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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139517
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】アース端子の固定構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/64 20060101AFI20220915BHJP
   H01R 4/38 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H01R4/64 C
H01R4/38 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039939
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 祐造
【テーマコード(参考)】
5E012
【Fターム(参考)】
5E012BA42
(57)【要約】
【課題】締結部材とともに回動しない小型化を図ったアース端子の固定構造を提供する。
【解決手段】本願発明に係るアース端子10の固定構造は、電線1R,1Lの先端部分に装着されたアース端子10の貫通孔11hに締結部材(固定ボルト20)を挿通し、締結部材(固定ボルト20)を固定対象(ボディパネル30)に設けられた締結箇所FPに締結するものである。締結箇所FPには、アース端子10の回動方向の側に隣接する回動防止爪42pが設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の先端部分に装着されたアース端子の貫通孔に締結部材を挿通し、当該締結部材を固定対象に設けられた締結箇所に締結するアース端子の固定構造であって、
前記締結箇所には、前記アース端子の回動方向の側に隣接する回動防止爪が設けられた
アース端子の固定構造。
【請求項2】
前記締結箇所が前記固定対象に固定された被締結部材であり、
前記被締結部材は、前記締結部材が締結される主体部と、前記主体部から径外側方向に所定間隔を隔てた位置で前記固定対象の表面よりも前記アース端子の側に突出する前記回動防止爪とを有している
請求項1に記載のアース端子の固定構造。
【請求項3】
前記固定対象に、第一挿通孔と、前記第一挿通孔から径外側方向に所定間隔を隔てた第二挿通孔とが設けられており、
前記被締結部材は、前記主体部の締結孔が前記第一挿通孔に重なり、かつ前記回動防止爪が前記第二挿通孔に挿通された状態で固定された
請求項2に記載のアース端子の固定構造。
【請求項4】
前記アース端子は、前記貫通孔が形成された端子本体部と、前記電線を保持する電線保持部とを有しており、
前記回動防止爪が前記端子本体部の側面に当接することで、前記アース端子の回動を規制している
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のアース端子の固定構造。
【請求項5】
前記アース端子は、前記貫通孔が形成された端子本体部と、前記電線を保持する電線保持部とを有しており、
前記回動防止爪が前記電線保持部の側面に当接することで、前記アース端子の回動を規制している
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のアース端子の固定構造。
【請求項6】
前記アース端子は、複数の前記電線のそれぞれに装着された端子金具の組み合せによって構成されており、
前記回動防止爪が二つの端子金具に設けられた前記端子本体部又は前記電線保持部の間に配置された
請求項4又は請求項5に記載のアース端子の固定構造。
【請求項7】
前記端子本体部における前記電線保持部との連接部分に折り曲げ箇所が形成された
請求項4乃至請求項6のいずれかに記載のアース端子の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アース端子の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のボディパネルは、導電性を有することから、電装品のグランド回路として利用される。そのため、電装品から延出されるマイナス側の電線は、いわゆるアース端子を介してボディパネルに接続される。特許文献1には、二本の電線のぞれぞれに装着された端子金具を組み合わせることにより、一括してボディパネルに固定できるアース端子が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されたアース端子は、アース端子の貫通孔に締結部材を挿通し、締結部材をボディパネルに設けられた締結箇所に締結することで固定される。そのため、締結部材を締結する際に、締結部材とともにアース端子が回動しないよう、一方の端子金具に回動防止爪が設けられている。回動防止爪は、端子本体部から延出された板片の先端部分に設けられている。
【0004】
ところで、このようなアース端子を固定するには、固定対象であるボディパネルに締結孔を設けるとともに、締結孔から所定間隔を隔てた位置に回動防止爪が挿入されるスリット孔を設ける必要がある。締結孔からスリット孔までの間隔は、回動防止爪や端子金具そのものがトルクによって変形しないように比較的に長く設定される。したがって、かかるアース端子の固定構造は、回動防止爪を有する板片の延出方向に長くならざるを得ないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-198856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、締結部材とともに回動しない小型化を図ったアース端子の固定構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、電線の先端部分に装着されたアース端子の貫通孔に締結部材を挿通し、当該締結部材を固定対象に設けられた締結箇所に締結するアース端子の固定構造であって、前記締結箇所には、前記アース端子の回動方向の側に隣接する回動防止爪が設けられたことを特徴としている。
【0008】
なお、本発明における回動方向の側とは、少なくとも締結部材を締結する際に、締結部材とともにアース端子が回動する方向を表しており、本発明における隣接とは、アース端子に当接した状態及び近接した状態を含む概念である。また、締結部材とは、頭部付ボルトやスタッドボルトを含む概念である。
【0009】
この発明により、締結部材とともにアース端子が回動せず、さらには小型化を図ることができる。
詳述すると、本願発明に係るアース端子の固定構造は、固定対象に設けられた締結箇所にアース端子の回動方向の側に隣接する回動防止爪が設けられている。そのため、締結部材を締結する際に、締結部材とともにアース端子が回動しようとしても、回動防止爪によってアース端子の回動を規制できる。また、回動防止爪を有する板片がアース端子に設けられないので、従来よりも小型化を図ることができる。
【0010】
さらに、自動車を含む工業製品の解体作業では、アース端子の端子本体部から電線保持部を取り外すことで、端子本体部を固定対象側に残置させつつ、電線保持部ごと電線を回収するところ、本願発明に係るアース端子の固定構造によれば、回動防止爪を有する板片が端子本体部から延出されないので、固定対象側に残置する端子材料を少なくすることができる。
【0011】
この発明の態様として、前記締結箇所が前記固定対象に固定された被締結部材であり、前記被締結部材は、前記締結部材が締結される主体部と、前記主体部から径外側方向に所定間隔を隔てた位置で前記固定対象の表面よりも前記アース端子の側に突出する前記回動防止爪とを有してもよい。
【0012】
この発明により、固定対象に締結部材を締結するのではなく、固定対象に固定された被締結部材に締結部材を締結することができる。そのため、固定対象が薄い鋼板等である場合においても確実に締結することが可能となる。また、固定対象に回動防止爪を設けるのではなく、固定対象に固定された被締結部材に回動防止爪が設けられている。そのため、固定対象に回動防止爪を成形したり回動防止爪を溶接したりする場合とは異なり、回動防止爪の周囲に歪みが生じない(固定対象の平面度が悪化しない)。したがって、アース端子を安定して固定でき、さらにはアース端子と固定対象の接触面積を確保することが可能となる。
【0013】
またこの発明の態様として、前記固定対象に、第一挿通孔と、当該第一挿通孔から径外側方向に所定間隔を隔てた第二挿通孔とが設けられており、前記被締結部材は、前記主体部の締結孔が前記第一挿通孔に重なり、かつ前記回動防止爪が前記第二挿通孔に挿通された状態で固定されてもよい。
【0014】
この発明により、第一挿通孔を介して被締結部材の主体部に締結部材を締結することができる。そのため、固定対象が薄い鋼板等である場合においても確実に締結することが可能となる。そして、第一挿通孔の周囲において、アース端子と被締結部材との間に固定対象が挟まれるので、アース端子と固定対象の接触面積を十分に確保することが可能となる。また、第二挿通孔を介して被締結部材の回動防止爪をアース端子の側に突出させることができる。そのため、固定対象に回動防止爪を成形したり回動防止爪を溶接したりする場合とは異なり、回動防止爪の周囲に歪みが生じない(固定対象の平面度が悪化しない)。そして、第二挿通孔の周囲においても、アース端子と被締結部材との間に固定対象が挟まれるので、アース端子と固定対象の接触面積を十分に確保することが可能となる。したがって、アース端子を小さくし、さらなる小型化を図ることが可能となる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記アース端子は、前記貫通孔が形成された端子本体部と、前記電線を保持する電線保持部とを有しており、前記回動防止爪が前記端子本体部の側面に当接することで、前記アース端子の回動を規制してもよい。
【0016】
この発明により、締結部材を締結する際に、締結部材とともにアース端子が回動しようとしても、回動防止爪が端子本体部の側面に当接することによって確実に回動が規制される。また、端子本体部の側面から近い位置に回動防止爪が配置されるので、より小型化を図ることができる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記アース端子は、前記貫通孔が形成された端子本体部と、前記電線を保持する電線保持部とを有しており、前記回動防止爪が前記電線保持部の側面に当接することで、前記アース端子の回動を規制してもよい。
【0018】
この発明により、締結部材を締結する際に、締結部材とともにアース端子が回動しようとしても、回動防止爪が電線保持部の側面に当接することによって確実に回動が規制される。また、電線保持部の側面から近い位置に回動防止爪が配置されるので、より小型化を図ることができる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記アース端子は、複数の前記電線のそれぞれに装着された端子金具の組み合せによって構成されており、前記回動防止爪が二つの端子金具に設けられた前記端子本体部又は前記電線保持部の間に配置されてもよい。
【0020】
この発明により、従来より活用することができなかった端子本体部又は電線保持部の間に回動防止爪を収めることができ、アース端子の固定に広い領域を要さない。ひいてはアース端子を固定対象の狭小な領域に固定することが可能となる。また、締結部材を逆方向に回して取り外す場合においても、同様にアース端子の回動を規制できる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記端子本体部における前記電線保持部との連接部分に折り曲げ箇所が形成されてもよい。
【0022】
なお、本発明における折り曲げ箇所とは、端子金具の折り曲げに際して曲げ応力が集中するように形成された部分を指す。具体的には、端子本体部の薄板部分や細板部分のほか、端子本体部に設けられた曲げ返し部分が途切れた箇所等によって曲げ応力が集中するように形成された部分を指す。
【0023】
この発明により、アース端子を折り曲げ箇所で折り曲げ、端子本体部から電線保持部を取り外すことができる。そのため、前述の効果に加え、解体作業(詳しくは電線を回収する作業)が容易となる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、締結部材とともにアース端子が回動せず、さらには小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】アース端子の固定構造を示す斜視図。
図2】アース端子の固定構造を示す分解斜視図。
図3】アース端子を示す斜視図。
図4】回動防止ナットを示す斜視図。
図5図1におけるX-X矢視断面図。
図6】アース端子を固定している状況を示す説明図。
図7】アース端子の電線保持部ごと電線を回収している状況を示す説明図。
図8】他の実施形態に係るアース端子の固定構造を示す斜視図。
図9】他の実施形態に係るアース端子の固定構造を示す斜視図。
図10】他の実施形態に係るアース端子の固定構造を示す斜視図。
図11】他の実施形態に係るアース端子の固定構造を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明の一実施例を図面に基づいて詳述する。
本願においては、全ての図面でアース端子10の方向を示している。詳しくは矢印Fが前方側を示し、矢印Bが後方側を示し、矢印Rが右方側を示し、矢印Lが左方側を示している。そして、矢印Uが上方側を示し、矢印Dが下方側を示している。
【0027】
図1はアース端子10の固定構造を示す斜視図である。図2はアース端子10の固定構造を示す分解斜視図であり、図3はアース端子10を示す斜視図であり、図4は回動防止ナット40を示す斜視図であり、図5図1におけるX-X矢視断面図である。また、図6はアース端子10を固定している状況を示す説明図であり、図7はアース端子10の電線保持部12ごと電線1R,1Lを回収している状況を示す説明図である。
【0028】
図1及び図2に示すように、アース端子10の固定構造は、電線1R,1Lの先端部分に装着されたアース端子10の貫通孔11hに固定ボルト20を挿通し、固定ボルト20をボディパネル30に設けられた締結箇所FPに締結するものである。締結箇所FPは、ボディパネル30に固定された回動防止ナット40である。
【0029】
図2及び図3に示すように、アース端子10は、二本の電線1R,1Lのそれぞれに装着された端子金具10R,10Lの組み合わせによって構成されている。これらの端子金具10R,10Lは、例えば銅合金製の板材から打ち抜かれ、所定の形状に形成されたものである。以下に、端子金具10R,10Lについて詳しく説明する。
【0030】
端子金具10Rは、電線1Rの先端部分に装着されている。端子金具10Rは、上方側から視て矩形状に形成された端子本体部11と、端子本体部11の右後方側端部から後方側に向かって延出された電線保持部12とを有している。
【0031】
端子本体部11は、その中央部分に略円形状の貫通孔が設けられている。そして、この貫通孔の周囲には、端子金具10Lと係合するための係合爪が設けられている。また、端子本体部11は、後方側に向かうにつれて左右方向の板幅が徐々に細くなるように形成されており、最も細い箇所を介して電線保持部12につながっている。
【0032】
さらに、端子本体部11の右方側端縁に設けられた曲げ返し部分111は、前後方向の中途部から後方側に向かうにつれて上下方向の高さが徐々に低くなるように形成されている。そして、端子本体部11は、曲げ返し部分111が途切れた箇所を介して電線保持部12につながっている。端子金具10Rにおいては、端子本体部11の最も細い箇所で、さらには曲げ返し部分111が途切れた箇所が折り曲げ箇所11bである。
【0033】
電線保持部12は、電線1Rの芯線に圧着される芯線圧着部121と、電線1Rの芯線を覆う被覆部分に圧着される被覆圧着部122とを有している。芯線圧着部121は、縦断面形状がU字状に形成されており、両側の板片を曲げ込むことで、内側に配置された電線1Rの芯線を加締めることができる。また、被覆圧着部122も、縦断面形状がU字状に形成されており、両側の板片を曲げ込むことで、内側に配置された電線1Rの被覆部分を加締めることができる。
【0034】
こうして、芯線圧着部121が芯線に圧着され、被覆圧着部122が被覆部分に圧着される。但し、芯線圧着部121と被覆圧着部122は、縦断面形状がU字状であるいわゆるオープンバレルに限定するものではない。また、被覆圧着部122を有していなくてもよい。さらには、はんだ付けや溶接によって接続する構成であってもよいし、電線1Rが帯状の導電板であり、ピアスで打ち抜いて接続する構成であってもよい。
【0035】
電線保持部12は、電線1Rの芯線に圧着される芯線圧着部121と、電線1Rの芯線を覆う被覆部分に圧着される被覆圧着部122とを有している。芯線圧着部121は、縦断面形状がU字状に形成されており、両側の板片を折り込むことで、内側に配置された電線1Rの芯線を加締めることができる。また、被覆圧着部122も、縦断面形状がU字状に形成されており、両側の板片を折り込むことで、内側に配置された電線1Rの被覆部分を加締めることができる。
【0036】
こうして、芯線圧着部121が芯線に圧着され、被覆圧着部122が被覆部分に圧着される。但し、芯線圧着部121と被覆圧着部122は、縦断面形状がU字状であるいわゆるオープンバレルに限定するものではない。また、被覆圧着部122を有していなくてもよい。
【0037】
端子金具10Lは、電線1Lの先端部分に装着されている。端子金具10Lは、上方側から視て矩形状に形成された端子本体部11と、端子本体部11の左後方側端部から後方側に向かって延出された電線保持部12とを有している。
【0038】
端子本体部11は、その中央部分に略円形状の貫通孔が設けられている。そして、この貫通孔の周囲には、端子金具10Rと係合するための係合溝が設けられている。また、端子本体部11は、後方側に向かうにつれて左右方向の板幅が徐々に細くなるように形成されており、最も細い箇所を介して電線保持部12につながっている。
【0039】
さらに、端子本体部11の右方側端縁に設けられた曲げ返し部分111は、前後方向の中途部から後方側に向かうにつれて上下方向の高さが徐々に低くなるように形成されている。そして、端子本体部11は、曲げ返し部分111が途切れた箇所を介して電線保持部12につながっている。端子金具10Lにおいても、端子本体部11の最も細い箇所で、さらには曲げ返し部分111が途切れた箇所が折り曲げ箇所11bである。
【0040】
電線保持部12は、電線1Lの芯線に圧着される芯線圧着部121と、電線1Lの芯線を覆う被覆部分に圧着される被覆圧着部122とを有している。芯線圧着部121は、縦断面形状がU字状に形成されており、両側の板片を曲げ込むことで、内側に配置された電線1Rの芯線を加締めることができる。また、被覆圧着部122も、縦断面形状がU字状に形成されており、両側の板片を曲げ込むことで、内側に配置された電線1Rの被覆部分を加締めることができる。
【0041】
こうして、芯線圧着部121が芯線に圧着され、被覆圧着部122が被覆部分に圧着される。但し、芯線圧着部121と被覆圧着部122は、縦断面形状がU字状であるいわゆるオープンバレルに限定するものではない。また、被覆圧着部122を有していなくてもよい。さらには、はんだ付けや溶接によって接続する構成であってもよいし、電線1Rが帯状の導電板であり、ピアスで打ち抜いて接続する構成であってもよい。
【0042】
このような端子金具10R,10Lを組み合わせることにより、一括してボディパネル30に固定できるアース端子10となる。アース端子10は、各端子金具10R,10Lの端子本体部11に設けられた貫通孔が互いに重なり合うことにより、固定ボルト20が挿通される貫通孔11hを構成する。また、端子金具10Rにおける端子本体部11は、後方側に向かうにつれて左右方向の板幅が徐々に細くなるように形成されており、端子金具10Lにおける端子本体部11も、後方側に向かうにつれて左右方向の板幅が徐々に細くなるように形成されていることから、アース端子10の後方側端部が二又に分岐し、その間に空間10Sが形成されている。
【0043】
図2及び図4に示すように、回動防止ナット40は、固定ボルト20が締結される主体部41と、主体部41から延設される突出部42とを有している。回動防止ナット40は、例えば炭素鋼製の角材から削り出され、締結孔41hが形成されたものである。締結孔41hとは、固定ボルト20のボルト軸部21が螺合されるボルト孔である。
【0044】
主体部41は、略六角柱形状に形成されている。主体部41は、周方向の所定箇所が下端部分から上端部分にかけて拡張されており、その上端面41aが上方側から視て略四角形状となっている。そして、主体部41の中央部分には、上端面41aから下端面41b(図5参照)まで貫通する締結孔41hが形成されている。締結孔41hは、ボディパネル30に設けられた円形状の第一挿通孔31h(図2参照)に対して同軸上に配置される。
【0045】
突出部42は、略四角柱形状に形成されている。突出部42は、主体部41の後方側端部から後方側に向かって延設されており、その上端面42aが主体部41の上端面41aと段差なく連続している。そして、突出部42の後方側部分には、上端面42aよりも上方側に突出する回動防止爪42pが形成されている。回動防止爪42pは、ボディパネル30に設けられた矩形状の第二挿通孔32h(図2参照)に対して挿通された状態で配置される。
【0046】
このような回動防止ナット40によれば、回動防止爪42pがボディパネル30の表面30aよりもアース端子10の側に突出する。このとき、図5に示すように、回動防止ナット40における主体部41の上端面41aだけでなく、突出部42の上端面42aがボディパネル30の裏面30bに隙間なく当接する。そのため、固定ボルト20を締結した状態においては、固定ボルト20におけるボルト頭部22の下端面22bがアース端子10を押し付け、回動防止ナット40における主体部41の上端面41aと突出部42の上端面42aがボディパネル30の裏面30bを押し付けるので、それらに挟まれたアース端子10とボディパネル30を強固に固定することが可能となる。
【0047】
次に、図6を用いて、アース端子10を固定している状況について説明する。図6(a)は、アース端子10に固定ボルト20を挿通した状態で、固定ボルト20を締結している状況を示しており、図6(b)は、固定ボルト20とともにアース端子10が回動しようとしても、アース端子10の回動が規制される状況を示している。
【0048】
前述したように、突出部42に形成された回動防止爪42pは、ボディパネル30の第二挿通孔32hに挿通された状態で、ボディパネル30の表面30aよりもアース端子10の側に突出している。そして、回動防止爪42pは、端子本体部11の間(空間10Sの内側)に配置される。そのため、固定ボルト20を締結する際に、固定ボルト20とともにアース端子10が回動(上方側から視て右回りに回動)しようとしても、回動防止爪42pが端子本体部11の内側面に当接することで、アース端子10の回動が規制される。
【0049】
次に、図7を用いて、アース端子10の電線保持部12ごと電線1R,1Lを回収している状況を説明する。図7(a)は、電線1R,1Lを上方側に引っ張ることで、アース端子10を折り曲げている状況を示しており、図7(b)は、端子本体部11から電線保持部12を取り外し、電線保持部12ごと電線1R,1Lを回収している状況を示している。
【0050】
前述したように、それぞれの端子金具10R,10Lには、端子本体部11の最も細い箇所で、さらには曲げ返し部分111が途切れた箇所である折り曲げ箇所11bが形成されている。そのため、電線1R,1Lを上方側に引っ張ると、かかる折り曲げ箇所11bに曲げ応力が集中し、電線保持部12が上方側へ折れ曲がることとなる。そして、端子本体部11に対する電線保持部12の角度が大きくなると、折り曲げ箇所11bにて破壊が進行し、最終的には破断に至る。こうして、アース端子10の端子本体部11から電線保持部12を取り外すことで、電線保持部12ごと電線1R,1Lを回収することができる。
【0051】
以上のように、本願発明に係るアース端子10の固定構造は、電線1R,1Lの先端部分に装着されたアース端子10の貫通孔11hに固定ボルト20を挿通し、固定ボルト20をボディパネル30に設けられた締結箇所FPに締結するものである。締結箇所FPには、アース端子10の回動方向の側に隣接する回動防止爪42pが設けられている。ここで、回動方向の側とは、少なくとも固定ボルト20を締結する際に、固定ボルト20とともにアース端子10が回動する方向(上方側から視て右回り方向)を表しており、隣接とは、アース端子10に当接した状態及び近接した状態を含む概念である。
【0052】
このようなアース端子10の固定構造によれば、回動防止爪42pを有する板片がアース端子10に設けられず、これによって小型化を図ることができる。
詳述すると、本願発明に係るアース端子10の固定構造は、ボディパネル30に設けられた締結箇所FPにアース端子10の回動方向の側に隣接する回動防止爪42pが設けられている。そのため、固定ボルト20を締結する際に、固定ボルト20とともにアース端子10が回動しようとしても、回動防止爪42pによってアース端子10の回動を規制できる。また、回動防止爪42pを有する板片がアース端子10に設けられないので、従来よりも小型化を図ることができる。
【0053】
さらに、自動車を含む工業製品の解体作業では、アース端子10の端子本体部11から電線保持部12を取り外すことで、端子本体部11をボディパネル30側に残置させつつ、電線保持部12ごと電線1R,1Lを回収するところ、本願発明に係るアース端子10の固定構造によれば、回動防止爪42pを有する板片が端子本体部11から延出されないので、ボディパネル30側に残置する端子材料を少なくすることができる。
【0054】
また、このアース端子10の固定構造においては、締結箇所FPがボディパネル30に固定された回動防止ナット40であり、回動防止ナット40は、固定ボルト20が締結される主体部41と、主体部41から径外側方向に所定間隔を隔てた位置でボディパネル30の表面30aよりもアース端子10の側に突出する回動防止爪42pとを有している。
【0055】
このようなアース端子10の固定構造によれば、ボディパネル30に固定ボルト20を締結するのではなく、ボディパネル30に固定された回動防止ナット40に固定ボルト20を締結することができる。そのため、ボディパネル30が薄い鋼板等である場合においても確実に締結することが可能となる。また、ボディパネル30に回動防止爪42pを設けるのではなく、ボディパネル30に固定された回動防止ナット40に回動防止爪42pが設けられている。そのため、ボディパネル30に回動防止爪42pを成形したり回動防止爪42pを溶接したりする場合とは異なり、回動防止爪42pの周囲に歪みが生じない(ボディパネル30の平面度が悪化しない)。したがって、アース端子10を安定して固定でき、さらにはアース端子10とボディパネル30の接触面積を確保することが可能となる。
【0056】
また、このアース端子10の固定構造においては、ボディパネル30に、第一挿通孔31hと、第一挿通孔31hから径外側方向に所定間隔を隔てた第二挿通孔32hとが設けられており、回動防止ナット40は、主体部41の締結孔41hが第一挿通孔31hに重なり、かつ回動防止爪42pが第二挿通孔32hに挿通された状態で固定されている。
【0057】
このようなアース端子10の固定構造によれば、第一挿通孔31hを介して回動防止ナット40の主体部41に固定ボルト20を締結することができる。そのため、ボディパネル30が薄い鋼板等である場合においても確実に締結することが可能となる。そして、第一挿通孔31hの周囲において、アース端子10と回動防止ナット40との間にボディパネル30が挟まれるので、アース端子10とボディパネル30の接触面積を十分に確保することが可能となる。また、第二挿通孔32hを介して回動防止ナット40の回動防止爪42pをアース端子10の側に突出させることができる。そのため、ボディパネル30とアース端子10の接触面積を確保しつつ、ボディパネル30に回動防止爪42pを成形したり回動防止爪42pを溶接したりする場合とは異なり、回動防止爪42pの周囲に歪みが生じない(ボディパネル30の平面度が悪化しない)。そして、第二挿通孔32hの周囲においても、アース端子10と回動防止ナット40との間にボディパネル30が挟まれるので、アース端子10とボディパネル30の接触面積を十分に確保することが可能となる。したがって、アース端子10を小さくし、さらなる小型化を図ることが可能となる。
【0058】
また、このアース端子10の固定構造において、アース端子10は、二本の電線1R,1Lのそれぞれに装着された端子金具10R,10Lの組み合せによって構成されており、回動防止爪42pが二つの端子金具10R,10Lに設けられた端子本体部11の間(空間10Sの内側)に配置されている。
【0059】
このようなアース端子10の固定構造によれば、従来より活用することができなかった端子本体部11の間に回動防止爪42pを収めることができ、アース端子10の固定に広い領域を要さない。ひいてはアース端子10をボディパネル30の狭小な領域に固定することが可能となる。また、固定ボルト20を逆方向に回して取り外す場合においても、同様にアース端子10の回動を規制できる。
【0060】
また、このアース端子10の固定構造においては、端子本体部11における電線保持部12との連接部分に折り曲げ箇所11bが形成されている。折り曲げ箇所11bとは、端子本体部11の細板部分で、かつ端子本体部11に設けられた曲げ返し部分111が途切れた箇所である。
【0061】
このようなアース端子10の固定構造によれば、アース端子10を折り曲げ箇所11bで折り曲げ、端子本体部11から電線保持部12を取り外すことができる。そのため、前述の効果に加え、解体作業(詳しくは電線1R,1Lを回収する作業)が容易となる。
【0062】
この発明の構成と前述の実施形態との対応において、この発明の電線は電線1R,1Lに対応し、
以下同様に、
アース端子はアース端子10に対応し、
端子金具は端子金具10R,10Lに対応し、
端子本体部は端子本体部11に対応し、
折り曲げ箇所は折り曲げ箇所11bに対応し、
貫通孔は貫通孔11hに対応し、
電線保持部は電線保持部12に対応し、
締結部材は固定ボルト20に対応し、
固定対象はボディパネル30に対応し、
表面は表面30aに対応し、
第一挿通孔は第一挿通孔31hに対応し、
第二挿通孔は第二挿通孔32hに対応し、
被締結部材は回動防止ナット40に対応し、
主体部は主体部41に対応し、
締結孔は締結孔41hに対応し、
突出部は突出部42に対応
回動防止爪は回動防止爪42pに対応し、
締結箇所は締結箇所FPに対応するも、この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0063】
例えば、本実施形態に係るアース端子10の固定構造は、回動防止爪42pが端子本体部11の間(空間10Sの内側)に配置されている。しかし、図8に示すように、回動防止爪42pが電線保持部12の間に配置されてもよい。
【0064】
このようなアース端子10の固定構造であったとしても、従来より活用することができなかった電線保持部12の間に回動防止爪42pを収めることができ、アース端子10の固定に広い領域を要さない。ひいてはアース端子10をボディパネル30の狭小な領域に固定することが可能となる。また、固定ボルト20を逆方向に回して取り外す場合においても、同様にアース端子10の回動を規制できる。
【0065】
また、図9に示すように、その他の実施形態に係るアース端子10の固定構造として、回動防止爪42pがアース端子10の回動方向の側に隣接されており、回動防止爪42pが端子本体部11の側面に当接することで、アース端子10の回動を規制してもよい。この場合において、回動防止爪42pは、端子本体部11の側面に沿う形状であってもよいし、角部を回り込むような形状であってもよい。また、固定ボルト20を逆方向に回して取り外す場合においても、アース端子10の回動を規制できるよう、端子本体部11の反対側(端子本体部11の右方側)にも配置することが考えられる。
【0066】
このようなアース端子10の固定構造によれば、固定ボルト20を締結する際に、固定ボルト20とともにアース端子10が回動しようとしても、回動防止爪42pが端子本体部11の側面に当接することによって確実に回動が規制される。また、端子本体部11の側面から近い位置に回動防止爪42pが配置されるので、より小型化を図ることができる。
【0067】
また、図10に示すように、その他の実施形態に係るアース端子10の固定構造として、回動防止爪42pがアース端子10の回動方向の側に隣接されており、回動防止爪42pが電線保持部12の側面に当接することで、アース端子10の回動を規制してもよい。この場合において、回動防止爪42pは、電線保持部12の側面に沿う形状であってもよいし、電線保持部12から延出される電線1R,1Lにも沿う形状であってもよい。また、固定ボルト20を逆方向に回して取り外す場合においても、アース端子10の回動を規制できるよう、電線保持部12の反対側(電線保持部12の右方側)にも配置することが考えられる。
【0068】
このようなアース端子10の固定構造によれば、固定ボルト20を締結する際に、固定ボルト20とともにアース端子10が回動しようとしても、回動防止爪42pが電線保持部12の側面に当接することによって確実に回動が規制される。また、電線保持部12の側面から近い位置に回動防止爪42pが配置されるので、より小型化を図ることができる。
【0069】
さらに、図11に示すように、回動防止爪42pは、ボディパネル30に形成又は溶接された突起部32pであってもよい。このような構成においては、ボディパネル30の歪み等に対応できれば、突起部32pを端子本体部11又は電線保持部12の間に配置することができる。あるいは、端子本体部11の側面から近い位置又は電線保持部12の側面から近い位置に配置することもできる。
【0070】
最後に、アース端子10は、二つの端子金具10R,10Lを組み合わせて構成されているが、三つ以上の端子金具を組み合わせて構成されていてもよい。もちろん一つの端子金具で構成されていてもよい。また、回動防止ナット40は、一つの回動防止爪42pを有しているが、複数の回動防止爪を有していてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1R…電線
1L…電線
10…アース端子
10R…端子金具
10L…端子金具
11…端子本体部
11b…折り曲げ箇所
11h…貫通孔
12…電線保持部
20…固定ボルト
30…ボディパネル
30a…表面
31h…第一挿通孔
32h…第二挿通孔
40…回動防止ナット
41…主体部
41h…締結孔
42…突出部
42p…回動防止爪
FP…締結箇所
図1
図2
図3
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図5
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図11