(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139544
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】混合半乾燥食品の製造方法及び混合半乾燥食品
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20220915BHJP
A23B 7/02 20060101ALI20220915BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20220915BHJP
A23L 19/12 20160101ALI20220915BHJP
A23L 3/40 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
A23L5/00 Z
A23B7/02
A23L19/00 A
A23L19/12 A
A23L3/40 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039979
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000116297
【氏名又は名称】ヱスビー食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】飯田 美樹
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 司
【テーマコード(参考)】
4B016
4B022
4B035
4B169
【Fターム(参考)】
4B016LC06
4B016LG01
4B016LG05
4B016LG06
4B016LG10
4B016LG16
4B016LK15
4B016LK16
4B016LP08
4B016LP13
4B022LA05
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4B035LC03
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4B035LE20
4B035LG32
4B035LG37
4B035LG38
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4B035LP24
4B035LP59
4B035LT20
4B169AA04
4B169BA05
4B169BA12
4B169HA01
4B169HA04
4B169HA09
4B169HA11
4B169HA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生産コストの増加を避けながら、品質の高い半乾燥食品を出荷注文量の変動に影響を受けることなくタイムリーに提供できると共に、混合される野菜・果実の種類やサイズの組み合わせ方に制約を受けない混合半乾燥食品の製造方法及び混合半乾燥食品を提供する。
【解決手段】混合半乾燥食品の製造方法は、第1の生鮮食品を乾燥させて得られた第1の乾燥食品を所定期間保管するステップと、第1の乾燥食品とは異なる期間に、第2の生鮮食品を乾燥させ、第2の乾燥食品を得るステップと、前記第1及び第2の乾燥食品を含む混合乾燥食品に水分を添加し、含水率が20重量%から45重量%の混合半乾燥食品を得るステップとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の生鮮食品を乾燥させて第1の乾燥食品を得るステップと、
第1の乾燥食品と、第1の乾燥食品とは異なる1つ以上の他の乾燥食品とを混合し、混合乾燥食品を得るステップと、
前記混合乾燥食品に水分を添加し、含水率が20重量%から45重量%の混合半乾燥食品を得るステップと、
を含む混合半乾燥食品の製造方法。
【請求項2】
第1の生鮮食品が、野菜類、果実類、及び海藻類の群から選択される1種以上の食品である、
請求項1に記載の混合半乾燥食品の製造方法。
【請求項3】
前記第1の乾燥食品との混合前に、前記第1の乾燥食品と同種若しくは異種の生鮮食品又は加工食品の、少なくとも1種を乾燥させ、前記他の乾燥食品を得るステップを更に含む、
請求項1又は2に記載の混合半乾燥食品の製造方法。
【請求項4】
前記混合乾燥食品を得る前に、前記第1の乾燥食品及び前記他の乾燥食品の少なくとも一方を所定期間保管する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の混合半乾燥食品の製造方法。
【請求項5】
前記混合半乾燥食品を得るステップにおいて、混合される前記第1の乾燥食品及び前記他の乾燥食品に水蒸気またはミスト化された水を添加する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の混合半乾燥食品の製造方法。
【請求項6】
前記他の乾燥食品は、加工食品に由来する食品である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の混合半乾燥食品の製造方法。
【請求項7】
第1の半乾燥食品と、
第1の半乾燥食品とは異なる1つ以上の他の半乾燥食品と、を含み、
前記第1の半乾燥食品及び前記他の半乾燥食品は、含水率が20重量%から45重量%、水分活性が0.85以下、一般生菌数が10000cfu/g以下の条件を満たす
混合半乾燥食品。
【請求項8】
前記第1の半乾燥食品と前記他の半乾燥食品との含水率の差が、15%以内である、
請求項7に記載の混合半乾燥食品。
【請求項9】
前記第1の半乾燥食品及び前記他の半乾燥食品の少なくとも一方が葉菜である、
請求項7又は8に記載の混合半乾燥食品。
【請求項10】
前記第1の半乾燥食品は、キャベツ、ホウレン草、葱、青紫蘇、野沢菜、春菊、ヨモギ、大麦若葉、モロヘイヤ、小松菜、チンゲン菜、みつば、カイワレ大根、クレソン、チコリ、スイスチャード、紫キャベツ、金時草、赤チコリ、パクチー、コリアンダーリーフ、バジル、オレガノ、セージ、パセリ、イタリアンパセリ、ミント、タイム、マージョラム、ルッコラ、フェンネル、チャイブ、タラゴン、ローズマリー、ディル、レモンバーム、人参、トマト、ゴーヤ、南瓜、アボガド、じゃがいも、サツマイモ、山芋、トウモロコシ、大豆、えんどう豆、山椒の実、胡椒、クミン、唐辛子、パプリカ、林檎、ブドウ、柿、ワカメ、ヒジキ、モズク、魚介、魚卵、ビーフ、ポーク、チキン、及び卵からなる群から選択される食品である、
請求項7から9のいずれか一項に記載の混合半乾燥食品。
【請求項11】
前記他の半乾燥食品は、加工食品に由来する食品である、
請求項7から10のいずれか一項に記載の混合半乾燥食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合半乾燥食品の製造方法及び混合半乾燥食品に関する。
【背景技術】
【0002】
生鮮野菜や生鮮果実等の生鮮食品は、新鮮且つ栄養素を豊富に含むため、単品又は各種料理の具材として従来から提供されている。これに対して、生鮮食品に欠ける保存性・安定供給性を補うため、あるいは即席食品等の加工食品に含まれる具材としての利用を図るため、前記生鮮食品を乾燥させた乾燥食品や生鮮食品を凍結させた冷凍食品が提供されている。
【0003】
ところで、乾燥食品は、乾燥処理を伴う含有水分の蒸散によって、生鮮食品に比べて脆く硬化した状態に変質している。そのため、水戻し処理を経なければ、所望の食味・食感は呈されない。また、保存環境の影響による品質変化に伴い、水戻しされても、生鮮食品に近い味や香りの風味や歯ごたえなどの食感は復元されない。
【0004】
このような状況下、生鮮食品と乾燥食品の双方の利点を有する商品が望まれるところ、長期保存性を有し、加工処理中に機能性成分とうまみ成分とが濃縮されて生鮮食品と同様の形で喫食可能な半乾燥食品(野菜)の製造方法が、下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される半乾燥食品の製造方法は、成型して塩素剤などの除菌剤で洗浄・除菌した野菜類を30から50℃で、5から10分加熱して、硬度と機能性並びにうまみ成分を付与する第1の蒸気加熱工程、55から80℃で、3から30分加熱して除菌する第2の蒸気加熱工程、次いで0から30℃に冷却した後、20から100℃の温風を通して野菜類の水分を15から70%除去する乾燥工程、乾燥させた野菜類を0から15℃に冷却する工程を含む。
【0007】
しかしながら、特許文献1によれば、この製造方法により得られる半乾燥食品は、生鮮状態から直接半乾燥化されるため、ある程度の水分を含む。そのため、特許文献1に開示の半乾燥食品は、乾燥食品に比べて劣化し易く、半乾燥後、速やかに出荷しなければならない。すなわち、劣化前の所定品質を満たす半乾燥食品を提供するため、生鮮食品に半乾燥処理を施すタイミングを半乾燥食品の出荷時期に合わせる必要がある。
【0008】
このような特許文献1に開示の半乾燥食品の製造方法において、出荷時期毎に都度半乾燥処理を行わなければならないことから、生産工程におけるコストが増加する。それに加えて、特許文献1に開示の半乾燥食品の製造方法の場合、半乾燥食品をストックすることができず、出荷注文量の変動に応じてタイムリーに半乾燥食品を提供できない恐れが生じる。
【0009】
更に、半乾燥化対象の生鮮食品(野菜類等)は、種類によって収穫時期が異なる。特許文献1に開示の半乾燥食品の製造方法の場合、収穫後すぐ半乾燥化させる必要があるため、例えば、収穫時期の異なる野菜や果実を混合し、これに半乾燥化させた混合半乾燥食品を提供することができない。すなわち、特許文献1に開示の半乾燥食品の製造方法の場合、種類やサイズの異なる複数の野菜・果実を混合できるとしても、選択可能なバリエーションが限られる。
【0010】
前述の課題に鑑み、本発明は、生産コストの増加を避けながら、品質の高い半乾燥食品を出荷注文量の変動に影響を受けることなくタイムリーに提供できると共に、混合される野菜・果実の種類やサイズの組み合わせ方に制約を受けない混合半乾燥食品の製造方法及び混合半乾燥食品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの課題を解決するため、本発明に係る混合半乾燥食品の製造方法は、
第1の生鮮食品を乾燥させて第1の乾燥食品を得るステップと、
第1の乾燥食品と、第1の乾燥食品とは異なる1つ以上の他の乾燥食品とを混合し、混合乾燥食品を得るステップと、
前記混合乾燥食品に水分を添加し、含水率が20重量%から45重量%の混合半乾燥食品を得るステップと、
を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明のこの態様によれば、生鮮状態から一度乾燥させた乾燥食品に対して半乾燥処理を施すため、仮に乾燥食品を所定期間保管したとしても、乾燥前の品質が担保された混合半乾燥食品を得ることができる。また、複数の乾燥食品を混合した混合乾燥食品から、少なくとも一度の半乾燥処理により混合半乾燥食品を得ることができる。そのため、出荷タイミングに合わせて各乾燥食品を都度半乾燥処理を施す必要がなく、生産コスト高騰を避けることができる。
【0013】
更に、本発明のこの態様によれば、出荷注文量の変動に影響を受けることなくタイムリーに混合半乾燥食品を提供することができる。更に、本発明のこの態様によれば、混合乾燥食品の含水率が20重量%から45重量%となるよう半乾燥処理を施すため、所定期間保管された乾燥食品を用いても、品質が担保された混合半乾燥食品を得ることができる。
【0014】
更に、本発明のこの態様によれば、収穫時期や細分サイズが異なる複数種の野菜類、果実類、海藻類、魚介類、畜肉類等(以下、これらを総称して「野菜類等」と言う)の乾燥食品を混合できるため、混合される野菜類等の種類及びサイズの組み合わせ方に制約を受けず、混合半乾燥食品を製造することができる。
【0015】
また、本発明に係る混合半乾燥食品の製造方法において、
第1の生鮮食品が、野菜類、果実類、及び海藻類の群から選択される1種以上の食品であることが好ましい。
【0016】
本発明のこの態様によれば、第1の生鮮食品として、含水率が高く、長期間一定の品質を維持することが難しい野菜類、果実類、及び海藻類の群から選択される1種以上の食品を用いても、品質が担保された混合半乾燥食品を得ることができる。また、野菜類、果実類、海藻類は、乾燥処理又は半乾燥処理における加熱時に、含有されるタンパク質の変性が生じない点でも好ましい。
【0017】
更に、本発明に係る混合半乾燥食品の製造方法において、
前記第1の乾燥食品との混合前に、前記第1の乾燥食品と同種若しくは異種の生鮮食品、又は加工食品の、少なくとも1種を乾燥させ、前記他の乾燥食品を得るステップを更に含むことが好ましい。
【0018】
本発明のこの態様によれば、第1の乾燥食品との混合前に、他の乾燥食品を予め乾燥させるため、第1の乾燥食品と他の乾燥食品の双方を長期間保管しても、品質が担保された混合半乾燥食品を得ることができるうえ、混合する第1の生鮮食品とその他の乾燥食品の色が混じり合ったりすることのない混合半乾燥食品を得ることができる。
【0019】
更に、本発明に係る混合半乾燥食品の製造方法において、
前記混合乾燥食品を得る前に、前記第1の乾燥食品及び前記他の乾燥食品の少なくとも一方を所定期間保管することが好ましい。
【0020】
本発明のこの態様によれば、第1の乾燥食品及び前記他の乾燥食品の少なくとも一方を所定期間保管することができるため、生鮮食品の状態で保管されることによる品質の劣化を防ぐことができる。
【0021】
また、本発明のこの態様によれば、天候などの外的要因に影響を受けず(受けにくく)、第1の乾燥食品及び前記他の乾燥食品の収穫の量を確保できる利点に加え、第1の乾燥食品(第1の生鮮食品)及び前記他の乾燥食品(他の生鮮食品)の産地の違いなどによる風味の違いを調整しやすくしたり、生鮮食品の供給量による影響を受けにくくすることなどが可能である。そのため、所定量の乾燥食品を保管した後、これらを混合して混合半乾燥食品を得るため、混合半乾燥食品の混合や出荷タイミングをより容易に調整することができる。
【0022】
更に、本発明に係る混合半乾燥食品の製造方法は、
前記混合半乾燥食品を得るステップにおいて、混合される前記第1の乾燥食品及び前記他の乾燥食品に水蒸気またはミスト化された水を添加することが好ましい。
【0023】
本発明のこの態様によれば、混合半乾燥食品を得る段階で、水蒸気またはミスト化された水によって、第1の乾燥食品及び他の乾燥食品の双方に水分を添加する。そのため、混合された第1の乾燥食品及び他の乾燥食品に満遍なく水分を添加することができる。
【0024】
更に、本発明に係る混合半乾燥食品の製造方法において、
前記他の乾燥食品は、加工食品に由来する食品であることが好ましい。
【0025】
また、本発明に係る混合半乾燥食品は、
第1の半乾燥食品と、
第1の半乾燥食品とは異なる1つ以上の他の半乾燥食品と、を含み、
前記第1の半乾燥食品及び前記他の半乾燥食品は、含水率が20重量%から45重量%、水分活性が0.85以下、一般生菌数が10000cfu/g以下の条件を満たすことを特徴とする。
【0026】
本発明のこの態様によれば、含水率、水分活性、一般生菌数において、前記条件を満たす複数の半乾燥食品が混合されるため、品質が担保されつつ、混合される野菜・果実の種類及びサイズの組み合わせ方に制約を受けない混合半乾燥食品を提供できる。
【0027】
更に、本発明に係る混合半乾燥食品において、
前記第1の半乾燥食品と前記他の半乾燥食品との含水率の差が、10%以内であることが好ましい。
【0028】
本発明のこの態様によれば、第1の半乾燥食品と他の半乾燥食品との含水率の差を10%以内とすることで、より良質な混合半乾燥食品を提供することができる。
【0029】
更に、本発明に係る混合半乾燥食品において、
前記第1の半乾燥食品及び前記他の半乾燥食品の少なくとも一方が葉菜であることが好ましい。
【0030】
本発明のこの態様によれば、混合する際に生じやすい葉菜の液化によるペースト化が抑制され、喫食の際に、細断された生鮮の葉菜の状態に近い風味や食感の半乾燥葉菜(食品)を混合半乾燥食品に含めることができる。
【0031】
前記第1の半乾燥食品は、野菜類としては、キャベツ、ホウレン草、葱、青紫蘇、野沢菜、春菊、ヨモギ、大麦若葉、モロヘイヤ、小松菜、チンゲン菜、みつば、カイワレ大根、クレソン、チコリ、スイスチャード、紫キャベツ、金時草、赤チコリ、各種ハーブ(香菜(パクチー、コリアンダーリーフ)、バジル、オレガノ、セージ、パセリ、イタリアンパセリ、ミント、タイム、マージョラム、ルッコラ、フェンネル、チャイブ、タラゴン、ローズマリー、ディル、レモンバーム等)、人参、トマト、ゴーヤ、南瓜、アボガド、芋(じゃがいも、サツマイモ、山芋等)、トウモロコシ、大豆、えんどう豆、山椒の実、胡椒、クミン、唐辛子、パプリカ、果実類としては、林檎、ブドウ、柿等、海藻類としては、ワカメ、ヒジキ、モズク等、魚介類としては各種魚介、魚卵、畜肉類としては、生肉(ビーフ、ポーク、チキン等)、卵からなる群から選択される食品であることが好ましい。
【0032】
本発明のこの態様によれば、前記半乾燥食品から選択される食品において、喫食の際に水戻し処理を行わなくても、生鮮に近い風味や食感の前記半乾燥食品を混合半乾燥食品に含めることができる。
【0033】
更に、本発明に係る混合半乾燥食品において、
前記他の半乾燥食品は、加工食品に由来する食品であることが好ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、生産コストの増加を避けながら、品質の高い半乾燥食品を出荷注文量の変動に影響を受けることなくタイムリーに提供できると共に、混合される野菜・果実の種類やサイズの組み合わせ方に制約を受けない混合半乾燥食品の製造方法及び混合半乾燥食品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の一実施形態に係る混合半乾燥食品の製造方法の流れを示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[混合半乾燥食品の製造方法]
以下図面を参照して、本発明の一実施形態に係る混合半乾燥食品の製造方法を詳細に説明する。ここで、
図1は、本発明の一実施形態に係る混合半乾燥食品の製造方法の流れを示すフロー図である。本実施形態に係る混合半乾燥食品の製造方法は、例えば、収穫時期が異なる野菜類等の複数の生鮮食品(ただし、同時期に収穫される生鮮食品であってもよい)をそれぞれ別々に乾燥させ、その後、これらを混合した混合乾燥食品を半乾燥処理するものである。
【0037】
本実施形態において、各生鮮食品をそれぞれ別期間に乾燥させる場合は、乾燥された食品の品質が良好に維持できる含水率まで乾燥することが好ましい。また、後述のように、乾燥後の生鮮食品(乾燥食品)を半乾燥処理を施すまで、保管することができる。なお、保管する期間は、1時間でも1ヶ月間でも1年間でも乾燥された食品の品質が良好に維持できる期間であれば、必要に合わせた期間の設定でよい。1ヶ月以上保管することができれば、野菜類等の旬でない時期でも利用が容易にできるため、好ましい。
【0038】
更に、本実施形態において、収穫された各生鮮食品は、ペースト状や液状にならない限り、乾燥装置や乾燥方法に合わせて適切な大きさに予め細断するようにしてもよい。例えば葉菜のような薄い生鮮食品であれば、乾燥後の保管容器に合わせて細断してもよいし、ジャガイモのような厚みのある生鮮食品であれば、最終的な半乾燥食品のサイズに予め細断してもよい。また、魚などは骨を除いた状態に細断しておいてもよい。
【0039】
更に、本実施形態において、収穫された各生鮮食品に対して別々に、後述するブランチングや糖漬等の前処理を必要に応じて施した後、乾燥させることが好ましい。ただし、全ての生鮮食品に対して同じ態様(例えば、温度・時間等の処理条件)の前処理及び乾燥処理を施すものに限られず、異なる態様の前処理及び乾燥処理を施すものであってもよい。
【0040】
更に、本実施形態において、各生鮮食品の乾燥前、ブランチングや糖漬等の後述する前処理を施すことが好ましいが、本発明は、前処理を施す態様に限定されない。例えば、第1の生鮮食品に対して、前処理及び乾燥処理を施すが、他の生鮮食品(例えば、後述する第2の生鮮食品等)に対しては、前処理を行わず、収穫後乾燥処理を施すようにしてもよい。
【0041】
ここで、最終的に半乾燥化される生鮮食品の野菜類等(後述の第1の生鮮食品に加え、第2の生鮮食品、第3の生鮮食品、・・・、第nの生鮮食品に係る他の生鮮食品)の種類は、特に限定されるものではない。一例として、野菜類としては、キャベツ、ホウレン草、葱、青紫蘇、野沢菜、春菊、ヨモギ、大麦若葉、モロヘイヤ、小松菜、チンゲン菜、みつば、カイワレ大根、クレソン、チコリ、スイスチャード、紫キャベツ、金時草、赤チコリ、各種ハーブ(香菜(パクチー、コリアンダーリーフ)、バジル、オレガノ、セージ、パセリ、イタリアンパセリ、ミント、タイム、マージョラム、ルッコラ、フェンネル、チャイブ、タラゴン、ローズマリー、ディル、レモンバーム等)、人参、トマト、ゴーヤ、南瓜、アボガド、芋(ジャガイモ、サツマイモ、山芋等)、トウモロコシ、大豆、えんどう豆、山椒の実、胡椒、クミン、唐辛子、パプリカ、果実類としては、林檎、ブドウ、柿等、海藻類としては、ワカメ、ヒジキ、モズク等、魚介類としては各種魚介、魚卵、畜肉類としては生肉(ビーフ、ポーク、チキン等)、卵が挙げられる。また、それ以外の野菜類等であってもよい。
【0042】
ここで、本実施形態に係る混合半乾燥食品の製造方法の流れを示す
図1を参照する。
図1に示されるように、まず、収穫時期が到来した第1の生鮮食品(例えば、前記野菜類等の一種)を収穫する(S11)。次に、収穫された第1の生鮮食品に対し、ブランチングや糖漬などの前処理を施す(S12)。ただし、本発明は、前処理を施す態様に限定されないことは、前述の通りである。
【0043】
各生鮮食品(特に野菜類)に対して、ブランチングや糖漬を行う利点は、下記の通りである。まず、収穫された生鮮食品(例えば、前記第1の生鮮食品)に対しブランチングを行うことで、ブランチングされた生鮮食品を殺菌できることに加え、その色調や食感の変化を抑制することができる。また、ブランチングを行わない場合に比べて、生鮮食品の含水率を低減できる。
【0044】
ここで、ブランチングの態様は、特に限定されるものではないが、例えば、生鮮食品を60℃から110℃の温度範囲で10秒から600秒間、加熱する態様が挙げられる。また、生鮮食品を80℃から100℃の温度範囲で10秒から300秒間、熱水または温水に浸漬させるなどの態様がより好ましい。
【0045】
また、ブランチングに用いるブランチング溶液は、水に加えて、例えば所定量の糖質、塩を含んでもよく、重曹、pH調整剤等の他の成分を更に含んでもよい。糖質の種類として、ショ糖(砂糖)、グルコース、マルトース、トレハロース、水飴、果糖、乳糖、異性化糖、及びオリゴ糖、並びにソルビトール、マルチトールなどの糖アルコール等が挙げられる。また、塩の種類として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム等が挙げられる。ブランチング溶液の一例として、1重量%から10重量%の糖質と、5重量%から30重量%の塩を含むものが挙げられる。
【0046】
更に、ブランチング後の生鮮食品に冷水を掛け流した後、これを振動させブランチング溶液を振るい落とす方法や、遠心脱水機、水切り板の上での載置により脱水する方法等を用いて、第1の生鮮食品に含まれる水分を脱水することが好ましい。脱水後の第1の生鮮食品における含水率は、特に限定されるものではないが、一例として60重量%から95重量%とすることが例示される。
【0047】
次に、ブランチングされた生鮮食品に対し糖漬を行うことで、ブランチングによって保たれた生鮮食品の色調を以後安定して保持できるほか、糖漬により生鮮食品の含水率を下げることができ、乾燥時の香りの飛散などを抑えることができる。
【0048】
糖漬の具体例は、下記の通りである。すなわち、生鮮食品に糖質を添加し、所定時間、これを糖質に漬け込む。糖漬に用いる糖質の種類として、ショ糖(砂糖)、グルコース、マルトース、トレハロース、水飴、果糖、乳糖、異性化糖、及びオリゴ糖、並びにソルビトール、マルチトールなどの糖アルコール等が挙げられる。これらのうちの一種を用いてもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。また、糖漬において、糖質に加え、各種調味料、香料、塩等を添加してもよい。
【0049】
また、糖漬の態様は、特に限定されるものではないが、冷蔵環境下において、2時間から48時間漬け込むなどの態様が例示される。糖漬の時間が2時間を下回る場合、生鮮食品の水分活性を更に低減できない可能性がある。これに対して、糖漬の時間が48時間を上回ると、生鮮食品の食味・風味・食感が損なわれる可能性がある。
【0050】
更に、糖漬の態様として、脱水された生鮮食品に糖質を塗す態様であってもよいし、糖質含有溶液を作製し、これに生鮮食品を浸漬させてもよい。なお、生鮮食品に糖質を塗す態様においては、粉末の糖質、ペースト状の糖質により生鮮食品を完全に覆ってもよいし、粉末の糖質を均一に振りかけてもよい。
【0051】
糖質含有溶液に生鮮食品を浸漬させる場合、浸漬時間は、例えば3時間から48時間であることが好ましい。そして、糖漬後の生鮮食品に対し、必要に応じて、各種方法で糖質を落とす処理を加えてもよい。特にペースト状の糖質を用いて糖漬したときは、流水などで糖質を除去し、更に脱水することが好ましい。
【0052】
糖漬後の生鮮食品を更に脱水する場合、糖漬後の生鮮食品は、これらの処理前のものに比べ含水率が低くなる。その結果、生鮮食品の含水率は、60重量%から90重量%に低減され、その後の乾燥処理における熱のダメージを減らすことができる。
【0053】
なお、本実施形態は、前処理としてブランチングと糖漬の双方を行うものであるが、これに限られない。例えば、ブランチングのみを行ってもよいし、糖漬のみを行ってもよい。ただし、ブランチングと糖漬の双方を行うときは、ブランチングの後に糖漬を行う。
【0054】
次に、必要に応じて前処理が施された生鮮食品(例えば、第1の生鮮食品)を乾燥させる(S13)。乾燥手段は、特に限定されるものではない。乾燥手段の一例として、送風乾燥、温風乾燥、熱風乾燥、恒温乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、真空凍結乾燥が例示される。比較的簡便な乾燥装置であって熱によるダメージを制御しやすい送風乾燥、温風乾燥が好ましく、生鮮食品の色の変色等の熱によるダメージを抑制しやすい真空乾燥、凍結乾燥、真空凍結乾燥も好ましい。また、第1の生鮮食品を収穫後72時間以内に乾燥させることが好ましく、48時間以内に乾燥させることがより好ましく、24時間以内に乾燥させることが更に好ましい。
【0055】
乾燥態様も特に限定されるものではないが、30℃から100℃の温度下で生鮮食品を乾燥させる態様が例示される。特に、送風乾燥、温風乾燥において、35℃から80℃の風を吹き付ける態様が好ましい。また、乾燥時間は目標とする含水率になるまでの適宜時間とする。
【0056】
乾燥処理によって、含水率が15重量%以下となるまで、生鮮食品を乾燥させる。より好ましくは、含水率が10重量%以下となるまで、生鮮食品を乾燥させる(乾燥させた生鮮食品を「乾燥食品」と言う。例えば、乾燥させた第1の生鮮食品を「第1の乾燥食品」と言う。同様に、乾燥させた第2の生鮮食品、第3の生鮮食品、・・・、第nの生鮮食品を、それぞれ「第2の乾燥食品」、「第3の乾燥食品」、・・・、「第nの乾燥食品」と言う。)。
【0057】
含水率が15重量%以下となるまで生鮮食品(乾燥食品)を乾燥させた場合、これを均一な大きさに適宜粗砕(細断)することができる。本実施形態において、第1の乾燥食品は、第2の乾燥食品、第3の乾燥食品、・・・、第nの乾燥食品とは、半乾燥化前に混合される。このとき、各乾燥食品を所定のサイズに粗砕した上で、これらを混合してもよい。このように、乾燥食品を予め粗砕することで、混合乾燥食品において、各乾燥食品を均一に混ぜ合わせることができる。なお、乾燥食品毎に一定のサイズに粗砕することが好ましい。ただし、これに限られない。
【0058】
次に、乾燥処理が施された乾燥食品(例えば、第1の乾燥食品)を所定期間保管する(S14)。乾燥食品の保管環境は、特に限定されるものではないが、含水率が15重量%以下となるまで第1の乾燥食品を乾燥させれば、冷蔵環境下であっても、保管される乾燥食品を劣化させず品質を長期間維持することができる。また、含水率が10重量%以下となるまで乾燥食品を乾燥させれば、室温環境下であっても、保管される乾燥食品の品質を長期間維持することができる。
【0059】
以上、第1の生鮮食品(第1の乾燥食品)を例に、生鮮食品の収穫から乾燥・保管までの処理を説明した。また、例えば、第1の生鮮食品とは別に収穫される、第1の生鮮食品と同種又は異種の第2の生鮮食品(第2の乾燥食品)、第3の生鮮食品(第3の乾燥食品)、・・・、第nの生鮮食品(第nの乾燥食品)に対して、第1の生鮮食品に対するものと同様の処理を行うことが好ましい(
図1のS21からS23、S31からS33、Sn1からSn3参照)。
【0060】
なお、
図1に示される態様とは異なり、第2の乾燥食品、第3の乾燥食品、・・・、第nの乾燥食品の少なくとも1つを所定期間保管せず、乾燥後すぐに第1の乾燥食品等と混合し、半乾燥化させてもよい。更に、混合する乾燥食品は、粗砕等の処理により、同じサイズとされていてもよいし、異なるサイズとされていてもよい。
【0061】
続いて、必要に応じて所定期間保管された第1の乾燥食品、第2の乾燥食品、第3の乾燥食品、・・・、第nの乾燥食品を混合し、混合乾燥食品を得る(S101)。このとき、塩、砂糖、味噌、醤油、コーヒー、茶、ソース、果汁等の各種調味料を混合乾燥食品に添加してもよい。なお、各種調味料を混合乾燥食品に添加するのではなく、混合前の乾燥食品のいずれかに前記各種調味料を添加するようにしてもよい。半乾燥化前の乾燥食品に各種調味料を添加することで、乾燥食品に各種調味料を十分浸透させることができ、良好な風味を付与することができる。
【0062】
更に、得られた混合乾燥食品に対し、以下の半乾燥処理を施す(S102)。ここで、前記「半乾燥」の状態とは、例えば、生鮮同様、水戻し処理などを行うことなく喫食が可能でありながら、生鮮に比べて水分活性が抑えられて(例えば水分活性が0.85以下に抑えられ)長期保存可能に処理された状態を指す。特に限定されるものではないが、例えば、含水率が20重量%以上で45重量%未満に調整され、水戻し処理を行うことなくそのまま咀嚼(喫食)できる状態を指す。
【0063】
本実施形態における半乾燥処理は、下記の通りである。すなわち、混合乾燥食品を所定量の水と共に容器に収容する。混合乾燥食品に対する所定量の水の添加タイミングは特に限定されない。例えば、容器収容前の混合乾燥食品に水を添加(例えば、ミスト化して噴霧、シャワー噴射、水蒸気で満たされた装置を通過、水蒸気の吹き付け、ミストや水蒸気が混在している等)する態様、容器収容後の混合乾燥食品に水を添加(例えば、ミスト化して噴霧、シャワー噴射、水蒸気の吹き付け、ミストや水蒸気が混在している等)する態様、予め容器に水を含ませた後、その容器に混合乾燥食品を収容し、容器に含まれた水を何らかの方法(例えば、容器密封後容器を回転、加熱し、容器内の水を水蒸気化する等)で混合乾燥食品に添加する態様などが例示される。添加する水の量は、特に限定されるものではなく、最終的な混合半乾燥食品に含まれる含水率に応じて適宜調整できる。
【0064】
なお、半乾燥化前の混合乾燥食品の含水率によって、添加する水の量が変わることから、混合乾燥食品の水分含量を確認した上で添加する水の量を決めることが好ましい。また、最終的な混合半乾燥食品における目標含水率及び適切な乾燥方法等を予めテストしてから添加する水の量を決めてもよい。例えば、混合半乾燥食品の目標含水率を20重量%から45重量%にする場合、混合乾燥食品の含水率が8.0重量%であれば、混合乾燥食品の重量に対して、水を15重量%から68重量%添加することとなる。そして、混合乾燥食品の含水率が10重量%であれば、混合乾燥食品の重量に対して水を12.5重量%~65重量%添加することとなる。
【0065】
また、混合乾燥食品へ添加する水は、加熱殺菌した水を用いることもできる。加熱殺菌した水とは、加圧加熱殺菌した後の水であったり、80℃以上で一定時間以上煮沸した水であったり、水蒸気化した水であったりしたものであってもよい。容器収容前の混合乾燥食品に添加される水の温度は、1℃以上120℃以下である必要があり、好ましくは3℃以上100℃以下である。なお、80℃以上の水を添加するときは、添加に要する時間は60秒以下であることが好ましい。また容器収容後に水を添加するとき又は予め容器に水を添加するときの混合乾燥食品に添加される水の温度は、1℃以上80℃以下である必要があり、好ましくは3℃以上40℃以下である。更に、混合乾燥食品へ添加する水は、混合半乾燥食品の性質に影響がない範囲で糖質を含有させることができる。
【0066】
容器は、密閉可能なものであることが好ましい。また、水蒸気および酸素を透過させにくい素材で構成されることが好ましい。ガラス製の瓶、金属製の缶、水蒸気を通さないバリア素材を用いた樹脂製ボトル、袋状物などが例示される。更に、容器は、例えば120℃までの耐熱性を有することが好ましい。
【0067】
次に、添加した水が均等に混合乾燥食品に分散し、含水され、目標の含水率の混合半乾燥食品になるようにする。目標の含水率にする方法として、定期的に撹拌したり、容器を反転させたりするなど制限はないが、密封された容器の底部に添加した水の10重量%以下、好ましくは7重量%以下、5重量%以下の水が存在する状態になれば良い。さらに、均一な含水率の混合半乾燥食品を作製するためには、混合乾燥食品と水を含んだ容器を加熱することが好ましい。
【0068】
ここで、容器に含まれる水は、容器収容前に混合乾燥食品に添加され、混合乾燥食品と共に容器に収容される水であってもよい。容器の密閉は、加熱の前後又は途中に行われてもよいが、容器を密閉した後、加熱することが好ましい。更に、収容された水の蒸発を促すため、容器の密閉の際、容器内部を減圧することが好ましい。加熱により、容器内の水が蒸発し、蒸気で容器が満たされる。これにより混合乾燥食品に水を万遍なく添加することができる。この処理によって、乾燥食品より含水率を高めた混合半乾燥食品を得る。
【0069】
なお、加熱中の容器内の温度や加熱時間は、特に限定されるものではないが、混合乾燥食品を痛めることなく、蒸発した水分で容器が満たされるような条件が好ましい。一例として、容器内部の温度を60℃から110℃とすることが挙げられ、好ましくは70℃から90℃である。また、この温度帯において、加熱時間を5分から60分とすることが挙げられる。また、加熱装置の種類も特に限定されないが、例えば、蒸気型、沸騰水型、温風型のものなどが挙げられる。なお、加熱後、容器は密閉され、その内部で混合半乾燥食品が保管される。
【0070】
更に、
図1に示されるように、加工食品に由来する乾燥食品を第1の乾燥食品等に混合するようにしてもよい(加工食品に由来する乾燥食品に関し、前述の生鮮食品に由来する第1の乾燥食品、第2の乾燥食品、第3の乾燥食品、・・・、第nの乾燥食品と区別するため、以下、「加工食品由来の乾燥食品」と言う。また、前記生鮮食品に由来する乾燥食品を以下、「生鮮食品由来の乾燥食品」と言う場合がある。)。
【0071】
用いられる加工食品の種類は、特に限定されるものではないが、チーズ等の乳製品、ハム、ソーセージ(ウィンナーソーセージ)、蒲鉾、豆腐等の加工食品の他、クルトン、ビーフジャーキー、高野豆腐、かつお節等の乾燥状態にある加工食品が例示される。
【0072】
本実施形態において、加工食品は、所定サイズに細分された後、送風乾燥、温風乾燥、熱風乾燥、恒温乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、真空凍結乾燥等の乾燥手段により、乾燥させる(
図1のステップSp1)。このとき、加工食品由来の乾燥食品の含水率を15重量%以下とすることが好ましく、含水率10重量%以下とすることがより好ましい。ただし、加工食品由来の乾燥食品の含水率は、前記に限定されない。
【0073】
ここで、
図1に示される態様は、加工食品由来の乾燥食品を1種混合するものであるが、2種以上の加工食品由来の乾燥食品を混合してもよい。また、
図1に示される態様は、複数の生鮮食品由来の乾燥食品を混合するものであるが、生鮮食品由来の乾燥食品の数は、これに限られない。例えば、生鮮食品由来の乾燥食品を1つ、加工食品由来の乾燥食品を1つ混合するような態様であってもよい。
【0074】
本実施形態によれば、生鮮に近い状態が均一に保たれた混合半乾燥食品を得ることができる。なお、得られた混合半乾燥食品を冷蔵環境下で24時間程度静置することが好ましい。
【0075】
更に、本実施形態によれば、一度乾燥させた乾燥食品に対して半乾燥処理を施すため、半乾燥化前の乾燥食品を所定期間保管することができる。また、別々に乾燥させた複数の乾燥食品を混合した混合乾燥食品から、少なくとも一度の半乾燥処理により混合半乾燥食品を得ることができる。そのため、出荷タイミングに合わせて各乾燥食品を都度半乾燥処理を施す必要がなく、生産コスト高騰を避けることができる。
【0076】
更に、本実施形態によれば、出荷注文量の変動に影響を受けることなくタイムリーに混合半乾燥食品を提供することができる。更に、本実施形態によれば、混合乾燥食品の含水率が20重量%から45重量%となるよう半乾燥処理を施すため、所定期間保管された乾燥食品を用いても、品質が担保された混合半乾燥食品を得ることができる。
【0077】
更に、本実施形態によれば、収穫時期が異なる複数種の野菜類等や、種々の細分サイズの野菜類等の乾燥食品を混合できるため、混合される野菜類等の種類及びサイズの組み合わせ方に制約を受けず混合半乾燥食品を製造することができる。
【0078】
[混合半乾燥食品]
以上説明した混合半乾燥食品の製造方法によって、以下の混合半乾燥食品を得ることができる。すなわち、本実施形態における混合半乾燥食品は、例えば、第1の乾燥食品、第2の乾燥食品、第3の乾燥食品、・・・、第nの乾燥食品を半乾燥化させたことで得られる第1の半乾燥食品、第2の半乾燥食品、第3の半乾燥食品、・・・、第nの半乾燥食品のうちの少なくとも1つの含水率が20重量%から45重量%、水分活性が0.85以下、一般生菌数が10000cfu/g以下の条件を満たす。
【0079】
また、第1の半乾燥食品、第2の半乾燥食品、第3の半乾燥食品、・・・、第nの半乾燥食品のうちの少なくとも1つの含水率は、21重量%から40重量%であることがより好ましく、22重量%から35重量%であることが更に好ましい。含水率が、20重量%を下回る場合、乾燥状態に近いことから、水戻し処理等何らかの処理を加えなければ生鮮食品と同様の食感・風味が得られない。これに対して、含水率が、45重量%を上回る場合、例えば、1℃から20℃の温度帯の冷蔵環境においても長期保存可能な程度まで保存性が向上されない可能性がある。
【0080】
更に、第1の半乾燥食品、第2の半乾燥食品、第3の半乾燥食品、・・・、第nの半乾燥食品のうちの少なくとも1つは、前記された糖質や塩等、水分活性低減作用又は色調保持作用の発現に有効な他の成分を含んでもよい。
【0081】
前記含有成分の作用により、半乾燥食品(混合半乾燥食品)の水分活性は、生鮮に比べて低減される。水分活性の範囲は、特に限定されるものではないが、0.85以下であることが好ましく、0.84以下であることがより好ましく、0.83以下であることが更に好ましい。水分活性が0.85を上回る場合、長期保存性が損なわれる可能性がある。
【0082】
また、前記含有成分の作用により、本実施形態に係る半乾燥食品に含まれる一般生菌の増殖を抑制することができる。一般生菌数の範囲を10000cfu/g以下にすることで半乾燥食品(混合半乾燥食品)を長期保存することができる。例えば、混合半乾燥食品を冷蔵環境下で10日前後保管した後に含まれる一般生菌数が、10000cfu/g以下であることが好ましく、5000cfu/g以下であることがより好ましい。また、容器開封後の保存性の観点から、1000cfu/g以下であることが更に好ましい。
【0083】
なお、一般生菌数が10000cfu/g以下であれば十分衛生であるが、それより菌数を低減させる場合、例えば、殺菌水による生鮮食品の洗浄、生鮮食品の含水率を下げるための前処理(ブランチング、糖漬等)、各種乾燥処理での加熱殺菌、その他の殺菌処理等を適宜行ってもよい。また、これらの殺菌処理を単独で行ってもよいし、複数を併用してもよい。
【0084】
更に、本実施形態に係る混合半乾燥食品において、第1の半乾燥食品と、第2の半乾燥食品、第3の半乾燥食品、・・・、第nの半乾燥食品のうちの少なくとも1つとの含水率の差が、10%以内であることが好ましく、5%以内であることがより好ましい。各半乾燥食品における含水率の関係を前記のようにすることで、複数種の半乾燥食品を含む混合半乾燥食品の均質化を図ることができる。
【0085】
なお、混合半乾燥食品を得る方法は、前述のように、第1の乾燥食品、第2の乾燥食品、第3の乾燥食品、・・・、第nの乾燥食品を混合した混合乾燥食品を半乾燥化させるものに限られず、第1の生鮮食品、第2の生鮮食品、第3の生鮮食品、・・・、第nの生鮮食品や加工食品をそれぞれ乾燥・半乾燥化させて個々の半乾燥食品を得た後、これらを混合させるものであってもよい。
【実施例0086】
以上説明した混合半乾燥食品の製造方法及び混合半乾燥食品において、具体的な実施の例を以下に示す。ただし、本発明は、下記の実施例により限定及び制限されるものではない。
【0087】
<実施例1>
生鮮のバジルと山椒を別々に乾燥させた。このとき、乾燥バジルの含水率は、約7重量%であり、乾燥山椒の含水率は、約8重量%であった。その後、これらを混合した混合乾燥食品に対し、水を添加して半乾燥処理を施し、混合半乾燥食品を得た。また、混合半乾燥食品にはバジルが液化した状態、例えばペースト状の物や、バジルと山椒の色が混じった状態の物は確認できず、得られた混合半乾燥食品からピンセットを用いて、半乾燥バジルと半乾燥山椒を分け、各々に対して下表1に示す評価を行った。
【0088】
なお、半乾燥バジルは、乾燥後約3日間保管された後、半乾燥処理されたものであり、半乾燥山椒は、乾燥後約2週間保管された後、半乾燥処理されたものである。また、再現性を確認するため、2度実験を行った。下表1のバジル1、山椒1が第1の実験に用いた試料に対応し、バジル2、山椒2が第2の実験に用いた試料に対応する。
【0089】
【0090】
表1に示されるように、実施例1に係る混合半乾燥食品において、水戻し等の処理を別途行わなくても食感の良好な半乾燥バジル及び半乾燥山椒が得られた。また、半乾燥バジル及び半乾燥山椒の水分差がほぼなく、混合半乾燥食品全体に満遍なく水分が添加された。
【0091】
<実施例2>
生鮮のバジルを乾燥させ、これを約3日間保管した後、保管された乾燥バジルと、既に凍結乾燥処理された乾燥ジャガイモ(少なくとも、乾燥後1カ月経過)とを混合した。このとき、乾燥バジルの含水率は、約7重量%であり、乾燥ジャガイモの含水率は、約4.5重量%であった。その後、これらを混合した混合乾燥食品に対し、水を添加して半乾燥処理を施し、混合半乾燥食品を得た。また、ピンセットを用いて、得られた混合半乾燥食品から半乾燥バジルと半乾燥ジャガイモを分け、各々に対して下表2に示す評価を行った。
【0092】
【0093】
表2に示されるように、実施例2に係る混合半乾燥食品において、水戻し等の処理を別途行わなくても食感の良好な半乾燥バジル及び半乾燥ジャガイモが得られた。また、半乾燥バジル及び半乾燥ジャガイモの水分差がほぼなく、混合半乾燥食品全体に満遍なく水分が添加された。
【0094】
<実施例3>
生鮮のバジルと生ハムを別々に乾燥させた(生ハムに対しては、温風乾燥処理を施した)。このとき、乾燥バジルの含水率は、約7重量%であり、乾燥生ハムの含水率は、約5重量%であった。その後、これらを混合した混合乾燥食品に対し半乾燥処理を施し、混合半乾燥食品を得た。また、ピンセットを用いて、得られた混合半乾燥食品から半乾燥バジルと半乾燥生ハムを分け、各々に対して下表3に示す評価を行った。
【0095】
なお、半乾燥バジルは、乾燥後約3日間保管された後、半乾燥処理されたものである。また、再現性を確認するため、2度実験を行った。下表3のバジル1、生ハム1が第1の実験に用いた試料に対応し、バジル2、生ハム2が第2の実験に用いた試料に対応する。
【0096】
【0097】
表3に示されるように、実施例3に係る混合半乾燥食品において、水戻し等の処理を別途行わなくても食感の良好な半乾燥バジル及び半乾燥生ハムが得られた。また、半乾燥バジル及び半乾燥生ハムの水分差がほぼなく、混合半乾燥食品全体に満遍なく水分が添加された。このように、野菜類と、野菜類以外の食品とを含む場合であっても、良好な食感を呈する混合半乾燥食品が得られた。
【0098】
<実施例4>
生鮮のルッコラと生鮮のホウレン草を別々に温風乾燥処理にて乾燥させた。このとき、乾燥ルッコラの含水率は、約6重量%であり、乾燥ほうれん草の含水率は、約14重量%であった。その後、乾燥ルッコラ約5gと、乾燥ほうれん草約6gとを混合した混合乾燥食品に対し、半乾燥処理を施し、混合半乾燥食品を得た。また、ピンセットを用いて、得られた混合半乾燥食品から半乾燥ルッコラと半乾燥ほうれん草を分け、水分を測定した結果、半乾燥ルッコラの含水率は23.2重量%、であり、半乾燥ほうれん草の含水率は32.4重量%であった。半乾燥ルッコラ、半乾燥ほうれん草共に食感はよく、混合半乾燥食品としても食感は悪くなかった。
【0099】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明した。ただし、前述の説明は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定する趣旨で記載されたものではない。本発明には、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るものを含み得る。また、本発明にはその等価物が含まれる。