(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139337
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】撮像素子
(51)【国際特許分類】
H04N 5/374 20110101AFI20220915BHJP
H04N 5/378 20110101ALI20220915BHJP
H04N 5/341 20110101ALI20220915BHJP
【FI】
H04N5/374
H04N5/378
H04N5/341
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039668
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100185225
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 恭一
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 宏平
(72)【発明者】
【氏名】安江 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】船津 良平
(72)【発明者】
【氏名】菊地 幸大
(72)【発明者】
【氏名】中村 友洋
(72)【発明者】
【氏名】山下 誉行
【テーマコード(参考)】
5C024
【Fターム(参考)】
5C024CX06
5C024CX37
5C024GY31
5C024HX23
5C024HX50
5C024JX08
(57)【要約】
【課題】撮像領域ごとに局所的な高フレームレート撮影若しくは高解像度撮影を実現し、画面全体の画質を向上させる撮像素子を提供する。
【解決手段】撮像素子は、画素ブロックにブロック化されて制御される画素アレイとカラム読出回路からなる信号読出回路を備える撮像素子であって、前記カラム読出回路は、前記画素ブロックごとに与えられたモード選択信号に応じて、1フレームの間に、前記画素ブロックの各画素から出力される画素信号について、いずれか一つの画素信号を選択するか、又は、すべての画素信号を順番に選択する、入力切替スイッチと、前記入力切替スイッチを介して入力される画素信号を、前記画素ブロックの画素数に対応した回数でサンプリングして積算するアナログ積算器と、前記アナログ積算器の出力をデジタル信号に変換するADCとを有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する複数の画素からなる画素ブロックにブロック化されて制御される画素アレイと、
前記画素ブロックの画素ブロック列に対応するカラム読出回路からなる信号読出回路を備える、撮像素子であって、
前記カラム読出回路は、
前記画素ブロックごとに与えられたモード選択信号に応じて、1フレームの間に、前記画素ブロックの各画素から出力される画素信号について、いずれか一つの画素信号を選択するか、又は、すべての画素信号を順番に選択する、入力切替スイッチと、
前記入力切替スイッチを介して入力される画素信号を、前記画素ブロックの画素数に対応した回数でサンプリングして積算するアナログ積算器と、
前記アナログ積算器の出力をデジタル信号に変換するADC(アナログ/デジタル変換器)と
を有することを特徴とする、撮像素子。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像素子において、
前記カラム読出回路は、さらに、画素の信号レベルの出力から画素のリセットレベルの出力を減算する相関二重サンプリングを行うことを特徴とする、撮像素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の撮像素子において、
前記入力切替スイッチは、前記モード選択信号が高フレームレート撮影のとき、すべての画素信号を順番に選択し、前記モード選択信号が高解像度撮影のとき、いずれか一つの画素信号を選択することを特徴とする、撮像素子。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記モード選択信号が高フレームレート撮影のとき、前記画素ブロックの映像出力として、フレームごとに前記画素ブロックのすべての画素信号を積算した信号を出力し、前記モード選択信号が高解像度撮影のとき、フレームごとに前記画素ブロックのいずれか一つの画素信号を順に出力することを特徴とする、撮像素子。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記モード選択信号は、前記画素ブロックの画素数に対応するフレーム数の期間ごとに、更新されることを特徴とする、撮像素子。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記カラム読出回路は、前記画素アレイの画素ブロック列の上側と下側に配置され、一方が奇数行、他方が偶数行の前記画素ブロックを制御することを特徴とする、撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号を取得する撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像素子に、フレームレートや解像度などの特定の撮像性能に特化した動作モードを設けることが提案されている(例えば、特許文献1)。このような撮像素子を用い、撮影シーンの特徴に合わせて最適な動作モードを選択することで、取得する映像信号の画質の向上を図る撮影手法がある。例えば、動きの速い被写体を撮像する場合は高フレームレート/低解像度モード、高精細で動きの少ない被写体を撮像する場合は低フレームレート/高解像度モードで撮影するなどといった撮影シーンに適応したモード選択をすることで、実質的な画質向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
360°映像などの広視野撮像を行う場合、同一撮像画面の中に複数の異なる特徴を持つ撮像シーンが同時に映り込むことが想定される。このとき、例えば、画面内の移動速度の速い被写体に合わせて高フレームレートモードでの撮像を選択すると、同一画面内に同時に映り込む静止した高精細な被写体の精細度が低下しまう。反対に、画面内の高精細な被写体に合わせて高解像度モードでの撮像を選択すると、移動速度の速い被写体がぼやけて、動きをとらえることができないという問題が生じる。
【0005】
したがって、上記のような問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、撮像領域ごとに局所的な高フレームレート撮影若しくは高解像度撮影を実現し、画面全体の画質を向上させる撮像素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係る撮像素子は、隣接する複数の画素からなる画素ブロックにブロック化されて制御される画素アレイと、前記画素ブロックの画素ブロック列に対応するカラム読出回路からなる信号読出回路を備える、撮像素子であって、前記カラム読出回路は、前記画素ブロックごとに与えられたモード選択信号に応じて、1フレームの間に、前記画素ブロックの各画素から出力される画素信号について、いずれか一つの画素信号を選択するか、又は、すべての画素信号を順番に選択する、入力切替スイッチと、前記入力切替スイッチを介して入力される画素信号を、前記画素ブロックの画素数に対応した回数でサンプリングして積算するアナログ積算器と、前記アナログ積算器の出力をデジタル信号に変換するADC(アナログ/デジタル変換器)とを有することを特徴とする。
【0007】
また、前記撮像素子は、前記カラム読出回路が、さらに、画素の信号レベルの出力から画素のリセットレベルの出力を減算する相関二重サンプリングを行うことが望ましい。
【0008】
また、前記撮像素子は、前記入力切替スイッチが、前記モード選択信号が高フレームレート撮影のとき、すべての画素信号を順番に選択し、前記モード選択信号が高解像度撮影のとき、いずれか一つの画素信号を選択することが望ましい。
【0009】
また、前記撮像素子は、前記モード選択信号が高フレームレート撮影のとき、前記画素ブロックの映像出力として、フレームごとに前記画素ブロックのすべての画素信号を積算した信号を出力し、前記モード選択信号が高解像度撮影のとき、フレームごとに前記画素ブロックのいずれか一つの画素信号を順に出力することが望ましい。
【0010】
また、前記撮像素子は、前記モード選択信号が、前記画素ブロックの画素数に対応するフレーム数の期間ごとに、更新されることが望ましい。
【0011】
また、前記撮像素子は、前記カラム読出回路は、前記画素アレイの画素ブロック列の上側と下側に配置され、一方が奇数行、他方が偶数行の前記画素ブロックを制御することが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明における撮像素子によれば、撮像領域ごとに局所的な高フレームレート撮影若しくは高解像度撮影を実現し、画面全体の画質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る撮像素子の回路構成例を示す図である。
【
図2】1画素(Pixel)の回路構成の一例を示す図である。
【
図3】スイッチトキャパシタ(SC)積算器の構成の一例を示す図である。
【
図4】撮像素子の駆動信号のタイミング図の一例である。
【
図5】画素駆動信号と各画素のFD信号との関係を示す図である。
【
図7】モード選択信号の例と対応する出力信号形式の例を示す図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係る撮像素子の回路構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0015】
(実施の形態)
図1に、本発明の一実施形態に係る撮像素子の回路構成例を示す。撮像素子は、画素アレイ100、行選択・画素駆動回路110、信号読出回路200、駆動信号生成回路210を備えている。
【0016】
画素アレイ100は、隣接するk×l画素領域(水平k個、垂直l個、k,lは2以上の整数)10を1ブロック単位として、ブロック化して構成され、制御される。ここでは、画素アレイ100が、2×2画素領域を画素ブロック10とし、水平Hブロック×垂直Vブロック(水平2H画素×垂直2V画素)で構成されるとして説明する。なお、画素ブロック10の大きさ(画素数)は、高フレームレート撮影時の画像精細度等に基づいて自由に設定可能である。画素ブロック1列(垂直方向にV個並んだ画素ブロック10)ごとに4本(k×l本、すなわち、画素ブロック10の画素ごとに1本)の信号読出線17が垂直方向に配線され、後述のカラム読出回路201にそれぞれ並列接続される。
【0017】
画素ブロック10の各画素(本実施形態では、Pixel A~Pixel D)は、例えば、4Tr(トランジスタ)型画素で構成される。
図2に、1画素(Pixel)の回路構成の一例を示す。画素は、フォトダイオード(PD)11、転送ゲート12、フローティングディフュージョン(FD)13、出力トランジスタ(ソースフォロア回路)14、選択トランジスタ15、及びリセットトランジスタ16を備えている。
【0018】
フォトダイオード(PD)11は、入射光に応じて光電変換を行い、露光量に基づく信号電荷を生成する。
【0019】
転送ゲート12は、電荷転送信号TXにより制御され、信号TXがHighになると導通し、フォトダイオード(PD)11で生成された信号電荷をフローティングディフュージョン(FD)13に転送する。
【0020】
フローティングディフュージョン(FD)13は、実質的にコンデンサとして機能し、転送された信号電荷を蓄積する。信号電荷に基づくフローティングディフュージョン(FD)13の電位が、出力トランジスタ14のゲート電極に印加される。
【0021】
出力トランジスタ14は、ソースフォロア回路を構成し、ゲート電極に印加された電圧に応じて、ソース側に出力信号(出力電圧)を出力する。
【0022】
選択トランジスタ15は、行選択信号SLにより制御され、信号SLがHighになると導通し、出力トランジスタ(ソースフォロア回路)14の出力信号を、信号読出線17に出力する。
【0023】
リセットトランジスタ16は、FDリセット信号RTにより制御され、信号RTがHighになると導通し、フローティングディフュージョン(FD)13に蓄積されていた信号電荷を排出し、画素の出力をリセットする。
【0024】
こうして、各画素ブロック10の画素(Pixel A~Pixel D)からの出力信号が、信号読出線(A~D)17に出力される。なお、画素構造は、上述の4Tr型画素に限られず、入射光に基づいた出力信号を信号読出線17に出力する構成を備えた画素であれば、任意の構造であってよい。
【0025】
図1に戻って、行選択・画素駆動回路110は、画素アレイ100の行を選択して、駆動する。行選択は画素ブロック1行(水平方向にH個並んだ画素ブロック10)ごとに画素を選択・駆動する。m行目の画素ブロック行を選択する信号をSL(m)とする。行選択・画素駆動回路110は、同じ画素ブロック行(m行)の画素ブロック10を同一の制御信号で同時に駆動するが、画素ブロック10内の画素(Pixel A~Pixel D)ごとに異なる画素駆動信号(XT,RT)を供給し、各画素を制御する。本実施形態では、m行目の画素ブロック10の各画素(Pixel A~Pixel D)の画素駆動信号を、それぞれTX
A(m)~TX
D(m)、RT
A(m)~RT
D(m)とする。
【0026】
信号読出回路200は、画素アレイ100の水平Hブロックに対応した、H個のカラム読出回路201(カラム読出回路(1)~(H))からなる。カラム読出回路201は、信号が入力される上流側から、入力切替スイッチ20(スイッチφA~φD)、スイッチトキャパシタ積算器(以下、SC積算器)30、ADC(アナログ/デジタル変換器)40で構成される。各カラム読出回路(1)~(H)は、選択・駆動された画素ブロック行の出力信号を積算及びAD(アナログ/デジタル)変換し、撮像素子出力信号D(1),D(2),…,D(H)として出力する。
【0027】
駆動信号生成回路210は、各カラム読出回路(1)~(H)に対して、同一の制御信号P、制御信号Q、SC積算器制御信号、ADC制御信号を供給する。各カラム読出回路201は、駆動信号生成回路210から供給された駆動信号により一斉に動作する。
【0028】
図1の左側の図は、撮像素子のn列目(n=1,2,…,H)の構造を拡大して示したものである。n列目には、2×2画素(k×l画素)の画素ブロック10が列方向(垂直方向)にVブロック配列されている。画素ブロック10の各画素(Pixel A~Pixel D)の出力信号は、それぞれ信号読出線A~Dに接続される。
【0029】
カラム読出回路201の構成について説明する。入力切替スイッチ20は、信号読出線A~DとSC積算器30とを、スイッチφA~φDを介して接続する。したがって、信号読出線A~Dの出力信号(画素ブロックの各画素から出力される画素信号)のいずれか一つが、SC積算器30に入力される。なお、入力切替スイッチ20の動作は、後述のとおり制御信号によって異なり、制御信号Pが与えられたときは、各信号読出線A~Dを順に接続し、制御信号Qが与えられたときは、信号読出線A~Dのいずれか特定のものを接続する。
【0030】
図3は、スイッチトキャパシタ(SC)積算器30の構成の一例である。SC積算器30は、サンプリング容量31(容量C
1)、積算容量32(容量C
2)、OPアンプ33、及びスイッチφ
SMP,φ
AMP,φ
RTで構成される。スイッチφ
RTがON(導通)になることで、積算容量32に積算された電荷が初期化される。スイッチφ
SMP,がON、φ
AMPがOFFになることで、入力電圧V
inによるサンプリング容量31へのチャージが行われる。続いてスイッチφ
SMPがOFF、φ
AMPがONになることでサンプリング容量31にチャージされた電荷が積算容量32へ転送され、出力電圧V
outが生じる。スイッチφ
SMP,φ
AMPのON,OFFを繰り返すことで、入力電圧V
inによる電荷が積算容量32に積算される。すなわち、SC積算器30は、アナログ積算器として機能する。なお、サンプリング容量31と積算容量32の容量値を調整することにより、出力電圧V
outにゲイン(C
1/C
2)を与えることができる。
【0031】
SC積算器30は上記のサンプリング及び電荷転送動作を複数回行い、入力電圧Vinの積算動作を行う。SC積算器30への入力信号は、入力切替スイッチ20(スイッチφA~φD)によって、Pixel A~Pixel Dのいずれかの画素信号を選択できる。撮像素子には、モード選択信号F(1)~F(H)が外部から入力されており、n列目のカラム読出し回路(n)には、モード選択信号F(n)が入力されている。入力切替スイッチ20には制御信号Pと制御信号Qの両方が全カラム一律に供給されているが、カラム毎に供給されるモード選択信号F(n)に応じてどちらの制御信号で制御されるか選択される。
【0032】
モード選択信号F(n)は以下で表される信号である。
F(n)=(F1n,F2n,・・・,FVn) (n=1,2,…,H)
Fmn=0 or 1
【0033】
ここでFmnは、m行n列目の画素ブロック10に対する(画素ブロック10ごとに与えられた)モード選択信号を示す。すなわち、Fmnはm行n列目の画素ブロックを読み出す際に、高フレームレート読出し(Fmn=0)を行うか、高解像度読出し(Fmn=1)を行うかを指定する。Fmn=0のとき制御信号P、Fmn=1のとき制御信号Qで入力切替スイッチ20のスイッチφA~φDがそれぞれ駆動される。
【0034】
モード選択信号Fmnの生成手法は本発明において限定されないが、取得した映像のフィードバック信号とすることが望ましい。例えば、本撮像装置若しくは別の撮像装置で取得した映像信号の時空間の周波数成分・ノイズ成分を解析し、その結果をもとに時間周波数が高い領域はモード選択信号Fmn=0に、空間周波数が高い領域はモード選択信号Fmn=1に、それぞれ映像特性をフィードバックするように生成する方法などが考えられる。モード選択信号Fmnは、1画素ブロック10に含まれる画素数に対応するフレーム数ごとに(k×lフレームごとに、本実施形態では4フレームごとに)1回の周期で更新されることが望ましい。
【0035】
ADC40は、SC積算器30の積算結果をデジタル信号に変換し、出力信号D(n) (n=1,2,…,H)として撮像素子から出力する。なお、出力信号は、さらにデジタル相関2重サンプリング(DCDS)を行って、画素の信号レベルのADC出力から画素のリセットレベルのADC出力を減算して、固定パターンノイズが除去された信号を出力してもよい。
【0036】
図4に、撮像素子の駆動信号のタイミング図の一例を示す。行選択・画素駆動回路110は、1フレーム期間T
f=1/f
f(f
fはフレーム周波数)に画素ブロック1行目からV行目までの走査をおこなう。
図4は、各フレーム期間におけるm行目の処理を行う際の各駆動信号・制御信号を、拡大して示している。本実施形態では、読出回路は、1画素ブロックに含まれる画素数(k×l画素、本実施形態では4画素)に対応して、4フレーム周期(Frame A~D)でフレームごとに異なる読出動作を行う。なお、入力切替スイッチ20のスイッチφ
A~φ
Dは、1フレームの間に、制御信号P(高フレームレート撮影)のとき、当該画素ブロックのすべての画素信号を順番に選択し、制御信号Q(高精細撮影)のとき、当該画素ブロックのいずれか一つの画素信号を選択するように動作する。
【0037】
読出動作の詳細を
図5及び
図6を用いて説明する。
図5は、画素駆動信号と各画素のFD信号との関係を示す図であり、
図6は、SC積算器30の積算動作を説明する図である。
【0038】
まず、
図5により画素駆動信号と画素出力信号の詳細を説明する。
図5は、任意(例えば、m行n列目)の画素ブロックにおいて、Frame A~Dの画素駆動信号によって、各画素のフローティングディフュージョン(FD)13に蓄積される信号電荷の遷移を図示している。
【0039】
Frame Aにおける読出動作では、Pixel A~Dに対してFD13への電荷転送信号TXA~TXDがTXA→TXB→TXC→TXDの順で送られ、各画素の光電変換信号をFD13に転送する。例えば、左端の画素FD信号図に示されるように、この時点でPixel AのFDが4/ff露光信号が蓄積された状態、Pixel BのFDが3/ff露光信号が蓄積された状態、Pixel CのFDが2/ff露光信号が蓄積された状態、Pixel DのFDが1/ff露光信号が蓄積された状態となっている。
【0040】
その後Pixel Aに対して、FDリセット信号RTAが送られFDの電荷がリセットされる。これにより、Pixel AのFDがリセットレベルの状態となるが、他の画素Pixel B~Dは、FDの電荷が維持される。
【0041】
続くFrame Bでは同様に電荷転送信号がTXB→TXC→TXD→TXAの順で送られ、各画素Pixel A~DのFD13に、更に1フレーム分の1/ff露光信号が追加された状態(Pixel AのFDが1/ff露光信号、Pixel BのFDが4/ff露光信号、Pixel CのFDが3/ff露光信号、Pixel DのFDが2/ff露光信号)となる。その後、FDリセット信号RTBによりPixel BのFDの電荷がリセットされるが、他の画素Pixel A,C,Dは、FDの電荷が維持される。
【0042】
続くFrame Cでは同様に電荷転送信号がTXC→TXD→TXA→TXBの順で送られ、各画素Pixel A~DのFD13に、更に1フレーム分の1/ff露光信号が追加された状態となる。その後、FDリセット信号RTCによりPixel CのFD容量(電荷)のみがリセットされる。
【0043】
続くFrame Dでは同様に電荷転送信号がTXD→TXA→TXB→TXCの順で送られ、各画素Pixel A~DのFD13に、更に1フレーム分の1/ff露光信号が追加された状態となる。その後、FDリセット信号RTDによりPixel DのFD容量(電荷)のみがリセットされる。以下、Frame Aの動作手順に戻り同様の動作を4フレーム周期で繰り返す。なお、画素ブロックがk×l画素からなるときは、k×lフレーム周期で上記の電荷転送処理を行うこととなる。
【0044】
1フレーム期間に生成される信号電荷を1/f
f露光信号とすると、上記動作により、Pixel A~Dの各画素のFD13の信号電荷は、FDリセットレベル(
図5では、0/4と表示)からフレームが進むごとに1/f
f →2/f
f →3/f
f →4/f
fと露光信号がたまっていき、4/f
f(
図5では、4/4と表示)の露光信号がたまるとFDリセットレベルに戻る、4フレーム周期の動作を繰り返す。また、各画素が1フレームずつ位相をずらして動作することになる。
【0045】
次に、
図6によりSC積算器30によってFD信号を積算する動作の詳細について説明する。
図6は、Frame Aの読出動作における画素駆動信号と、SC積算器30による積算動作を、制御信号P(高フレームレート撮影)と制御信号Q(高解像度撮影)を対比して図示している。図上段にFrame Aにおける電荷転送信号TX
A~TX
D及びリセット信号RT
AによってPixel A~DのFD13に蓄積される信号量を時系列で図示している。信号電荷の蓄積状態を示す表示は
図5と共通である。
【0046】
SC積算器30は、初めにスイッチφRTがONになることで積算容量32のチャージをリセットしたのち、入力切替スイッチ20のスイッチφA~φDの動作に対応したPixel A~Pixel DのFD出力を積算する。入力切替スイッチφA~φDは、前述したようにモード選択信号Fmnによって制御信号P若しくは制御信号Qのどちらで制御されるかが選択される。SC積算器30は、画素ブロックの画素数に対応した回数(k×l回、本実施形態では4回)でサンプリングして積算する積算処理を毎回行う。
【0047】
まず、制御信号Pを用いる場合の積算動作について説明する。制御信号Pを用いる場合(高フレームレート読出しの場合)、まず入力切替スイッチφ
A~φ
Dがφ
A →φ
B →φ
C →φ
Dの順にONになることにより、Pixel A(3/f
f露光信号)→Pixel B(2/f
f露光信号)→ Pixel C(1/f
f露光信号)→Pixel D(FDリセットレベル信号)の順で各画素のFD出力がサンプリングされ、SC積算器30で積算される。すなわち、k×l画素の出力が1回ずつサンプリングされ、積算される。積算動作終了後、SC積算器30の出力は
図4に示すように後段のADC40にサンプリングされデジタル信号D
mn,A1に変換される。なお、各画素にはサンプリングの直後、電荷転送信号TX
A(m)~TX
D(m)により、1フレーム分の信号電荷(1/f
f露光信号)がフォトダイオードから転送され蓄積される。
【0048】
ADC40のサンプリングが終了すると、SC積算器30はスイッチφRTにより積算容量32のチャージをリセットし、同様にPixel A(4/ff露光信号)→Pixel B(3/ff露光信号)→ Pixel C(2/ff露光信号)→Pixel D(1/ff露光信号)の順で各画素のFD出力をサンプリングしSC積算器30で積算する。積算後の出力はADC40にサンプリングされ同様にデジタル信号Dmn,A2に変換される。Dmn,A1とDmn,A2の差分|Dmn,A1-Dmn,A2|はPixel A~Dの1/ff露光信号の合計値と等しいため、この信号はPixel A~Pixel Dの4画素加算1/ff露光信号として扱うことができる。すなわち、制御信号Pのとき(モード選択信号Fmn=0のとき)、1フレームごとにk×l画素の加算信号が得られ、当該画素ブロックは高フレームレート撮影が行われる。
【0049】
次に制御信号Qによる積算動作を説明する。制御信号Qを用いる場合(高解像度読出しの場合)、スイッチφRTがONになりSC積算器30の積算容量32のチャージがリセットされた後、Frame Aでは、電荷転送信号TXA(m)により、1フレーム分の信号電荷(1/ff露光信号)がフォトダイオードからPixel AのFD13に転送され、Pixel Aの蓄積信号量が4/ff露光信号となる。次いで、入力切替スイッチ20のスイッチφAのみが連続的にONとなり、スイッチφB~φDはOFFのままのため、SC積算器30はPixel A(4/ff露光信号)の信号のみを4回(k×l回)マルチサンプリングする。積算結果はADC40により、Dmn,A1に変換される。なお、TXB(m)~TXD(m)によりPixel B~DのFD信号も蓄積されるが、Frame AではPixel B~DはSC積算器30に接続されない。
【0050】
続いて、スイッチφRTによりSC積算器30の積算容量32のチャージがリセットされ、FDリセット信号RTAにより、Pixel AのFD13の電荷がリセットされる。その後、同様にスイッチφAのみが連続的にONとなり、SC積算器30がPixel A(FDリセットレベル)を4回(k×l回)マルチサンプリングし積算する。積算結果はADC40により、Dmn,A2に変換される。Dmn,A1とDmn,A2の差分|Dmn,A1-Dmn,A2|はPixel Aの4/ff露光信号と等しいため、この信号はPixel Aの4/ff露光信号として扱うことができる。すなわち、制御信号Qのとき(モード選択信号Fmn=1のとき)、1フレームで1画素の露光信号が得られ、当該画素ブロックは高解像度撮影が行われる。
【0051】
図6に基づいて、Frame Aの読出動作手順・動作原理について説明したが、
図4に示された動作タイミングにより、同様の読出動作手順・動作原理がFrame B~Dについても適応される。すなわち、k×lフレーム期間でk×l画素の露光信号が個別に得られ、高解像度が実現できる。|D
mn,A1-D
mn,A2|の演算手法は限定されず、素子内のデジタル回路で行ってもよいし、撮像素子外部の計算手法を用いてもよい。
【0052】
図7に、入力されるモード選択信号の例と対応する出力信号形式の例を示す。
図7(a)に示すようにカラムごとにF(n)=(F
1n,F
2n,…,F
Vn) (n=1,2,…,H)が入力されるとき、F
mnが0若しくは1の値をとることによってイメージセンサが2つの領域に分けられる。
【0053】
図7(b)に示すように、モード選択信号F
mnが0の領域では1/f
f露光4画素加算信号が映像出力として得られるため局所的な高フレームレート撮像が実現できる。F
mnが1の領域は、4/f
f露光サブフレーム読出(Pixel A~D)信号を取得できるため、局所的な高解像度撮像を実現することができる。なお、モード選択信号F
mnが1の領域は、1フレームごとに各画素(Pixel A~D)の画素信号が順次取得されるが、各画素信号は回路上の処理により、それぞれ4フレーム期間(画素ブロック10内の全画素が読み出される期間)保持する。こうすることで、高解像度撮像の画素ブロックの映像出力が得られる。
【0054】
本実施形態に係る撮像素子によれば、解像度若しくはフレームレートのうちどちらの性能を優先するかを、外部から入力されるモード選択信号によって画素ブロック(k×l画素領域)ごとに指定することができる。したがって上述した同一画面内に動きの速い被写体と高精細な被写体が同時に映り込むような撮像シーンにおいても局所的な高フレームレート撮影若しくは高解像度撮影を実現することで、画面全体の画質を向上させることができる。
【0055】
(他の実施形態)
図8に、本発明の他の実施形態に係る撮像素子の回路構成例を示す。
【0056】
前記した実施形態では画素アレイ100の下側にH個のカラム読出回路201を設け、画素ブロック列に対して並列に読出回路を接続されていたが、画素ブロック列に対するカラム読出回路201の並列数は任意である。例えば、
図8に示すように、画素アレイ100の(画素ブロック列の)上側と下側に信号読出回路(カラム読出回路201)を設け、カラム読出回路201の総数を2H個に増やしてもよい。この場合、例えば、画素ブロックの奇数行を上側回路への信号線と接続し、画素ブロックの偶数行は下側回路への信号線と接続するなどの配線構造を用いることで、カラムピッチを維持したまま読出回路の並列数を2倍にすることができる。
【0057】
また、上記実施形態ではアナログ積算器としてSC積算器30を用いたが、画素からの複数の信号を順次アナログ加算ができる回路であれば、積算機能の実現方法は任意である。
【0058】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。例えば、実施形態に記載の各ブロック、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成ブロック、ステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 画素ブロック
11 フォトダイオード(PD)
12 転送ゲート
13 フローティングディフュージョン(FD)
14 出力トランジスタ
15 選択トランジスタ
16 リセットトランジスタ
17 信号読出線
20 入力切替スイッチ
30 スイッチトキャパシタ(SC)積算器
31 サンプリング容量
32 積算容量
33 OPアンプ
40 ADC(アナログ/デジタル変換器)
100 画素アレイ
110 行選択・画素駆動回路
200 信号読出回路
201 カラム読出回路
210 駆動信号生成回路