(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139180
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】深絞り包装用フィルム、深絞り包装体、ポリオレフィン系樹脂フィルム、および深絞り包装用フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20220915BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B32B27/32 101
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039446
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】小井土 祐子
(72)【発明者】
【氏名】大橋 暁弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 一也
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD08
3E086AD19
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB01
3E086BB21
3E086DA08
4F100AK03A
4F100AK03C
4F100AK05A
4F100AK06A
4F100AK07A
4F100AK63A
4F100AK69D
4F100AK70B
4F100AR00D
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100EH20
4F100JA04
4F100JA06
4F100JD02D
4F100JK07
4F100JK07B
4F100JK11
4F100JL01
4F100JL16
4F100JN01
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】耐衝撃性、深絞り成形性、さらにリサイクル性に優れる深絞り包装用フィルムを提供する。
【解決手段】外層、中間層、内層の少なくとも3層の樹脂層からなる深絞り包装用フィルムであって、中間層はアイオノマー系樹脂を主成分として含む樹脂組成物から形成される、深絞り包装用フィルムとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層、中間層、内層の少なくとも3層の樹脂層からなる深絞り包装用フィルムであって、前記中間層はアイオノマー系樹脂を主成分として含む樹脂組成物から形成される、深絞り包装用フィルム。
【請求項2】
前記外層および内層は、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む樹脂組成物から形成される、請求項1記載の深絞り包装用フィルム。
【請求項3】
前記アイオノマー系樹脂は、中和度が5%以上90%以下である、請求項1または2記載の深絞り包装用フィルム。
【請求項4】
前記中間層の振動周波数10Hz、-20℃の条件で測定された貯蔵弾性率E’が1.0×109Pa以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の深絞り包装用フィルム
【請求項5】
前記中間層以外の全ての層を形成する樹脂組成物が、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の深絞り包装用フィルム。
【請求項6】
さらにガスバリア層を有する少なくも4層の樹脂層からなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の深絞り包装用フィルム。
【請求項7】
前記ガスバリア層を形成する樹脂組成物が、エチレンビニルアルコール系樹脂を主成分として含む、請求項6記載の深絞り包装用フィルム。
【請求項8】
前記深絞り包装用フィルムを出発原料とした再生原料を、いずれかの樹脂層に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の深絞り包装用フィルム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の深絞り包装用フィルムを底材に用いた深絞り包装体。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の深絞り包装用フィルムを出発原料とした再生原料を含むポリオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項11】
外層、中間層、内層の少なくとも3層の樹脂層からなる深絞り包装用フィルムを製造する方法であって、前記深絞り包装用フィルムを出発原料とした再生原料を作製する工程、前記再生原料を含む樹脂組成物を共押出して、外層、中間層、内層の少なくとも3層の樹脂層からなる深絞り包装用フィルムを得る工程とを備える深絞り包装用フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深絞り包装用フィルム、深絞り包装体、ポリオレフィン系樹脂フィルム、および深絞り包装用フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
深絞り包装用フィルムとは主に食品包装や医療包装分野において周知の技術であり、フィルムを加熱成形して1個または複数個の容器(くぼみ)を形成した底材と呼ばれるものの中に内容物を入れ、開口部を蓋材と呼ばれるフィルムあるいは不織布等で覆い、その周辺部を容器に接着または溶着固定することによって包装する方法である。従来、深絞り包装用フィルムの底材には、蓋材とのヒートシール性を付与するシール層、ガスバリア性を付与するエチレンビニルアルコール系樹脂層、耐衝撃性、深絞り成形性を付与するポリアミド層など、様々な樹脂を積層した多層フィルムを用いることが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、近年、環境への影響から、プラスチック製品のリサイクルへの要望は高まってきている。多層フィルムのリサイクルとして、製造時に排出されるフィルム片を一部のポリオレフィン層に戻す技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-224470号公報
【特許文献2】特開2016-087892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポリアミド系樹脂を含む多層フィルムをポリオレフィン層にブレンドする場合、透明性の低下が顕著であるため、リサイクル原料の添加量が増やせないことやリサイクル原料含有層を薄膜化すること等が必要であり、リサイクル率が低くなるという課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、耐衝撃性、深絞り成形性、リサイクル性に優れる深絞り包装用フィルムおよびそれを用いた包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意検討した結果、深絞り包装用フィルムの中間層を、アイオノマー系樹脂を主成分として含む樹脂組成物から形成することにより、ポリアミド系樹脂を用いない場合でも、同等の耐衝撃性、深絞り成形性を有し、かつ、リサイクル性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[11]を、その要旨とする。
[1] 外層、中間層、内層の少なくとも3層の樹脂層からなる深絞り包装用フィルムであって、前記中間層はアイオノマー系樹脂を主成分として含む樹脂組成物から形成される、深絞り包装用フィルム。
[2] 前記外層および内層は、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む樹脂組成物から形成される、[1]に記載の深絞り包装用フィルム。
[3] 前記アイオノマー系樹脂は、中和度が5%以上90%以下である、[1]または[2]に記載の深絞り包装用フィルム。
[4] 前記中間層の振動周波数10Hz、-20℃の条件で測定された貯蔵弾性率E’が1.0×109Pa以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の深絞り包装用フィルム
[5] 前記中間層以外の全ての層を形成する樹脂組成物が、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む、[1]~[4]のいずれかに記載の深絞り包装用フィルム。
[6] さらにガスバリア層を有する少なくも4層の樹脂層からなる、[1]~[5]のいずれかに記載の深絞り包装用フィルム。
[7] 前記ガスバリア層を形成する樹脂組成物が、エチレンビニルアルコール系樹脂を主成分として含む、[6]記載の深絞り包装用フィルム。
[8] 前記深絞り包装用フィルムを出発原料とした再生原料を、いずれかの樹脂層に含む、[1]~[7]のいずれかに記載の深絞り包装用フィルム。
[9] [1]~[8]のいずれかに記載の深絞り包装用フィルムを底材に用いた深絞り包装体。
[10] [1]~[8]のいずれかに記載の深絞り包装用フィルムを出発原料とした再生原料を含むポリオレフィン系樹脂フィルム。
[11] 外層、中間層、内層の少なくとも3層の樹脂層からなる深絞り包装用フィルムを製造する方法であって、前記深絞り包装用フィルムを出発原料とした再生原料を作製する工程、前記再生原料を含む樹脂組成物を共押出して、外層、中間層、内層の少なくとも3層の樹脂層からなる深絞り包装用フィルムを得る工程とを備える深絞り包装用フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐衝撃性、深絞り成形性、さらにリサイクル性に優れる深絞り包装用フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明の内容が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0011】
なお、本明細書において、「主成分」とは、対象物の合計を100質量%したとき、もっとも多い質量%を占める成分であることを示し、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
【0012】
また、「X~Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意とともに、「好ましくはXより大きい」および「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
【0013】
なお、本明細書において、「フィルム」とは、厚いシートから薄いフィルムまでを包括した意を有する。
【0014】
また、本明細書における数値範囲の上限値および下限値は、本発明が特定する数値範囲内から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の均等範囲に包含するものとする。
【0015】
本発明の深絞り包装用フィルムは、外層、中間層、内層の少なくとも3層の樹脂層からなり、中間層はアイオノマー系樹脂を主成分として含む樹脂組成物から形成される。
以下、各層について説明する。
【0016】
<外層>
前記外層は、深絞り包装体とした際に外側となる層であり、前記外層を形成する樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含むことが好ましい。
【0017】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、α-オレフィン共重合体や、これらのポリオレフィン系樹脂を変性させた樹脂等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。なお、外層で用いるポリオレフィン系樹脂は、後述するアイオノマー系樹脂を除くものである。
【0018】
前記ポリエチレン系樹脂としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。
【0019】
前記ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ランダムポリプロピレン(rPP)、ブロックポリプロピレン(bPP)、ホモポリプロピレン(hPP)等が挙げられる。
【0020】
前記α-オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等のα-オレフィンの共重合体が挙げられる。具体的には、例えば、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-プロピレン-α-オレフィン共重合体等が挙げられる。
【0021】
前記ポリオレフィン系樹脂のなかでも、耐ピンホール性の点ではポリエチレン系樹脂、α-オレフィン共重合体が好ましく、耐熱性を付与する点では、ポリプロピレン系樹脂が好ましく、成形性の点ではランダムポリプロレンがより好ましい。
【0022】
また、前記ポリオレフィン系樹脂を変性させた樹脂とは、外層と隣接する層との接着性を付与する目的で用いられる接着性樹脂であり、前記変性成分としては、不飽和カルボン酸またはその誘導体が挙げられる。
【0023】
前記不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸等や、これらのエステル、無水物等が挙げられる。
また、前記誘導体としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸ナトリウム等や、酢酸ビニル等が付加した誘導体が挙げられる。
【0024】
前記ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)(JIS K7210-1 A法(2014)、230℃、荷重2.16kg)は、製膜性の点から0.1g/10分以上50g/10分以下が好ましく、1g/10分以上40g/10分以下がより好ましい。
【0025】
前記ポリオレフィン系樹脂の融点は、95℃以上175℃以下が好ましく、100℃以上170℃以下がより好ましく、115℃以上168℃以下がさらに好ましい。融点を前記下限値以上とすることで、深絞り成形時の熱板への張り付きを抑えることができ、ボイル処理時の耐熱性も付与することができる。さらにレトルト用途に用いる場合には115℃以上が好ましい。融点を175℃以下にすることで、深絞り成形性を付与することができる。
【0026】
前記ポリオレフィン系樹脂の振動周波数10Hz、90℃の条件で測定される貯蔵弾性率E’は、1.0×106Pa以上8.0×108Pa以下であることが好ましく、1.5×106Pa以上5.0×108Pa以下であることがより好ましく、2.0×106Pa以上4.0×108Pa以下であることが特に好ましい。90℃での貯蔵弾性率E’を上記範囲とすることで、深絞り成形時に延伸性とコシを付与することができ、延伸ムラによる局所的な薄膜化などを防ぐことができる。
【0027】
また、前記ポリオレフィン系樹脂の振動周波数10Hz、-20℃の条件で測定される貯蔵弾性率E’は、5.0×109Pa以下であることが好ましく、4.5×109Pa以下であることがより好ましく、4.0×109Pa以下であることがさらに好ましい。-20℃での貯蔵弾性率E’を前記数値以下とすることで低温の耐衝撃性を付与することができる。なお、-20℃での貯蔵弾性率E’の下限値は、通常1.0×107Paである。
【0028】
上述のとおり、外層を形成する樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含むことが好ましく、その含有量は、樹脂組成物の50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0029】
また、外層を形成する樹脂組成物が、前記ポリオレフィン系樹脂を変性させた樹脂(接着性樹脂)を含む場合、その含有量は、樹脂組成物の40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0030】
本発明の深絞り包装用フィルムの外層の厚さは、5μm以上100μm以下が好ましく、7μm以上80μm以下がより好ましく、10μm以上60μm以下がさらに好ましい。外層の厚さを上記範囲とすることで製膜安定性と深絞り成形性が付与できる。
【0031】
<中間層>
本発明の深絞り包装用フィルムの中間層は、アイオノマー系樹脂を主成分として含む樹脂組成物から形成される。
【0032】
従来、深絞り包装用フィルムの中間層としては、優れた耐衝撃性、深絞り成形性を有するポリアミド系樹脂が用いられてきた。しかしながら、中間層にポリアミド系樹脂を用いた深絞り包装用フィルムや深絞り包装体をリサイクル原料として、ポリオレフィン系樹脂と混合する場合、ポリアミド系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂との相溶性が悪く、透明性が著しく低下するため、リサイクル率を高くすることが困難であった。
一方、本発明においては、ポリアミド系樹脂に変わり、アイオノマー系樹脂を用いることにより、ポリアミド系樹脂と同等の耐衝撃性、深絞り成形性を有しつつリサイクル率を高めることができるものである。
【0033】
本発明におけるアイオノマー系樹脂は限定されるものではないが、例えば、エチレン-メタクリル酸共重合体を亜鉛やナトリウムなどの金属イオンで架橋させたものが挙げられ、なかでもナトリウムイオン中和タイプのアイオノマー樹脂を用いることが好ましい。
【0034】
前記アイオノマー系樹脂の中和度としては、5%以上90%以下が好ましく、7%以上85%以下がより好ましい。中和度を上記範囲とすることで、製膜性と深絞り成形性、耐衝撃性を付与することができる。
【0035】
また、アイオノマー系樹脂の融点は、80℃以上140℃以下が好ましく、85℃以上135℃以下がより好ましく、90℃以上125℃以下がさらに好ましい。融点を上記範囲とすることで、包装体としての耐熱性と深絞り成形性を付与することができる。
【0036】
前記アイオノマー系樹脂の密度は、0.90g/cm3以上1.00g/cm3以下が好ましく、0.91g/cm3以上0.98g/cm3以下がより好ましく、0.92g/cm3以上0.96g/cm3以下がさらに好ましい。密度を上記範囲とすることで、包装体としての耐熱性と耐衝撃性を付与することができる。
【0037】
前記アイオノマー系樹脂のメルトフローレート(MFR)(JIS K7210-1 A法(2014)、190℃、荷重2.16kg)は、製膜性の点から0.1g/10分以上50g/10分以下が好ましく、1g/10分以上40g/10分以下がより好ましい。
【0038】
前記アイオノマー系樹脂の振動周波数10Hz、90℃の条件で測定された貯蔵弾性率E’は、1.0×106Pa以上1.0×108Pa以下であることが好ましく、1.1×106Pa以上9.0×107Pa以下であることがより好ましく、1.2×106Pa以上8.0×107Pa以下であることがさらに好ましい。90℃での貯蔵弾性率E’を上記範囲とすることで、深絞り成形時に延伸性とコシを付与することができ、延伸ムラによる局所的な薄膜化などを防ぐことができる。
【0039】
また、前記アイオノマー系樹脂の振動周波数10Hz、-20℃の条件で測定された貯蔵弾性率E’は1.0×109Pa以下であることが好ましく、1.5×109Pa以下であることがより好ましく、1.0×109Pa以下であることがさらに好ましい。-20℃での貯蔵弾性率E’を2.0×109Pa以下とすることで低温の耐衝撃性を付与することができる。なお、-20℃での貯蔵弾性率E’の下限値は、通常1.0×107Paである。
【0040】
本発明の深絞り包装用フィルムの中間層の厚さは、5μm以上100μm以下が好ましく、8μm以上80μm以下がより好ましく、10μm以上60μm以下がさらに好ましい。中間層の厚さを上記範囲にすることで製膜安定性、耐衝撃性、深絞り成形性を付与することができる。
【0041】
<内層>
本発明の深絞り包装用フィルムは、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む樹脂組成物から形成される内層を有することが好ましい。ポリオレフィン系樹脂は、ヒートシール性を有するため、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む樹脂組成物から形成される内層は、ヒートシール層としての機能も有する。また、前記内層は、蓋材と組み合わせ深絞り包装体とした際に、内容物と接する層であり、蓋材とのヒートシール性を有するヒートシール層であることが好ましい。
【0042】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、前述のアイオノマー系樹脂を除くものであり、例えば、エチレン-α-オレフィン共重合体、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、アイオノマー樹脂、酢酸ビニル含有率が8モル%以上40モル%以下のエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ホットメルト樹脂(HM)や、これらのポリオレフィン系樹脂を変性させた樹脂等が挙げられる。前記ポリオレフィン系樹脂を変性させた樹脂としては、外層のポリオレフィン系樹脂で説明したものが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
前記ポリオレフィン系樹脂は、深絞り包装体の形状、内容物の形状、種類に合わせ、適宜選択される。また、前記ポリオレフィン系樹脂は、イージーピール性を付与するため公知の配合でブレンドされていてもよい。前記イージーピール性を付与するための公知の配合としては、例えば、低密度ポリエチレンとポリブテン樹脂とを混合させた混合物が挙げられる。
【0043】
前記ポリオレフィン系樹脂の融点は、通常100℃以上175℃以下であり、110℃以上170℃以下が好ましく、115℃以上168℃以下がより好ましい。融点を前記範囲内とすることで、優れたヒートシール性を付与することができる。
【0044】
内層を形成する樹脂組成物は、前記ポリオレフィン系樹脂を主成分として含むことが好ましく、その含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0045】
本発明の深絞り包装用フィルムの内層の厚さは、5μm以上100μm以下が好ましく、7μm以上80μm以下がより好ましく、10μm以上60μm以下がさらに好ましい。内層の厚さを上記範囲にすることで製膜安定性および充分なシール性を付与することができる。
【0046】
本発明の深絞り包装用フィルムは、前記外層、中間層、内層の少なくとも3層の樹脂層からなるものであるが、前記各樹脂層の他に、ガスバリア層、接着層、隣接層等を有していてもよい。また、これらのガスバリア層、接着層、隣接層等は、深絞り包装用フィルム中に2層以上有していてもよい。
【0047】
[ガスバリア層]
本発明の深絞り包装用フィルムは、ガスバリア性の点から、ガスバリア層を有する少なくも4層の樹脂層からなるフィルムであることが好ましい。また、ガスバリア層は、中間層と内層との間に設けられることが、ガスバリア性の点から好ましい。
【0048】
前記ガスバリア層は、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体を、アルカリ触媒等によりケン化することによって得られるポリオレフィン系樹脂である、エチレンビニルアルコール系樹脂(以下、「EVOH」と記載することがある)を主成分として含む樹脂組成物から形成されることが、ガスバリア性の点から好ましい。
【0049】
前記EVOH中のエチレン含有率は、特に限定されるものではないが、製膜安定性の観点から、通常23モル%以上、好ましくは25モル%以上であり、ガスバリア性の観点から、通常47モル%以下、好ましくは44モル%以下である。
また、EVOHのケン化度は、通常96モル%以上、好ましくは99モル%以上である。
EVOH中のエチレン含有量およびケン化度を上記範囲に保つことにより、良好なガスバリア性を維持できる。なお、EVOHは、化学構造が同様なものである限り、ケン化によって製造されたものに限定されるものではない。
【0050】
前記EVOHの融点は、特に限定されるものではないが、深絞り成形性の点から、通常150℃以上210℃以下、好ましくは150℃以上205℃以下、より好ましくは155℃以上200℃以下である。
【0051】
前記EVOHのMFR(210℃、荷重2.16kg)は、特に限定されるものではないが、フィルムの製膜性の観点から0.1~80g/10分、好ましくは0.5~50g/10分、より好ましくは1.0~25g/10分である。
【0052】
ガスバリア層の厚さは、通常3μm以上30μm以下であり、4μm以上25μm以下が好ましく、5μm以上20μm以下がより好ましい。ガスバリア層の厚さを上記範囲にすることで製膜安定性および充分なガスバリア性を付与することができ、耐衝撃性、深絞り成形性の低下を抑えることができる。
【0053】
[接着層]
前記接着層は、各層の間の接着性を向上させる目的で配されるものであり、接着性樹脂を主成分として含む樹脂組成物から形成される。前記接着性樹脂としては、前記外層で説明した、ポリオレフィン系樹脂を変性させた樹脂を用いることができる。また、前記接着性樹脂は、単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
【0054】
前記接着層の厚さは、通常3μm以上30μm以下であり、4μm以上25μm以下が好ましく、5μm以上20μm以下が特に好ましい。接着層の厚さを上記範囲にすることで製膜安定性および充分な接着性を付与することができる。なお、接着層の厚さは、深絞り包装用フィルムが有する全ての接着層を合計した厚さである。
【0055】
[隣接層]
前記隣接層は、フィルム強度、耐熱性向上や、厚さの調整のために配されるものであり、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む樹脂組成物から形成される。
【0056】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、前記外層で説明したポリオレフィン系樹脂を用いることができる。前記ポリオレフィン系樹脂は、単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。また、隣接層で用いるポリオレフィン系樹脂は、外層で用いるポリオレフィン系樹脂と同じであっても、異なっていてもよい。
【0057】
前記隣接層の厚さは、通常3μm以上30μm以下であり、4μm以上25μm以下が好ましく、5μm以上20μm以下が特に好ましい。隣接層の厚さを上記範囲にすることで製膜安定性を付与することができる。なお、隣接層の厚さは、深絞り包装用フィルムが有する全ての隣接層を合計した厚さである。
【0058】
また、本発明においては、各樹脂層を形成する樹脂組成物に、本発明の深絞り包装用フィルム、深絞り包装体、製造過程で生じる端材や、他の樹脂フィルム、成形体等を出発原料とした再生原料を含むことも好ましい。
前記他の樹脂フィルム、成形体としては特に限定されないが、リサイクル性の点からポリオレフィン系樹脂を主成分として含む樹脂フィルム、成形体が好ましい。なかでも、リサイクル性、透明性の点からは、本発明の深絞り包装用フィルムや深絞り包装体、製造過程で生じる端材を出発原料とした再生原料をいずれかの樹脂層に含むことがより好ましく、本発明の深絞り包装用フィルムを出発原料とした再生原料をいずれかの樹脂層に含むことが特に好ましい。
【0059】
前記再生原料としては、前記フィルムや包装体等をそのまま、または、前記フィルムや包装体等をフラフ、リペレット等にして用いればよい。なかでも、作業性の点から、フラフ、リペレットにして用いることが好ましい。
【0060】
前記「フラフ」とは、フィルムを粉砕したものであり、「リペレット」とはフィルムや包装体等を溶融混練してペレット状に加工したものである。
【0061】
前記各樹脂層を形成する樹脂組成物に前記再生原料を含む場合、再生原料は、いずれの樹脂層に含まれていてもよいが、フィルムとしての耐衝撃性、深絞り成形性、シール性、透明性、ガスバリア性等を維持する点で、外層、接着層または隣接層を形成する樹脂組成物に含まれることが好ましい。なかでも接着層、隣接層を形成する樹脂組成物に含まれることがより好ましく、隣接層を形成する樹脂組成物に含まれることが特に好ましい。
【0062】
各樹脂層を形成する樹脂組成物に前記再生原料が含まれる場合、その含有量は、樹脂組成物の通常40質量%以下、好ましくは30質量%以下である。
【0063】
また、本発明の深絞り包装用フィルムの各層を形成する樹脂組成物には、その効果を著しく阻害しない範囲内で、成形加工性、生産性等の諸性質を改良・調整する目的で、適宜、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤等の添加剤を配合してもよい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0064】
本発明の深絞り包装用フィルムは、中間層および接着層を除く深絞り包装用フィルムを構成する全ての層を形成する樹脂組成物が、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含むことが、リサイクル性の点から好ましい。また、本発明の深絞り包装用フィルムは、ポリアミド系樹脂を含まないことが好ましい。
【0065】
〔深絞り包装用フィルムの製造方法〕
本発明の深絞り包装用フィルムは、前記樹脂組成物を用いて公知の方法、例えば、押出ラミネーション法、共押出インフレーション法、共押出Tダイ法等を用いることにより製造することができる。特に、フィルムの層数が多い場合でも製膜工程は変わらない点や厚み制御が比較的容易である点で、共押出Tダイ法を用いることが好ましい。すなわち、本発明の深絞り包装用フィルムは、共押出多層フィルムであることが好ましい。
また、本発明の深絞り包装用フィルムは無延伸フィルムであっても、延伸フィルムであってもよいが、通常は無延伸である。
【0066】
以下に、本発明の深絞り包装用フィルムの構成例を示すが、これに限られるものでない。
(1) LLDPE(外層)/中間層/内層
(2) LLDPE(外層)/接着層/中間層/内層
(3) LLDPE(外層)/接着層/中間層/接着層/内層
(4) LLDPE(外層)/接着層/中間層/接着層/LLDPE(隣接層)/内層
(5) rPP(外層)/中間層/内層
(6) rPP(外層)/接着層/中間層/内層
(7) rPP(外層)/接着層/中間層/接着層/内層
(8) LDPE(外層)/中間層/内層
(9) HDPE(外層)/中間層/内層
(10) bPP(外層)/中間層/内層
(11) hPP(外層)/中間層/内層
(12) LLDPE(外層)/中間層/接着層/ガスバリア層/接着層/内層
(13) rPP(外層)/中間層/接着層/ガスバリア層/接着層/内層
【0067】
また、本発明の深絞り包装用フィルムが、深絞り包装用フィルムを出発原料とした再生原料を含む樹脂組成物から形成される樹脂層を有する場合、前記深絞り包装用フィルムは、前記深絞り包装用フィルムを出発原料とした再生原料を作製する工程、前記再生原料を含む樹脂組成物を共押出して、外層、中間層、内層の少なくとも3層の樹脂層からなる深絞り包装用フィルムを得る工程とを備える製造方法により得られる。
【0068】
前記深絞り包装用フィルムを出発原料とした再生原料を作製する工程における再生原料としては、深絞り包装用フィルムから得られるフラフやリペレットが挙げられる。
【0069】
また、深絞り包装用フィルムからフラフやリペレットを得る方法としては、公知の方法、例えば、深絞り包装用フィルムに裁断処理、粉砕処理、乾燥処理、溶融混練処理等の処理を行うことで得ることができる。これらの処理は、単独でもしくは2種以上を併せて行ってもよい。
【0070】
前記再生原料を含む樹脂組成物を共押出して、外層、中間層、内層の少なくとも3層の樹脂層からなる深絞り包装用フィルムを得る工程においては、再生原料として深絞り包装用フィルムから得られるフラフやリペレットを含む樹脂組成物を、他の樹脂組成物と共押出して深絞り包装用フィルムを製造すればよい。また、前述のとおり、再生原料を含む樹脂組成物は、深絞り包装用フィルムのいずれの樹脂層を形成してもよいが、隣接層、接着層を形成することが好ましく、隣接層を形成することが特に好ましい。
【0071】
<深絞り包装用フィルム>
このようにして得られる本発明の深絞り包装用フィルムは、外層、中間層、内層の少なくとも3層の樹脂層からなるものである。
【0072】
本発明の深絞り包装用フィルムの厚さは50μm以上300μm未満が好ましく、60μm以上250μm未満がより好ましく、70μm以上200μm未満がさらに好ましい。厚さを50μm以上とすることで深絞り成形性と深絞り後実用上問題のない厚さとなり、機械強度、耐熱性を付与することができる。厚さを300μm未満とすることで、深絞り成形性の付与、コスト低減ができる。
【0073】
本発明の深絞り包装用フィルムのJIS K7136(2000)に基づき測定される全光線透過率、拡散透過率によって計算される内部ヘイズの値は、内容物視認性の点から30%以下が好ましく、25%以下がより好ましく、20%以下がさらに好ましい。
【0074】
本発明の深絞り包装用フィルムの、JIS K7124-2(1999)に基づき測定される23℃におけるハイドロショット高速試験機によるパンクチャーエネルギーは0.50J以上であることが好ましく、0.60J以上がよりに好ましい。またパンクチャー変位量は10mm以上が好ましく、15mm以上がより好ましい。23℃におけるパンクチャーエネルギー、パンクチャー変位量を上記範囲とすることで、内容物を包装し、例えば輸送の際に生じる衝撃によっても、破断やピンホールが生じにくい傾向がある。
【0075】
本発明の深絞り包装用フィルムの、JIS K7124-2(1999)に基づき測定される0℃におけるハイドロショット高速試験機によるパンクチャーエネルギーは0.50J以上であることが好ましく、0.60J以上がよりに好ましい。またパンクチャー変位量は10mm以上が好ましく、12mm以上がより好ましい。0℃におけるパンクチャーエネルギー、パンクチャー変位量を上記範囲とすることで、内容物を包装し、例えば冷蔵保存等の低温保管をした場合にもピンホールが生じにくい傾向がある。
【0076】
本発明の深絞り包装用フィルムの、JIS K7124-2(1999)に基づき測定される-20℃におけるハイドロショット高速試験機によるパンクチャーエネルギーは0.35J以上であることが好ましく、0.4J以上がよりに好ましい。またパンクチャー変位量は5mm以上が好ましく、7mm以上がより好ましい。-20℃におけるパンクチャーエネルギー、パンクチャー変位量を上記範囲とすることで、内容物を包装し、例えば冷凍保存等の低温保管をした場合にもピンホールが生じにくい傾向がある。
【0077】
また、本発明の深絞り包装用フィルムがガスバリア層を有する場合、深絞り包装用フィルムを厚さ100μmにした際のガス透過率は、10.0cc/m2・24hr・atm以下が好ましく、より好ましくは8.5cc/m2・24hr・atm以下であり、さらに好ましくは7.0cc/m2・24hr・atm以下である。ガス透過率を10.0cc/m2・24hr・atm以下にすることで、包装体として使用する際に求められるガスバリア性を付与することができる傾向がある。
【0078】
また、本発明の深絞り包装用フィルムは、該深絞り包装用フィルムの再生原料としてだけでなく、他の樹脂フィルムを製造する際に、前記深絞り包装用フィルムを出発原料とした再生原料を用い樹脂フィルム(樹脂層)を製造してもよい。
前記他の樹脂フィルムとしては、特に限定されないが、相溶性が高く、リサイクル率を高くすることができる点から、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む樹脂フィルムであることが好ましい。
【0079】
<包装体>
本発明の深絞り包装用フィルムは、深絞り包装体に適するものであるが、内容物に応じて各種包装体にすることができる。包装体の例を以下に示す。
(1)深絞り包装体
(2)パウチ包装体
(3)ピロー包装体
(4)真空包装体
なかでも、深絞り包装体が好ましく、特に好ましくは、前記深絞り包装用フィルムを底材に用いた深絞り包装体である。
【0080】
本発明の深絞り包装用フィルムは、深絞り包装体とする場合には、絞り加工を行う際に成形性を高めるために無延伸で製造することが好ましい。パウチ包装、ピロー包装及び真空包装には、無延伸にて製造した後、強度及びガスバリア性の付与の観点から、例えば、二軸延伸ポリプロピレンフィルムなどの延伸フィルムを用いて、ドライラミネート法等で積層することが好ましい。
【実施例0081】
以下、本発明の効果を明確にするために実施した実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。
【0082】
外層、中層、内層、その他の層(接着層、ガスバリア層など)に用いた各原料を下記に示す。
PE1:エボリューSP2320(プライムポリマー社製、LLDPE)
PE2:ウルトゼックス3520L(プライムポリマー社製、LLDPE)
PE3:アドマーNF567(三井化学社製、PE系接着性樹脂)
PE4:ウルトゼックス2021L(プライムポリマー社製、LLDPE)
PE5:カーネルKF270(日本ポリエチレン社製、エチレン-へキセン1共重合体、エチレン:88質量%、へキセン1:12質量%)
PE6:ユメリット2040FC(宇部丸善ポリエチレン社製、LLDPE)
IO:ハイミラン1601(三井・ダウポリケミカル社製、Naイオン系アイオノマー)
【0083】
前記各原料のMFR、融点、貯蔵弾性率E’を下記の方法で測定した。各原料の物性を後記の表1および表2に示す。
【0084】
(MFR)
JIS K7210-1 A法(2014)に準拠し、PE1~3は温度230℃、荷重2.16kgの条件下で、IOは温度190℃、荷重2.16kgの条件下で測定した。
【0085】
(融点)
JIS K7121(2012)に準拠して、示差走査熱量分析装置(パーキンエルマー社製、「DSC8000」)を用い、各原料を10℃/分で昇温して、融点を測定した。
【0086】
(貯蔵弾性率E’)
JIS K7244-10(2015)に準拠して、レオメータ(TA Instruments社製、「DiscoveryHR2」)を用いて、振動周波数10Hz、引張モードで-20℃、90℃における貯蔵弾性率E’を測定した。
【0087】
【0088】
【0089】
<実施例1、比較例1および参考例>
後記の表3に示す組成、層構成で各原料を220℃で溶融混練して、230℃の積層口金より押出して厚さ100μmの深絞り包装用フィルムを製造した。
【0090】
〔評価〕
実施例1、比較例1および参考例の深絞り包装用フィルムについて、耐衝撃性、透明性、深絞り成形性、および、リサイクル性を評価した。結果を後記の表3に示す。
【0091】
(耐衝撃性)
深絞り包装用フィルムをJIS K7124-2(1999)に準じた方法で、速度3m/sec、高さ200mm、ストライカφ12.7mm、試験雰囲気温度0℃、23℃の条件でパンクチャーエネルギー、パンクチャー変位量を測定し、以下の基準により評価した。
[試験雰囲気温度0℃の評価基準]
○:パンクチャーエネルギーが0.5J以上であり、かつ、パンクチャー変位量が10mm以上
×:パンクチャーエネルギーが0.5J未満であるか、パンクチャー変位量が10mm未満
[試験雰囲気温度23℃の評価基準]
○:パンクチャーエネルギーが0.5J以上であり、かつ、パンクチャー変位量が10mm以上
×:パンクチャーエネルギーが0.5J未満であるか、パンクチャー変位量が10mm未満
【0092】
(深絞り成形性)
深絞り包装機(大森機械工業製FV6300)を使用し、成型加熱温度95℃、成型加熱時間2秒、成型時間2秒の条件で、直径98mm、絞り深さ30mm、の円筒状に深絞り成形し、底面の円周を4等分(円周上の任意の1点を基点とし、円周を4等分する)した位置のコーナー厚さをμm単位で測定し、コーナー厚さの最小値を以下の基準により評価した。
[評価基準(厚さ)]
○:コーナー厚さが10μm以上
×:コーナー厚さが10μm未満
【0093】
(リサイクル性)
PE2を60質量%と実施例1、比較例1および参考例の各深絞り包装用フィルム40質量%を240℃で溶融混錬し、押出することで厚さ100μmのリサイクルフィルムを作製した。作製したフィルムの透明性を、濁度計(日本電色工業社製、「NDH 5000」)を用いて、リサイクルフィルム表面に光線を照射し、JIS K 7136(2000)に準拠して、ヘイズを測定し、以下の基準により評価した。
[評価基準]
○:内部ヘイズが40%未満
×:内部ヘイズが40%以上
【0094】
【0095】
実施例1の深絞り包装用フィルムは、耐衝撃性に優れるだけなく、ポリオレフィン系樹脂にリサイクル添加した際の透明性も良好であり、さらには比較例1の深絞り包装用フィルムに比べ深絞り成形時のコーナーの薄膜化を抑えることができるものであった。