(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139416
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】研磨液、研磨液の製造方法及び研磨方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220915BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20220915BHJP
B24B 37/12 20120101ALI20220915BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20220915BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 622E
B24B37/00 H
B24B37/12 D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039792
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】有福 法久
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AB04
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3C158ED28
5F057AA21
5F057AA27
5F057BA12
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5F057EA29
5F057FA43
(57)【要約】
【課題】金属イオンを回収するために、廃液全体を蒸発させる等の作業が必要になると、金属イオンの回収作業は非常に煩雑になる。この点に鑑み、廃液を蒸発させる場合に比べて容易に金属イオンを回収する。
【解決手段】研磨パッドを使用して被加工物の少なくとも一方の面を研磨する際に、研磨パッドに供給される研磨液であって、研磨液は、砥粒を含有しており、砥粒の表面には、金属イオンに配位して金属錯体を形成可能な官能基が設けられている研磨液を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨パッドを使用して被加工物の少なくとも一方の面を研磨する際に、該研磨パッドに供給される研磨液であって、
該研磨液は、砥粒を含有しており、
該砥粒の表面には、金属イオンに配位して金属錯体を形成可能な官能基が設けられていることを特徴とする研磨液。
【請求項2】
研磨パッドを使用して被加工物の少なくとも一方の面を研磨する際に、該研磨パッドに供給される研磨液の製造方法であって、
砥粒と、純水と、カップリング剤と、を有する研磨液を撹拌する撹拌工程を備え、
該撹拌工程後における該砥粒の表面には、金属イオンに配位して金属錯体を形成可能な官能基が設けられていることを特徴とする研磨液の製造方法。
【請求項3】
研磨パッドを使用して被加工物の少なくとも一方の面を研磨する研磨方法であって、
該被加工物をチャックテーブルの保持面で保持する保持工程と、
金属イオンに配位して金属錯体を形成可能な官能基が表面に設けられている砥粒を含有する研磨液を、該研磨パッドに供給しながら、該研磨パッドで該一方の面側を研磨する研磨工程と、を備えることを特徴とする研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッドを使用して被加工物を研磨する際に研磨パッドに供給される研磨液、当該研磨液の製造方法、及び、当該研磨液を用いた被加工物の研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、パソコン等の電子機器には、デバイスチップが搭載される。デバイスチップは、例えば、シリコン製のウェーハの表面側に、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスを形成した後、ウェーハをデバイス単位に分割することで製造される。
【0003】
ウェーハの分割前には、ウェーハを所定の厚さに薄化するために、通常、ウェーハの裏面側に対して粗研削及び仕上げ研削を順次施す(例えば、特許文献1参照)。しかし、研削に伴い、ウェーハの裏面側には研削痕(ソーマーク)が形成される。
【0004】
研削痕が残留した状態で個片化されたデバイスチップの抗折強度は、研削痕が除去されたデバイスチップの抗折強度に比べて低いので、通常、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)により、研削痕が除去される(例えば、特許文献2参照)。例えば、特許文献2に記載の様に、砥粒を含まない研磨パッドに、遊離砥粒を含む研磨液(スラリー)を供給して、ウェーハが研磨される。
【0005】
ところで、研磨液には、銅イオン等の金属イオンが含まれていることがある。この様な金属イオンは、ウェーハを汚染するので、通常、金属汚染を防止するために、エチレンジアミン(ethylenediamine:EDA)等のキレート剤が添加された研磨液が使用される。
【0006】
EDA等の配位子が金属イオンに配位してキレート錯体を形成することで、ウェーハの金属汚染は防止される。しかし、使用後の研磨液(即ち、廃液)中の金属イオンを回収することは、比較的難しい。
【0007】
例えば、キレート錯体となった金属イオンは、イオン交換樹脂を用いても回収できないので、廃液全体を蒸発させる等の作業が必要となる。それゆえ、廃液中の金属イオンの回収作業は、非常に煩雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-288881号公報
【特許文献2】特開平8-99265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、廃液を蒸発させる場合に比べて容易に金属イオンを回収することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、研磨パッドを使用して被加工物の少なくとも一方の面を研磨する際に、該研磨パッドに供給される研磨液であって、該研磨液は、砥粒を含有しており、該砥粒の表面には、金属イオンに配位して金属錯体を形成可能な官能基が設けられている研磨液が提供される。
【0011】
本発明の他の態様によれば、研磨パッドを使用して被加工物の少なくとも一方の面を研磨する際に、該研磨パッドに供給される研磨液の製造方法であって、砥粒と、純水と、カップリング剤と、を有する研磨液を撹拌する撹拌工程を備え、該撹拌工程後における該砥粒の表面には、金属イオンに配位して金属錯体を形成可能な官能基が設けられている研磨液の製造方法が提供される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、研磨パッドを使用して被加工物の少なくとも一方の面を研磨する研磨方法であって、該被加工物をチャックテーブルの保持面で保持する保持工程と、金属イオンに配位して金属錯体を形成可能な官能基が表面に設けられている砥粒を含有する研磨液を、該研磨パッドに供給しながら、該研磨パッドで該一方の面側を研磨する研磨工程と、を備える研磨方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様に係る研磨液に含まれる砥粒の表面には、金属イオンに配位可能な官能基が設けられている。それゆえ、廃液中の砥粒を回収すれば、廃液に含まれている金属イオンを回収できるので、廃液を蒸発させる場合に比べて容易に金属イオンを回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。まず、本実施形態の研磨液1について説明する。
図1は、研磨液1の概要図である。研磨液1は、砥粒を有しない研磨パッド20(
図4参照)で被加工物11を研磨する際に、研磨パッド20に供給される。
【0016】
研磨液1は、通常、多数の砥粒3(即ち、遊離砥粒)を含む。砥粒3は、シリカ(酸化シリコン。例えば、SiO2)、セリア(酸化セリウム。例えば、CeO2)、GC(緑色炭化ケイ素)、WA(ホワイトアランダム)等から選択される1種類の材料で形成されている。
【0017】
砥粒3の大きさは、通常、粒子径で表現される。粒子径の表し方には、幾何学的径、相当径等の既知の手法がある。幾何学的径には、フェレー(Feret)径、定方向最大径(Krummbein径)、Martin径、ふるい径等があり、相当径には、投影面積円相当径(Heywood径)、等表面積球相当径、等体積球相当径、ストークス径、光散乱径等がある。
【0018】
砥粒3の粒子群の粒子径を特定するためには、最も頻度の高い粒子径(即ち、モード径)、頻度の累積が全体の50%になるときの粒子径(即ち、メジアン径。D50と表現することもある。)、重量、面積、体積等における算術平均径等が使用される。
【0019】
本実施形態の砥粒3の表面3aには、金属イオンに配位してキレート錯体(金属錯体)9(
図2参照)を形成可能な所定の官能基が設けられている。例えば、粉体状の砥粒3を液体のカップリング剤に浸漬して、砥粒3に対して表面処理を施すことにより、表面3aが所定の官能基で修飾される。
【0020】
本実施形態ではカップリング剤として、シランカップリング剤を用いる。シランカップリング剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール基含有シランカップリング剤が用いられる。
【0021】
ベンゾトリアゾール基含有シランカップリング剤の例を、化学式1又は化学式2に示す。なお、化学式1及び化学式2において、Rは所定の炭素数を有するアルキル基を意味する。また、化学式1において、Meはメチル基を意味し、化学式2において、Etはエチル基を意味する。
【0022】
【0023】
【0024】
シリカ、セリア、GC、WA等で形成された砥粒3の表面3aには、ヒドロキシル基(OH基)が存在しており、このヒドロキシル基と、カップリング剤とを、反応(水素結合、脱水縮合など)させることで、
図1に示す様に、表面3aにベンゾトリアゾール(benzotriazole、以下、Btと略記する)基5を設けることができる。
【0025】
例えば、Bt基5を含有する液体のBt基含有シランカップリング剤に砥粒3を浸漬すると、MeO、EtO等のアルコキシ基が、加水分解によりシラノール基となり、表面3aのヒドロキシル基と水素結合する。
【0026】
更に、脱水縮合が生じ、シラノール基の酸素が砥粒3の表面3aに結合することもある。
図1では、シラノール基の酸素が砥粒3の表面3aに結合した状態を示すが、Bt基5は、水素結合で表面3aに結合していてもよい。
【0027】
図1では、便宜上、3つのBt基5が、砥粒3の表面3aに設けられている場合を示すが、実際には、表面3aにおいて略一様に多数のBt基5が設けられている。Bt基5は、金属イオン(例えば、1価又は2価の銅イオン)に対して配位可能である。
【0028】
図2は、2つの砥粒3が銅イオンに配位することで形成されたキレート錯体9の概要図である。少なくとも2個のBt基5が、金属イオンに配位することで、キレート錯体9が形成される。この様に、複数個の砥粒3を有する研磨液1は、金属イオンに対してキレート作用を有する。
【0029】
従って、研磨液1を用いて研磨を行った後、使用後の研磨液1(即ち、廃液)中の砥粒3を回収すれば、廃液に含まれている金属イオンを回収できるので、廃液を蒸発させる場合に比べて、容易に金属イオンを回収できる。
【0030】
ところで、研磨液1は、砥粒3に加えて、純水等の液体7や、被加工物11との化学反応に寄与するアルカリ成分を更に含む。アルカリ成分としては、例えば、アンモニア、アミン等の有機アルカリが用いられる。また、研磨液1は、更に、pH調整剤、粘度調整剤、防錆剤、防腐剤等の添加剤を有してもよい。
【0031】
(実験例1)次に、砥粒3と、金属イオンとが、キレート錯体9を形成するか否かを確認する実験について説明する。砥粒3には、日産化学株式会社から販売されている品名ST-30のシリカ製の砥粒(D50=10nm)を用い、シランカップリング剤には、信越化学工業株式会社から販売されている製品名 X-12-1214Aを用いた。
【0032】
30gの砥粒3と、砥粒3の1wt%のシランカップリング剤と、純水と、を混合して、ガラス製の撹拌棒で1分間撹拌する撹拌工程の後、約8時間放置した。
【0033】
この研磨液1に、金属イオンとしてCu2+(2価の銅イオン)を0.5wt%含む、硫酸銅水溶液を0.5gだけ滴下して撹拌し、1時間放置した。
【0034】
図3は、複数個の砥粒3が銅イオンとキレート錯体9を形成することを確認した実験結果を示す図である。なお、砥粒3のメジアン径(D
50)は、マイクロトラック・ベル株式会社の粒子径分布測定装置を用いて、レーザー回折・散乱法により測定した。
【0035】
図3の破線のグラフは、硫酸銅水溶液を研磨液1に加える前の、砥粒3の粒子径の分布を示す。硫酸銅水溶液を加える前は、砥粒3のメジアン径(D
50)は14nmであった。これは、砥粒3が研磨液1中に主として単独で遊離している(即ち、一次粒子の状態である)ことを示すと考えられる。
【0036】
図3の実線のグラフは、硫酸銅水溶液を研磨液1に加えて1時間放置した後の、砥粒3の粒子径の分布を示す。硫酸銅水溶液を加えた後は、砥粒3のD
50が26nmとなった。これは、
図2に示す様に、主として2つの砥粒3と、銅イオンとが、キレート錯体9を形成し、二次粒子となったことを示すと考えられる。
【0037】
(実験例2)砥粒3として、日産化学株式会社から販売されている品名ST-30のシリカ製の砥粒(D50=100nm)を用い、シランカップリング剤として上述のX-12-1214Aを用いて、同様に、砥粒3がキレート錯体9を形成するか実験した。
【0038】
実験例2では、30gの砥粒3と、砥粒3の1wt%のシランカップリング剤と、純水と、を混合して、1分間撹拌する撹拌工程の後、約8時間放置した。そして、硫酸銅水溶液を0.5gだけ滴下して撹拌し、1時間放置した。
【0039】
実験例2では、透明な上澄み液が生じ、青みがかった砥粒3が沈殿した。このことは、砥粒3が銅イオンとキレート錯体9を形成し、二次粒子となったことを示唆していると考えられる。
【0040】
ところで、上述の実施形態及び実験例では、Bt基含有シランカップリング剤を用いたが、これに代えて、銅イオンに配位可能なポリアミン含有シランカップリング剤を用いることもできる。
【0041】
ポリアミン含有シランカップリング剤としては、例えば、信越化学工業株式会社から販売されている製品名 KBM-602のN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(N-(2-Aminoethyl)-3-aminopropylmethyldimethoxysilane)を用いることができる。
【0042】
また、例えば、同社から販売されている製品名 KBM-603のN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(N-(2-Aminoethyl)-3-aminopropyltrimethoxysilane)を用いることもできる。いずれの場合も、キレート錯体9(
図2参照)を形成可能な所定の官能基は、ポリアミンである。
【0043】
なお、上述したBt基含有シランカップリング剤や、ポリアミン含有シランカップリング剤は、一価の銅イオンに配位し、金属錯体を形成することもできる。また、Bt基5は、上述の構造に限定されず、その互変異性体でも、同様の結果が得られると考えられる。カップリング剤としては、NH基の数が多い方が、金属錯体を形成しやすいと考えられる。
【0044】
次に、研磨液1及び研磨装置2を用いて被加工物11を研磨する研磨方法について説明する。
図4は、研磨装置2の概要を示す断面図である。なお、
図4のZ軸方向は、鉛直方向と略平行である。研磨装置2は、円盤状のチャックテーブル4を有する。
【0045】
チャックテーブル4の下部には、モーター等の回転駆動源(不図示)の出力軸が連結されている。出力軸はZ軸方向に略平行に配置されており、回転駆動源を動作させると、チャックテーブル4は、回転軸の周りで所定方向に回転する。
【0046】
チャックテーブル4は、ステンレス鋼等の金属で形成された円盤状の枠体6を有する。枠体6の上部には、円盤状の凹部が形成されており、この凹部には多孔質セラミックス等で形成された円盤状のポーラス板8が固定されている。
【0047】
ポーラス板8の上面と、枠体6の上面とは、面一となっており、略平坦な保持面4aを形成している。ポーラス板8は、枠体6中に形成された流路6a,6bを介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。吸引源を動作させれば、ポーラス板8の上面には負圧が伝達される。
【0048】
保持面4a上には、被加工物11が載置される。
図4に示す被加工物11は、シリコンで形成された円盤状のベアウェーハであるが、被加工物11は、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)等の化合物半導体で形成されていてもよい。
【0049】
被加工物11の表面11a側には、汚染、衝撃等を防ぐために、樹脂製で円形の保護部材13が貼り付けられる。被加工物11は、表面11aとは反対側に位置する裏面11bが上方を向く様に、保持面4aに載置される。
【0050】
被加工物11は、保護部材13を介して、保持面4aに生じる負圧により吸引保持される。保持面4aの上方には、研磨ユニット10が配置されている。研磨ユニット10は、円筒状のスピンドルハウジング(不図示)を有する。
【0051】
スピンドルハウジングには、研磨ユニット10をZ軸方向に沿って上下移動させるZ軸方向移動ユニット(不図示)が連結されている。スピンドルハウジング内には、円柱状のスピンドル12が回転可能に収容されている。
【0052】
スピンドル12の長手方向は、Z軸方向と略平行に配置されている。スピンドル12の上端部には、スピンドル12を回転させるサーボモーター等の回転駆動源(不図示)が設けられている。
【0053】
スピンドル12の下端部には、円盤状のマウント14の上面の中心部が連結されている。マウント14は、被加工物11の径よりも大きな径を有する。マウント14の下面には、マウント14と略同径の円盤状の研磨工具16が装着されている。
【0054】
研磨工具16は、マウント14の下面に連結された円盤状の基台18を有する。基台18は、ステンレス鋼等の金属で形成されている。基台18の下面には、基台18と略同径であり、砥粒3を含有しない研磨パッド20が固定されている。
【0055】
研磨パッド20は、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等で成る硬質発泡樹脂や、不織布で構成されている。研磨パッド20、基台18、マウント14及びスピンドル12の径方向の中心位置は、略一致しており、これらの中心位置を通る様に、円柱状の貫通孔22が形成されている。
【0056】
貫通孔22の上端部には、研磨液供給源26の配管(不図示)が接続されている。研磨液供給源26は、送液ポンプ(不図示)、研磨液1の貯留槽(不図示)等を備える。研磨液供給源26は、貫通孔22を介して研磨パッド20へ、研磨液1を供給する。
【0057】
図5は、研磨液1及び研磨装置2を用いて、被加工物11の少なくとも裏面(一方の面)11bを研磨する研磨方法のフロー図である。裏面11bを研磨する際には、まず、保持面4aで被加工物11の表面11a側を吸引保持する(保持工程S10)。
【0058】
保持工程S10の後、研磨工程S20を行う。研磨工程S20では、チャックテーブル4を所定方向に回転させると共に、スピンドル12を所定方向に回転させる。研磨液供給源26から研磨パッド20に研磨液1を供給しながら、研磨パッド20を所定の圧力で下方に押圧すると、化学的及び機械的作用により、裏面11b側は研磨される。
【0059】
なお、裏面11b側に加えて、表面11a側を研磨してもよい。この場合、表面11a側から保護部材13を剥がし、裏面11b側に保護部材13を貼り付け、同様に、保持工程S10、研磨工程S20を経て、表面11a側を研磨する。但し、表面11a側にIC、LSI等のデバイスが形成されている場合には、裏面11b側のみを研磨する。
【0060】
研磨工程S20の後、使用済の研磨液1は、廃液回収機構(不図示)で回収される。廃液回収機構は、廃液受け部を有する。廃液受け部は、所定の配管を通じて貯留槽に連結されている。この貯留槽に、凝集剤を添加すると、廃液中の砥粒3が沈降する。次いで、ろ紙等を介して砥粒3を回収する。
【0061】
上述の様に、砥粒3の表面3aには、金属イオンに配位可能な官能基が設けられている。それゆえ、廃液中の砥粒3を回収すれば、廃液に含まれている金属イオンを回収できるので、廃液を蒸発させる場合に比べて容易に金属イオンを回収できる。
【0062】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。なお、銅イオンに限定されず、鉄イオン(Fe3+)、亜鉛イオン(Zn2+)等の金属陽イオンも、上述の砥粒3により回収できると考えられる。
【符号の説明】
【0063】
1:研磨液、3:砥粒、3a:表面、5:Bt基(官能基)、7:液体
9:キレート錯体、11:被加工物、11a:表面、11b:裏面、13:保護部材
2:研磨装置、4:チャックテーブル、4a:保持面、6:枠体、6a,6b:流路
8:ポーラス板、10:研磨ユニット、12:スピンドル、14:マウント、
16:研磨工具、18:基台、20:研磨パッド、22:貫通孔、26:研磨液供給源