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特開2022-138602直感的操作を誘発するユーザインタフェース(UI)を伴うタスクに基づいたタスク実行抑制機能の推定システム
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  • 特開-直感的操作を誘発するユーザインタフェース(UI)を伴うタスクに基づいたタスク実行抑制機能の推定システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138602
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】直感的操作を誘発するユーザインタフェース(UI)を伴うタスクに基づいたタスク実行抑制機能の推定システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
A61B10/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038571
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(71)【出願人】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】慶應義塾
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121980
【弁理士】
【氏名又は名称】沖山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【弁理士】
【氏名又は名称】深石 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】濱谷 尚志
(72)【発明者】
【氏名】山本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】深澤 佑介
(72)【発明者】
【氏名】前田 貴記
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 悠理
(72)【発明者】
【氏名】沖村 宰
(72)【発明者】
【氏名】太田 順
(57)【要約】
【課題】簡単なテストを実施するだけでユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能をより詳細に推定させる。
【解決手段】機能推定装置は、誤った回答をユーザに誘発させるユーザインターフェースに対して操作を行う複数のタスクをユーザに提示する提示部と、提示部により提示された複数のタスクに対するユーザの操作結果を示す操作データを取得する取得部と、取得部により取得されたユーザの操作データに基づいて、ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標を予測する予測部と、を備え、ユーザインターフェースは、疑問文と、疑問文に対してユーザが本来選択すべき正答選択肢と、疑問文の内容または正答選択肢の内容が示す色彩、装飾、表現、用語、および配置の少なくとも1つの要素により疑問文に対する正答をユーザに想起させる誤答選択肢と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誤った回答をユーザに誘発させるユーザインターフェースに対して操作を行う複数のタスクを前記ユーザに提示する提示部と、
前記提示部により提示された前記複数のタスクに対する前記ユーザの操作結果を示す操作データを取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記ユーザの前記操作データに基づいて、前記ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標を予測する予測部と、
を備え、
前記ユーザインターフェースは、
疑問文と、
前記疑問文に対してユーザが本来選択すべき正答選択肢と、
前記疑問文の内容または前記正答選択肢の内容が示す色彩、装飾、表現、用語、および配置の少なくとも1つの要素により前記疑問文に対する正答を前記ユーザに想起させる誤答選択肢と、を含む、
機能推定装置。
【請求項2】
前記機能推定装置は、前記取得部により取得された学習用ユーザの前記操作データを説明変数とし、前記学習用ユーザにつき取得されたタスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標を目的変数とする、前記タスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標を予測するための予測モデルを学習する学習部をさらに備え、
前記予測部は、前記取得部により取得された対象ユーザの操作データを、前記学習部による学習で得られた前記予測モデルに適用することで、前記対象ユーザの前記タスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標を予測する、請求項1に記載の機能推定装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記ユーザが前記ユーザインターフェースの操作に要した操作時間に関するデータである操作時間データを含む前記操作データを取得する、請求項1または2に記載の機能推定装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記ユーザが前記正答選択肢を選択した回数に関する正答選択データを含む前記操作データを取得する、請求項1~3の何れか一項に記載の機能推定装置。
【請求項5】
前記取得部は、
学習用ユーザおよび対象ユーザが前記ユーザインターフェースの操作に要した操作時間に関する操作時間データと、
前記学習用ユーザおよび前記対象ユーザが前記正答選択肢を選択した回数に関する正答選択データと、
前記学習用ユーザが前記正答選択肢を選択した場合の前記操作時間データおよび前記正答選択データに対する、前記対象ユーザが前記正答選択肢を選択した場合の前記操作時間データおよび前記正答選択データの乖離度合いと、
を含む前記操作データを取得する、請求項1または2に記載の機能推定装置。
【請求項6】
前記取得部は、複数の前記タスクにおいて前記ユーザが同一の前記誤答選択肢を選択した回数に関するデータである誤答選択データを含む前記操作データを取得する、請求項1~5のいずれか一項に記載の機能推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機能推定装置に係り、とりわけ、脳の前頭前野のタスク実行機能およびタスク抑制機能を推定する機能推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
認知症か否かを判定するため、または認知症の進行度合いを検査するためには、認知症検査(長谷川式スケールなど)の実施が必要であることが知られている。また、認知症の原因疾患の1つであるアルツハイマー病で表れる傾向として、脳の前頭前野の機能のうちタスク実行機能およびタスク抑制機能の障害が知られている。
【0003】
タスク実行機能とは、タスクの遂行に際し、現在の状況に対処して適切な思考または行動を導き出し、当該思考または当該行動に関する意思決定を促進する能力である。タスク抑制機能とは、タスクの遂行に際し、現在の状況において不適切な思考または行動を意識的に抑止する能力である。これらのタスク実行機能およびタスク抑制機能を推定するためには、心理学試験(例えば、go-nogoタスク、Stroop試験など)の実施が必要であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“認知症自己診断テスト”、[online]、一般社団法人認知症予防協会、[2020年10月19日検索]、インターネット<URL:http://www.ninchi-k.com/print_test.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の能力を検査しうる問いに回答させることで認知症の専門医への受診を提案するテストのうち、上記のタスク実行機能およびタスク抑制機能が正常か否かを検査しうる問いが開示されている(非特許文献1参照)。当該テストは、複数の問いに対して対象ユーザが正答した問いの点数を合算し、当該合算した点数が所定の基準の点数に達していない場合などに専門医への受診を提案している。したがって、当該テストにはタスク実行機能およびタスク抑制機能に対する1つの問いが含まれるが、対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能の詳細な状態は示唆されない。
【0006】
また、対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を推定する心理学試験を実施するには、専門家の臨席、所定手順の実行、試験を受けるための十分な時間などが必要であり、当該試験の実施は容易とは言えない。このため、対象ユーザに簡単なテストを実施させるだけで、対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能をより詳細に推定できるシステムが求められている。
【0007】
そこで、本開示は、簡単なテストを実施するだけで対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能をより詳細に推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面に係る機能推定装置は、誤った回答をユーザに誘発させるユーザインターフェースに対して操作を行う複数のタスクを前記ユーザに提示する提示部と、前記提示部により提示された前記複数のタスクに対する前記ユーザの操作結果を示す操作データを取得する取得部と、取得部により取得されたユーザの操作データに基づいて、ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標を予測する予測部と、を備え、前記ユーザインターフェースは、疑問文と、前記疑問文に対してユーザが本来選択すべき正答選択肢と、前記問題文の内容または前記正答選択肢の内容が示す色彩、装飾、表現、用語、および配置の少なくとも1つの要素により前記疑問文に対する正答を前記ユーザに想起させる誤答選択肢と、を含む。
【0009】
この機能推定装置において、ユーザインターフェースは、疑問文に対する正答を想起させる誤答選択肢を正答選択肢と共に表示する。よって、当該ユーザインターフェースは、ユーザに対して誤った回答をさせるよう誘発することができるため、ユーザの操作データと、タスク実行機能およびタスク抑制機能とは有意に且つ密接に関連し得る。よって、予測部は、ユーザの操作データに基づいて、ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標をより詳細に予測することができる。したがって、簡単なテストを実施するだけでユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能をより詳細に推定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、簡単なテストを実施するだけで対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能をより詳細に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る機能推定装置の機能ブロック構成図である。ある。
図2】(a)は選択肢における用語およびサイズに特徴を持たせた誘発ユーザインターフェースを提示した画面例を示す図であり、(b)は選択肢における用語および装飾に特徴を持たせた誘発ユーザインターフェースを提示した画面例を示す図である。
図3】誘発ユーザインターフェースの操作データの例を示す図である。
図4】(a)は心理学試験の試験結果の例を示す図であり、(b)は心理学試験の試験結果から導出されたタスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標を示す図である。
図5】予測モデルの構築処理を示すフロー図である。
図6】操作データの取得処理を示すフロー図である。
図7】予測モデルを用いたユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能の予測処理を示すフロー図である。
図8】機能推定装置のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0013】
図1を参照して、一実施形態に係る機能推定装置の構成を説明する。図1に示される機能推定装置1は、タスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標を予測する予測モデルを構築し、ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標を予測する装置である。
【0014】
機能推定装置1は、ユーザによって操作可能な装置である。機能推定装置1の例としては、スマートフォン、タブレット端末などが挙げられる。機能推定装置1には、例えば、ユーザが操作可能なアプリケーション(以下、「アプリ」という。)がインストールされている。当該アプリの種類は、特に限定されず、例えば、SNS(ソーシャルネットワークサービス)のアプリ、通信用アプリ、動画再生アプリ、カメラ機能アプリなどが挙げられる。
【0015】
機能推定装置1は、受付表示部5と、提示部10と、算出部15と、取得部20と、学習部30と、予測部40と、記憶部90とを備えている。受付表示部5は、機能推定装置1が有するアプリ、後述のタスク、ユーザインターフェースなどを表示すると共に、ユーザによる入力操作(例えば、提示部10により提示される後述のユーザインターフェースにおけるユーザの操作)を受け付ける。
【0016】
記憶部90は、情報を記憶する機能部である。記憶部90は、提示部10により提示される後述のユーザインターフェースおよびタスクに関するデータなどを記憶するデータベースとして機能する。記憶部90は、算出部15により算出された後述のデータを記憶する。記憶部90は、提示部10のデータと算出部15により得られたデータとを組み合わせて記憶していてもよい。算出部15、取得部20、学習部30および予測部40は、記憶部90から情報を取得可能なように構成されている。なお、記憶部90は、機能推定装置1の外部に設けられていてもよい。
【0017】
提示部10は、ユーザインターフェースに対して操作可能な複数のタスクを受付表示部5を介してユーザに提示する。タスクとは、機能推定装置1を取り扱うユーザに対して機能推定装置1への操作を課す課題または処理である。提示部10が提示するユーザインターフェースは、例えば、ポップアップで機能推定装置1の受付表示部5に表示され、ユーザによって視認され、かつ受付表示部5を通じてユーザによって操作される。例えば、提示部10が提示するユーザインターフェースの操作箇所において、ユーザが受付表示部5をタップすることでユーザインターフェースが操作される。
【0018】
提示部10は、誤った回答をユーザに誘発させるユーザインターフェースである誘発ユーザインターフェース(以下、「誘発UI」という)に対して操作を行う複数のタスクをユーザに提示する。提示部10により誘発UIが提示されることで、受付表示部5を通じて自然に誘発される反応を抑制できるかどうかが感知される。
【0019】
提示部10は、例えば、脳の状態を推定するアプリ(以下、推定アプリと記載)がユーザによって起動された後に、誘発UIに対して操作を行う複数のタスクを、受付表示部5を介してユーザに提示する。推定アプリの起動とは、例えば、ユーザによって機能推定装置1内の受付表示部5に表示された推定アプリのアイコンがタッチされることで推定アプリが稼働し始めることを指す。複数のタスクの数は、予め定められていた数である。
【0020】
図2に示されるように、誘発UI80は、例えば、疑問文81と、疑問文81に対する回答であって、ユーザが本来選択すべき正答選択肢82と、疑問文81に対する回答であって、ユーザが本来選択すべきではない誤答選択肢83とをユーザに提示する。
【0021】
誘発UI80における疑問文81は、例えば、色彩、装飾、表現、用語、および配置の少なくとも1つに対する問いまたは事実確認の文章である。正答選択肢82は、例えば、疑問文81に対する正しい答え(正答)であって、色彩、装飾、表現、用語、および配置の少なくとも1つの要素を表す選択肢である。誤答選択肢83は、例えば、正答選択肢82が示す色彩、装飾、表現、用語、および配置の少なくとも1つの要素とは異なる要素を有する選択肢である。
【0022】
色彩には、例えば、色の濃淡、明度、彩度などの概念が含まれる。装飾とは、柄、強調効果、サイズ(大きさ)、図形などの概念が含まれる。強調効果とは、図形に対して付与された影、立体感などの効果が含まれる。表現には、疑問文81、正答選択肢82、または誤答選択肢83を表す文章態様または音が含まれる。表現には、正答選択肢82と誤答選択肢83との間の関係性を表す語句が含まれる。用語には、疑問文81、正答選択肢82、または誤答選択肢83を表す言葉、数値若しくは語句、またはそれらの意味が含まれる。
【0023】
誤答選択肢83は、例えば、ユーザが疑問文81の内容から直感的に想起しうる正答を示すようにデザインされる。すなわち、誘発UI80は、ユーザが直感的に選択肢を選択した場合に大半のユーザが本来選択すべきではない誤答選択肢83を選択しそうになるように設計される。あるいは、ユーザが誘発UI80において正答選択肢82を選択する場合、多くのユーザが操作完了するまでの時間がかかるよう、正答選択肢82と誤答選択肢83とのいずれかで迷わせるように誘発UI80は設計される。
【0024】
誤答選択肢83は、疑問文81の内容または正答選択肢82の内容が示す色彩、装飾、表現、用語、および配置の少なくとも1つの要素により疑問文81に対する正答をユーザに想起させる。疑問文81の内容とは、疑問文81として示されている文章、疑問文81として示されている用語、または当該文章若しくは当該用語に含まれる文字(数値)が示唆する意味、態様および指標の少なくとも1つの特徴を含む。正答選択肢82の内容とは、正答選択肢82として示されている文章、正答選択肢82として示されている用語、または当該文章若しくは当該用語に含まれる文字(数値)が示唆する意味、態様および指標の少なくとも1つの特徴を含む。
【0025】
例えば、疑問文81において尋ねられている内容、確認を促されている内容または表現されている内容に含まれる意味、態様および指標の少なくとも1つの特徴を用いて表現可能な内容のうち、疑問文81に対する正答を示す内容が正答選択肢82において示され、正答選択肢82において示されなかった他の内容が誤答選択肢83において示される。誤答選択肢83は、例えば、正答選択肢82の内容が示す要素の一部が異なるように、または正答選択肢82の内容が示す同一の内容を別の要素にて表すようにデザインされる。
【0026】
以下、上述の例を示す。図2の(a)に示されるように、誘発UI80aにおける誤答選択肢83aの装飾の一部または全部は、正答選択肢82aの装飾の一部または全部と異なりつつ、疑問文81a内の用語の内容が示す表現通りであってもよい。疑問文81aは、「値の大きいものを選んで下さい」という文章である。疑問文81aにおいて尋ねられている内容に含まれる指標である大きさを用いて表現可能な内容として、疑問文81aに対する正答を示す内容である値の他に、例えば、装飾としての選択肢のサイズが含まれる。この場合、正答選択肢82aが示す値(図2の(a)における「8」)は、誤答選択肢83aが示す値(図2の(a)における「3」)より大きくなるように設定される。一方で、誤答選択肢83aの値を示す文字のサイズが、正答選択肢82aの値を示す文字のサイズより大きくなるように設定される。
【0027】
また、誘発UI80aにおいて、誤答選択肢83aの内容に対する正答選択肢82aの内容が示す表現(関係性)を、正答選択肢82aの装飾の一部または全部に対する誤答選択肢83aの装飾の一部または全部によって表現されるようにしてもよい。この場合、疑問文81の正答である正答選択肢82aが示す値(図2の(a)における「8」)は、誤答選択肢83aが示す値(図2の(a)における「3」)より大きくなるように設定されている。このとき、誤答選択肢83aの内容の「3」に対する正答選択肢82の内容の「8」が表す関係性である「大きい」を、値に代わってサイズによって表現するとし、正答選択肢82のサイズに対して誤答選択肢83aのサイズが大きくなるように表現される。
【0028】
誘発UI80aにおいて、疑問文81aの内容を全体的に(完全に)認識し、かつ、各選択肢82a,83aの内容を完全に認識したユーザは、値の大きい正答選択肢82aを選択する可能性が高い。一方で、疑問文81aの文章の内容を部分的にしか認識しなかったユーザ、または、各選択肢82a,83aの内容を理解し損ねたユーザは、例えば、疑問文81aにおける「値」という単語を見落とし、「大きい」という用語のみを認識する可能性が高い。よって、当該ユーザは、視覚的にサイズが大きく表されている誤答選択肢83aを直感的に選択する可能性が高い。
【0029】
図2の(b)に示されるように、誘発UI80bにおける誤答選択肢83bの用語の一部または全部は、正答選択肢82bの用語の一部または全部に比べて、疑問文81b内の用語の内容が示す態様通りであってもよい。図2では、疑問文81bの文字部分の装飾としての色彩、および誤答選択肢83bの文字部分の装飾としての色彩を斜線パターンで表しているが、当該斜線パターンは色彩の「赤」を示している。図2では、正答選択肢82bの文字部分の装飾としての色彩を点描(ドット)パターンで表しているが、当該点描パターンは色彩の「青」を示している。当該疑問文81bは、「この文字の色は」という文章である。疑問文81bにおいて尋ねられている態様である色彩に対して表現可能な内容には、疑問文81bに対する正答を示す内容である用語が意味する色彩の他に、例えば、装飾が表す色彩が含まれる。この場合、正答選択肢82bの用語が意味する色彩(図2の(b)における「あか」)は、誤答選択肢83bの用語が意味する色彩(図2の(b)における「あお」)と異なり、疑問文81の内容が示す正答に沿うように設定される。一方で、誤答選択肢83aの装飾として用語に付された色彩が、正答選択肢82aの装飾として用語に付された色彩と異なり、疑問文81の内容が示す正答に沿うように設定される。
【0030】
また、誘発UI80bにおいて、誤答選択肢83bの内容に対する正答選択肢82bの内容が示す表現の差異を、正答選択肢82bの装飾の一部または全部に対する誤答選択肢83bの装飾の一部または全部の差異によって表現されるようにしてもよい。この場合、正答選択肢82bの用語が意味する色彩(図2の(b)における「あか」)は、誤答選択肢83aの用語が意味する色彩(図2の(b)における「あお」)とは異なるように設定されている。ここで、誤答選択肢83aの用語「あお」が示す意味は色彩の青であるのに対して、正答選択肢82の用語「あか」が示す意味は色彩の赤である。この場合、正答選択肢82の装飾として用語に付された色彩を青に設定し、誤答選択肢83aの装飾として用語に付された色彩を赤に設定する。図2の(b)では正答選択肢82bの色彩と誤答選択肢83bの色彩とを入れ替えて表現したが、少なくとも誤答選択肢83bの装飾としての色彩が正答選択肢82bの内容(用語)が示す色彩であればよい。
【0031】
誘発UI80bにおいて、疑問文81bの内容を全体的に(完全に)認識し、かつ、各選択肢82b,83bの内容を完全に認識したユーザは、用語が表す意味としての色彩が表された正答選択肢82bを選択する可能性が高い。一方で、疑問文81bの文章の内容を部分的にしか認識しなかったユーザ、または、各選択肢82b,83bの内容を理解し損ねたユーザは、例えば、用語が意味する色彩「あか」を重視せず、装飾としての用語に付された色彩「赤」を重視する可能性が高い。よって、当該ユーザは、視覚的に装飾としての用語に付された色彩が赤く表されている誤答選択肢83bを直感的に選択する可能性が高い。
【0032】
図2の(a)および(b)に示されるように、誤答選択肢83は、疑問文81の内容および正答選択肢82の内容が示す色彩、装飾、表現、用語、および配置の少なくとも1つの要素により疑問文81に対する正答をユーザに想起させることで、誤答選択肢83をユーザに選択させる誘発効果をより高めることができる。すなわち、ユーザは、疑問文81、正答選択肢82および誤答選択肢83の内容を十分に理解して正答を表す正答選択肢82を適切に選択する必要がある。
【0033】
誘発UI80bにおける誤答選択肢83bに施された色彩および装飾は、正答選択肢82aに施された色彩および装飾に比べて豪華であってよい。豪華とは、比較的ユーザの目にとまりやすい態様の一例である。
【0034】
提示部10は、誘発UI80を、色彩、装飾、表現、用語、および配置のうち1要素のみによって特徴付けて提示してもよいし、複数の要素を組み合わせて特徴付けて提示してもよい。例えば複数の要素を組み合わせて各選択肢82,83を特徴付けることで、ユーザが正答選択肢82に比べて誤答選択肢83をより容易に選択するようにユーザを誘導することができる。
【0035】
推定アプリの起動後、ユーザが操作を行う対象であって複数のタスクを表す複数の誘発UI80がそれぞれ順次提示される。ユーザにより受付表示部5を介して正答選択肢82または誤答選択肢83のいずれかの提示箇所がタップされることで、誘発UI80に対して入力が完了したとして操作結果が送信される。正答選択肢82および誤答選択肢83は、例えば、誘発UI80が受付表示部5に表示された後に操作可能となる。操作結果については後述する。
【0036】
誘発UI80においてユーザにより正答選択肢82が選択された場合、かつ、推定アプリ内において予め定められたタスクの数に達していない場合、提示部10は、次のタスクを表す誘発UI80を提示する。誘発UI80においてユーザにより正答選択肢82が選択された場合、かつ、推定アプリ内において予め定められたタスクの数に達した場合、例えば、提示部10は、推定アプリ内の複数のタスクがすべて終了した旨を表す画面を提示する。提示部10は、例えば、誘発UI80によるタスクを提示して、ユーザにより誤答選択肢83が選択された場合に、再度誘発UI80を提示する。提示部10は、例えば、ユーザが正答選択肢82を選択するまで誘発UI80を提示し続ける。
【0037】
受付表示部5は、ユーザによる1回の誘発UI80に対する操作(以下、試行と記載)につき、提示部10が提示した誘発UI80(タスク)の種類、ユーザにより選択された選択肢が正答だったかまたは誤答だったかを示す正誤情報、受付表示部5において誘発UI80の提示または再提示を開始した開始タイミング、ユーザが当該誘発UI80の選択肢を選択した選択タイミングなどを操作結果として出力する。開始タイミングまたは選択タイミングは、例えば、日時である。受付表示部5は、例えば、操作結果を記憶部90に記憶させる。
【0038】
なお、上記では提示部10は、誘発UI80として、疑問文81に対する正答をユーザに想起させる誤答選択肢83を提示しているが、複数のタスクのうち一部のタスクにおいて、誤答選択肢が疑問文に対する正答をユーザに想起させない内容を示すUI(以下、通常UIと記載)を示してもよい。誘発UI80によるタスクの数が多い場合、またはある誘発UI80によるタスクと同種類の内容が問われる誘発UI80によるタスクが周期的に表示される場合など、ユーザにおける誘発UI80への適応度が向上し(慣れが促進され)、誘発UI80による誤った回答をユーザに誘発させる機能(誘発効果)が有意に発揮されない可能性がある。誘発UI80によるタスクの誘発効果を有意に発揮させるため、提示部10は、例えば、複数のタスクのうち一部のタスクを、通常UIによるタスクとしてランダムに提示してもよい。
【0039】
また、上記では、提示部10は、1つのタスク(1つの誘発UI80)において1つの誤答選択肢83を提示した例を示したが、1つのタスクにおいて複数の誤答選択肢を提示してもよい。この場合、複数の誤答選択肢のうち、少なくとも1つの誤答選択肢は誤答選択肢83と同一の構成を有する。また、当該1つの誤答選択肢以外の他の誤答選択肢は、疑問文81に対する正答をユーザに想起させない内容を示してもよい。
【0040】
次に、図1に戻り、機能推定装置1における他の機能部について説明する。算出部15は、提示部10により提示されたユーザインターフェースによる複数のタスクに対するユーザの操作結果に関する操作データを算出する。算出部15は、例えば、提示部10が誘発UI80による複数のタスクを所定の回数または所定の期間提示した後に、誘発UI80に関する操作データを算出する。
【0041】
以下、誘発UI80に関する操作データの算出について説明する。算出部15は、誘発UI80によるタスクが提示された所定の回数ごと、または所定の期間ごとの記憶部90内のデータに基づいて、操作データを算出する。当該所定の回数とは、例えば、誘発UI80の各種類が1回以上表示された場合の予め定められた回数である。当該所定の期間とは、予め定められた期間であり、例えば、数日間または数週間である。なお、算出部15は、操作データを算出した場合、当該操作データを記憶部90に記憶する。
【0042】
操作データは、例えば、誘発UI80において正答選択肢82を選択した回数に関する正答回数データ、および、誘発UI80において誤答選択肢83を選択した回数に関する誤答回数データの少なくとも一方を含む。算出部15は、記憶部90から取得した正誤情報および正誤情報の数に基づいて、正答回数データおよび誤答回数データの少なくとも一方を算出する。
【0043】
算出部15は、正答回数データとして、例えば、誘発UI80によるタスクの実施回数に対する正答選択肢82を選択したタスクの回数の割合である正答選択率を算出する。
【0044】
算出部15は、誤答回数データとして、例えば、推定アプリの誘発UI80によるタスクの実施回数に対する、ユーザが誘発UI80において再提示された誤答選択肢83を繰り返し選択したタスク(以下、反復タスクと記載)の回数(以下、反復タスク数と記載)の割合である誤答反復率を算出する。誤答反復率は、タスクの総数に対する同一の誘発UI80においてユーザが複数回間違えたタスクの数の割合である。
【0045】
算出部15は、記憶部90に記憶されたタスクの種類、正誤情報および正誤情報の数に基づいて誤答反復率を算出する。例えば、1回目に提示された誘発UI80において誤答選択肢83をユーザが選択し、再提示された誘発UI80において誤答選択肢83をユーザが再び選択した場合に、当該誘発UI80によるタスクが反復タスクとなる。算出部15は、同一のタスクに対して正誤情報のうち誤答の回数が2回以上記録されている場合、当該タスクを反復タスクとして判定し、指標(以下、反復指標と記載)を「1」として算出する。算出部15は、同一のタスクに対して正誤情報のうち誤答の回数が1回以下記録されている場合、当該タスクを反復タスクとして判定し、反復指標を「0」と算出する。算出部15は、記憶部90に記憶された各タスクについて反復指標を算出する。算出部15は、当該反復指標の総和を反復タスク数として算出する。算出部15は、反復タスク数をタスクの総数で除した値を誤答反復率として算出する。
【0046】
算出部15は、誤答回数データとして、例えば、誘発UI80によるある1つのタスクのうち、再提示された誤答選択肢83を繰り返し選択した回数である誤答反復数を算出してもよい。この場合、算出部15は、記憶部90に記憶されたタスクの種類および正誤情報に基づいて誤答反復数を算出する。例えば、1回目に提示された誘発UI80において誤答選択肢83をユーザが選択し、再提示された誘発UI80において誤答選択肢83をユーザが再び選択した場合、誤答反復数は「1」となる。この選択以降、同一のタスクにおいて再提示された当該誘発UI80において誤答選択肢83をユーザが選択する度に、誤答反復数は1ずつ加算される。算出部15は、誤答回数データとして、すべてのタスクの誤答反復数における誤答反復数の最大値を算出してもよい。
【0047】
操作データは、ユーザがユーザインターフェースの操作に要した操作時間(例えば、提示部10により提示された誘発UI80の操作に要した操作時間)に関する操作時間データを含む。算出部15は、操作時間データの一例として、開始タイミングおよび選択タイミングに基づいて各タスクにおける操作時間を算出する。
【0048】
算出部15は、タスクの種類、正誤情報、開始タイミングおよび選択タイミングに基づいて操作時間の一例である正答操作時間および誤答操作時間を算出する。正答操作時間は、誘発UI80による各タスクが提示部10により提示された初出タイミングからユーザが正答選択肢82を選択した正答選択タイミングまでの時間である。また、誤答操作時間は、誘発UI80による各タスクが提示部10により提示または再提示された提示タイミングからユーザが誤答選択肢83を選択した誤答選択タイミングまでの時間である。以下、算出方法を説明する。
【0049】
算出部15が正答操作時間を算出する場合、算出部15は、初出タイミングとして、タスクの種類のうち同一のタスクにおいて、最も早いタイミングを算出する。初出タイミングとは、開始タイミングのうち、推定アプリが起動してから提示部10により初めてのタスクが提示された初期タイミング、または、提示部10により他のタスクから新たなタスクに切り替わった切替タイミングを含む。算出部15が正答操作時間を算出する場合、算出部15は、タスクの種類のうち同一のタスクにおいて、正答が選択された選択タイミングを正答選択タイミングとして割り当てる。算出部15は、正答選択タイミングから初出タイミングを引くことで正答操作時間を得る。
【0050】
算出部15が誤答操作時間を算出する場合、算出部15は、提示タイミングを算出する。提示タイミングは、開始タイミングのうち、推定アプリが起動してから提示部10により初めてのタスクが提示された初期タイミング、提示部10により他のタスクから新たなタスクに切り替わった切替タイミング、または、提示部10により誘発UI80が再提示された再提示タイミングを含む。算出部15が誤答操作時間を算出する場合、算出部15は、上述の提示タイミングが含まれる試行における、誤答が選択された選択タイミングを誤答選択タイミングとして割り当てる。算出部15は、誤答選択タイミングから提示タイミングを引くことで誤答操作時間を得る。なお、算出部15は、タスクの種類のうち同一のタスクにおいて得られた上述の誤答操作時間の総和を誤答操作時間の一例としてもよい。
【0051】
算出部15は、操作時間データの一例として、誘発UI80による複数のタスクから得られた操作時間に基づいて特徴量を算出する。当該特徴量は、例えば、複数のタスクに対する操作時間の平均値、操作時間の分散などを含む。当該特徴量は、例えば、複数のタスクに対する正答操作時間の平均値、正答操作時間の分散、誤答操作時間の平均値、誤答操作時間の分散などを含む。
【0052】
算出部15は、学習用ユーザの正答操作時間および正答選択データに対する、対象ユーザの正答操作時間および正答選択データの乖離度合いを含む操作データを算出してもよい。上記の学習用ユーザとは、例えば、学習部30において後述の予測モデルの学習に用いられる操作データが抽出される被験者(ユーザ)である。対象ユーザとは、後述の予測モデルを用いてタスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標を予測する被験者(ユーザ)である。当該正答選択データは、例えば、正答選択率を含む。本実施形態において単に「ユーザ」と記載した場合には、学習用ユーザと対象ユーザとを含む場合がある。
【0053】
学習用ユーザの正答操作時間および正答選択率は、例えば、正答操作時間に対して近似した正答選択率を導出する回帰式により関係づけられる。上記の乖離度合いとは、例えば、学習用ユーザによって得られた回帰式に対する対象ユーザの正答操作時間および正答選択率の誤差を指す。当該誤差は、例えば、ある正答操作時間に対する回帰式から得られる正答選択率と対象ユーザの正答選択率との差分を指す。
【0054】
乖離度合いが大きいとは、当該誤差が大きいことを指す。乖離度合いが正の方向に大きいとは、回帰式から得られる正答選択率より対象ユーザの正答選択率が大きく、誤差が大きいことを指す。乖離度合いが負の方向に大きいとは、回帰式から得られる正答選択率より対象ユーザの正答選択率が小さく、誤差が大きいことを指す。
【0055】
なお、操作データ内の各変数は、誘発UI80の誤答選択肢83に対して特徴付けられた要素(色彩、装飾、表現、用語、および配置)ごとに集計され、算出されてもよい。操作データ内の各変数は、タスクまたはユーザインターフェースごとに集計され、算出されてもよい。算出部15は、算出された操作データを記憶部90に記憶させる。
【0056】
次に、図1に示される取得部20は、図3に示されるように、誘発UI80による複数のタスクに対する操作データを記憶部90から取得する。取得部20は、算出部15において算出された操作データを直接取得してもよい。
【0057】
取得部20は、例えば、操作時間の平均値、操作時間の分散、正答選択率、正答操作時間の平均値、正答操作時間の分散、誤答操作時間の平均値、誤答操作時間の分散、および誤答反復数を、誘発UI80による複数のタスクに対する操作データとして取得する。
【0058】
操作時間の平均値、操作時間の分散、正解率、誤答操作時間の平均値、および、誤答操作時間の分散の少なくとも1つが小さいほど、タスク実行機能およびタスク抑制機能が低下していることが示唆される。また、正解操作時間の平均値、正解操作時間の分散、および誤答反復率の少なくとも1つが大きいほど、タスク実行機能およびタスク抑制機能が低下していることが示唆される。誤答操作時間の平均値が大きく、かつ、誤答操作時間の分散の値が大きい場合、タスク抑制機能が低下していることが強く示唆される。
【0059】
操作時間の平均値が小さいほど、誘発UI80によるタスクに対するユーザの反応速度が速いことが示唆される。操作時間の分散の値が所定の第1閾値より大きいほど、ユーザが誘発UI80によるタスクに対する適応度が低い(慣れていない)ことが示唆される。また、操作時間の分散の値が所定の第2閾値より小さい場合、ユーザが誘発UI80によるタスクに対する適応度が高すぎる(慣れすぎている)ことが示唆される。例えば、取得部20は、予め操作データのうち操作時間の分散を取得し、当該操作時間の分散の値が第2閾値以上第1閾値以下となる場合、取得部20は操作データの他の値を取得するようにしてもよい。
【0060】
なお、図3には示されていないが、取得部20は、学習用ユーザの正答操作時間および正答選択データに対する、対象ユーザの正答操作時間および正答選択データの乖離度合いを取得してもよい。乖離度合いが正の方向に大きく、かつ、操作時間(正答操作時間)が小さい場合、タスク実行機能およびタスク抑制機能が正常に機能していると示唆される。
【0061】
また、ユーザのタスク抑制機能が正常である場合、ユーザの操作時間が長いほどユーザの思考時間が長くなると推定されるため、正答選択肢82を選ぶ可能性が高いと推定される。よって、乖離度合いが正の方向に大きく、かつ、操作時間(正常操作時間)が大きい場合には、タスク実行機能が弱まっていると示唆される。
【0062】
一方で、乖離度合いが負の方向に大きく、かつ、操作時間(正常操作時間)が大きい場合、タスク実行機能およびタスク抑制機能が弱まっていると推定される。乖離度合いが負の方向に大きく、かつ、操作時間(正常操作時間)が小さい場合には、タスク抑制機能が弱まっていると推定される。
【0063】
再び図1に戻る。学習部30は、対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標を予測するための予測モデル35を学習する。予測モデル35は、従来の機械学習により学習されるモデルである。予測モデル35は、例えば、従来のニューラルネットワークを含んで構成されている。あるいは、予測モデル35は、それ以外のモデルであってもよい。予測モデル35は、予測部40が予測に用いる操作データを入力して、機能指標を出力するものである。機能指標は、学習用ユーザまたは対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標である。
【0064】
学習部30は、取得した学習用ユーザの操作情報を推定モデルへの入力(入力値)として、かつ、取得した学習用ユーザの機能指標を推定モデルからの出力(出力値)として、機械学習を行うことで推定モデルを生成する。このように学習部30は、学習用ユーザの操作情報をx、学習用ユーザの機能指標をyとしたとき、推定モデルの関係式であるy=f(x)内で示されている関数fを学習する。学習部30は、学習させた予測モデルを記憶部90に記憶させる。なお、学習用ユーザとは、予測モデル35の学習に用いられる操作データを及び機能指標を提供するユーザである。学習用ユーザと対象ユーザとは同一であってもよく、異なってもよい。
【0065】
上記の機能指標は、心理学試験により得られる。当該心理学試験は、専門家の臨席の下、試験を受けるための十分な時間が確保されたうえで所定手順で実行される。心理学試験の一例として、図4に示されるような「go-nogoタスク」が挙げられる。go-nogoタスクは、例えば、学習用ユーザが、スマートフォンのような受付表示部を備える試験端末を使用することで行われる。
【0066】
図4の(a)に示されるように、go-nogoタスクにおいて、試験端末の画面上には、学習用ユーザが反応すべきシンボル(GOシンボル)と学習用ユーザが反応すべきでないシンボル(NOGOシンボル)とを反応種別とするタスクが所定の施行回数だけ次々に提示される。学習用ユーザは各反応種別に適した対処をする。例えば、学習用ユーザは、GOシンボルが提示される施行においては素早く反応して試験端末へのタップを実施し、NOGOシンボルが提示される施行においては試験端末に対して何も操作せず見送る。
【0067】
学習用ユーザがGOシンボルに対してタップを実施した場合、または、学習用ユーザがNOGOシンボルに対して何も操作せず見送った場合、実行結果は「成功」となる。学習用ユーザがGOシンボルに対して所定の時間以上何も操作せず見送った場合、または、学習用ユーザがNOGOシンボルに対して誤ってタップを実施した場合、実行結果は「失敗」となる。試験端末は、上記の「成功」と「失敗」との情報を実行結果として取得する。また、試験端末は、GOシンボルが表示されてから学習用ユーザがタップ操作するまでの時間である反応時間を実行結果として取得する。試験端末は、複数の学習用ユーザにおける複数の実行結果を取得する。
【0068】
図4の(b)に示されるように、試験端末は、実行結果として得られた各データに基づいて機能指標を算出する。機能指標は、例えば、タスクの施行回数に対する実行結果が成功となったタスクの数の割合である成功率の全学習用ユーザの平均値である全体成功率、GOシンボルが提示されるタスクにおける全学習用ユーザの成功率であるGO成功率、NOGOシンボルが提示されるタスクにおける全学習用ユーザの成功率であるNOGO成功率、および、全学習用ユーザの反応時間の平均値である反応平均時間の少なくとも1つのデータである。試験端末は、機能指標を記憶部90に記憶させる。
【0069】
例えば、全体成功率が所定の閾値より低い場合は、タスク実行機能およびタスク抑制機能の少なくともいずれかの機能が正常な状態より弱まっていることが示唆される。GO成功率が所定の閾値より低い場合は、タスク実行機能が正常な状態より弱まっていることが示唆される。NOGO成功率が所定の閾値より低い場合は、タスク抑制機能が正常な状態より弱まっていることが示唆される。反応平均時間が所定の閾値より大きい場合は、タスク実行機能が正常な状態より弱まっていることが示唆される。上記の各閾値は、実施されるgo-nogoタスクに対して専門家により設定される。
【0070】
学習用ユーザが提示部10により提示されたタスクを実行すると共に試験端末における心理学試験を実行することで、操作データおよび機能指標が予測モデル35の学習用データとして得られる。算出部15において所定の期間の記憶部90内のデータに基づいて操作データが算出された場合、当該所定の期間または当該所定の期間の直前若しくは直後に測定された機能指標と、当該操作データとが、学習部30において予測モデル35の学習に用いられる。例えば、ある期間において、学習用ユーザが実行し、記憶部90内に記憶された複数のタスクによるデータに基づいて算出された操作データと、当該ある期間において学習用ユーザが試験端末を利用して1回または複数回の心理学試験を実行することで取得された機能指標とが、予測モデル35の学習に用いられる。
【0071】
取得部20は、所定の人数以上の複数の学習用ユーザの機能指標を取得する。学習部30は、取得部20により取得された所定の人数以上の複数の学習用ユーザの操作データおよび機能指標を予測モデル35に学習させる。所定の人数とは、例えば数十人または数百人である。誘発UI80によるタスクにおいて導出された操作データと、心理学試験において導出された機能指標とは、それぞれタスク実行機能およびタスク抑制機能の状態(低下など)を示唆するデータである。これにより、予測モデル35は、操作データに含まれる各指標から機能指標を推定する機能を獲得する。
【0072】
予測部40は、取得部20により取得された対象ユーザの操作データを、学習部30による学習で得られた予測モデル35に適用することで、対象ユーザの機能指標を予測する。対象ユーザは、機能推定装置1を操作し、提示部10により提示された複数のタスクに対する操作結果を取得部20に取得させる。予測部40は、取得部20により所定の期間ごとに取得された対象ユーザの操作データを予測モデル35に適用することで、当該所定の期間ごとの機能指標を予測する。予測部40は、取得部20により所定のタスクの提示回数ごとに取得された対象ユーザの操作データを予測モデル35に適用することで、当該提示回数ごとの機能指標を予測してもよい。
【0073】
予測部40は、予測された機能指標を用いて対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を診断してもよい。タスク実行機能およびタスク抑制機能の診断とは、対象ユーザの当該機能に異常があるか否か、低下している(弱まっている)兆候があるか否か、従前若しくは他の同年齢のユーザと比べて低下している(弱まっている)か否かなどを含む対象ユーザの脳の状態を機能指標に基づいて診断することを指す。
【0074】
この場合、例えば、取得部20は、機能指標に対する専門家が定めた閾値を取得する。予測部40は、例えば、予測された対象ユーザの機能指標と、専門家が定めた閾値とに基づいて、対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を診断してもよい。例えば、予測された対象ユーザの機能指標が当該閾値より低い場合、予測部40は、当該対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能が低下している可能性があることを診断することができる。
【0075】
また、例えば、取得部20は、学習用ユーザの機能指標と、学習用ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能の診断結果とを取得してもよい。予測部40は、予測された対象ユーザの機能指標と、学習用ユーザの機能指標と、学習用ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能の診断結果とに基づいて、対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を診断してもよい。この場合、学習用ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能が弱まっているという診断結果が得られている場合、予測部40は、当該学習用ユーザの機能指標を閾値とすることができる。当該学習用ユーザが複数いる場合、予測部40は、機能指標の平均値などの特徴量を閾値としてもよい。例えば、予測された対象ユーザの機能指標が予測部40により定められた当該閾値より低い場合、予測部40は、当該対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能が低下している可能性があることを診断することができる。
【0076】
予測部40は、予測された対象ユーザの機能指標、または、診断されたタスク実行機能およびタスク抑制機能を、対象ユーザが確認可能なように受付表示部5に出力する機能を有していてもよい。この場合、受付表示部5は、予測された対象ユーザの機能指標、または、診断されたタスク実行機能およびタスク抑制機能を表示する。
【0077】
なお、特許請求の範囲における提示部は、受付表示部5および提示部10に対応する。特許請求の範囲における取得部は、受付表示部5、算出部15および取得部20に対応する。特許請求の範囲における学習部は、学習部30に対応する。特許請求の範囲における予測部は、予測部40に対応する。
【0078】
次に、図5図7のフローチャートを用いて、本実施形態に係る機能推定装置1で実行される処理(機能推定装置1が行う推定方法)を説明する。まず、図5に示される機能推定装置1において予測モデル35を構築する処理を説明する。
【0079】
機能推定装置1によって、学習用ユーザの操作データの取得処理が実行される(図5のステップS1)。図6に示されるように、ステップS1は、以下の複数のステップにより構成されている。まず、提示部10によって、所定のタイミングで受付表示部5に誘発UI80によるタスクが提示される(ステップS11)。続いて、受付表示部5によって、学習用ユーザの誘発UI80への操作が受け付けられ、操作結果が記憶部90に記憶される(ステップS12)。
【0080】
続いて、算出部15によって、所定の回数だけ誘発UI80への学習用ユーザによる操作が行われたか否かが判定される(ステップS13)。記憶部90内に記憶された学習用ユーザによる操作結果の個数は提示部10により提示された誘発UI80によるタスクの回数に相当するため、算出部15は、当該操作結果の個数が所定の回数以上か否かを判定する。算出部15において、当該個数が所定の回数以上だと判定された場合(ステップS13:YES)、機能推定装置1は次のステップに移行する。算出部15において、当該操作結果の個数が所定の回数未満だと判定された場合(ステップS13:NO)、機能推定装置1はステップS11へ戻る。
【0081】
ステップS13において、記憶部90内に記憶された操作結果の個数が所定の回数以上だと判定された場合(ステップS13:YES)、算出部15は、誘発UI80によるタスクの操作結果に基づいて学習用ユーザの操作データを算出する(ステップS14)。
【0082】
続いて、取得部20によって、誘発UI80によるタスクの操作結果に基づく学習用ユーザの操作データが取得される(ステップS15)。これにより、図6に示される操作データ取得処理(図5のステップS1)が完了する。
【0083】
図5へ戻り、続いて、取得部20によって、操作データが取得された学習用ユーザの機能指標が取得される(ステップS2)。続いて、学習部30によって、操作データを説明変数とし、機能指標を目的変数とする予測モデル35が学習される(ステップS3)。以上の処理により、図5に示される予測モデルの構築処理が完了する。
【0084】
次に、図7を参照して、機能推定装置1における予測モデル35を用いて対象ユーザの機能指標を予測する処理を説明する。まず、取得部20によって、対象ユーザの操作データが取得される(ステップS4)。ステップS4における処理は、例えば、図6に示されるステップS1内の各処理と同一の処理で進められる。上述のステップS11~S15の処理手順における「学習用ユーザ」を、「対象ユーザ」として置き換えた処理手順でステップS4は実現される。続いて、予測部40によって、対象ユーザの操作データが予測モデル35に適用されることで、対象ユーザの機能指標が予測される(ステップS5)。これにより、図7に示される対象ユーザの機能指標を予測する処理が完了する。
【0085】
なお、ステップS5の後に、予測部40によって、予測された対象ユーザの機能指標と、予め定められた閾値とに基づいて、対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能が診断されてもよい。また、予測部40は、出力処理として、受付表示部5を介して、予測された対象ユーザの機能指標、または診断された対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を表示してもよい。予測部40は、出力処理として、予測された対象ユーザの機能指標、または、診断された対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を記憶部90に記憶させてもよい。
【0086】
以上のように、本実施形態の機能推定装置1は、誘発UI80によるタスクという簡単なテストを実施するだけで対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能をより詳細に推定することができる。機能推定装置1の誘発UI80は、正答選択肢82と、疑問文81に対する正答想起させる誤答選択肢83とを共に表示する。よって、誘発UI80は、対象ユーザに対して誤答選択肢83を選択させるよう誘発することができるため、対象ユーザの操作データとタスク実行機能およびタスク抑制機能とは有意に且つ密接に関連し得る。よって、予測部40は、対象ユーザの操作データに基づいて、対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標(機能指標)をより詳細に予測することができる。機能推定装置1は、例えば、予測された対象ユーザの機能指標と、専門家が定めた閾値または学習用ユーザの機能指標などとに基づいて、対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を容易に診断することができる。
【0087】
また、学習部30において、学習用ユーザの操作データを説明変数とし、学習用ユーザの機能指標を目的変数とすることで、機能指標を予測する予測モデル35を構築することができる。対象ユーザの操作データを説明変数として予測モデル35に入力することで、対象ユーザの機能指標を予測することができる。対象ユーザは、誘発UI80に対して操作を行う複数のタスクを行うだけで、機能指標を取得することができる。
【0088】
また、取得部20は、ユーザが誘発UI80の操作に要した操作時間に関する操作時間データを含む操作データを取得する。この場合、ユーザの操作時間データを操作データ内に含めることができるため、予測モデル35の推定精度を向上させることができる。
【0089】
また、取得部20は、ユーザが通常正答選択肢72および正答選択肢82を選択した回数に関する正答選択データを含む操作データを取得する。この場合、正答選択データに含まれうる正答選択率が高ければ高いほど、タスク実行機能およびタスク抑制機能が正常であることが示唆される。
【0090】
また、取得部20は、学習用ユーザの正答選択肢を選択した場合の操作時間データおよび正答選択データに対する、対象ユーザが正答選択肢を選択した場合の操作時間データおよび正答選択データの乖離度合いを含む操作データを取得する。この場合、乖離度合いが大きい場合、対象ユーザの操作時間データと学習用ユーザの操作時間データとの相関がないことを推定することができる。乖離度合いが小さい場合、対象ユーザのタスク実行機能およびタスク抑制機能を表す指標を精度よく推定することができる。また、タスク実行機能およびタスク抑制機能が正常であれば、操作時間が長いほど通常正答選択肢72または正答選択肢82を選ぶ可能性が高いと推定される。よって、機能推定装置1は、乖離度合いが大きく、かつ、操作時間(正常操作時間)が大きい場合、タスク実行機能およびタスク抑制機能が弱まっていることを推定することができる。
【0091】
また、取得部20は、複数のタスクにおいてユーザが同一の誤答選択肢83を選択した回数に関する誤答選択データを含む操作データを取得する。この場合、誤答選択データに含まれる誤答反復率が大きいほど、対象ユーザのタスク抑制機能が弱まっていることを推定することができる。
【0092】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されない。算出部15は、例えば、提示部10が誘発UI80によるタスクを所定の第1回数以上または所定の第1期間以上提示した後に得られたユーザの操作結果に関する操作データを算出してもよい。提示部10による誘発UI80の導入直後において、ユーザは必ずしも誘発UI80に対する操作に適応していない(慣れていない)場合が想定されうる。誘発UI80の導入直後(第1回数未満または第1期間未満)の各ユーザの操作データには、誘発UI80によって誤答を誘発された影響と、誘発UI80に対する各ユーザの適応度の影響とが混在する。
【0093】
一方で、算出部15は、例えば、提示部10が誘発UI80によるタスクを所定の期間中に所定の第2回数以上または所定の第2期間以上提示する前に得られたユーザの操作結果に関する操作データを算出してもよい。提示部10による誘発UI80の導入からユーザが使用を継続した場合において、ユーザが誘発UI80の態様を記憶している場合が想定されうる。誘発UI80を提示する推定アプリの利用が継続されている場合(第2回数以上または第2期間以上)の各ユーザの操作データにも、誘発UI80によって誤答を誘発された影響と、誘発UI80に対する各ユーザの適応度の影響とが混在する。
【0094】
よって、学習部30において、第1回数未満、第1期間未満、第2回数以上、または第2期間以上の誘発UI80の学習用ユーザの操作データを用いて予測モデル35を学習させることは可能であるものの、当該操作データに反映された学習用ユーザの適応度の影響によって予測モデル35の機能指標の予測精度が低下する可能性がある。
【0095】
また、予測部40において、第1回数未満、第1期間未満、第2回数以上、または第2期間以上の誘発UI80の導入初期の対象ユーザの操作データを用いて予測モデル35に入力することは可能であるものの、当該操作データに反映された対象ユーザの適応度の影響によって予測モデル35の機能指標の予測精度が低下する可能性がある。
【0096】
以上により、算出部15が誘発UI80によるタスクを、第1回数以上第2回数未満、または第1期間以上第2期間未満に得られた学習用ユーザおよび対象ユーザの操作結果に関する操作データを算出することで、予測モデル35における予測精度を高めることができる。なお、第1回数、第1期間、第2回数、または第2期間は、例えば、学習用ユーザによって得られた操作時間の分散に関する閾値である第1閾値または第2閾値に基づいて定められてもよい。
【0097】
また、機能推定装置1は、算出部15を備えなくてもよい。この場合、取得部20は、記憶部90に記憶された算出部15により算出された値を取得しなくてもよい。取得部20は、提示部10により提示された誘発UI80による各タスクに対するユーザの操作結果を示す操作データを直接取得してもよい。取得部20、学習部30または予測部40は、算出部15の機能を有していてもよい。
【0098】
また、機能推定装置1は、学習部30を備えなくてもよい。この場合、予測部40は、機能推定装置1の外部で生成された推定モデルを取得し、当該推定モデルを用いて対象ユーザの機能指標を推定してもよい。また、機能推定装置1は、機械学習によって生成された推定モデルを用いなくてもよい。この場合、操作時間、正答選択率、誤答反復数等に対してそれぞれ予め定められた基準に基づいて対象ユーザの機能指標を推定してもよい。また、予測部40は、取得部20により得られた操作データに基づいて、対象ユーザの機能指標を予測してもよい。例えば、予測部40は、正答選択率の逆数、操作時間、誤答反復数、負の方向の乖離度合いなどに対して重み付けを実施し、これらの和をユーザの機能指標としてもよい。例えば、記憶部90に記憶された過去の操作データに対して、新たに取得された最新の操作データを比較して、正答選択率が減少した場合、操作時間が増大した場合、誤答反復数が増大した場合、乖離度合いが負の方向に大きくなった場合などには、予測部40は、対象ユーザの機能指標を過去に得られた機能指標より小さいと予測し、タスク実行機能およびタスク抑制機能が弱まっていると予測してもよい。
【0099】
また、取得部20は、算出部15を介して、操作時間データを含む操作データを取得しなくてもよい。この場合、取得部20は操作時間データ以外の操作データを取得し、学習部30は、学習用ユーザの操作時間データ以外の操作データを用いて予測モデル35を学習させ、予測部40は、対象ユーザの操作時間データ以外の操作データを用いて対象ユーザの機能指標を予測してもよい。同様に、取得部20は、正答選択データ、誤答選択データ、および上述の乖離度合いを取得しなくてもよい。この場合、学習部30は、取得部20において取得されなかったデータ以外の学習用ユーザの操作データを用いて予測モデル35を学習させ、予測部40は、取得部20において取得されなかったデータ以外の対象ユーザの操作データを用いて対象ユーザの機能指標を予測してもよい。
【0100】
なお、上記実施形態の説明に用いられたブロック図は、機能単位のブロックを示している。これらの機能ブロック(構成部)は、ハードウェアおよびソフトウェアの少なくとも一方の任意の組み合わせによって実現される。各機能ブロックの実現方法は特に限定されない。すなわち、各機能ブロックは、物理的または論理的に結合した1つの装置を用いて実現されてもよいし、物理的または論理的に分離した2つ以上の装置を直接的または間接的に(例えば、有線、無線などを用いて)接続し、これら複数の装置を用いて実現されてもよい。機能ブロックは、上記1つの装置または上記複数の装置にソフトウェアを組み合わせて実現されてもよい。
【0101】
機能には、判断、決定、判定、計算、算出、処理、導出、調査、探索、確認、受信、送信、出力、アクセス、解決、選択、選定、確立、比較、想定、期待、見做し、報知(broadcasting)、通知(notifying)、通信(communicating)、転送(forwarding)、構成(configuring)、再構成(reconfiguring)、割り当て(allocating、mapping)、および割り振り(assigning)などがあるが、これらの機能に限られない。例えば、送信を機能させる機能ブロック(構成部)は、送信部(transmitting unit)または送信機(transmitter)と呼称される。いずれも、上述したとおり、実現方法は特に限定されない。
【0102】
例えば、本開示の一実施形態における機能推定装置1は、本開示の処理を行うコンピュータとして機能してもよい。図8に示されるように、上述の機能推定装置1は、物理的には、プロセッサ1001、メモリ1002、ストレージ1003、通信装置1004、入力装置1005、出力装置1006、およびバス1007などを含むコンピュータ装置として構成されてもよい。
【0103】
なお、以下の説明では、「装置」という文言は、回路、デバイス、およびユニットなどに読み替えることができる。機能推定装置1のハードウェア構成は、図に示された各装置を1つまたは複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されてもよい。
【0104】
機能推定装置1における各機能は、プロセッサ1001およびメモリ1002などのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることによって、プロセッサ1001が演算を行い、通信装置1004による通信を制御したり、メモリ1002およびストレージ1003におけるデータの読み出しおよび書き込みの少なくとも一方を制御したりすることによって実現される。
【0105】
プロセッサ1001は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ1001は、周辺装置とのインターフェース、制御装置、演算装置、およびレジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)によって構成されてもよい。例えば、上述の機能推定装置1の各機能は、プロセッサ1001によって実現されてもよい。
【0106】
プロセッサ1001は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュール、およびデータなどを、ストレージ1003および通信装置1004の少なくとも一方からメモリ1002に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。プログラムとしては、上述の実施形態において説明された動作の少なくとも一部をコンピュータに実行させるプログラムが用いられる。例えば、機能推定装置1の各機能は、メモリ1002に格納され、プロセッサ1001において動作する制御プログラムによって実現されてもよい。上述の各種処理は、1つのプロセッサ1001によって実行される旨を説明してきたが、2以上のプロセッサ1001により同時または逐次に実行されてもよい。プロセッサ1001は、1以上のチップによって実装されてもよい。なお、プログラムは、電気通信回線を介してネットワークから送信されてもよい。
【0107】
メモリ1002は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、およびRAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つによって構成されてもよい。メモリ1002は、レジスタ、キャッシュ、またはメインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリ1002は、本開示の一実施形態に係る情報提供方法を実施するために実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。
【0108】
ストレージ1003は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、CD-ROM(Compact Disc ROM)などの光ディスク、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク)、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)、フロッピー(登録商標)ディスク、および磁気ストリップなどの少なくとも1つによって構成されてもよい。ストレージ1003は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。上述の記憶媒体は、例えば、メモリ1002およびストレージ1003の少なくとも一方を含むデータベース、サーバ、その他の適切な媒体であってもよい。
【0109】
通信装置1004は、有線ネットワークおよび無線ネットワークの少なくとも一方を介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、例えばネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、または通信モジュールなどともいう。通信装置1004は、例えば周波数分割複信(FDD:Frequency Division Duplex)および時分割複信(TDD:Time Division Duplex)の少なくとも一方を実現するために、高周波スイッチ、デュプレクサ、フィルタ、周波数シンセサイザなどを含んで構成されてもよい。例えば、上述の取得部20などは、通信装置1004によって実現されてもよい。
【0110】
入力装置1005は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、マイクロフォン、スイッチ、ボタン、センサなど)である。出力装置1006は、外部への出力を実施する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカー、LEDランプなど)である。なお、入力装置1005および出力装置1006は、一体となった構成(例えば、タッチパネル)であってもよい。
【0111】
プロセッサ1001およびメモリ1002などの各装置は、情報を通信するためのバス1007によって接続される。バス1007は、単一のバスを用いて構成されてもよいし、装置間ごとに異なるバスを用いて構成されてもよい。
【0112】
機能推定装置1は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアを含んで構成されてもよく、当該ハードウェアにより、各機能ブロックの一部または全てが実現されてもよい。例えば、プロセッサ1001は、これらのハードウェアの少なくとも1つを用いて実装されてもよい。
【0113】
情報の通知は、本開示において説明された態様/実施形態に限られず、他の方法を用いて行われてもよい。
【0114】
本開示において説明された各態様/実施形態の処理手順、シーケンス、フローチャートなどは、矛盾の無い限り、順序を入れ替えてもよい。例えば、本開示において説明された方法については、例示的な順序を用いて様々なステップの要素を提示しており、提示された特定の順序に限定されない。
【0115】
情報等は、上位レイヤから下位レイヤへ、または下位レイヤから上位レイヤへ出力され得る。情報等は、複数のネットワークノードを介して入出力されてもよい。
【0116】
入出力された情報等は特定の場所(例えば、メモリ)に保存されてもよいし、管理テーブルを用いて管理されてもよい。入出力される情報等は、上書き、更新、または追記され得る。出力された情報等は削除されてもよい。入力された情報等は他の装置へ送信されてもよい。
【0117】
判定は、1ビットで表される値(0か1か)によって行われてもよいし、真偽値(Boolean:trueまたはfalse)によって行われてもよいし、数値の比較(例えば、所定の値との比較)によって行われてもよい。
【0118】
本開示において説明された各態様/実施形態は単独で用いられてもよいし、組み合わせて用いられてもよいし、実行に伴って切り替えて用いられてもよい。所定の情報の通知(例えば、「Xであること」の通知)は、明示的な通知に限られず、暗黙的に(例えば、当該所定の情報の通知を行わないことによって)行われてもよい。
【0119】
以上、本開示について詳細に説明したが、当業者にとっては、本開示が本開示中に説明された実施形態に限定されないということは明らかである。本開示は、請求の範囲の記載により定まる本開示の趣旨および範囲を逸脱することなく修正および変更態様として実施することができる。したがって、本開示の記載は、例示説明を目的とし、本開示に対して何ら制限的な意味を有しない。
【0120】
ソフトウェアは、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語と呼ばれるか、他の名称で呼ばれるかを問わず、命令、命令セット、コード、コードセグメント、プログラムコード、プログラム、サブプログラム、ソフトウェアモジュール、アプリケーション、ソフトウェアアプリケーション、ソフトウェアパッケージ、ルーチン、サブルーチン、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、手順、機能などを意味するよう広く解釈されるべきである。
【0121】
ソフトウェア、命令、および情報などは、伝送媒体を介して送受信されてもよい。例えば、ソフトウェアが、有線技術(同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、デジタル加入者回線(DSL:Digital Subscriber Line)など)および無線技術(赤外線、マイクロ波など)の少なくとも一方を使用してウェブサイト、サーバ、または他のリモートソースから送信される場合、これらの有線技術および無線技術の少なくとも一方は、伝送媒体の定義内に含まれる。
【0122】
本開示において説明された情報、および信号などは、様々な異なる技術のいずれかを使用して表されてもよい。例えば、上記の説明全体に渡って言及され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、およびチップなどは、電圧、電流、電磁波、磁界若しくは磁性粒子、光場若しくは光子、またはこれらの任意の組み合わせによって表されてもよい。
【0123】
なお、本開示において説明された用語および本開示の理解に必要な用語については、同一のまたは類似する意味を有する用語と置き換えられてもよい。
【0124】
本開示において使用される「システム」および「ネットワーク」という用語は、互換的に使用される。
【0125】
本開示において説明された情報、およびパラメータなどは、絶対値を用いて表されてもよいし、所定の値からの相対値を用いて表されてもよいし、対応する別の情報を用いて表されてもよい。
【0126】
上述したパラメータに使用される名称はいかなる点においても限定的な名称ではない。さらに、これらのパラメータを使用する数式等は、本開示で明示的に開示した数式等と異なる場合もある。
【0127】
本開示で使用される「判断(determining)」、および「決定(determining)」という用語は、多種多様な動作を包含する場合がある。「判断」、「決定」は、例えば、判定(judging)、計算(calculating)、算出(computing)、処理(processing)、導出(deriving)、調査(investigating)、探索(looking up、search、inquiry)(例えば、テーブル、データベースまたは別のデータ構造での探索)、確認(ascertaining)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。「判断」、「決定」は、受信(receiving)(例えば、情報を受信すること)、送信(transmitting)(例えば、情報を送信すること)、入力(input)、出力(output)、アクセス(accessing)(例えば、メモリ中のデータにアクセスすること)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。「判断」、「決定」は、解決(resolving)、選択(selecting)、選定(choosing)、確立(establishing)、比較(comparing)などした事を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。つまり、「判断」「決定」は、何らかの動作を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。「判断(決定)」は、「想定する(assuming)」、「期待する(expecting)」、または「みなす(considering)」などで読み替えられてもよい。
【0128】
「接続された(connected)」、「結合された(coupled)」という用語、またはこれらのあらゆる変形は、2またはそれ以上の要素間の直接的または間接的なあらゆる接続または結合を意味し、互いに「接続」または「結合」された2つの要素間に1またはそれ以上の中間要素が存在することを含むことができる。要素間の結合または接続は、物理的に行われてもよく、論理的に行われてもよく、或いはこれらの組み合わせで実現されてもよい。例えば、「接続」は「アクセス」で読み替えられてもよい。本開示で使用される場合、2つの要素は、1またはそれ以上の電線、ケーブルおよびプリント電気接続の少なくとも一つを用いて、並びにいくつかの非限定的かつ非包括的な例として、無線周波数領域、マイクロ波領域および光(可視および不可視の両方)領域の波長を有する電磁エネルギーなどを用いて、互いに「接続」または「結合」されると考えることができる。
【0129】
本開示において使用される「に基づいて」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」を意味しない。言い換えれば、「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」と「に少なくとも基づいて」の両方を意味する。
【0130】
本開示において使用される「第1の」、および「第2の」などの呼称を使用した要素へのいかなる参照も、それらの要素の量または順序を全般的に限定しない。これらの呼称は、2つ以上の要素間を区別する便利な方法として本開示において使用され得る。したがって、第1および第2の要素への参照は、2つの要素のみが採用され得ること、および何らかの形で第1の要素が第2の要素に先行しなければならないことのいずれも意味しない。
【0131】
上記の各装置の構成における「部」は、「回路」、または「デバイス」等に置き換えられてもよい。
【0132】
本開示において、「含む(include)」、「含んでいる(including)」およびそれらの変形が使用されている場合、これらの用語は、用語「備える(comprising)」と同様に、包括的であることが意図される。さらに、本開示において使用されている用語「または(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。
【0133】
本開示において、例えば、英語での「a」,「an」および「the」のように、翻訳により冠詞が追加された場合、本開示は、これらの冠詞の後に続く名詞が複数形であることを含んでもよい。
【0134】
本開示において、「AとBが異なる」という用語は、「AとBが互いに異なる」ことを意味してもよい。なお、当該用語は、「AとBがそれぞれCと異なる」ことを意味してもよい。「離れる」、および「結合される」などの用語も、「異なる」と同様に解釈されてもよい。
【符号の説明】
【0135】
1…機能推定装置、5…受付表示部、10…提示部、15…算出部、20…取得部、30…学習部、35…予測モデル、40…予測部、80…誘発UI、81…疑問文、82…正答選択肢、83…誤答選択肢、90…記憶部、1001…プロセッサ、1002…メモリ、1003…ストレージ、1004…通信装置、1005…入力装置、1006…出力装置、1007…バス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8