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特開2022-138627成膜方法、有機エレクトロルミネッセンス素子及び電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138627
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】成膜方法、有機エレクトロルミネッセンス素子及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/12 20060101AFI20220915BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20220915BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220915BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20220915BHJP
   C23C 14/24 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
C23C14/12
H05B33/10
H05B33/14 B
H05B33/12 C
C23C14/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038610
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】田崎 聡美
(72)【発明者】
【氏名】西村 和樹
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 博之
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107BB08
3K107CC04
3K107CC21
3K107CC33
3K107CC45
3K107DD51
3K107DD53
3K107DD58
3K107DD68
3K107DD69
3K107FF13
3K107FF15
3K107FF19
3K107FF20
3K107GG04
3K107GG34
4K029AA09
4K029BA03
4K029BA62
4K029CA01
4K029EA00
4K029EA01
4K029FA04
(57)【要約】
【課題】不純物が有機層同士の間に混入することを抑制できる成膜方法を提供すること。
【解決手段】互いに異なる複数の有機材料を用いて互いに異なる複数の有機層を基板10に成膜する成膜方法であって、複数の有機層に係る複数の有機材料を当該複数の有機材料のそれぞれの蒸着源111,112,113から同時に蒸発させて複数の有機層を成膜する工程を含み、この成膜工程において、基板10と、蒸着源111,112,113の少なくともいずれかとの相対的距離を変動させながら複数の有機層を成膜し、当該蒸着源から基板10へ向けて有機材料が蒸発する方向である蒸発方向と、基板10の表面とがなす角度である蒸発角度は、当該蒸着源ごとに異なり、当該蒸着源のそれぞれの蒸発角度は、同時に直角にならず、当該蒸着源のそれぞれから蒸発した有機材料の蒸気が存在する蒸発範囲VP1,VP2,VP3は、少なくとも一部が重なり合っている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる複数の有機材料を用いて互いに異なる複数の有機層を基板に成膜する成膜方法であって、
互いに異なる前記複数の有機層に係る前記複数の有機材料を当該複数の有機材料のそれぞれの蒸着源から同時に蒸発させて、前記複数の有機層を成膜する工程を含み、
前記複数の有機層を成膜する工程において、
前記基板と、前記蒸着源の少なくともいずれかとの相対的距離を変動させながら前記複数の有機層を成膜し、
前記蒸着源から前記基板へ向けて前記有機材料が蒸発する方向である蒸発方向と、前記基板の表面とがなす角度である蒸発角度は、前記蒸着源ごとに異なり、
前記蒸着源のそれぞれの前記蒸発角度は、同時に直角にならず、
前記蒸着源のそれぞれから蒸発した前記有機材料の蒸気が存在する蒸発範囲は、少なくとも一部が重なり合っている、
成膜方法。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜方法において、
前記複数の有機材料のそれぞれが個別に蒸着源に収容されている、
成膜方法。
【請求項3】
請求項1に記載の成膜方法において、
前記複数の有機材料のうち2種以上の有機材料が同一の蒸着源に収容されており、ただし、前記複数の有機層を成膜するために用いる前記複数の有機材料の全てが同一の蒸着源に収容されていることはない、
成膜方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の成膜方法において、
前記複数の有機材料として、下記数式(数1)の関係を満たす三重項エネルギーがT(H1)である第一の有機化合物及び三重項エネルギーがT(H2)である第二の有機化合物を用いる、
成膜方法。
(H1)>T(H2) …(数1)
【請求項5】
請求項4記載の成膜方法において、
前記複数の有機材料の少なくともいずれかが、最大ピーク波長が500nm以下の発光を示す発光性化合物である、
成膜方法。
【請求項6】
請求項5に記載の成膜方法において、
前記第一の有機化合物のS(H1)と、前記発光性化合物の一重項エネルギーS(D1)とが下記数式(数2)の関係を満たす、
成膜方法。
(H1)>S(D1) …(数2)
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の成膜方法において、
前記第一の有機化合物の三重項エネルギーT(H1)と、前記発光性化合物の三重項エネルギーT(D1)とが下記数式(数2A)の関係を満たす、
成膜方法。
(D1)>T(H1) …(数2A)
【請求項8】
請求項4から請求項7のいずれか一項に記載の成膜方法において、
前記基板の表面側から、前記第一の有機化合物を含有する有機層及び前記第二の有機化合物を含有する有機層の順に成膜する、
成膜方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の成膜方法において、
前記蒸着源のそれぞれは、単一の成膜室である第一の成膜室の内部に配置されている、
成膜方法。
【請求項10】
請求項9に記載の成膜方法において、
前記第一の成膜室とは異なる第二の成膜室の内部で、前記複数の有機層とは異なる層を前記基板に成膜する工程を含み、
前記第一の成膜室及び前記第二の成膜室の一方から、前記第一の成膜室及び前記第二の成膜室の他方へ前記基板を移動させる、
成膜方法。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の成膜方法において、
前記蒸着源の少なくともいずれかと、前記基板との間に制御部材を配置し、前記蒸着源の少なくともいずれかの蒸発範囲の一部を遮蔽しながら前記複数の有機層を成膜する、
成膜方法。
【請求項12】
請求項11に記載の成膜方法において、
前記制御部材は、前記有機材料が前記基板まで到達可能に形成された開口部を少なくとも一つ有し、前記制御部材の前記開口部と前記蒸着源との位置を相対移動させながら前記複数の有機層を成膜する、
成膜方法。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の成膜方法において、
前記基板を移動させながら前記複数の有機層を成膜する、
成膜方法。
【請求項14】
請求項13に記載の成膜方法において、
前記基板の移動方向に対して、前記蒸着源のうち少なくとも2つの蒸着源を傾斜させて配置して、前記複数の有機層を成膜する、
成膜方法。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の成膜方法において、
前記蒸着源の少なくともいずれかを移動させながら前記複数の有機層を成膜する、
成膜方法。
【請求項16】
請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の成膜方法において、
前記複数の有機層は、第一の発光層及び第二の発光層を含んでいる、
成膜方法。
【請求項17】
請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の成膜方法によって成膜された前記複数の有機層を有する、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項18】
陽極と、
陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に含まれる第一の有機層と、
前記第一の有機層と前記陰極との間に含まれる第二の有機層と、
前記第一の有機層と前記第二の有機層との間に含まれる第三の有機層と、を有し、
前記第一の有機層は、第一の有機化合物及び第三の有機化合物を含有し、
前記第三の有機層は、前記第一の有機化合物、前記第三の有機化合物及び第二の有機化合物を含有し、
前記第二の有機層は、前記第三の有機化合物及び前記第二の有機化合物を含有する、
有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項19】
請求項18に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第一の有機化合物の三重項エネルギーT(H1)と、前記第二の有機化合物の三重項エネルギーT(H2)とが、下記数式(数1)の関係を満たす、
有機エレクトロルミネッセンス素子。
(H1)>T(H2) …(数1)
【請求項20】
請求項18又は請求項19に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第三の有機化合物は、最大ピーク波長が500nm以下の発光を示す化合物である、
有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項21】
請求項18から請求項20のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を搭載した電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜方法、有機エレクトロルミネッセンス素子及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」という場合がある。)は、携帯電話及びテレビ等のフルカラーディスプレイへ応用されている。有機EL素子に電圧を印加すると、陽極から正孔が発光層に注入され、また陰極から電子が発光層に注入される。そして、発光層において、注入された正孔と電子とが再結合し、励起子が形成される。このとき、電子スピンの統計則により、一重項励起子が25%の割合で生成し、及び三重項励起子が75%の割合で生成する。
有機EL素子の性能向上を図るため、例えば、特許文献1及び特許文献2においては、複数の発光層を積層させることについて検討がなされている。
有機EL素子の性能としては、例えば、輝度、発光波長、色度、発光効率、駆動電圧、及び寿命が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-294261号公報
【特許文献2】米国特許出願公開2019/280209号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2に記載されているような複数の発光層が積層された有機EL素子(積層型発光層の有機EL素子と称する場合がある。)を量産する場合、積層化のためにチャンバーを増設する等、量産装置の大幅な改造が必要になる。
また、積層型発光層の有機EL素子を量産する場合、それぞれの発光層を異なる成膜室で成膜する必要が生じるか、もしくは、発光層を同じ成膜室内で成膜するもの、従来、発光層と同じ成膜室で成膜していた他の有機層を別の成膜室で成膜する必要が生じる。例えば、基板上に発光層を成膜した後、別の成膜室に基板を移動させて別の発光層を成膜させて積層させると、これら発光層同士の間に不純物が混入し、素子性能が低下する恐れがある。
【0005】
本発明の目的は、複数の有機層を成膜する際に不純物が有機層同士の間に混入することを抑制できる成膜方法を提供することである。本発明の別の目的は、当該成膜方法により成膜した有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することである。本発明の別の目的は、不純物の混入が抑制された複数の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することである。本発明の別の目的は、有機エレクトロルミネッセンス素子を搭載した電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、互いに異なる複数の有機材料を用いて互いに異なる複数の有機層を基板に成膜する成膜方法であって、互いに異なる前記複数の有機層に係る前記複数の有機材料を当該複数の有機材料のそれぞれの蒸着源から同時に蒸発させて、前記複数の有機層を成膜する工程を含み、前記複数の有機層を成膜する工程において、前記基板と、前記蒸着源の少なくともいずれかとの相対的距離を変動させながら前記複数の有機層を成膜し、前記蒸着源から前記基板へ向けて前記有機材料が蒸発する方向である蒸発方向と、前記基板の表面とがなす角度である蒸発角度は、前記蒸着源ごとに異なり、前記蒸着源のそれぞれの前記蒸発角度は、同時に直角にならず、前記蒸着源のそれぞれから蒸発した前記有機材料の蒸気が存在する蒸発範囲は、少なくとも一部が重なり合っている、成膜方法が提供される。
【0007】
本発明の一態様によれば、本発明の一態様に係る成膜方法によって成膜された前記複数の有機層を有する、有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0008】
本発明の一態様によれば、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との間に含まれる第一の有機層と、前記第一の有機層と前記陰極との間に含まれる第二の有機層と、前記第一の有機層と前記第二の有機層との間に含まれる第三の有機層と、を有し、前記第一の有機層は、第一の有機化合物及び第三の有機化合物を含有し、前記第三の有機層は、前記第一の有機化合物、前記第三の有機化合物及び第二の有機化合物を含有し、前記第二の有機層は、前記第三の有機化合物及び前記第二の有機化合物を含有する、有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0009】
本発明の一態様によれば、本発明の一態様に係る有機エレクトロルミネッセンス素子を搭載した電子機器が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、複数の有機層を成膜する際に不純物が有機層同士の間に混入することを抑制できる成膜方法を提供することができる。本発明の一態様によれば、当該成膜方法により成膜した有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。本発明の一態様によれば、不純物の混入が抑制された複数の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。本発明の一態様によれば、本発明の一態様に係る有機エレクトロルミネッセンス素子を搭載した電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第一の実施形態に係る成膜方法を説明するための概略図である。
図2】第一の実施形態に係る成膜方法を説明するための概略図である。
図3】第一の実施形態に係る成膜方法を説明するための概略図である。
図4】実施形態の変形例に成膜方法を説明するための概略図である。
図5】第二の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の一例の概略構成を示す図である。
図6】実施形態の変形例に係る成膜方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第一の実施形態〕
(成膜方法)
本実施形態に係る成膜方法は、互いに異なる複数の有機材料を用いて互いに異なる複数の有機層を基板に成膜する成膜方法である。
本実施形態に係る成膜方法は、互いに異なる複数の有機層に係る複数の有機材料を当該複数の有機材料のそれぞれの蒸着源から同時に蒸発させて、複数の有機層を成膜する工程を含む。複数の有機層を成膜する工程において、基板と、蒸着源の少なくともいずれかとの相対的距離を変動させながら複数の有機層を成膜し、蒸着源から基板へ向けて有機材料が蒸発する方向である蒸発方向と、基板の表面とがなす角度である蒸発角度は、蒸着源ごとに異なり、蒸着源のそれぞれの蒸発角度は、同時に直角にならず、蒸着源のそれぞれから蒸発した有機材料の蒸気が存在する蒸発範囲は、少なくとも一部が重なり合っている。
【0013】
図1図3には、本実施形態に係る成膜方法を説明するための概略図が示されている。本発明は、図1図3に示された成膜方法に限定されない。
図1は、第一の成膜室100の内部で、矢印で示す移動方向TRに基板10を移動させて、蒸着源111,112,113に近づける工程を示している。本実施形態では、蒸着源111,112,113を移動させずに基板10を移動させることにより、基板と蒸着源の少なくともいずれかとの相対的距離を変動させる態様を例に挙げるが、本発明は、このような態様に限定されない。
【0014】
本実施形態に係る成膜方法において、蒸着源のそれぞれは、単一の成膜室である第一の成膜室の内部に配置されている。
【0015】
本実施形態に係る成膜方法において、複数の有機材料のそれぞれが個別に蒸着源に収容されている。
【0016】
図1に示す第一の成膜室100の内部に設置された3つの蒸着源について、第一の蒸着源111には、第一の有機化合物が収容され、第二の蒸着源112には、発光性化合物が収容され、第三の蒸着源113には、第二の有機化合物が収容されている。蒸着源111,112,113には、それぞれ1種の化合物が収容されている。
【0017】
蒸着源は、それぞれ、収容されている化合物を放出するための放出口を有している。図1に示す第一の成膜室100において、第一の蒸着源111は、第一の放出口111Aを有し、第二の蒸着源112は、第二の放出口112Aを有し、第三の蒸着源113は、第三の放出口113Aを有する。
【0018】
第一の有機化合物と第二の有機化合物と発光性化合物とは、互いに異なる有機材料である。図1に示す例では、これら互いに異なる有機材料を用いて互いに異なる複数の有機層を成膜する。なお、本明細書において、互いに異なる複数の有機層とは、各有機層が含有する化合物の種類が互いに異なることを意味する。本明細書において、各有機層が含有する化合物の種類が互いに異なるとは、各有機層が含有する化合物が、互いに一致していないことを意味する。例えば、第一の有機化合物と発光性化合物とを含有する有機層と、第一の有機化合物と第二の有機化合物と発光性化合物とを含有する有機層とでは、第一の有機化合物及び発光性化合物は、両有機層で一致するが、第二の有機化合物が一方の有機層には含有されていないので、両有機層が含有する化合物は、一致していないものとする。
【0019】
本実施形態に係る成膜方法においては、基板を移動させながら複数の有機層を成膜する。
図2及び図3は、複数の有機層としての第一の有機層、第二の有機層及び第三の有機層を基板10に成膜する工程を示している。複数の有機層を成膜する工程も、基板10と、蒸着源111,112,113との相対的距離を変動させながら、実施される。本実施形態においては、基板10を移動させながら、複数の有機層を成膜する工程が実施される。
【0020】
本実施形態に係る成膜方法において、基板の表面側から、第一の有機化合物を含有する有機層及び第二の有機化合物を含有する有機層の順に成膜することが好ましい。
図2及び図3に示す工程においては、第一の有機化合物及び発光性化合物を含有する第一の有機層が成膜され、次いで、第二の有機化合物、第一の有機化合物及び発光性化合物を含有する第三の有機層が成膜され、次いで、第二の有機化合物及び発光性化合物を含有する第二の有機層が成膜される。
【0021】
図2には、蒸着源111,112,113から基板10へ向けて有機材料が蒸発する方向である蒸発方向と、基板10の表面とがなす角度である蒸発角度が示されている。具体的には、図2には、基板10上の任意の点Pに向けて、第一の蒸着源111の第一の放出口111Aから第一の有機化合物が蒸発する方向である第一の蒸発方向VD1、第二の蒸着源112の第二の放出口112Aから発光性化合物が蒸発する方向である第二の蒸発方向VD2、並びに第三の蒸着源113の第三の放出口113Aから第二の有機化合物が蒸発する方向である第三の蒸発方向VD3が示されている。
図2に示すように、有機層を成膜する工程においては、第一の蒸発方向VD1と基板10の表面とがなす角度である第一の蒸発角度VA1、第二の蒸発方向VD2と基板10の表面とがなす角度である第二の蒸発角度VA2、並びに第三の蒸発方向VD3と基板10の表面とがなす角度である第三の蒸発角度VA3は、蒸着源111,112,113ごとに異なる。さらに、有機層を成膜する工程においては、第一の蒸発角度VA1、第二の蒸発角度VA2及び第三の蒸発角度VA3は、同時に直角にならない。
【0022】
図3には、蒸着源111,112,113のそれぞれから蒸発した有機材料の蒸気が存在する蒸発範囲が示されている。具体的には、図3には、第一の蒸着源111から蒸発した第一の有機化合物の蒸気が存在する第一の蒸発範囲VP1、第二の蒸着源112から蒸発した発光性化合物の蒸気が存在する第二の蒸発範囲VP2、並びに第三の蒸着源113から蒸発した第二の有機化合物の蒸気が存在する第三の蒸発範囲VP3が示されている。
図3に示すように、有機層を成膜する工程において、第一の成膜室100の内部には、第一の蒸発範囲VP1、第二の蒸発範囲VP2及び第三の蒸発範囲VP3の少なくとも一部が重なり合っている蒸発範囲(重複蒸発範囲)が形成されている。図3中、第一の蒸発範囲VP1、第二の蒸発範囲VP2及び第三の蒸発範囲VP3が重なり合っている蒸発範囲をVP1+VP2+VP3で示し、第一の蒸発範囲VP1及び第二の蒸発範囲VP2が重なり合っている蒸発範囲をVP1+VP2で示し、第二の蒸発範囲VP2及び第三の蒸発範囲VP3が重なり合っている蒸発範囲をVP2+VP3で示している。本実施形態の成膜方法においては、蒸着源のそれぞれから蒸発した有機材料の蒸発範囲が、全て重なり合っていない。例えば、第一の成膜室100の内部には、蒸発範囲が全て重なり合っていないVP1+VP2及びVP2+VP3が形成されている。
有機層を成膜する工程において、各有機材料の重複蒸発範囲が第一の成膜室100内に形成されていることにより、単一の成膜室内で、互いに異なる複数の有機層を成膜することができる。
成膜室内に重複蒸発範囲が生じていることは、成膜された各有機層に含まれている材料を分析することにより確認することができる。
【0023】
図3に示すような重複蒸発範囲が形成されている場合、基板10が、移動方向TRに沿って搬送されると、基板10は、まず、重複蒸発範囲VP1+VP2と接するので、基板10の表面には、第一の有機化合物及び発光性化合物を含有する第一の有機層が成膜される。
次いで、基板10の第一の有機層が成膜された領域は、重複蒸発範囲VP1+VP2+VP3と接するので、第一の有機層の上に、第一の有機化合物、第二の有機化合物及び発光性化合物を含有する第三の有機層が成膜される。
次いで、基板10の第三の有機層が成膜された領域は、重複蒸発範囲VP2+VP3と接するので、第三の有機層の上に、第二の有機化合物及び発光性化合物を含有する第二の有機層が成膜される。
【0024】
本実施形態に係る成膜方法において、蒸着源の少なくともいずれかと、基板との間に制御部材を配置し、蒸着源の少なくともいずれかの蒸発範囲の一部を遮蔽しながら複数の有機層を成膜することが好ましい。制御部材を配置することにより、所望の組成及び膜厚の有機層を形成するための蒸発範囲又は重複蒸発範囲を形成させ易くなる。
【0025】
また、制御部材は、有機材料が基板まで到達可能に形成された開口部を少なくとも一つ有することが好ましい。
制御部材の開口部と蒸着源との位置を相対移動させながら複数の有機層を成膜してもよい。制御部材の開口部と蒸着源との位置を相対移動させながら成膜することで、成膜室を大気開放せずに各有機層の膜厚を調整し易くなる。
制御部材の開口部と蒸着源との位置を相対移動させずに複数の有機層を成膜してもよい。制御部材の開口部と蒸着源との位置を相対移動させない場合は、制御部材の開口部と基板との位置を相対移動させながら有機層を成膜してもよい。
【0026】
図1図3に示すように、第一の成膜室100の内部には、制御部材130が、蒸着源111,112,113を囲うように配置されている。制御部材130は、開口部131を有し、蒸着源111,112,113のそれぞれから蒸発した有機材料は、開口部131を通じて基板まで到達可能である。具体的には、図1図3に示すように、各蒸着源111,112,113の放出口111A,112A,113Aと、基板10との間に位置する制御部材130の箇所に開口部131が設けられている。なお、開口部131は、図1図3では、第二の蒸着源112の第二の放出口112Aの上方に位置しているが、開口部の位置、数及び形状は、制御部材130の開口部131のような位置、数及び形状に限定されない。
【0027】
本実施形態に係る成膜方法において、基板の移動方向に対して、蒸着源のうち少なくとも1つの蒸着源を傾斜させて配置して、好ましくは、蒸着源のうち少なくとも2つの蒸着源を傾斜させて配置して、複数の有機層を成膜してもよい。蒸着源を傾斜させることにより、所望の組成及び膜厚の有機層を形成するための蒸発範囲又は重複蒸発範囲を形成させ易くなる。
例えば、図1図3に示す蒸着源111,112,113の内、第一の蒸着源111を基板10の移動方向TRに対して上流側(図の左側)に向けて傾斜させ、第三の蒸着源113を基板10の移動方向TRに対して下流側(図の右側)に向けて傾斜させて配置することが好ましい。
図4には、このように蒸着源を傾斜させて配置した場合の成膜方法を説明するための概略図が示されている。
蒸着源を傾斜させて配置することにより、基板10と制御部材130との間に、第一の有機化合物の第一の蒸発範囲VP1及び第二の有機化合物の第三の蒸発範囲VP3を回り込ませ易くなり、第一の有機層及び第二の有機層の膜厚を制御し易い。また、第一の蒸着源111から蒸発した第一の有機化合物のみからなる有機層及び第三の蒸着源113から蒸発した第二の有機化合物のみからなる有機層を成膜し易くなる。
また、第二の蒸着源112も第一の蒸着源111と同様に基板10の移動方向TRに対して上流側(図の左側)に向けて傾斜させてもよい。この場合、基板10と制御部材130との間に、第一の有機化合物及び発光性化合物の重複蒸発範囲VP1+VP2を回り込ませ易くなり、第一の有機化合物及び発光性化合物を、所望量、含有する有機層を成膜し易い。
【0028】
本実施形態に係る成膜方法は、第一の成膜室とは異なる第二の成膜室の内部で、複数の有機層とは異なる層を基板に成膜する工程を含んでいてもよい。第一の成膜室及び第二の成膜室の一方から、第一の成膜室及び第二の成膜室の他方へ基板を移動させてもよい。
例えば、第一の成膜室100において第一の有機層、第二の有機層及び第三の有機層を形成する成膜工程の前工程及び後工程の少なくともいずれかの工程として、第一の成膜室100とは異なる第二の成膜室で第一の有機層、第二の有機層及び第三の有機層とは異なる有機層を成膜してもよい。基板10は、第一の成膜室及び第二の成膜室の一方から他方へと移動させる。さらに、本実施形態に記載の成膜方法は、第一の成膜室及び第二の成膜室とは異なる別の1つ又は複数の成膜室で成膜する工程を含んでいてもよい。
【0029】
従来、基板上に異なる有機層を蒸着により成膜する際には、真空条件下で第一の有機層を成膜した後、真空状態を解除し、第一の有機層とは異なる第二の有機層を成膜するために基板を別の成膜室へ移動させ、当該成膜室を改めて真空状態とする必要がある。真空状態を解除し、改めて真空条件とする際に、不純物が成膜室の内部に混入し、有機層同士の間にも不純物が混入するおそれがあった。
本実施形態に係る成膜方法によれば、互いに異なる複数の有機材料を用いて互いに異なる複数の有機層を単一の成膜室内で成膜することができる。そのため、本実施形態に係る成膜方法によれば、成膜室の真空度を下げずに複数の有機層を基板上に積層させることができるので、有機層同士の間に不純物が混入することを抑制できる。
また、本実施形態に係る成膜方法によれば、各蒸着源の蒸発角度を変化させることで、有機層中の各材料の混合比率を任意の割合に調整できると共に、任意の有機層の膜厚を制御できる。
【0030】
本実施形態に係る成膜方法において、複数の有機層は、第一の発光層及び第二の発光層を含んでいることも好ましい。本実施形態に係る成膜方法によれば、複数の発光層を単一の成膜室内で成膜することができるので、発光層同士の間に不純物が混入することを抑制できる。発光層同士の間への不純物混入を抑制することで、例えば、複数の発光層を有する有機EL素子の性能低下を抑制し易くなる。
【0031】
本実施形態に係る成膜方法において、複数の有機材料として、下記数式(数1)の関係を満たす三重項エネルギーがT(H1)である第一の有機化合物及び三重項エネルギーがT(H2)である第二の有機化合物を用いることが好ましい。
(H1)>T(H2) …(数1)
【0032】
本実施形態に係る成膜方法において、前記複数の有機材料の少なくともいずれかが、最大ピーク波長が500nm以下の発光を示す発光性化合物であることが好ましい。
【0033】
本実施形態に係る成膜方法において、第一の有機化合物のS(H1)と、発光性化合物の一重項エネルギーS(D1)とが下記数式(数2)の関係を満たすことが好ましい。一重項エネルギーSとは、最低励起一重項状態と基底状態とのエネルギー差を意味する。
(H1)>S(D1) …(数2)
【0034】
本実施形態に係る成膜方法において、第一の有機化合物の三重項エネルギーT(H1)と、発光性化合物の三重項エネルギーT(D1)とが下記数式(数2A)の関係を満たすことが好ましい。
(D1)>T(H1) …(数2A)
【0035】
(有機エレクトロルミネッセンス素子)
本実施形態に係る成膜方法によって有機エレクトロルミネッセンス素子を製造することもできる。本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、本実施形態に係る成膜方法によって成膜された複数の有機層を有する。
本実施形態に係る成膜方法によれば、有機層同士の間に不純物が混入することを抑制できるので、例えば、複数の有機層を備える有機エレクトロルミネッセンス素子を製造する場合には、素子性能の低下を抑制することができる。
【0036】
本実施形態に係る成膜方法において、複数の有機材料として、前記数式(数1)の関係を満たす三重項エネルギーがT(H1)である第一の有機化合物及び三重項エネルギーがT(H2)である第二の有機化合物を用いて、第一の有機化合物を含有する第一の有機層としての第一の発光層を成膜し、第二の有機化合物を含有する第二の有機層としての第二の発光層を成膜することが好ましい。本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子がこのように成膜された第一の発光層及び第二の発光層を備えることで、発光効率の向上が期待できる。
【0037】
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子において、第一の発光層が含有する第一の有機化合物が第一のホスト材料であり、第二の発光層が含有する第二の有機化合物が第二のホスト材料であることが好ましい。第一のホスト材料と第二のホスト材料とは互いに異なる。
本明細書において、「ホスト材料」とは、例えば「層の50質量%以上」含まれる材料である。したがって、第一の発光層は、例えば、第一のホスト材料を、第一の発光層の全質量の50質量%以上、含有する。第二の発光層は、例えば、第二のホスト材料を、第二の発光層の全質量の50質量%以上、含有する。
【0038】
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子において、第一の発光層は、第二の有機化合物としての第二のホスト材料を含有せず、第二の発光層は、第一の有機化合物としての第一のホスト材料を含有しないことも好ましい。この場合、本実施形態の製造方法において、第一の発光層を成膜するための第一のホスト材料の蒸発範囲と、第二の発光層を成膜するための第二のホスト材料の蒸発範囲とが重ならないように、蒸着源又は遮蔽部材等を成膜室内に配置すればよい。
また、本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子において、第一の発光層は、第二の有機化合物としての第二のホスト材料を含有せず、第二の発光層は、第一の有機化合物としての第一のホスト材料及び第二の有機化合物としての第二のホスト材料の両方を含有していることも好ましい。この場合、本実施形態の製造方法において、第一の発光層を成膜する際に第一のホスト材料の蒸発範囲と第二のホスト材料の蒸発範囲とが重ならないように、蒸着源又は遮蔽部材等を成膜室内に配置すればよい。
【0039】
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子において、第一の発光層が含有する発光性化合物を、第一の発光性化合物と称し、第二の発光層が含有する発光性化合物を第二の発光性化合物と称する場合がある。第一の発光性化合物と第二の発光性化合物とは、互いに同一であるか又は異なる。
【0040】
従来、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率を向上させるための技術として、Tripret-Tripret-Annhilation(TTAと称する場合がある。)が知られている。TTAは、三重項励起子と三重項励起子とが衝突して、一重項励起子を生成するという機構(メカニズム)である。なお、TTAメカニズムは、国際公開第2010/134350号に記載のようにTTFメカニズムと称する場合もある。
【0041】
TTF現象を説明する。陽極から注入された正孔と、陰極から注入された電子とは、発光層内で再結合し励起子を生成する。そのスピン状態は、従来から知られているように、一重項励起子が25%、三重項励起子が75%の比率である。従来知られている蛍光素子においては、25%の一重項励起子が基底状態に緩和するときに光を発するが、残りの75%の三重項励起子については光を発することなく熱的失活過程を経て基底状態に戻る。従って、従来の蛍光素子の内部量子効率の理論限界値は25%といわれていた。
一方、有機物内部で生成した三重項励起子の挙動が理論的に調べられている。S.M.Bachiloらによれば(J.Phys.Chem.A,104,7711(2000))、五重項等の高次の励起子がすぐに三重項に戻ると仮定すると、三重項励起子(以下、と記載する)の密度が上がってきたとき、三重項励起子同士が衝突し下記式のような反応が起きる。ここで、Aは、基底状態を表し、は、最低励起一重項励起子を表す。
→(4/9)A+(1/9)+(13/9)
即ち、5→4A+1Aとなり、当初生成した75%の三重項励起子のうち、1/5即ち20%が一重項励起子に変化することが予測されている。従って、光として寄与する一重項励起子は、当初生成する25%分に75%×(1/5)=15%を加えた40%ということになる。このとき、全発光強度中に占めるTTF由来の発光比率(TTF比率)は、15/40、すなわち37.5%となる。また、当初生成した75%の三重項励起子のお互いが衝突して一重項励起子が生成した(2つの三重項励起子から1つの一重項励起子が生成した)とすると、当初生成する一重項励起子25%分に75%×(1/2)=37.5%を加えた62.5%という非常に高い内部量子効率が得られる。このとき、TTF比率は、37.5/62.5=60%である。
【0042】
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子によれば、第一の発光層で正孔と電子との再結合によって生成した三重項励起子は、当該第一の発光層と直接に接する有機層との界面にキャリアが過剰に存在していても、第一の発光層と当該有機層との界面に存在する三重項励起子がクエンチされ難くなると考えられる。例えば、再結合領域が、第一の発光層と正孔輸送層又は電子障壁層との界面に局所的に存在する場合には、過剰な電子によるクエンチが考えられる。一方、再結合領域が、第一の発光層と電子輸送層又は正孔障壁層との界面に局所的に存在する場合には、過剰な正孔によるクエンチが考えられる。
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子が、所定の関係を満たす、少なくとも2つの発光層(すなわち、第一の発光層及び第二の発光層)を備え、第一の発光層中の第一の有機化合物としての第一のホスト材料の三重項エネルギーT(H1)と、第二の発光層中の第二の有機化合物としての第二のホスト材料の三重項エネルギーT(H2)とが、前記数式(数1)の関係を満たす場合、第一の発光層で生成した三重項励起子は、過剰キャリアによってクエンチされずに第二の発光層へと移動し、また、第二の発光層から第一の発光層へ逆移動することを抑制できる。その結果、第二の発光層において、TTFメカニズムが発現して、一重項励起子が効率良く生成され、発光効率が向上する。
このように、有機エレクトロルミネッセンス素子が、三重項励起子を主に生成させる第一の発光層と、第一の発光層から移動してきた三重項励起子を活用してTTFメカニズムを主に発現させる第二の発光層と、を異なる領域として備え、第二の発光層中の第二のホスト材料として、第一の発光層中の第一のホスト材料よりも小さな三重項エネルギーを有する化合物を用いて、三重項エネルギーの差を設けることで、発光効率が向上する。
【0043】
本実施形態に係る成膜方法によれば、第一の発光層及び第二の発光層の成膜に用いる有機材料の蒸発範囲を重ねることで、特に第一の発光層の成膜後、第二の発光層の成膜までの間に成膜室の真空度を下げずに有機EL素子の第一の発光層及び第二の発光層を成膜できる。その結果、第一の発光層及び第二の発光層の間に不純物が混入することが抑制され、TTFの効率低下も抑制され、有機EL素子の発光効率の向上が期待できる。
【0044】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の有機化合物としての第一のホスト材料の三重項エネルギーT(H1)と、第二の有機化合物としての第二のホスト材料の三重項エネルギーT(H2)とが、下記数式(数5)の関係を満たすことが好ましい。
(H1)-T(H2)>0.03eV …(数5)
【0045】
(第一の発光層)
第一の発光層は、第一のホスト材料を含む。第一のホスト材料は、第二の発光層が含有する第二のホスト材料とは、異なる化合物である。
第一の発光層は、最大のピーク波長が500nm以下の発光を示す第一の発光性化合物を少なくとも含むことが好ましい。第一の発光性化合物は、最大のピーク波長が500nm以下の蛍光発光を示す蛍光発光性化合物であることが好ましい。
【0046】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の有機化合物としての第一のホスト材料の一重項エネルギーS(H1)と、第一の発光層に含有される発光性化合物(第一の発光性化合物)の一重項エネルギーS(D1)とが前記数式(数2)の関係を満たすことが好ましい。
第一のホスト材料と第一の発光性化合物とが、前記数式(数2)の関係を満たすことにより、第一のホスト材料上で生成された一重項励起子は、第一のホスト材料から第一の発光性化合物へエネルギー移動し易くなり、第一の発光性化合物の蛍光性発光に寄与する。
【0047】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の有機化合物としての第一のホスト材料の三重項エネルギーT(H1)と、第一の発光層に含有される発光性化合物(第一の発光性化合物)の三重項エネルギーT(D1)とが前記数式(数2A)の関係を満たすことが好ましい。
第一のホスト材料と第一の発光性化合物とが、前記数式(数2A)の関係を満たす事により、第一の発光層内で生成した三重項励起子は、より高い三重項エネルギーを有する第一の発光性化合物ではなく、第一のホスト材料上を移動するため、第二の発光層へ移動し易くなる。
【0048】
本実施形態に係る有機EL素子は、下記数式(数2B)の関係を満たすことが好ましい。
(D1)>T(H1)>T(H2) …(数2B)
【0049】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光性化合物は、分子中にアジン環構造を含まない化合物であることが好ましい。
【0050】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光性化合物は、ホウ素含有錯体ではないことが好ましく、第一の発光性化合物は、錯体ではないことがより好ましい。
【0051】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光層は、金属錯体を含有しないことが好ましい。また、本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光層は、ホウ素含有錯体を含有しないことも好ましい。
【0052】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光層は、燐光発光性材料(ドーパント材料)を含まないことが好ましい。
また、第一の発光層は、重金属錯体及び燐光発光性の希土類金属錯体を含まないことが好ましい。ここで、重金属錯体としては、例えば、イリジウム錯体、オスミウム錯体、及び白金錯体等が挙げられる。
【0053】
化合物の最大のピーク波長の測定方法は、次の通りである。測定対象となる化合物の5μmol/Lトルエン溶液を調製して石英セルに入れ、常温(300K)でこの試料の発光スペクトル(縦軸:発光強度、横軸:波長とする。)を測定する。発光スペクトルは、株式会社日立ハイテクサイエンス製の分光蛍光光度計(装置名:F-7000)により測定できる。なお、発光スペクトル測定装置は、ここで用いた装置に限定されない。
発光スペクトルにおいて、発光強度が最大となる発光スペクトルのピーク波長を最大ピーク波長とする。なお、本明細書において、蛍光発光の最大ピーク波長を蛍光発光最大ピーク波長(FL-peak)と称する場合がある。
【0054】
第一の発光性化合物の発光スペクトルにおいて、発光強度が最大となるピークを最大のピークとし、当該最大のピークの高さを1としたとき、当該発光スペクトルに現れる他のピークの高さは、0.6未満であることが好ましい。なお、発光スペクトルにおけるピークは、極大値とする。
また、第一の発光性化合物の発光スペクトルにおいて、ピークの数が3つ未満であることが好ましい。
【0055】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光層は、素子駆動時に最大のピーク波長が500nm以下の光を放射することが好ましい。
素子駆動時に発光層が放射する光の最大ピーク波長の測定は、次に記載の方法で行うことができる。
【0056】
・素子駆動時に発光層から放射される光の最大ピーク波長λp
素子駆動時に第一の発光層から放射される光の最大ピーク波長λpは、第二の発光層を第一の発光層と同じ材料を用いて有機EL素子を作製し、有機EL素子の電流密度が10mA/cmとなるように素子に電圧を印加した時の分光放射輝度スペクトルを分光放射輝度計CS-2000(コニカミノルタ株式会社製)で計測する。得られた分光放射輝度スペクトルから、最大ピーク波長λp(単位:nm)を算出する。
素子駆動時に第二の発光層から放射される光の最大ピーク波長λpは、第一の発光層を第二の発光層と同じ材料を用いて有機EL素子を作製し、有機EL素子の電流密度が10mA/cmとなるように素子に電圧を印加した時の分光放射輝度スペクトルを分光放射輝度計CS-2000(コニカミノルタ株式会社製)で計測する。得られた分光放射輝度スペクトルから、最大ピーク波長λp(単位:nm)を算出する。
【0057】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光性化合物は、第一の発光層中に、1.1質量%を超えて、含有されることが好ましい。すなわち、第一の発光層は、第一の発光性化合物を、第一の発光層の全質量の1.1質量%超、含有することが好ましく、第一の発光層の全質量の1.2質量%以上、含有することがより好ましく、第一の発光層の全質量の1.5質量%以上、含有することがさらに好ましい。
第一の発光層は、第一の発光性化合物を、第一の発光層の全質量の10質量%以下、含有することが好ましく、第一の発光層の全質量の7質量%以下、含有することがより好ましく、第一の発光層の全質量の5質量%以下、含有することがさらに好ましい。
【0058】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光層は、第一のホスト材料を、第一の発光層の全質量の60質量%以上、含有することが好ましく、第一の発光層の全質量の70質量%以上、含有することがより好ましく、第一の発光層の全質量の80質量%以上、含有することがさらに好ましく、第一の発光層の全質量の90質量%以上、含有することがよりさらに好ましく、第一の発光層の全質量の95質量%以上、含有することがさらになお好ましい。
第一の発光層は、第一のホスト材料を、第一の発光層の全質量の99質量%以下、含有することが好ましい。
ただし、第一の発光層が第一のホスト材料と第一の発光性化合物とを含有する場合、第一のホスト材料及び第一の発光性化合物の合計含有率の上限は、100質量%である。
【0059】
なお、本実施形態は、第一の発光層に、第一のホスト材料と第一の発光性化合物以外の材料が含まれることを除外しない。
第一の発光層は、第一のホスト材料を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。第一の発光層は、第一の発光性化合物を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0060】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光層の膜厚は、3nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましい。第一の発光層の膜厚が3nm以上であれば、第一の発光層において、正孔と電子との再結合を起こすのに充分な膜厚である。
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光層の膜厚は、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。第一の発光層の膜厚が15nm以下であれば、第二の発光層へ三重項励起子が移動するのに充分に薄い膜厚である。
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光層の膜厚は、3nm以上、15nm以下であることがより好ましい。
【0061】
(三重項エネルギーT
三重項エネルギーTの測定方法としては、下記の方法が挙げられる。
測定対象となる化合物をEPA(ジエチルエーテル:イソペンタン:エタノール=5:5:2(容積比))中に、10-5mol/L以上10-4mol/L以下となるように溶解し、この溶液を石英セル中に入れて測定試料とする。この測定試料について、低温(77[K])で燐光スペクトル(縦軸:燐光発光強度、横軸:波長とする。)を測定し、この燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]に基づいて、次の換算式(F1)から算出されるエネルギー量を三重項エネルギーTとする。
換算式(F1):T[eV]=1239.85/λedge
【0062】
燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線は以下のように引く。燐光スペクトルの短波長側から、スペクトルの極大値のうち、最も短波長側の極大値までスペクトル曲線上を移動する際に、長波長側に向けて曲線上の各点における接線を考える。この接線は、曲線が立ち上がるにつれ(つまり縦軸が増加するにつれ)、傾きが増加する。この傾きの値が極大値をとる点において引いた接線(すなわち変曲点における接線)が、当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とする。
なお、スペクトルの最大ピーク強度の15%以下のピーク強度をもつ極大点は、上述の最も短波長側の極大値には含めず、最も短波長側の極大値に最も近い、傾きの値が極大値をとる点において引いた接線を当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とする。
燐光の測定には、(株)日立ハイテクノロジー製のF-4500形分光蛍光光度計本体を用いることができる。なお、測定装置はこの限りではなく、冷却装置、及び低温用容器と、励起光源と、受光装置とを組み合わせることにより、測定してもよい。
【0063】
(一重項エネルギーS
溶液を用いた一重項エネルギーSの測定方法(溶液法と称する場合がある。)としては、下記の方法が挙げられる。
測定対象となる化合物の10-5mol/L以上10-4mol/L以下のトルエン溶液を調製して石英セルに入れ、常温(300K)でこの試料の吸収スペクトル(縦軸:吸収強度、横軸:波長とする。)を測定する。この吸収スペクトルの長波長側の立ち下がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]を次に示す換算式(F2)に代入して一重項エネルギーを算出する。
換算式(F2):S[eV]=1239.85/λedge
吸収スペクトル測定装置としては、例えば、日立社製の分光光度計(装置名:U3310)が挙げられるが、これに限定されない。
【0064】
吸収スペクトルの長波長側の立ち下がりに対する接線は以下のように引く。吸収スペクトルの極大値のうち、最も長波長側の極大値から長波長方向にスペクトル曲線上を移動する際に、曲線上の各点における接線を考える。この接線は、曲線が立ち下がるにつれ(つまり縦軸の値が減少するにつれ)、傾きが減少しその後増加することを繰り返す。傾きの値が最も長波長側(ただし、吸光度が0.1以下となる場合は除く)で極小値をとる点において引いた接線を当該吸収スペクトルの長波長側の立ち下がりに対する接線とする。
なお、吸光度の値が0.2以下の極大点は、上記最も長波長側の極大値には含めない。
【0065】
(第二の発光層)
第二の発光層は、第二のホスト材料を含む。第二のホスト材料は、第一の発光層が含有する第一のホスト材料とは、異なる化合物である。
第二の発光層は、最大のピーク波長が500nm以下の発光を示す第二の発光性化合物を少なくとも含むことが好ましい。第二の発光性化合物は、最大のピーク波長が500nm以下の蛍光発光を示す蛍光発光性化合物であることが好ましい。
化合物の最大のピーク波長の測定方法は、前述の通りである。
【0066】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光性化合物の三重項エネルギーT(D2)と、第二のホスト材料の三重項エネルギーT(H2)とが下記数式(数3A)の関係を満たすことが好ましい。
(D2)>T(H2) …(数3A)
【0067】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光性化合物と、第二のホスト材料とが、前記数式(数3A)の関係を満たすことにより、第一の発光層で生成した三重項励起子は、第二の発光層に移動する際、より高い三重項エネルギーを有する第二の発光性化合物ではなく、第二のホスト材料の分子にエネルギー移動する。また、第二のホスト材料上で正孔及び電子が再結合して発生した三重項励起子は、より高い三重項エネルギーを持つ第二の発光性化合物には移動しない。第二の発光性化合物の分子上で再結合し発生した三重項励起子は、速やかに第二のホスト材料の分子にエネルギー移動する。
第二のホスト材料の三重項励起子が第二の発光性化合物に移動することなく、TTF現象によって第二のホスト材料上で三重項励起子同士が効率的に衝突することで、一重項励起子が生成される。
【0068】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二のホスト材料の一重項エネルギーS(H2)と第二の発光性化合物の一重項エネルギーS(D2)とが、下記数式(数4)の関係を満たすことが好ましい。
(H2)>S(D2) …(数4)
【0069】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光性化合物と、第二のホスト材料とが、前記数式(数4)の関係を満たすことにより、第二の発光性化合物の一重項エネルギーは、第二のホスト材料の一重項エネルギーより小さいため、TTF現象によって生成された一重項励起子は、第二のホスト材料から第二の発光性化合物へエネルギー移動し、第二の発光性化合物の蛍光性発光に寄与する。
【0070】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光層は、素子駆動時に最大のピーク波長が500nm以下の光を放射することが好ましい。
【0071】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光性化合物の最大のピークの半値幅が、1nm以上、20nm以下であることが好ましい。
【0072】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光性化合物のストークスシフトは、7nmを超えることが好ましい。
第二の発光性化合物のストークスシフトが7nmを越えていれば、自己吸収による発光効率の低下を防止し易くなる。
自己吸収とは、放出した光を同一化合物が吸収する現象であり、発光効率の低下を引き起こす現象である。自己吸収は、ストークスシフトの小さい(すなわち、吸収スペクトルと蛍光スペクトルの重なりが大きい)化合物で顕著に観測されるため、自己吸収を抑制するには、ストークスシフトの大きい(吸収スペクトルと蛍光スペクトルの重なりが小さい)化合物を用いることが好ましい。ストークスシフトは、次に記載する方法で測定できる。
測定対象となる化合物を2.0×10-5mol/Lの濃度でトルエンに溶解し、測定用試料を調製する。石英セルへ入れた測定用試料に室温(300K)で紫外-可視領域の連続光を照射し、吸収スペクトル(縦軸:吸光度、横軸:波長)を測定する。吸収スペクトル測定には、分光光度計を用いることができ、例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス製の分光光度計U-3900/3900H形を用いることができる。また、測定対象となる化合物を4.9×10-6mol/Lの濃度でトルエンに溶解し、測定用試料を調製する。石英セルへ入れた測定用試料に室温(300K)で励起光を照射し、蛍光スペクトル(縦軸:蛍光強度、横軸:波長)を測定した。蛍光スペクトル測定には、分光光度計を用いることができ、例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス製の分光蛍光光度計F-7000形を用いることができる。
これらの吸収スペクトルと蛍光スペクトルから、吸収極大波長と蛍光極大波長の差を算出し、ストークスシフト(SS)を求める。ストークスシフトSSの単位は、nmである。
【0073】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光性化合物は、分子中にアジン環構造を含まない化合物であることが好ましい。
【0074】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光性化合物は、ホウ素含有錯体ではないことが好ましく、第二の発光性化合物は、錯体ではないことがより好ましい。
【0075】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光層は、金属錯体を含有しないことが好ましい。また、本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光層は、ホウ素含有錯体を含有しないことも好ましい。
【0076】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光層は、燐光発光性材料(ドーパント材料)を含まないことが好ましい。
また、第二の発光層は、重金属錯体及び燐光発光性の希土類金属錯体を含まないことが好ましい。ここで、重金属錯体としては、例えば、イリジウム錯体、オスミウム錯体、及び白金錯体等が挙げられる。
【0077】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光性化合物は、第二の発光層中に、1.1質量%を超えて、含有されることが好ましい。すなわち、第二の発光層は、第二の発光性化合物を、第二の発光層の全質量の1.1質量%超、含有することが好ましく、第二の発光層の全質量の1.2質量%以上、含有することがより好ましく、第二の発光層の全質量の1.5質量%以上、含有することがさらに好ましい。
第二の発光層は、第二の発光性化合物を、第二の発光層の全質量の10質量%以下、含有することが好ましく、第二の発光層の全質量の7質量%以下、含有することがより好ましく、第二の発光層の全質量の5質量%以下、含有することがさらに好ましい。
【0078】
第二の発光層は、第二のホスト材料を、第二の発光層の全質量の60質量%以上、含有することが好ましく、第二の発光層の全質量の70質量%以上、含有することがより好ましく、第二の発光層の全質量の80質量%以上、含有することがさらに好ましく、第二の発光層の全質量の90質量%以上、含有することがよりさらに好ましく、第二の発光層の全質量の95質量%以上、含有することがさらになお好ましい。
第二の発光層は、第二のホスト材料を、第二の発光層の全質量の99質量%以下、含有することが好ましい。
第二の発光層が第二のホスト材料と第二の発光性化合物とを含有する場合、第二のホスト材料及び第二の発光性化合物の合計含有率の上限は、100質量%である。
【0079】
なお、本実施形態は、第二の発光層に、第二のホスト材料と第二の発光性化合物以外の材料が含まれることを除外しない。
第二の発光層は、第二のホスト材料を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。第二の発光層は、第二の発光性化合物を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0080】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光層の膜厚は、5nm以上であることが好ましく、15nm以上であることがより好ましい。第二の発光層の膜厚が5nm以上であれば、第一の発光層から第二の発光層へ移動してきた三重項励起子が、再び第一の発光層に戻ることを抑制し易い。また、第二の発光層の膜厚が5nm以上であれば、第一の発光層における再結合部分から三重項励起子を充分離すことができる。
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光層の膜厚は、20nm以下であることが好ましい。第二の発光層の膜厚が20nm以下であれば、第二の発光層中の三重項励起子の密度を向上させて、TTF現象をさらに起こり易くすることができる。
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光層の膜厚は、5nm以上、20nm以下であることが好ましい。
【0081】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光性化合物又は第二の発光性化合物の三重項エネルギーT(DX)と、第一のホスト材料の三重項エネルギーT(H1)と第二のホスト材料の三重項エネルギーT(H2)とが、下記数式(数10)の関係を満たすことが好ましい。
2.6eV>T(DX)>T(H1)>T(H2) …(数10)
【0082】
第一の発光性化合物の三重項エネルギーT(D1)は、下記数式(数10A)の関係を満たすことが好ましい。
2.6eV>T(D1)>T(H1)>T(H2) …(数10A)
【0083】
第二の発光性化合物の三重項エネルギーT(D2)は、下記数式(数10B)の関係を満たすことが好ましい。
2.6eV>T(D2)>T(H1)>T(H2) …(数10B)
【0084】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光性化合物又は第二の発光性化合物の三重項エネルギーT(DX)と、第一のホスト材料の三重項エネルギーT(H1)とが、下記数式(数11)の関係を満たすことが好ましい。
0eV<T(DX)-T(H1)<0.6eV …(数11)
【0085】
第一の発光性化合物の三重項エネルギーT(D1)は、下記数式(数11A)の関係を満たすことが好ましい。
0eV<T(D1)-T(H1)<0.6eV …(数11A)
【0086】
第二の発光性化合物の三重項エネルギーT(D2)は、下記数式(数11B)の関係を満たすことが好ましい。
0eV<T(D2)-T(H2)<0.8eV …(数11B)
【0087】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一のホスト材料の三重項エネルギーT(H1)が、下記数式(数12)の関係を満たすことが好ましい。
(H1)>2.0eV …(数12)
【0088】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一のホスト材料の三重項エネルギーT(H1)が、下記数式(数12A)の関係を満たすことも好ましく、下記数式(数12B)の関係を満たすことも好ましい。
(H1)>2.10eV …(数12A)
(H1)>2.15eV …(数12B)
【0089】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一のホスト材料の三重項エネルギーT(H1)が、前記数式(数12A)又は前記数式(数12B)の関係を満たすことにより、第一の発光層で生成した三重項励起子は、第二の発光層へと移動し易くなり、また、第二の発光層から第一の発光層へ逆移動することを抑制し易くなる。その結果、第二の発光層において、一重項励起子が効率良く生成され、発光効率が向上する。
【0090】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一のホスト材料の三重項エネルギーT(H1)が、下記数式(数12C)の関係を満たすことも好ましく、下記数式(数12D)の関係を満たすことも好ましい。
2.08eV>T(H1)>1.87eV …(数12C)
2.05eV>T(H1)>1.90eV …(数12D)
【0091】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一のホスト材料の三重項エネルギーT(H1)が、前記数式(数12C)又は前記数式(数12D)の関係を満たすことにより、第一の発光層で生成した三重項励起子のエネルギーが小さくなり、有機EL素子の長寿命化が期待できる。
【0092】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光性化合物の三重項エネルギーT(D1)が、下記数式(数14A)の関係を満たすことも好ましく、下記数式(数14B)の関係を満たすことも好ましい。
2.60eV>T(D1) …(数14A)
2.50eV>T(D1) …(数14B)
第一の発光層が、前記数式(数14A)又は(数14B)の関係を満たす第一の発光性化合物を含有することにより、有機EL素子が長寿命化する。
【0093】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光性化合物の三重項エネルギーT(D2)が、下記数式(数14C)の関係を満たすことも好ましく、下記数式(数14D)の関係を満たすことも好ましい。
2.60eV>T(D2) …(数14C)
2.50eV>T(D2) …(数14D)
第二の発光層が、前記数式(数14C)又は(数14D)の関係を満たす化合物を含有することにより、有機EL素子が長寿命化する。
【0094】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二のホスト材料の三重項エネルギーT(H2)が、下記数式(数13)の関係を満たすことが好ましい。
(H2)≧1.9eV …(数13)
【0095】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光層と第二の発光層とが、直接、接していることが好ましい。
【0096】
本明細書において、「第一の発光層と第二の発光層とが、直接、接している」層構造は、例えば、以下の態様(LS1)、(LS2)及び(LS3)のいずれかの態様も含み得る。
(LS1)第一の発光層に係る化合物の蒸着の工程と第二の発光層に係る化合物の蒸着の工程を経る過程で第一のホスト材料及び第二のホスト材料の両方が混在する領域が生じ、当該領域が第一の発光層と第二の発光層との界面に存在する態様。
(LS2)第一の発光層及び第二の発光層が発光性の化合物を含む場合に、第一の発光層に係る化合物の蒸着の工程と第二の発光層に係る化合物の蒸着の工程を経る過程で第一のホスト材料、第二のホスト材料及び発光性の化合物が混在する領域が生じ、当該領域が第一の発光層と第二の発光層との界面に存在する態様。
(LS3)第一の発光層及び第二の発光層が発光性の化合物を含む場合に、第一の発光層に係る化合物の蒸着の工程と第二の発光層に係る化合物の蒸着の工程を経る過程で当該発光性の化合物からなる領域、第一のホスト材料からなる領域、又は第二のホスト材料からなる領域が生じ、当該領域が第一の発光層と第二の発光層との界面に存在する態様。
【0097】
(有機EL素子のその他の層)
本実施形態に係る有機EL素子は、第一の発光層及び第二の発光層以外に、1以上の有機層を有していてもよい。有機層としては、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層、電子輸送層、正孔障壁層及び電子障壁層からなる群から選択される少なくともいずれかの層が挙げられる。
【0098】
本実施形態に係る有機EL素子は、陽極及び陰極をさらに含み、陽極と陰極との間に第一の発光層を含み、第一の発光層と陰極との間に第二の発光層を含むことが好ましい。
【0099】
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と、第一の発光層と、第二の発光層と、陰極とをこの順(第一の積層順と称する場合がある。)に有していることも好ましい。第一の積層順の場合、本実施形態に係る有機EL素子において、陽極と第一の発光層との間に正孔輸送層を含むことが好ましい。第一の積層順の場合、本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光層と陰極との間に電子輸送層を含むことが好ましい。
【0100】
また、本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と、第二の発光層と、第一の発光層と、陰極とをこの順(第二の積層順と称する場合がある。)に有していることも好ましい。第二の積層順の場合、本実施形態に係る有機EL素子において、陽極と第二の発光層との間に正孔輸送層を含むことが好ましい。第二の積層順の場合、本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光層と陰極との間に電子輸送層を含むことが好ましい。
【0101】
本実施形態において、第一の発光層と第二の発光層との積層順が、陽極側から、第一の発光層と第二の発光層との順序である場合、第一のホスト材料の電子移動度μe(H1)と、第二のホスト材料の電子移動度μe(H2)とが、下記数式(数30)の関係を満たすことも好ましい。
μe(H2)>μe(H1) …(数30)
【0102】
第一のホスト材料と第二のホスト材料とが、前記数式(数30)の関係を満たすことで、第一の発光層でのホールと電子との再結合能が向上する。
【0103】
本実施形態において、第一の発光層と第二の発光層との積層順が、陽極側から、第一の発光層と第二の発光層との順序である場合、第一のホスト材料の正孔移動度μh(H1)と、第二のホスト材料の正孔移動度μh(H2)とが、下記数式(数31)の関係を満たすことも好ましい。
μh(H1)>μh(H2) …(数31)
【0104】
本実施形態において、第一の発光層と第二の発光層との積層順が、陽極側から、第一の発光層と第二の発光層との順序である場合、第一のホスト材料の正孔移動度μh(H1)と、第一のホスト材料の電子移動度μe(H1)と、第二のホスト材料の正孔移動度μh(H2)と、第二のホスト材料の電子移動度μe(H2)とが、下記数式(数32)の関係を満たすことも好ましい。
(μe(H2)/μh(H2))>(μe(H1)/μh(H1)) …(数32)
【0105】
電子移動度は、下記の手順で作製された移動度評価用素子を用い、インピーダンス測定を行うことで測定できる。移動度評価用素子は、例えば、下記の手順で作製される。
アルミニウム電極(陽極)付きガラス基板上に、アルミニウム電極を覆うようにして電子移動度の測定対象となる化合物Targetを蒸着して測定対象層を形成する。この測定対象層の上に、下記化合物ET-Aを蒸着して電子輸送層を形成する。この電子輸送層の成膜の上に、LiFを蒸着して電子注入層を形成する。この電子注入層の成膜の上に金属アルミニウム(Al)を蒸着して金属陰極を形成する。
以上の移動度評価用素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
glass/Al(50)/Target(200)/ET-A(10)/LiF(1)/Al(50)
なお、括弧内の数字は、膜厚(nm)を示す。
【0106】
【化1】
【0107】
電子移動度の移動度評価用素子を、インピーダンス測定装置に設置し、インピーダンス測定を行う。インピーダンス測定は、測定周波数を1Hzから1MHzまで掃引して行う。その際、素子には交流振幅0.1Vと同時に、直流電圧Vを印加する。測定されたインピーダンスZから、下記計算式(C1)の関係を用いて、モジュラスMを計算する。
計算式(C1):M=jωZ
上記計算式(C1)において、jは、その平方が-1になる虚数単位、ωは、角周波数[rad/s]である。
モジュラスMの虚部を縦軸、周波数[Hz]を横軸にしたボーデプロットにおいて、ピークを示す周波数fmaxから移動度評価用素子の電気的な時定数τを下記計算式(C2)から求める。
計算式(C2):τ=1/(2πfmax)
上記計算式(C2)のπは、円周率を表す記号である。
上記τを用いて、下記計算式(C3-1)の関係から電子移動度μeを算出する。
計算式(C3-1):μe=d/(Vτ)
上記計算式(C3-1)のdは、素子を構成する有機薄膜の総膜厚であり、電子移動度の移動度評価用素子構成の場合、d=210[nm]である。
【0108】
正孔移動度は、下記の手順で作製された移動度評価用素子を用い、インピーダンス測定を行うことで測定できる。移動度評価用素子は、例えば、下記の手順で作製される。
ITO透明電極(陽極)付きガラス基板上に、透明電極を覆うようにして下記化合物HA-2を蒸着して正孔注入層を形成する。この正孔注入層の成膜の上に、下記化合物HT-Aを蒸着して正孔輸送層を形成する。続けて、正孔移動度の測定対象となる化合物Targetを蒸着して測定対象層を形成する。この測定対象層の上に、金属アルミニウム(Al)を蒸着して金属陰極を形成する。
以上の移動度評価用素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130)/HA-2(5)/HT-A(10)/Target(200)/Al(80)
なお、括弧内の数字は、膜厚(nm)を示す。
【0109】
【化2】
【0110】
正孔移動度の移動度評価用素子を、インピーダンス測定装置に設置し、インピーダンス測定を行う。インピーダンス測定は、測定周波数を1Hzから1MHzまで掃引して行う。その際、素子には交流振幅0.1Vと同時に、直流電圧Vを印加する。測定されたインピーダンスZから、前記計算式(C1)の関係を用いて、モジュラスMを計算する。
モジュラスMの虚部を縦軸、周波数[Hz]を横軸にしたボーデプロットにおいて、ピークを示す周波数fmaxから移動度評価用素子の電気的な時定数τを前記計算式(C2)から求める。
前記計算式(C2)から求めたτを用いて、下記計算式(C3-2)の関係から正孔移動度μhを算出する。
計算式(C3-2):μh=d/(Vτ)
上記計算式(C3-2)のdは、素子を構成する有機薄膜の総膜厚であり、正孔移動度の移動度評価用素子構成の場合、d=215[nm]である。
【0111】
本明細書における電子移動度及び正孔移動度は、電界強度の平方根E1/2=500[V1/2/cm1/2]の際の値である。電界強度の平方根E1/2は、下記計算式(C4)の関係から算出することができる。
計算式(C4):E1/2=V1/2/d1/2
前記インピーダンス測定にはインピーダンス測定装置としてソーラトロン社の1260型を用い、高精度化のため、ソーラトロン社の1296型誘電率測定インターフェイスを併せて用いることができる。
【0112】
有機EL素子の構成についてさらに説明する。以下、符号の記載は省略することがある。
【0113】
(基板)
基板は、有機EL素子の支持体として用いられる。基板としては、例えば、ガラス、石英、及びプラスチック等を用いることができる。また、可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板とは、折り曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、プラスチック基板等が挙げられる。プラスチック基板を形成する材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、及びポリエチレンナフタレート等が挙げられる。また、無機蒸着フィルムを用いることもできる。
【0114】
(陽極)
基板上に形成される陽極には、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム-酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素もしくは酸化珪素を含有した酸化インジウム-酸化スズ、酸化インジウム-酸化亜鉛、酸化タングステン、および酸化亜鉛を含有した酸化インジウム、グラフェン等が挙げられる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。
【0115】
これらの材料は、通常、スパッタリング法により成膜される。例えば、酸化インジウム-酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1質量%以上10質量%以下の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いることにより、スパッタリング法で形成することができる。また、例えば、酸化タングステン、および酸化亜鉛を含有した酸化インジウムは、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5質量%以上5質量%以下、酸化亜鉛を0.1質量%以上1質量%以下含有したターゲットを用いることにより、スパッタリング法で形成することができる。その他、真空蒸着法、塗布法、インクジェット法、スピンコート法などにより作製してもよい。
【0116】
陽極上に形成されるEL層のうち、陽極に接して形成される正孔注入層は、陽極の仕事関数に関係なく正孔(ホール)注入が容易である複合材料を用いて形成されるため、電極材料として可能な材料(例えば、金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物、その他、元素周期表の第1族または第2族に属する元素も含む)を用いることができる。
【0117】
仕事関数の小さい材料である、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(例えば、MgAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等を用いることもできる。なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびこれらを含む合金を用いて陽極を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。さらに、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
【0118】
(陰極)
陰極には、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。このような陰極材料の具体例としては、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(例えば、MgAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。
【0119】
なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらを含む合金を用いて陰極を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。また、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
【0120】
なお、電子注入層を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、グラフェン、珪素もしくは酸化珪素を含有した酸化インジウム-酸化スズ等様々な導電性材料を用いて陰極を形成することができる。これらの導電性材料は、スパッタリング法やインクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することができる。
【0121】
(正孔注入層)
正孔注入層は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。
【0122】
また、正孔注入性の高い物質としては、低分子の有機化合物である4,4’,4’’-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’-ビス(N-{4-[N’-(3-メチルフェニル)-N’-フェニルアミノ]フェニル}-N-フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6-ビス[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等の芳香族アミン化合物等やジピラジノ[2,3-f:20,30-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)も挙げられる。
【0123】
また、正孔注入性の高い物質としては、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いることもできる。例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)などの高分子化合物が挙げられる。また、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の酸を添加した高分子化合物を用いることもできる。
【0124】
(正孔輸送層)
正孔輸送層は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送層には、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、アントラセン誘導体等を使用する事ができる。具体的には、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)やN,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BAFLP)、4,4’-ビス[N-(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4’,4’’-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10-6cm/(V・s)以上の正孔移動度を有する物質である。
【0125】
正孔輸送層には、CBP、9-[4-(N-カルバゾリル)]フェニル-10-フェニルアントラセン(CzPA)、9-フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(PCzPA)のようなカルバゾール誘導体や、t-BuDNA、DNA、DPAnthのようなアントラセン誘導体を用いても良い。ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)等の高分子化合物を用いることもできる。
【0126】
但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0127】
(電子輸送層)
電子輸送層は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送層には、1)アルミニウム錯体、ベリリウム錯体、亜鉛錯体等の金属錯体、2)イミダゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、アジン誘導体、カルバゾール誘導体、フェナントロリン誘導体等の複素芳香族化合物、3)高分子化合物を使用することができる。具体的には低分子の有機化合物として、Alq、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、BAlq、Znq、ZnPBO、ZnBTZなどの金属錯体等を用いることができる。また、金属錯体以外にも、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3-ビス[5-(ptert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、3-(4-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-5-(4-ビフェニリル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、3-(4-tert-ブチルフェニル)-4-(4-エチルフェニル)-5-(4-ビフェニリル)-1,2,4-トリアゾール(略称:p-EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、4,4’-ビス(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン(略称:BzOs)などの複素芳香族化合物も用いることができる。本実施態様においては、ベンゾイミダゾール化合物を好適に用いることができる。ここに述べた物質は、主に10-6cm/(V・s)以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔輸送性よりも電子輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いてもよい。また、電子輸送層は、単層で構成されていてもよいし、上記物質からなる層が二層以上積層されて構成されていてもよい。
【0128】
また、電子輸送層には、高分子化合物を用いることもできる。例えば、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(ピリジン-3,5-ジイル)](略称:PF-Py)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(2,2’-ビピリジン-6,6’-ジイル)](略称:PF-BPy)などを用いることができる。
【0129】
(電子注入層)
電子注入層は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層には、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、カルシウム(Ca)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)、リチウム酸化物(LiOx)等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。その他、電子輸送性を有する物質にアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を含有させたもの、具体的にはAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの等を用いてもよい。なお、この場合には、陰極からの電子注入をより効率良く行うことができる。
【0130】
あるいは、電子注入層に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0131】
(膜厚)
本実施形態の有機EL素子の各有機層の膜厚は、上記で特に言及した場合を除いて限定されない。一般に、膜厚が薄すぎるとピンホール等の欠陥が生じやすく、膜厚が厚すぎると高い印加電圧が必要となり効率が悪くなるため、通常、有機EL素子の各有機層の膜厚は、数nmから1μmの範囲が好ましい。
【0132】
(第一のホスト材料及び第二のホスト材料)
本実施形態に係る有機EL素子において、第一のホスト材料及び第二のホスト材料は、それぞれ独立に、例えば、下記一般式(1)、一般式(1X)、一般式(12X)、一般式(13X)、一般式(14X)、一般式(15X)、一般式(16X)及び一般式(2)で表される化合物からなる群から選択されるいずれかの化合物であることが好ましい。
【0133】
(一般式(1)で表される化合物)
本実施形態において、第一のホスト材料は、下記一般式(1)で表される化合物であることも好ましい。
【0134】
【化3】
【0135】
(前記一般式(1)において、
101~R110は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基、又は
前記一般式(11)で表される基であり、
ただし、R101~R110の少なくとも1つは、前記一般式(11)で表される基であり、
前記一般式(11)で表される基が複数存在する場合、複数の前記一般式(11)で表される基は、互いに同一であるか又は異なり、
101は、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar101は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
mxは、0、1、2、3、4又は5であり、
101が2以上存在する場合、2以上のL101は、互いに同一であるか、又は異なり、
Ar101が2以上存在する場合、2以上のAr101は、互いに同一であるか、又は異なり、
前記一般式(11)中の*は、前記一般式(1)中のピレン環との結合位置を示す。)
【0136】
(本実施形態に係る一般式(1)、一般式(1X)、一般式(12X)、一般式(13X)、一般式(14X)、一般式(15X)、一般式(16X)で表される化合物中R901、R902、R903、R904、R905、R906、R907、R801及びR802は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
901が複数存在する場合、複数のR901は、互いに同一であるか又は異なり、
902が複数存在する場合、複数のR902は、互いに同一であるか又は異なり、
903が複数存在する場合、複数のR903は、互いに同一であるか又は異なり、
904が複数存在する場合、複数のR904は、互いに同一であるか又は異なり、
905が複数存在する場合、複数のR905は、互いに同一であるか又は異なり、
906が複数存在する場合、複数のR906は、互いに同一であるか又は異なり、
907が複数存在する場合、複数のR907は、互いに同一であるか又は異なり、
801が複数存在する場合、複数のR801は、互いに同一であるか又は異なり、
802が複数存在する場合、複数のR802は、互いに同一であるか又は異なる。)
【0137】
本実施形態に係る有機EL素子において、前記一般式(11)で表される基は、下記一般式(111)で表される基であることが好ましい。
【0138】
【化4】
【0139】
(前記一般式(111)において、
は、CR123124、酸素原子、硫黄原子、又はNR125であり、
111及びL112は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
maは、0、1、2、3又は4であり、
mbは、0、1、2、3又は4であり、
ma+mbは、0、1、2、3又は4であり、
Ar101は、前記一般式(11)におけるAr101と同義であり、
121、R122、R123、R124及びR125は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
mcは、3であり、
3つのR121は、互いに同一であるか、又は異なり、
mdは、3であり、
3つのR122は、互いに同一であるか、又は異なる。)
【0140】
前記一般式(111)で表される基における下記一般式(111a)で表される環構造中の炭素原子*1~*8の位置のうち、*1~*4のいずれか1つの位置にL111が結合し、*1~*4の残りの3つの位置にR121が結合し、*5~*8のいずれか1つの位置にL112が結合し、*5~*8の残りの3つの位置にR122が結合する。
【0141】
【化5】
【0142】
例えば、前記一般式(111)で表される基において、L111が前記一般式(111a)で表される環構造中の*2の炭素原子の位置に結合し、L112が前記一般式(111a)で表される環構造中の*7の炭素原子の位置に結合する場合、前記一般式(111)で表される基は、下記一般式(111b)で表される。
【0143】
【化6】
【0144】
(前記一般式(111b)において、
、L111、L112、ma、mb、Ar101、R121、R122、R123、R124及びR125は、それぞれ独立に、前記一般式(111)におけるX、L111、L112、ma、mb、Ar101、R121、R122、R123、R124及びR125と同義であり、
複数のR121は、互いに同一であるか、又は異なり、
複数のR122は、互いに同一であるか、又は異なる。)
【0145】
本実施形態に係る有機EL素子において、前記一般式(111)で表される基は、前記一般式(111b)で表される基であることが好ましい。
【0146】
本実施形態に係る有機EL素子において、maは、0、1又は2であり、mbは、0、1又は2である、ことが好ましい。
【0147】
本実施形態に係る有機EL素子において、maは、0又は1であり、mbは、0又は1であることが好ましい。
【0148】
本実施形態に係る有機EL素子において、Ar101は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であることが好ましい。
【0149】
本実施形態に係る有機EL素子において、
Ar101は、
置換もしくは無置換のフェニル基、
置換もしくは無置換のナフチル基、
置換もしくは無置換のビフェニル基、
置換もしくは無置換のターフェニル基、
置換もしくは無置換のピレニル基、
置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は
置換もしくは無置換のフルオレニル基であることが好ましい。
【0150】
本実施形態に係る有機EL素子において、Ar101は、下記一般式(12)、一般式(13)又は一般式(14)で表される基であることも好ましい。
【0151】
【化7】
【0152】
(前記一般式(12)、一般式(13)及び一般式(14)において、
111~R120は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R124で表される基、
-COOR125で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
前記一般式(12)、一般式(13)及び一般式(14)中の*は、前記一般式(11)中のL101との結合位置、又は前記一般式(111)もしくは一般式(111b)中のL112との結合位置を示す。)
【0153】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一のホスト材料は、下記一般式(101)で表されることも好ましい。
【0154】
【化8】
【0155】
(前記一般式(101)において、
101~R120は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
ただし、R101~R110のうち1つがL101との結合位置を示し、R111~R120のうち1つがL101との結合位置を示し、
101は、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
mxは、0、1、2、3、4又は5であり、
101が2以上存在する場合、2以上のL101は、互いに同一であるか、又は異なる。)
【0156】
本実施形態に係る有機EL素子において、L101は、単結合、又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基であることが好ましい。
【0157】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一のホスト材料は、下記一般式(102)で表されることも好ましい。
【0158】
【化9】
【0159】
(前記一般式(102)において、
101~R120は、それぞれ独立に、前記一般式(101)におけるR101~R120と同義であり、
ただし、R101~R110のうち1つがL111との結合位置を示し、R111~R120のうち1つがL112との結合位置を示し、
は、CR123124、酸素原子、硫黄原子、又はNR125であり、
111及びL112は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
maは、0、1、2、3又は4であり、
mbは、0、1、2、3又は4であり、
ma+mbは、0、1、2、3又は4であり、
121、R122、R123、R124及びR125は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
mcは、3であり、
3つのR121は、互いに同一であるか、又は異なり、
mdは、3であり、
3つのR122は、互いに同一であるか、又は異なる。)
【0160】
前記一般式(102)で表される化合物において、maは、0、1又は2であり、mbは、0、1又は2であることが好ましい。
【0161】
前記一般式(102)で表される化合物において、maは、0又は1であり、mbは、0又は1であることが好ましい。
【0162】
本実施形態に係る有機EL素子において、R101~R110のうち2つ以上が、前記一般式(11)で表される基であることが好ましい。
【0163】
本実施形態に係る有機EL素子において、R101~R110のうち2つ以上が、前記一般式(11)で表される基であり、かつ、Ar101は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であることが好ましい。
【0164】
本実施形態に係る有機EL素子において、
Ar101は、置換もしくは無置換のピレニル基ではなく、
101は、置換もしくは無置換のピレニレン基ではなく、
前記一般式(11)で表される基ではないR101~R110としての置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基は、置換もしくは無置換のピレニル基ではないことが好ましい。
【0165】
本実施形態に係る有機EL素子において、
前記一般式(11)で表される基ではないR101~R110は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であることが好ましい。
【0166】
本実施形態に係る有機EL素子において、
前記一般式(11)で表される基ではないR101~R110は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、又は
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基であることが好ましい。
【0167】
本実施形態に係る有機EL素子において、前記一般式(11)で表される基ではないR101~R110は、水素原子であることが好ましい。
【0168】
(一般式(1X)で表される化合物)
本実施形態において、第一のホスト材料は、下記一般式(1X)で表される化合物であることも好ましい。
【0169】
【化10】
【0170】
(前記一般式(1X)において、
101~R112は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基、又は
前記一般式(11X)で表される基であり、
ただし、R101~R112の少なくとも1つは、前記一般式(11X)で表される基であり、
前記一般式(11X)で表される基が複数存在する場合、複数の前記一般式(11X)で表される基は、互いに同一であるか又は異なり、
101は、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar101は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
mxは、1、2、3、4又は5であり、
101が2以上存在する場合、2以上のL101は、互いに同一であるか、又は異なり、
Ar101が2以上存在する場合、2以上のAr101は、互いに同一であるか、又は異なり、
前記一般式(11X)中の*は、前記一般式(1X)中のベンズ[a]アントラセン環との結合位置を示す。)
【0171】
本実施形態に係る有機EL素子において、前記一般式(11X)で表される基は、下記一般式(111X)で表される基であることが好ましい。
【0172】
【化11】
【0173】
(前記一般式(111X)において、
は、CR143144、酸素原子、硫黄原子、又はNR145であり、
111及びL112は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
maは、1、2、3又は4であり、
mbは、1、2、3又は4であり、
ma+mbは、2、3又は4であり、
Ar101は、前記一般式(11X)におけるAr101と同義であり、
141、R142、R143、R144及びR145は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
mcは、3であり、
3つのR141は、互いに同一であるか、又は異なり、
mdは、3であり、
3つのR142は、互いに同一であるか、又は異なる。)
【0174】
前記一般式(111X)で表される基における下記一般式(111aX)で表される環構造中の炭素原子*1~*8の位置のうち、*1~*4のいずれか1つの位置にL111が結合し、*1~*4の残りの3つの位置にR141が結合し、*5~*8のいずれか1つの位置にL112が結合し、*5~*8の残りの3つの位置にR142が結合する。
【0175】
【化12】
【0176】
例えば、前記一般式(111X)で表される基において、L111が前記一般式(111aX)で表される環構造中の*2の炭素原子の位置に結合し、L112が前記一般式(111aX)で表される環構造中の*7の炭素原子の位置に結合する場合、前記一般式(111X)で表される基は、下記一般式(111bX)で表される。
【0177】
【化13】
【0178】
(前記一般式(111bX)において、
、L111、L112、ma、mb、Ar101、R141、R142、R143、R144及びR145は、それぞれ独立に、前記一般式(111X)におけるX、L111、L112、ma、mb、Ar101、R141、R142、R143、R144及びR145と同義であり、
複数のR141は、互いに同一であるか、又は異なり、
複数のR142は、互いに同一であるか、又は異なる。)
【0179】
本実施形態に係る有機EL素子において、前記一般式(111X)で表される基は、前記一般式(111bX)で表される基であることが好ましい。
【0180】
前記一般式(1X)で表される化合物において、maは、1又は2であり、mbは、1又は2であることが好ましい。
【0181】
前記一般式(1X)で表される化合物において、maは、1であり、mbは、1であることが好ましい。
【0182】
前記一般式(1X)で表される化合物において、Ar101は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であることが好ましい。
【0183】
前記一般式(1X)で表される化合物において、Ar101は、
置換もしくは無置換のフェニル基、
置換もしくは無置換のナフチル基、
置換もしくは無置換のビフェニル基、
置換もしくは無置換のターフェニル基、
置換もしくは無置換のベンズ[a]アントリル基、
置換もしくは無置換のピレニル基、
置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は
置換もしくは無置換のフルオレニル基であることが好ましい。
【0184】
前記一般式(1X)で表される化合物は、下記一般式(101X)で表されることも好ましい。
【0185】
【化14】
【0186】
(前記一般式(101X)において、
111及びR112のうち1つがL101との結合位置を示し、R133及びR134のうち1つがL101との結合位置を示し、
101~R110、R121~R130、L101との結合位置ではないR111又はR112、並びにL101との結合位置ではないR133又はR134は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
101は、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
mxは、1、2、3、4又は5であり、
101が2以上存在する場合、2以上のL101は、互いに同一であるか、又は異なる。)
【0187】
前記一般式(1X)で表される化合物において、L101は、単結合、又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基であることが好ましい。
【0188】
前記一般式(1X)で表される化合物は、下記一般式(102X)で表されることも好ましい。
【0189】
【化15】
【0190】
(前記一般式(102X)において、
111及びR112のうち1つがL111との結合位置を示し、R133及びR134のうち1つがL112との結合位置を示し、
101~R110、R121~R130、L111との結合位置ではないR111又はR112並びにL112との結合位置ではないR133又はR134は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
は、CR143144、酸素原子、硫黄原子、又はNR145であり、
111及びL112は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
maは、1、2、3又は4であり、
mbは、1、2、3又は4であり、
ma+mbは、2、3、4又は5であり、
141、R142、R143、R144及びR145は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
mcは、3であり、
3つのR141は、互いに同一であるか、又は異なり、
mdは、3であり、
3つのR142は、互いに同一であるか、又は異なる。)
【0191】
前記一般式(1X)で表される化合物において、前記一般式(102X)中のmaは、1又は2であり、mbは、1又は2であることが好ましい。
【0192】
前記一般式(1X)で表される化合物において、前記一般式(102X)中のmaは、1であり、mbは、1であることが好ましい。
【0193】
前記一般式(1X)で表される化合物において、前記一般式(11X)で表される基は、下記一般式(11AX)で表される基、又は下記一般式(11BX)で表される基であることも好ましい。
【0194】
【化16】
【0195】
(前記一般式(11AX)及び前記一般式(11BX)において、
121~R131は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
前記一般式(11AX)で表される基が複数存在する場合、複数の前記一般式(11AX)で表される基は、互いに同一であるか又は異なり、
前記一般式(11BX)で表される基が複数存在する場合、複数の前記一般式(11BX)で表される基は、互いに同一であるか又は異なり、
131及びL132は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
前記一般式(11AX)及び前記一般式(11BX)中の*は、それぞれ、前記一般式(1X)中のベンズ[a]アントラセン環との結合位置を示す。)
【0196】
前記一般式(1X)で表される化合物は、下記一般式(103X)で表されることも好ましい。
【0197】
【化17】
【0198】
(前記一般式(103X)において、
101~R110並びにR112は、それぞれ、前記一般式(1X)におけるR101~R110並びにR112と同義であり、
121~R131、L131及びL132は、それぞれ、前記一般式(11BX)におけるR121~R131、L131及びL132と同義である。)
【0199】
前記一般式(1X)で表される化合物において、L131は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基であることも好ましい。
【0200】
前記一般式(1X)で表される化合物において、L132は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基であることも好ましい。
【0201】
前記一般式(1X)で表される化合物において、R101~R112のうち2つ以上が、前記一般式(11)で表される基であることも好ましい。
【0202】
本前記一般式(1X)で表される化合物において、R101~R112のうち2つ以上が、前記一般式(11X)で表される基であり、一般式(11X)中のAr101は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であることが好ましい。
【0203】
前記一般式(1X)で表される化合物において、
Ar101は、置換もしくは無置換のベンズ[a]アントリル基ではなく、
101は、置換もしくは無置換のベンズ[a]アントリレン基ではなく、
前記一般式(11X)で表される基ではないR101~R110としての置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基は、置換もしくは無置換のベンズ[a]アントリル基ではないことも好ましい。
【0204】
前記一般式(1X)で表される化合物において、前記一般式(11X)で表される基ではないR101~R112は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であることが好ましい。
【0205】
前記一般式(1X)で表される化合物において、前記一般式(11X)で表される基ではないR101~R112は、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、又は
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基であることが好ましい。
【0206】
前記一般式(1X)で表される化合物において、前記一般式(11X)で表される基ではないR101~R112は、水素原子であることが好ましい。
【0207】
(一般式(12X)で表される化合物)
本実施形態において、第一のホスト材料は、下記一般式(12X)で表される化合物であることも好ましい。
【0208】
【化18】
【0209】
(前記一般式(12X)において、
1201~R1210のうちの隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、
互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成するか、又は
互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成し、
前記置換もしくは無置換の単環を形成せず、かつ及び前記置換もしくは無置換の縮合環を形成しないR1201~R1210は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基、又は
前記一般式(121)で表される基であり、
ただし、前記置換もしくは無置換の単環が置換基を有する場合の当該置換基、前記置換もしくは無置換の縮合環が置換基を有する場合の当該置換基、並びにR1201~R1210の少なくとも1つが、前記一般式(121)で表される基であり、
前記一般式(121)で表される基が複数存在する場合、複数の前記一般式(121)で表される基は、互いに同一であるか又は異なり、
1201は、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar1201は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
mx2は、0、1、2、3、4又は5であり、
1201が2以上存在する場合、2以上のL1201は、互いに同一であるか、又は異なり、
Ar1201が2以上存在する場合、2以上のAr1201は、互いに同一であるか、又は異なり、
前記一般式(121)中の*は、前記一般式(12X)で表される環との結合位置を示す。)
【0210】
前記一般式(12X)において、R1201~R1210のうちの隣接する2つからなる組とは、R1201とR1202との組、R1202とR1203との組、R1203とR1204との組、R1204とR1205との組、R1205とR1206との組、R1207とR1208との組、R1208とR1209との組、並びにR1209とR1210との組である。
【0211】
(一般式(13X)で表される化合物)
本実施形態において、第一のホスト材料は、下記一般式(13X)で表される化合物であることも好ましい。
【0212】
【化19】
【0213】
(前記一般式(13X)において、
1301~R1310は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基、又は
前記一般式(131)で表される基であり、
ただし、R1301~R1310の少なくとも1つは、前記一般式(131)で表される基であり、
前記一般式(131)で表される基が複数存在する場合、複数の前記一般式(131)で表される基は、互いに同一であるか又は異なり、
1301は、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar1301は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
mx3は、0、1、2、3、4又は5であり、
1301が2以上存在する場合、2以上のL1301は、互いに同一であるか、又は異なり、
Ar1301が2以上存在する場合、2以上のAr1301は、互いに同一であるか、又は異なり、
前記一般式(131)中の*は、前記一般式(13X)中のフルオランテン環との結合位置を示す。)
【0214】
本実施形態に係る有機EL素子において、前記一般式(131)で表される基ではないR1301~R1310のうち隣接する2つ以上からなる組は、いずれも、互いに結合しない。前記一般式(13X)において隣接する2つからなる組とは、R1301とR1302との組、R1302とR1303との組、R1303とR1304との組、R1304とR1305との組、R1305とR1306との組、R1307とR1308との組、R1308とR1309との組、並びにR1309とR1310との組である。
【0215】
(一般式(14X)で表される化合物)
本実施形態において、第一のホスト材料は、下記一般式(14X)で表される化合物であることも好ましい。
【0216】
【化20】
【0217】
(前記一般式(14X)において、
1401~R1410は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基、又は
前記一般式(141)で表される基であり、
ただし、R1401~R1410の少なくとも1つは、前記一般式(141)で表される基であり、
前記一般式(141)で表される基が複数存在する場合、複数の前記一般式(141)で表される基は、互いに同一であるか又は異なり、
1401は、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar1401は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
mx4は、0、1、2、3、4又は5であり、
1401が2以上存在する場合、2以上のL1401は、互いに同一であるか、又は異なり、
Ar1401が2以上存在する場合、2以上のAr1401は、互いに同一であるか、又は異なり、
前記一般式(141)中の*は、前記一般式(14X)で表される環との結合位置を示す。)
【0218】
(一般式(15X)で表される化合物)
本実施形態において、第一のホスト材料は、下記一般式(15X)で表される化合物であることも好ましい。
【0219】
【化21】
【0220】
(前記一般式(15X)において、
1501~R1514は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基、又は
前記一般式(151)で表される基であり、
ただし、R1501~R1514の少なくとも1つは、前記一般式(151)で表される基であり、
前記一般式(151)で表される基が複数存在する場合、複数の前記一般式(151)で表される基は、互いに同一であるか又は異なり、
1501は、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar1501は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
mx5は、0、1、2、3、4又は5であり、
1501が2以上存在する場合、2以上のL1501は、互いに同一であるか、又は異なり、
Ar1501が2以上存在する場合、2以上のAr1501は、互いに同一であるか、又は異なり、
前記一般式(151)中の*は、前記一般式(15X)で表される環との結合位置を示す。)
【0221】
(一般式(16X)で表される化合物)
本実施形態において、第一のホスト材料は、下記一般式(16X)で表される化合物であることも好ましい。
【0222】
【化22】
【0223】
(前記一般式(16X)において、
1601~R1614は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基、又は
前記一般式(161)で表される基であり、
ただし、R1601~R1614の少なくとも1つは、前記一般式(161)で表される基であり、
前記一般式(161)で表される基が複数存在する場合、複数の前記一般式(161)で表される基は、互いに同一であるか又は異なり、
1601は、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar1601は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
mx6は、0、1、2、3、4又は5であり、
1601が2以上存在する場合、2以上のL1601は、互いに同一であるか、又は異なり、
Ar1601が2以上存在する場合、2以上のAr1601は、互いに同一であるか、又は異なり、
前記一般式(161)中の*は、前記一般式(16X)で表される環との結合位置を示す。)
【0224】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一のホスト材料は、分子中に、単結合で連結されたベンゼン環とナフタレン環とを含む連結構造を有し、当該連結構造中のベンゼン環及びナフタレン環には、それぞれ独立に、さらに単環又は縮合環が縮合しているか又は縮合しておらず、当該連結構造中のベンゼン環とナフタレン環とが、当該単結合以外の少なくとも1つの部分において架橋によりさらに連結していることも好ましい。
第一のホスト材料が、このような架橋を含んだ連結構造を有していることにより、有機EL素子の色度悪化の抑制が期待できる。
この場合の第一のホスト材料は、分子中に、下記式(X1)又は式(X2)で表されるような、単結合で連結されたベンゼン環とナフタレン環とを含む連結構造(ベンゼン-ナフタレン連結構造と称する場合がある。)を最小単位として有していればよく、当該ベンゼン環にさらに単環又は縮合環が縮合していてもよいし、当該ナフタレン環にさらに単環又は縮合環が縮合していてもよい。例えば、第一のホスト材料が、分子中に、下記式(X3)、式(X4)、又は式(X5)で表されるような、単結合で連結されたナフタレン環とナフタレン環とを含む連結構造(ナフタレン-ナフタレン連結構造と称する場合がある。)においても、一方のナフタレン環は、ベンゼン環を含んでいるため、ベンゼン-ナフタレン連結構造を含んでいることになる。
【0225】
【化23】
【0226】
本実施形態に係る有機EL素子において、前記架橋が二重結合を含むことも好ましい。
すなわち、前記ベンゼン環と前記ナフタレン環とが、単結合以外の部分において二重結合を含む架橋構造によりさらに連結した構造を有することも好ましい。
【0227】
ベンゼン-ナフタレン連結構造中のベンゼン環とナフタレン環とが、単結合以外の少なくとも1つの部分において架橋によりさらに連結すると、例えば、前記式(X1)の場合、下記式(X11)で表される連結構造(縮合環)になり、前記式(X3)の場合、下記式(X31)で表される連結構造(縮合環)になる。
ベンゼン-ナフタレン連結構造中のベンゼン環とナフタレン環とが、単結合以外の部分において二重結合を含む架橋によりさらに連結すると、例えば、前記式(X1)の場合、下記式(X12)で表される連結構造(縮合環)になり、前記式(X2)の場合、下記式(X21)又は式(X22)で表される連結構造(縮合環)になり、前記式(X4)の場合、下記式(X41)で表される連結構造(縮合環)になり、前記式(X5)の場合、下記式(X51)で表される連結構造(縮合環)になる。
ベンゼン-ナフタレン連結構造中のベンゼン環とナフタレン環とが、単結合以外の少なくとも1つの部分においてヘテロ原子(例えば、酸素原子)を含む架橋によりさらに連結すると、例えば、前記式(X1)の場合、下記式(X13)で表される連結構造(縮合環)になる。
【0228】
【化24】
【0229】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一のホスト材料は、分子中に、第一のベンゼン環と第二のベンゼン環とが単結合で連結されたビフェニル構造を有し、当該ビフェニル構造中の第一のベンゼン環と第二のベンゼン環とが、当該単結合以外の少なくとも1つの部分において架橋によりさらに連結していることも好ましい。
【0230】
本実施形態に係る有機EL素子において、前記ビフェニル構造中の第一のベンゼン環と第二のベンゼン環とが、前記単結合以外の1つの部分において前記架橋によりさらに連結していることも好ましい。第一のホスト材料が、このような架橋を含んだビフェニル構造を有していることにより、有機EL素子の色度悪化の抑制が期待できる。
【0231】
本実施形態に係る有機EL素子において、前記架橋が二重結合を含むことも好ましい。
本実施形態に係る有機EL素子において、前記架橋が二重結合を含まないことも好ましい。
【0232】
前記ビフェニル構造中の第一のベンゼン環と第二のベンゼン環とが、前記単結合以外の2つの部分において前記架橋によりさらに連結していることも好ましい。
【0233】
本実施形態に係る有機EL素子において、前記ビフェニル構造中の第一のベンゼン環と第二のベンゼン環とが、前記単結合以外の2つの部分において前記架橋によりさらに連結し、前記架橋が二重結合を含まないことも好ましい。第一のホスト材料が、このような架橋を含んだビフェニル構造を有していることにより、有機EL素子の色度悪化の抑制が期待できる。
【0234】
例えば、下記式(BP1)で表される前記ビフェニル構造中の第一のベンゼン環と第二のベンゼン環とが、単結合以外の少なくとも1つの部分において架橋によりさらに連結すると、当該ビフェニル構造は、下記式(BP11)~(BP15)等の連結構造(縮合環)になる。
【0235】
【化25】
【0236】
前記式(BP11)は、前記単結合以外の1つの部分において二重結合を含まない架橋によって連結した構造である。
前記式(BP12)は、前記単結合以外の1つの部分において二重結合を含む架橋によって連結した構造である。
前記式(BP13)は、前記単結合以外の2つの部分において二重結合を含まない架橋によって連結した構造である。
前記式(BP14)は、前記単結合以外の2つの部分の一方において二重結合を含まない架橋によって連結し、前記単結合以外の2つの部分の他方において二重結合を含む架橋によって連結した構造である。
前記式(BP15)は、前記単結合以外の2つの部分において二重結合を含む架橋によって連結した構造である。
【0237】
(一般式(1)、(1X)、(12X)、(13X)、(14X)、(15X)、(16X)で表される化合物の具体例)
前記一般式(1)、(1X)、(12X)、(13X)、(14X)、(15X)、(16X)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。ただし、本発明は、これら具体例に限定されない。本明細書において、化合物の具体例中、Dは、重水素原子を示し、Meは、メチル基を示し、tBuは、tert-ブチル基を示す。
【0238】
【化26】
【0239】
【化27】
【0240】
【化28】
【0241】
【化29】
【0242】
【化30】
【0243】
【化31】
【0244】
【化32】
【0245】
【化33】
【0246】
【化34】
【0247】
【化35】
【0248】
【化36】
【0249】
【化37】
【0250】
【化38】
【0251】
【化39】
【0252】
【化40】
【0253】
【化41】
【0254】
【化42】
【0255】
(一般式(2)で表される化合物)
本実施形態において、第二のホスト材料は、下記一般式(2)で表される化合物であることも好ましい。
【0256】
【化43】
【0257】
(前記一般式(2)において、
201~R208は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
201及びL202は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar201及びAr202は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。)
【0258】
(前記一般式(2)で表される化合物中、R901、R902、R903、R904、R905、R906、R907、R801及びR802は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
901が複数存在する場合、複数のR901は、互いに同一であるか又は異なり、
902が複数存在する場合、複数のR902は、互いに同一であるか又は異なり、
903が複数存在する場合、複数のR903は、互いに同一であるか又は異なり、
904が複数存在する場合、複数のR904は、互いに同一であるか又は異なり、
905が複数存在する場合、複数のR905は、互いに同一であるか又は異なり、
906が複数存在する場合、複数のR906は、互いに同一であるか又は異なり、
907が複数存在する場合、複数のR907は、互いに同一であるか又は異なり、
801が複数存在する場合、複数のR801は、互いに同一であるか又は異なり、
802が複数存在する場合、複数のR802は、互いに同一であるか又は異なる。)
【0259】
一実施形態において、
201及びL202は、それぞれ独立に、
単結合、又は
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基であり、
Ar201及びAr202は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であることが好ましい。
【0260】
一実施形態において、Ar201及びAr202は、それぞれ独立に、
フェニル基、
ナフチル基、
フェナントリル基、
ビフェニル基、
ターフェニル基、
ジフェニルフルオレニル基、
ジメチルフルオレニル基、
ベンゾジフェニルフルオレニル基、
ベンゾジメチルフルオレニル基、
ジベンゾフラニル基、
ジベンゾチエニル基、
ナフトベンゾフラニル基、又は
ナフトベンゾチエニル基であることが好ましい。
【0261】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物中、前記一般式(21)で表される基ではないR201~R208は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、又は
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基であることが好ましい。
【0262】
一実施形態において、L101は、
単結合、又は
無置換の環形成炭素数6~22のアリーレン基であり、
Ar101は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~22のアリール基であることが好ましい。
【0263】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物中、R201~R208は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、又は
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基であることが好ましい。
【0264】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物中、R201~R208は、水素原子であることが好ましい。
【0265】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2)中のL202が単結合であり、Ar202が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0266】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2)中のL202が単結合であり、Ar202が無置換の2-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0267】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2)中のL202が単結合であり、Ar202が無置換の1-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0268】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2)中のL202が無置換のp-フェニレン基であり、Ar202が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0269】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2)中のL202が無置換のm-フェニレン基であり、Ar202が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0270】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2)中のL202が無置換のo-フェニレン基であり、Ar202が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0271】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2)中のL202が無置換のp-フェニレン基であり、Ar202が無置換の1-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0272】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2)中のL202が無置換のp-フェニレン基であり、Ar202が無置換の2-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0273】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2)中のL202が無置換の1,4-ナフタレンジイル基であり、Ar202が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0274】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2)中のL202が無置換のm-フェニレン基であり、Ar202が無置換の2-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0275】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、下記一般式(2X)で表される化合物であることも好ましい。
【0276】
【化44】
【0277】
(前記一般式(2X)において、
201並びにR203~R208は、それぞれ独立に、前記一般式(2)におけるR201並びにR203~R208と同義であり、
201、L202、Ar201及びAr202は、それぞれ、前記一般式(2)におけるL201、L202、Ar201及びAr202と同義であり、
203は、前記一般式(2)におけるL201と同義であり、
201、L202及びL203は、互いに同一であるか、又は異なり、
Ar203は、前記一般式(2)におけるAr201と同義であり、
Ar201、Ar202及びAr203は、互いに同一であるか、又は異なる。)
【0278】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2X)中のL202が単結合であり、Ar202が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0279】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2X)中のL202が単結合であり、Ar202が無置換の2-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0280】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2X)中のL202が単結合であり、Ar202が無置換の1-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0281】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2X)中のL202が無置換のp-フェニレン基であり、Ar202が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0282】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2X)中のL202が無置換のm-フェニレン基であり、Ar202が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0283】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2X)中のL202が無置換のo-フェニレン基であり、Ar202が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0284】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2X)中のL202が無置換のp-フェニレン基であり、Ar202が無置換の1-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0285】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2X)中のL202が無置換のp-フェニレン基であり、Ar202が無置換の2-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0286】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2X)中のL202が無置換の1,4-ナフタレンジイル基であり、Ar202が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0287】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2X)中のL202が無置換のm-フェニレン基であり、Ar202が無置換の2-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0288】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2X)中のL201が単結合であり、Ar201が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0289】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2X)中のL201が単結合であり、Ar201が無置換の2-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0290】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2X)中のL201が単結合であり、Ar201が無置換の1-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0291】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2X)中のL201が無置換のp-フェニレン基であり、Ar201が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0292】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2X)中のL201が無置換のm-フェニレン基であり、Ar201が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0293】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2X)中のL201が無置換のo-フェニレン基であり、Ar201が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0294】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2X)中のL201が無置換のp-フェニレン基であり、Ar201が無置換の1-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0295】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2X)中のL201が無置換のp-フェニレン基であり、Ar201が無置換の2-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0296】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2X)中のL201が無置換の1,4-ナフタレンジイル基であり、Ar201が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0297】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(2X)中のL201が無置換のm-フェニレン基であり、Ar201が無置換の2-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0298】
前記一般式(2)で表される化合物において、「置換もしくは無置換」と記載された基は、いずれも「無置換」の基であることが好ましい。
【0299】
一実施形態において、第二の発光層は、前記一般式(2)で表される化合物を第二のホスト材料として含有することが好ましい。したがって、例えば、第二の発光層は、前記一般式(2)で表される化合物を、第二の発光層の全質量の50質量%以上、含有する。
【0300】
本実施形態に係る有機EL表示装置において、前記一般式(2)で表される化合物中、アントラセン骨格の置換基であるR201~R208は、分子間の相互作用が抑制されることを防ぎ、電子移動度の低下を抑制する点から、水素原子であることが好ましいが、R201~R208は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基でもよい。
201~R208がアルキル基及びシクロアルキル基等のかさ高い置換基となった場合、分子間の相互作用が抑制され、第一のホスト材料に対し電子移動度が低下し、前記数式(数30)に記載のμe(H2)>μe(H1)の関係を満たさなくなるおそれがある。前記一般式(2)で表される化合物を第二の発光層に用いた場合には、μe(H2)>μe(H1)の関係を満たす事で第一の発光層でのホールと電子との再結合能の低下、及び発光効率の低下を抑制することが期待できる。なお、置換基としては、ハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、-O-(R904)で表される基、-S-(R905)で表される基、-N(R906)(R907)で表される基、アラルキル基、-C(=O)R801で表される基、-COOR802で表される基、ハロゲン原子、シアノ基、及びニトロ基がかさ高くなるおそれがあり、アルキル基、及びシクロアルキル基がさらにかさ高くなるおそれがある。
前記一般式(2)で表される化合物中、アントラセン骨格の置換基であるR201~R208は、かさ高い置換基ではないことが好ましく、アルキル基及びシクロアルキル基ではないことが好ましく、アルキル基、シクロアルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、-O-(R904)で表される基、-S-(R905)で表される基、-N(R906)(R907)で表される基、アラルキル基、-C(=O)R801で表される基、-COOR802で表される基、ハロゲン原子、シアノ基、及びニトロ基ではないことがより好ましい。
【0301】
前記一般式(2)で表される化合物中、R201~R208における「置換もしくは無置換の」という場合における置換基は、前述のかさ高くなるおそれのある置換基、特に置換もしくは無置換のアルキル基、及び置換もしくは無置換のシクロアルキル基を含まないことも好ましい。R201~R208における「置換もしくは無置換の」という場合における置換基が、置換もしくは無置換のアルキル基、及び置換もしくは無置換のシクロアルキル基を含まないことにより、アルキル基及びシクロアルキル基等のかさ高い置換基が存在する事による分子間の相互作用が抑制されるのを防ぎ、電子移動度の低下を防ぐことができ、また、このような前記一般式(2)で表される化合物を第二の発光層に用いた場合には、第一の発光層でのホールと電子との再結合能の低下、及び発光効率の低下を抑制できる。
【0302】
アントラセン骨格の置換基であるR201~R208がかさ高い置換基ではなく、置換基としてのR201~R208は、無置換であることがさらに好ましい。また、アントラセン骨格の置換基であるR201~R208がかさ高い置換基ではない場合において、かさ高くない置換基としてのR201~R208に置換基が結合する場合、当該置換基もかさ高い置換基ではないことが好ましく、置換基としてのR201~R208に結合する当該置換基は、アルキル基及びシクロアルキル基ではないことが好ましく、アルキル基、シクロアルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、-O-(R904)で表される基、-S-(R905)で表される基、-N(R906)(R907)で表される基、アラルキル基、-C(=O)R801で表される基、-COOR802で表される基、ハロゲン原子、シアノ基、及びニトロ基ではないことがより好ましい。
【0303】
(一般式(2)で表される化合物の具体例)
前記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。ただし、本発明は、これら化合物の具体例に限定されない。
【0304】
【化45】
【0305】
【化46】
【0306】
【化47】
【0307】
第一のホスト材料及び第二のホスト材料において、「置換もしくは無置換」と記載された基は、いずれも「無置換」の基であることが好ましい。
【0308】
(第一のホスト材料及び第二のホスト材料の製造方法)
第一のホスト材料及び第二のホスト材料は、公知の方法により製造できる。また、第一のホスト材料及び第二のホスト材料は、公知の方法に倣い、目的物に合わせた既知の代替反応及び原料を用いることによっても、製造できる。
【0309】
(発光性化合物)
本実施形態において、最大のピーク波長が500nm以下の発光を示す第一の発光性化合物及び第二の発光性化合物は、特に限定されないが、それぞれ独立に、最大のピーク波長が500nm以下の蛍光発光を示す蛍光発光性化合物であることが好ましい。
最大のピーク波長が500nm以下の蛍光発光を示す蛍光発光性化合物は、例えば、ピレン誘導体、スチリルアミン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、フルオレン誘導体、ジアミン誘導体又はトリアリールアミン誘導体である。本明細書において、青色の発光とは、発光スペクトルの最大ピーク波長が430nm以上、500nm以下の範囲内である発光をいう。
【0310】
〔第二の実施形態〕
以下の説明では、第二の実施形態との相違に係る部分を主に説明し、重複する説明については省略又は簡略化する。第二の実施形態と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略又は簡略化する。
【0311】
(有機エレクトロルミネッセンス素子)
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との間に含まれる第一の有機層と、前記第一の有機層と前記陰極との間に含まれる第二の有機層と、前記第一の有機層と前記第二の有機層との間に含まれる第三の有機層と、を有し、前記第一の有機層は、第一の有機化合物及び第三の有機化合物を含有し、前記第三の有機層は、前記第一の有機化合物、前記第三の有機化合物及び第二の有機化合物を含有し、前記第二の有機層は、前記第三の有機化合物及び前記第二の有機化合物を含有する。
【0312】
本実施形態の有機EL素子の第一の有機層、第二の有機層及び第三の有機層は、上述のように第一の有機化合物、第二の有機化合物及び第三の有機化合物を含む。これら互いに異なる3つの有機層(第一の有機層、第二の有機層及び第三の有機層)は、成膜時に第一の有機化合物、第二の有機化合物及び第三の有機化合物の蒸発範囲を適宜重ねるようにすることで、単一の成膜室内で成膜することができる。このように、本実施形態の有機EL素子の構成であれば、成膜室の真空度を下げずに第一の有機層、第三の有機層及び第二の有機層を連続して成膜することができ、その結果、第一の有機層と第三の有機層との間、並びに第三の有機層と第二の有機層との間への不純物の混入を抑制することができる。したがって、本実施形態の有機EL素子によれば、不純物の混入により素子性能がばらつく事を抑制する事が期待できる。
【0313】
図5に、本実施形態に係る有機EL素子の一例の概略構成を示す。図5に示す有機EL素子1は、基板10と、陽極3と、陰極4と、陽極3と陰極4との間に配置された有機層5と、を含む。有機層5は、陽極3側から順に、正孔注入層6、正孔輸送層7、第一の有機層51、第三の有機層53、第二の有機層52、電子輸送層8及び電子注入層9が、この順番で積層されて構成される。本発明は、図5に示す有機EL素子の構成に限定されない。
【0314】
本実施形態において、第一の有機層は、第一の発光層であることが好ましい。
本実施形態において、第二の有機層は、第二の発光層であることが好ましい。
本実施形態において、第三の有機層は、第三の発光層であることが好ましい。
【0315】
本実施形態の有機EL素子において、第一の有機化合物の三重項エネルギーT(H1)と、第二の有機化合物の三重項エネルギーT(H2)とが、前記数式(数1)の関係を満たすことが好ましい。
本実施形態の有機EL素子によれば、第一の発光層及び第二の発光層の間への不純物の混入が抑制されるので、本実施形態の有機EL素子が前記数式(数1)の関係を満たす三重項エネルギーがT(H1)である第一の有機化合物を含有する第一の発光層と、三重項エネルギーがT(H2)である第二の有機化合物を含有する第二の発光層と、を有する場合、不純物の混入に起因するTTF効率の低下が抑制され、発光効率の向上が期待できる。
【0316】
本実施形態の有機EL素子において、第三の有機化合物は、最大ピーク波長が500nm以下の発光を示す化合物であることが好ましい。
本実施形態の有機EL素子において、第三の有機化合物は、第一の実施形態における第一の発光性化合物又は第二の発光性化合物であることも好ましい。
【0317】
本実施形態の第一の発光層は、第一のホスト材料と発光性化合物を含有していることが好ましい。
本実施形態の第二の発光層は、第二のホスト材料と発光性化合物を含有していることが好ましい。
本実施形態の第三の発光層は、第一のホスト材料、第二のホスト材料及び発光性化合物を含有していることが好ましい。
本実施形態の第一のホスト材料、第二のホスト材料及び発光性化合物は、それぞれ、第一の実施形態で説明した第一のホスト材料、第二のホスト材料及び発光性化合物である
【0318】
本実施形態の有機EL素子の第一の有機層、第二の有機層及び第三の有機層は、第一の実施形態の成膜方法によって成膜された有機層であってもよい。
【0319】
第三の有機層において、第一の有機層側の領域においては、第一の有機化合物の割合(含有率)が第二の有機化合物の割合(含有率)よりも多く、陰極側に向かうにつれて第二の有機化合物の割合(含有率)が増加し、第二の有機層側の領域においては、第二の有機化合物の割合(含有率)が第一の有機化合物の割合(含有率)よりも多くなるような濃度勾配を有することも好ましい。このような濃度勾配を有する有機層の成膜は、例えば、第一の実施形態の成膜方法によって成膜することもできる。
【0320】
第二の実施形態の有機EL素子に関するその他の構成は、第一の実施形態と同様の構成が適用できる。
【0321】
〔第三の実施形態〕
(電子機器)
本実施形態に係る電子機器は、上述の実施形態のいずれかの有機EL素子を搭載している。電子機器としては、例えば、表示装置及び発光装置等が挙げられる。表示装置としては、例えば、表示部品(例えば、有機ELパネルモジュール等)、テレビ、携帯電話、タブレット、及びパーソナルコンピュータ等が挙げられる。発光装置としては、例えば、照明及び車両用灯具等が挙げられる。
【0322】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変更、改良等は、本発明に含まれる。
【0323】
前述の実施形態と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略又は簡略化する場合がある。
【0324】
第一の実施形態に係る成膜方法において、第一の有機層、第三の有機層及び第二の有機層をこの順で成膜する方法を例に挙げて説明したが、本発明は、このような方法に限定されない。例えば、第一の有機化合物及び発光性化合物を含有する第一の有機層を成膜し、次いで、第二の有機化合物、第一の有機化合物及び発光性化合物を含有する第三の有機層を成膜し、第二の有機化合物及び発光性化合物を含有する第二の有機層を成膜せずに、第一の成膜室での有機層の成膜を終了させてもよい。この場合、第三の有機層の上に、第一の有機化合物、第二の有機化合物及び発光性化合物とは異なる種類の化合物を含む別の有機層を成膜してもよい。
【0325】
第一の実施形態に係る成膜方法において、複数の有機材料のそれぞれが個別に蒸着源に収容されている態様を例に挙げて説明したが、本発明は、この態様に限定されない。
例えば、複数の有機材料のうち2種以上の有機材料が同一の蒸着源に収容されていてもよい。ただし、この場合には、複数の有機層を成膜するために用いる複数の有機材料の全てが、同一の蒸着源に収容されていることはない。2種以上の有機材料が同一の蒸着源に収容されていることにより、蒸着源の数を減らすことができる。2種以上の有機材料が同一の蒸着源に収容されている例として、成膜室の内部に設置された2つの蒸着源の場合、下記のような第一の、第二の及び第三の収容例が挙げられるが、本発明は、このような例に限定されない。
【0326】
第一の収容例:第一の蒸着源には、第一の有機化合物及び発光性化合物が収容され、第二の蒸着源には、第二の有機化合物及び発光性化合物が収容されている。
【0327】
第二の収容例:第一の蒸着源には、第一の有機化合物が収容され、第二の蒸着源には、第二の有機化合物及び発光性化合物が収容されている。
【0328】
第三の収容例:第一の蒸着源には、第一の有機化合物及び発光性化合物が収容され、第二の蒸着源には、第二の有機化合物が収容されている。
【0329】
前記実施形態では、第一の成膜室100の内部に3つの蒸着源を配置して成膜する方法を例に挙げて説明したが、本発明は、このような例に限定されない。例えば、単一の成膜室の内部に4つ以上の蒸着源を配置して成膜する方法を実施してもよい。各蒸着源は、放出口を有する。
例えば、発光性化合物を収容する蒸着源を複数配置してもよい。例えば、前記実施形態の例において、さらに、発光性化合物が収容された第四の蒸着源を配置して成膜方法を実施してもよい。この場合、第一の有機化合物が収容された第一の蒸着源、発光性化合物が収容された第二の蒸着源、第二の有機化合物が収容された第三の蒸着源、発光性化合物が収容された第四の蒸着源が単一の成膜室の内部に配置される。この場合、基板の移動方向TRの上流側から下流側へ向かって、例えば、第一の蒸着源、第二の蒸着源、第四の蒸着源及び第三の蒸着源がこの順に配置されていてもよいし、その他の配置順でもよい。
基板の移動方向TRの上流側から下流側へ向かって、例えば、第一の蒸着源、第二の蒸着源、第四の蒸着源及び第三の蒸着源がこの順に配置されている場合、第一の蒸着源及び第二の蒸着源を当該下流側へ向けて傾斜させ、第四の蒸着源及び第三の蒸着源を当該上流側へ向けて傾斜させてもよい。第一の蒸着源及び第二の蒸着源を当該下流側へ向けて傾斜させる際の角度は、同じでも異なっていてもよい。第四の蒸着源及び第三の蒸着源を当該上流側へ向けて傾斜させる際の角度は、同じでも異なっていてもよい。蒸着源を傾斜させる角度を適宜調整することによって、遮蔽版が配置されている場合に、基板と遮蔽版との間に回り込ませる化合物の蒸着範囲を調整でき、その結果、成膜する有機層中の各化合物濃度及び有機層の膜厚等を調整し易くなる。
【0330】
第一の実施形態に係る成膜方法においては、基板を移動させながら複数の有機層を成膜する態様を例に挙げて説明したが、本発明は、この態様に限定されない。
別の態様の成膜方法は、例えば、蒸着源の少なくともいずれかを移動させながら複数の有機層を成膜する工程を含んでいてもよい。
図6には、前述の実施形態とは異なる態様の製造方法を説明するための概略図が示されている。図6に示す成膜室200の内部に設置された4つの蒸着源について、第一の蒸着源111には、第一の有機化合物が収容され、第二の蒸着源112には、発光性化合物が収容され、第三の蒸着源113には、第二の有機化合物が収容され、第四の蒸着源114には、第四の有機化合物が収容されている。第四の蒸着源114は、第四の放出口114Aを有する。図6に示すように、成膜室200の内部には、開口部131を有する制御部材130が、蒸着源111,112,113,114を囲うように配置されている。
蒸着源111,112,113,114には、それぞれ1種の化合物が収容されている。蒸着源111,112,113,114は、それぞれ独立に、成膜室200の内部を移動可能に設置されている。例えば、蒸着源111,112,113,114は、それぞれ独立に、基板10の表面に対向する位置と、基板10との間に制御部材130が配置されている位置との間で移動可能に設置されていることも好ましい。
成膜室200の内部で複数の有機層を成膜する工程は、基板10を移動させずに、蒸着源111,112,113,114の少なくともいずれかを移動させることにより、基板10と蒸着源111,112,113,114との相対的距離を変動させながら実施されることが好ましい。蒸着源111,112,113,114は、それぞれ独立に、傾斜させて配置されていてもよい。
【0331】
図6に示すように単一の成膜室の内部に蒸着源111,112,113,114が配置されている場合、例えば、第四の蒸着源114を基板10に対向する位置まで移動させて、第四の有機化合物を含む第四の有機層を基板10に成膜してもよい。図6には、第四の蒸着源114から蒸発した第四の有機化合物の蒸気が存在する第四の蒸発範囲VP4が示されている。第四の有機層の成膜後、第四の蒸着源114を元の位置に移動させ、第一の蒸着源111、第二の蒸着源112及び第三の蒸着源113を移動させて、第四の有機層の上に、第一の有機層、第三の有機層及び第二の有機層を成膜してもよい。このような成膜方法によれば、4つの有機層同士の間への不純物の混入を抑制でき、素子性能の向上が期待できる。
【0332】
有機層を成膜する工程は、少なくともいずれかの蒸発角度を変動させながら実施してもよいし、蒸発角度を変動させずに実施してもよい。蒸着源の蒸発角度を変動させることのできる蒸発角度変動機構が蒸着源に備わっていることが好ましい。蒸発源は、成膜室の外部から蒸発角度を変動させることのできる蒸発角度変動機構を有することも好ましい。成膜室の外部から蒸発角度を変動させることにより、成膜室を大気解放せずに各有機層の膜厚の調整が容易となる。
【0333】
[定義]
本明細書において、水素原子とは、中性子数が異なる同位体、即ち、軽水素(protium)、重水素(deuterium)、及び三重水素(tritium)を包含する。
【0334】
本明細書において、化学構造式中、「R」等の記号や重水素原子を表す「D」が明示されていない結合可能位置には、水素原子、即ち、軽水素原子、重水素原子、又は三重水素原子が結合しているものとする。
【0335】
本明細書において、環形成炭素数とは、原子が環状に結合した構造の化合物(例えば、単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、及び複素環化合物)の当該環自体を構成する原子のうちの炭素原子の数を表す。当該環が置換基によって置換される場合、置換基に含まれる炭素は環形成炭素数には含まない。以下で記される「環形成炭素数」については、別途記載のない限り同様とする。例えば、ベンゼン環は環形成炭素数が6であり、ナフタレン環は環形成炭素数が10であり、ピリジン環は環形成炭素数5であり、フラン環は環形成炭素数4である。また、例えば、9,9-ジフェニルフルオレニル基の環形成炭素数は13であり、9,9’-スピロビフルオレニル基の環形成炭素数は25である。
また、ベンゼン環に置換基として、例えば、アルキル基が置換している場合、当該アルキル基の炭素数は、ベンゼン環の環形成炭素数に含めない。そのため、アルキル基が置換しているベンゼン環の環形成炭素数は、6である。また、ナフタレン環に置換基として、例えば、アルキル基が置換している場合、当該アルキル基の炭素数は、ナフタレン環の環形成炭素数に含めない。そのため、アルキル基が置換しているナフタレン環の環形成炭素数は、10である。
【0336】
本明細書において、環形成原子数とは、原子が環状に結合した構造(例えば、単環、縮合環、及び環集合)の化合物(例えば、単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、及び複素環化合物)の当該環自体を構成する原子の数を表す。環を構成しない原子(例えば、環を構成する原子の結合を終端する水素原子)や、当該環が置換基によって置換される場合の置換基に含まれる原子は環形成原子数には含まない。以下で記される「環形成原子数」については、別途記載のない限り同様とする。例えば、ピリジン環の環形成原子数は6であり、キナゾリン環の環形成原子数は10であり、フラン環の環形成原子数は5である。例えば、ピリジン環に結合している水素原子、又は置換基を構成する原子の数は、ピリジン環形成原子数の数に含めない。そのため、水素原子、又は置換基が結合しているピリジン環の環形成原子数は、6である。また、例えば、キナゾリン環の炭素原子に結合している水素原子、又は置換基を構成する原子については、キナゾリン環の環形成原子数の数に含めない。そのため、水素原子、又は置換基が結合しているキナゾリン環の環形成原子数は10である。
【0337】
本明細書において、「置換もしくは無置換の炭素数XX~YYのZZ基」という表現における「炭素数XX~YY」は、ZZ基が無置換である場合の炭素数を表し、置換されている場合の置換基の炭素数を含めない。ここで、「YY」は、「XX」よりも大きく、「XX」は、1以上の整数を意味し、「YY」は、2以上の整数を意味する。
【0338】
本明細書において、「置換もしくは無置換の原子数XX~YYのZZ基」という表現における「原子数XX~YY」は、ZZ基が無置換である場合の原子数を表し、置換されている場合の置換基の原子数を含めない。ここで、「YY」は、「XX」よりも大きく、「XX」は、1以上の整数を意味し、「YY」は、2以上の整数を意味する。
【0339】
本明細書において、無置換のZZ基とは「置換もしくは無置換のZZ基」が「無置換のZZ基」である場合を表し、置換のZZ基とは「置換もしくは無置換のZZ基」が「置換のZZ基」である場合を表す。
本明細書において、「置換もしくは無置換のZZ基」という場合における「無置換」とは、ZZ基における水素原子が置換基と置き換わっていないことを意味する。「無置換のZZ基」における水素原子は、軽水素原子、重水素原子、又は三重水素原子である。
また、本明細書において、「置換もしくは無置換のZZ基」という場合における「置換」とは、ZZ基における1つ以上の水素原子が、置換基と置き換わっていることを意味する。「AA基で置換されたBB基」という場合における「置換」も同様に、BB基における1つ以上の水素原子が、AA基と置き換わっていることを意味する。
【0340】
「本明細書に記載の置換基」
以下、本明細書に記載の置換基について説明する。
【0341】
本明細書に記載の「無置換のアリール基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、6~50であり、好ましくは6~30、より好ましくは6~18である。
本明細書に記載の「無置換の複素環基」の環形成原子数は、本明細書に別途記載のない限り、5~50であり、好ましくは5~30、より好ましくは5~18である。
本明細書に記載の「無置換のアルキル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~20、より好ましくは1~6である。
本明細書に記載の「無置換のアルケニル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、2~50であり、好ましくは2~20、より好ましくは2~6である。
本明細書に記載の「無置換のアルキニル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、2~50であり、好ましくは2~20、より好ましくは2~6である。
本明細書に記載の「無置換のシクロアルキル基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、3~50であり、好ましくは3~20、より好ましくは3~6である。
本明細書に記載の「無置換のアリーレン基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、6~50であり、好ましくは6~30、より好ましくは6~18である。
本明細書に記載の「無置換の2価の複素環基」の環形成原子数は、本明細書に別途記載のない限り、5~50であり、好ましくは5~30、より好ましくは5~18である。
本明細書に記載の「無置換のアルキレン基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~20、より好ましくは1~6である。
【0342】
・「置換もしくは無置換のアリール基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」の具体例(具体例群G1)としては、以下の無置換のアリール基(具体例群G1A)及び置換のアリール基(具体例群G1B)等が挙げられる。(ここで、無置換のアリール基とは「置換もしくは無置換のアリール基」が「無置換のアリール基」である場合を指し、置換のアリール基とは「置換もしくは無置換のアリール基」が「置換のアリール基」である場合を指す。)本明細書において、単に「アリール基」という場合は、「無置換のアリール基」と「置換のアリール基」の両方を含む。
「置換のアリール基」は、「無置換のアリール基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のアリール基」としては、例えば、下記具体例群G1Aの「無置換のアリール基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基、及び下記具体例群G1Bの置換のアリール基の例等が挙げられる。尚、ここに列挙した「無置換のアリール基」の例、及び「置換のアリール基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換のアリール基」には、下記具体例群G1Bの「置換のアリール基」におけるアリール基自体の炭素原子に結合する水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び下記具体例群G1Bの「置換のアリール基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0343】
・無置換のアリール基(具体例群G1A):
フェニル基、
p-ビフェニル基、
m-ビフェニル基、
o-ビフェニル基、
p-ターフェニル-4-イル基、
p-ターフェニル-3-イル基、
p-ターフェニル-2-イル基、
m-ターフェニル-4-イル基、
m-ターフェニル-3-イル基、
m-ターフェニル-2-イル基、
o-ターフェニル-4-イル基、
o-ターフェニル-3-イル基、
o-ターフェニル-2-イル基、
1-ナフチル基、
2-ナフチル基、
アントリル基、
ベンゾアントリル基、
フェナントリル基、
ベンゾフェナントリル基、
フェナレニル基、
ピレニル基、
クリセニル基、
ベンゾクリセニル基、
トリフェニレニル基、
ベンゾトリフェニレニル基、
テトラセニル基、
ペンタセニル基、
フルオレニル基、
9,9’-スピロビフルオレニル基、
ベンゾフルオレニル基、
ジベンゾフルオレニル基、
フルオランテニル基、
ベンゾフルオランテニル基、
ペリレニル基、及び
下記一般式(TEMP-1)~(TEMP-15)で表される環構造から1つの水素原子を除くことにより誘導される1価のアリール基。
【0344】
【化48】
【0345】
【化49】
【0346】
・置換のアリール基(具体例群G1B):
o-トリル基、
m-トリル基、
p-トリル基、
パラ-キシリル基、
メタ-キシリル基、
オルト-キシリル基、
パラ-イソプロピルフェニル基、
メタ-イソプロピルフェニル基、
オルト-イソプロピルフェニル基、
パラ-t-ブチルフェニル基、
メタ-t-ブチルフェニル基、
オルト-t-ブチルフェニル基、
3,4,5-トリメチルフェニル基、
9,9-ジメチルフルオレニル基、
9,9-ジフェニルフルオレニル基、
9,9-ビス(4-メチルフェニル)フルオレニル基、
9,9-ビス(4-イソプロピルフェニル)フルオレニル基、
9,9-ビス(4-t-ブチルフェニル)フルオレニル基、
シアノフェニル基、
トリフェニルシリルフェニル基、
トリメチルシリルフェニル基、
フェニルナフチル基、
ナフチルフェニル基、及び
前記一般式(TEMP-1)~(TEMP-15)で表される環構造から誘導される1価の基の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基。
【0347】
・「置換もしくは無置換の複素環基」
本明細書に記載の「複素環基」は、環形成原子にヘテロ原子を少なくとも1つ含む環状の基である。ヘテロ原子の具体例としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、及びホウ素原子が挙げられる。
本明細書に記載の「複素環基」は、単環の基であるか、又は縮合環の基である。
本明細書に記載の「複素環基」は、芳香族複素環基であるか、又は非芳香族複素環基である。
本明細書に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」の具体例(具体例群G2)としては、以下の無置換の複素環基(具体例群G2A)、及び置換の複素環基(具体例群G2B)等が挙げられる。(ここで、無置換の複素環基とは「置換もしくは無置換の複素環基」が「無置換の複素環基」である場合を指し、置換の複素環基とは「置換もしくは無置換の複素環基」が「置換の複素環基」である場合を指す。)本明細書において、単に「複素環基」という場合は、「無置換の複素環基」と「置換の複素環基」の両方を含む。
「置換の複素環基」は、「無置換の複素環基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換の複素環基」の具体例は、下記具体例群G2Aの「無置換の複素環基」の水素原子が置き換わった基、及び下記具体例群G2Bの置換の複素環基の例等が挙げられる。尚、ここに列挙した「無置換の複素環基」の例や「置換の複素環基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換の複素環基」には、具体例群G2Bの「置換の複素環基」における複素環基自体の環形成原子に結合する水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び具体例群G2Bの「置換の複素環基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0348】
具体例群G2Aは、例えば、以下の窒素原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A1)、酸素原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A2)、硫黄原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A3)、及び下記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から1つの水素原子を除くことにより誘導される1価の複素環基(具体例群G2A4)を含む。
【0349】
具体例群G2Bは、例えば、以下の窒素原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B1)、酸素原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B2)、硫黄原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B3)、及び下記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から誘導される1価の複素環基の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基(具体例群G2B4)を含む。
【0350】
・窒素原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A1):
ピロリル基、
イミダゾリル基、
ピラゾリル基、
トリアゾリル基、
テトラゾリル基、
オキサゾリル基、
イソオキサゾリル基、
オキサジアゾリル基、
チアゾリル基、
イソチアゾリル基、
チアジアゾリル基、
ピリジル基、
ピリダジニル基、
ピリミジニル基、
ピラジニル基、
トリアジニル基、
インドリル基、
イソインドリル基、
インドリジニル基、
キノリジニル基、
キノリル基、
イソキノリル基、
シンノリル基、
フタラジニル基、
キナゾリニル基、
キノキサリニル基、
ベンゾイミダゾリル基、
インダゾリル基、
フェナントロリニル基、
フェナントリジニル基、
アクリジニル基、
フェナジニル基、
カルバゾリル基、
ベンゾカルバゾリル基、
モルホリノ基、
フェノキサジニル基、
フェノチアジニル基、
アザカルバゾリル基、及びジアザカルバゾリル基。
【0351】
・酸素原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A2):
フリル基、
オキサゾリル基、
イソオキサゾリル基、
オキサジアゾリル基、
キサンテニル基、
ベンゾフラニル基、
イソベンゾフラニル基、
ジベンゾフラニル基、
ナフトベンゾフラニル基、
ベンゾオキサゾリル基、
ベンゾイソキサゾリル基、
フェノキサジニル基、
モルホリノ基、
ジナフトフラニル基、
アザジベンゾフラニル基、
ジアザジベンゾフラニル基、
アザナフトベンゾフラニル基、及び
ジアザナフトベンゾフラニル基。
【0352】
・硫黄原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A3):
チエニル基、
チアゾリル基、
イソチアゾリル基、
チアジアゾリル基、
ベンゾチオフェニル基(ベンゾチエニル基)、
イソベンゾチオフェニル基(イソベンゾチエニル基)、
ジベンゾチオフェニル基(ジベンゾチエニル基)、
ナフトベンゾチオフェニル基(ナフトベンゾチエニル基)、
ベンゾチアゾリル基、
ベンゾイソチアゾリル基、
フェノチアジニル基、
ジナフトチオフェニル基(ジナフトチエニル基)、
アザジベンゾチオフェニル基(アザジベンゾチエニル基)、
ジアザジベンゾチオフェニル基(ジアザジベンゾチエニル基)、
アザナフトベンゾチオフェニル基(アザナフトベンゾチエニル基)、及び
ジアザナフトベンゾチオフェニル基(ジアザナフトベンゾチエニル基)。
【0353】
・下記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から1つの水素原子を除くことにより誘導される1価の複素環基(具体例群G2A4):
【0354】
【化50】
【0355】
【化51】
【0356】
前記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)において、X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、NH、又はCHである。ただし、X及びYのうち少なくとも1つは、酸素原子、硫黄原子、又はNHである。
前記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)において、X及びYの少なくともいずれかがNH、又はCHである場合、前記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から誘導される1価の複素環基には、これらNH、又はCHから1つの水素原子を除いて得られる1価の基が含まれる。
【0357】
・窒素原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B1):
(9-フェニル)カルバゾリル基、
(9-ビフェニリル)カルバゾリル基、
(9-フェニル)フェニルカルバゾリル基、
(9-ナフチル)カルバゾリル基、
ジフェニルカルバゾール-9-イル基、
フェニルカルバゾール-9-イル基、
メチルベンゾイミダゾリル基、
エチルベンゾイミダゾリル基、
フェニルトリアジニル基、
ビフェニリルトリアジニル基、
ジフェニルトリアジニル基、
フェニルキナゾリニル基、及び
ビフェニリルキナゾリニル基。
【0358】
・酸素原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B2):
フェニルジベンゾフラニル基、
メチルジベンゾフラニル基、
t-ブチルジベンゾフラニル基、及び
スピロ[9H-キサンテン-9,9’-[9H]フルオレン]の1価の残基。
【0359】
・硫黄原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B3):
フェニルジベンゾチオフェニル基、
メチルジベンゾチオフェニル基、
t-ブチルジベンゾチオフェニル基、及び
スピロ[9H-チオキサンテン-9,9’-[9H]フルオレン]の1価の残基。
【0360】
・前記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から誘導される1価の複素環基の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基(具体例群G2B4):
【0361】
前記「1価の複素環基の1つ以上の水素原子」とは、該1価の複素環基の環形成炭素原子に結合している水素原子、X及びYの少なくともいずれかがNHである場合の窒素原子に結合している水素原子、及びX及びYの一方がCHである場合のメチレン基の水素原子から選ばれる1つ以上の水素原子を意味する。
【0362】
・「置換もしくは無置換のアルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」の具体例(具体例群G3)としては、以下の無置換のアルキル基(具体例群G3A)及び置換のアルキル基(具体例群G3B)が挙げられる。(ここで、無置換のアルキル基とは「置換もしくは無置換のアルキル基」が「無置換のアルキル基」である場合を指し、置換のアルキル基とは「置換もしくは無置換のアルキル基」が「置換のアルキル基」である場合を指す。)以下、単に「アルキル基」という場合は、「無置換のアルキル基」と「置換のアルキル基」の両方を含む。
「置換のアルキル基」は、「無置換のアルキル基」における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のアルキル基」の具体例としては、下記の「無置換のアルキル基」(具体例群G3A)における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基、及び置換のアルキル基(具体例群G3B)の例等が挙げられる。本明細書において、「無置換のアルキル基」におけるアルキル基は、鎖状のアルキル基を意味する。そのため、「無置換のアルキル基」は、直鎖である「無置換のアルキル基」、及び分岐状である「無置換のアルキル基」が含まれる。尚、ここに列挙した「無置換のアルキル基」の例や「置換のアルキル基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換のアルキル基」には、具体例群G3Bの「置換のアルキル基」におけるアルキル基自体の水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び具体例群G3Bの「置換のアルキル基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0363】
・無置換のアルキル基(具体例群G3A):
メチル基、
エチル基、
n-プロピル基、
イソプロピル基、
n-ブチル基、
イソブチル基、
s-ブチル基、及び
t-ブチル基。
【0364】
・置換のアルキル基(具体例群G3B):
ヘプタフルオロプロピル基(異性体を含む)、
ペンタフルオロエチル基、
2,2,2-トリフルオロエチル基、及び
トリフルオロメチル基。
【0365】
・「置換もしくは無置換のアルケニル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルケニル基」の具体例(具体例群G4)としては、以下の無置換のアルケニル基(具体例群G4A)、及び置換のアルケニル基(具体例群G4B)等が挙げられる。(ここで、無置換のアルケニル基とは「置換もしくは無置換のアルケニル基」が「無置換のアルケニル基」である場合を指し、「置換のアルケニル基」とは「置換もしくは無置換のアルケニル基」が「置換のアルケニル基」である場合を指す。)本明細書において、単に「アルケニル基」という場合は、「無置換のアルケニル基」と「置換のアルケニル基」の両方を含む。
「置換のアルケニル基」は、「無置換のアルケニル基」における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のアルケニル基」の具体例としては、下記の「無置換のアルケニル基」(具体例群G4A)が置換基を有する基、及び置換のアルケニル基(具体例群G4B)の例等が挙げられる。尚、ここに列挙した「無置換のアルケニル基」の例や「置換のアルケニル基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換のアルケニル基」には、具体例群G4Bの「置換のアルケニル基」におけるアルケニル基自体の水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び具体例群G4Bの「置換のアルケニル基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0366】
・無置換のアルケニル基(具体例群G4A):
ビニル基、
アリル基、
1-ブテニル基、
2-ブテニル基、及び
3-ブテニル基。
【0367】
・置換のアルケニル基(具体例群G4B):
1,3-ブタンジエニル基、
1-メチルビニル基、
1-メチルアリル基、
1,1-ジメチルアリル基、
2-メチルアリル基、及び
1,2-ジメチルアリル基。
【0368】
・「置換もしくは無置換のアルキニル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルキニル基」の具体例(具体例群G5)としては、以下の無置換のアルキニル基(具体例群G5A)等が挙げられる。(ここで、無置換のアルキニル基とは、「置換もしくは無置換のアルキニル基」が「無置換のアルキニル基」である場合を指す。)以下、単に「アルキニル基」という場合は、「無置換のアルキニル基」と「置換のアルキニル基」の両方を含む。
「置換のアルキニル基」は、「無置換のアルキニル基」における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のアルキニル基」の具体例としては、下記の「無置換のアルキニル基」(具体例群G5A)における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基等が挙げられる。
【0369】
・無置換のアルキニル基(具体例群G5A):
エチニル基。
【0370】
・「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」の具体例(具体例群G6)としては、以下の無置換のシクロアルキル基(具体例群G6A)、及び置換のシクロアルキル基(具体例群G6B)等が挙げられる。(ここで、無置換のシクロアルキル基とは「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」が「無置換のシクロアルキル基」である場合を指し、置換のシクロアルキル基とは「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」が「置換のシクロアルキル基」である場合を指す。)本明細書において、単に「シクロアルキル基」という場合は、「無置換のシクロアルキル基」と「置換のシクロアルキル基」の両方を含む。
「置換のシクロアルキル基」は、「無置換のシクロアルキル基」における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のシクロアルキル基」の具体例としては、下記の「無置換のシクロアルキル基」(具体例群G6A)における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基、及び置換のシクロアルキル基(具体例群G6B)の例等が挙げられる。尚、ここに列挙した「無置換のシクロアルキル基」の例や「置換のシクロアルキル基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換のシクロアルキル基」には、具体例群G6Bの「置換のシクロアルキル基」におけるシクロアルキル基自体の炭素原子に結合する1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基、及び具体例群G6Bの「置換のシクロアルキル基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0371】
・無置換のシクロアルキル基(具体例群G6A):
シクロプロピル基、
シクロブチル基、
シクロペンチル基、
シクロヘキシル基、
1-アダマンチル基、
2-アダマンチル基、
1-ノルボルニル基、及び
2-ノルボルニル基。
【0372】
・置換のシクロアルキル基(具体例群G6B):
4-メチルシクロヘキシル基。
【0373】
・「-Si(R901)(R902)(R903)で表される基」
本明細書に記載の-Si(R901)(R902)(R903)で表される基の具体例(具体例群G7)としては、
-Si(G1)(G1)(G1)、
-Si(G1)(G2)(G2)、
-Si(G1)(G1)(G2)、
-Si(G2)(G2)(G2)、
-Si(G3)(G3)(G3)、及び
-Si(G6)(G6)(G6)
が挙げられる。ここで、
G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。
G2は、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」である。
G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。
G6は、具体例群G6に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」である。
-Si(G1)(G1)(G1)における複数のG1は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G1)(G2)(G2)における複数のG2は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G1)(G1)(G2)における複数のG1は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G2)(G2)(G2)における複数のG2は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G3)(G3)(G3)における複数のG3は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G6)(G6)(G6)における複数のG6は、互いに同一であるか、又は異なる。
【0374】
・「-O-(R904)で表される基」
本明細書に記載の-O-(R904)で表される基の具体例(具体例群G8)としては、
-O(G1)、
-O(G2)、
-O(G3)、及び
-O(G6)
が挙げられる。
ここで、
G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。
G2は、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」である。
G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。
G6は、具体例群G6に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」である。
【0375】
・「-S-(R905)で表される基」
本明細書に記載の-S-(R905)で表される基の具体例(具体例群G9)としては、
-S(G1)、
-S(G2)、
-S(G3)、及び
-S(G6)
が挙げられる。
ここで、
G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。
G2は、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」である。
G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。
G6は、具体例群G6に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」である。
【0376】
・「-N(R906)(R907)で表される基」
本明細書に記載の-N(R906)(R907)で表される基の具体例(具体例群G10)としては、
-N(G1)(G1)、
-N(G2)(G2)、
-N(G1)(G2)、
-N(G3)(G3)、及び
-N(G6)(G6)
が挙げられる。
ここで、
G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。
G2は、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」である。
G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。
G6は、具体例群G6に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」である。
-N(G1)(G1)における複数のG1は、互いに同一であるか、又は異なる。
-N(G2)(G2)における複数のG2は、互いに同一であるか、又は異なる。
-N(G3)(G3)における複数のG3は、互いに同一であるか、又は異なる。
-N(G6)(G6)における複数のG6は、互いに同一であるか、又は異なる。
【0377】
・「ハロゲン原子」
本明細書に記載の「ハロゲン原子」の具体例(具体例群G11)としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0378】
・「置換もしくは無置換のフルオロアルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のフルオロアルキル基」は、「置換もしくは無置換のアルキル基」におけるアルキル基を構成する炭素原子に結合している少なくとも1つの水素原子がフッ素原子と置き換わった基を意味し、「置換もしくは無置換のアルキル基」におけるアルキル基を構成する炭素原子に結合している全ての水素原子がフッ素原子で置き換わった基(パーフルオロ基)も含む。「無置換のフルオロアルキル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~18である。「置換のフルオロアルキル基」は、「フルオロアルキル基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。尚、本明細書に記載の「置換のフルオロアルキル基」には、「置換のフルオロアルキル基」におけるアルキル鎖の炭素原子に結合する1つ以上の水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び「置換のフルオロアルキル基」における置換基の1つ以上の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。「無置換のフルオロアルキル基」の具体例としては、前記「アルキル基」(具体例群G3)における1つ以上の水素原子がフッ素原子と置き換わった基の例等が挙げられる。
【0379】
・「置換もしくは無置換のハロアルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のハロアルキル基」は、「置換もしくは無置換のアルキル基」におけるアルキル基を構成する炭素原子に結合している少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子と置き換わった基を意味し、「置換もしくは無置換のアルキル基」におけるアルキル基を構成する炭素原子に結合している全ての水素原子がハロゲン原子で置き換わった基も含む。「無置換のハロアルキル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~18である。「置換のハロアルキル基」は、「ハロアルキル基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。尚、本明細書に記載の「置換のハロアルキル基」には、「置換のハロアルキル基」におけるアルキル鎖の炭素原子に結合する1つ以上の水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び「置換のハロアルキル基」における置換基の1つ以上の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。「無置換のハロアルキル基」の具体例としては、前記「アルキル基」(具体例群G3)における1つ以上の水素原子がハロゲン原子と置き換わった基の例等が挙げられる。ハロアルキル基をハロゲン化アルキル基と称する場合がある。
【0380】
・「置換もしくは無置換のアルコキシ基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルコキシ基」の具体例としては、-O(G3)で表される基であり、ここで、G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。「無置換のアルコキシ基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~18である。
【0381】
・「置換もしくは無置換のアルキルチオ基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルキルチオ基」の具体例としては、-S(G3)で表される基であり、ここで、G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。「無置換のアルキルチオ基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~18である。
【0382】
・「置換もしくは無置換のアリールオキシ基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアリールオキシ基」の具体例としては、-O(G1)で表される基であり、ここで、G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。「無置換のアリールオキシ基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、6~50であり、好ましくは6~30であり、より好ましくは6~18である。
【0383】
・「置換もしくは無置換のアリールチオ基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアリールチオ基」の具体例としては、-S(G1)で表される基であり、ここで、G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。「無置換のアリールチオ基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、6~50であり、好ましくは6~30であり、より好ましくは6~18である。
【0384】
・「置換もしくは無置換のトリアルキルシリル基」
本明細書に記載の「トリアルキルシリル基」の具体例としては、-Si(G3)(G3)(G3)で表される基であり、ここで、G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。-Si(G3)(G3)(G3)における複数のG3は、互いに同一であるか、又は異なる。「トリアルキルシリル基」の各アルキル基の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~20であり、より好ましくは1~6である。
【0385】
・「置換もしくは無置換のアラルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアラルキル基」の具体例としては、-(G3)-(G1)で表される基であり、ここで、G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」であり、G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。従って、「アラルキル基」は、「アルキル基」の水素原子が置換基としての「アリール基」と置き換わった基であり、「置換のアルキル基」の一態様である。「無置換のアラルキル基」は、「無置換のアリール基」が置換した「無置換のアルキル基」であり、「無置換のアラルキル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、7~50であり、好ましくは7~30であり、より好ましくは7~18である。
「置換もしくは無置換のアラルキル基」の具体例としては、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルイソプロピル基、2-フェニルイソプロピル基、フェニル-t-ブチル基、α-ナフチルメチル基、1-α-ナフチルエチル基、2-α-ナフチルエチル基、1-α-ナフチルイソプロピル基、2-α-ナフチルイソプロピル基、β-ナフチルメチル基、1-β-ナフチルエチル基、2-β-ナフチルエチル基、1-β-ナフチルイソプロピル基、及び2-β-ナフチルイソプロピル基等が挙げられる。
【0386】
本明細書に記載の置換もしくは無置換のアリール基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくはフェニル基、p-ビフェニル基、m-ビフェニル基、o-ビフェニル基、p-ターフェニル-4-イル基、p-ターフェニル-3-イル基、p-ターフェニル-2-イル基、m-ターフェニル-4-イル基、m-ターフェニル-3-イル基、m-ターフェニル-2-イル基、o-ターフェニル-4-イル基、o-ターフェニル-3-イル基、o-ターフェニル-2-イル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基、9,9’-スピロビフルオレニル基、9,9-ジメチルフルオレニル基、及び9,9-ジフェニルフルオレニル基等である。
【0387】
本明細書に記載の置換もしくは無置換の複素環基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくはピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリニル基、ベンゾイミダゾリル基、フェナントロリニル基、カルバゾリル基(1-カルバゾリル基、2-カルバゾリル基、3-カルバゾリル基、4-カルバゾリル基、又は9-カルバゾリル基)、ベンゾカルバゾリル基、アザカルバゾリル基、ジアザカルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ナフトベンゾフラニル基、アザジベンゾフラニル基、ジアザジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ナフトベンゾチオフェニル基、アザジベンゾチオフェニル基、ジアザジベンゾチオフェニル基、(9-フェニル)カルバゾリル基((9-フェニル)カルバゾール-1-イル基、(9-フェニル)カルバゾール-2-イル基、(9-フェニル)カルバゾール-3-イル基、又は(9-フェニル)カルバゾール-4-イル基)、(9-ビフェニリル)カルバゾリル基、(9-フェニル)フェニルカルバゾリル基、ジフェニルカルバゾール-9-イル基、フェニルカルバゾール-9-イル基、フェニルトリアジニル基、ビフェニリルトリアジニル基、ジフェニルトリアジニル基、フェニルジベンゾフラニル基、及びフェニルジベンゾチオフェニル基等である。
【0388】
本明細書において、カルバゾリル基は、本明細書に別途記載のない限り、具体的には以下のいずれかの基である。
【0389】
【化52】
【0390】
本明細書において、(9-フェニル)カルバゾリル基は、本明細書に別途記載のない限り、具体的には以下のいずれかの基である。
【0391】
【化53】
【0392】
前記一般式(TEMP-Cz1)~(TEMP-Cz9)中、*は、結合位置を表す。
【0393】
本明細書において、ジベンゾフラニル基、及びジベンゾチオフェニル基は、本明細書に別途記載のない限り、具体的には以下のいずれかの基である。
【0394】
【化54】
【0395】
前記一般式(TEMP-34)~(TEMP-41)中、*は、結合位置を表す。
【0396】
本明細書に記載の置換もしくは無置換のアルキル基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及びt-ブチル基等である。
【0397】
・「置換もしくは無置換のアリーレン基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアリーレン基」は、別途記載のない限り、上記「置換もしくは無置換のアリール基」からアリール環上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基である。「置換もしくは無置換のアリーレン基」の具体例(具体例群G12)としては、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」からアリール環上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基等が挙げられる。
【0398】
・「置換もしくは無置換の2価の複素環基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換の2価の複素環基」は、別途記載のない限り、上記「置換もしくは無置換の複素環基」から複素環上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基である。「置換もしくは無置換の2価の複素環基」の具体例(具体例群G13)としては、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」から複素環上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基等が挙げられる。
【0399】
・「置換もしくは無置換のアルキレン基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルキレン基」は、別途記載のない限り、上記「置換もしくは無置換のアルキル基」からアルキル鎖上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基である。「置換もしくは無置換のアルキレン基」の具体例(具体例群G14)としては、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」からアルキル鎖上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基等が挙げられる。
【0400】
本明細書に記載の置換もしくは無置換のアリーレン基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは下記一般式(TEMP-42)~(TEMP-68)のいずれかの基である。
【0401】
【化55】
【0402】
【化56】
【0403】
前記一般式(TEMP-42)~(TEMP-52)中、Q~Q10は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
前記一般式(TEMP-42)~(TEMP-52)中、*は、結合位置を表す。
【0404】
【化57】
【0405】
前記一般式(TEMP-53)~(TEMP-62)中、Q~Q10は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
式Q及びQ10は、単結合を介して互いに結合して環を形成してもよい。
前記一般式(TEMP-53)~(TEMP-62)中、*は、結合位置を表す。
【0406】
【化58】
【0407】
前記一般式(TEMP-63)~(TEMP-68)中、Q~Qは、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
前記一般式(TEMP-63)~(TEMP-68)中、*は、結合位置を表す。
【0408】
本明細書に記載の置換もしくは無置換の2価の複素環基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは下記一般式(TEMP-69)~(TEMP-102)のいずれかの基である。
【0409】
【化59】
【0410】
【化60】
【0411】
【化61】
【0412】
前記一般式(TEMP-69)~(TEMP-82)中、Q~Qは、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
【0413】
【化62】
【0414】
【化63】
【0415】
【化64】
【0416】
【化65】
【0417】
前記一般式(TEMP-83)~(TEMP-102)中、Q~Qは、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
【0418】
以上が、「本明細書に記載の置換基」についての説明である。
【0419】
・「結合して環を形成する場合」
本明細書において、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成するか、互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成するか、又は互いに結合せず」という場合は、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成する」場合と、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成する」場合と、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合しない」場合と、を意味する。
本明細書における、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成する」場合、及び「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成する」場合(以下、これらの場合をまとめて「結合して環を形成する場合」と称する場合がある。)について、以下、説明する。母骨格がアントラセン環である下記一般式(TEMP-103)で表されるアントラセン化合物の場合を例として説明する。
【0420】
【化66】
【0421】
例えば、R921~R930のうちの「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、環を形成する」場合において、1組となる隣接する2つからなる組とは、R921とR922との組、R922とR923との組、R923とR924との組、R924とR930との組、R930とR925との組、R925とR926との組、R926とR927との組、R927とR928との組、R928とR929との組、並びにR929とR921との組である。
【0422】
上記「1組以上」とは、上記隣接する2つ以上からなる組の2組以上が同時に環を形成してもよいことを意味する。例えば、R921とR922とが互いに結合して環Qを形成し、同時にR925とR926とが互いに結合して環Qを形成した場合は、前記一般式(TEMP-103)で表されるアントラセン化合物は、下記一般式(TEMP-104)で表される。
【0423】
【化67】
【0424】
「隣接する2つ以上からなる組」が環を形成する場合とは、前述の例のように隣接する「2つ」からなる組が結合する場合だけではなく、隣接する「3つ以上」からなる組が結合する場合も含む。例えば、R921とR922とが互いに結合して環Qを形成し、かつ、R922とR923とが互いに結合して環Qを形成し、互いに隣接する3つ(R921、R922及びR923)からなる組が互いに結合して環を形成して、アントラセン母骨格に縮合する場合を意味し、この場合、前記一般式(TEMP-103)で表されるアントラセン化合物は、下記一般式(TEMP-105)で表される。下記一般式(TEMP-105)において、環Q及び環Qは、R922を共有する。
【0425】
【化68】
【0426】
形成される「単環」、又は「縮合環」は、形成された環のみの構造として、飽和の環であっても不飽和の環であってもよい。「隣接する2つからなる組の1組」が「単環」、又は「縮合環」を形成する場合であっても、当該「単環」、又は「縮合環」は、飽和の環、又は不飽和の環を形成することができる。例えば、前記一般式(TEMP-104)において形成された環Q及び環Qは、それぞれ、「単環」又は「縮合環」である。また、前記一般式(TEMP-105)において形成された環Q、及び環Qは、「縮合環」である。前記一般式(TEMP-105)の環Qと環Qとは、環Qと環Qとが縮合することによって縮合環となっている。前記一般式(TMEP-104)の環Qがベンゼン環であれば、環Qは、単環である。前記一般式(TMEP-104)の環Qがナフタレン環であれば、環Qは、縮合環である。
【0427】
「不飽和の環」とは、芳香族炭化水素環、又は芳香族複素環を意味する。「飽和の環」とは、脂肪族炭化水素環、又は非芳香族複素環を意味する。
芳香族炭化水素環の具体例としては、具体例群G1において具体例として挙げられた基が水素原子によって終端された構造が挙げられる。
芳香族複素環の具体例としては、具体例群G2において具体例として挙げられた芳香族複素環基が水素原子によって終端された構造が挙げられる。
脂肪族炭化水素環の具体例としては、具体例群G6において具体例として挙げられた基が水素原子によって終端された構造が挙げられる。
「環を形成する」とは、母骨格の複数の原子のみ、あるいは母骨格の複数の原子とさらに1以上の任意の元素で環を形成することを意味する。例えば、前記一般式(TEMP-104)に示す、R921とR922とが互いに結合して形成された環Qは、R921が結合するアントラセン骨格の炭素原子と、R922が結合するアントラセン骨格の炭素原子と、1以上の任意の元素とで形成する環を意味する。具体例としては、R921とR922とで環Qを形成する場合において、R921が結合するアントラセン骨格の炭素原子と、R922とが結合するアントラセン骨格の炭素原子と、4つの炭素原子とで単環の不飽和の環を形成する場合、R921とR922とで形成する環は、ベンゼン環である。
【0428】
ここで、「任意の元素」は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは、炭素元素、窒素元素、酸素元素、及び硫黄元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素である。任意の元素において(例えば、炭素元素、又は窒素元素の場合)、環を形成しない結合は、水素原子等で終端されてもよいし、後述する「任意の置換基」で置換されてもよい。炭素元素以外の任意の元素を含む場合、形成される環は複素環である。
単環または縮合環を構成する「1以上の任意の元素」は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは2個以上15個以下であり、より好ましくは3個以上12個以下であり、さらに好ましくは3個以上5個以下である。
本明細書に別途記載のない限り、「単環」、及び「縮合環」のうち、好ましくは「単環」である。
本明細書に別途記載のない限り、「飽和の環」、及び「不飽和の環」のうち、好ましくは「不飽和の環」である。
本明細書に別途記載のない限り、「単環」は、好ましくはベンゼン環である。
本明細書に別途記載のない限り、「不飽和の環」は、好ましくはベンゼン環である。
「隣接する2つ以上からなる組の1組以上」が、「互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成する」場合、又は「互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成する」場合、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは、隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、母骨格の複数の原子と、1個以上15個以下の炭素元素、窒素元素、酸素元素、及び硫黄元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素とからなる置換もしくは無置換の「不飽和の環」を形成する。
【0429】
上記の「単環」、又は「縮合環」が置換基を有する場合の置換基は、例えば後述する「任意の置換基」である。上記の「単環」、又は「縮合環」が置換基を有する場合の置換基の具体例は、上述した「本明細書に記載の置換基」の項で説明した置換基である。
上記の「飽和の環」、又は「不飽和の環」が置換基を有する場合の置換基は、例えば後述する「任意の置換基」である。上記の「単環」、又は「縮合環」が置換基を有する場合の置換基の具体例は、上述した「本明細書に記載の置換基」の項で説明した置換基である。
以上が、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成する」場合、及び「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成する」場合(「結合して環を形成する場合」)についての説明である。
【0430】
・「置換もしくは無置換の」という場合の置換基
本明細書における一実施形態においては、前記「置換もしくは無置換の」という場合の置換基(本明細書において、「任意の置換基」と呼ぶことがある。)は、例えば、
無置換の炭素数1~50のアルキル基、
無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)、
-O-(R904)、
-S-(R905)、
-N(R906)(R907)、
ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、
無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、及び
無置換の環形成原子数5~50の複素環基
からなる群から選択される基等であり、
ここで、R901~R907は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。
901が2個以上存在する場合、2個以上のR901は、互いに同一であるか、又は異なり、
902が2個以上存在する場合、2個以上のR902は、互いに同一であるか、又は異なり、
903が2個以上存在する場合、2個以上のR903は、互いに同一であるか、又は異なり、
904が2個以上存在する場合、2個以上のR904は、互いに同一であるか、又は異なり、
905が2個以上存在する場合、2個以上のR905は、互いに同一であるか、又は異なり、
906が2個以上存在する場合、2個以上のR906は、互いに同一であるか、又は異なり、
907が2個以上存在する場合、2個以上のR907は、互いに同一であるか又は異なる。
【0431】
一実施形態においては、前記「置換もしくは無置換の」という場合の置換基は、
炭素数1~50のアルキル基、
環形成炭素数6~50のアリール基、及び
環形成原子数5~50の複素環基
からなる群から選択される基である。
【0432】
一実施形態においては、前記「置換もしくは無置換の」という場合の置換基は、
炭素数1~18のアルキル基、
環形成炭素数6~18のアリール基、及び
環形成原子数5~18の複素環基
からなる群から選択される基である。
【0433】
上記任意の置換基の各基の具体例は、上述した「本明細書に記載の置換基」の項で説明した置換基の具体例である。
【0434】
本明細書において別途記載のない限り、隣接する任意の置換基同士で、「飽和の環」、又は「不飽和の環」を形成してもよく、好ましくは、置換もしくは無置換の飽和の5員環、置換もしくは無置換の飽和の6員環、置換もしくは無置換の不飽和の5員環、又は置換もしくは無置換の不飽和の6員環を形成し、より好ましくは、ベンゼン環を形成する。
本明細書において別途記載のない限り、任意の置換基は、さらに置換基を有してもよい。任意の置換基がさらに有する置換基としては、上記任意の置換基と同様である。
【0435】
本明細書において、「AA~BB」を用いて表される数値範囲は、「AA~BB」の前に記載される数値AAを下限値とし、「AA~BB」の後に記載される数値BBを上限値として含む範囲を意味する。
【実施例0436】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれら実施例に何ら限定されない。
【0437】
<化合物>
実施例及び参考例の有機EL素子の製造に用いた化合物を以下に示す。
【0438】
【化69】
【0439】
【化70】
【0440】
<有機EL素子の作製>
有機EL素子を以下のように作製し、評価した。
【0441】
〔実施例1〕
25mm×75mm×1.1mm厚のITO(Indium Tin Oxide)透明電極(陽極)付きガラス基板(ジオマテック株式会社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。ITO透明電極の膜厚は、130nmとした。
洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に透明電極を覆うようにして、化合物HT1及び化合物HA1を共蒸着し、膜厚10nmの正孔注入層(HI)を成膜した。この正孔注入層中の化合物HT1の割合を97質量%とし、化合物HA1の割合を3質量%とした。
正孔注入層の成膜に続けて化合物HT1を蒸着し、膜厚80nmの正孔輸送層(HT)を成膜した。
正孔輸送層の成膜に続けて化合物HT2を蒸着し、膜厚10nmの電子障壁層(EBL)を成膜した。
電子障壁層上に、第一の発光層、第三の発光層及び第二の発光層を成膜した。これら発光層の成膜は、次のように行った。第一の蒸着源に化合物BH1(第一のホスト材料(BH))を収容し、第二の蒸着源に化合物BD1(発光性化合物(BD))を収容し、第三の蒸着源に化合物BH2(第二のホスト材料(BH))を収容した。化合物BH1の蒸着速度及び化合物BH2の蒸着速度を制御することで、ガラス基板と、第一の蒸着源、第二の蒸着源及び第三の蒸着源との相対的距離を図1に示すように変動させながら単一の成膜室内で成膜する工程を再現し、第一の発光層、第三の発光層及び第二の発光層を成膜した。
まず、電子障壁層上に、化合物BH1(第一のホスト材料(BH))及び化合物BD1(発光性化合物(BD))を共蒸着し、膜厚5nmの第一の有機層としての第一の発光層を成膜した。第一の発光層における化合物BH1の割合が98質量%、化合物BD1の割合が2質量%となるように共蒸着した。
次いで、化合物BH1の蒸着速度及び化合物BH2の蒸着速度を制御しながら、第一の発光層上に化合物BH1(第一のホスト材料(BH))、化合物BH2(第二のホスト材料(BH))及び化合物BD1(発光性化合物(BD))を共蒸着し、膜厚15nmの第三の有機層としての第三の発光層を成膜した。第三の発光層における化合物BD1の割合が2質量%となるように共蒸着した。化合物BH1の蒸着速度及び化合物BH2の蒸着速度を制御しながら第三の発光層を成膜することで、ガラス基板と、第一の蒸着源、第二の蒸着源及び第三の蒸着源との相対的距離を図1に示すように変動させながら単一の成膜室内で成膜する発光層のように、第三の発光層中、第一の発光層側の領域においては、化合物BH1の割合が化合物BH2の割合よりも多く、陰極側に向かうにつれて化合物BH2の割合が増加し、後述する第二の発光層側の領域においては、化合物BH2の割合が化合物BH1の割合よりも多くなるような化合物の濃度勾配を有する発光層の成膜を再現した。
次いで、第三の発光層上に化合物BH2(第二のホスト材料(BH))及び化合物BD1(発光性化合物(BD))を共蒸着し、膜厚5nmの第二の有機層としての第二の発光層を成膜した。第二の発光層における化合物BH2の割合が98質量%、化合物BD1の割合が2質量%となるように共蒸着した。
第二の発光層上に化合物ET1を蒸着し、膜厚10nmの第一の電子輸送層(正孔障壁層(HBL)と称する場合もある。)を形成した。
第一の電子輸送層上に化合物ET2を蒸着し、膜厚15nmの第二の電子輸送層(ET)を形成した。
第二の電子輸送層上に化合物LiF(フッ化リチウム)を蒸着して膜厚1nmの電子注入層を形成した。
電子注入層上に金属Alを蒸着して膜厚50nmの陰極を形成した。
実施例1の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130)/HT1:HA1(10,97%:3%)/HT1(80)/HT2(10)/BH1:BD1(5,98%:2%)/BH1:BH2:BD1(15,2%)/BH2:BD1(5,98%:2%)/ET1(10)/ET2(15)/LiF(1)/Al(80)
なお、括弧内の数字は、膜厚(単位:nm)を示す。同じく括弧内において、パーセント表示された数字(97%:3%)は、正孔注入層における化合物HT1及び化合物HA1の割合(質量%)を示し、パーセント表示された数字(98%:2%)は、第一の発光層又は第二の発光層における第一のホスト材料(化合物BH1)又は第二のホスト材料(化合物BH2)及び発光性化合物(化合物BD1)の割合(質量%)を示す。パーセント表示された数字(2%)は、第三の発光層における発光性化合物(化合物BD1)の割合(質量%)を示し、残りの98%は、第一のホスト材料及び第二のホスト材料の合計の割合(質量%)に相当する。
【0442】
〔実施例2及び実施例3〕
実施例2及び実施例3の有機EL素子は、それぞれ、第二の発光層及び第三の発光層の膜厚を表1に示す膜厚に変更した以外は、実施例1の有機EL素子と同様に作製した。
【0443】
〔参考例1〕
参考例1の有機EL素子は、表1に示すように第三の発光層を成膜せずに、第一の発光層と、直接、接する、膜厚20nmの第二の発光層を成膜した以外は、実施例1の有機EL素子と同様に作製した。
【0444】
〔参考例2〕
参考例2の有機EL素子は、実施例1の第三の発光層の成膜の工程に代えて、ガラス基板と、第一の蒸着源、第二の蒸着源及び第三の蒸着源との相対的距離を図1に示すように変動させながら単一の成膜室内で成膜する工程を実施する以外、実施例1の有機EL素子と同様に作製することができる。
【0445】
〔参考例3〕
参考例3の有機EL素子は、実施例2の第三の発光層の成膜の工程に代えて、ガラス基板と、第一の蒸着源、第二の蒸着源及び第三の蒸着源との相対的距離を図1に示すように変動させながら単一の成膜室内で成膜する工程を実施する以外、実施例2の有機EL素子と同様に作製することができる。
【0446】
〔参考例4〕
参考例4の有機EL素子は、実施例3の第三の発光層の成膜の工程に代えて、ガラス基板と、第一の蒸着源、第二の蒸着源及び第三の蒸着源との相対的距離を図1に示すように変動させながら単一の成膜室内で成膜する工程を実施する以外、実施例3の有機EL素子と同様に作製することができる。
【0447】
参考例2~4の有機EL素子の第三の発光層において、第一の発光層側の領域においては、化合物BH1の割合が化合物BH2の割合よりも多く、陰極側に向かうにつれて化合物BH2の割合が増加し、後述する第二の発光層側の領域においては、化合物BH2の割合が化合物BH1の割合よりも多くなるような化合物の濃度勾配を有する。
【0448】
〔比較例1〕
比較例1の有機EL素子は、参考例1の第一の発光層及び第二の発光層を同一の成膜室で成膜せずに、互いに異なる成膜室で成膜する工程を実施する以外、参考例1の有機EL素子と同様に作製した。比較例1においては、化合物BH1(第一のホスト材料(BH))を収容した蒸着源と、化合物BD1(発光性化合物(BD))を収容した蒸着源を備える第一の発光層成膜用の成膜室で第一の発光層を成膜し、次いで、化合物BH2(第二のホスト材料(BH))を収容した蒸着源と、化合物BD1(発光性化合物(BD))を収容した蒸着源を備える第二の発光層成膜用の成膜室へ基板を移動させて第二の発光層を成膜した。
【0449】
<有機EL素子の評価>
作製した有機EL素子について、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0450】
・外部量子効率EQE
電流密度が10mA/cmとなるように素子に電圧を印加した時の分光放射輝度スペクトルを分光放射輝度計CS-2000(コニカミノルタ株式会社製)で計測した。得られた分光放射輝度スペクトルから、ランバシアン放射を行ったと仮定し外部量子効率EQE(単位:%)を算出した。
【0451】
・寿命LT95
作製した有機EL素子に、電流密度が50mA/cmとなるように電圧を印加し、初期輝度に対して輝度が95%となるまでの時間(LT95(単位:時間))を測定した。輝度は、分光放射輝度計CS-2000(コニカミノルタ株式会社製)を用いて測定した。
【0452】
【表1】
【0453】
表1に示すように、発光層成膜時の成膜室間の移動について、実施例1~3においては、第一の発光層、第三の発光層及び第二の発光層を単一の成膜室内で成膜する工程を実施したため、「なし」と表記し、参考例1においては、第一の発光層及び第二の発光層を単一の成膜室内で成膜する工程を実施したため、「なし」と表記し、比較例1においては、第一の発光層の成膜後、別の成膜室に基板を移動させて第二の発光層を成膜する工程を実施したため、「あり」と表記した。
【0454】
実施例1~3の有機EL素子は、第一の発光層と第二の発光層との間に、第一のホスト材料、第二のホスト材料及び発光性化合物を含む第三の発光層が成膜されている素子であるが、表1に示すように、第一の発光層と第二の発光層とが、直接、接している参考例1の有機EL素子と比べて、同等の発光効率で、長い素子寿命を示した。
参考例2~4の有機EL素子も、実施例1~3の有機EL素子と同様、第一の発光層と第二の発光層との間に、第一のホスト材料、第二のホスト材料及び発光性化合物を含む第三の発光層が成膜されている素子である。
参考例1の有機EL素子のような積層型発光層を成膜するために、第一の発光層の成膜用及び第二の発光層の成膜用の2つの成膜室(チャンバー)を用いなくとも、参考例2~4の有機EL素子のように、単一の成膜室内に複数の蒸着源を配置して、ガラス基板と、第一の蒸着源、第二の蒸着源及び第三の蒸着源との相対的距離を図1に示すように変動させながら単一の成膜室内で成膜する工程を実施し、第三の発光層を介して第一の発光層と第二の発光層とを積層させた有機EL素子も、実施例1~3の有機EL素子と同等の素子性能を示すと推測される。
比較例1の有機EL素子の製造においては、第一の発光層を成膜した後、別の成膜室に基板を移動させてから第二の発光層を成膜する工程を実施したため、真空度の変動が発生した。そのため、比較例1の有機EL素子は、発光層間への不純物の混入により、参考例1の有機EL素子よりも、性能が低下したと推測される。
【0455】
<化合物の評価方法>
(三重項エネルギーT
測定対象となる化合物をEPA(ジエチルエーテル:イソペンタン:エタノール=5:5:2(容積比))中に、濃度が10μmol/Lとなるように溶解し、この溶液を石英セル中に入れて測定試料とした。この測定試料について、低温(77[K])で燐光スペクトル(縦軸:燐光発光強度、横軸:波長とする。)を測定し、この燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]に基づいて、次の換算式(F1)から算出されるエネルギー量を三重項エネルギーTとした。なお、三重項エネルギーTは、測定条件によっては上下0.02eV程度の誤差が生じ得る。
換算式(F1):T[eV]=1239.85/λedge
【0456】
燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線は以下のように引く。燐光スペクトルの短波長側から、スペクトルの極大値のうち、最も短波長側の極大値までスペクトル曲線上を移動する際に、長波長側に向けて曲線上の各点における接線を考える。この接線は、曲線が立ち上がるにつれ(つまり縦軸が増加するにつれ)、傾きが増加する。この傾きの値が極大値をとる点において引いた接線(すなわち変曲点における接線)が、当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とする。
なお、スペクトルの最大ピーク強度の15%以下のピーク強度をもつ極大点は、上述の最も短波長側の極大値には含めず、最も短波長側の極大値に最も近い、傾きの値が極大値をとる点において引いた接線を当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とする。
燐光の測定には、(株)日立ハイテクノロジー製のF-4500形分光蛍光光度計本体を用いた。
【0457】
(一重項エネルギーS
測定対象となる化合物の10μmol/Lトルエン溶液を調製して石英セルに入れ、常温(300K)でこの試料の吸収スペクトル(縦軸:吸収強度、横軸:波長とする。)を測定した。この吸収スペクトルの長波長側の立ち下がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]を次に示す換算式(F2)に代入して一重項エネルギーを算出した。
換算式(F2):S[eV]=1239.85/λedge
吸収スペクトル測定装置としては、日立社製の分光光度計(装置名:U3310)を用いた。
【0458】
吸収スペクトルの長波長側の立ち下がりに対する接線は以下のように引く。吸収スペクトルの極大値のうち、最も長波長側の極大値から長波長方向にスペクトル曲線上を移動する際に、曲線上の各点における接線を考える。この接線は、曲線が立ち下がるにつれ(つまり縦軸の値が減少するにつれ)、傾きが減少しその後増加することを繰り返す。傾きの値が最も長波長側(ただし、吸光度が0.1以下となる場合は除く)で極小値をとる点において引いた接線を当該吸収スペクトルの長波長側の立ち下がりに対する接線とする。
なお、吸光度の値が0.2以下の極大点は、上記最も長波長側の極大値には含めない。
【0459】
(蛍光発光最大ピーク波長(FL-peak)の測定)
化合物BD1を、4.9×10-6mol/Lの濃度でトルエンに溶解し、化合物BDのトルエン溶液を調製した。蛍光スペクトル測定装置(分光蛍光光度計F-7000(株式会社日立ハイテクサイエンス製))を用いて、化合物BD1のトルエン溶液を390nmで励起した場合の蛍光発光最大ピーク波長を測定した。
化合物BD1の蛍光発光最大ピーク波長は、453nmであった。
【0460】
化合物の物性値を表2に示す。
【0461】
【表2】
【符号の説明】
【0462】
1…有機EL素子、10…基板、100…第一の成膜室、111…第一の蒸着源、111A…放出口、112…第二の蒸着源、112A…放出口、113…第三の蒸着源、113A…放出口、114…蒸着源、114A…放出口、130…制御部材、131…開口部、2…基板、200…成膜室、3…陽極、4…陰極、5…有機層、51…第一の有機層、52…第二の有機層、53…第三の有機層、6…正孔注入層、7…正孔輸送層、9…電子注入層、TR…移動方向、VA1…第一の蒸発角度、VA2…第二の蒸発角度、VA3…第三の蒸発角度、VD1…第一の蒸発方向、VD2…第二の蒸発方向、VD3…第三の蒸発方向、VP1…第一の蒸発範囲、VP2…第二の蒸発範囲、VP3…第三の蒸発範囲。
図1
図2
図3
図4
図5
図6