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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139361
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】モード同期レーザ
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/098 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
H01S3/098
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039700
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(74)【代理人】
【識別番号】100171848
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 裕美
(72)【発明者】
【氏名】セット ジ イヨン
(72)【発明者】
【氏名】江 鴻博
(72)【発明者】
【氏名】山下 真司
【テーマコード(参考)】
5F172
【Fターム(参考)】
5F172AF03
5F172AM08
5F172CC04
5F172EE13
5F172EE16
5F172NN22
5F172NQ49
5F172NQ53
5F172NQ61
(57)【要約】
【課題】ダメージ閾値による制限を有する可飽和吸収体に代替する耐久性が高い要素を用いて、高出力な光パルスを生成できるモード同期レーザを提供すること
【解決手段】モード同期レーザ100は、偏波保持型の共振部10と、共振部10中に配置される光増幅部20と、共振部10中に配置され、曲げ損失を有する偏波保持型の調整用導波路である第2光ファイバ31を有することで可飽和吸収特性を持たせた透過調整部30とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏波保持型の共振部と、
前記共振部中に配置される光増幅部と、
前記共振部中に配置され、曲げ損失を有する偏波保持型の調整用導波路を有することで可飽和吸収特性を持たせた透過調整部と、
を備えるモード同期レーザ。
【請求項2】
前記共振部は、偏波保持型の第1光ファイバを含み、前記調整用導波路は、強制的に曲げた偏波保持型の第2光ファイバである、請求項2に記載のモード同期レーザ。
【請求項3】
前記透過調整部は、相対的に低い第1強度の光が通過する際には、所定以上の第1曲げ損失を示し、相対的に高い第2強度の光が通過する際には、所定未満の第2曲げ損失を示す、請求項1及び2のいずれか一項に記載のモード同期レーザ。
【請求項4】
前記第2光ファイバは、非線形光学効果を有し、前記第2強度の光が通過する場合に、前記第1強度の光が通過する場合よりも屈折率が増加する、請求項2及び3のいずれか一項に記載のモード同期レーザ。
【請求項5】
前記第2光ファイバは、PANDAファイバであり、前記PANDAファイバの遅軸方向及び速軸方向のいずれか一方に曲げて巻きつけられる、請求項2~4のいずれか一項に記載のモード同期レーザ。
【請求項6】
強制的に曲げた前記第2光ファイバの輪の曲率半径は、一定である、請求項2~5のいずれか一項に記載のモード同期レーザ。
【請求項7】
前記第2光ファイバは、PANDAファイバであり、前記PANDAファイバの遅軸方向及び速軸方向のいずれか一方の偏波を用いる、請求項2~6のいずれか一項に記載のモード同期レーザ。
【請求項8】
前記第2光ファイバは、前記遅軸方向の偏波を用いる、請求項7に記載のモード同期レーザ。
【請求項9】
前記第1光ファイバは、PANDAファイバである、請求項2~8のいずれか一項に記載のモード同期レーザ。
【請求項10】
前記第1又は第2光ファイバの正規化周波数パラメータであるV値に関して、以下の条件式を満たす、請求項2~9のいずれか一項に記載のモード同期レーザ。
V1<V2
ただし、
V1:前記第1光ファイバのV値
V2:前記第2光ファイバのV値
なお、V値は以下の式で定義される。
V=πdNA/λ
ただし、
d:前記着目ファイバのコア径
NA:前記着目ファイバのコアの開口数
λ:前記着目ファイバに用いる周波数
【請求項11】
前記共振部は、前記第1光ファイバによってリング状に形成される、請求項2に記載のモード同期レーザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを共振器とするモード同期レーザに関し、特に高強度の短パルスを発生するモード同期レーザに関する。
【背景技術】
【0002】
モード同期レーザは、計測や医療等の分野で幅広く用いられている。一般的に、モード同期レーザでは、可飽和吸収体を用いて超短パルス列を生成することが知られている(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)。可飽和吸収体は、照射する光強度が強いほど吸収が飽和し、透過率が増加する特性を持つ。このため、ファイバ増幅器から放出される雑音成分の中からピークの強い成分が生き残り、発振する光パルスの種となる。可飽和吸収体としては、一般的にカーボン材料であるカーボンナノチューブ(CNT:carbon nanotube)等を用いる。しかしながら、CNT等は比較的低いダメージ閾値による制限があるため、極めて高い光出力が望めない。
【0003】
ファイバレーザにおける偏波保持は、高い環境安定性を必要とする実際のアプリケーションで重要である。材料ベースの偏波保持レーザは、光損傷に関する長期安定性及び耐久性に問題がある。これらの問題を解決するには、カー効果ベース(以下、カーベースとも呼ぶ)の手法を使用することができるが、カーベースのファイバレーザはほとんどが非偏波保持タイプである。カーベースのファイバレーザとして、以前、干渉型のPM-F8(例えば、非特許文献2参照)、干渉型のPM-F9(例えば、非特許文献3参照)、非線形偏光回転を用いたPM-NPR(例えば、非特許文献4参照)等が提案されている。しかしながら、PM-F8は、セルフスタートが容易でなく、PM-F9は、PM-F8の問題を解決するが複雑なファラデー偏光制御コンポーネントを必要とし、PM-NPRは、一対の偏光子の間に非線形偏光回転を生じさせるファイバーセクションを含み、温度や機械的変動といった環境に対する不安定性を有する。
【0004】
なお、可飽和吸収体に代えて、シングルモード光ファイバ(SMF:single mode optical fiber)を曲げるとともに出口に偏光子を配置することで生じる偏波依存性損失(PDL:Polarization Dependent Loss)を利用したモード同期レーザがある(例えば、非特許文献5及び6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-118348号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】U. Keller, "Recent developments in compact ultrafast lasers." Nature 424, 831-838 (2003).
【非特許文献2】J. W. Nicholson, et al. "A polarization maintaining, dispersion managed, femtosecond figure-eight fiber laser," Opt. Express 14, 8160-8167 (2006)
【非特許文献3】N. Kuse, et al. "All polarization-maintaining Er fiber-based optical frequency combs with nonlinear amplifying loop mirror." Opt. Express 24, 3095-3102 (2016)
【非特許文献4】J. Szczepanek, et al. "Nonlinear polarization evolution of ultrashort pulses in polarization maintaining fibers." Opt. Express 26, 13590-13604 (2018)
【非特許文献5】Q. Wang, et al. "Polarization dependence of bend loss for a standard singlemode fiber." Optics express 15.8 (2007): 4909-4920.
【非特許文献6】H. Jiang, et al. "Laser mode locking using a single-mode-fiber coil with enhanced polarization-dependent loss." Optics Letters 45.10 (2020): 2866-2869.
【発明の概要】
【0007】
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、ダメージ閾値による制限を有する可飽和吸収体に代替する耐久性が高い要素を用いて、高出力な光パルスを生成できるモード同期レーザを提供することを目的とする。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るモード同期レーザは、偏波保持型の共振部と、共振部中に配置される光増幅部と、共振部中に配置され、曲げ損失を有する偏波保持型の調整用導波路を有することで可飽和吸収特性を持たせた透過調整部とを備える。
【0009】
上記モード同期レーザでは、透過調整部において、調整用導波路の曲げ損失によって本来よりも透過率が低下するが、光強度が高くなると非線形光学効果によって透過率が上昇する。つまり、透過調整部は、光強度が低いと曲げの影響で調整用導波路の光の閉じ込め(導波)効果が低く、光は外部に漏れるが、光強度が高くなると非線形光学効果により光の閉じ込め効果が増大して、光の漏れが抑制される。このように、調整用導波路のみで過飽和吸収特性を実現するため、CNTのような可飽和吸収体を用いないで超短パルスを生成できる。したがって、CNT等の可飽和吸収体の長期耐久性やダメージ閾値のような制限をなくすことができ、高出力な光パルスを長期間に亘って生成できる。上記透過調整部を備えるモード同期レーザは、安定性が高く、かつ寿命が長い短パルスレーザを実現するものであり、さまざまな応用に役立つ。例えば、深部組織イメージング(TPM、CARS、SRS、OCT等)やレーザ微細加工のための光源として利用することができる。このようなモード同期レーザは、高い耐久性、低価格、小型等を達成することができる。
【0010】
本発明の具体的な側面では、上記モード同期レーザにおいて、共振部は、偏波保持型の第1光ファイバを含み、調整用導波路は、強制的に曲げた偏波保持型の第2光ファイバである。共振部を第1光ファイバで構成し、調整用導波路を第2光ファイバで構成することにより、小型及び軽量化を図ることができる。
【0011】
本発明の別の側面では、上記モード同期レーザにおいて、透過調整部は、相対的に低い第1強度の光が通過する際には、所定以上の第1曲げ損失を示し、相対的に高い第2強度の光が通過する際には、所定未満の第2曲げ損失を示す。この場合、透過調整部において、相対的に低い第1強度の光が通過する際には、第1曲げ損失が相対的に大きくなり、積極的に漏れ光を生じさせることができる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、第2光ファイバは、非線形光学効果を有し、第2強度の光が通過する場合に、第1強度の光が通過する場合よりも屈折率が増加する。この場合、非線形光学効果により、強い光強度の場合、ファイバコア内の屈折率が増加し、導波能力が向上し、曲げ損失が低減する。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、第2光ファイバは、PANDAファイバであり、PANDAファイバの遅軸方向及び速軸方向のいずれか一方に曲げて巻きつけられる。この場合、曲げ半径とループ回数とで曲げ損失を制御できる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、強制的に曲げた第2光ファイバの輪の曲率半径は、一定である。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、第2光ファイバは、PANDAファイバであり、PANDAファイバの遅軸方向及び速軸方向のいずれか一方の偏波を用いる。
【0016】
本発明のさらに別の側面では、第2光ファイバは、遅軸方向の偏波を用いる。
【0017】
本発明のさらに別の側面では、第1光ファイバは、PANDAファイバである。この場合、簡易及び確実に偏波を維持できる。
【0018】
本発明のさらに別の側面では、第1又は第2光ファイバの正規化周波数パラメータであるV値に関して、以下の条件式を満たす。
V1<V2
ただし、値V1は第1光ファイバのV値であり、値V2は第2光ファイバのV値である。
なお、V値は以下の式で定義される。
V=πdNA/λ
ただし、値dは着目ファイバのコア径であり、値NAは着目ファイバのコアの開口数であり、値λは着目ファイバに用いる周波数である。着目ファイバとは、第1又は第2光ファイバを意味する。
【0019】
本発明のさらに別の側面では、共振部は、第1光ファイバによってリング状に形成される。この場合、例えば反射体が不要になり、メンテナンスが略不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態のモード同期レーザを説明する概念図である。
図2図1のモード同期レーザに用いられる偏波保持ファイバを説明する図である。
図3】(A)及び(B)は、偏波保持ファイバの曲げ方向について説明する図であり、(C)及び(D)は、偏波保持ファイバで用いる偏波の方向について説明する図である。
図4】(A)及び(B)は、光ファイバの曲げ損失に関して、有限要素法に基づく解析結果を示す図である。
図5図4で解析した偏波保持型の光ファイバの典型断面図である。
図6図1のモード同期レーザに組み込まれる透過調整部の構造を説明する概念図である。
図7】(A)は、透過調整部の第2光ファイバを曲げた場合のコア周辺の屈折率及び光強度分布等を説明する図であり、(B)は、強制的に曲げた第2光ファイバにおける非線形光学効果の影響等を説明する図である
図8】(A)は、第2光ファイバを曲げた場合の光強度と透過率との関係について説明する概念図であり、(B)は、第2光ファイバを曲げた場合の光強度と曲げ損失との関係について説明する概念図である。
図9】カー効果に関して、有限要素法に基づく解析結果を示す図である。
図10】透過調整部を設けた場合の強度スキャンの結果を示す図である。
図11】第2実施形態のモード同期レーザを説明する図である。
図12】第3実施形態のモード同期レーザを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第1実施形態〕
以下、図1等を参照して、本発明に係る第1実施形態のモード同期レーザについて説明する。
【0022】
図1に示す第1実施形態のモード同期レーザ100は、受動モード同期レーザであり、共振部10と、光増幅部20と、透過調整部30と、アイソレータ40と、出力カプラ50とを備える。モード同期レーザ100は、共振部10に、光増幅部20と、透過調整部30と、アイソレータ40と、出力カプラ50とを備え、これらを融着等によって接合したものである。図示のモード同期レーザ100は、一方向動作のリング型ファイバレーザの例である。モード同期レーザ100は、全ファイバ偏波保持型モード同期レーザである。
【0023】
モード同期レーザ100のうち、共振部10は、第1光ファイバ11によってリング状に形成される。共振部10を第1光ファイバ11で形成することにより、小型化及び軽量化を図ることができる。また、共振部10をリング状に形成することにより、例えば反射体が不要になり、メンテナンスが略不要となる。第1光ファイバ11は、偏波保持型の光ファイバ(PMF:Polarization Maintaining Fiber)である。
【0024】
偏波保持型の光ファイバ(PMF)は、光弾性効果や構造変化を利用してコアの縦横で実効屈折率が異なる複屈折率性を生じさせ、伝搬する光の偏波面保持特性を高めた光ファイバである。偏波保持型ファイバでは、光ファイバの断面の縦横で明確な屈折率差を持たせ、縦と横とで偏波が干渉しないようにしている。偏波保持型ファイバには、光弾性効果を使って複屈折率性を持たせた応力付与型と、コアの縦横で実効屈折率を変化させた構造型とがある。応力付与型は、クラッド断面の一方向にクラッド材と比べて熱収縮率が非常に大きい応力付与材料(SAP:Stress Applying Parts)を、コアを挟むように入れたものである。偏波保持型ファイバは、一般的には応力付与型が多く使われており、例えば、応力付与材を丸型にしたPANDA(Polarization-maintaining AND Absorption-reducing)型や、蝶ネクタイ型にしたボウタイ(Bow-tie)型、楕円型にした楕円ジャケットファイバ、偏波保持フォトニックス結晶ファイバがある。本実施形態では、図2に示す偏波保持型ファイバをPANDA型とした場合について説明する。PANDA型の偏波保持型ファイバであるPANDAファイバを用いることにより、簡易及び確実に偏波を維持できる。
【0025】
図2に示すように、PANDAファイバPFは、コア1と、クラッド2と、応力付与部3と、被覆部4とを有する。PANDAファイバPFは、ファイバの中心部にコア1が配置され、コア1の周囲にクラッド2が配置され、コア1の両側に円形の応力付与部3が2つ配置された構造になっている。被覆部4は、クラッド2の周囲を覆っており、ファイバの内部を保護している。コア1の屈折率は、クラッド2の屈折率よりも高くなっている。応力付与部3は、線膨張率を大きくするために例えばBがドープされた石英ガラスロッドで形成されている。応力付与部3は、純粋石英ガラスのクラッド部に比べ大きな線膨張率を有し、応力付与部3に引っ張りひずみが生じることにより、図中のX軸に沿ってコアに応力が印加されている。なお、図2のX軸はPANDAファイバPFの遅軸を示し、Y軸はPANDAファイバPFの速軸を示す。
【0026】
光増幅部20は、ゲインファイバ21と、励起部22とを有する。光増幅部20は、共振部10中に配置される。光増幅部20は、例えば半導体光増幅器、ファイバラマン増幅器等の他の増幅媒質を用いた光増幅素子に置き換えることができる。
【0027】
ゲインファイバ21は、増幅機能を備えるようにドープされた偏波保持型の光ファイバである。具体的には、ゲインファイバ21は、エルビウム(Er)等の希土類元素を添加したドープファイバであり、共振部10を周回する光を増幅する。ゲインファイバ21は、第1光ファイバ11にインラインで接続される。
【0028】
励起部22は、励起光源22aと合波カプラ22bとを有する。励起部22は、ゲインファイバ21に励起光PLを供給する。励起光源22aは、例えば半導体レーザで構成され、例えば波長980nmの励起光を出力する。合波カプラ22bは、第1光ファイバ11を例えば波長1550nmの光が伝搬し周回することを妨げないものとなっている。励起部22を介して共振部10に導入された励起光は、ゲインファイバ21のドープファイバに添加されたドーパントを励起し、出力用の共振光の波長での誘導放出を可能にする。
【0029】
透過調整部30は、共振部10中に配置され、曲げ損失を有する調整用導波路AWを有することで可飽和吸収特性を持たせたものである。具体的には、調整用導波路AWは、第2光ファイバ31を強制的に曲げることによって可飽和吸収特性を持たせた偏波保持型の光ファイバである。調整用導波路AWを第2光ファイバ31で形成することにより、小型化及び軽量化を図ることができる。
【0030】
第2光ファイバ31は、例えばPANDAファイバPFである。第2光ファイバ31は、PANDAファイバPFの遅軸方向及び速軸方向のいずれか一方に曲げて巻きつけられる。これにより、曲げ半径とループ回数とで曲げ損失を制御できる。図3(A)は、第2光ファイバ31を遅軸方向(X軸方向)に曲げた場合を示し、図3(B)は、第2光ファイバ31を速軸方向(Y軸方向)に曲げた場合を示す。また、第2光ファイバ31は、PANDAファイバPFの遅軸方向及び速軸方向のいずれか一方の偏波を用いる。特に、第2光ファイバ31が遅軸方向の偏波を用いる態様とする。図3(C)は、第2光ファイバ31を遅軸方向(X軸方向)の偏波Pを用いた場合を示し、図3(D)は、第2光ファイバ31を速軸方向(Y軸方向)の偏波Pを用いた場合を示す。透過調整部30は、図3(A)及び3(B)に示す2つの曲げパターンのいずれかと、図3(C)及び3(B)に示す2つの偏波パターンのいずれかとを組み合わせた4通りのパターンで第2光ファイバ31を用いている。
【0031】
図4(A)及び4(B)は、光ファイバの曲げ損失に関して、有限要素法(FEM:Finite Element Method)に基づき、COMSOL Multiphysics(登録商標:COMSOL社)を用いて計算された結果を示す。図4(A)及び4(B)は、偏波保持型の光ファイバ内のモード分布を示す。図4(A)は、光ファイバを図3(A)のように遅軸方向(X軸方向)に曲げた場合を示し、図4(B)は、光ファイバを図3(B)のように速軸方向(Y軸方向)に曲げた場合を示す。図5は、COMSOL Multiphysicsに描画する偏波保持型の光ファイバの典型断面図である。図5において、領域A1は、曲げ損失を計算するための整合層であり、領域A2~A5は、図2に示すPANDAファイバPFのコア1、クラッド2、応力付与部3、被覆部4にそれぞれ対応する。図4(A)及び4(B)に示すように、光ファイバを曲げるとモードが曲げ方向に広がり、矢印LE方向に光が漏れ出していることがわかる。
【0032】
図6に示すように、透過調整部30は、例えば、金属製の筒状の軸部材90に形成した溝91に沿って第2光ファイバ31を巻きつけたものである。強制的に曲げた第2光ファイバ31の輪の曲率半径は、一定であることが好ましい。なお、第2光ファイバ31を曲げてコイル状にする方法は、適宜変更することができる。軸部材90の内部に巻きつける構成でもよいし、軸部材90を用いない構成でもよい。第2光ファイバ31の曲率半径は、例えば5mm~20mmである。また、第2光ファイバ31の巻き数は、例えば1~10回である。
【0033】
以下、透過調整部30が有する可飽和吸収特性について説明する。第2光ファイバ31は、強制的に曲げることにより、内部の屈折率構造が変化し、光漏れが生じやすくなる。透過調整部30において、非線形光学効果により光強度に依存した屈折率変化が生じ、伝搬する光の強度が高いとき、非線形屈折率の上昇により伝搬軌道は光ファイバのコアの中心に寄る。一方、伝搬する光の強度が低いとき、非線形屈折率の低下により伝搬軌道は光ファイバのコアの外に寄る。見方を変えれば、ファイバに大きな曲率が生じ、コアとクラッドとの境界に入射する角度が臨界角より小さくなるため、光が全反射せず、一部の光がクラッドに放射される曲げ損失が生じ、伝搬する光の強度が高いとき、非線形光学効果によってコアの屈折率が高まってクラッドへの漏れ出しが抑制される。結果的に、比較的低い強度の通常の光が入射する場合、透過調整部30では、光ファイバの閉じ込め効果が低下し、光は外部に漏れ、曲げ損失が増加する。一方、高い強度の光が入射する場合、透過調整部30では、非線形光学効果によって光ファイバの閉じ込め効果が相対的に高まり、光の漏れが抑制され、曲げ損失が低下する。換言すると、非線形曲げ損失や光強度依存曲げ損失といった現象が生じる。つまり、透過調整部30は、光強度の増加に伴って透過率が増加し、可飽和吸収体のように機能する。
【0034】
図7(A)は、第2光ファイバ31を曲げた場合のコア周辺の屈折率及び光強度分布等を説明する図である。図7(A)において、実線J1は第2光ファイバ31を曲げたときの屈折率nを示し、破線J2は第2光ファイバ31を曲げないときの屈折率nを示す。また、実線K1は第2光ファイバ31を曲げたときの光強度分布を示し、破線K2は第2光ファイバ31を曲げないときの光強度分布を示す。第2光ファイバ31を強制的に曲げると、図7(A)に示すように、曲げの影響で第2光ファイバ31内の屈折率が屈折率nから屈折率nに変化し、光強度分布がコアの外側に向かって若干シフトする。強制的に曲げた状態の第2光ファイバ31では、光強度が高い場合、曲げに起因する透過率への影響は少ないが、光強度が低い場合、曲げに起因する透過率への影響を受けやすくなり、曲げ損失が発生する。
【0035】
第2光ファイバ31は、非線形光学効果を有し、高い強度の光(相対的に強い第2強度の光)が通過する場合に、低い強度の光(相対的に弱い第1強度の光)が通過する場合よりも屈折率が増加する。この非線形光学効果により、強い光強度の場合、ファイバコア内の屈折率が増加し、導波能力が向上し、曲げ損失が低減する。非線形光学効果とは、高強度の光が物質に入射した際に誘起される非線形分極がもたらす光学効果である。非線形光学効果としては、屈折率変化が生じる現象がある。屈折率変化に関わる非線形光学効果としては、例えば、カー効果、ポッケルス効果等が挙げられる。本実施形態では、3次非線形過程であるカー効果による光強度に依存する屈折率変化n=n+nIを利用する。ここで、nは線形屈折率であり、nは2次の非線形屈折率であり、Iは光強度である。換言すれば、強い光電界(E)が媒質中を伝搬する際に、カー効果により光強度に依存した屈折率変化n=n+n<E>が生じる。なお、非線形光学効果は、カー効果に限らず、屈折率変化が生じる非線形光学効果であれば適宜適用することができる。
【0036】
石英ガラスのカー効果の応答速度は10fs以下であるので、本発明で提案している手法は同じような応答速度を持つ。従来の可飽和吸収体の応答速度に関して、CNTの場合は約500fs、グラフェンの場合は約300fsであり、従来の可飽和吸収体の応答速度と比べ、第2光ファイバ31を用いた場合の応答速度は大幅に向上している。
【0037】
図7(B)は、強制的に曲げた第2光ファイバ31における非線形光学効果の影響等を説明する図である。図7(B)の右側の軸は光強度を表す。図7(B)において、実線L1は非線形光学効果を伴わない屈折率を示し、破線L2は非線形光学効果を伴う屈折率を示す。また、一点鎖線M1は高い強度の光(相対的に強い第2強度の光)の強度分布を示し、二点鎖線M2は低い強度の光(相対的に弱い第1強度の光)の強度分布を示す。図7(B)に示すように、透過調整部30において、光強度が高くなると非線形光学効果、具体的には、カー効果によって光強度分布がコア径方向に狭くなり、ファイバのコア内に光が閉じ込められるが、光強度が低くなると光強度分布がコア径方向に広くなり、ファイバのコアから外に光が漏れ出している。透過調整部30は、光強度が低い場合に、積極的に漏れ光を生じさせる構造とすることで、可飽和吸収体と等価な状態を生じさせている。
【0038】
図8(A)は、第2光ファイバ31を曲げた場合の光強度と透過率との関係について説明する概念図である。図8(B)は、第2光ファイバ31を曲げた場合の光強度と曲げ損失との関係について説明する概念図である。図中の符号ΔTは変調深度を示し、符号Isatは飽和強度を示し、符号αnsは不飽和損失を示し、符号αはバックグラウンド吸収損失を示す。変調深度ΔT、飽和強度Isat、不飽和損失αns、バックグラウンド吸収損失αについては、以下の文献1及び非特許文献1を参考にしている(文献1:J. Jeon, et al. "Numerical study on the minimum modulation depth of a saturable absorber for stable fiber laser mode locking." JOSA B, 2015, 32(1): 31-37.)。変調深度ΔTは、バックグラウンド吸収損失αと不飽和損失αnsとの差で定義される。図8(A)及び8(B)に示すように、強制的に曲げた第2光ファイバ31では、光強度が低い場合、曲げ損失の影響により透過率は低くなり、光強度が高い場合、曲げ損失の影響が減少する。すなわち、透過調整部30は、相対的に低い第1強度の光が通過する際には、所定以上の第1曲げ損失を示し、相対的に高い第2強度の光が通過する際には、所定未満の第2曲げ損失を示す。これにより、透過調整部30において、相対的に低い第1強度の光が通過する際には、第1曲げ損失が相対的に大きくなり、積極的に漏れ光を生じさせることができる。つまり、透過調整部30では、発振レベル未満の所定強度の光に関して曲げ損失(第1曲げ損失に相当)によってクラッドへの光漏れを生じさせる。また、相対的に高い第2強度の光が通過する際には、第2曲げ損失が相対的に小さくなり、短パルスを発生するのに必要な過飽和吸収特性に相当する。つまり、曲げ損失と非線形光学効果との相互作用により、発振レベル以上の強度の光の漏れを低減できる。本実施形態では、低い強度の光に対する曲げ損失は3dB~10dB程度である。
【0039】
第2光ファイバ31を曲げた場合、バックグラウンド吸収損失は例えば5dB~7dBであり、変調深度は最大5%である。この場合において、光強度が高くなると、損失は4.8dB~6.8dBになる可能性がある。モード同期レーザ100では、利得は10dB以上と非常に高く、5dB~10dB程度に設計される。カー効果導波路(カー効果及び曲げ損失の特性を利用した透過調整部30)における損失は、従来型の可飽和吸収体より大きい。しかし、低損失は必須のものではない。レーザ系において、利得媒体は、キャビティ全体での損失を上回るような利得を与える。ファイバレーザ系において、利得は典型的には10dB以上でとても高い。それゆえ、カー効果導波路における損失は、典型的には5dB~10dBに設計される。例えば、本実施形態のケースでは、ファイバコイルが80%の損失を示し、光強度が強くなってこの損失が75%になれば、5%の強度依存損失(いわゆる変調深度)となる。モードロックレーザ系で、特にファイバレーザでは、5%以下の変調深度で足るとされる。
【0040】
モード同期レーザ100は、第1又は第2光ファイバ11,31の正規化周波数パラメータであるV値に関して、以下の条件式(1)を満たす。
V1<V2 … (1)
ただし、値V1は第1光ファイバ11のV値であり、値V2は第2光ファイバ31のV値である。
なお、V値は以下の式で定義される。
V=πdNA/λ … (2)
ただし、値dは着目ファイバのコア径であり、値NAは着目ファイバのコアの開口数であり、値λは着目ファイバに用いる周波数である。着目ファイバとは、第1又は第2光ファイバ11,31を意味する。この場合、第2光ファイバ31における曲げ損失が増え、漏れ光を生じさせるために、透過調整部30における第2光ファイバ31の曲率半径を小さくしすぎる必要がなく、また、巻き数を減らすことができる。本実施形態において、第1光ファイバ11のV値は例えば1.8~2.0であり、第2光ファイバ31のV値は例えば2.2~2.4である。
【0041】
通常のV値の従来型の偏波保持ファイバは、例えば1550nmといった動作波長で低い曲げ損失を有するものとなっている。カー効果導波路に必要な損失を実現するため、例えば5dBすなわち70%の損失が必要となり、従来型の1550nm用の偏波保持ファイバでは極めて小さな直径で曲げることが必要となる。本実施形態では、短波長用で低いV値に設計された従来型のファイバを用いることを提案する。例えば、1064nm用の偏波保持ファイバを1550nmといった長波長側で使用し、適切な曲げ損失を安全な曲げ直径で実現することができる。
【0042】
図1に戻って、アイソレータ40は、第1光ファイバ11中に配置されるインライン型アイソレータである。共振部10中では、アイソレータ40の順方向、図1の例では半時計方向B1にのみ光が伝搬するようになっている。
【0043】
出力カプラ50は、第1光ファイバ11中に配置される光カプラである。モード同期レーザ100によって形成されたレーザ光BOは、出力カプラ50の出力ポート51に接続された出力光ファイバ52を介して外部に出力される。
【0044】
以下、モード同期レーザ100の動作について説明する。モード同期レーザ100では、半時計回りB1に伝搬する光が周回することで共振しつつ増幅し特定のモードに絞られる。励起部22の励起光源22aによって、ゲインファイバ21に例えば波長980nmの励起光PLを供給する。ゲインファイバ21では、励起光PLによって、ゲインファイバ21のドープファイバに添加されたドーパントが励起され、出力用の共振光の波長(例えば波長1550nm)での誘導放出が起こり、光が増幅される。また、ゲインファイバ21は、共振部10を周回する光を増幅する。透過調整部30では、可飽和吸収特性を有することにより、光強度の強いパルスの中心部分が通過するが、光強度の弱いパルスの両翼は強い吸収を受けるため短パルス化が生じる。光が共振部10を周回することにより共振条件に合ったモードに絞られる。出力カプラ50において、モード同期レーザ100によって形成されたレーザ光BOは、出力光ファイバ52を介して高出力の超短パルスとして外部に出力される。
【0045】
(実施例)
図9は、カー効果に関して、有限要素法に基づき、COMSOL Multiphysicsを用いて計算された結果を示す。図9は、偏波保持型の光ファイバでの入射ピークパワーと透過率との関係を示す。COMSOL Multiphysicsに描画する偏波保持型の光ファイバの典型断面図は図5と同様である。図9に示すように、光強度が弱い場合、カー効果がなく、曲げ損失の影響により透過率は低くなる。光強度が強くなるに従い、カー効果の影響を受けるようになり、透過率が上昇する。以上のように、カー効果と曲げ損失とを組み合わせることにより、偏波保持型の光ファイバにおいて、過飽和吸収体と同様の特性を持たせることができる。
【0046】
図10は、本実施形態の透過調整部30(コイル状の第2光ファイバ31)を設けた場合の強度スキャン(I-scan)の結果を示す。I-scanについては、以下の文献2を参考にしている(文献2:W. Zhao, et al. "All-Fiber Saturable Absorbers for Ultrafast Fiber Lasers." in IEEE Photonics Journal, vol. 11, no. 5, pp. 1-19, Oct. 2019, Art no. 7104019, doi: 10.1109/JPHOT.2019.2941580)。図10に示す変調深度ΔTについては、文献1の式(1)を参照して求めた。図10に示すように、透過調整部30を設けた場合、透過率は光強度依存性を示し、飽和吸収特性を観察することができる。
【0047】
上記モード同期レーザ100では、透過調整部30において、調整用導波路AWである第2光ファイバ31の曲げ損失によって本来よりも透過率が低下するが、光強度が高くなると非線形光学効果によって透過率が上昇する。つまり、透過調整部30は、光強度が低いと曲げの影響で第2光ファイバ31の光の閉じ込め(導波)効果が低く、光は外部に漏れるが、光強度が高くなると非線形光学効果により光の閉じ込め効果が増大して、光の漏れが抑制される。このように、第2光ファイバ31のみで過飽和吸収特性を実現するため、CNTのような可飽和吸収体を用いないで超短パルスを生成できる。したがって、CNT等の可飽和吸収体の長期耐久性やダメージ閾値のような制限をなくすことができ、高出力な光パルスを長期間に亘って生成できる。上記透過調整部30を備えるモード同期レーザ100は、安定性が高く、かつ寿命が長い短パルスレーザを実現するものであり、さまざまな応用に役立つ。例えば、深部組織イメージング(TPM、CARS、SRS、OCT等)やレーザ微細加工のための光源として利用することができる。このようなモード同期レーザ100は、高い耐久性、低価格、小型等を達成することができる。例えば、従来の内視鏡技術と比較すると、モード同期レーザ100を用いることで、深部組織イメージングにおいて、測定時間が速く、侵襲性が低く、より深部に到達できる。また、従来の顕微鏡技術と比べて、モード同期レーザ100を用いることで、組織のより深い内部へ浸透し、よりクリアなイメージを取得できる。
【0048】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係るモード同期レーザについて説明する。なお、第2実施形態に係るモード同期レーザは、第1実施形態を変形したものであり、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。
【0049】
図11に示す第2実施形態のモード同期レーザ100は、共振部10と、光増幅部20と、透過調整部30と、出力カプラ50とを備える。本実施形態のモード同期レーザ100は、双方向動作のリング型ファイバレーザの例である。励起光源22aから出力された光は、半時計回りC1及び時計回りC2に分岐し、共振部10において、光は半時計回りC1及び時計回りC2の双方向に伝搬する。
【0050】
以下、本実施形態のモード同期レーザ100の動作について説明する。モード同期レーザ100では、半時計回りC1及び時計回りC2に伝搬する光が周回することで共振しつつ増幅し特定のモードに絞られる。励起部22の励起光源22aによって、ゲインファイバ21に例えば波長980nmの励起光PLを供給する。ゲインファイバ21では、励起光PLによって、ゲインファイバ21のドープファイバに添加されたドーパントが励起され、出力用の共振光の波長(例えば波長1550nm)での誘導放出が起こり、光が増幅される。また、ゲインファイバ21は、共振部10を周回する光を増幅する。透過調整部30では、可飽和吸収特性を有することにより、光強度の強いパルスの中心部分が通過するが、光強度の弱いパルスの両翼は強い吸収を受けるため短パルス化が生じる。光が共振部10を周回することにより共振条件に合ったモードに絞られる。出力カプラ50において、モード同期レーザ100によって形成されたレーザ光BOは、出力光ファイバ52を介して高出力の超短パルスとして外部に出力される。
【0051】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係るモード同期レーザについて説明する。なお、第3実施形態に係るモード同期レーザは、第1実施形態を変形したものであり、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。
【0052】
図12に示す第3実施形態のモード同期レーザ100は、共振部10と、光増幅部20と、透過調整部30と、全反射ミラー60と、出力ミラー70とを備える。全反射ミラー60は、折り返しミラーであり、共振部10を伝播する光を略反射する。出力ミラーは、例えば40%~70%の反射率を有する部分透過ミラーであり、増幅された光の一部である共振条件に合ったモードに絞られたレーザ光OBを高出力の超短パルスとして外部へ出力する。本実施形態のモード同期レーザ100は、直線型ファイバレーザの例である。モード同期レーザ100は、共振部10を全反射ミラー60と出力ミラー70とで挟んだ構成であり、全反射ミラー60と出力ミラー70との間で、光は共振され増幅される。
【0053】
〔その他〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、モード同期レーザ100で使用する励起用レーザ光の波長等は、様々なものを使用できる。
【0054】
また、上記実施形態において、モード同期レーザ100の構成は適宜変更することができ、例えば共振部10中に偏波コントローラを設ける構成としてもよい。
【0055】
また、上記実施形態において、共振部10が第1光ファイバ11を含む構成であるとしたが、モード同期レーザ100は、光ファイバを用いた他の導波路式光デバイスにも適用することができる。導波路式光デバイスとしては、例えば、PLC(Photonics Lightwave Circuits)、シリコンフォトニクス導波路(Silicon Photonics Waveguides)、半導体式導波路(InP、GaAs、InGaAsP等)が挙げられる。
【0056】
また、上記実施形態において、透過調整部30の調整用導波路AWとして、強制的に曲げた第2光ファイバ31を有する構成としたが、他の導波路式光デバイスを用いることができる。このような調整用導波路AWは、直線の導波路を基準に、光路を曲げることで応力なく曲げ損失を生じさせたものである。この場合、調整用導波路AWは、共振部よりも曲げ損失が大きい。導波路式光デバイスとしては、例えば、PLC、シリコンフォトニクス導波路、半導体式導波路(InP、GaAs、InGaAsP等)が挙げられる。
【符号の説明】
【0057】
1…コア、 2…クラッド、 3…応力付与部、 4…被覆部、 10…共振部、 11…第1光ファイバ、 20…光増幅部、 21…ゲインファイバ、 22…励起部、 22a…励起光源、 22b…合波カプラ、 30…透過調整部、 31…第2光ファイバ、 40…アイソレータ、 50…出力カプラ、 51…出力ポート、 52…光ファイバ、 60…全反射ミラー、 70…出力ミラー、 90…軸部材、 91…溝、 100…モード同期レーザ、 AW…調整用導波路、 BO…レーザ光、 P…偏波、 PF…PANDAファイバ、 PL…励起光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12