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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138798
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】ワイヤーハーネスおよび接地構造体
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/655 20060101AFI20220915BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H01R13/655
H01B7/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038884
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】石橋 慎一
(72)【発明者】
【氏名】井上 郁哉
(72)【発明者】
【氏名】榊 直哉
(72)【発明者】
【氏名】大崎 祥司
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 正則
(72)【発明者】
【氏名】三吉 隆宜
【テーマコード(参考)】
5E021
5G309
【Fターム(参考)】
5E021FB11
5E021FB20
5E021FC05
5E021FC21
5E021LA21
5G309AA11
(57)【要約】
【課題】ワイヤーハーネスの編組線の先端側付近において、変換電線を物理的にも電気的にも確実に接続すること。
【解決手段】編組線3及び接地回路に接続される変換電線5とが備えられ、編組線3の先端3b付近に、変換電線5を編組線3の外側に装着するリング体16が設けられ、変換電線5における、リング体16より先端側を基端側に向けて折り返した第2折り返し部分55は、リング体16と、リング体16より先端側を基端側に向けてリング体16の外側に折り返した第1折り返し部分35との間に配置されるとともに、第2折り返し部分55と対向する第2対向部分56は、第1折り返し部分35と対向する第1対向部分36と、リング体16との間に配置される構成とした。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する管状体と、該管状体の端部に電気的に接続される第1可撓性導電部材と、前記第1可撓性導電部材及び接地回路に接続される第2可撓性導電部材と、前記管状体に挿通されるとともに、前記第1可撓性導電部材に挿通される電線とが備えられたワイヤーハーネスであって、
前記第1可撓性導電部材の先端付近に、前記第2可撓性導電部材を前記第1可撓性導電部材の外側に装着するリング体が設けられ、
前記第1可撓性導電部材における、前記リング体より先端側を基端側に向けて前記リング体の外側に折り返した部分を、第1折り返し部分とするとともに、前記第1可撓性導電部材における、前記第1折り返し部分と対向する部分を、第1対向部分とし、
前記第1折り返し部分と前記第1対向部分との間に配置された前記第2可撓性導電部材における、前記リング体より先端側を基端側に向けて折り返した部分を、第2折り返し部分とするとともに、前記第2可撓性導電部材における、前記第2折り返し部分と対向する部分を、第2対向部分とし、
前記第1対向部分と前記リング体との間、および前記リング体と前記第1折り返し部分との間のうち、一方の間に、前記第2折り返し部分が配置されるとともに、他方の間に、前記第2対向部分が配置された
ワイヤーハーネス。
【請求項2】
前記第2対向部分は、前記第1対向部分と前記リング体との間に配置されるとともに、前記第2折り返し部分は、前記リング体と前記第1折り返し部分との間に配置された
請求項1に記載のワイヤーハーネス。
【請求項3】
前記第2折り返し部分は、前記第1対向部分と前記リング体との間に配置されるとともに、前記第2対向部分は、前記リング体と前記第1折り返し部分との間に配置された
請求項1に記載のワイヤーハーネス。
【請求項4】
前記第2可撓性導電部材は、導体を絶縁被覆で被覆した被覆電線であり、
前記被覆電線における、前記第2折り返し部分および前記第2対向部分は、前記絶縁被覆から露出する露出導体である
請求項1乃至請求項3のうちいずれかに記載のワイヤーハーネス。
【請求項5】
前記第1折り返し部分の外側に外嵌する外嵌部材が設けられた
請求項1乃至請求項4のうちいずれかに記載のワイヤーハーネス。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうちいずれかに記載のワイヤーハーネスが備えられ、
前記第2可撓性導電部材が接地回路に接続された
接地構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、導電性および可撓性を有する筒状の第1可撓性導電部材と、第1可撓性導電部材に覆われる電線と、導電性および可撓性を有するとともに、第1可撓性導電部材及び接地回路に接続される第2可撓性導電部材とが備えられたワイヤーハーネス、およびワイヤーハーネスにおける第2可撓性導電部材が接地回路に接続された接地構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に配索されるワイヤーハーネスは、複数の電線を束にしてなり、これら電線は、導電性を有する管状体(シールドパイプ)に挿通されるとともに、その端部から延びる部分が第1可撓性導電部材で覆われたシールド電線として構成されることがある。
【0003】
シールド電線は、第1可撓性導電部材によるシールド効果を高めるために、第1可撓性導電部材の末端部に、接地回路から延びる接地線(アース線)等の第2可撓性導電部材を接続することが知られており、このような接続構造に関して、従来より特許文献1に例示される様々な文献が提案されている。
【0004】
特許文献1には、シールド電線の編組線の先端付近において、外側に装着され、編組線の先端側を折り返した部分によって覆われる第一リング部材と、編組線の先端側を折り返した部分に対して外側に装着される第二リング部材とを備えている。
【0005】
第一リング部材は、接地線の導体を嵌め込み可能に周方向の一部を切り欠いた切り欠き部が電線軸方向に延在方向に形成されている。第二リング部材は、第一リング部材に装着した状態において、切り欠き部の間隔を狭める形状に形成されている。
【0006】
前記構成によれば、第一リング部材および第二リング部材により、接地線における導体の編組線に対する接触位置と、編組線自体の保持位置とをシールド電線の周方向において異ならせることで、接地線の導体の接触および編組線自体の保持力に係る安定性の両立を図っている。
【0007】
しかしながら、特許文献1の接続構造のように、前記接地線の導体を、第一リング部材の切り欠き部に嵌め込んだ状態で編組線に沿わせるように配置する構成においては、例えば、第一リング部材に切り欠き部を設けずに、第一リング部材の外壁に前記接地線の導体を配置する場合と比して、第二リング部材による、前記接地線の導体の保持力が弱まるおそれがある。
そうすると、前記接地線の導体は、第二リング部材から抜け出るなどして脱落することが懸念される。
【0008】
また、特許文献1の接続構造においては、前記接地線の導体が、編組線の周方向の一部(切り欠き部に相当する部位)においてのみ該編組線に接触する構成であるため、当該部位の編組線が解れるなどして隙間が生じた場合は、前記接地線の導体と編組線との接触面積を十分に確保できないことも懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011-253776号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ワイヤーハーネスの前記第1可撓性導電部材の先端側付近において、第2可撓性導電部材を物理的にも電気的にも確実に接続することができるワイヤーハーネスおよび接地構造体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明のワイヤーハーネスは、導電性を有する管状体と、該管状体の端部に電気的に接続される第1可撓性導電部材と、前記第1可撓性導電部材及び接地回路に接続される第2可撓性導電部材と、前記管状体に挿通されるとともに、前記第1可撓性導電部材に挿通される電線とが備えられたワイヤーハーネスであって、前記第1可撓性導電部材の先端付近に、前記第2可撓性導電部材を前記第1可撓性導電部材の外側に装着するリング体が設けられ、前記第1可撓性導電部材における、前記リング体より先端側を基端側に向けて前記リング体の外側に折り返した部分を、第1折り返し部分とするとともに、前記第1可撓性導電部材における、前記第1折り返し部分と対向する部分を、第1対向部分とし、前記第1折り返し部分と前記第1対向部分との間に配置された前記第2可撓性導電部材における、前記リング体より先端側を基端側に向けて折り返した部分を、第2折り返し部分とするとともに、前記第2可撓性導電部材における、前記第2折り返し部分と対向する部分を、第2対向部分とし、前記第1対向部分と前記リング体との間、および前記リング体と前記第1折り返し部分との間のうち、一方の間に、前記第2折り返し部分が配置されるとともに、他方の間に、前記第2対向部分が配置されたことを特徴とする。
【0012】
前記構成によれば、前記第1可撓性導電部材の先端側付近において、第2可撓性導電部材を物理的にも電気的にも確実に接続することができる。
【0013】
詳しくは、前記構成によれば、前記第1可撓性導電部材における、第1折り返し部分と第1対向部分とによって、前記第2可撓性導電部材における、前記第2折り返し部分と第2対向部分との双方が覆われた状態で配置することができる。
【0014】
これにより、前記第2可撓性導電部材が前記第1可撓性導電部材に対して電気的に接触する部位が増大し、前記第1可撓性導電部材と前記第2可撓性導電部材との導通性を確保することができる。
【0015】
また、前記構成によれば、前記第2可撓性導電部材を前記第1可撓性導電部材の側へ前記リング体によって外側から装着するに際して、リング体と第1対向部分とで前記第2可撓性導電部材を挟み込んだ状態で配置することができるため、第2可撓性導電部材が前記第1可撓性導電部材から外れないように前記リング体によってしっかりと保持することができる。
【0016】
これにより、前記管状体および前記第1可撓性導電部材に挿通する前記電線を、安定して電磁シールドすることができる。
【0017】
ここで、前記リング体は、例えば、樹脂、ゴム等、材質は限定しないが、導電性を有する部材であることが好ましく、中でも金属製であることが経年劣化し難い点で好ましい。
【0018】
また、前記電線は、単数でも複数でもよく、複数の場合、前記管状体および前記第1可撓性導電部材によって囲繞された状態でばらけることなく配索することができる。
【0019】
この発明の態様として、前記第2対向部分は、前記第1対向部分と前記リング体との間に配置されるとともに、前記第2折り返し部分は、前記リング体と前記第1折り返し部分との間に配置された構成としてもよい。
【0020】
前記構成によれば、前記第1可撓性導電部材と前記第2可撓性導電部材との各先端側付近は、互いの先端側および基端側が同一方向を向くように配置した状態で先端側を基端側へ折り返すことができる。このため、前記第1可撓性導電部材と前記第2可撓性導電部材とをまとめて容易に折り返すことができる。すなわち、第1折り返し部分と第2折り返し部分を容易に形成することができる。
【0021】
従って、前記構成によれば、リング体を介して第2可撓性導電部材を前記第1可撓性導電部材の先端部付近に保持可能な構成を容易に形成することができる。
【0022】
この発明の態様として、前記第2折り返し部分は、前記第1対向部分と前記リング体との間に配置されるとともに、前記第2対向部分は、前記リング体と前記第1折り返し部分との間に配置された構成としてもよい。
【0023】
前記構成によれば、上述したように、前記第1可撓性導電部材と前記第2可撓性導電部材との導通性が向上することに加え、前記第1対向部分と前記リング体との間に配置されている前記第2折り返し部分は、前記第2対向部分に対して折り返された状態から直線状に復元しようとする力(復元力)が作用するため、この復元力を利用して第2折り返し部分を、第1対向部分の側へ押し付けることができる。
【0024】
これにより、前記第2可撓性導電部材(前記第2対向部分)に基端側への引張り力が作用した際に、前記第2折り返し部分が第1対向部分とリング体との間から抜け難くすることができる。
【0025】
この発明の態様として、前記第2可撓性導電部材は、導体を絶縁被覆で被覆した被覆電線であり、前記被覆電線における、前記第2折り返し部分および前記第2対向部分は、前記絶縁被覆から露出する露出導体である。
【0026】
前記構成によれば、前記被覆電線の露出導体が、前記第1可撓性導電部材における第1折り返し部分と第1対向部分とによって覆われた状態で配置されるため、露出導体と第1可撓性導電部材とにおける、より安定した導通状態を確保することができる。
【0027】
この発明の態様として、前記第1折り返し部分の外側に外嵌する外嵌部材が設けられた構成としてもよい。
【0028】
前記構成によれば、前記外嵌部材と前記リング体とによって、これら外嵌部材とリング体との間に介在する前記第1折り返し部分と前記第2可撓性導電部材とを挟み込むように保持することができる。
【0029】
これにより、前記第1折り返し部分と前記第2可撓性導電部材とは、電線の太さの影響を受けることなく前記外嵌部材と前記リング体とによって、しっかりと保持される。
【0030】
従って、前記第1可撓性導電部材の先端側付近からの前記第2可撓性導電部材の脱落をより一層防止しながら前記第1折り返し部分と前記第2可撓性導電部材との電気的な接続状態をより確実に確保することができる。
【0031】
また、この発明は、上述したワイヤーハーネスが備えられ、前記第2可撓性導電部材が接地回路に接続された接地構造体であることを特徴とする。
【0032】
前記構成によれば、ワイヤーハーネスの前記第1可撓性導電部材の先端側付近において、第2可撓性導電部材を物理的にも電気的にも確実に接続することができる。
【0033】
これにより、前記管状体および前記第1可撓性導電部材と、接地回路とを、前記第2可撓性導電部材を介して電気的に接続でき、前記管状体および前記第1可撓性導電部材によって、内部に挿通された電線の電磁シールド性を確保することができる。
【発明の効果】
【0034】
前記構成によれば、ワイヤーハーネスの前記第1可撓性導電部材の先端側付近において、第2可撓性導電部材を物理的にも電気的にも確実に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本実施形態のワイヤーハーネスの要部を一部断面により示した側面図。
図2図1の要部を一部断面で示した図1の要部拡大図。
図3図2のA-A線矢視拡大断面図。
図4図3のB-B線矢視拡大断面を模式的に示す断面図。
図5】本実施形態のワイヤーハーネスに備えた編組線の先端付近に変換電線を接続する手順を図1の要部拡大部分に基づいて示した説明図。
図6】変形例1のワイヤーハーネスの要部を図1に対応して示す側面図。
図7図6の要部を一部断面で示した図6の要部拡大図。
図8図7のA’-A’線矢視拡大断面図。
図9図8のB’-B’線矢視拡大断面を模式的に示す断面図。
図10】変形例1のワイヤーハーネスに備えた編組線の先端付近に変換電線を接続する手順を図6の要部拡大部分に基づいて示した説明図。
図11】(a)は変形例2のワイヤーハーネスの要部を示す図1対応図、(b)は変形例3のワイヤーハーネスの要部を示す図1対応図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1に示すように、本実施形態のワイヤーハーネス1は、管状体2と、第1可撓性導電部材としての編組線3と、複数の電線4と、第2可撓性導電部材としての変換電線5とが備えられている。
【0037】
管状体2は、内部に電線4(当例では2本の電線4)を挿通できる程度の内径を有するアルミニウム製の円筒状パイプであり、電線4を飛び石等から保護するとともに配索経路に沿って保持可能な所定の剛性を有している。
図1に示すように、管状体2は、該管状体2の両端部を除く略全体が絶縁材料で形成された(すなわち、導電性を有しない)絶縁部材7で覆われている。また、図示省略するが管状体2の両端部のうち、編組線3が配置される側と反対側の一端部は、車体側の接地回路に接地されている。但し、管状体2の一端部は、本実施形態のように接地回路に接地されていることが好ましいが、接地されていない構成であってもよい。また、管状体2の両端部以外が接地されていてもよい。
【0038】
なお、本実施形態において、管状体2はアルミニウム製であるが、導電性を有していれば、アルミニウムに特に限定せず、鉄や銅、ステンレスなど配置箇所に応じた金属種を適宜選択してもよい。また、管状体2は、導電性を有する材料であれば、例えば、黒鉛など金属以外の材料を備えた構成としてもよい。
【0039】
編組線3は、錫メッキが施された銅製の素線、すなわち、錫メッキ銅線を編んで形成した、可撓性を有する円筒状の編組部材であり、一端部3a(管状体2を有する側の端部)と他端部3b(管状体2を有する側と反対側の端部)とが設けられている。
なお、編組線3は、本実施形態のように錫メッキ銅線を編んで形成した編組部材に限らず、メッキを施していないもの、或いは、アルミニウム(すなわち、アルミ素線を編組して形成したアルミ編組)等他の金属種であってもよい。
【0040】
なお、以下の説明において、図中矢印Xは、編組線3の軸方向、矢印Yは、編組線3の径方向、矢印Zは、編組線3の周方向を示すものとする。
【0041】
図1に示すように、編組線3は、管状体2に対して直列に配置され、一端部3aが管状体2の他端部2bと電気的に接続されている。本実施形態においては、図1中の一部断面にて示すように、筒状の編組線3の一端部3aに、管状体2の他端部2bを該編組線3の開口部32aを通じて挿通し、該挿通部分をバンド等の固定部材6によって編組線3の外側から加締める等により、編組線3の一端部3aは、管状体2の他端部2bを覆った状態で該管状体2の他端部2bに固定されている。
【0042】
なお、図示省略するが、ワイヤーハーネス1は、上述した絶縁部材7によって管状体2の略全体を覆う構成のみならず、絶縁部材7を備えずに構成してもよい。
【0043】
図2図3に示すように、編組線3は、他端部3b側(管状体2を有する側と反対側の端部)において、開口部32bを有している。
【0044】
図1に示すように、2本(一対の)の電線4は、互いの間隔が長手方向に沿って略一定になるように、すなわち略並列(平行)に配置されている。これら2本の電線4は、管状体2および編組線3によって一括して包囲されている。本実施形態において2本の電線4は構造および大きさが同じであるため、特に区別する場合と除いて一方の電線4に基づいて説明する。
電線4は、電圧・大電流に対応可能な高電圧電線であるとともに、管状体2および編組線3に挿通されている。
【0045】
図2図3に示すように、電線4は、導電性を有する複数の芯線を束ねて構成された導体部11と、該導体部11の外周全体を覆う絶縁性を有する絶縁被覆部12とで構成されている。
【0046】
また、電線4は、編組線3に対して、管状体2からの延出部分から先端側(すなわち、他端側部分)まで挿通され、先端部およびその付近のみが、該編組線3の他端部3bの側に形成された開口部32bを通じて該編組線3から引き出されている。
【0047】
図2に示すように、開口部32bを通じて編組線3から引き出された電線4の先端部(管状体2を有する側と反対側の端部)には、端子金具8が接続されている。
【0048】
図2に示すように、端子金具8は、導電性を有する金属製の丸端子であって、車両に搭載される各種機器に接続される車体側接続部81と、電線4の末端部に接続する電線接続部82とを備えている。
【0049】
車体側接続部81は、ボルトを挿通する貫通穴81aを正面視で中央に有する円形の平板状に形成されている。そして、端子金具8は、車体側に設けられた図示省略する所定の端子取付け部に、車体側接続部81がボルト等を用いて締結される。
【0050】
なお、端子金具8の車体側接続部81は、接続対象となる箇所にボルト等を用いて接続する構成に限らず、図示省略するが、接続対象となる箇所から突出するスタットボルトを貫通穴81aに挿通させ、ナット締めにより、接続対象となる箇所に対して電気的に接続する構成としてもよい。
【0051】
電線接続部82は、バレル片82aを有する、いわゆるオープンバレルであり、電線4の先端部において、絶縁被覆部12が剥がされて露出した導体部11に加締め付けられて接続(圧着)されている。
【0052】
図3に示すように、変換電線5は、接地用被覆電線(アース電線)であって、上述した電線4よりも小径である以外は、上述した電線4と同様に導体部51と絶縁被覆部52とを有する構成としている。
【0053】
変換電線5は、他端部5b付近において、変換電線5の先端(自由端)から一端側(基部側)へ絶縁被覆部52が剥がされて導体部51が露出されている。
【0054】
図2図4に示すように、変換電線5の他端部5bは、編組線3の他端部3b付近に対して2本のリング体15,16を用いて接続している。
すなわち、変換電線5は、編組線3の他端部3b付近において管状体2および編組線3から枝分かれするように延出され(図1参照)、図示省略するが一端部側に接続した端子金具を介して車体側に備えられた車体フレーム等の接地回路(図示省略)にボルト等で締結されている。
【0055】
これにより、図1に示すように、ワイヤーハーネス1における編組線3が変換電線5を介して接地回路に電気的に接続された接地構造体10を構成することができる。
【0056】
また、本実施形態の接地構造体10において、例えば上述したように、管状体2の一端部が、図示省略するが車体側の接地回路に接地されるとともに、編組線3の他端部3bが、変換電線5を介して車体側の接地回路に接地される。このため、管状体2および編組線3は、全体として長尺な電磁シールド部をなし、電線4から放射される電磁波および外部からの電磁波を遮蔽する。
【0057】
なお、図1に示すように、編組線3の他端部3b付近に接続される変換電線5は、該他端部3b付近に対して一端側(図1中の左側)に設けられた、車体側の接地回路(図示省略)に向けて配索されているが、この構成に限定せず、図示省略するが、他端部3b付近に対して、さらに他端側(図1中の右側)に設けられた、車体側の接地回路に向けて配索された構成としてもよい。
【0058】
図2図4に示すように、上述した2本のリング体15,16のうち、一方のリング体15は、編組線3の他端部3b側付近において、編組線3の外側に配置される外嵌リング15(加締めリング)であるとともに、他方のリング体16は、外嵌リング15よりも径方向Yの内側に配置可能に内周面および外周面が小径に形成されたインナーリング16である。
【0059】
これら2本のリング体15,16は、図2図3に示すように、互いに同一の軸方向X長さを有して形成されている。さらに、2本のリング体15,16は、図4に示すように、何れも軸方向Xの直交断面における内面および外面が正円形状となるリング状に形成されている。
【0060】
さらにまた、図2図3に示すように、2本のリング体15,16は、何れも周方向Zの直交断面が、径方向Yの長さよりも軸方向X(長手方向)の長さが長い倒位の長方形状に形成されるとともに、図4に示すように、全周に亘って同じ板厚(径方向Y長さ)を有して形成されている。なお、2本のリング体15,16は、何れも周方向Zの直交断面における4つの角部が何れもR形状、或いは面取り形状で形成されている(図2図3参照)。
【0061】
また、2本のリング体15,16は、何れもアルミニウム製である。
但し、2本のリング体15,16は、アルミニウムに特に限定せず、鉄や銅、ステンレスなど他の金属種であってもよく、黒鉛など金属以外の材料を備えた、金属以外の導電性材料を採用してよい。
【0062】
或いは、2本のリング体15,16は、導電性材料以外にも、樹脂等やゴム等の絶縁材料を採用してもよい。
但し、2本のリング体15,16は、アルミニウム等の金属材料で形成することで、導電性を有することに加えて、樹脂で形成する場合と比して経年劣化し難い点で好ましい。また、2本のリング体15,16は、互いに異なる材質で形成してもよい。
【0063】
続いて、編組線3の他端部3b側付近に対する、変換電線5の他端部5bの接合構造1Aについて、図2図4を用いて説明する。
図2図3に示すように、編組線3は、他端部3b付近(開口部32bの周端)において、先端(自由端)が全周に亘って一端側に向けて外側に折り返して重複編組線34が形成されている。
【0064】
具体的には、編組線3の他端部3b付近(開口部32bの周端)に形成される重複編組線34は、第1折り返し部分35と第1対向部分36と第1折り返し起点部分37とで形成されている。
【0065】
第1折り返し部分35は、全周に亘って一端側へ向けて外側に折り返された部分であり、第1対向部分36は、第1折り返し部分35に対して径方向Yの内側で対向である。そして、第1折り返し起点部分37は、インナーリング16による第1折り返し部分35の折り返し起点となり、第1折り返し部分35の他端部と第1対向部分36の他端部との間に位置する。
【0066】
上述した重複編組線34は、編組線3の他端部3b付近において、第1折り返し部分35と第1対向部分36とが径方向Yにおいて互いに重なり合って形成される。
【0067】
このように、編組線3の他端部3b付近を折り重ね合わせた重複編組線34は、編組線3の他の箇所よりも剛性が高く構成されている。
なお、本実施形態では、重複編組34は、編組線3の他端部3bを一度だけ折り返すことで、編組線3の他端部3b付近が二重に重ね合わされているが、編組線3の他端部3bを複数回折り返して重ね合わせても構わない。これにより、重複編組34の剛性をさらに向上させることができる。
【0068】
編組線3における重複編組34の内部、すなわち第1折り返し部分35と第1対向部分36との間には、変換電線5の他端部5b付近とインナーリング16とが介在している。
【0069】
変換電線5の他端部5b付近は、編組線3の折り返し前の他端部3b付近に対して電線4の軸方向Xに沿って外側から配置され、その状態で先端(自由端)が、編組線3の先端(自由端)と一体に一端側に向けて外側に折り返されている。
【0070】
これにより、図2図3に示すように、編組線3における重複編組34の内部において、変換電線5の他端部3b付近は、第2折り返し部分55と第2対向部分56と第2折り返し起点部分57とで形成される。
第2折り返し部分55は、一端側へ向けて外側に折り返された部分であり、第2対向部分56は、第2折り返し部分55に対して対向する部分である。そして、第2折り返し起点部分57は、インナーリング16による第2折り返し部分55の折り返し起点となり、第2折り返し部分55の他端部と第2対向部分56の他端部との間に位置する。
【0071】
変換電線5における、絶縁被覆部52より先端側(他端側)は、導体部51が露出する露出導体51aである。そして、少なくとも上述した第2折り返し部分55、第2対向部分56および第2折り返し起点部分57は、これらの全体に亘って露出導体51aとして形成されている。
【0072】
図2図4に示すように、重複編組34における他端側部位34bの内部においては、インナーリング16が配置されている。インナーリング16は、変換電線5の第2折り返し部分55と第2対向部分56との間に介在している。インナーリング16は、図4に示すように、2本の電線4と編組線3の第1対向部分36と変換電線5の第2対向部分56を嵌挿可能な内径を有している。
【0073】
具体的に、図2図4に示すように、変換電線5の第2対向部分56は、第1対向部分36とインナーリング16との間において、これら第1対向部分36とインナーリング16とに当接された状態で配置される。第2折り返し部分55は、インナーリング16と第1折り返し部分35との間において、これらインナーリング16と第1折り返し部分35とに当接された状態で配置される。さらに、図2図3に示すように、変換電線5の第2折り返し起点部分57は、インナーリング16と編組線3の第1折り返し起点部分37との間において、これらインナーリング16と第1折り返し起点部分37とに当接された状態で配置される。
【0074】
一方、図2図3に示すように、重複編組34における一端側部位34aの内部においては、インナーリング16は配置されておらず、第2折り返し部分55と第2対向部分56とが周方向Zにおいて互いに並列配置した状態で対向している。
【0075】
そして、図3に示すように、重複編組34における一端側部位34aの内部においては、第2折り返し部分55と第2対向部分56とが、編組線3の第1折り返し部分35と第1対向部分36との間において、これら第1折り返し部分35と第1対向部分36の双方に当接した状態で配置されている。
【0076】
また、外嵌リング15は、重複編組34における他端側部位34bにおいて外側から装着(外嵌)されている。すなわち、外嵌リング15は、重複編組34の軸方向Xにおける、インナーリング16と一致する箇所に、互いに同心状に装着されている。
【0077】
これにより、外嵌リング15とインナーリング16とで第1折り返し部分35と第2折り返し部分55とを挟み込むように保持することができる。すなわち、外嵌リング15によって、第1折り返し部分35と第2折り返し部分55とは、インナーリング16の側へ加締められる。
【0078】
続いて、編組線3の他端部3b付近に、変換電線5の他端部5b付近を接合する手順の一例について主に図5(a)(b)(c)を用いて説明する。
図5(a)に示すように、作業者は、変換電線5の他端部5b付近を、編組線3の他端部3b側付近に外側から配置する。このとき、変換電線5の他端部5b付近は、先端が他端側を向くように(すなわち、編組線3の先端と同一方向を向くように)電線4の軸方向Xに沿って配置される。
【0079】
さらに、図5(b)に示すように、作業者は、編組線3の他端部3b付近(開口部32bの周端)および変換電線5の他端部5b付近に、インナーリング16を外側に装着する。これにより、変換電線5の他端部5b付近は、編組線3の他端部3b付近とインナーリング16とに挟み込まれた状態となるように、編組線3の他端部3b付近に対して外側からインナーリング16によって装着される。
【0080】
さらにまた、図5(c)に示すように、作業者は、編組線3の他端部3b付近(開口部32bの周端)における、インナーリング16よりも他端側(先端側)に相当する部位を、インナーリング16を折り返し起点として全周に亘って一端側に向けて外側に変換電線5の他端側ごと折り返す。
【0081】
具体的には、作業者は、変換電線5の他端部5b付近における、インナーリング16よりも他端側(先端側)に相当する部位についても、インナーリング16を折り返し起点として一端側に向けて外側に編組線3の他端部3b付近と一体に折り返す。
【0082】
これにより、変換電線5の他端部5b付近は、編組線3の他端部3b付近に覆われた状態となる(図5(c)参照)。すなわち、変換電線5の他端部5b付近には、重複編組34が形成され、上述したように、変換電線5の他端部5b付近およびインナーリング16は、重複編組34の内部に配置された状態となる。
【0083】
さらに、変換電線5の他端部5b付近がインナーリング16を折り返し起点として上述したように折り返されることにより、重複編組34の内部において、変換電線5の他端部5b付近は、インナーリング16に対して他端側から密着するように配置される(図3参照)。
【0084】
また、上述したように、変換電線5の他端部5b付近を折り返す際には、作業者は、変換電線5の第2折り返し部分55については、重複編組34の一端側部位34aの内部において、第2対向部分56に対して周方向Zに隣接した状態となるようにずらして配置することがこの好ましい(図2参照)。
【0085】
これにより、図3に示すように、第2折り返し部分55と第2対向部分56との夫々が、第1折り返し部分35と第1対向部分36との間において、これら35,36に当接した状態に配置でき、結果として、編組線3と変換電線5との導電性をより確保できる。
【0086】
最後に作業者は、重複編組34の他端側部位34bに対して外嵌リング15を外側から装着(外嵌)する(図1図4参照)。これより、第1折り返し部分35と第2折り返し部分55とが、2本のリング体15,16によって両側から挟み込まれた状態で変換電線5の他端部5b付近は、編組線3の他端部3b付近に接続される。
【0087】
図1に示すように、上述した本実施形態のワイヤーハーネス1は、導電性を有する管状体2と、該管状体2の他端部2b(端部)に電気的に接続される編組線3(第1可撓性導電部材)と、編組線3及び接地回路に接続される変換電線5(第2可撓性導電部材)と、管状体2に挿通されるとともに、編組線3に挿通される電線4とが備えられたワイヤーハーネスであって、編組線3の他端部3b付近(先端付近)に、変換電線5を編組線3の外側に装着するインナーリング16(リング体)(図2図4参照)が設けられ、図2図4に示すように、編組線3における、インナーリング16より他端側(先端側)を一端側(基端側)に向けてインナーリング16の外側に折り返した部分を、第1折り返し部分35とするとともに、編組線3における、第1折り返し部分35と対向する部分を、第1対向部分36とし、第1折り返し部分35と第1対向部分36との間に配置された変換電線5における、インナーリング16より他端側(先端側)を一端側(基端側)に向けて折り返した部分を、第2折り返し部分55とするとともに、変換電線5における、第2折り返し部分55と対向する部分を、第2対向部分56とし、図3図4に示すように、第2対向部分56は、第1対向部分36とインナーリング16との間に配置されるとともに、第2折り返し部分55は、インナーリング16と第1折り返し部分35との間に配置された構成としている。
【0088】
前記構成によれば、編組線3の他端部3b側付近(先端側付近)において、変換電線5を物理的にも電気的にも確実に接続することができる。
【0089】
詳しくは、前記構成によれば、編組線3における、第1折り返し部分35と第1対向部分36とによって、変換電線5における、第2折り返し部分55と第2対向部分56との双方が覆われた状態で配置することができる。
【0090】
すなわち、編組線3と変換電線5との各折り返されていない部分(第1対向部分36と第2対向部分56)のみならず、編組線3と変換電線5との各折り返された部分(第1折り返し部分35と第2折り返し部分55)についても互いに接触した状態とすることができる。
【0091】
これにより、例えば、編組線3と変換電線5との各折り返されていない部分のみが互いに接触する場合と比して変換電線5が編組線3に対して電気的に接触する部位が増大し、編組線3と変換電線5との導通性を確保することができる。
【0092】
従って、編組線3の他端部3b側付近(先端側付近)において、変換電線5を電気的に確実に接続することができ、ワイヤーハーネス1に備えられた編組線3の電磁シールド効果を確実に得ることができる。
【0093】
また、上述したように、変換電線5を編組線3の側へインナーリング16によって外側から装着することで、インナーリング16と第1対向部分36とで変換電線5を挟み込んだ状態で配置できるため、変換電線5が編組線3から外れないようにインナーリング16によってしっかりと保持することができる。
【0094】
従って、編組線3の他端部3b付近において、変換電線5を物理的にも確実に接続することができる。
【0095】
また、本実施形態のワイヤーハーネス1は、第2対向部分56が、上述したように、第1対向部分36とインナーリング16との間に配置されることに加えて、図3図4に示すように、第2折り返し部分55が、インナーリング16と第1折り返し部分35との間に配置された構成とすることで、インナーリング16を介して変換電線5を編組線3の他端部3b付近において保持可能な構成を容易に形成することができる。
【0096】
具体的には、変換電線5を、インナーリング16を介して編組線3の他端部3b付近に保持させる際には、図5(a)に示すように、編組線3と変換電線5とを、先端側および基端側の向きが同じになるように配置し、その状態で図5(c)に示すように、他端側(先端側)を一端側(基端側)へ折り返すことができる。このため、編組線3と変換電線5とをまとめて容易に折り返すことができる。すなわち、第1折り返し部分35と第2折り返し部分55を容易に形成することができる。
【0097】
従って、前記構成によれば、インナーリング16を介して変換電線5を編組線3の他端部3b付近に保持可能な構成を容易に形成することができる。
【0098】
また、図2図3に示すように、変換電線5は、導体を絶縁被覆で被覆した被覆電線であり、被覆電線における、第2折り返し部分55および第2対向部分56は、絶縁被覆から露出する露出導体51aである。
【0099】
前記構成によれば、被覆電線の露出導体51aが、第1対向部分36とインナーリング16とで挟み込まれるとともに、編組線3における第1折り返し部分35と第1対向部分36とによって覆われた状態で配置されるため、露出導体51aと編組線3とにおける、より安定した導通状態を確保することができる。
【0100】
また、図1図4に示すように、本実施形態のワイヤーハーネス1における接合構造1Aは、第1折り返し部分35の外側に外嵌する外嵌リング15(外嵌部材)が設けられた構成としている。
【0101】
前記構成によれば、第1折り返し部分35と変換電線5(第1対向部分36)を外嵌リング15によって外側から加締める際に、これら第1折り返し部分35と変換電線5(第1対向部分36)をインナーリング16によって径内側から支持することができる。
【0102】
すなわち、外嵌リング15とインナーリング16とによって、これら外嵌リング15とインナーリング16との間に介在する第1折り返し部分35と変換電線5とを挟み込むように保持することができる。
【0103】
これにより、第1折り返し部分35と変換電線5とは、電線4の太さの影響を受けることなく外嵌リング15とインナーリング16とによって、しっかりと保持される。
【0104】
さらに、変換電線5の他端部5b付近は、編組線3の他端部3b付近と共に一端側へ折り返したうえで、その折り返し部分である第2折り返し部分55が外嵌リング15とインナーリング16とによって挟み込んだ状態で保持される。
【0105】
このため、仮に変換電線5の他端部5b付近に対して軸方向X(すなわち、変換電線5の第2対向部分56がインナーリング16と第1対向部分36との間から抜ける方向)へ引張り力が作用した場合、この引張り力が作用すればする程、変換電線5の第2折り返し起点部分57周辺をインナーリング16に密着させることができる。
【0106】
さらに、上述したように、引張り力が作用すればする程、第2折り返し部分55には、折り返し前の形状へ復元しようとする復元力(すなわち、径方向Y外側へ跳ね上がろうとする力)が作用する。
【0107】
この復元力を利用して変換電線5の第2折り返し部分55を、第1折り返し部分35を介して外嵌リング15の側へより密着させることができる。
【0108】
よって、変換電線5の他端部5b付近を例えば、折り返さずに外嵌リング15とインナーリング16とによって挟み込んだ状態で保持する場合と比して、インナーリング16や編組線3との間における、上述した引張り力に対する変換電線5の抵抗力を各段に高めることができ、結果として外嵌リング15とインナーリング16との間からの軸方向Xへ変換電線5が脱落することを確実に防ぐことができる。
【0109】
従って、編組線3の先端側付近からの変換電線5の脱落をより一層防止しながら第1折り返し部分35と変換電線5との電気的な接続状態をより確実に確保することができる。
【0110】
また、接地構造体10は、上述したワイヤーハーネス1が備えられ、該ワイヤーハーネス1に備えられた変換電線5が、車両における所定の接地回路に、取付けられている(図1参照)。
【0111】
前記構成によれば、ワイヤーハーネス1の編組線3の先端側付近において、変換電線5を物理的にも電気的にも確実に接続することができる。そして、ワイヤーハーネス1に備えられた編組線3の電磁シールド効果を得ることができる。
【0112】
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
【0113】
例えば、図6図9に示す変形例1のワイヤーハーネス1Sのように、編組線3の他端部3b側付近に対する、変換電線5の他端部5bの接合構造1SAに関して上述した実施形態の接合構造1A(図1参照)と異なる構成を採用してもよい。
以下、変形例1のワイヤーハーネス1Sについて説明するが、上述した実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0114】
図7図8に示すように、変形例1のワイヤーハーネス1Sは、変換電線5の他端部5b付近において、該変換電線5の先端(自由端)がインナーリング16を折り返し起点として径方向Yの外側から内側へ折り返された状態で延びている。
【0115】
そして、変形例1のワイヤーハーネス1Sは、第2折り返し部分55がインナーリング16に対して径方向Yの内側に配置されるとともに、第2対向部分56がインナーリング16に対して径方向Yの外側に配置される。
【0116】
具体的に、変形例1のワイヤーハーネス1Sは、変換電線5の第2折り返し部分55が、編組線3における第1対向部分36とインナーリング16との間に配置されるとともに、変換電線5の第2対向部分56が、インナーリング16と編組線3における第1折り返し部分35との間に配置された構成としている。
【0117】
上述した変形例1のワイヤーハーネス1Sにおける、編組線3の他端部3b側付近に、変換電線5の他端部5b付近を接続する手順の一例について、実施形態における上述した接続手順と異なる点を中心に主に図10(a)(b)(c)を用いて説明する。
図10(a)に示すように、作業者は、変換電線5の他端部5b付近を、編組線3の折り返し前の他端部3b側付近に外側から配置する際に、編組線3の他端部3b付近における先端(自由端)と、変換電線5の他端部5b付近における先端(自由端)とが軸方向Xにおいて逆方向を向くように配置する。すなわち、変換電線5の他端部5b付近における先端(自由端)は、一端側を向くように電線4の軸方向Xに沿って配置される。
【0118】
そして、図10(b)に示すように、作業者は、編組線3の他端部3b付近(開口部32bの周端)および変換電線5の他端部5b付近に、インナーリング16を外側から装着する。
【0119】
さらに、図10(c)に示すように、作業者は、編組線3および変換電線5における、インナーリング16よりも他端側に相当する部位を、インナーリング16を折り返し起点として一端側に向けて外側に折り返す。
【0120】
具体的に、編組線3については、他端部3b付近(開口部32bの周端)における、インナーリング16よりも他端側に相当する部位を、インナーリング16を折り返し起点として全周に亘って一端側に向けて外側に折り返される。
【0121】
一方、変換電線5については、インナーリング16よりも他端側に相当する部位、すなわち、インナーリング16よりも先端(一端側)付近を除く全体をインナーリング16を折り返し起点として一端側に向けて編組線3と一体に外側に折り返される。
【0122】
さらにその際、変換電線5の第2対向部分56については、第2折り返し部分55に対して周方向Zに隣接した状態となるようにずらして配置されている(図7図10(c)参照)。
【0123】
そして、作業者は、上述と同様に、重複編組34の他端側部位34bに対して外嵌リング15を外側から装着(外嵌)することで(図6図9参照)、編組線3の他端部3b側付近に、変換電線5の他端部5bを接合することができる。
【0124】
図6図9に示すように、上述した変形例1のワイヤーハーネス1Sは、第2折り返し部分55が、第1対向部分36とインナーリング16との間に配置されるとともに、第2対向部分56が、インナーリング16と第1折り返し部分35との間に配置された構成としている。
【0125】
また、変換電線5の他端部5b付近は、第2対向部分56が第1折り返し部分35と共に外嵌リング15とインナーリング16とに挟み込まれた状態で強固に保持されることに加えて、編組線3の他端部3b付近と共に一端側(基端側)へ折り返したうえで、折り返し部分である第2折り返し部分55がインナーリング16によって第1対向部分36(すなわち電線4)の側へ押さえ付けた状態となる。このため、仮に変換電線5の他端部5b付近に対して軸方向X(すなわち、変換電線5の第2折り返し部分55が外嵌リング15とインナーリング16との間から抜ける方向)へ引張り力が作用した場合、この引張り力が作用すればする程、変換電線5の第2折り返し起点部分57周辺をインナーリング16に密着させることができる。
【0126】
さらに、上述したように、引張り力が作用すればする程、第2折り返し部分55には、折り返し前の形状へ復元しようとする復元力(すなわち、径方向Y内側へ跳ね上がろうとする力)が作用する。
【0127】
この復元力を利用して変換電線5の第2折り返し部分55を、第1対向部分36を介して電線4の側へより密着させることができる。
【0128】
従って、変換電線5の他端部5b付近を例えば、折り返さずに外嵌リング15とインナーリング16とによって挟み込んだ状態で保持する場合と比して、インナーリング16や編組線3との間における、上述した引張り力に対する変換電線5の抵抗力を各段に高めることができ、結果として外嵌リング15とインナーリング16との間からの軸方向Xへ変換電線5が脱落することを確実に防ぐことができる。
【0129】
また、本発明の管状体は、本実施形態において、管状体2を金属製(アルミニウム製)のパイプとしているが、導電性を有していれば、特に限定されない。そのため、本発明の管状体は、他の金属種(銅など)で構成された金属製のパイプで形成してもよい。また、図11(a)に示す変形例2に係るワイヤーハーネス1Tのように、管状体として、可撓性及び導電性を有するシールドコルゲート25を備えた構成としてもよい。
【0130】
これにより、ワイヤーハーネス1Tは、上述のワイヤーハーネス1の効果に加えて、例えば電線4の一端側を湾曲したい場合に、電線4に追従してシールドコルゲート25を湾曲させることができる。このため、電線4を確実に保護しつつ、所望の配索経路に沿って電線4を配索することができる。
【0131】
なお、図示省略するが、シールドコルゲート25としては、例えば、合成樹脂製のコルゲートチューブの内周面に筒状の編組部材や金属箔が備えられた構成を採用することができる。
【0132】
また、本発明の第2可撓性導電部材は、上述した実施形態において、被覆電線としての変換電線5を採用しているが、可撓性及び導電性を有していれば、特に限定されない。
【0133】
本発明の第2可撓性導電部材は、例えば、図11(b)に示す変形例3に係るワイヤーハーネス1Uのように、金属素線を編んで形成された編組部材5Aを備えた構成としてもよい。なお、編組部材5Aの一端には車体側の接地回路に接続するための接地端子90が取り付けられている。
【0134】
具体的に、編組部材5Aとしては、銅素線を編んで形成された銅編組を採用することが好ましい。銅編組は導電性の高い銅製の銅素線を編組した構成であるため、アルミニウム製のアルミ素線を編んで形成された編組線と比べて、同じ導電性を有しながら外径を小さくすることができる。
【0135】
また、言うまでもなく変形例3に係るワイヤーハーネス1Uにおいて、管状体2の代わりに変形例2に係るワイヤーハーネス1Tにおけるシールドコルゲート25を備えた構成、すなわち、変形例2と変形例3とを組み合わせた構成を採用してもよい(図示省略)。
【0136】
また、上述した実施形態において、変換電線5の他端部5b付近は、編組線3の第1折り返し部分35によって覆われる部分の全体が露出導体51aとなるように形成されたが、これに限らず、導体部51と共に絶縁被覆部52の他端部付近についても、編組線3の第1折り返し部分35によって覆われる構成としてもよい。
【0137】
但し、上述した実施形態のように、変換電線5の他端部5b付近における、編組線3の第1折り返し部分35によって覆われる部分の全体が露出導体51aとなるように形成することにより、編組線3の第1折り返し部分35と、第1対向部分36との間に絶縁被覆部52が介在することによる隙間を排除できる。
【0138】
そして、上述した構成により、変換電線5の第2折り返し部分55および第2対向部分56は、編組線3の第1折り返し部分35と第1対向部分36とに接触する面積を増大させることができるため、結果として互いの導電性をより確保できる。
【0139】
また、第1折り返し部分35の一端部(管状体2を有する側の端部)は、編組線3の長手方向における、第1折り返し部分35に対して一端側で隣接する部分に亘って粘着テープ(図示省略)で巻き付けるなどして、第1折り返し部分35の一端部が第1対向部分36に対して外側へ浮き上がらないように固定してもよい。
このようにして第1折り返し部分35の一端部を固定することで、第1折り返し部分35の一端部が捲れたり、該一端部のアルミ素線31がさらに解れることを防止することができる。
【0140】
また、本発明の外嵌部材は、上述した外嵌リング15のように、軸方向Xの直交断面が、正円形状に限らず、例えば、楕円、長円形状、六角形等の多角形状等に形成されてもよい。或いは、本発明の外嵌部材は、リング状の部材に限らず、例えば、結束バンド(紐状又は環状のゴムを含む)、接着面を有する粘着テープ、或いは、第1折り返し部分35を挟み込んで保持可能な一対の分割体から構成されるクリップ等で形成してもよい。また、本発明の外嵌部材は、重複編組34の他端側部位34bのみならず、一端側部位34aにも延設し、第1折り返し部分35の一端部も含めた夫々の部位に応じた圧接力で圧接可能に内面が段違い形状に形成してもよい。
【0141】
なお、インナーリング16についても同様に、軸方向Xの直交断面が、正円形状に限らず、例えば、楕円、長円形状、六角形等の多角形状等に形成されてもよい。
【0142】
また、本実施形態の電線4に備えた導体部11は、銅又はその合金から成る複数の素線を束ねて銅芯線として形成されたものを採用しているが、導体部11の材料は、目的等に応じ、銅又はその合金以外の材料を採用してもよく、或いは導体部11は、表面のみ導電率の高い導体としてもよい。また、導体部11は、一本の素線から形成されたものを採用してもよい。
【0143】
また、本実施形態において、2本の電線4は、編組線3にまとめて挿通されているが、電線4ごとに編組線3を備え、個別に編組線3に挿通した構成としてもよい。さらにまた、2本の電線4は、例えば、電源ケーブルのように、一対の導体部11が互いに独立しつつも絶縁被覆部12でまとめて被覆されたものであってもよい。すなわち、編組線3は、軸方向Xの直交断面が、正円形状に限らず、例えば、楕円形状、長円形状、或いは六角形等の多角形状等に形成されてもよい。
【0144】
また、2本の電線4は、互いに撚り合されて形成されるツイストペア電線を採用してもよい。
言うまでもなく、本実施形態のワイヤーハーネス1は、2本の電線4を備えたが、本発明のワイヤーハーネス1は、2本に限らず、1本、或いは3本以上の複数本が備えられた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0145】
1,1S,1T,1U…ワイヤーハーネス
2…管状体
2b…管状体の他端部(管状体の端部)
3…編組線(第1可撓性導電部材)
3b…編組線の他端部(第1可撓性導電部材の先端)
5…変換電線(第2可撓性導電部材)
10…接地構造体
15…外嵌リング(外嵌部材)
16…インナーリング(リング体)
35…第1折り返し部分
36…第1対向部分
51…導体部(導体)
51a…露出導体
52…絶縁被覆部(絶縁被覆)
55…第2折り返し部分
56…第2対向部分
図1
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