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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138721
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】多層麺
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20220915BHJP
   A23L 29/238 20160101ALI20220915BHJP
【FI】
A23L7/109
A23L7/109 C
A23L7/109 B
A23L29/238
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038769
(22)【出願日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 皓哉
(72)【発明者】
【氏名】和田 祐典
【テーマコード(参考)】
4B041
4B046
【Fターム(参考)】
4B041LC03
4B041LD10
4B041LE06
4B041LH02
4B041LH07
4B046LA01
4B046LB01
4B046LB10
4B046LC01
4B046LE06
4B046LG02
4B046LG15
4B046LG16
4B046LG20
4B046LG26
4B046LG60
4B046LP01
4B046LP12
4B046LP15
4B046LP22
4B046LP69
(57)【要約】
【課題】
難消化性澱粉を配合した麺線であってかつ、しっかりした食感を有する麺線を製造する方法を開発する。
【解決手段】
内層及び外層を有する多層麺とし、前記内層は小麦粉、グルテン、難消化性デンプン及び増粘剤を含むとともに、減圧(真空)押出法によって成形され、前記外層は小麦粉、グルテン及び増粘剤を含む多層麺とする。また、前記増粘剤はタマリンドシードガムであることが好ましい。さらに、請求項1に記載の多層麺。前記内層の増粘剤がさらにサイリウムシードガムを含むことが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層及び外層を有する多層麺であって、
前記内層は小麦粉、グルテン、難消化性デンプン及び増粘剤を含むとともに、真空押出法によって麺帯に成形され、前記外層は小麦粉、グルテン及び増粘剤を含む多層麺。
【請求項2】
前記内層及び/又は外層の増粘剤がタマリンドシードガムである請求項1に記載の多層麺。
【請求項3】
前記内層の増粘剤がさらにサイリウムシードガムを含む請求項1又は2の記載の多層麺。
【請求項4】
前記外層の増粘剤がさらにアルギン酸エステルを含むである請求項1~3のいずれかに記載の多層麺。
【請求項5】
前記内層及び/又は外層のグルテンの一部がグリアジンを含む請求項1~4のいずれかに記載の多層麺。
【請求項6】
前記多層麺が三層麺である請求項1~5のいずれかに記載の多層麺。
【請求項7】
前記多層麺が生麺又は冷凍麺である請求項1~6のいずれかに記載の多層麺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖質の低減を目的とし、難消化性デンプンを配合した多層麺に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品を摂取した場合、余分な糖質は分解してエネルギー源となり、脂肪に変化して体内に蓄積される。このように糖質の過剰摂取は肥満の原因になる可能性が指摘されている。このため、糖質を減らした麺商品が種々開発されている。
糖質の制限をするための方法として、麺原料に難消化性澱粉を利用して糖質の消化吸収を抑制して糖質制限を行う方法が有効である。
即席麺や生麺、冷凍麺の分野においてもこのような難消化性澱粉を配合した麺線の開発が行われている。
【0003】
しかし、難消化性澱粉を麺原料として配合すると、製麺後で調理時の麺の食感についてしっかりしない(弾力や固さがない)点や粉っぽさ等の問題が生じる場合がある。また、麺線を調製する際の製麺性についての問題(つながりにくさ等)が指摘されている。
例えば、特許文献1に記載の技術は、難消化性澱粉を含む高アミローススターチに水を加えて、その粒子を膨潤化した後、小麦粉その他の材料に混合し、以下常法により製麺することにより、難消化性澱粉のざらつきを解消することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開1999-018706
【0005】
一方、このような難消化性澱粉を配合した麺線について他の製造方法も想定されるところである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者らは難消化性澱粉を配合した麺線であってかつ、弾力、コシ、つるみ等でしっかりした食感を有する麺線を製造する方法を開発することを課題とした。また、難消化性澱粉を含む麺線の配合の面のみならず、その製造方法についても組み合わせる方法も考えられるところであり、この点も含めて新しい製造方法を開発することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らの鋭意研究の結果、難消化性澱粉を配合する麺線として、当該麺線を多層構造とし、当該多層構造のうち内層に難消化性澱粉を配合するとともに、さらに当該内層及び外層に増粘剤を加える配合としつつ、前記内層については真空(減圧)押出しして、麺帯に成形した後に、外層と重ね合わせ複合、圧延することによって麺帯を調整し製麺する方法が有効であることを見出した。
すなわち、本願第一の発明は、
「内層及び外層を有する多層麺であって、
前記内層は小麦粉、グルテン、難消化性デンプン及び増粘剤を含むとともに、真空押出法によって麺帯に成形され、前記外層は小麦粉、グルテン及び増粘剤を含む多層麺。」、である。
【0008】
次に、前記内層及び/又は外層の増粘剤についてはタマリンドシードガムであることが好ましい。
すなわち、本願第二の発明は、
「前記内層及び外層の増粘剤がタマリンドシードガムである請求項1に記載の多層麺。」、である。
【0009】
次に前記内層の増粘剤がさらにサイリウムシードガムを含むことが好ましい。
すなわち、本願第三の発明は、
「前記内層の増粘剤がさらにサイリウムシードガムを含む請求項1又は2の記載の多層麺。」、である。
【0010】
次に、前記外層の増粘剤はさらにアルギン酸エステルを含むことが好ましい。
すなわち、本願第四の発明は、
「前記外層の増粘剤がさらにアルギン酸エステルを含むである請求項1~3のいずれかに記載の多層麺。」、である。
【0011】
次に、前記内層及び/又は外層のグルテンの一部がグリアジンであることが好ましい。
すなわち、本願第五の発明は、
「前記内層及び/又は外層のグルテンの一部がグリアジンを含む請求項1~4のいずれかに記載の多層麺。」である。
【0012】
次に、本願多層麺は三層麺であることが好ましい。
すなわち、本願第六の発明は、
「前記多層麺が三層麺である請求項1~5のいずれかに記載の多層麺。」、である。
【0013】
次に、本願多層麺は、生麺又は冷凍麺として好適に利用することができる。
すなわち、本願第七の発明は、
「前記多層麺が生麺又は冷凍麺である請求項1~6のいずれかに記載の多層麺。」、である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法より得られる多層麺は難消化性澱粉を高含有量で配合することができ、かつ、弾力やつるみにおいてしっかりした食感を実現することができる。また、製麺性の点においても好適である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明を実施するための形態について実施例を交えて説明する。但し、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
本願の第一の発明は、
“内層及び外層を有する多層麺であって、
前記内層は小麦粉、グルテン、難消化性デンプン及び増粘剤を含むとともに、真空押出法によって成形され、前記外層は小麦粉、グルテン及び増粘剤を含む多層麺。“、である。
以下、本発明の内容を説明する。
【0016】
─内層及び外層を有する多層麺─
本発明による多層麺の製造方法においては、内層用の麺生地と、外層用の麺生地を重ね合わせて、圧延して多層麺の生地を調整する。
例えば、内層用の麺生地と外装用の麺生地をロール間に挿入して圧力を加えながら内層と外層を密着させて一体となった麺帯とすることができる。そして、当該麺帯を必要に応じて複数の圧延機を通過させて、必要な厚みの麺帯とすることができる。
本発明においては、上下の外層の間に内層を挟んだ三層とするのが一般的であるが、これに限定されず、複数の内層を含んだタイプとしてもよい。すなわち、三層以上の四層や五層の麺であっても差し支えないことは勿論である。
【0017】
─内層の配合─
本発明のおいては、内層の配合において通常の製麺原料である小麦粉、澱粉、グルテン等を利用することできる。より具体的には、内層の製麺原料としては、小麦粉、澱粉、グルテン、卵白、卵粉、色素、カルシウム、油脂、各種フレーバ等の通常の麺原料が挙げられる。
本発明においては、これらの製麺原料において小麦粉、グルテン、難消化性澱粉と増粘剤を使用することを必須とする。
ここで、難消化性澱粉とは、食物繊維の一種であり、澱粉である一方、小腸での吸収がされにくいことのよってエネルギーになりにくく、整腸作用等もあるといわれている。本発明にいう難消化性澱粉としては、加工澱粉等の種々のタイプを利用することができる。例えば、リン酸架橋処理した加工澱粉等が挙げられるが、これに限定されるものではない。このような難消化性澱粉を利用することによって、喫食者のカロリーの取りすぎによる肥満等の問題を回避することが可能となる。
【0018】
ここで、内層における難消化性澱粉の含有量については、原料粉体(小麦粉、澱粉、増粘剤、カルシウム製剤、卵白、油脂、各種フレーバ等を含むもの)において、当該難消化性澱粉の配合割合が10重量%~70重量%程度の範囲とすることが好適である。さらに好ましくは、30重量%~60重量%である。最も好ましくは40重量%~55重量%である。
次に、内層側の増粘剤としては、種々の増粘剤を利用することが可能である。増粘剤を加えることによって難消化性澱粉を含んでいても麺の粘弾性を向上させ、成形性を向上できる等の効果を奏することができる。
【0019】
ここで内層側の増粘剤としては種々を利用することができるが、特にタマリンドシードガムが好ましい。また、本発明においては、当該タマリンドシードガムに加えてサイリウムシードガムを併用することが好ましい。サイリウムシードガムは吸水性が高く、麺に適度な弾性と粘性を付与することができる。サイリウムシードガムの原料粉体に対する配合割合は、1重量%~10重量%程度の範囲とすることが好適である。さらに好ましくは、3重量%~9重量%である。
【0020】
ここで、内層における増粘剤の含有量については、原料粉体(小麦粉、澱粉、増粘剤、カルシウム製剤、卵白、油脂、各種フレーバ等を含むもの)における当該難消化性澱粉の配合割合に応じて調整するのが好ましいが、概ね3重量%~20重量%程度の範囲とすることが好適である。さらに、好ましくは、30重量%~60重量%である。さらに好ましくは40重量%~55重量%である。
【0021】
次に、グルテンとは小麦粉等の穀物が有するタンパク質の一種を精製したものという。その成分としてグルテニンとグリアジンを有する。小麦粉、水等と混練することによって網目構造を形成して製麺性を改善し、特有の粘弾性を奏する。
ここで、内層におけるグルテンの含有量については、原料粉体における難消化性澱粉の配合割合に応じて調整するのが好ましいが、概ね5重量%~40重量%程度の範囲とすることが好適である。さらに、好ましくは、10重量%~30重量%である。尚、グルテンについてはその一部をグリアジンとすることが好ましい。すなわち、グルテンとグリアジンを4:1~1:1程度の比率とすることが好ましい。
【0022】
尚、小麦粉、グルテン、増粘剤及び難消化性澱粉以外の麺原料となる各種成分を含んでいてもよいことは勿論である。
次に、麺の調製のための練り水としては、水にかん水や食塩等の種々の原料を添加することができる。かん水については、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、各種ピロリン酸塩、各種ポリリン酸塩、各種メタリン酸塩、各種リン酸塩等を広く利用することができる。また、練り水に対しては、色素、エキス、各種食品添加物を添加して利用してもよいことは勿論である。
本発明における内層については、原料粉と練り水を混合して混練することによってドウを形成させる。
【0023】
─内層のドウの調製及び押出し成形─
内層のドウの調製においては、バッチミキサー、フロージェットミキサー、真空ミキサー等で麺の原料と練水が混練されるようにして、一つないし数個の生地塊とする。また、機械製麺の場合、そぼろ状を呈する場合が多い。
次に、これらのそぼろ状の生地を一つにまとめる必要があるが、ここでの作業を押出しという。すなわち、通常、これらのそぼろ状の生地をまとめて成形して帯状の麺生地とするが、本発明では当該押出し成形の工程を真空押出法により麺帯に成形する。ここで、真空押出法とは、真空(減圧)下において、麺帯に押出しする方法をいい、真空(減圧)下で麺帯に成形することができる手段であれば種々の方法を利用することができる。
【0024】
すなわち、本発明においては、減圧状態でこの麺帯への押出し成形の工程を行う。具体的には、そぼろ状等の生地を減圧状態でエクストルーダー等の真空押出機(麺帯機)によって麺生地を麺帯に押し出すことができる。ここで、エクストルーダーは、一般には混練後のそぼろ状等の生地をスクリュー等で圧力をかけ押出す装置をいう。また、エクストルーダーでない場合あっても、例えば減圧下においてロール間に通過させて帯状の麺生地とすること等も可能である。
【0025】
この時の真空度(減圧度)としては、概ね-200mmHg(-2.67×10Pa)以下が可能である。好ましくは、真空度が-720mmHg(-9.60×10Pa)~-200mmHg(2.67×10Pa)、さらに好ましくは、真空度が-720mmHg(-9.60×10Pa)~400mmHg(-2.67×10Pa)の減圧下で行う程度である。
このようにして、減圧下での押出し成形の工程を経ることによって、内層の麺生地を好適に調整することができる。当該麺生地を後述する外層の麺生地によって挟んでさらに圧延することよって多層構造の麺帯を調製することができる。
【0026】
─外層の配合─
本発明のおいては、外層の配合において通常の麺原料である小麦粉、澱粉、グルテン等を利用することできる。より具体的には、内層の製麺原料としては、小麦粉、澱粉、グルテン、卵白、卵粉、色素、カルシウム、油脂、各種フレーバ等が挙げられる。
本発明においては、これらの製麺原料において小麦粉、グルテン、増粘剤を使用することを必須とする。当該外層側の増粘剤としては、種々の増粘剤を利用することが可能である。増粘剤を加えることによって麺の保水性を向上できる等の効果を奏することができる。外層側の増粘剤としては種々を利用することができるが、特にタマリンドシードガムが好ましい。また、本発明においては、当該タマリンドシードガムに加えてアルギン酸エステル(アルギン酸プロピレングリコールエステル)を併用することもこの好ましい。これらの増粘剤によって麺に適度な弾性と粘性を付与することができるという効果を奏することができる。
【0027】
ここで、外層における増粘剤の含有量については、原料粉体(小麦粉、澱粉、増粘剤、カルシウム製剤、卵白、油脂、各種フレーバ等を含むもの)において、概ね2重量%~10重量%程度の範囲とすることが好適である。さらに、好ましくは、3重量%~7重量%である。
次に、外層においてもグルテンを添加する。外層におけるグルテンの含有量については特に限定されないが、原料粉体において、概ね2~10重量%程度である。さらに、3~7重量%程度が好ましい。
【0028】
尚、上述のように本発明においては、小麦粉、グルテン、増粘剤及び難消化性澱粉以外の麺原料となる各種成分を含んでいてもよいことは勿論である。
次に、麺の調製のための練り水としては、水にかん水や食塩等の種々の原料を添加することができる。さらに、当該外層については、原料粉と練り水を混合して混練することによってドウを形成させる。
【0029】
─外層のドウの調製及び押出し─
内層のドウの調製においては、バッチミキサー、フロージェットミキサー、真空ミキサー等で麺の原料と練水が混練されるようにして、一つないし数個の生地塊とする。尚、外層の混練においては真空ミキサーを利用することが好ましい。また、機械製麺の場合、そぼろ状を呈する場合が多い。尚、本発明においては当該混練時について減圧状態で実施することが好ましい。
【0030】
次に、これらのそぼろ状の生地を一つにまとめる必要があるが、ここでの作業を先に記載したように押出し成形工程により行う。
すなわち、通常、そぼろ状の生地をまとめて帯状の生地とする。外層については常圧下で行ってもよい。常圧下においてロール間に押し込み帯状の麺生地とすることが可能である。また、エクストルーダー等の押し出し機を利用してもよい。さらに、減圧下で麺生地を押し出すことも可能である。外層について押出し方法は種々の方法を利用できる。
【0031】
このようにして、押出し工程を経ることによって、外層の麺生地を麺帯に成形することができる。当該外層の麺生地によって前述した内層の麺生地を挟んでさらに圧延することよって多層構造を有する麺帯を調製することが可能となる。
【0032】
─麺線の調製─
本発明による多層麺の製造方法においては、内層用の麺生地と、外層用の麺生地を重ね合わせて、圧延して多層麺の生地を調整する。より具体的には、押出後の内層を押出後の外層で挟んで当該重ねた麺生地をロール間に挿入等して圧力を加えながら内層と外層を密着させて一体となった麺帯を調製することができる。
また、押出後の内層及び/又は外層のそれぞれについて必要に応じてロール間等に挿入して圧延した後において、当該内層や外層を重ね合わせる方法でも良いことは勿論である。
【0033】
尚、内層と外層の各層の厚みの割合については特に限定されず、食感や製麺性に応じて適宜変更することができる。具体的には、各層の厚みの比は、例えば三層であれば、外層:内層:外層の比が2:1:2(1:0.5:1)~1:5:1程度の幅広い範囲とすることが可能である。
但し、好ましくは外層:内層:外層の比が1:1:1~1:3:1程度である。
通常、圧延の工程は、得られる麺帯を複数の圧延ロール間を通過させることにより徐々に厚みを薄くする。そして、得られた薄くされた麺帯を切刃ロールによって切り出すことによって麺線群に調製する。
【0034】
そして、得られた麺線群は必要に応じて包装や加工され各種麺製品となる。
尚、当該麺線はカット後、生麺や、茹でた後の、茹で麺、蒸煮した後の蒸し麺、又はこれらの冷凍麺、或いは得られた麺線を茹でや蒸し後において熱風乾燥や油熱乾燥によって水分を減少させた即席麺として利用することもできる。
【実施例0035】
以下の本発明の試験例を記載する。しかし、本発明は以下の試験例に限定されるものではない。
(1)各構成の確認
[試験例1]
【0036】
【表1】
【0037】
表1に示す配合によって内層及び外層を製造した後、三枚合わせ及び麺線群の製造をした。以下に詳細を示す。
【0038】
(内層)
原料粉として小麦粉160gに難消化性澱500g、グルテン240g、増粘剤(タマリンドシードガムDSP五協フード&ケミカル株式会社製、商品名 グリロイド2A)100gを含む原料粉を混合した状態(1kg)に対して、全カリかんすい24g、食塩8g、色素5gを溶解した練り水460mlを加え、常圧ミキサーで4分間混練した。尚、全カリかん水の組成は炭酸カリウムである。
得られたそぼろ状の生地を-680mmHgの減圧下で真空押し出し機を用いて押出した麺帯25mmを12mmに圧延したものを内層麺帯とした。
【0039】
(外層)
一方、原料粉として小麦粉900gにグルテン50g、増粘剤(タマリンドシードガム)50gを含む原料粉を混合した状態(1kg)に対して、全カリかんすい24g、食塩8g、色素5gを溶解した練り水370mlを加え、混練した。
得られたそぼろ状の生地を常圧でロール間に押し込み、帯状の麺生地を成形した。さらに、当該押し出した麺帯を2枚重ねて圧延し、厚み約12mmの外層麺帯を完成させた。
【0040】
(三枚合わせ及び麺線群の製造)
前述の得られた内層麺帯と外層麺帯について麺帯厚が外層:内層:外層=1:2:1となるように、内層麺帯と外層麺帯(2枚)とを三枚合わせて、15分間寝かせた後、圧延を繰り返し、麺厚を1.5mmとした。当該圧延後の麺帯を20番の切刃で切出した後、28cmごとにカットして麺線群を完成させた。尚、各カット後の麺線群は1食当たり110gとした。
【0041】
(製麺性の評価)
製麺性の評価は次のように行った。内層及び外層の各麺帯及び/又は麺線群の成形性を主要観点として、麺線の切れやすさやざらつき感も考慮して評価した。評価は、最良10⇔普通5⇔悪い1の10段階で評価した。
【0042】
(麺線群の食感評価)
得られた麺線群の食感の評価は次のように行った。得られた麺線群110g/食を1500mlの沸騰水に投入し2分30秒茹で処理を行った後に、水分を切って当該麺線群の試食し、食感の評価を行った。評価は、コシ、つるみ、弾力等がしっかりしているかを評価項目として、最良10⇔普通5⇔悪い1の10段階で評価した。評価結果を表3に示す。
【0043】
[試験例2]
試験例1において、内層について増粘剤を添加せずに小麦粉を260gとした点、及び外層について増粘剤を添加せずに小麦粉を950gとした点を除いて、試験例1と同様に麺線を作製し、製麺性及び食感評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0044】
[試験例3]
試験例1において内層を真空押出しせずに常圧での押出しを行った点を除いては、試験例1と同様に麺線を作製し、製麺性及び食感評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0045】
[試験例4]
単層麺の配合とした場合の試験を行った。
【0046】
【表2】
【0047】
表2に示す配合によって内層及び外層からなる三層とはせずに、単層の状態のまま麺線を調製した。以下に詳細を示す。

(単層麺の製造)
一方、原料粉として小麦粉530gに難消化性澱粉250g、グルテン150g、増粘剤(タマリンドシードガム)70gを含む原料粉を混合した状態(1kg)に対して、全カリかんすい24g、食塩8g、色素5gを溶解した練り水370mlを加え、常圧ミキサーで4分間混練した。
得られたそぼろ状の生地を常圧でロール間に押し込み帯状の麺生地を成形した。さらに、当該押し出した麺帯を2枚重ねて圧延し、厚み約12mmの外層麺帯を完成させた。
当該麺帯につい15分間寝かせた後、圧延を繰り返し、麺厚を1.5mmとした。当該圧延後の麺帯を20番の切刃で切出した後、28cmごとにカットして麺線群を完成させた。
当該麺線の製麺性評価及び食感評価は試験例1に示したものと同様である。評価結果は表3に示す。
【0048】
─評価結果─
【0049】
【表3】
【0050】
試験例1と試験例4の比較から本発明において、難消化性澱粉を多く含む麺を作製する際には、三層のような複数層として内層に難消化性澱粉を含有させることが必要であることが分かった。
試験例1と試験例2の比較からその場合、外層と内層に増粘剤を使用することが必要であることが分かった。
試験例1と試験例3の比較から内層の押し出しにおいては真空押出しが必要であることが分かった。
【0051】
(2)内層にサイリウムシードガムを添加した場合
[試験例5]
【0052】
【表4】
【0053】
表4に示すように試験例1の配合において、内層に増粘剤において、タマリンドシードガム85gとサイリウムシードガム(三栄薬品貿易株式会社製、商品名:殺菌サイリウムハスク末)30g及びとした点を除いては試験例1と同一とした。評価結果を表5に示す。尚、サイリウムシードガムの使用のため練水の加水を460mlとした。
【0054】
[試験例6]
試験例1と同様に処理して麺線を製造し、試験例1と同様に評価した。評価結果を表5に示す。
【0055】
【表5】
【0056】
内層の増粘剤についてサイリウムシードガムを添加することで麺の食感がより改良された。
【0057】
(3)外層にアルギン酸エステルを添加した場合
[試験例7]
【0058】
【表6】
【0059】
表6に示すように試験例5の表4配合において、外層に増粘剤として、アルギン酸エステル(株式会社キミカ製、商品名:昆布酸501)を3g新たに添加し、小麦粉を897gとした点を除いては、試験例5と同様に処理し、麺線群を調製したと。評価結果を表7に示す。

[試験例8]
試験例1において、外層に増粘剤において、アルギン酸エステルを3g新たに添加し、小麦粉を897gとした点を除いては、試験例5と同様に処理し、麺線群を調製したと。評価結果を表7に示す。
【0060】
[試験例9]
試験例1と同様に処理して麺線を製造し、試験例1と同様に評価した。評価結果を表7に示す。
【0061】
【表7】
【0062】
外層の増粘剤についてアルギン酸エステルを添加することで麺の食感及び製麺性の点においてより改良された。
【0063】
(4)グルテンの一部にグリアジンに使用した場合
[試験例10]
【0064】
【表8】
【0065】
表8に示すように試験例7の表6配合において、外層においてグリアジン(アマサ化成株式会社製、商品名:グリアA)を25g加え、グルテンを25gとし、内層においてグリアジンを120g加え、グルテンを120gとした点を除いては試験例7と同一とした。評価結果を表9に示す。
【0066】
[試験例11]
試験例1において、外層においてグリアジンを25g加え、グルテンを25gとし、内層においてグリアジンを120g加え、グルテンを120gとした点を除いては試験例1と同一とした。評価結果を表9に示す。
【0067】
[試験例12]
試験例1と同様に処理して麺線を製造し、試験例1と同様に評価した。評価結果を表9に示す。
【0068】
【表9】
【0069】
グルテンの一部をグリアジンにすることで、麺の食感及び製麺性ともにより向上した。