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特開2022-138583端末ロック・アプリロック解除に基づいた記憶力の推定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138583
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】端末ロック・アプリロック解除に基づいた記憶力の推定システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
A61B10/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038546
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(71)【出願人】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】慶應義塾
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121980
【弁理士】
【氏名又は名称】沖山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【弁理士】
【氏名又は名称】深石 賢治
(72)【発明者】
【氏名】濱谷 尚志
(72)【発明者】
【氏名】山本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】深澤 佑介
(72)【発明者】
【氏名】前田 貴記
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 悠理
(72)【発明者】
【氏名】沖村 宰
(72)【発明者】
【氏名】太田 順
(57)【要約】
【課題】ユーザの脳の状態を容易かつ適切に推定させる。
【解決手段】推定システムは、ユーザが利用する端末における所定の機能が利用不可能な状態であるロック状態を、正答情報をユーザが入力することにより解除する複数種類の解除用ユーザインターフェースのうち、自動的に選択された1つの解除用ユーザインターフェースに対して行われたユーザの操作に関する情報である操作情報を取得する取得部と、取得部により取得された操作情報に基づいてユーザの脳の状態を推定する推定部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが利用する端末における所定の機能が利用不可能な状態であるロック状態を、正答情報をユーザが入力することにより解除する複数種類の解除用ユーザインターフェースのうち、自動的に選択された1つの解除用ユーザインターフェースに対して行われたユーザの操作に関する情報である操作情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記操作情報に基づいて前記ユーザの脳の状態を推定する推定部と、
を備える推定システム。
【請求項2】
前記操作情報は、前記ユーザが前記1つの解除用ユーザインターフェースから他の種類の解除用ユーザインターフェースに切り替えるまでの時間に関する情報である切替時間情報、及び、前記ユーザが前記1つの解除用ユーザインターフェースから前記他の種類の解除用ユーザインターフェースに切り替えた回数に関する情報である切替回数情報の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の推定システム。
【請求項3】
ユーザが利用する端末における所定の機能が利用不可能な状態であるロック状態を、所定のタイミングで新たに自動的に生成されてユーザに提示される正答情報をユーザが入力することにより解除する解除用ユーザインターフェースに対して行われたユーザの操作に関する情報である操作情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記操作情報に基づいて前記ユーザの脳の状態を推定する推定部と、
を備える、推定システム。
【請求項4】
前記操作情報は、前記ユーザが前記解除用ユーザインターフェースの前記正答情報の再提示を要求するまでの時間に関する情報である再提示時間情報、及び、前記ユーザが前記解除用ユーザインターフェースの前記正答情報の再提示を要求した回数に関する情報である再提示回数情報の少なくとも1つを含む、請求項3に記載の推定システム。
【請求項5】
前記操作情報は、前記解除用ユーザインターフェースに対する前記ユーザの操作時間に関する情報である時間情報、及び前記ユーザの操作による前記ロック状態の解除の成功又は失敗の回数に関する情報である成功情報の少なくとも1つを含む、請求項1~4の何れか一項に記載の推定システム。
【請求項6】
前記操作情報に基づいて前記脳の状態を推定する推定モデルを予め取得された学習用データにより学習させる学習部をさらに備え、
前記推定部は、前記学習部における学習で得られた前記推定モデルを用いて前記ユーザの前記脳の状態を推定する、請求項1~5の何れか一項に記載の推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの脳の状態を推定する推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から脳に関する疾病にかかっている可能性を推定する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、携帯型情報処理装置に対するユーザの操作のうち、ユーザの誤操作の頻度に基づいてユーザの脳の異常(疾病の傾向)を推定する携帯型情報処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-141804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の装置は、単にユーザの誤操作の頻度に基づいて脳の異常を推定するため、脳の状態をより適切に推定することができない。また、ユーザの脳の状態を推定する一般的な心理学試験を実施するには、専門家の臨席、所定手順の実行、及び、試験を受けるための十分な時間の確保などが必要であり、当該試験を容易に実施することはできない。電子化された心理学試験もユーザに対して実施可能であるものの、ユーザに試験への参加を意識させた上で実施する必要があるため、当該試験も容易に実施することができない。
【0005】
そこで、本発明は、ユーザの脳の状態を容易かつ適切に推定することができる推定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る推定システムは、ユーザが利用する端末における所定の機能が利用不可能な状態であるロック状態を、正答情報をユーザが入力することにより解除する複数種類の解除用ユーザインターフェースのうち、自動的に選択された1つの解除用ユーザインターフェースに対して行われたユーザの操作に関する情報である操作情報を取得する取得部と、取得部により取得された操作情報に基づいてユーザの脳の状態を推定する推定部と、を備える。
【0007】
この発明において、ユーザは、端末のロック状態を解除するために解除用ユーザインターフェースごとに適した正答情報を記憶している必要がある。ユーザがロック状態の解除操作を行うことで、例えば、ユーザの記憶力、操作能力等を含むユーザの脳の状態に関する情報が操作情報に反映され得る。よって、取得部がユーザがロック状態の解除操作を行う際の操作情報を取得することで、推定部は当該操作情報に基づいてユーザの脳の状態を推定することができる。また、ロック状態の解除操作は多くのユーザが端末の所定の機能を利用する際に必ず行うため、ユーザへの負担を抑えて脳の状態の推定処理を容易に実施することができる。したがって、ユーザの脳の状態を容易かつ適切に推定することができる。
【0008】
本発明の他の側面に係る推定システムは、ユーザが利用する端末における所定の機能が利用不可能な状態であるロック状態を、所定のタイミングで新たに自動的に生成されてユーザに提示される正答情報をユーザが入力することにより解除する解除用ユーザインターフェースに対して行われたユーザの操作に関する情報である操作情報を取得する取得部と、取得部により取得された操作情報に基づいてユーザの脳の状態を推定する推定部と、を備える。
【0009】
この発明において、ユーザは、端末のロック状態を解除するために解除用ユーザインターフェースに対して新たに生成された正答情報を記憶している必要がある。ユーザがロック状態の解除操作を行うことで、例えば、ユーザの記憶力、操作能力等を含むユーザの脳の状態に関する情報が操作情報に反映され得る。よって、取得部がユーザがロック状態の解除操作を行う際の操作情報を取得することで、推定部は当該操作情報に基づいてユーザの脳の状態を推定することができる。また、ロック状態の解除操作は多くのユーザが端末の所定の機能を利用する際に必ず行うため、ユーザへの負担を抑えて脳の状態の推定処理を容易に実施することができる。したがって、ユーザの脳の状態を容易かつ適切に推定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーザの脳の状態を容易かつ適切に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態及び第2実施形態に係る推定システムの機能ブロック構成図である。
図2】第1実施形態に係る解除用ユーザインターフェースの画面例を示す図である。
図3】第1実施形態に係る解除用ユーザインターフェースごとの操作情報の例を示す図である。
図4】心理学試験の試験結果の例を示す図である。
図5】第1実施形態及び第2実施形態に係る推定モデルの構築処理を示すフロー図である。
図6】第1実施形態及び第2実施形態に係る操作情報の取得処理を示すフロー図である。
図7】第1実施形態及び第2実施形態に係る推定モデルを用いたユーザの脳の状態の推定処理を示すフロー図である。
図8】第2実施形態に係る操作情報の例を示す図である。
図9】第1実施形態及び第2実施形態に係る推定システムのハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面を参照しながら本発明の第1実施形態及び第2実施形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0013】
[第1実施形態]
図1を参照して、推定システムの構成を説明する。図1は、第1実施形態に係る推定システムの機能ブロック構成図である。図1に示される推定システム1は、対象ユーザ(ユーザの一例)の脳の状態を推定するシステムである。
【0014】
脳の状態とは、脳により発揮される能力の発揮度合いを指す。脳により発揮される能力には、例えば、記憶力、操作能力などが挙げられる。認知症の原因疾患の1つであるアルツハイマー病で表れる傾向として、脳の記憶障害が知られている。対象ユーザとは、脳の状態が推定される被験者である。
【0015】
推定システム1は、例えば、対象ユーザが利用する端末20と、端末20と通信可能に接続されているサーバ30とを備えている。端末20は、対象ユーザによって操作可能な装置である。端末20の例としては、スマートフォン、タブレット端末等が挙げられる。端末20には、例えば、対象ユーザが操作可能なアプリケーション(以下、「アプリ」という。)がインストールされている。当該アプリの種類は、特に限定されず、例えば、SNS(ソーシャルネットワークサービス)のアプリ、通信用アプリ、動画再生アプリ、カメラ機能アプリ等が挙げられる。
【0016】
端末20は、例えば、タッチパネルを有する。端末20は、タッチパネルにアプリ、ユーザインターフェース等を表示すると共に、対象ユーザの操作による入力を受け付ける。対象ユーザの操作による入力とは、タッチパネルに対して対象ユーザが行ったタップ、スワイプ、ピンチ等を指す。
【0017】
端末20は、ロック解除制御部22を有する。ロック解除制御部22は、端末20が備えている所定の機能を利用不可能な状態であるロック状態にするロック機能と、対象ユーザによる情報の入力によりロック状態を解除可能な解除用ユーザインターフェース(以下、解除用UIという)を記憶する記憶機能と、解除用UIを制御する制御機能と、対象ユーザによる解除用UIへの正答情報の入力によりロック状態を解除する解除機能とを有する。
【0018】
ロック解除制御部22は、対象ユーザによる情報の入力を受け付ける複数種類の解除用UIを記憶している。正答情報とは、各解除用UIに対して定められたロック状態を解除する条件を満たした情報である。正答情報は、ロック解除制御部22において予め記憶されている。
【0019】
ロック解除制御部22のロック機能は、以下に説明する点を除いて、例えば、従来の端末に備わる従来のロック機能と同一の機能である。例えば、端末20のタッチパネルに情報が表示されていない間、又は、解除用UIが端末20のタッチパネルに表示されている間、ロック解除制御部22は端末20をロック状態にしている。端末20のタッチパネルに情報が表示されていない状態とは、例えば、端末20の電源が切れている状態、又は、一時的にタッチパネルの情報を表示させないスリープの状態を指す。ロック状態にするとは、対象ユーザによる正答情報の入力がない限り、端末20における所定の機能を対象ユーザに利用させないことを指す。端末20における所定の機能とは、端末20が有するコンテンツ及びアプリの表示、アプリへの入力の受付等である。
【0020】
ロック解除制御部22において制御される解除用UIは、以下に説明する点を除いて、例えば、従来の端末に備わる解除用UIと同一のユーザインターフェースである。ロック解除制御部22は、複数種類の解除用UIのうち1つの解除用UIを選択する。複数種類の解除用UIは、例えば、正答情報の入力形式がそれぞれ互いに異なるものである。入力形式とは、例えば、タップ、スワイプ等の対象ユーザによる入力操作の種類、又は、各解除用UI40に対して対象ユーザにより入力される文字、数字、大文字、小文字、及び特殊文字等の入力情報の種類を指す。
【0021】
解除用UIは、例えば、端末20が起動する度に、ロック解除制御部22により自動的に選択される。端末20の起動とは、端末20のタッチパネルに情報が表示されていない状態から、端末20のタッチパネルに情報が表示される状態にする処理を指す。端末20を起動させる処理は、例えば、従来の端末と同一の処理である。当該処理は、例えば、電源ボタン等の端末20に設けられたボタンを押下することで開始される。
【0022】
ロック解除制御部22では、例えば、複数種類の解除用UIのうち、主に選択する1つの解除用UIが設定される。主に選択するとは、他の種類の解除用UIを選択する回数より多く、ある1つの解除用UIを選択することを指す。主に選択する1つの解除用UIは、例えば、ユーザによって予め設定される。
【0023】
例えば、ロック解除制御部22に3種類の解除用UIが記憶されている場合、ロック解除制御部22による1回の解除用UIの選択において選択される確率として、主に選択すると設定された1つの解除用UIは80%、他の2種類の解除用UIはそれぞれ10%と設定される。ロック解除制御部22による1回の解除用UIの選択における選択される確率は、解除用UIごとに異なる確率であってよい。これにより、各解除用UI40は、確率に従って1回の選択ごとにランダムに選択される。
【0024】
なお、主に選択する1つの解除用UIを設定しなくてもよい。この場合、ロック解除制御部22による1回の解除用UIの選択において選択される確率として、各解除用UIは同一の確率を有する。
【0025】
また、端末20に対象ユーザの声又は指紋等の生体認証によりロック状態を解除する生体認証機能が搭載されている場合であっても、ロック解除制御部22は、毎回、又は時折、1つの解除用UI40を選択し、当該解除用UI40を表示させる。
【0026】
また、各解除用UI40は、時刻に従って選択されてもよい。例えば、ロック解除制御部22に3種類の解除用UIが記憶されている場合、ロック解除制御部22は、朝の時間帯(例えば0時から8時)にはある1種類の解除用UI40を選択し、昼の時間帯(例えば8時から16時)には上記の1種類以外の1種類の解除用UI40を選択し、夜の時間帯(例えば16時から24時)には前出の2種類以外の1種類の解除用UI40を選択してもよい。
【0027】
ロック解除制御部22は、自動的に選択された1つの解除用UIをタッチパネルに表示させる。当該解除用UIは、例えば端末20が起動する度に端末20のタッチパネルに表示される。
【0028】
ロック解除制御部22は、タッチパネルを介して解除用UI40に対する対象ユーザによる情報(以下、入力情報という)の入力を受け付ける。ロック解除制御部22は、対象ユーザによって入力された入力情報と正答情報とが合致するか否かを判定する。ロック解除制御部22が対象ユーザによって入力された入力情報と正答情報とが合致したと判定した場合、ロック解除制御部22は、端末20のロック状態を解除し、端末20における所定の機能を対象ユーザに利用可能な状態にする。ロック解除制御部22は、ロック状態が解除された場合、解除用UIの表示を終了する。
【0029】
ロック解除制御部22が対象ユーザによって入力された入力情報と正答情報とが合致しないと判定した場合、端末20のロック状態は解除されず、ロック解除制御部22は、端末20内の所定の機能を対象ユーザに利用不可能な状態のままに維持する。この場合、ロック解除制御部22は、例えば、入力情報を削除し、表示されていた解除用UI40を再度表示(再表示)する。
【0030】
以下、対象ユーザによる入力情報の入力後、ロック解除制御部22により、ロック状態が解除される場合を成功とし、ロック状態が解除されない場合を失敗とする。なお、対象ユーザにより所定の時間、解除用UI40に対して入力情報が入力されずにロック状態が維持された場合も、ロック状態の解除に対する失敗とする。所定の時間は、予め定められている。所定の時間とは、例えば、数十秒である。対象ユーザが所定の時間、入力情報を入力しない場合には、例えば、対象ユーザがロック状態の解除を諦めた場合、対象ユーザが解除用UI40がタッチパネル24に表示された状態のままで端末20を放置した場合等が含まれる。
【0031】
図2を参照して、ロック解除制御部22により端末20のタッチパネルに表示される解除用UI40を説明する。図2は、第1実施形態に係る解除用ユーザインターフェースの画面例を示す図である。図2の(a)はPIN(Personal Identification Number)コードを用いた解除用UIの画面例を示す図である。端末20のタッチパネル24には、解除用UI40Aとして、例えば、数字ボタン、削除ボタン及び入力確定ボタンを含む入力用キーボード41と、入力用キーボード41により入力が受け付けられた数字に応じて丸等の図形を表示する出力欄42とが表示される。図2の(a)に示される入力用キーボード41において、例えば、0から9までの整数が記載された複数の数字ボタンは中央部に複数列に並んで表示され、削除ボタンは左下に表示され、入力確定ボタンは右下に表示される。正答情報は、対象ユーザ等により予め定められた所定の桁数(個数)の数字列、例えば4桁の数字列である。
【0032】
例えば、対象ユーザが入力用キーボード41として表示された数字ボタンのいずれかをタップすることで、当該数字ボタンに示された数字の入力がタッチパネル24において受け付けられる。また、例えば、対象ユーザが誤った数字を入力し、当該数字を削除したい場合には、対象ユーザが入力用キーボード41として表示された削除ボタンをタップする。これにより、新しく入力された数字から順に、削除ボタンがタップされた回数と同一の個数の数字の削除がタッチパネル24において受け付けられる。ロック解除制御部22は、タッチパネル24において受け付けられた数字の個数に応じて、出力欄42に丸等の図形を表示する。例えば、対象ユーザが、入力された順番に並べられた数字の数字列を入力情報として確定したい場合、対象ユーザは、入力用キーボード41として表示された入力確定ボタンをタップする。この場合、ロック解除制御部22は、対象ユーザにより入力確定ボタンがタップされたときに当該数字列を入力情報として取得する。なお、例えば、受け付けられた数字の個数が正答情報の数字の個数になった場合、ロック解除制御部22は、入力された順番に並べられた当該数字の数字列を入力情報として取得してもよい。このとき、入力用キーボード41には、入力確定ボタンが含まれなくてもよい。
【0033】
図2の(b)は第1実施形態に係るパターンロックを用いた解除用UIの画面例を示す図である。パターンロックとは、スワイプ操作を使用したロック解除方法のことである。タッチパネル24には、解除用UI40Bとして、例えば、対象ユーザが選択可能な図形が表示された複数の選択可能ボタン43と、対象ユーザのスワイプ操作が受け付けられた選択可能ボタン43を順に結んで表示する入力軌跡44とが表示される。
【0034】
解除用UI40Bにおいて、対象ユーザが複数の選択可能ボタン43をなぞり終えたとき(例えば対象ユーザがタッチパネル24から指を離したとき)、ロック解除制御部22は、対象ユーザが複数の選択可能ボタン43をなぞっていくことで構成された入力軌跡44を入力情報として取得する。なお、解除用UI40Bにおいて、対象ユーザが複数の選択可能ボタン43のうちいずれかを順になぞっていくことで構成された入力軌跡44が予め設定された長さになった場合、ロック解除制御部22は、当該入力軌跡44を入力情報として取得してもよい。なお、正答情報は、対象ユーザ等によって予め定められた選択可能ボタン43を順に結んだ軌跡である。
【0035】
図2の(c)は第1実施形態に係るパスワードを用いた解除用ユーザインターフェースの画面例を示す図である。解除用UI40Cとして、例えば、文字ボタン、削除ボタン及び入力確定ボタンを含む入力用キーボード45と、入力用キーボード45により入力が受け付けられた文字に応じて丸等の図形を表示する出力欄46とがタッチパネル24に表示される。図2の(c)に示される入力用キーボード45において、アルファベット及び記号が記載された複数の文字ボタンは中央部に複数列に並んで表示され、削除ボタンは右上に表示され、入力確定ボタンは右下に表示される。正答情報は、対象ユーザ等により予め定められた所定の個数の文字列、例えば16文字以下の文字列である。
【0036】
例えば、対象ユーザが入力用キーボード45として表示された文字ボタンのいずれかをタップすることで、当該文字ボタンに示された文字の入力がタッチパネル24において受け付けられる。また、例えば、対象ユーザが誤った文字を入力し、当該文字を削除したい場合には、対象ユーザは入力用キーボード45として表示された削除ボタンをタップする。これにより、新しく入力された文字から順に、削除ボタンがタップされた回数と同一の個数の文字の削除がタッチパネル24において受け付けられる。ロック解除制御部22は、タッチパネル24において受け付けられた文字の個数に応じて、出力欄46に丸等の図形を表示する。例えば、対象ユーザが、入力された順番に並べられた文字の文字列を入力情報として確定したい場合、対象ユーザは、入力用キーボード45として表示された入力確定ボタンをタップする。この場合、ロック解除制御部22は、対象ユーザにより入力確定ボタンがタップされたときに当該文字列を入力情報として取得する。なお、例えば、受け付けられた文字の個数が正答情報の文字の個数になった場合、ロック解除制御部22は、入力された順番に並べられた当該文字の文字列を入力情報として取得してもよい。このとき、入力用キーボード45には、入力確定ボタンが含まれなくてもよい。
【0037】
ここで、複数種類の解除用UI40のうちロック解除制御部22が主に選択していない解除用UI40(例えば解除用UI40B,40C)は、ロック解除制御部22が主に選択する解除用UI(例えば、解除用UI40A)に比べて、タッチパネル24に表示される確率が低い。よって、対象ユーザが解除用UI40B又は解除用UI40Cに対して正答情報を入力する回数は、対象ユーザが解除用UI40Aに対して正答情報を入力する回数に比べて少ない。したがって、対象ユーザは、解除用UI40Aに対する正答情報に比べて、解除用UI40B,40Cに対する各正答情報を正しく記憶する可能性が低く、忘却する可能性が高い。
【0038】
したがって、解除用UI40B,40Cが表示される度に対象ユーザがロック状態の解除に失敗し続けることで、対象ユーザが端末20の所定の機能の利用を諦めてしまう場合、又は、時間を多く使ってしまう場合等が生じる可能性がある。よって、推定システム1では端末20の利便性の低下を抑制する必要がある。
【0039】
上記の端末20における利便性の低下の抑制のため、解除用UI40B,40Cは、解除用UI40B又は解除用UI40Cのいずれかから他の種類の解除用UI40に切り替えるヘルプボタン47を有している。例えば、対象ユーザがヘルプボタン47をタップすることで、タッチパネル24によって入力が受け付けられる。
【0040】
ロック解除制御部22は、解除用UI40B又は解除用UI40Cにおいてヘルプボタン47がタップされたか否かを判定する。ロック解除制御部22が解除用UI40B又は解除用UI40Cにおいてヘルプボタン47がタップされていないと判定した場合、解除用UI40B又は解除用UI40Cによるロック状態が維持され、ロック解除制御部22は引き続き対象ユーザの入力を受け付ける。ロック解除制御部22が解除用UI40B又は解除用UI40Cにおいてヘルプボタン47がタップされたと判定した場合、解除用UI40B又は解除用UI40Cによるロック状態が解除されていないとして、ロック状態の解除は失敗と判定される。
【0041】
上述の失敗の場合、ロック解除制御部22は、複数種類の解除用UIのうち既に表示した解除用UI40B又は解除用UI40C以外の解除用UI40を自動的に選択する。ロック解除制御部22は、例えば、主に選択する解除用UI40Aを自動的に選択する。ロック解除制御部22は、タッチパネル24に選択された解除用UI40Aを表示する。
【0042】
よって、ロック解除制御部22によって主に選択されない解除用UI40B,40Cがタッチパネル24に表示されても、ヘルプボタン47を介して主に選択される解除用UI40Aをタッチパネル24に表示することができる。よって、解除用UI40Aがタッチパネル24に表示されることで、端末20の安全性を維持し、かつ、対象ユーザに容易に正答情報を思いださせてロック状態の解除に成功させる確率(成功率)を上げ、かつ、対象ユーザの利便性を向上させることができる。
【0043】
なお、ヘルプボタン47は、タッチパネル24において他のユーザインターフェースと独立したボタンの態様でなくてもよい。例えば、選択可能ボタン43又は入力用キーボード45に対して所定のボタンをタップした場合にロック解除制御部22は、解除用UI40B,40Cから解除用UI40Aに切り替えてもよい。例えば、端末20に設けられたマイクに対して対象ユーザが所定の音声を入力した場合に、ロック解除制御部22は、解除用UI40B,40Cから解除用UI40Aに切り替えてもよい。
【0044】
ロック解除制御部22は、解除用UI40に対して行われた対象ユーザの操作に関する情報である第1操作情報を出力する。ロック解除制御部22は、例えば、予め定められたタイミングで第1操作情報をサーバ30に送信する。ロック解除制御部22は、例えば、解除用UI40に対する対象ユーザによる1回のロック状態の解除の試行が終了する毎に1つの第1操作情報をサーバ30に送信する。1回の試行とは、ロック解除制御部22により選択された1つの解除用UI40がタッチパネル24に表示、又は再度表示されてから、ロック解除制御部22によりロック状態の解除に成功したか否かの試行結果が判定されるまでの1回の処理過程を指す。なお、ロック解除制御部22は、予め定められた試行の回数毎に、又は、予め定められた期間毎に第1操作情報をサーバ30に送信してもよい。
【0045】
第1操作情報は、ロック解除制御部22がタッチパネル24に表示させた解除用UI40の方式(種類)、及び、当該解除用UI40に対する1回の試行においてロック状態の解除に成功したか否か(対象ユーザによる入力情報が正答情報と合致したか否か)を示す試行結果を含む。試行結果は、ロック状態の解除における成功又は失敗を含む。試行結果の失敗は、入力情報が正答情報と合致しない場合を示す通常失敗結果、ヘルプボタン47がタップされた場合を示すヘルプ結果、及び、対象ユーザにより所定の時間、解除用UI40に対して入力情報が入力されずにロック状態が維持された場合を示す放置結果の3種類に区別されていてもよい。
【0046】
第1操作情報は、当該解除用UI40における1回の試行の開始タイミング、当該解除用UI40における1回の試行の終了タイミング、ヘルプボタン47が利用されたか否かを示すヘルプ利用情報等をさらに含む。
【0047】
開始タイミングは、ロック解除制御部22により選択された1つの解除用UI40がタッチパネル24に表示された時刻、対象ユーザがロック状態の解除に失敗した場合に解除用UI40がタッチパネル24に再度表示された時刻、及びヘルプボタン47を利用した場合に解除用UI40がタッチパネル24に表示された時刻を含む。開始タイミングは、ロック解除制御部22により1つの解除用UI40が選択された時刻を含んでいてもよい。
【0048】
試行結果が成功又は通常失敗結果である場合、終了タイミングは、対象ユーザがロック状態の解除に成功したか(失敗したか)をロック解除制御部22が判定した時刻である。試行結果がヘルプ結果である場合、終了タイミングは、ロック解除制御部22が対象ユーザによるヘルプボタン47の入力を検出した時刻である。試行結果が放置結果であった場合、終了タイミングは、当該試行結果を含む試行における解除用UI40が表示された開始タイミングから当該所定の時間だけ経過した時刻である。
【0049】
ロック解除制御部22は、ヘルプボタン47が利用(タップ)されたか否かを判定する。ロック解除制御部22によりヘルプボタン47が利用されたと判定された場合、例えば、ロック解除制御部22は、ヘルプ利用情報を「あり」とする。ロック解除制御部22によりヘルプボタン47が利用されていないと判定された場合、例えば、ロック解除制御部22は、ヘルプ利用情報を「なし」とする。ヘルプ利用情報が「なし」となる場合とは、解除用UI40B,40Cにおけるヘルプボタン47がタップされていない場合と、ヘルプボタン47が表示されない解除用UI40Aが表示された場合とが含まれる。
【0050】
再び図1を参照して、サーバ30の構成を説明する。サーバ30は、取得部32、学習部34、及び推定部36を有する。取得部32、学習部34及び推定部36は、例えば、情報を記憶する機能を有するデータベースを備える。取得部32、学習部34及び推定部36は、各機能部のデータベースから情報を取得可能なように構成されている。なお、各機能部のデータベースは、サーバ30の外部に設けられていてもよい。
【0051】
取得部32は、解除用UI40に対して行われた対象ユーザの操作に関する情報である操作情報を取得する。操作情報は、端末20のロック解除制御部22から出力された第1操作情報と、第1操作情報に基づいて算出された第2操作情報とを含む。取得部32は、操作情報をデータベースに記憶させる。
【0052】
取得部32は、端末20において1回のロック状態の解除の試行が終了する毎に1つの第1操作情報を端末20から取得する。取得部32は、予め定められたタイミングで第2操作情報を算出して取得する。取得部32は、例えば、サーバ30の管理者がサーバ30に対して所定の操作を行ったタイミング等の対象ユーザの脳の状態を推定するタイミングで第2操作情報を算出する。この場合、取得部32は、当該タイミングから予め定められた期間(例えば、数日)遡った期間に取得した対象ユーザに係る第1操作情報に基づいて第2操作情報を算出する。
【0053】
取得部32は、例えば、取得した第1操作情報の個数が予め定められた個数になった場合に第2操作情報を算出してもよい。この場合、取得部32は、当該予め定められた個数(例えば、数十個)の対象ユーザに係る第1操作情報を取得し、当該第1操作情報に基づいて第2操作情報を算出する。但し、取得部32は、上記のタイミングに限らず、対象ユーザの脳の状態を推定するタイミング以前のタイミングに対象ユーザに係る第1操作情報を取得し、当該第1操作情報に基づいて第2操作情報を算出すればよい。
【0054】
図3を参照して第2操作情報を説明する。図3の(a)及び図3の(b)は第1実施形態に係る解除用ユーザインターフェースごとの第2操作情報の一例を示す図である。取得部32は、図3の(a)に示される各情報、及び、図3の(b)に示される各情報の少なくとも一方を第2操作情報として取得する。図3の(a)における「ロック解除方式A」は解除用UI40Aを指し、「ロック解除方式B」は解除用UI40Bを指し、「ロック解除方式C」は解除用UI40Cを指す。
【0055】
図3の(b)における「主要方式」とは、ロック解除制御部22が主に選択する解除方式を指し、本実施形態では解除用UI40Aを指す。「その他方式」とは、ロック解除制御部22が主に選択していない解除方式を指し、本実施形態では解除用UI40B,40Cである。図3の(b)に示される「その他方式」の行の各値は、図3の(a)に示される解除用UI40B,40Cの各値に基づいて得られる特徴量(例えば、各値の平均値)である。このように、取得部32は、解除用UI40毎に第2操作情報を算出する。あるいは、取得部32は、主要方式及びその他方式毎に第2操作情報を算出してもよい。
【0056】
取得部32は、第2操作情報として、解除用UI40に対する対象ユーザの所要時間(操作時間の一例)に関する情報である時間情報、及び対象ユーザの操作によるロック状態の解除の成功又は失敗の回数に関する情報である成功情報の少なくとも1つを算出する。また、取得部32は、対象ユーザが解除用UI40B又は解除用UI40Cから解除用UI40Aに切り替えるまでの時間に関する情報である切替時間情報、及び、対象ユーザが解除用UI40B又は解除用UI40Cから解除用UI40Aに切り替えた回数に関する情報である切替回数情報の少なくとも1つを含んでもよい。以下、順に各情報を説明する。
【0057】
取得部32は、時間情報を算出する上で必要になる1回の試行ごとの所要時間を算出する。取得部32は、開始タイミング及び終了タイミングに基づいて、対象ユーザが解除用UI40に対する1回の試行に要した所要時間を算出する。取得部32は、解除用UI40に対する1回の試行における終了タイミングの時間から当該試行における開始タイミングを引くことで解除用UI40に対する1回の試行における所要時間を得る。所要時間の単位は、例えば、秒である。
【0058】
また、取得部32は、切替時間情報を算出する上で必要になる1回の試行ごとの切替時間を算出する。取得部32は、ヘルプ利用情報、開始タイミング及び終了タイミングに基づいて、対象ユーザが1つの解除用UI40B又は解除用UI40Cから他の種類の解除用UI40Aに切り替えるまでに要した時間を切替時間として算出する。例えば、ヘルプ利用情報が「あり」となっている第1操作情報における終了タイミングから、当該第1操作情報における開始タイミングを引く。これにより、取得部32は、ヘルプボタン47が利用された1回の試行に要した所要時間である切替時間を得る。切替時間の単位は、例えば、秒である。なお、例えば、ある第1操作情報においてヘルプ利用情報が「なし」となっている場合、取得部32は切替時間を算出しない。
【0059】
さらに、取得部32は、切替回数情報を算出する上で必要になる各解除用UI40の切替回数を算出する。取得部32は、ヘルプ利用情報に基づいて、対象ユーザが1つの解除用UI40B又は解除用UI40Cから他の種類の解除用UI40Aに切り替えた回数である切替回数を算出する。取得部32は、ヘルプ利用情報が「あり」となっている第1操作情報の個数を数え上げることで切替回数を算出する。
【0060】
次に、取得部32は、時間情報の一例として、各解除用UI40から得られた所要時間に基づいて特徴量を算出する。当該特徴量は、例えば、所要時間の平均、及び所要時間の分散を含む。
【0061】
取得部32は、第2操作情報の一例である切替時間に関する情報である切替時間情報を算出する。切替時間情報は、例えば、切替時間の平均、及び切替時間の分散を含む。
【0062】
また、取得部32は、第2操作情報の成功情報の一例として、試行結果に基づいて、各解除用UI40における対象ユーザの試行回数に対する対象ユーザによるロック状態の解除の成功回数の割合である成功率を算出する。成功回数は、試行結果が成功となっている試行の回数を指す。なお、成功情報は、例えば、成功回数を含んでいてもよい。
【0063】
さらに、取得部32は、第2操作情報の一例である切替回数に関する情報である切替回数情報を算出する。取得部32は、切替回数情報の一例として、試行回数及びヘルプ利用情報に基づいて、解除用UI40B,40Cのそれぞれの試行回数に対する対象ユーザによりヘルプボタン47が利用(タップ)された回数の割合であるヘルプ利用率を算出する。切替回数情報は、例えば、切替回数の合計を含んでもよい。なお、成功率とヘルプ利用率との和は1以下となる。
【0064】
図3に示される各第2操作情報について説明する。成功情報の一例である成功率が低い場合、対象ユーザが正答情報を忘却した可能性、及び正答情報を誤って記憶した可能性の少なくとも一方が推定される。よって、成功率が低い場合、対象ユーザの脳の状態のうち記憶力の低下が推定される。
【0065】
成功率が高く、かつ、時間情報の一例である所要時間の平均値が小さいほど、対象ユーザの記憶力、操作能力等の脳の状態が良好であることが推定される。成功率が高く、かつ、所要時間の平均値が大きいほど、対象ユーザは正答情報を正しく記憶している一方で、思い出すのに時間がかかっている場合、又は入力情報を入力するのに時間がかかっている場合が推定される。よって、この場合、対象ユーザの脳の状態のうち記憶力及び操作能力の少なくとも一方の低下が推定される。
【0066】
時間情報の一例である所要時間の分散の値が大きい場合、対象ユーザの記憶力の状態により試行の時刻によりばらつきがあることが示され、対象ユーザの脳の状態が良好ではないと推定される。
【0067】
所要時間の平均値が大きく、かつ、ヘルプ利用率が高い場合、対象ユーザが正答情報を忘却した可能性、及び正答情報を誤って記憶した可能性の少なくとも1つが強く推定される。よって、この場合、対象ユーザの脳の状態が良好ではないことが推定される。所要時間の平均値が小さく、かつ、ヘルプ利用率が高い場合、対象ユーザが利便性向上のためにヘルプボタン47をタップした可能性が推定される。
【0068】
その他方式において主要方式に比較して成功率が低い場合、対象ユーザが正答情報を忘却した可能性、及び正答情報を誤って記憶した可能性の少なくとも1つがあると推定することができる。また、その他方式において主要方式に比較して成功率は高いが所要時間の平均値が大きい場合、対象ユーザは正答情報を正しく記憶している一方で、思い出すのに時間がかかっている場合、又は入力情報を入力するのに時間がかかっている場合の少なくとも一方が推定される。これらの場合、対象ユーザの脳の状態が良好ではないことが推定される。
【0069】
なお、主要方式に比べてその他方式において、全方式の試行回数に対するその他方式の入力情報の入力回数が少ないため、その他方式の正答情報は対象ユーザに認識される頻度が低く、当該正答情報は対象ユーザにとって記憶しがたい。そのため、その他方式における成功率と主要方式における成功率とを比較することで、脳の状態が良好か否かがより適切に推定される。取得部32は、主要方式とその他方式との各変数の差分等の特徴量を第2操作情報として取得してもよい。
【0070】
図3に示されてはいないが、切替時間情報のうち、切替時間の平均値が大きく、かつ、成功率が低い場合、対象ユーザが正答情報を忘却した可能性、及び正答情報を誤って記憶した可能性の少なくとも一方が推定される。よって、この場合、対象ユーザの脳の状態が良好ではないことが推定される。また、切替時間情報のうち切替時間の平均値が小さく、かつ、成功率が低い場合、対象ユーザが利便性のためにヘルプボタン47をタップした可能性が推定される。
【0071】
再び図1を参照する。推定部36は、取得部32により取得された操作情報に基づいて対象ユーザの脳の状態を推定する。推定部36が推定に用いる操作情報は、例えば、各解除用UI40における所要時間の平均値及び所要時間の分散を含む時間情報、成功率を含む成功情報、切替回数情報及び切替時間情報の少なくとも1つを有する第2操作情報である。なお、推定部36が推定に用いる操作情報は、例えば、主要方式及びその他方式における所要時間の平均値及び所要時間の分散を含む時間情報、成功率を含む成功情報、切替回数情報及び切替時間情報の少なくとも1つを有していてもよい。
【0072】
推定部36は、学習部34における学習で得られた推定モデルを学習部34のデータベースから取得する。推定部36は、取得部32により取得された対象ユーザの上述の第2操作情報を推定モデルに入力することで、対象ユーザの脳の状態を表す状態指標を推定する。状態指標は、例えば、対象ユーザの記憶力、操作能力等の状態を表す指標である。状態指標は、例えば、後述するように数値で表される。推定部36により推定された状態指標に対して従来と同一の基準を用いることで、対象ユーザの脳の状態が良好である等のように脳の状態が判断されてもよい。
【0073】
推定部36は、例えば、出力機能を有する。推定部36は、例えば、対象ユーザが所有する端末20のタッチパネル24に、推定された対象ユーザの状態指標を表示する。推定部36は、例えば、データベースに推定された対象ユーザの状態指標を記憶させる。
【0074】
学習部34は、操作情報に基づいて脳の状態を推定する推定モデルを予め取得された学習用データにより学習させる。学習用データは、学習用ユーザの学習用操作情報及び学習用状態指標を含む。学習用ユーザとは、ユーザの一例であり、上述の端末20と同一の機能を有する学習用端末を操作し、後述の試験端末を操作する被験者である。
【0075】
学習用操作情報は、学習用ユーザが学習用端末を操作することで得られる情報であり、上述の操作情報と同一の種類の情報を含む。学習用操作情報は、例えば、第2操作情報と同一の種類の情報を含む。学習用操作情報は、例えば、各解除用UI40、主要方式及びその他方式の少なくとも1つの方式における、所要時間の平均値及び所要時間の分散を含む時間情報、成功率を含む成功情報、切替回数情報及び切替時間情報の少なくとも1つを有する。学習部34は、推定部36が推定に用いる操作情報と同一の種類の学習用操作情報を学習用データとする。学習用状態指標は、学習用ユーザが試験端末を操作することで得られる情報であり、上述の状態指標と同一の種類の情報を含む。学習用状態指標は、例えば、後述の4つの値を含む。
【0076】
学習部34は、学習用端末から出力される学習用操作情報を取得し、後述の試験端末から出力される学習用状態指標を取得する。学習用操作情報は、例えば、上述の操作情報の取得と同様に取得される。学習部34は、サーバ30の管理者がサーバ30に対して所定の操作を行ったタイミング等の推定モデルを学習させるタイミング又は当該タイミング以前に学習用操作情報及び学習用状態指標を取得する。学習部34は、例えば、学習用操作情報及び学習用状態指標をデータベースに記憶させる。
【0077】
学習用ユーザが学習用端末に対して操作を行うと共に試験端末における心理学試験を実行することで、学習部34のデータベースに記憶された学習用操作情報及び学習用状態指標が推定モデルの学習用データとして得られる。例えば、学習部34において所定の期間の学習用操作情報が取得される場合、当該所定の期間又は当該所定の期間の直前若しくは直後に1回又は複数回、学習用状態指標が測定され、記憶される。
【0078】
推定モデルは、従来の機械学習により学習されるモデルである。推定モデルは、例えば、従来のニューラルネットワークを含んで構成されている。あるいは、推定モデルは、それ以外のモデルであってもよい。推定モデルは、推定部36が推定に用いる操作情報を入力して、状態指標を出力するものである。学習部34は、取得した学習用データである学習用操作情報を推定モデルへの入力(入力値)として、かつ、取得した学習用状態指標を推定モデルからの出力(出力値)として、機械学習を行うことで推定モデルを生成する。このように学習部34は、学習用操作情報をx、学習用状態指標をyとしたとき、推定モデルの関係式であるy=f(x)内で示されている関数fを学習する。学習部34は、学習させた推定モデルをデータベースに記憶させる。
【0079】
ここで、学習用状態指標は、学習用ユーザが心理学試験を受けることにより得られる。当該心理学試験は、専門家の臨席の下、試験を受けるための十分な時間が確保されたうえで所定手順で実行される。心理学試験の一例として、従来の「n-back task」が挙げられる。図4の(a)は心理学試験の試験結果の例を示す図である。図4の(b)は心理学試験の試験結果から導出された脳の状態に対する特徴量を示す図である。n-back taskは、例えば、ユーザが、スマートフォンのような受付表示部を備える試験端末(不図示)を使用することで行われる。
【0080】
図4の(a)の「提示符号」の列に示されるように、n-back taskにおいて、試験端末の画面上には、様々な種類の符号(文字、数字、図形など)が所定の試行回数だけ次々に提示される。学習用ユーザは各提示符号に適した対処をする。例えば、学習用ユーザは、n回前に提示された提示符号と現在提示されている提示符号とが異なる場合においては試験端末に対して何も操作せず見送る(「タスク種別」における「A(見送り)」)。nは予め定められた自然数であり、例えば2である。例えば、学習用ユーザは、n回前に提示された提示符号と現在提示されている提示符号とが同一の場合においては素早く反応して試験端末へのタップを実施する(「タスク種別」における「B(反応)」)。図4の(a)の「試行ID」の列は、試験端末に表示される符号の提示ごとに割り振られた番号である。
【0081】
タスク種別が「A(見送り)」である試験(以下、タスクAという)に対して何も操作せず見送った場合、又は、タスク種別が「B(反応)」である試験(以下、タスクBという)に対してタップを実施した場合、反応結果は「成功」となる。タスクAに対して誤ってタップを実施した場合、又は、タスクBに対して所定の時間以上何も操作せず見送った場合、反応結果は「失敗」となる。試験端末は、上記の「成功」と「失敗」との情報を試験結果として取得する。また、試験端末は、タスクBが表示されてから学習用ユーザがタップ操作するまでの時間である反応時間を試験結果として取得する。反応時間の単位は、例えば、秒である。
【0082】
図4の(b)に示されるように、試験端末は、試験結果として得られた各データに基づいて学習用状態指標を算出する。学習用状態指標は、例えば、すべての心理学試験の成功率の平均値である全体の成功率、タスクAに対する成功率であるタスクA成功率、タスクBに対する成功率であるタスクB成功率、及びタスクBにつき得られた反応時間であるタスクB反応平均時間の少なくとも1つのデータである。タスクB反応時間の単位は、例えば、秒である。試験端末は、状態指標をサーバ30の学習部34のデータベースに記憶させる。
【0083】
例えば、全体の成功率が小さい場合、タスクA成功率が小さい場合、タスクB成功率が小さい場合、又はタスクB反応平均時間が大きい場合は、脳の状態が良好ではないと推定される。なお、学習用状態指標は上述の指標のうちいずれか1つ又は複数の指標であってもよい。学習用状態指標は、上述の各指標を組み合わせて得られた新しい指標を含んでいてもよい。学習用状態指標は、上述の心理学試験によって得られた指標に限定されず、脳の状態を示す任意の指標であってもよい。
【0084】
学習部34は、所定の人数以上の複数の学習用ユーザの学習用操作情報及び学習用状態指標を推定モデルに学習させる。所定の人数とは、例えば数十人又は数百人である。学習用端末に対する学習用ユーザの操作により得られた学習用操作情報と、専門家が監修した心理学試験において導出された学習用状態指標とは、それぞれ脳の状態を示唆している。このため、学習用操作情報と学習用状態指標とは、脳の状態の悪化(機能の低下)を示唆するデータとして相関関係があると推定される。
【0085】
学習部34は、相関関係のある学習用操作情報及び学習用状態指標とを推定モデルの学習に用いる。これにより、推定モデルは、対象ユーザの操作情報に含まれる各情報から対象ユーザの状態指標を推定する機能を獲得する。
【0086】
次に、図5図7のフローチャートを用いて、本実施形態に係る推定システム1で実行される処理(推定システム1における推定方法)を説明する。まず、図5に示される推定システム1において推定モデルを構築する処理を説明する。図5は、第1実施形態に係る推定モデルの構築処理を示すフロー図である。以下、単に「ユーザ」と記載した場合は、ユーザには対象ユーザと学習用ユーザとが含まれる。
【0087】
学習用取得処理(ステップS1)として、サーバ30の学習部34により、学習用ユーザの操作情報が取得される。図6に示されるように、学習用取得処理(ステップS1)は、以下の複数のステップにより構成されている。図6は、第1実施形態に係る操作情報(学習用操作情報)の取得処理を示すフロー図である。以下、学習用データを取得する際に機能する学習用端末については端末20と記載し、学習用端末が有する各機能部及びユーザインターフェースについては端末20が有する各機能部及びユーザインターフェースとして説明する。
【0088】
まず、選択処理(ステップS11)として、端末20が起動する度に、端末20のロック解除制御部22により、複数種類の解除用UI40のうち1つの解除用UI40が選択される。続いて、表示処理(ステップS12)として、端末20のロック解除制御部22により、選択処理(ステップS11)において選択された解除用UI40が所定のタイミングでタッチパネル24に表示される。選択された解除用UI40がタッチパネル24に表示された場合、ロック解除制御部22において、対象ユーザによる当該解除用UI40に対するロック状態の解除に関する操作が受け付けられる。
【0089】
続いて、第1取得処理(ステップS13)として、端末20のロック解除制御部22により、タッチパネル24に表示された解除用UI40に対して行われたユーザの操作に関する情報である第1操作情報がサーバ30に送信される。サーバ30において、端末20のロック解除制御部22から送信された第1操作情報が取得される。当該第1操作情報は、サーバ30においてデータベースに記憶される。端末20において、選択処理(ステップS11)から第1取得処理(ステップS13)までの処理が繰り返される。
【0090】
サーバ30において、所定のタイミングで次のステップの算出処理(ステップS14)が実行される。この場合、算出処理(ステップS14)として、解除用UI40に対するユーザの第1操作情報に基づいて第2操作情報が算出される。データベースに記憶された第1操作情報が取得された後、当該第1操作情報に基づいて第2操作情報が算出される。算出処理(ステップS14)において、算出された第2操作情報は、データベースに記憶される。
【0091】
第2取得処理(ステップS15)として、データベースに記憶された操作情報(学習用操作情報)が取得される。これにより、図6に示される学習用取得処理(ステップS1)が完了する。
【0092】
図5を再び参照する。続いて、指標取得処理(S2)として、サーバ30の学習部34によって、学習用操作情報が取得された学習用ユーザに対する学習用状態指標が取得される。学習部34によって、試験端末により学習部34のデータベースに記憶された対象ユーザの学習用状態指標が取得される。
【0093】
続いて、学習処理(ステップS3)として、サーバ30の学習部34によって、学習用操作情報及び学習用状態指標を推定モデルに学習させることで、対象ユーザの操作情報を説明変数とし、対象ユーザの状態指標を目的変数とする推定モデルが得られる。学習部34によって、推定モデルがデータベースに記憶される。以上の処理により、図5に示される推定モデルの構築処理が完了する。
【0094】
次に、図7を参照して、推定システム1における推定モデルを用いて対象ユーザの脳の状態を予測する処理を説明する。図7は、第1実施形態に係る推定モデルを用いたユーザの脳の状態の推定処理を示すフロー図である。
【0095】
まず、推定用取得処理(ステップS4)として、サーバ30の取得部32によって、対象ユーザの第2操作情報が取得される。推定用取得処理(ステップS4)における処理は、例えば、サーバ30の学習部34により実行される図6に示される学習用取得処理(ステップS1)内の各処理と同一の処理であって、サーバ30の学習部34に代わって取得部32により進められる。
【0096】
続いて、図7に示される推定処理(ステップS5)として、サーバ30の推定部36によって、学習部34のデータベースから推定モデルが取得され、対象ユーザの第2操作情報が取得された推定モデルに入力されることで、対象ユーザの状態指標が推定される。推定部36は、対象ユーザの状態指標に基づいて対象ユーザの脳の状態を推定する。
【0097】
続いて、出力処理(ステップS6)として、サーバ30の推定部36によって、対象ユーザが所有する端末20のタッチパネル24に、推定された対象ユーザの状態指標を表示する。推定部36は、推定された対象ユーザの状態指標をデータベースに記憶させる。これにより、図7に示される対象ユーザの状態指標を推定する処理が完了する。
【0098】
以上のように、第1実施形態の推定システム1は、対象ユーザの脳の状態を容易かつ適切に推定することができる。対象ユーザは、端末20のロック状態を解除するために解除用UI40ごとに適した正答情報を記憶している必要がある。対象ユーザがロック状態の解除操作を行うことで、例えば、対象ユーザの記憶力、操作能力等を含む対象ユーザの脳の状態に関する情報が操作情報に反映され得る。よって、サーバ30の取得部32が、対象ユーザがロック状態の解除操作を行う際の操作情報を取得することで、推定部36は当該操作情報に基づいて対象ユーザの脳の状態を推定することができる。また、ロック状態の解除操作は多くの対象ユーザが端末20の所定の機能を利用する際に必ず行うため、対象ユーザへの負担を抑えて脳の状態の推定処理を容易に実施することができ、対象ユーザに対して心理学試験のように明示的に意識させることなく暗黙的に脳の状態の推定に必要な情報の取得を実施することができる。したがって、推定システム1は、解除用UI40によるロック状態により端末20の安全性を確保しつつ、脳の状態を容易かつ適切に推定することができる。
【0099】
また、推定システム1は、端末20のタッチパネル24においてロック解除制御部22が主に選択していない解除用UI40B,40Cを表示する。この場合、対象ユーザは、主に選択している解除用UI40Aに対する正答情報を記憶するよりも、解除用UI40B,40Cに対する各正答情報を意識的に記憶する必要がある。よって、端末20のタッチパネル24において表示した解除用UI40B,40Cに対する対象ユーザの操作情報により、意識的に思い出す必要のある正答情報を正しく又は早く入力できたか否かが推定され、対象ユーザの記憶力を適切に推定することができる。
【0100】
ロック解除制御部22が主に選択していない解除用UI40B,40Cにはヘルプボタン47が表示されるため、対象ユーザが当該解除用UI40B,40Cに対応する正答情報を記憶していない場合であっても、対象ユーザはヘルプボタン47をタップすることで解除用UI40Aに切り替えることができ、解除用UI40によるロック状態により端末20の安全性を確保しつつ、端末20のロック状態の解除をするときの対象ユーザにとっての利便性を維持することができる。
【0101】
また、推定システム1は、操作情報に基づいて脳の状態を推定する推定モデルを予め取得された学習用データにより学習させる学習部34をさらに備え、推定部36は、学習部34における学習で得られた推定モデルを用いて対象ユーザの脳の状態を推定してもよい。学習部34において、学習用ユーザの操作情報と、当該学習用ユーザの心理学試験のデータである状態指標とを推定モデルに学習させる。推定モデルは、操作情報が入力されることで状態指標を出力するように学習される。これにより、推定部36において推定モデルに対象ユーザの操作情報を入力することで、対象ユーザの状態指標を得ることができる。よって、推定システム1は、対象ユーザの脳の状態を、操作情報から示唆される内容に加えて、推定される状態指標が示す内容に基づいて推定することができる。
【0102】
また、操作情報は、切替時間情報、及び切替回数情報の少なくとも1つを含んでもよい。切替時間情報のうち、切替時間の平均値が大きく、かつ、成功率が低い場合、対象ユーザが正答情報を忘却した可能性、及び正答情報を誤って記憶した可能性の少なくとも一方が推定され、対象ユーザの脳の状態が良好ではないと推定される。また、切替時間情報のうち、切替時間の平均値が小さく、かつ、成功率が低い場合、対象ユーザが利便性のためにヘルプボタン47をタップした可能性が推定される。切替回数情報に含まれるヘルプ利用率が高い場合、対象ユーザが正答情報を忘却した可能性、及び正答情報を誤って記憶した可能性の少なくとも一方が推定され、対象ユーザの脳の状態が良好ではないと推定される。よって、切替時間情報及び切替回数情報は脳の状態を推定する上で有意な情報となる。さらに、推定モデルの説明変数として切替時間情報及び切替回数情報を入力することで、推定モデルの推定精度をより向上させることができる。
【0103】
操作情報は、解除用UI40に対する対象ユーザの所要時間に関する情報である時間情報、及び対象ユーザの操作によるロック状態の解除の成功又は失敗の回数に関する情報である成功情報の少なくとも1つを含んでもよい。成功情報の一例である成功率が低い場合、対象ユーザが正答情報を忘却した可能性、正答情報を誤って記憶した可能性、及び対象ユーザが誤って操作した可能性の少なくとも1つがあると推定することができる。よって、成功率が低い場合、対象ユーザの脳の状態のうち記憶力及び操作能力の少なくとも一方の低下が推定される。成功率が高く、かつ、時間情報の一例である所要時間の平均値が小さいほど、対象ユーザの記憶力、操作能力等の脳の状態が良好であることが推定される。成功率が高く、かつ、所要時間の平均値が大きいほど、対象ユーザは正答情報を正しく記憶している一方で、思い出すのに時間がかかっている場合、又は入力情報を入力するのに時間がかかっている場合が推定される。よって、この場合、対象ユーザの脳の状態のうち記憶力及び操作能力の少なくとも一方の低下が推定される。時間情報の一例である所要時間の分散の値が大きい場合、対象ユーザの記憶力の状態により試行の時刻によりばらつきがあることが示され、対象ユーザの脳の状態が良好ではないと推定される。したがって、時間情報及び成功情報は脳の状態を推定する上で有意な情報となる。さらに、推定モデルの説明変数として時間情報及び成功情報の少なくとも一方を入力することで、推定モデルの推定精度をより向上させることができる。
【0104】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る推定システムについて説明する。第2実施形態に係る推定システムでは、第1実施形態に係る推定システム1の解除用UI40の表示態様とは異なる。第2実施形態に係る解除用UIを解除用UI50として記載する。解除用UI50は、以下に記載されていない機能については解除用UI40と同一の機能を有する。第1実施形態に記載された名称に第1実施形態に記載の同一の数字が振られている構成は、第2実施形態においても第1実施形態と同一の構成及び機能を有する。以降の説明では、第1実施形態と重複する説明を適宜省略する。
【0105】
第2実施形態に係る推定システム1のロック解除制御部22のロック機能は、以下に説明する点を除いて、例えば、従来の端末に備わる従来のアプリのロック機能と同一の機能を有する。ロック解除制御部22は、端末20内の予め定められた一部又は全部のアプリをロック状態にする機能を有する。ロック状態にする対象のアプリは、例えば、対象ユーザによって予め選定される。
【0106】
例えば、端末20が起動した後からアプリのアイコンがタップされるまでの間、アプリが終了した後からアプリのアイコンが再度タップされるまでの間、又は、ロック解除制御部22が表示するアプリに関する解除用UI50が端末20のタッチパネル24に表示されている間、ロック解除制御部22はアプリをロック状態にしている。ロック状態にするとは、対象ユーザによる正答情報の入力がない限り、アプリの所定の機能を対象ユーザに利用させないことを指す。アプリの所定の機能とは、アプリのコンテンツの表示、アプリへの入力の受付等である。なお、以下では、アプリの起動時とは、例えば、アプリのアイコンがタッチされたタイミングを指す。
【0107】
ロック解除制御部22は、生成機能を有する。ロック解除制御部22は、所定のタイミングで解除用UI50に対する正答情報を、例えば、乱数等に基づき新たに自動的に生成する。所定のタイミングとは、所定の時刻であってよく、解除用UI50に対して対象ユーザが入力した回数が所定の入力回数に達したタイミングであってもよい。生成するとは、例えば、対象ユーザが端末20を初めて利用した場合は正答情報を新たに発行することを指し、正答情報が既に発行されている場合は当該正答情報を更新することを指す。
【0108】
ロック解除制御部22が生成する正答情報は、例えば、デイリーパスワードである。ロック解除制御部22は、例えば、毎日朝6時に正答情報を新たに生成する。また、ロック解除制御部22は、例えば、ある正答情報が入力された回数が所定の入力回数(例えば50回)に達する度に、正答情報を新たに生成してもよい。新たに生成された正答情報は、例えば、生成前の正答情報と異なっていてもよく、同一であってもよい。なお、例えば、解除用UI50が端末20のロック解除制御部22によりタッチパネル24に表示されている間、正答情報は新たに生成されない。
【0109】
解除用UI50は、例えば、第1実施形態の図2の(c)に示される解除用UI40Cと同一の構成及び機能を有する、パスワードを用いた解除用UIである。正答情報において、文字(数字)の個数(桁数)は予め定められており、例えば、2つ又は3つである。例えば、入力情報及び正答情報が文字である場合、例えば、単語であってもよい。
【0110】
ロック解除制御部22は、提示機能を有する。ロック解除制御部22は、対象ユーザに新たに生成された正答情報を提示する。ロック解除制御部22は、例えば、所定のタイミングでタッチパネル24に正答情報を表示する。ロック解除制御部22は、例えば、正答情報が生成されたタイミングでタッチパネル24に正答情報を表示する。ロック解除制御部22は、当該正答情報を対象ユーザに提示したタイミングを示す情報をサーバ30に送信してもよい。
【0111】
解除用UI50におけるヘルプボタン47がタップされた場合、ロック解除制御部22は、対象ユーザに新たに生成された正答情報を再提示する。対象ユーザは、各タイミングで提示又は再提示された正答情報を記憶し、アプリの起動時に表示される解除用UI50に対して当該正答情報を入力することでアプリを利用することができる。
【0112】
図8の(a)は第2実施形態に係る操作情報の一例を示す図である。図8の(a)における「実施日」とは、解除用UI50に対する対象ユーザの操作が行われた日付を指す。実施日は、例示した日付に限定されず、操作情報を取得する所定の時間、所定の週間等、任意の期間であってよい。実施日は、実施回数で置き換えられてもよい。実施回数とは、例えば、正答情報の入力回数を指す。
【0113】
第2実施形態における取得部32は、第1実施形態における切替時間情報及び切替時間情報を除く第2操作情報を第1実施形態と同様に取得する。第2実施形態における取得部32は、第1実施形態における切替時間情報及び切替時間情報を算出しない代わりに、第2操作情報として、ヘルプ利用情報、開始タイミング及び終了タイミングに基づいて、再提示時間情報、及び再提示回数情報の少なくとも1つを算出する。
【0114】
再提示時間情報は、ロック解除制御部22により解除用UI50が表示又は再表示してから対象ユーザが当該解除用UI50の正答情報の再提示を要求するまでの時間である再提示時間に関する情報である。再提示回数情報は、対象ユーザがヘルプボタン47を利用(タップ)することで解除用UI50の正答情報の再提示を要求した回数である再提示回数に関する情報である。
【0115】
取得部32は、再提示時間情報を算出する上で必要になる1回の試行ごとの再提示時間を算出する。例えば、ヘルプ利用情報が「あり」となっている第1操作情報における終了タイミングから、当該第1操作情報における開始タイミングを引く。これにより、取得部32は、ヘルプボタン47が利用された1回の試行に要した所要時間である再提示時間を得る。再提示時間の単位は、例えば、秒である。なお、例えば、ある第1操作情報においてヘルプ利用情報が「なし」となっている場合、取得部32は再提示時間を算出しない。
【0116】
なお、再提示時間は、ロック解除制御部22によりある正答情報が生成されて対象ユーザに提示されてから、対象ユーザが当該正答情報の再提示を要求するまでの時間であってもよい。この場合、取得部32は、端末20から正答情報を対象ユーザに提示したタイミングを示す情報を取得して再提示時間を算出する。再提示時間は、ヘルプ利用情報が「あり」となっている第1操作情報における終了タイミングから、当該終了タイミングから遡って自動的に生成された正答情報が対象ユーザに提示されたタイミングを引くことで得られてもよい。当該再提示時間は、対象ユーザが正答情報を認知してから当該正答情報を忘れるまでの時間を表すことができる。
【0117】
取得部32は、第2操作情報の一例として、再提示時間に関する情報である再提示時間情報を算出する。再提示時間情報は、例えば、再提示時間の平均、及び再提示時間の分散を含む。
【0118】
また、取得部32は、再提示回数情報を算出する上で必要になる再提示回数を算出する。取得部32は、ヘルプ利用情報が「あり」となっている第1操作情報の個数を数え上げることで再提示回数を算出する。図8の(a)における再発行回数とは、再提示回数情報の再提示回数を指す。取得部32は、例えば、再提示回数を日単位で算出する。
【0119】
取得部32は、第2操作情報の一例である再提示回数に関する情報である再提示回数情報を算出する。再提示回数情報は、例えば、再提示回数の合計を含む。取得部32は、再提示時間情報の一例として、試行回数及びヘルプ利用情報に基づいて、解除用UI50の試行回数に対する対象ユーザによりヘルプボタン47がタップされた回数の割合であるヘルプ利用率を算出してもよい。
【0120】
図8の(b)は第2実施形態に係る操作情報の例を示す図である。図8の(b)における「集計期間」とは、図8の(a)に示される操作情報を取得する所定の期間より長い予め定められた期間である。集計期間は、例えば、解除用UI50に対する対象ユーザの操作が行われた日付を含み、日より長い期間となるように設定される。取得部32は、第2操作情報として、図8の(a)に示されるような1日ごとのデータを取得してもよく、図8の(b)に示されるような予め定められた期間の集計されたデータを取得してもよい。この場合、取得部32は、例えば、集計期間内の各実施日毎に所要時間の平均値、所要時間の分散、成功率及び再発行回数(再提示回数)を算出し、それらの最小値及び最大値を抽出する。
【0121】
図8(a)及び図8(b)に示される所要時間の平均値の単位は「秒」であり、再発行回数の単位は「回」である。成功情報の一例である成功率の最小値又は最大値が低い場合、対象ユーザが正答情報を忘却した可能性、及び正答情報を誤って記憶した可能性の少なくとも一方があると推定することができる。よって、成功率の最低値又は最大値が低い場合、対象ユーザの脳の状態のうち記憶力の低下が推定される。
【0122】
成功率の最低値が高く、かつ、時間情報の一例である所要時間の平均値の最大値が小さいほど、対象ユーザの記憶力、操作能力等の脳の状態が良好であることが推定される。成功率の最低値が高く、かつ、所要時間の平均値の最小値が大きいほど、対象ユーザは正答情報を正しく記憶している一方で、思い出すのに時間がかかっている場合、又は入力情報を入力するのに時間がかかっている場合が推定される。よって、この場合、対象ユーザの脳の状態のうち記憶力及び操作能力の少なくとも一方の低下が推定される。
【0123】
例えば、時間情報の一例である所要時間の分散の最小値が大きい場合、対象ユーザの記憶力の状態により試行の時間によりばらつきがあることが示される。また、所要時間の分散の最小値と最大値との乖離が大きい場合、対象ユーザの記憶力の状態により試行の日によりばらつきがあることが示される。対象ユーザの脳の状態が良好ではないと推定される。
【0124】
所要時間の平均値の最小値が大きく、かつ、再発行回数の最大値が大きい場合、対象ユーザが正答情報を忘却した可能性、及び正答情報を誤って記憶した可能性の少なくとも1つが強く推定される。よって、この場合、対象ユーザの脳の状態が良好ではないことが推定される。所要時間の平均値の最大値が小さく、かつ、再発行回数の最大値が大きい場合、対象ユーザが利便性向上のためにヘルプボタン47をタップした可能性が推定される。再発行回数の最小値が小さい場合、対象ユーザの記憶力が良好であることが推定される。
【0125】
図8に示されてはいないが、再提示時間情報のうち再提示時間の平均値が大きい場合、かつ、成功率が低い場合、対象ユーザが正答情報を忘却した可能性、及び正答情報を誤って記憶した可能性の少なくとも一方が推定される。よって、この場合、対象ユーザの脳の状態が良好ではないことが推定される。また、再提示時間情報のうち再提示時間の平均値が小さい場合、かつ、成功率が低い場合、対象ユーザが利便性のためにヘルプボタン47をタップしたと推定される。
【0126】
第2実施形態における推定システム1においては、上述の第2操作情報を用いて、図5図7に示されるような第1実施形態と同一の推定方法が実施される。第2実施形態における推定システム1の推定部36が推定に用いる第2操作情報は、例えば、試行の実施日毎の所要時間の平均値及び所要時間の分散を含む時間情報、成功率を含む成功情報、再提示回数情報及び再提示時間情報の少なくとも1つを有する第2操作情報である。なお、推定部36が推定に用いる第2操作情報は、例えば、予め定められた集計期間における所要時間の平均値及び所要時間の分散を含む時間情報、成功率を含む成功情報、再提示回数情報及び再提示時間情報の少なくとも1つに含まれる値の最大値及又は最小値を有していてもよい。第2実施形態の学習部34も、推定部36が推定に用いる操作情報と同一の種類の学習用操作情報を学習用データとする。
【0127】
以上のように、第2実施形態の推定システム1は、第1実施形態の推定システム1と同様の作用及び効果を得ることができる。対象ユーザは、端末20のロック状態を解除するために解除用UI50に対して新たに生成された正答情報を記憶している必要がある。対象ユーザがロック状態の解除操作を行うことで、例えば、ユーザの記憶力、操作能力等を含む対象ユーザの脳の状態に関する情報が操作情報に反映され得る。よって、取得部32が対象ユーザがロック状態の解除操作を行う際の操作情報を取得することで、推定部36は当該操作情報に基づいて対象ユーザの脳の状態を推定することができる。また、ロック状態の解除操作は多くの対象ユーザが端末の所定の機能を利用する際に必ず行うため、対象ユーザへの負担を抑えて脳の状態の推定処理を容易に実施することができ、対象ユーザに対して心理学試験のように明示的に意識させることなく暗黙的に脳の状態の推定に必要な情報の取得を実施することができる。したがって、推定システム1は、解除用UI50によるロック状態によりアプリの安全性を確保しつつ、脳の状態を容易かつ適切に推定することができる。
【0128】
また、推定システム1は、対象ユーザに対して自動的に新たに生成された正答情報を提示する。この場合、対象ユーザは、自らが設定した場合等、対象ユーザに関係する正答情報を記憶するよりも、自動的に新たに生成される正答情報をより意識的に記憶する必要がある。よって、端末20のタッチパネル24において表示された解除用UI50に対する対象ユーザの操作情報により、対象ユーザが慣れていない正答情報又は縁の無い正答情報を意識的に思い出した上で正答情報を正しく又は早く入力できたか否かが推定され、対象ユーザの記憶力を適切に推定することができる。
【0129】
また、操作情報は、再提示時間情報、及び再提示回数情報の少なくとも1つを含む。再提示時間情報のうち再提示時間の平均値が大きく、かつ、成功率が低い場合、対象ユーザが正答情報を忘却した可能性、及び正答情報を誤って記憶した可能性が推定され、対象ユーザの脳の状態が良好ではないと推定される。また、再提示時間情報のうち再提示時間の平均値が小さい場合、かつ、成功率が低い場合、対象ユーザが利便性のためにヘルプボタン47をタップした可能性が推定される。所要時間(再提示時間)の平均値の最小値が大きく、かつ、再発行回数の最大値が大きい場合、対象ユーザが利便性のためにヘルプボタン47をタップした可能性が推定される。また、所要時間(再提示時間)の平均値の最小値が大きく、かつ、再発行回数の最大値が大きい場合、対象ユーザが正答情報を忘却した可能性、及び正答情報を誤って記憶した可能性の少なくとも1つが強く推定される。よって、この場合、対象ユーザの脳の状態が良好ではないことが推定される。所要時間(再提示時間)の平均値の最大値が小さく、かつ、再発行回数の最大値が大きい場合、対象ユーザが利便性向上のためにヘルプボタン47をタップした可能性が推定される。再発行回数の最小値が小さい場合、対象ユーザの記憶力が良好であることが推定される。よって、再提示時間情報及び再提示回数情報は脳の状態を推定する上で有意な情報となる。さらに、推定モデルの説明変数として再提示時間情報及び再提示回数情報を入力することで、推定モデルの推定精度をより向上させることができる。
【0130】
[変形例]
以上、本開示の第1実施形態及び第2実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されない。第1実施形態の解除用UI40と第2実施形態の解除用UI50とは、同一の端末20内で併用してもよい。この場合、推定モデルの説明変数として各解除用UI40,50を通じて得られた各変数を用いることができ、推定モデルの推定精度をより向上させることができる。
【0131】
第1実施形態及び第2実施形態に係る推定システム1は、端末20及びサーバ30を有しているが、端末20のみを有していてもよく、サーバ30のみを有していてもよい。推定システム1が端末20のみを有している場合、端末20は、サーバ30内の各機能部と同様の機能部を備え、対象ユーザの脳の状態を推定してもよい。推定システム1がサーバ30のみを有している場合、推定システム1の外部の端末又はサーバから第1操作情報を取得してもよい。この場合、サーバ30は、取得された第1操作情報がデータベースに記憶された状態において脳の状態を推定する。端末20に含まれる一部の機能部をサーバ30が有していてもよく、サーバ30に含まれる一部の機能部を端末20が有していてもよい。
【0132】
推定システム1は、取得部32及び推定部36のみを備えていてもよい。取得部32は、上述の機能に限定されず、解除用UI40,50に対して行われたユーザの操作に関する情報である操作情報を取得する機能を有していればよい。推定部36は、上述の機能に限定されず、取得部32により取得された操作情報に基づいて対象ユーザの脳の状態を推定する機能を有していればよい。この場合、推定部36は、推定システム1の外部で生成された推定モデルを取得し、当該推定モデルを用いて対象ユーザの状態指標を推定してもよい。また、推定部36は、機械学習によって生成された推定モデルを用いなくてもよい。この場合、所要時間、成功率、ヘルプ利用率等に対してそれぞれ予め定められた基準に基づいて対象ユーザの状態指標を推定してもよい。
【0133】
また、端末20のロック解除制御部22は、端末20における解除用UI40,50に対する対象ユーザの第1操作情報に基づいて第2操作情報を算出してもよい。この場合、取得部32は、ロック解除制御部22により算出された第2操作情報を含む操作情報を取得してもよい。
【0134】
操作情報は、上述の第1実施形態及び第2実施形態に記載の情報に限定されず、解除用UI40及び解除用UI50の少なくとも一方に対して行われた対象ユーザの操作に関する情報であってもよい。第1実施形態の推定部36は、各解除用UI40、主要方式及びその他方式の少なくとも1つの方式における、所要時間の平均値及び所要時間の分散を含む時間情報、成功率を含む成功情報、切替回数情報及び切替時間情報のいずれかを第2操作情報として推定モデルに入力しなくてもよい。この場合、取得部32は、第2操作情報のうち推定部36で用いられない情報を算出しなくてもよく、当該情報を算出するために必要な第1操作情報を取得しなくてもよい。
【0135】
第2実施形態の推定部36は、試行の実施日毎及び予め定められた集計期間の少なくとも一方における、所要時間の平均値及び所要時間の分散を含む時間情報、成功率を含む成功情報、再提示回数情報及び再提示時間情報のいずれかを第2操作情報として推定モデルに入力しなくてもよい。この場合、第2実施形態の取得部32は、第2操作情報のうち推定部36で用いられない情報を算出しなくてもよく、当該情報を算出するために必要な第1操作情報を取得しなくてもよい。
【0136】
また、推定部36は、例えば、サーバ30内のデータベースに記憶された過去の操作情報に対して、新たに取得された最新の操作情報を比較して得られる操作情報内の各値の増減に基づいて、対象ユーザの状態指標を過去に得られた状態指標より悪化したか否かを判定し、脳の状態が良好か否かを推定してもよい。
【0137】
また、第1実施形態及び第2実施形態の取得部32は、時間情報を取得しなくてもよい。この場合、取得部32は時間情報以外の第1操作情報を取得し、学習部34は、学習用ユーザの時間情報に関する情報以外の操作情報を用いて推定モデルを学習させ、推定部36は、対象ユーザの時間情報に関する情報以外の操作情報を用いて対象ユーザの状態指標を推定してもよい。
【0138】
同様に、第1実施形態及び第2実施形態の取得部32は、成功情報を取得しなくてもよい。この場合、取得部32は成功情報以外の第1操作情報を取得し、学習部34は、学習用ユーザの成功情報に関する情報以外の操作情報を用いて推定モデルを学習させ、推定部36は、対象ユーザの成功情報に関する情報以外の操作情報を用いて対象ユーザの状態指標を推定してもよい。
【0139】
また、第1実施形態の取得部32は、切替時間情報又は切替回数情報を取得しなくてもよい。この場合、取得部32は切替時間情報又は切替回数情報以外の第1操作情報を取得し、学習部34は、学習用ユーザの切替時間情報又は切替回数情報に関する情報以外の操作情報を用いて推定モデルを学習させ、推定部36は、対象ユーザの切替時間情報又は切替回数情報に関する情報以外の操作情報を用いて対象ユーザの状態指標を推定してもよい。
【0140】
第2実施形態の取得部32は、再提示時間情報又は再提示回数情報を取得しなくてもよい。この場合、取得部32は再提示時間情報又は再提示回数情報以外の第1操作情報を取得し、学習部34は、学習用ユーザの再提示時間情報又は再提示回数情報に関する情報以外の操作情報を用いて推定モデルを学習させ、推定部36は、対象ユーザの再提示時間情報又は再提示回数情報に関する情報以外の操作情報を用いて対象ユーザの状態指標を推定してもよい。
【0141】
なお、上記実施形態の説明に用いられたブロック図は、機能単位のブロックを示している。これらの機能ブロック(構成部)は、ハードウェア及びソフトウェアの少なくとも一方の任意の組み合わせによって実現される。各機能ブロックの実現方法は特に限定されない。すなわち、各機能ブロックは、物理的又は論理的に結合した1つの装置を用いて実現されてもよいし、物理的又は論理的に分離した2つ以上の装置を直接的又は間接的に(例えば、有線、無線などを用いて)接続し、これら複数の装置を用いて実現されてもよい。機能ブロックは、上記1つの装置又は上記複数の装置にソフトウェアを組み合わせて実現されてもよい。
【0142】
機能には、判断、決定、判定、計算、算出、処理、導出、調査、探索、確認、受信、送信、出力、アクセス、解決、選択、選定、確立、比較、想定、期待、見做し、報知(broadcasting)、通知(notifying)、通信(communicating)、転送(forwarding)、構成(configuring)、再構成(reconfiguring)、割り当て(allocating、mapping)、及び割り振り(assigning)などがあるが、これらの機能に限られない。例えば、送信を機能させる機能ブロック(構成部)は、送信部(transmitting unit)又は送信機(transmitter)と呼称される。いずれも、上述したとおり、実現方法は特に限定されない。
【0143】
例えば、本開示の一実施形態における端末20及びサーバ30は、本開示の処理を行うコンピュータとして機能してもよい。図9に示されるように、上述の端末20及びサーバ30は、物理的には、プロセッサ1001、メモリ1002、ストレージ1003、通信装置1004、入力装置1005、出力装置1006、及びバス1007などを含むコンピュータ装置として構成されてもよい。
【0144】
なお、以下の説明では、「装置」という文言は、回路、デバイス、及びユニットなどに読み替えることができる。端末20及びサーバ30のハードウェア構成は、図に示された各装置を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されてもよい。
【0145】
端末20及びサーバ30おける各機能は、プロセッサ1001及びメモリ1002などのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることによって、プロセッサ1001が演算を行い、通信装置1004による通信を制御したり、メモリ1002及びストレージ1003におけるデータの読み出し及び書き込みの少なくとも一方を制御したりすることによって実現される。
【0146】
プロセッサ1001は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ1001は、周辺装置とのインターフェース、制御装置、演算装置、及びレジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)によって構成されてもよい。例えば、上述の端末20及びサーバ30の各機能は、プロセッサ1001によって実現されてもよい。
【0147】
プロセッサ1001は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュール、及びデータなどを、ストレージ1003及び通信装置1004の少なくとも一方からメモリ1002に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。プログラムとしては、上述の実施形態において説明された動作の少なくとも一部をコンピュータに実行させるプログラムが用いられる。例えば、端末20及びサーバ30の各機能は、メモリ1002に格納され、プロセッサ1001において動作する制御プログラムによって実現されてもよい。上述の各種処理は、1つのプロセッサ1001によって実行される旨を説明してきたが、2以上のプロセッサ1001により同時又は逐次に実行されてもよい。プロセッサ1001は、1以上のチップによって実装されてもよい。なお、プログラムは、電気通信回線を介してネットワークから送信されてもよい。
【0148】
メモリ1002は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、及びRAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つによって構成されてもよい。メモリ1002は、レジスタ、キャッシュ、又はメインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリ1002は、本開示の一実施形態に係る情報提供方法を実施するために実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。
【0149】
ストレージ1003は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、CD-ROM(Compact Disc ROM)などの光ディスク、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク)、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)、フロッピー(登録商標)ディスク、及び磁気ストリップなどの少なくとも1つによって構成されてもよい。ストレージ1003は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。上述の記憶媒体は、例えば、メモリ1002及びストレージ1003の少なくとも一方を含むデータベース、サーバ、その他の適切な媒体であってもよい。
【0150】
通信装置1004は、有線ネットワーク及び無線ネットワークの少なくとも一方を介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、例えばネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、又は通信モジュールなどともいう。通信装置1004は、例えば周波数分割複信(FDD:Frequency Division Duplex)及び時分割複信(TDD:Time Division Duplex)の少なくとも一方を実現するために、高周波スイッチ、デュプレクサ、フィルタ、周波数シンセサイザなどを含んで構成されてもよい。例えば、上述の取得部32などは、通信装置1004によって実現されてもよい。
【0151】
入力装置1005は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、マイクロフォン、スイッチ、ボタン、センサなど)である。出力装置1006は、外部への出力を実施する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカー、LEDランプなど)である。なお、入力装置1005及び出力装置1006は、一体となった構成(例えば、タッチパネル)であってもよい。
【0152】
プロセッサ1001及びメモリ1002などの各装置は、情報を通信するためのバス1007によって接続される。バス1007は、単一のバスを用いて構成されてもよいし、装置間ごとに異なるバスを用いて構成されてもよい。
【0153】
端末20及びサーバ30は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアを含んで構成されてもよく、当該ハードウェアにより、各機能ブロックの一部又は全てが実現されてもよい。例えば、プロセッサ1001は、これらのハードウェアの少なくとも1つを用いて実装されてもよい。
【0154】
情報の通知は、本開示において説明された態様/実施形態に限られず、他の方法を用いて行われてもよい。
【0155】
本開示において説明された各態様/実施形態の処理手順、シーケンス、フローチャートなどは、矛盾の無い限り、順序を入れ替えてもよい。例えば、本開示において説明された方法については、例示的な順序を用いて様々なステップの要素を提示しており、提示された特定の順序に限定されない。
【0156】
情報等は、上位レイヤから下位レイヤへ、又は下位レイヤから上位レイヤへ出力され得る。情報等は、複数のネットワークノードを介して入出力されてもよい。
【0157】
入出力された情報等は特定の場所(例えば、メモリ)に保存されてもよいし、管理テーブルを用いて管理されてもよい。入出力される情報等は、上書き、更新、又は追記され得る。出力された情報等は削除されてもよい。入力された情報等は他の装置へ送信されてもよい。
【0158】
判定は、1ビットで表される値(0か1か)によって行われてもよいし、真偽値(Boolean:true又はfalse)によって行われてもよいし、数値の比較(例えば、所定の値との比較)によって行われてもよい。
【0159】
本開示において説明された各態様/実施形態は単独で用いられてもよいし、組み合わせて用いられてもよいし、実行に伴って切り替えて用いられてもよい。所定の情報の通知(例えば、「Xであること」の通知)は、明示的な通知に限られず、暗黙的に(例えば、当該所定の情報の通知を行わないことによって)行われてもよい。
【0160】
以上、本開示について詳細に説明したが、当業者にとっては、本開示が本開示中に説明された実施形態に限定されないということは明らかである。本開示は、請求の範囲の記載により定まる本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本開示の記載は、例示説明を目的とし、本開示に対して何ら制限的な意味を有しない。
【0161】
ソフトウェアは、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語と呼ばれるか、他の名称で呼ばれるかを問わず、命令、命令セット、コード、コードセグメント、プログラムコード、プログラム、サブプログラム、ソフトウェアモジュール、アプリケーション、ソフトウェアアプリケーション、ソフトウェアパッケージ、ルーチン、サブルーチン、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、手順、機能などを意味するよう広く解釈されるべきである。
【0162】
ソフトウェア、命令、及び情報などは、伝送媒体を介して送受信されてもよい。例えば、ソフトウェアが、有線技術(同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、デジタル加入者回線(DSL:Digital Subscriber Line)など)及び無線技術(赤外線、マイクロ波など)の少なくとも一方を使用してウェブサイト、サーバ、又は他のリモートソースから送信される場合、これらの有線技術及び無線技術の少なくとも一方は、伝送媒体の定義内に含まれる。
【0163】
本開示において説明された情報、及び信号などは、様々な異なる技術のいずれかを使用して表されてもよい。例えば、上記の説明全体に渡って言及され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、及びチップなどは、電圧、電流、電磁波、磁界若しくは磁性粒子、光場若しくは光子、又はこれらの任意の組み合わせによって表されてもよい。
【0164】
なお、本開示において説明された用語及び本開示の理解に必要な用語については、同一の又は類似する意味を有する用語と置き換えられてもよい。
【0165】
本開示において使用される「システム」及び「ネットワーク」という用語は、互換的に使用される。
【0166】
本開示において説明された情報、及びパラメータなどは、絶対値を用いて表されてもよいし、所定の値からの相対値を用いて表されてもよいし、対応する別の情報を用いて表されてもよい。
【0167】
上述したパラメータに使用される名称はいかなる点においても限定的な名称ではない。さらに、これらのパラメータを使用する数式等は、本開示で明示的に開示した数式等と異なる場合もある。
【0168】
本開示で使用される「判断(determining)」、及び「決定(determining)」という用語は、多種多様な動作を包含する場合がある。「判断」、「決定」は、例えば、判定(judging)、計算(calculating)、算出(computing)、処理(processing)、導出(deriving)、調査(investigating)、探索(looking up、search、inquiry)(例えば、テーブル、データベース又は別のデータ構造での探索)、確認(ascertaining)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。「判断」、「決定」は、受信(receiving)(例えば、情報を受信すること)、送信(transmitting)(例えば、情報を送信すること)、入力(input)、出力(output)、アクセス(accessing)(例えば、メモリ中のデータにアクセスすること)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。「判断」、「決定」は、解決(resolving)、選択(selecting)、選定(choosing)、確立(establishing)、比較(comparing)などした事を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。つまり、「判断」「決定」は、何らかの動作を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。「判断(決定)」は、「想定する(assuming)」、「期待する(expecting)」、又は「みなす(considering)」などで読み替えられてもよい。
【0169】
「接続された(connected)」、「結合された(coupled)」という用語、又はこれらのあらゆる変形は、2又はそれ以上の要素間の直接的又は間接的なあらゆる接続又は結合を意味し、互いに「接続」又は「結合」された2つの要素間に1又はそれ以上の中間要素が存在することを含むことができる。要素間の結合又は接続は、物理的に行われてもよく、論理的に行われてもよく、或いはこれらの組み合わせで実現されてもよい。例えば、「接続」は「アクセス」で読み替えられてもよい。本開示で使用される場合、2つの要素は、1又はそれ以上の電線、ケーブル及びプリント電気接続の少なくとも一つを用いて、並びにいくつかの非限定的かつ非包括的な例として、無線周波数領域、マイクロ波領域及び光(可視及び不可視の両方)領域の波長を有する電磁エネルギーなどを用いて、互いに「接続」又は「結合」されると考えることができる。
【0170】
本開示において使用される「に基づいて」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」を意味しない。言い換えれば、「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」と「に少なくとも基づいて」の両方を意味する。
【0171】
本開示において使用される「第1の」、及び「第2の」などの呼称を使用した要素へのいかなる参照も、それらの要素の量又は順序を全般的に限定しない。これらの呼称は、2つ以上の要素間を区別する便利な方法として本開示において使用され得る。したがって、第1及び第2の要素への参照は、2つの要素のみが採用され得ること、及び何らかの形で第1の要素が第2の要素に先行しなければならないことのいずれも意味しない。
【0172】
上記の各装置の構成における「部」は、「回路」、又は「デバイス」等に置き換えられてもよい。
【0173】
本開示において、「含む(include)」、「含んでいる(including)」及びそれらの変形が使用されている場合、これらの用語は、用語「備える(comprising)」と同様に、包括的であることが意図される。さらに、本開示において使用されている用語「又は(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。
【0174】
本開示において、例えば、英語での「a」,「an」及び「the」のように、翻訳により冠詞が追加された場合、本開示は、これらの冠詞の後に続く名詞が複数形であることを含んでもよい。
【0175】
本開示において、「AとBが異なる」という用語は、「AとBが互いに異なる」ことを意味してもよい。なお、当該用語は、「AとBがそれぞれCと異なる」ことを意味してもよい。「離れる」、及び「結合される」などの用語も、「異なる」と同様に解釈されてもよい。
【符号の説明】
【0176】
1…推定システム、20…端末、22…ロック解除制御部、30…サーバ、32…取得部、34…学習部、36…推定部、40,40A,40B,40C,50…解除用UI、41…入力用キーボード、42…出力欄、43…選択可能ボタン、44…入力軌跡、45…入力用キーボード、46…出力欄、47…ヘルプボタン、1001…プロセッサ、1002…メモリ、1003…ストレージ、1004…通信装置、1005…入力装置、1006…出力装置、1007…バス。
図1
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