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特開2022-138845センサを備えた測定ウェーハ、およびその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022138845
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】センサを備えた測定ウェーハ、およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/10 20060101AFI20220915BHJP
   B24B 37/10 20120101ALI20220915BHJP
   B24B 37/005 20120101ALI20220915BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B24B49/10
B24B37/10
B24B37/005 A
H01L21/304 622S
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021038953
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】加藤 良和
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB73
3C034BB92
3C034BB94
3C034CA19
3C034CA26
3C034CA30
3C034CB04
3C034CB13
3C034DD10
3C034DD18
3C158AA07
3C158AB04
3C158AB06
3C158AC02
3C158BA02
3C158BA05
3C158BA08
3C158BA09
3C158BB02
3C158BB04
3C158BB06
3C158BB08
3C158BB09
3C158BC01
3C158CB01
3C158CB10
3C158DA12
3C158EA13
3C158EB01
5F057AA20
5F057AA53
5F057BA11
5F057CA27
5F057DA03
5F057GA13
5F057GA16
5F057GA17
5F057GB01
5F057GB23
5F057GB24
5F057GB26
5F057GB34
5F057GB40
(57)【要約】
【課題】研磨中のウェーハの表面上の物理量と実質的に等価の物理量を測定することができる技術を提供する。
【解決手段】研磨装置は、研磨テーブル5および研磨ヘッド7を含む。研磨装置内の物理量を測定する本方法は、センサ112を備えた測定ウェーハ100を、研磨テーブル5上の研磨パッド2に研磨ヘッド7により押し付け、センサ112により物理量を測定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨テーブルおよび研磨ヘッドを含み、ターゲットウェーハを研磨するための研磨装置内の物理量を測定する方法であって、
センサを備えた測定ウェーハを、前記研磨テーブル上の研磨パッドに前記研磨ヘッドにより押し付け、
前記センサにより物理量を測定する、方法。
【請求項2】
前記物理量は、温度、圧力、力、加速度、音響のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記研磨パッド上に研磨液を供給しながら、かつ前記測定ウェーハを、回転する前記研磨テーブル上の前記研磨パッドに前記研磨ヘッドにより押し付けながら、前記センサにより前記物理量を測定する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記物理量の測定データに基づいて、前記研磨装置の運転異常を判定する工程をさらに含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記研磨装置の運転異常を判定する工程は、前記物理量の測定データに含まれる測定値が目標値に到達しないときに前記研磨装置の運転異常を示す警報信号を生成する工程である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記研磨装置の運転異常を判定する工程は、前記物理量の測定データが基準データから所定の許容範囲を超えて乖離しているときに前記研磨装置の運転異常を示す警報信号を生成する工程である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記基準データは、他の研磨装置で得られた物理量の測定データである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記研磨装置の立ち上げ時であって、かつ前記ターゲットウェーハを研磨する前に、前記センサにより前記物理量を測定する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
複数のターゲットウェーハを研磨した後に、前記センサにより前記物理量を測定する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記センサは、複数のセンサである、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記複数のセンサは、複数種の物理量を測定するように構成されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記測定ウェーハは研磨対象層を有しており、前記測定ウェーハの底面は前記研磨対象層から形成されている、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記研磨対象層の厚さが所定の下限値を下回った後、新たな研磨対象層を前記測定ウェーハ上に形成する工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記測定ウェーハは、2mm以下の厚さを有する、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記測定ウェーハは、前記ターゲットウェーハと同じ大きさおよび同じ形状を有する、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
研磨テーブルおよび研磨ヘッドを含み、ターゲットウェーハを研磨するための研磨装置内の物理量を測定するための測定ウェーハであって、
基盤と、
前記基盤に設置され、前記物理量を測定するように構成されたセンサを備えている、測定ウェーハ。
【請求項17】
前記センサは、温度、圧力、力、加速度、音響のうちの少なくとも1つを測定するように構成されている、請求項16に記載の測定ウェーハ。
【請求項18】
前記センサは、複数のセンサである、請求項16または17に記載の測定ウェーハ。
【請求項19】
前記複数のセンサは、複数種の物理量を測定するように構成されている、請求項18に記載の測定ウェーハ。
【請求項20】
前記測定ウェーハは研磨対象層をさらに備えており、前記測定ウェーハの底面は前記研磨対象層から形成されている、請求項16乃至19のいずれか一項に記載の測定ウェーハ。
【請求項21】
前記測定ウェーハは、2mm以下の厚さを有する、請求項16乃至20のいずれか一項に記載の測定ウェーハ。
【請求項22】
前記測定ウェーハは、前記ターゲットウェーハと同じ大きさおよび同じ形状を有する、請求項16乃至21のいずれか一項に記載の測定ウェーハ。
【請求項23】
前記センサは、露出面を有するダイヤフラムを含む、請求項16乃至22のいずれか一項に記載の測定ウェーハ。
【請求項24】
前記ダイヤフラムは、前記基盤の一部から構成されている、請求項23に記載の測定ウェーハ。
【請求項25】
前記測定ウェーハは、前記センサを覆う保護膜をさらに備えている、請求項16乃至24のいずれか一項に記載の測定ウェーハ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハを研磨するための研磨装置の管理に関し、特に研磨装置によって研磨されているウェーハの表面上の物理量を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
化学機械研磨装置(CMP装置)は、ウェーハの表面を研磨するために使用される。この化学機械研磨装置(以下単に研磨装置という)は、研磨テーブルおよび研磨ヘッドを回転させながら、研磨テーブル上の研磨パッドに研磨液(典型的にはスラリー)を供給し、さらに研磨ヘッドによりウェーハを研磨パッドの研磨面に対して押し付けるように構成されている。ウェーハは、研磨液の存在下で研磨パッドの研磨面に摺接される。ウェーハの表面は、研磨液の化学的作用と、研磨液に含まれる砥粒および/または研磨パッドの機械的作用により平坦化される。
【0003】
ウェーハの研磨レート(除去レートともいう)は、研磨装置の運転条件に依存して変わりうる。例えば、ウェーハを研磨するための研磨条件や、研磨パッドの研磨面を再生するためのドレッシング条件は、ウェーハの研磨レートに大きく影響する。研磨条件の例としては、研磨ヘッドおよび研磨テーブルの回転速度、研磨ヘッドがウェーハを研磨パッドに押し付ける力、研磨液の流量および供給位置などが挙げられる。ドレッシング条件の例としては、ドレッサの回転速度、ドレッサが研磨パッドを押し付ける力、ドレッサが研磨パッド上を移動する速度などが挙げられる。
【0004】
これらの研磨条件およびドレッシング条件を最適化するためには、研磨中のウェーハの表面状態を監視することが重要である。そこで、従来から、研磨テーブルまたは研磨パッドに埋設されたセンサにより研磨中のウェーハの表面状態を監視する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017-0133252号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、研磨テーブルまたは研磨パッドに埋設されたセンサは、ウェーハの表面を直接的に感知することはできない。さらに、センサとウェーハ表面との間には、研磨液が存在し、さらにはウェーハ研磨中にウェーハとセンサの相対位置は常に変化している。このため、従来の技術では、ウェーハの表面状態を正しく監視することが難しかった。
【0007】
そこで、本発明は、研磨中のウェーハの表面上の物理量と実質的に等価の物理量を測定することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、研磨テーブルおよび研磨ヘッドを含み、ターゲットウェーハを研磨するための研磨装置内の物理量を測定する方法であって、センサを備えた測定ウェーハを、前記研磨テーブル上の研磨パッドに前記研磨ヘッドにより押し付け、前記センサにより物理量を測定する、方法が提供される。
【0009】
一態様では、前記物理量は、温度、圧力、力、加速度、音響のうちの少なくとも1つである。
一態様では、前記研磨パッド上に研磨液を供給しながら、かつ前記測定ウェーハを、回転する前記研磨テーブル上の前記研磨パッドに前記研磨ヘッドにより押し付けながら、前記センサにより前記物理量を測定する。
一態様では、前記物理量の測定データに基づいて、前記研磨装置の運転異常を判定する工程をさらに含む。
一態様では、前記研磨装置の運転異常を判定する工程は、前記物理量の測定データに含まれる測定値が目標値に到達しないときに前記研磨装置の運転異常を示す警報信号を生成する工程である。
一態様では、前記研磨装置の運転異常を判定する工程は、前記物理量の測定データが基準データから所定の許容範囲を超えて乖離しているときに前記研磨装置の運転異常を示す警報信号を生成する工程である。
一態様では、前記基準データは、他の研磨装置で得られた物理量の測定データである。
【0010】
一態様では、前記研磨装置の立ち上げ時であって、かつターゲットウェーハを研磨する前に、前記センサにより前記物理量を測定する。
一態様では、複数のターゲットウェーハを研磨した後に、前記センサにより前記物理量を測定する。
一態様では、前記センサは、複数のセンサである。
一態様では、前記複数のセンサは、複数種の物理量を測定するように構成されている。
一態様では、前記測定ウェーハは研磨対象層を有しており、前記測定ウェーハの底面は前記研磨対象層から形成されている。
一態様では、前記方法は、前記研磨対象層の厚さが所定の下限値を下回った後、新たな研磨対象層を前記測定ウェーハ上に形成する工程をさらに含む。
一態様では、前記測定ウェーハは、2mm以下の厚さを有する。
一態様では、前記測定ウェーハは、前記ターゲットウェーハと同じ大きさおよび同じ形状を有する。
【0011】
一態様では、研磨テーブルおよび研磨ヘッドを含み、ターゲットウェーハを研磨するための研磨装置内の物理量を測定するための測定ウェーハであって、基盤と、前記基盤に設置され、前記物理量を測定するように構成されたセンサを備えている、測定ウェーハが提供される。
【0012】
一態様では、前記センサは、温度、圧力、力、加速度、音響のうちの少なくとも1つを測定するように構成されている。
一態様では、前記センサは、複数のセンサである。
一態様では、前記複数のセンサは、複数種の物理量を測定するように構成されている。
一態様では、前記測定ウェーハは研磨対象層をさらに備えており、前記測定ウェーハの底面は前記研磨対象層から形成されている。
一態様では、前記測定ウェーハは、2mm以下の厚さを有する。
一態様では、前記測定ウェーハは、前記ターゲットウェーハと同じ大きさおよび同じ形状を有する。
一態様では、前記センサは、露出面を有するダイヤフラムを含む。
一態様では、前記ダイヤフラムは、前記基盤の一部から構成されている。
一態様では、前記測定ウェーハは、前記センサを覆う保護膜をさらに備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、研磨ヘッドにより測定ウェーハを研磨パッドに押し付けながら、測定ウェーハに内蔵されたセンサは測定ウェーハの表面上の物理量(例えば温度、圧力など)を測定することができる。この物理量は、ターゲットウェーハ(例えばデバイスが形成されている製品ウェーハ)を研磨装置で研磨しているときのターゲットウェーハの表面上の物理量に実質的に相当する。したがって、センサによって得られた物理量の測定データに基づいて、研磨装置の運転状態を正確に監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】研磨装置の一実施形態を示す模式図である。
図2図1に示す研磨ヘッドの断面図である。
図3】測定ウェーハを含む監視システムの一実施形態を示す模式図である。
図4】測定ウェーハの一部を示す断面図である。
図5図5(a)および図5(b)は、センサの配置の例を示す断面図である。
図6】センサの具体的構成の一実施形態を示す模式図である。
図7】センサのより詳細な構成の一例を示す模式図である。
図8図8(a)および図8(b)は、ダイヤフラムの構成例を示す拡大断面図である。
図9】センサのより詳細な構成の他の例を示す模式図である。
図10】測定ウェーハの他の実施形態を示す断面図である。
図11】測定ウェーハのさらに他の実施形態を示す断面図である。
図12】測定ウェーハによって取得された温度の測定データの時間変化の一例を示すグラフである。
図13】測定ウェーハによって取得された温度の測定データの時間変化の他の例を示すグラフである。
図14】複数の測定ウェーハを用いて物理量を測定する一実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、研磨装置の一実施形態を示す模式図である。図1に示すように、研磨装置は、研磨面2aを有する研磨パッド2を支持する研磨テーブル5と、ウェーハWを研磨面2aに対して押し付ける研磨ヘッド7と、研磨液を研磨面2aに供給する研磨液供給ノズル8と、研磨装置の動作を制御する動作制御部47を備えている。研磨ヘッド7は、その下面にウェーハWを保持できるように構成されている。ウェーハWは、研磨対象であるターゲットウェーハである。ウェーハWは半導体デバイスの製造に使用される。ウェーハWは円形であるが、一実施形態では、研磨対象であるターゲットウェーハは角型ウェーハなどの他の形状を有してもよい。
【0016】
研磨装置は、支軸14と、支軸14の上端に連結され、研磨ヘッド7を揺動させる研磨ヘッド揺動アーム16と、研磨ヘッド揺動アーム16の自由端に回転可能に支持された研磨ヘッドシャフト18と、研磨ヘッド7をその軸心を中心に回転させる研磨ヘッド回転モータ20をさらに備えている。研磨ヘッド回転モータ20は、研磨ヘッド揺動アーム16内に配置されており、ベルトおよびプーリ等から構成されるトルク伝達機構(図示せず)を介して研磨ヘッドシャフト18に連結されている。研磨ヘッド7は、研磨ヘッドシャフト18の下端に連結されている。研磨ヘッド回転モータ20は、上記トルク伝達機構を介して研磨ヘッドシャフト18を回転させ、研磨ヘッド7は研磨ヘッドシャフト18とともに回転する。このようにして、研磨ヘッド7は、その軸心を中心として矢印で示す方向に研磨ヘッド回転モータ20により回転される。
【0017】
研磨ヘッドシャフト18は、昇降機構(図示せず)により研磨ヘッド揺動アーム16に対して相対的に上下動可能であり、この研磨ヘッドシャフト18の上下動により研磨ヘッド7が研磨ヘッド揺動アーム16に対して相対的に上下動可能となっている。
【0018】
研磨装置は、研磨パッド2および研磨テーブル5をそれらの軸心を中心に回転させるテーブル回転モータ21をさらに備えている。研磨テーブル5は、テーブル軸5aを介してテーブル回転モータ21に連結されている。研磨テーブル5および研磨パッド2は、テーブル回転モータ21によりテーブル軸5aを中心に矢印で示す方向に回転されるようになっている。研磨パッド2は、研磨テーブル5の上面に貼り付けられている。研磨パッド2の上面はウェーハWを研磨する研磨面2aを構成している。
【0019】
ウェーハWの研磨は次のようにして行われる。研磨ヘッド7および研磨テーブル5をそれぞれ回転させながら、研磨テーブル5の上方に設けられた研磨液供給ノズル8から研磨液を研磨パッド2の研磨面2a上に供給する。研磨パッド2に供給される研磨液の例としては、砥粒を含むスラリーが挙げられる。研磨パッド2はその軸心を中心に研磨テーブル5と一体に回転する。研磨ヘッド7は昇降機構(図示せず)により所定の研磨位置まで下降される。さらに、研磨ヘッド7は上記研磨位置でウェーハWを研磨パッド2の研磨面2aに押し付ける。研磨液が研磨パッド2の研磨面2a上に存在した状態で、ウェーハWは研磨パッド2の研磨面2aに摺接される。ウェーハWの表面は、研磨液の化学的作用と、研磨液に含まれる砥粒および/または研磨パッド2の機械的作用との組み合わせにより、研磨される。
【0020】
研磨装置は、研磨パッド2の研磨面2aをドレッシングするドレッサ50と、ドレッサ50が連結されるドレッサシャフト51と、ドレッサシャフト51の上端に設けられたドレッサ押圧アクチュエータとしてのエアシリンダ53と、ドレッサシャフト51を回転可能に支持するドレッサ揺動アーム55と、ドレッサ揺動アーム55が固定された支軸58と、研磨パッド2の研磨面2aにドレッシング液を供給するドレッシング液供給ノズル59をさらに備えている。
【0021】
ドレッサ50の下面はドレッシング面50aを構成し、このドレッシング面50aは砥粒(例えば、ダイヤモンド粒子)から構成されている。エアシリンダ53は、支柱56により支持された支持台57上に配置されており、これらの支柱56はドレッサ揺動アーム55に固定されている。エアシリンダ53は、ドレッサシャフト51を介してドレッサ50に連結されている。エアシリンダ53は、ドレッサシャフト51およびドレッサ50を一体に上下動させ、ドレッサ50のドレッシング面50aを所定の力で研磨パッド2の研磨面2aに押し付けるように構成されている。エアシリンダ53に代えて、サーボモータおよびボールねじ機構との組み合わせをドレッサ押圧アクチュエータに用いてもよい。
【0022】
研磨装置は、ドレッサ50をその軸心を中心に回転させるドレッサ回転モータ60をさらに備えている。このドレッサ回転モータ60は、ドレッサ揺動アーム55内に配置されており、ベルトおよびプーリ等から構成されるトルク伝達機構(図示せず)を介してドレッサシャフト51に連結されている。ドレッサ50はドレッサシャフト51の下端に連結されている。ドレッサ回転モータ60は、上記トルク伝達機構を介してドレッサシャフト51を回転させ、ドレッサ50はドレッサシャフト51とともに回転する。このようにして、ドレッサ50はその軸心を中心に矢印で示す方向にドレッサ回転モータ60により回転される。
【0023】
研磨装置は、ドレッサ50を研磨面2a上で揺動させるドレッサ揺動モータ63をさらに備えている。このドレッサ揺動モータ63は支軸58に連結されている。ドレッサ揺動アーム55は支軸58を中心として支軸58とともに旋回可能に構成されている。ドレッサ揺動モータ63は、ドレッサ揺動アーム55を支軸58を中心に時計回りおよび反時計回りに所定の角度だけ旋回させることにより、ドレッサ50は、そのドレッシング面50aを研磨パッド2の研磨面2aに押し付けながら、研磨パッド2上で研磨パッド2の半径方向に揺動する。
【0024】
本実施形態では、ドレッサ揺動アーム55は支軸58に固定され、ドレッサ揺動モータ63は、支軸58をドレッサ揺動アーム55とともに回転させるように支軸58に連結されている。一実施形態では、ドレッサ揺動モータ63は支軸58の上端に設置され、支軸58を回転させずにドレッサ揺動アーム55を旋回させるように配置されてもよい。
【0025】
研磨パッド2の研磨面2aのドレッシングは次のようにして行われる。研磨テーブル5および研磨パッド2が回転しながら、ドレッシング液供給ノズル59からドレッシング液が研磨パッド2の研磨面2a上に供給される。ドレッシング液の例としては、純水が挙げられる。ドレッサ50は、ドレッサシャフト51を中心に回転しながら、ドレッサ50のドレッシング面50aはエアシリンダ53により研磨面2aに押し付けられる。研磨面2a上にドレッシング液が存在した状態で、ドレッサ50は研磨面2aに摺接される。ドレッサ50が研磨面2aに摺接されている間、ドレッサ揺動モータ63は、ドレッサ揺動アーム55を支軸58を中心に時計回りおよび反時計回りに所定の角度だけ旋回させて、ドレッサ50を研磨パッド2の半径方向に移動させる。このようにして、ドレッサ50により研磨パッド2が削り取られ、研磨面2aがドレッシング(再生)される。
【0026】
動作制御部47は、プログラムが格納された記憶装置47aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する演算装置47bを備えている。動作制御部47は、少なくとも1台のコンピュータから構成される。記憶装置47aは、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶装置を備えている。演算装置47bの例としては、CPU(中央処理装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、動作制御部47の具体的構成は本実施形態に限定されない。
【0027】
図2は、図1に示す研磨ヘッド7の断面図である。研磨ヘッド7は、研磨ヘッドシャフト18に固定されたキャリア71と、キャリア71の下方に配置されたリテーナリング72とを備えている。キャリア71の下部には、ウェーハWに当接する柔軟なメンブレン(弾性膜)74が保持されている。メンブレン74とキャリア71との間には、4つの圧力室G1,G2,G3,G4が形成されている。圧力室G1,G2,G3,G4はメンブレン74とキャリア71とによって形成されている。中央の圧力室G1は円形であり、他の圧力室G2,G3,G4は環状である。これらの圧力室G1,G2,G3,G4は、同心上に配列されている。一実施形態では、5つ以上の圧力室が設けられてもよく、あるいは、3つ以下の圧力室が設けられてもよい。
【0028】
圧力室G1,G2,G3,G4にはそれぞれ流体路F1,F2,F3,F4を介して気体供給源77から圧縮空気等の圧縮気体が供給されるようになっている。ウェーハWは、メンブレン74によって研磨パッド2の研磨面2aに押し付けられる。より具体的には、圧力室G1,G2,G3,G4内の圧縮気体の圧力は、メンブレン74を介してウェーハWに作用し、ウェーハWを研磨面2aに対して押し付ける。圧力室G1,G2,G3,G4の内部圧力は独立して変化させることが可能であり、これにより、ウェーハWの対応する4つの領域、すなわち、中央部、内側中間部、外側中間部、および周縁部に対する研磨圧力を独立に調整することができる。
【0029】
キャリア71とリテーナリング72との間には、環状のローリングダイヤフラム76が配置されおり、このローリングダイヤフラム76の内部には圧力室G5が形成されている。圧力室G5は、流体路F5を介して上記気体供給源77に連通している。気体供給源77は圧縮気体を圧力室G5内に供給し、圧力室G5内の圧縮気体はローリングダイヤフラム76を介してリテーナリング72を研磨パッド2の研磨面2aに対して押圧する。
【0030】
ウェーハWの周端部およびメンブレン74の下面(すなわちウェーハ押圧面)はリテーナリング72に囲まれている。ウェーハWの研磨中、リテーナリング72は、ウェーハWの外側で研磨パッド2の研磨面2aを押し付け、研磨中にウェーハWが研磨ヘッド7から飛び出すことを防止している。
【0031】
流体路F1,F2,F3,F4,F5は、圧力室G1,G2,G3,G4,G5から気体供給源77に延びている。流体路F1,F2,F3,F4,F5には、圧力レギュレータR1,R2,R3,R4,R5がそれぞれ取り付けられている。気体供給源77からの圧縮気体は、圧力レギュレータR1~R5および流体路F1~F5を通って圧力室G1~G5内に供給される。
【0032】
圧力レギュレータR1,R2,R3,R4,R5は、圧力室G1,G2,G3,G4,G5内の圧力を制御するように構成されている。圧力レギュレータR1,R2,R3,R4,R5は動作制御部47に接続されている。動作制御部47は、各圧力室G1~G5の目標圧力値を生成するように構成されている。動作制御部47は目標圧力値を上記圧力レギュレータR1~R5に送り、圧力室G1~G5内の圧力が対応する目標圧力値に一致するように圧力レギュレータR1~R5が作動する。複数の圧力室G1,G2,G3,G4,G5を持つ研磨ヘッド7は、研磨の進捗に基づいてウェーハWの表面上の各領域を独立に研磨パッド2に押圧できるので、ウェーハWの膜を均一に研磨することができる。
【0033】
上述のように構成された研磨装置内の物理量を測定するために、以下に説明する測定ウェーハが使用される。この測定ウェーハは、研磨中のウェーハWの表面上の物理量と実質的に等価の物理量を測定することができるセンサ搭載ウェーハである。測定ウェーハは、上記ウェーハWと同じようにして、図1に示す研磨装置によって研磨される。すなわち、研磨ヘッド7および研磨テーブル5をそれぞれ回転させながら、研磨テーブル5の上方に設けられた研磨液供給ノズル8から研磨液を研磨パッド2の研磨面2a上に供給する。研磨ヘッド7は測定ウェーハを研磨パッド2の研磨面2aに押し付ける。研磨液が研磨パッド2の研磨面2a上に存在した状態で、測定ウェーハは研磨パッド2の研磨面2aに摺接される。
【0034】
図3は、測定ウェーハを含む監視システムの一実施形態を示す模式図である。監視システムは、研磨装置内の物理量を測定する測定ウェーハ100と、物理量の測定データを解析するデータ解析装置103を備えている。図3において、測定ウェーハ100は上面図として描かれている。測定ウェーハ100は、基盤110と、物理量(例えば温度)を測定する複数のセンサ112と、物理量の測定データを記憶するメモリ115と、データ通信部117と、バッテリー118を有している。センサ112、メモリ115、データ通信部117、およびバッテリー118は、図示しない配線により電気的に接続されている。
【0035】
本実施形態の基盤110は、円形であり、図1に示すターゲットウェーハWと同じ大きさおよび同じ直径を有している。図3に示す測定ウェーハ100の各構成要素の配置は一例であり、これら構成要素の配置は図3に示す例に限定されない。図3に示す例のように、データ解析装置103は、図1に示す研磨装置と同様の構成を持つ複数の研磨装置に接続されてもよい。
【0036】
測定ウェーハ100は、研磨対象であるターゲットウェーハ(上記ウェーハW)と同じ形状および同じ大きさを有する。例えば、ターゲットウェーハが直径200mmまたは300mmの円形であれば、測定ウェーハ100も直径200mmまたは300mmの円形である。他の例では、ターゲットウェーハが四角形であれば、測定ウェーハ100も同じ大きさの四角形である。測定ウェーハ100は、研磨対象であるターゲットウェーハ(上記ウェーハW)と同じ厚さか、またはそれよりも大きい厚さを有する。これは、研磨対象であるターゲットウェーハと同じ条件下で、測定ウェーハ100が研磨装置内の物理量を測定することを可能とするためである。この観点から、測定ウェーハ100は、2mm以下の厚さを有する。本明細書において、「同じ」との文言は、厳密に同じであることを必ずしも意味しなく、当業者にとって同じとみなすことができる範囲を含む。
【0037】
基盤110には硬質の材料(金属は除く)が用いられる。基盤110の材料の例としては、シリコン、炭化ケイ素(SiC)、セラミックなどが挙げられる。複数のセンサ112は基盤110上に配置されている。より具体的には、複数のセンサ112は基盤110内に埋設されている。
【0038】
センサ112によって測定される物理量の例としては、温度、圧力、力、加速度、音響が挙げられる。複数のセンサ112は、異なるタイプの物理量を測定する異なるタイプのセンサを含んでもよく、あるいは同じタイプの物理量を測定する同じタイプの複数のセンサであってもよい。例えば、複数のセンサ112は、温度を測定する温度センサと、圧力を測定する圧力センサを含んでもよい。別の例では、複数のセンサ112は、温度を測定する温度センサと、圧力を測定する圧力センサと、加速度を測定する加速度センサを含んでもよい。さらに別の例では、複数のセンサ112は、温度を測定する温度センサまたは圧力を測定する圧力センサのみを含んでもよい。測定ウェーハ100に搭載されるセンサ112は、微小なセンサであり、特に説明しない限りその具体的構成は限定されない。例えば、センサ112は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の技術を用いて測定ウェーハ100内に製造されたセンシングデバイスであってもよい。あるいは、予めセンシングデバイスを製造した後に、そのセンシングデバイスを測定ウェーハ100に設置することでセンサ112を構成してもよい。
【0039】
図3に示す実施形態では、複数のセンサ112は、測定ウェーハ100の半径方向に分布している。一実施形態では、測定ウェーハ100は、その周方向に分布するセンサ112をさらに備えてもよい。各センサ112は、バッテリー118からの電力供給を受けて動作する。一実施形態では、測定ウェーハ100は、1つのセンサ112のみを備えてもよい。
【0040】
データ通信部117は、無線通信および/または有線通信により、研磨装置の動作制御部47に接続可能に構成されている。無線通信の例としては、RFID(Radio-frequency identification)、Bluetooth、赤外線通信などが挙げられる。有線通信の例としては、ケーブル通信、USB通信が挙げられる。
【0041】
センサ112、メモリ115、データ通信部117、およびバッテリー118は、図示しない配線により電気的に接続されている。センサ112によって取得された物理量の測定データは、一旦メモリ115に保存される。メモリ115内に保存された物理量の測定データは、データ通信部117によって外部機器である研磨装置の動作制御部47に送信される。動作制御部47は、データ解析装置103に有線通信または無線通信により接続されている。
【0042】
データ解析装置103は、物理量の測定データに基づいて、研磨装置の運転に異常が発生しているか否かを判定し、研磨装置の運転異常が発生していると判定したときに、警報信号を生成し、その警報信号を動作制御部47に送るように構成されている。一実施形態では、データ解析装置103は、測定データに含まれる測定値が所定の目標値に到達しないときは、警報信号を生成し、警報信号を動作制御部47に送るように構成されている。一実施形態では、データ解析装置103は、測定データを基準データと比較し、測定データが基準データから所定の許容範囲を超えて乖離しているときは、警報信号を生成し、警報信号を動作制御部47に送るように構成されている。
【0043】
データ解析装置103は、プログラムが格納された記憶装置103aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する演算装置103bを備えている。データ解析装置103は、少なくとも1台のコンピュータから構成される。記憶装置103aは、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶装置を備えている。演算装置103bの例としては、CPU(中央処理装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、データ解析装置103の具体的構成は本実施形態に限定されない。
【0044】
データ解析装置103は、少なくとも1台のコンピュータから構成されている。前記少なくとも1台のコンピュータは、1台のサーバまたは複数台のサーバであってもよい。データ解析装置103は、動作制御部47に有線通信または無線通信で接続されたエッジサーバであってもよいし、インターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークによって動作制御部47に接続されたクラウドサーバまたはフォグサーバであってもよい。データ解析装置103は、ゲートウェイ、ルーターなどの中に配置されてもよい。
【0045】
図4は、測定ウェーハ100の一部を示す断面図である。図4に示すように、測定ウェーハ100は、センサ112、メモリ115、データ通信部117、およびバッテリー118を研磨液から保護するための保護膜120を備えている。保護膜120は、基盤110の露出面の上に配置されており、測定ウェーハ100の上面を形成している。保護膜120は、基盤110、センサ112、メモリ115、データ通信部117、およびバッテリー118を覆っている。保護膜120には、電気絶縁性、耐酸性、耐アルカリ性、低吸水率を有することが求められる。さらに、保護膜120には、基盤110に反り(応力)を発生させないこと、気泡を含まないこと、平坦な露出面を有すること、各種界面に接着しやすいこと、などが求められる。これらの要件を満たす保護膜120の材料の例として、UV硬化型エポキシアクリレート樹脂が挙げられる。
【0046】
測定ウェーハ100の底面100aは、図1に示す研磨ヘッド7によって研磨パッド2の研磨面2aに対して押し付けられる面である。図4に示す実施形態では、測定ウェーハ100の底面100aは、基盤110の底面から構成されている。本実施形態では、センサ112の全体は、基盤110内に埋設されており、センサ112の前面(図4ではセンサ112の下面)は、測定ウェーハ100の底面100a(すなわち、基盤110の底面)から露出している。測定ウェーハ100の全体の厚さTは、2mm以下である。
【0047】
図5(a)および図5(b)は、センサ112の配置の例を示す断面図である。図5(a)に示す例では、測定ウェーハ100の底面100a(すなわち、基盤110の底面)には開口100bが形成されており、センサ112は開口100b内に配置されている。この開口100bは、基盤110の底面に形成されている。センサ112の前面は、測定ウェーハ100の底面100aよりも内側に位置している。図5(b)に示す例では、センサ112は開口100b内に配置されている点では図5(a)と同じであるが、センサ112の前面は測定ウェーハ100の底面100a(すなわち、基盤110の底面)と同一平面内にある。
【0048】
図6は、センサ112の具体的構成の一実施形態を示す模式図である。図6に示すように、センサ112は、検出部140、集積回路部150、および回路保持部160を備えている。検出部140は、物理量を測定するための構成要素を含み、センサ112の前面(図6の例では下面)を構成する露出面140aを有する。集積回路部150は、温度補正処理、制御回路等を含む電子回路を有する。回路保持部160は、集積回路部150を保持する部材である。測定データを送るための配線(図示せず)は回路保持部160を通って集積回路部150に電気的に接続される。
【0049】
図7は、センサ112のより詳細な構成の一例を示す模式図である。図7に示すセンサ112は、基盤110内に直接作り込まれた圧力センサの一例である。図7に示すように、センサ112の検出部140は、センサ112の前面(図7の例では下面)を構成する露出面140aを有するダイヤフラム141と、ダイヤフラム141上に配置された圧電素子、電極などを含む検出素子142と、ダイヤフラム141の上方に形成された空間143を有している。集積回路部150と回路保持部160の間に弾性体(例えば、シリコーンゴム)が配置されてもよい。
【0050】
図8(a)に示すように、ダイヤフラム141は、基盤110の一部から構成されてもよい。この場合、ダイヤフラム141の機械的強度を高めるために、ダイヤフラム141の端部に三角断面形状のコーナー補強部144を設けてもよい。図8(b)に示すように、ダイヤフラム141は、物理量伝達部材145によって連結された複数のダイヤフラム141A,141Bであってもよい。複数のダイヤフラム141A,141Bのうちの少なくとも1つは、基盤110の一部から構成されてもよい。図8(b)に示す例では、下側のダイヤフラム141Aは、基盤110の一部から構成されている。複数のダイヤフラム141A,141Bの全てが基盤110の一部から構成されてもよい。物理量伝達部材145は、例えばシリコーンゴム、エポキシ樹脂、UV硬化樹脂、シリコーンフィルムなどの樹脂から構成される。
【0051】
図9は、センサ112のより詳細な構成の他の例を示す模式図である。図9に示すセンサ112は、予め製造された圧力センサが基盤110内に設置された構成を有している。この例では、検出部140のダイヤフラム141は、物理量伝達部材145によって連結された複数のダイヤフラム141A,141Bから構成されている。複数のダイヤフラム141A,141Bのうちの下側のダイヤフラム141Aは、基盤110の一部から構成されている。上側のダイヤフラム141Bと下側のダイヤフラム141Aとの間には物理量伝達部材145が配置されており、上側のダイヤフラム141Bと集積回路部150との間には空間143が形成されている。一実施形態では、検出部140は、単一のダイヤフラムを備えてもよい。集積回路部150と回路保持部160の間に弾性体(例えば、シリコーンゴム)が配置されてもよい。
【0052】
図6乃至図9に示すように、センサ112は、様々な態様で基盤110内に設置されうる。意図した物理量を測定することができる限りにおいて、センサ112の具体的構成は特に限定されない。
【0053】
図10は、測定ウェーハ100の他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない構成は、図4および図5を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図10に示す実施形態では、測定ウェーハ100は、基盤110の底面を覆う研磨対象層125を有している。この研磨対象層125は、測定ウェーハ100の底面100aを形成する。したがって、測定ウェーハ100が図1に示す研磨装置によって研磨されているとき、研磨対象層125は、図1に示す研磨ヘッド7によって研磨パッド2の研磨面2aに押し付けられる。このような研磨対象層125を備えることで、測定ウェーハ100は、ターゲットウェーハ(上記ウェーハW)と同じ研磨条件下で研磨されながら、センサ112により研磨装置内の物理量を測定することができる。
【0054】
一実施形態では、研磨対象層125の材料は、ターゲットウェーハ(上記ウェーハW)の被研磨面を構成する材料と同じであってもよい。研磨対象層125の材料の例としては、金属および絶縁材が挙げられる。例えば、金属は、銅、アルミニウム、タングステン、コバルト、またはルテニウムなどであり、絶縁材は、SiO、またはTEOSなどである。
【0055】
研磨対象層125は、物理量の測定中に研磨装置によって徐々に研磨される。したがって、研磨対象層125の厚さが所定の下限値を下回った後、新たな研磨対象層が測定ウェーハ100上に形成される。一実施形態では、研磨対象層125の露出面(底面)は、溝などのマーカーを有してもよい。マーカーが消えると、研磨対象層125の厚さが所定の下限値を下回ったと判断することができる。
【0056】
図11は、測定ウェーハ100の他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない構成は、図4乃至図10を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図11に示す実施形態では、測定ウェーハ100は、基盤110よりも熱伝導率が低い低熱伝導層130をさらに有している。この低熱伝導層130は、センサ112の水平断面と同じ大きさおよび同じ形状の通孔130aを有しており、センサ112は通孔130aを貫通して配置されている。センサ112の前面(図11ではセンサ112の下面)は、低熱伝導層130から露出している。低熱伝導層130の材料は、基盤110の熱伝導率よりも低いものであれば特に限定されないが、例えば、二酸化ケイ素(SiO)が使用される。低熱伝導層130の厚さは、例えば、数nm~数十μmの範囲である。
【0057】
図11に示す実施形態は、センサ112として温度センサが使用されるときに有利である。すなわち、測定ウェーハ100の底面100aおよび/または研磨パッド2で発生する熱は、基盤110内に拡散することなくセンサ112に伝わる。結果として、センサ112は、測定ウェーハ100の底面100aの温度を精度良く測定することができる。
【0058】
今まで説明した各実施形態に係る測定ウェーハ100は、研磨装置の運転監視に使用することができる。すなわち、図3に示すデータ解析装置103は、測定ウェーハ100によって取得された研磨装置内の物理量(例えば、測定ウェーハ100の表面上の温度、圧力など)の測定データを解析し、解析結果に基づいて研磨装置に運転異常が発生しているか否かを判定する。運転監視のタイミングには様々な例が挙げられる。例えば、量産体制の中で流れてくる複数のウェーハ搬送容器(例えばFOUP)の中に、少なくとも1つの測定ウェーハ100を収容したウェーハ搬送容器を含ませ、通常のウェーハ研磨処理の中で、測定ウェーハ100で物理量の測定を行ってもよい。少なくとも1つの測定ウェーハ100を収容するウェーハ搬送容器を定期的に研磨装置に流すことで、研磨装置を定期的に運転監視することができる。測定ウェーハ100を含むウェーハ搬送容器(例えばFOUP)を研磨装置に流すタイミングは任意に決められる。以下、測定データの解析結果に基づいて研磨装置の運転状態を判定する実施形態について説明するが、測定データの用途は以下の実施形態には限定されない。
【0059】
一実施形態では、研磨パッド2上に研磨液を供給しながら、かつ研磨ヘッド7で測定ウェーハ100を研磨パッド2に押し付けながら、測定ウェーハ100は、センサ112により物理量を測定する。物理量の測定中、測定ウェーハ100はターゲットウェーハと同じように研磨ヘッド7により回転される。一実施形態では、物理量の測定中、測定ウェーハ100を研磨ヘッド7で回転させないでもよい。
【0060】
一実施形態では、研磨パッド2上に研磨液を供給しながら、かつ研磨ヘッド7で測定ウェーハ100を研磨パッド2に押し付けながら、測定ウェーハ100は、センサ112により温度を測定し、温度の測定データを動作制御部47に送る。データ解析装置103は、温度の測定データを動作制御部47から取得し、温度の時間変化を解析する。そして、図12に示すように、温度が所定の目標値に到達しない場合は、データ解析装置103は、研磨装置に運転異常が発生していると判定する。温度が所定の目標値に到達しない原因としては、研磨液の流量が高いこと、研磨ヘッド7の押し付け力が低いこと、および研磨液供給ノズル8の研磨液供給位置が適切でないこと、研磨パッド2のドレッシングが適切でないこと、などが考えられる。
【0061】
一実施形態では、研磨パッド2上に研磨液を供給しながら、かつ研磨ヘッド7で測定ウェーハ100を研磨パッド2に押し付けながら、測定ウェーハ100は、センサ112により圧力を測定し、圧力の測定データを動作制御部47に送る。データ解析装置103は、圧力の測定データを動作制御部47から取得し、圧力の時間変化を解析する。そして、データ解析装置103は、圧力が所定の目標値に到達しない場合は、データ解析装置103は、研磨装置に運転異常が発生していると判定する。圧力が所定の目標値に到達しない原因としては、圧力レギュレータ(図2参照)の動作不良、圧縮気体の漏洩などが考えられる。
【0062】
一実施形態では、データ解析装置103は、データ解析装置103に接続されている別の研磨装置(図3参照)から送られてきた測定データを基準データとして用い、図13に示すように、動作制御部47から得られた測定データが基準データから許容範囲を超えて乖離している場合は、データ解析装置103は、研磨装置に運転異常が発生している、と判定する。基準データは、予め設定された目標データであってもよい。
【0063】
データ解析装置103によって研磨装置に運転異常が発生していると判定された場合には、ユーザーは、研磨装置の動作チェックをすることができる。動作チェックの項目の例としては、研磨テーブル5の回転速度、研磨ヘッド7の回転速度、研磨液の供給位置、研磨液の流量、研磨ヘッド7の押し付け力(圧力室G1~G5内の圧力)、ドレッサ50の回転速度、ドレッサ50の押し付け力、ドレッサ50の研磨パッド2上での移動速度、などが挙げられる。
【0064】
一実施形態では、データ解析装置103によって研磨装置に運転異常が発生していると判定された場合には、研磨装置のキャリブレーションをしてもよい。例えば、同じ構成の複数の研磨装置で同じプロセス条件下で複数の測定ウェーハを研磨している場合において、図1に示す研磨装置で測定ウェーハ100によって得られた圧力の測定データが、別の研磨装置で得られた圧力の測定データから許容範囲を超えて乖離している場合は、測定ウェーハ100によって測定される圧力が同一になるように圧力レギュレータR1~R5(図2参照)をキャリブレーションしてもよい。
【0065】
一実施形態では、測定ウェーハ100のセンサ112は、加速度を測定する加速度センサであってもよい。例えば、センサ112は、3次元の加速度を測定することができる3軸加速度センサである。このようなセンサ112は、研磨装置により研磨されているときの測定ウェーハ100の挙動を測定することができる。より具体的には、センサ112は、研磨ヘッド7のリテーナリング72(図2参照)内の測定ウェーハ100の底面に沿った方向の加速度、および測定ウェーハ100の底面に垂直な方向の加速度を測定することができる。
【0066】
データ解析装置103は、加速度を時間で積分することで、測定ウェーハ100の速度や位置を特定し、リテーナリング72内での測定ウェーハ100の挙動を解明することができる。このような解析結果に基づいて、リテーナリング72内でのウェーハの挙動を安定化させるためのプロセス条件(例えば、研磨ヘッド7の回転速度、研磨テーブル5の回転速度など)の最適化、および消耗部材の最適化(リテーナリング72の材料、リテーナリング72内径、メンブレン74の材料、メンブレン74の表面粗さなど)が達成できる。
【0067】
一実施形態では、複数の測定ウェーハ100を用いて物理量を測定してもよい。例えば、図14に示すように、FOUPなどのウェーハ搬送容器140内に、第1測定ウェーハ100A、複数のターゲットウェーハW、および第2測定ウェーハ100Bを収容し、ウェーハ搬送容器140を図1に示す研磨装置に搬送し、第1測定ウェーハ100A、複数のターゲットウェーハW、および第2測定ウェーハ100Bの順にこれらウェーハを研磨する。第1測定ウェーハ100Aのセンサ112は、研磨装置の立ち上げ時であって、かつ複数のターゲットウェーハWの研磨前に研磨装置内の物理量を測定する。第2測定ウェーハ100Bは、複数のターゲットウェーハWが研磨された後に研磨装置内の物理量を測定する。
【0068】
このように、研磨装置の立ち上げ時のウェーハ表面での物理量の測定データが得られるので、研磨装置が正常に起動しているか否かを高い精度で判断することができる。また、第1測定ウェーハ100Aが複数のセンサ112で複数種の物理量(例えば、圧力、温度、加速度など)を測定するように構成されている場合は、これら複数種の物理量の測定データに基づいて、研磨装置の立ち上げ時の運転状態が不安定である場合の原因を特定しやすくなる。
【0069】
一実施形態では、第1測定ウェーハ100Aおよび第2測定ウェーハ100Bがウェーハ搬送容器140内に収容されると、各測定ウェーハ100のバッテリー118(図3参照)が充電されるように構成されてもよい。バッテリー118の充電の仕方は、接触式充電または非接触式充電のいずれであってもよい。さらに、研磨後に第1測定ウェーハ100Aおよび第2測定ウェーハ100Bがウェーハ搬送容器140内に収容されると、各測定ウェーハ100A,100Bのメモリ115(図3参照)に格納された測定データは、データ通信部117により外部機器(例えば、図3に示す研磨装置の動作制御部47)に送信されてもよい。
【0070】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0071】
2 研磨パッド
5 研磨テーブル
5a テーブル軸
7 研磨ヘッド
8 研磨液供給ノズル
14 支軸
16 研磨ヘッド揺動アーム
18 研磨ヘッドシャフト
20 研磨ヘッド回転モータ
21 テーブル回転モータ
47 動作制御部
50 ドレッサ
50a ドレッシング面
51 ドレッサシャフト
53 エアシリンダ
55 ドレッサ揺動アーム
56 支柱
57 支持台
58 支軸
59 ドレッシング液供給ノズル
60 ドレッサ回転モータ
63 ドレッサ揺動モータ
71 キャリア
72 リテーナリング
74 メンブレン(弾性膜)
76 ローリングダイヤフラム
77 気体供給源
100 測定ウェーハ
103 データ解析装置
110 基盤
112 センサ
115 メモリ
117 データ通信部
118 バッテリー
120 保護膜
125 研磨対象層
130 低熱伝導層
W ウェーハ
G1,G2,G3,G4,G5 圧力室
F1,F2,F3,F4,F5 流体路
R1,R2,R3,R4,R5 圧力レギュレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14