16が形成されている。
【0017】
デバイス16は、処理装置2においてアライメントの際にパターンマッチングを実行するためのターゲットパターンとして用いられる特徴的なパターンを有する。図示の実施形態のデバイス16は、
図3に示すようなL形状の特徴パターン18を有している。また、
図2に示すとおり、ウエーハ4の裏面4bは、周縁が環状フレーム20に固定されたダイシングテープ22に貼り付けられており、ウエーハ4は、ダイシングテープ22を介して環状フレーム20に支持されている。
【0018】
処理装置2のチャックテーブル6は、
図1に矢印Xで示すX軸方向に移動自在かつ上下方向を軸心として回転自在に構成されている。
図1に示すとおり、チャックテーブル6の上端部分には、吸引手段(図示していない。)に接続された多孔質の円形状吸着チャック24が配置されている。チャックテーブル6は、吸引手段で吸着チャック24に吸引力を生成することにより、上面に載せられたウエーハ4を吸引保持する。また、チャックテーブル6の周縁には、周方向に間隔をおいて複数のクランプ26が配置されている。なお、
図1に矢印Yで示すY軸方向はX軸方向に直交する方向であり、X軸方向およびY軸方向が規定するXY平面は実質上水平である。
【0019】
図示の実施形態の処理装置2は、本発明の処理装置の一例としてのダイシング装置であり、図示の実施形態の処理手段8は、ウエーハ4に対して切削加工を施す切削手段として構成されている。処理手段(切削手段)8は、チャックテーブル6に吸引保持されたウエーハ4を切削する環状の切削ブレード28を回転可能に備えている。切削ブレード28は、X軸方向に沿って配置され、Y軸方向を軸心として回転可能に構成されている。
【0020】
上記処理送り手段は、図示してないが、チャックテーブル6をX軸方向に移動させるX軸送り手段と、処理手段8をY軸方向に移動させるY軸送り手段と、上下方向を軸心としてチャックテーブル6を回転させるチャックテーブル用モータとを含む。X軸送り手段は、チャックテーブル6に連結されX軸方向に延びるボールねじと、このボールねじを回転させるモータとを有する構成でよい。また、Y軸送り手段は、処理手段8に連結されY軸方向に延びるボールねじと、このボールねじを回転させるモータとを有する構成でよい。そして、処理送り手段においては、X軸方向およびY軸方向の双方にチャックテーブル6と処理手段8とを相対的に処理送りすると共に、チャックテーブル6を回転させるようになっている。
【0021】
図2に示すとおり、撮像手段10は、顕微鏡30と、顕微鏡30に連結され画像を捕らえる複数の画素からなる撮像素子(図示していない。)とを含む。顕微鏡30は、円筒状の顕微鏡ハウジング32と、顕微鏡ハウジング32に収容されたレンズ(図示していない。)とを有する。顕微鏡ハウジング32の上端には撮像素子ハウジング34が連結され、撮像素子ハウジング34の内部に上記撮像素子が収容されている。そして、撮像手段10においては、顕微鏡30に入射した光を撮像素子によって画像データの電気信号に変換して制御手段12に出力するようになっている。また、撮像手段10によって撮像された画像はモニタ36(
図1参照。)に表示される。
【0022】
モニタ36には、撮像手段10によって撮像された画像に加え、処理送り方向であるX軸方向を示すセンターラインL(
図3参照。)が表示されるようになっている。センターラインLは、撮像手段10の視野に形成されており、モニタ36の縦方向中央において横方向に沿って表示される。
【0023】
コンピュータから構成される制御手段12は、図示していないが、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)とを含み、処理装置2の作動を制御するようになっている。
【0024】
図1に示すとおり、制御手段12は、パターンマッチングを実行するためのターゲットパターンを記憶するターゲットパターン記憶部38と、撮像手段10の撮像素子からの画像に基づき直線領域を検出する直線領域検出部40とを備える。図示の実施形態のターゲットパターン記憶部38は、ウエーハ4のデバイス16に設けられている特徴パターン18と同一形状のターゲットパターン42(
図4参照。)を記憶している。
【0025】
ターゲットパターン記憶部38に記憶されているターゲットパターン42の向きは、ウエーハ4の分割予定ライン14が処理装置2のX軸方向(処理送り方向)に整合したときのウエーハ4上の特徴パターン18の向きと同一である。すなわち、ウエーハ4の分割予定ライン14がX軸方向に整合すると、ターゲットパターン42とウエーハ4上の特徴パターン18との相対角度が0°になり、ターゲットパターン42と特徴パターン18とが互いに正確に重なり合う(一致する)ことになる。なお、ターゲットパターン記憶部38は、ターゲットパターンとして任意のパターンを記憶することができる。
【0026】
制御手段12の直線領域検出部40は、撮像手段10によって撮像された画像に基づいて、ウエーハ4の表面4a上の直線領域である分割予定ライン14を検出するようになっている。なお、直線領域検出部40としては、公知のハフ変換によって直線を検出するものでよい。
【0027】
制御手段12には、X軸方向およびY軸方向があらかじめ入力されており、制御手段12においては、直線領域検出部40によって検出された直線領域(分割予定ライン14)の方向と、処理送り方向(図示の実施形態ではX軸方向)とのズレ角度θ(
図3(a)参照。)を算出するようになっている。さらに、制御手段12においては、算出したズレ角度θに基づいて、ターゲットパターン記憶部38に記憶されたターゲットパターン42と、ウエーハ4上の特徴パターン18との相対角度を調整する。
【0028】
図1に示すとおり、図示の実施形態の処理装置2は、さらに、ウエーハ4を複数枚収容したカセット44が置かれる昇降自在なカセット台46と、カセット44から加工前のウエーハ4を引き出し、仮置きテーブル48まで搬出すると共に仮置きテーブル48に位置づけられた加工済みのウエーハ4をカセット44に搬入する搬出入手段50と、カセット44から仮置きテーブル48に搬出された加工前のウエーハ4をチャックテーブル6に搬送する第一の搬送手段52と、加工済みのウエーハ4を洗浄する洗浄手段54と、加工済みのウエーハ4をチャックテーブル6から洗浄手段54に搬送する第二の搬送手段56とを備える。
【0029】
上述したとおりの処理装置2を用いてウエーハ4に切削加工を施す際は、まず、搬出入手段50によってカセット44から仮置きテーブル48に加工前のウエーハ4を引き出した後、第一の搬送手段52によって仮置きテーブル48からチャックテーブル6にウエーハ4を搬送し、表面4aを上に向けてチャックテーブル6の上面にウエーハ4を載せる。
【0030】
ウエーハ4をチャックテーブル6に載せる際は、分割予定ライン14の方向を出来るだけX軸方向に揃えるようにするのが好ましいが、図示の実施形態の処理装置2においては、「X軸方向に対する分割予定ライン14の傾きを所定角度以内に収めなくてはならない。」という制約はない。ウエーハ4をチャックテーブル6に載せた後は、チャックテーブル6によってウエーハ4を吸引保持すると共に、複数のクランプ26で環状フレーム20を固定する。
【0031】
次いで、切削加工を施すべき領域であるウエーハ4の分割予定ライン14を検出して、分割予定ライン14を切削ブレード28の処理送り方向であるX軸方向に一致させると共に、分割予定ライン14と切削ブレード28との位置関係を調整するアライメントを実行する。
【0032】
アライメントにおいては、まず、X軸送り手段でチャックテーブル6を移動させ、ウエーハ4を撮像手段10の下方に位置づける。次いで、撮像手段10によってウエーハ4を撮像し、撮像した画像のデータを撮像手段10から制御手段12に出力する。そうすると、制御手段12においては、撮像手段10が撮像したウエーハ4の画像に基づき、ウエーハ4の表面4a上の直線領域である分割予定ライン14を直線領域検出部40によって検出する。また、制御手段12は、直線領域検出部40によって検出した分割予定ライン14の方向と、X軸方向とのズレ角度θ(
図3(a)参照。)を算出する。
【0033】
そして、ズレ角度θが0°でない場合、制御手段12は、算出したズレ角度θに基づいて、ターゲットパターン記憶部38に記憶されたターゲットパターン42と、ウエーハ4上の特徴パターン18との相対角度を調整する。
【0034】
具体的には、制御手段12はチャックテーブル用モータを作動させ、ウエーハ4を吸引保持したチャックテーブル6をズレ角度θ回転させる。これによって、
図3(b)に示すとおり、ウエーハ4の分割予定ライン14の方向とX軸方向とが整合する。また、ターゲットパターン記憶部38に記憶されたターゲットパターン42(
図4(a)参照。)と、ウエーハ4上の特徴パターン18(
図3(b)参照。)との相対角度が0°になり、ターゲットパターン42と特徴パターン18とが重なり合う。
【0035】
ターゲットパターン42と特徴パターン18との相対角度を調整する際は、上記のとおり、特徴パターン18を有するウエーハ4を回転させてもよいが、これとは反対に、ターゲットパターン記憶部38に記憶されているターゲットパターン42を画像処理で回転させてもよい。たとえば、
図4(a)に示す状態で記憶されているターゲットパターン42を、
図4(b)に示すとおり、画像処理でズレ角度θ回転させる。これにより、ウエーハ4の分割予定ライン14がX軸方向に対してズレ角度θだけズレている場合において、ターゲットパターン42(
図4(b)参照。)と、ウエーハ4上の特徴パターン18(
図3(a)参照。)とが重なり合うように、ターゲットパターン記憶部38に記憶されているターゲットパターン42のデータが変更される。
【0036】
ターゲットパターン42とウエーハ4上の特徴パターン18との相対角度を調整した後、処理送り手段によってチャックテーブル6と撮像手段10とを相対的にX軸方向またはY軸方向に移動しながら、ウエーハ4の複数の領域を撮像し特徴パターン18をパターンマッチングで抽出する。この際、制御手段12は、撮像した複数の画像のそれぞれについてターゲットパターン42とのマッチング度を算出する。
【0037】
図示の実施形態では、上記のとおり、ターゲットパターン記憶部38に記憶されたターゲットパターン42と、ウエーハ4上の特徴パターン18との相対角度を0°に調整しているので、特徴パターン18を含む画像のマッチング度が100%になり得る。そして、パターンマッチングで抽出した特徴パターン18に基づいて、切削加工を施すべき領域である分割予定ライン14の位置情報を取得する。制御手段12には、ウエーハ4上の特徴パターン18と分割予定ライン14との位置関係があらかじめ入力されているので、特徴パターン18を抽出することによって分割予定ライン14の位置情報を取得することができる。また、ターゲットパターン42を画像処理で回転させて、ターゲットパターン42と特徴パターン18との相対角度を調整した場合には、チャックテーブル6をズレ角度θ回転させ、分割予定ライン14をX軸方向に整合させる。
【0038】
しかしながら、厳密に言うと、算出したズレ角度θの分だけチャックテーブル6を回転させても、分割予定ライン14とX軸方向との微小なズレが残ってしまう場合がある。このため、離れた2ヶ所の特徴パターン18をパターンマッチングで抽出して、更に高精度にウエーハ4の角度を微調整して分割予定ライン14をX軸方向に整合させるのが望ましい。
【0039】
次いで、チャックテーブル6を移動させ、X軸方向に整合させた分割予定ライン14の上方に切削ブレード28を位置づける。次いで、処理手段8を下降させ、X軸方向に整合させた分割予定ライン14に、高速回転させた切削ブレード28の刃先をウエーハ4に切り込ませると共に、切削ブレード28の刃先を切り込ませた部分に切削水を供給しながら、処理手段8に対してチャックテーブル6をX軸方向に処理送りして分割予定ライン14に沿って切削溝を形成する切削加工を施す。次いで、分割予定ライン14のY軸方向間隔の分だけ、チャックテーブル6に対して処理手段8をY軸方向に割り出し送りしながら切削加工を繰り返し、X軸方向に整合させた分割予定ライン14のすべてに切削溝を形成する。
【0040】
次いで、チャックテーブル6を90°回転させ、先に切削溝を形成した分割予定ライン14と直交する分割予定ライン14をX軸方向に整合させる。そして、切削加工と割り出し送りとを繰り返し、すべての分割予定ライン14に沿って格子状に切削溝を形成する。次いで、切削加工を施した後、第二の搬送手段56によってチャックテーブル6から洗浄手段54にウエーハ4を搬送して、洗浄手段54によってウエーハ4を洗浄する。そして、第一の搬送手段52によって洗浄手段54から仮置きテーブル48にウエーハ4を搬送し、搬出入手段50によって仮置きテーブル48からカセット44にウエーハ4を搬出する。
【0041】
以上のとおりであり、図示の実施形態の処理装置2においては、ウエーハ4をチャックテーブル6に載せた後、ターゲットパターン記憶部38に記憶されているターゲットパターン42とウエーハ4上の特徴パターン18とが正確に重なり合うように、ターゲットパターン42と特徴パターン18との相対角度を調整するため、チャックテーブル6にウエーハ4を載せる際に、X軸方向に対する分割予定ライン14の傾きを所定角度以内に収める必要がない。
【0042】
また、図示の実施形態では、ターゲットパターン42と特徴パターン18とが正確に重なり合うように、ターゲットパターン42と特徴パターン18との相対角度を調整するから、パターンマッチングにおいて、ターゲットパターン42と特徴パターン18との100%のマッチング度が期待できる。
【0043】
さらに、図示の実施形態では、ターゲットパターン42と特徴パターン18との相対角度を調整した後に、ウエーハ4を撮像してパターンマッチングを実行するので、パターンマッチングを短時間に済ますことができる。すなわち、画像処理上でウエーハ4を1°ずつ回転させながら(ウエーハ4の角度を微調整しながら)、パターンマッチングを繰り返す必要がなく、時間的なロスが低減される。このように図示の実施形態では、アライメントにおける従来の問題を解消することができる。
【0044】
なお、図示の実施形態では、ウエーハ4に切削加工を施すダイシング装置として処理装置2が構成されている例を説明したが、本発明の処理装置は、パターンマッチングを実行するものであればよく、ウエーハ4にレーザー加工を施すレーザー加工装置や、検査を含む各種処理をウエーハ4に施す様々な処理装置として構成され得る。
【符号の説明】
【0045】
2:処理装置
4:ウエーハ
4a:ウエーハの表面
4b:ウエーハの裏面
6:チャックテーブル
8:処理手段
10:撮像手段
12:制御手段
14:分割予定ライン
16:デバイス
18:特徴パターン
38:ターゲットパターン記憶部
40:直線領域検出部
42:ターゲットパターン