(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139624
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】加工装置及び加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
H01L21/304 601B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040098
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】成田 義智
【テーマコード(参考)】
5F057
【Fターム(参考)】
5F057AA05
5F057AA42
5F057BA15
5F057BB03
5F057BB06
5F057BB09
5F057CA21
5F057DA17
5F057DA22
5F057GA13
5F057GB02
(57)【要約】
【課題】エッジトリミングによって損傷するデバイスの割合を低減する又は0にできるとともに、被加工物の裏面側を研削した後に被加工物にクラックが生じる蓋然性を低減できる加工装置及び加工方法を提供する。
【解決手段】被加工物の外周部分を加工する際の加工軌跡を、ノッチの位置を中心とした所定の範囲内においてノッチの位置から遠ざかるほど被加工物の外周部分の加工幅が狭くなり、かつ、この所定の範囲外において被加工物の外周部分の加工幅が基準幅(最低限の加工幅)と等しくなるように設定する。これにより、ノッチの位置から遠い位置の加工幅が狭くなるので、エッジトリミングによって損傷するデバイスの割合を低減する又は0にできる。また、ノッチの位置の加工幅が最も広くなるので、被加工物の裏面側を研削した後に被加工物にクラックが生じる蓋然性を低減できる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノッチが形成された円盤状の被加工物を加工する加工装置であって、
該被加工物を保持する保持テーブルと、
該保持テーブルに保持された該被加工物を加工する加工ユニットと、
環状の加工軌跡に沿って該被加工物の外周部分を基準幅以上の加工幅で加工するように該加工ユニットを制御する制御ユニットと、を備え、
該加工軌跡は、該ノッチの位置を含む所定の範囲内において該ノッチの位置から遠ざかるほど該被加工物の外周部分の加工幅が狭くなり、かつ、該所定の範囲外において該被加工物の外周部分の加工幅が該基準幅と等しくなるように設定される、
ことを特徴とする加工装置。
【請求項2】
該加工軌跡を設定するための情報を該制御ユニットに入力する入力ユニットを更に備え、
該情報は、該ノッチの位置における該加工幅の該基準幅からの増分幅と、該所定の範囲と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
該加工ユニットは、スピンドルに取り付けられた環状の切削ブレードを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の加工装置。
【請求項4】
該加工ユニットは、該被加工物に吸収される波長のレーザービームを生成するレーザー発振器を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の加工装置。
【請求項5】
該加工ユニットは、該被加工物を透過する波長のレーザービームを生成するレーザー発振器を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の加工装置。
【請求項6】
ノッチが形成された円盤状の被加工物を加工する加工方法であって、
該被加工物を保持テーブルで保持する保持ステップと、
環状の加工軌跡に沿って該被加工物の外周部分を基準幅以上の加工幅で加工する加工ステップと、を含み、
該加工軌跡は、該ノッチの位置を含む所定の範囲内において該ノッチの位置から遠ざかるほど該被加工物の外周部分の加工幅が狭くなり、かつ、該所定の範囲外において該被加工物の外周部分の加工幅が該基準幅と等しくなるように設定される、
ことを特徴とする加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノッチが形成された円盤状の被加工物を加工する加工装置及びこの被加工物を加工する加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit)及びLSI(Large Scale Integration)等のデバイスのチップは、携帯電話及びパーソナルコンピュータ等の各種電子機器において不可欠の構成要素である。このようなチップは、例えば、半導体ウェーハ等の被加工物の表面に多数のデバイスを形成した後に、被加工物を個々のデバイスを含む領域毎に分割することで製造される。
【0003】
チップの製造に用いられる被加工物は、外周部分に生じるクラックを起点として割れやすい。そのため、チップの製造工程においては、各種工程に先立って、被加工物の外周部分が面取りされることが一般的である。さらに、チップの製造工程においては、製造されるチップの小型化等を目的として、被加工物の分割に先立って、被加工物の裏面側を研削して被加工物が薄化されることも多い。
【0004】
ただし、外周部分が面取りされた被加工物の裏面側を研削して被加工物を薄化すると、被加工物の裏面側の外周部分がナイフエッジになる。この外周部分には、応力が集中してクラックが生じやすい。そのため、チップの製造工程においては、この外周部分の表面側の一部を除去するエッジトリミングが行われた後に、この外周部分の残部を除去するように被加工物の裏面側を研削することがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、チップの製造に用いられる被加工物の外周部分には、一般的に、被加工物の結晶方位を示すノッチが形成されている。このノッチは、例えば、チップの製造工程における被加工物の位置決め等に利用される。ただし、このような被加工物に対してエッジトリミング及び裏面側の研削が行われると、ノッチが消失して、その後の工程において被加工物の位置決め等が困難になるおそれがある。
【0006】
この点に鑑み、被加工物の裏面側の研削後であっても被加工物の結晶方位を認識可能なエッジトリミングの方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方法においては、被加工物の表面が楕円形状になるように、被加工物に対してエッジトリミングが行われている。具体的には、この表面は、被加工物の中心からみたノッチの方向が楕円の短軸の方向と一致するように加工されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-173961号公報
【特許文献2】特開2019-220632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
チップの製造コストを低減するためには、被加工物の表面にできるだけ多くのデバイスを形成することが好ましい。そして、このような場合には、エッジトリミングによって損傷するデバイスの割合を低減する又は0にするために、エッジトリミングの加工幅をできるだけ狭くすることが好ましい。
【0009】
他方、エッジトリミングの加工幅が狭くなると、ノッチの一部が被加工物の表面側に残存するおそれがある。この場合、エッジトリミングされた被加工物の裏面側を研削した後に、被加工物の表面側にノッチの先端部(被加工物の中心に近い部分)が残存することに起因してクラックが生じるおそれがある。
【0010】
この点に鑑み、本発明の目的は、エッジトリミングによって損傷するデバイスの割合を低減する又は0にできるとともに、被加工物の裏面側を研削した後に被加工物にクラックが生じる蓋然性を低減できる加工装置及び加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面によれば、ノッチが形成された円盤状の被加工物を加工する加工装置であって、該被加工物を保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された該被加工物を加工する加工ユニットと、環状の加工軌跡に沿って該被加工物の外周部分を基準幅以上の加工幅で加工するように該加工ユニットを制御する制御ユニットと、を備え、該加工軌跡は、該ノッチの位置を含む所定の範囲内において該ノッチの位置から遠ざかるほど該被加工物の外周部分の加工幅が狭くなり、かつ、該所定の範囲外において該被加工物の外周部分の加工幅が該基準幅と等しくなるように設定される、加工装置が提供される。
【0012】
本発明の加工装置においては、該加工軌跡を設定するための情報を該制御ユニットに入力する入力ユニットを更に備え、該情報は、該ノッチの位置における該加工幅の該基準幅からの増分幅と、該所定の範囲と、を含むことが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の加工装置においては、該加工ユニットは、スピンドルに取り付けられた環状の切削ブレードを有することが好ましい。
【0014】
あるいは、本発明の加工装置においては、該加工ユニットは、該被加工物に吸収される波長のレーザービームを生成するレーザー発振器を有することが好ましい。
【0015】
あるいは、本発明の加工装置においては、該加工ユニットは、該被加工物を透過する波長のレーザービームを生成するレーザー発振器を有することが好ましい。
【0016】
本発明の他の側面によれば、ノッチが形成された円盤状の被加工物を加工する加工方法であって、該被加工物を保持テーブルで保持する保持ステップと、環状の加工軌跡に沿って該被加工物の外周部分を基準幅以上の加工幅で加工する加工ステップと、を含み、該加工軌跡は、該ノッチの位置を含む所定の範囲内において該ノッチの位置から遠ざかるほど該被加工物の外周部分の加工幅が狭くなり、かつ、該所定の範囲外において該被加工物の外周部分の加工幅が該基準幅と等しくなるように設定される、加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、被加工物の外周部分を加工する際の加工軌跡が、ノッチの位置を含む所定の範囲内においてノッチの位置から遠ざかるほど被加工物の外周部分の加工幅が狭くなり、かつ、この所定の範囲外において被加工物の外周部分の加工幅が基準幅(最低限の加工幅)と等しくなるように設定される。
【0018】
これにより、本発明においては、ノッチの位置から遠い位置の加工幅が狭くなるので、エッジトリミングによって損傷するデバイスの割合を低減する又は0にできる。また、本発明においては、ノッチの位置の加工幅が最も広くなるので、被加工物の裏面側を研削した後に被加工物にクラックが生じる蓋然性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、加工装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2(A)は、被加工物の一例を模式的に示す上面図であり、
図2(B)は、被加工物の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、被加工物に対するエッジトリミングの加工軌跡を設定するために必要な情報の入力画面の一例を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、被加工物の加工方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、保持テーブルに置かれた被加工物を模式的に示す上面図である。
【
図6】
図6は、被加工物に対するエッジトリミングの加工軌跡を設定するために必要な情報が入力された入力画面の一例を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、エッジトリミングの加工軌跡の内周と被加工物との位置の関係を模式的に示す上面図である。
【
図8】
図8(A)は、エッジトリミングが行われている被加工物を模式的に示す上面図であり、
図8(B)は、エッジトリミングが行われている被加工物を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9(A)は、エッジトリミングが行われている被加工物を模式的に示す上面図であり、
図9(B)は、エッジトリミングが行われている被加工物を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10(A)は、エッジトリミングが行われている被加工物を模式的に示す上面図であり、
図10(B)は、エッジトリミングが行われている被加工物を模式的に示す断面図である。
【
図11】
図11(A)は、エッジトリミングが行われている被加工物を模式的に示す上面図であり、
図11(B)は、エッジトリミングが行われている被加工物を模式的に示す断面図である。
【
図12】
図12(A)は、エッジトリミングが行われている被加工物を模式的に示す上面図であり、
図12(B)は、エッジトリミングが行われている被加工物を模式的に示す断面図である。
【
図13】
図13(A)は、エッジトリミングされた被加工物を模式的に示す上面図であり、
図13(B)は、エッジトリミングされた被加工物を模式的に示す側面図である。
【
図14】
図14は、レーザー照射装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、被加工物を加工する加工装置となる切削装置の一例を模式的に示す斜視図である。なお、
図1に示されるX軸方向(前後方向)及びY軸方向(左右方向)は、水平面上において互いに直交する方向であり、また、Z軸方向(上下方向)は、X軸方向及びY軸方向に直交する方向(鉛直方向)である。また、
図1においては、便宜上、切削装置の構成要素の一部がブロックで描かれている。
【0021】
図1に示される切削装置2は、各構成要素を支持する基台4を備える。基台4の上面には、長手方向がX軸方向に平行な矩形の開口4aが形成されている。開口4a内には、平板状のカバー6と、カバー6の移動に伴って伸縮する蛇腹状のカバー8とが設けられている。
【0022】
カバー6の上方には、保持テーブル10が設けられている。保持テーブル10は、上方に露出した円盤状のポーラス板10aを有する。ポーラス板10aの上面は、概ね平行であり、被加工物を保持する保持テーブル10の保持面となる。また、カバー6,8の下方には、カバー6及び保持テーブル10をX軸方向に沿って移動させるX軸方向移動機構(不図示)が設けられている。
【0023】
図2(A)は、保持テーブル10の保持面に保持される被加工物の一例を模式的に示す上面図であり、
図2(B)は、
図2(A)に示されるA
0B
0線における被加工物の断面を模式的に示す断面図である。
図2(A)及び
図2(B)に示される被加工物11は、例えば、Si(シリコン)、SiC(炭化シリコン)又はGaN(窒化ガリウム)等の半導体材料からなるウェーハである。
【0024】
被加工物11の表面11aは、デバイス領域13aと、デバイス領域13aを囲繞する外周余剰領域13bとを含む。そして、デバイス領域13aは、格子状に設定された複数の分割予定ラインによって複数の領域に区画され、これらの複数の領域のそれぞれには、IC又はLSI等のデバイス15が形成されている。
【0025】
また、被加工物11の外周部分は、面取りされている。すなわち、被加工物11の側面11bは、外側に凸になるように湾曲している。また、被加工物11の外周部分には、被加工物11の結晶方位を示すノッチ11cが形成されている。そして、被加工物11は、直接又はダイシングテープ(不図示)を介して、その裏面11d側が保持テーブル10の保持面(ポーラス板10aの上面)に置かれる。
【0026】
なお、保持テーブル10の内部には、保持テーブル10の外部に設けられたエジェクタ等の吸引源(不図示)に一端が接続された吸引路(不図示)が形成されている。この吸引路の他端は、ポーラス板10aに達している。そのため、裏面11dが下になるように被加工物11が保持面に置かれた状態で、この吸引源を動作させると、被加工物11が保持テーブル10に吸引保持される。
【0027】
さらに、保持テーブル10は、モータ等の保持テーブル用回転駆動源(不図示)に連結されている。この保持テーブル用回転駆動源を動作させると、保持面の中心を通り、かつ、Z軸方向に沿った回転軸で保持テーブル10が回転する。
【0028】
基台4の上面の開口4aの近傍には、支持構造12が設けられている。支持構造12は、基台4の上面からZ軸方向に沿って延在する立設部12aと、開口4aの上方の空間を渡るように立設部12aの上端部からY軸方向に沿って延在する腕部12bとを備える。腕部12bの前面側には、Y軸方向移動機構14が設けられている。
【0029】
Y軸方向移動機構14は、腕部12bの前面に固定され、かつ、Y軸方向に沿って延在する一対のY軸ガイドレール16を備える。一対のY軸ガイドレール16の前面側には、一対のY軸ガイドレール16に沿ってスライド可能な態様でY軸移動プレート18が連結されている。
【0030】
また、一対のY軸ガイドレール16の間には、Y軸方向に沿って延在するねじ軸20が配置されている。ねじ軸20の一端部には、ねじ軸20を回転させるためのモータ(不図示)が連結されている。ねじ軸20の螺旋状の溝が形成された表面には、回転するねじ軸20の表面を転がるボールを収容するナット部(不図示)が設けられ、ボールねじが構成されている。
【0031】
すなわち、ねじ軸20が回転すると、ボールがナット部内を循環して、ナット部がY軸方向に沿って移動する。また、このナット部は、Y軸移動プレート18の後面側に固定されている。そのため、ねじ軸20の一端部に連結されているモータでねじ軸20を回転させれば、ナット部とともにY軸移動プレート18がY軸方向に沿って移動する。
【0032】
Y軸移動プレート18の前面側には、Z軸方向移動機構22が設けられている。Z軸方向移動機構22は、Y軸移動プレート18の前面に固定され、かつ、Z軸方向に沿って延在する一対のZ軸ガイドレール24を備える。一対のZ軸ガイドレール24の前面側には、一対のZ軸ガイドレール24に沿ってスライド可能な態様でZ軸移動プレート26が連結されている。
【0033】
また、一対のZ軸ガイドレール24の間には、Z軸方向に沿って延在するねじ軸28が配置されている。ねじ軸28の一端部には、ねじ軸28を回転させるためのモータ30が連結されている。ねじ軸28の螺旋状の溝が形成された表面には、回転するねじ軸28の表面を転がるボールを収容するナット部(不図示)が設けられ、ボールねじが構成されている。
【0034】
すなわち、ねじ軸28が回転すると、ボールがナット部内を循環して、ナット部がZ軸方向に沿って移動する。また、このナット部は、Z軸移動プレート26の後面側に固定されている。そのため、モータ30でねじ軸28を回転させれば、ナット部とともにZ軸移動プレート26がZ軸方向に沿って移動する。
【0035】
Z軸移動プレート26の下部には、切削ユニット(加工ユニット)32が固定されている。切削ユニット32は、長手方向がY軸方向に平行な筒状のスピンドルハウジング34を有する。スピンドルハウジング34には、長手方向がY軸方向に平行な円柱状のスピンドル(不図示)が収容されている。このスピンドルは、回転可能な態様でスピンドルハウジング34によって支持される。
【0036】
スピンドルの先端部は、スピンドルハウジング34の外に突出し、この先端部には環状の切刃を有する切削ブレード36が装着されている。また、スピンドルの基端部は、スピンドルハウジング34に内蔵されるモータ等の切削ブレード用回転駆動源(不図示)に連結されている。この切削ブレード用回転駆動源を動作させると、スピンドルとともにY軸方向に沿った回転軸で切削ブレード36が回転する。
【0037】
また、X軸方向において切削ユニット32に隣接する位置には、Z軸移動プレート26の下部に固定されている撮像ユニット38が設けられている。撮像ユニット38は、例えば、LED(Light Emitting Diode)等の光源と、対物レンズと、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子とを有する。
【0038】
さらに、基台4の上方には、保持テーブル10及び支持構造12等を囲むカバー40が設けられている。なお、
図1においては、便宜上、カバー40の辺のみが一点鎖線で示されている。また、カバー40の側面には、タッチパネル42が設けられている。
【0039】
タッチパネル42は、例えば、オペレータからの指示を切削装置2へ入力するための入力ユニットとして機能するタッチセンサと、オペレータに各種の情報を報知するための報知ユニットとして機能するディスプレイとによって構成される。このタッチセンサは、例えば、静電容量方式のタッチセンサ又は抵抗膜方式のタッチセンサ等である。また、このディスプレイは、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等である。
【0040】
上述した切削装置2の構成要素の動作は、切削装置2に内蔵される制御ユニット44によって制御される。制御ユニット44は、例えば、切削装置2の構成要素を制御するための信号を生成する処理部と、この処理部において用いられる各種の情報(データ及びプログラム等)を記憶する記憶部とを有する。
【0041】
この処理部の機能は、記憶部に記憶されたプログラムを読みだして実行するCPU(Central Processing Unit)等によって具現される。また、この記憶部の機能は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)及びNAND型フラッシュメモリ等の半導体メモリと、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶装置との少なくとも一つによって具現される。
【0042】
例えば、この記憶部には、被加工物11に対してエッジトリミングを行う際の最低限の加工幅(基準幅)の具体的な値(例えば、1mm)が記憶されている。また、この処理部は、例えば、被加工物11に対するエッジトリミングの加工軌跡を設定するために必要な情報の入力画面をタッチパネル42に表示させる。
【0043】
図3は、このような入力画面の一例を模式的に示す図である。
図3に示される入力画面46は、加工軌跡を設定するために必要な情報が入力される複数の枠46a,46b,46cを含む。具体的には、枠46aは、エッジトリミングの際の基準となる位置を示す情報(被加工物11のノッチ11cの位置をエッジトリミングの加工点に合わせるために必要な保持テーブル10の回転角度)を入力するための枠である。
【0044】
また、枠46bは、エッジトリミングの加工幅を上記の基準幅よりも広くする範囲を示す情報(ノッチ11cの位置を中心とした保持テーブル10の回転角度)を入力するための枠である。また、枠46cは、エッジトリミングの際の基準となる位置(ノッチ11cの位置)におけるエッジトリミングの加工幅と上記の基準幅との差(増分幅)を入力するための枠である。
【0045】
そして、オペレータが複数の枠46a,46b,46cのいずれかに触れると、制御ユニット44の処理部は、タッチパネル42にテンキー(不図示)を表示させる。これにより、このテンキーを用いてオペレータが複数の枠46a,46b,46cのそれぞれに具体的な数値を入力することが可能になる。そして、これらの数値が入力された後、入力画面46に表示される入力アイコン46dにオペレータが触れると、各数値が制御ユニット44に入力される。
【0046】
被加工物11に対するエッジトリミングの加工軌跡を設定するために必要な情報が制御ユニット44に入力されると、制御ユニット44の処理部は、被加工物11に対するエッジトリミングの加工軌跡を設定する。この加工軌跡は、ノッチ11cの位置を中心とした所定の範囲内においてノッチ11cの位置から遠ざかるほど被加工物11の外周部分の加工幅が狭くなり、かつ、この所定の範囲外において被加工物11の外周部分の加工幅が基準幅と等しくなるように設定される。
【0047】
また、制御ユニット44の処理部は、保持テーブル10の保持面の中心からみてY軸方向に加工点が位置付けられた状態で被加工物11に対するエッジトリミングが行われるように切削装置2の構成要素を制御する。端的には、制御ユニット44の処理部は、エッジトリミングの最中に、保持テーブル10を回転させ、かつ、切削ユニット32をY軸方向に沿って移動させるが、保持テーブル10をX軸方向に沿って移動させない。
【0048】
図4は、切削装置2等の加工装置における被加工物11の加工方法の一例を模式的に示すフローチャートである。この方法においては、まず、被加工物11を保持テーブル10で保持する(保持ステップ:S1)。例えば、X軸方向及びY軸方向に平行な平面(XY平面)において、被加工物11の中心と保持テーブル10の保持面の中心とが一致した状態で、保持テーブル10の内部に形成された吸引路に接続されている吸引源を動作させる。
【0049】
次いで、環状の加工軌跡に沿って被加工物11の外周部分を上記の基準幅以上の加工幅で加工する(加工ステップ:S2)。この加工軌跡は、上述のとおり、タッチパネル42を介して入力される各種の情報等に基づいて設定される。この点について、
図5~
図7を参照して説明する。
【0050】
図5は、保持テーブル10に置かれた被加工物11を模式的に示す上面図である。また、
図5に示される点線Aは、被加工物11の半径から上記の基準幅を引いた長さ(基準長)を半径とする被加工物11の外周(ノッチ11cを除く)の同心円を表している。そして、
図6は、
図5に示される状態で被加工物11が保持テーブル10に置かれる場合に、被加工物11に対するエッジトリミングの加工軌跡を設定するために必要な情報が入力された入力画面の一例を模式的に示す図である。
【0051】
具体的には、
図5においては、保持テーブル10の保持面の中心からみて、被加工物11のノッチ11cがY軸方向とは反対の方向に位置付けられている。また、切削装置2における被加工物11に対するエッジトリミングにおいては、上述のとおり、保持テーブル10の保持面の中心からみてY軸方向に加工点が位置付けられる。そのため、ノッチ11cの位置をエッジトリミングの加工点に合わせるために必要な保持テーブル10の回転角度は、180°であり、この値が
図6に示される入力画面46の枠46aに入力される。
【0052】
なお、このようなノッチ11cの位置の確認は、例えば、撮像ユニット38による被加工物11の撮像によって形成される画像に基づいて行われる。すなわち、オペレータは、この画像等を参照して、枠46aに適切な数値を入力することができる。
【0053】
あるいは、保持テーブル10に搬入される前に被加工物11のノッチ11cの位置を確認した後、保持テーブル10の中心からみて所定の方向にノッチ11cが位置付けられるように被加工物11が保持テーブル10に搬入されてもよい。このように保持テーブル10の中心からみたノッチ11cの位置が予め定まっている場合、入力画面46には枠46aが含まれていなくてもよい。
【0054】
また、
図5においては、保持テーブル10の保持面の径方向における被加工物11のノッチ11cの幅が、上記の基準幅よりも、例えば、200μm~400μm長い。このような場合、
図6に示される入力画面46の枠46cには、
図5に示されるノッチ11cを除去するために必要な上記の増分幅として、例えば、500μmが入力される。なお、
図5に示される点線Bは、被加工物11の半径から上記の基準幅及び上記の増分幅を引いた長さ(最短長)を半径とする被加工物11の外周(ノッチ11cを除く)の同心円を表している。
【0055】
また、
図5においては、この点線Bが被加工物11に形成されたデバイス15a,15b,15c,15dの角に僅かに重なる。このような場合、エッジトリミングによってデバイス15a,15b,15c,15dが損傷しないように、デバイス15a,15b,15c,15d近傍の領域のエッジトリミングの加工幅は、上記の基準幅とすることが好ましい。そのため、
図6に示される入力画面46の枠46bには、例えば、120°が入力される。
【0056】
図7は、
図6に示される各種の情報に基づいて設定されるエッジトリミングの加工軌跡の内周(一点鎖線C)が重ねられた被加工物11を模式的に示す上面図である。すなわち、加工ステップ(S2)においては、
図7に示される一点鎖線Cよりも外側に位置する被加工物11の外周部分を加工する。
【0057】
なお、
図7においては、便宜上、被加工物11に形成される複数のデバイス15が省略されている。また、
図7に示される点線Dは、被加工物11の中心と一点鎖線Cとを結び、かつ、被加工物11の中心とノッチ11cの位置とを通る直線に平行な線分である。すなわち、点線Dの長さは、上記の最短長と等しい。
【0058】
また、
図7に示される点線E及び点線Fは、被加工物11の中心と一点鎖線Cとを結び、かつ、その長さが上記の基準長と等しい線分である。また、点線D及び点線Eがなす鋭角と点線D及び点線Fがなす鋭角とは、60°である。
【0059】
また、一点鎖線Cと点線Dと点線E又は点線Fとによって囲まれる中心角が60°の扇型状の領域の境界に位置する一点鎖線C上の点と、被加工物11の中心との間隔は、この点がノッチ11cの位置から遠ざかるほど長くなる。また、一点鎖線Cと点線Eと点線Fとによって囲まれる中心角が240°の扇型状の領域の境界に位置する一点鎖線C上の点と、被加工物11の中心との間隔は、一定(上記の基準長)である。
【0060】
すなわち、この加工軌跡の内周(一点鎖線C)は、ノッチ11cの位置を中心とした保持テーブル10の回転角度が120°の範囲内においてノッチ11cの位置から遠ざかるほど被加工物11の中心との間隔が長くなり。また、この加工軌跡の内周(一点鎖線C)は、この範囲外(残りの240°の範囲内)において被加工物11の中心との間隔が等しくなる。
【0061】
そして、加工ステップ(S2)においては、この加工軌跡に沿って被加工物11のエッジトリミングが行われる。このエッジトリミングの一例について、
図8~
図12を参照して説明する。なお、
図8~
図12の(A)は、エッジトリミングが行われている被加工物11を模式的に示す上面図であり、
図8~
図12の(B)は、各図の(A)に示されるA
NB
N線(Nは5以下の自然数)における被加工物11の断面を模式的に示す断面図である。
【0062】
また、
図8~
図12の(A)においては、便宜上、切削ブレード36の上面が模式的に示されている。また、
図8~
図12の(B)においては、便宜上、切削ブレード36の側面が模式的に示されている。また、この切削ブレード36としては、上記の基準幅及び上記の増分幅の和よりも幅が広い切削ブレードが用いられる。
【0063】
被加工物11に対してエッジトリミングを行う際には、まず、切削ブレード36が被加工物11から離隔するように、X軸方向移動機構が保持テーブル10をX軸方向に沿って移動させる。次いで、被加工物11の中心からみてY軸方向に位置する被加工物11の外周部分の領域が切削ブレード36からみてX軸方向に配置されるように、Y軸方向移動機構14が切削ユニット32をY軸方向に沿って移動させる。
【0064】
この時、この領域と被加工物11の中心との間隔は、上記の基準長になるように調整される。次いで、被加工物11の表面11aよりも低く、かつ、裏面11dよりも高い位置に切削ブレード36の最下端を位置付けるように、Z軸方向移動機構22が切削ユニット32を下降させる。次いで、切削ブレード用回転駆動源を動作させて切削ブレード36を回転させながら、切削ブレード36を被加工物11に切り込ませる。
【0065】
具体的には、被加工物11の中心からみてY軸方向に位置する被加工物11の外周部分の領域に切削ブレード36の最下端が至るまで、X軸方向移動機構が保持テーブル10をX軸方向に沿って移動させる(
図8(A)及び
図8(B)参照)。次いで、切削ブレード36を回転させたまま、保持テーブル用回転駆動源が保持テーブル10を120°回転させる(
図9(A)及び
図9(B)参照)。
【0066】
次いで、切削ブレード36及び保持テーブル10を回転させたまま、被加工物11の中心に切削ブレード36が接近するようにY軸方向移動機構14が切削ユニット32の位置を調整する。具体的には、保持テーブル10をさらに60°回転させたタイミングで、被加工物11の中心と切削ブレード36との間隔が上記の最短長となるように、Y軸方向移動機構14が切削ユニット32を被加工物11の中心に徐々に接近させる(
図10(A)及び
図10(B)参照)。
【0067】
被加工物11の中心と切削ブレード36との間隔を上記の最短長とした後には、切削ブレード36及び保持テーブル10を回転させたまま、被加工物11の中心から切削ブレード36が離隔するようにY軸方向移動機構14が切削ユニット32の位置を調整する。具体的には、保持テーブル10をさらに60°回転させたタイミングで、被加工物11の中心と切削ブレード36との間隔が上記の基準長となるように、Y軸方向移動機構14が切削ユニット32を徐々に被加工物11の中心から離隔させる(
図11(A)及び
図11(B)参照)。
【0068】
被加工物11の中心と切削ブレード36との間隔を上記の基準長とした後には、切削ブレード36及び保持テーブル10を回転させたまま、被加工物11の中心と切削ブレード36との間隔を維持する。具体的には、保持テーブル10をさらに120°回転させるまで、Y軸方向移動機構14が切削ユニット32を移動させない(
図12(A)及び
図12(B)参照)。
【0069】
以上によって、被加工物11に対するエッジトリミングが完了する。その結果、
図13(A)及び
図13(B)に示されるように、エッジトリミングによって外周部分に段差11eが形成された被加工物11が得られる。なお、
図13(A)は、エッジトリミング後の被加工物11を模式的に示す上面図であり、
図13(B)は、エッジトリミング後の被加工物11を模式的に示す側面図である。
【0070】
図4に示される方法においては、被加工物11の外周部分を加工する際の加工軌跡が、ノッチ11cの位置を中心とした所定の範囲内においてノッチ11cの位置から遠ざかるほど被加工物11の外周部分の加工幅が狭くなり、かつ、この所定の範囲外において被加工物11の外周部分の加工幅が基準幅(最低限の加工幅)と等しくなるように設定される。
【0071】
これにより、
図4に示される方法においては、ノッチ11cの位置から遠い位置の加工幅が狭くなるので、エッジトリミングによって損傷するデバイス15の割合を低減する又は0にできる。また、この方法においては、ノッチ11cの位置の加工幅が最も広くなるので、被加工物11の裏面11d側を研削した後に被加工物11にクラックが生じる蓋然性を低減できる。
【0072】
なお、上述した方法は本発明の一態様であって、本発明の方法は上述した方法に限定されない。例えば、上述した方法の加工ステップ(S2)においては、被加工物11の外周部分の裏面11d側の一部を残存させるようにエッジトリミングが行われているが、本発明の方法の加工ステップにおいては、被加工物11の外周部分の全部が除去されてもよい。
【0073】
すなわち、本発明の方法の加工ステップにおいては、被加工物11の外周部分に段差11eを形成することなく、被加工物11の表面11a及び裏面11dに直交するような側面が形成されるようにエッジトリミングが行われてもよい。
【0074】
このようなエッジトリミングは、例えば、切削ブレード36の最下端が被加工物11の裏面11dよりも下に位置付けられた状態で、
図8~
図12等を参照して説明したように、被加工物11の外周部分を加工することによって行われる。
【0075】
なお、この場合には、被加工物11の裏面11d側にダイシングテープが貼着されていることが好ましい。すなわち、このダイシングテープを介して被加工物11が保持テーブル10に保持された状態で、被加工物11のエッジトリミングが行われることが好ましい。
【0076】
また、上述した方法の加工ステップ(S2)においては、切削ブレード36を用いて被加工物11が加工されていたが、本発明の方法の加工ステップにおいては、レーザービームを用いて被加工物11が加工されてもよい。
【0077】
図14は、レーザービームを用いて加工ステップを行うレーザー照射装置の一例を模式的に示す斜視図である。なお、
図14に示されるX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、
図1に示されるX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向にそれぞれ対応する。
【0078】
図14に示されるレーザー照射装置48は、保持テーブル50を有する。保持テーブル50は、上方に露出した円盤状のポーラス板50aを有する。ポーラス板50aの上面は、概ね平行であり、被加工物11を保持する保持面となる。
【0079】
保持テーブル50の内部には、保持テーブル50の外部に設けられたエジェクタ等の吸引源(不図示)に一端が接続された吸引路(不図示)が形成されている。この吸引路の他端は、ポーラス板50aに達している。そして、裏面11dが下になるように被加工物11が保持面に置かれた状態で、この吸引源を動作させると、被加工物11が保持テーブル50に吸引保持される。
【0080】
さらに、保持テーブル50は、X軸方向移動機構(不図示)及びY軸方向移動機構(不図示)に連結されている。そして、X軸方向移動機構及び/又はY軸方向移動機構が動作すると、保持テーブル50は、X軸方向及び/又はY軸方向に沿って移動する。また、保持テーブル50は、回転駆動源(不図示)に連結されている。そして、この回転駆動源を動作させると、保持面の中心を通り、かつ、Z軸方向に沿った回転軸で保持テーブル50が回転する。
【0081】
保持テーブル50の上方には、レーザービーム照射ユニット(加工ユニット)52のヘッド54が設けられている。ヘッド54は、Y軸方向に沿って延在する連結部56の先端(一端)部に設けられている。なお、ヘッド54は集光レンズ及びミラー等の光学系を収容し、連結部56はミラー及び/又はレンズ等の光学系を収容する。
【0082】
また、連結部56の他端部は、Z軸方向移動機構(不図示)に連結されている。そして、Z軸方向移動機構が動作すると、ヘッド54及び連結部56は、Z軸方向に沿って移動する。レーザービーム照射ユニット52は、被加工物11に吸収される波長(例えば、365nm)又は被加工物11を透過する波長(例えば、1064nm)のレーザービームを生成するレーザー発振器(不図示)を有する。
【0083】
レーザー発振器は、例えば、Nd:YAG等のレーザー媒質を有する。そして、レーザー発振器でレーザービームが生成されると、連結部56及びヘッド54に収容された光学系を介して、レーザービームがヘッド54の直下に照射される。
【0084】
さらに、連結部56の側部には、保持テーブル50の保持面側を撮像可能な撮像ユニット58が設けられている。撮像ユニット58は、例えば、LED等の光源と、対物レンズと、CCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサ等の撮像素子とを有する。
【0085】
そして、レーザー照射装置48においては、被加工物11に吸収される波長又は被加工物11を透過する波長のレーザービームを用いて、被加工物11に対するエッジトリミングが行われる。具体的には、まず、被加工物11を保持テーブル50で保持する(保持ステップ:S1)。
【0086】
例えば、XY平面において、被加工物11の中心と保持テーブル50の保持面の中心とが一致した状態で、保持テーブル50の内部に形成された吸引路に接続されている吸引源を動作させる。これにより、例えば、
図5に示されるように、保持テーブル50の中心からみてノッチ11cがY軸方向の反対の方向に位置付けられた状態で、被加工物11が保持テーブル10に置かれる。
【0087】
そして、被加工物11に吸収される波長のレーザービームを用いる場合には、例えば、以下の順序で加工ステップ(S2)が行われる。まず、被加工物11の中心からみてY軸方向に位置する被加工物11の外周部分の領域の直上にレーザービーム照射ユニット52のヘッド54が位置付けられるように、X軸方向移動機構、Y軸方向移動機構及び回転駆動源が被加工物11を保持する保持テーブル50の位置を調整する。
【0088】
次いで、被加工物11に吸収される波長のレーザービームを被加工物11に照射する。これにより、被加工物11の面取りされた外周部分を構成する材料のアブレーションが生じる。この時、レーザービームは、例えば、そのY軸方向に沿った幅が上記の基準幅及び上記の増分幅の和よりも広くなるように調整される。また、被加工物11の中心と被加工物11に照射されるレーザービームとの間隔は、上記の基準長になるように調整される。
【0089】
次いで、
図8~
図12等を参照して説明したように、Y軸方向移動機構及び回転駆動源が保持テーブル50を移動させながら、レーザービーム照射ユニット52が被加工物11に吸収される波長のレーザービームを照射する。その結果、
図13(A)及び
図13(B)に示されるように、エッジトリミングによって外周部分に段差11eが形成された被加工物11が得られる。
【0090】
また、被加工物11を透過する波長のレーザービームを用いる場合には、例えば、以下の順序で加工ステップ(S2)が行われる。まず、被加工物11の中心からみてY軸方向に位置する被加工物11の外周部分の領域の直上にレーザービーム照射ユニット52のヘッド54が位置付けられるように、X軸方向移動機構、Y軸方向移動機構及び回転駆動源が被加工物11を保持する保持テーブル50の位置を調整する。
【0091】
次いで、被加工物11を透過する波長のレーザービームを被加工物11に照射する。これにより、被加工物11の面取りされた外周部分を構成する材料の構造が多光子吸収に起因して変質する。この時、レーザービームは、その集光点が被加工物11の内部に位置付けられるように調整される。また、被加工物11の中心と被加工物11に照射されるレーザービームとの間隔は、上記の基準長になるように調整される。
【0092】
次いで、
図8~
図12等を参照して説明したように、Y軸方向移動機構及び回転駆動源が保持テーブル50を移動させながら、レーザービーム照射ユニット52が被加工物11を透過する波長のレーザービームを照射する。これにより、円環状の変質層が外周端部の内部に形成された被加工物11が得られる。
【0093】
次いで、被加工物11に外力を付与することで、円環状の変質層に沿って被加工物11を破断する。例えば、被加工物11の裏面11d側を研削することで、円環状の変質層から被加工物11の厚さ方向にクラックを進展させて、被加工物11の中央部と面取りされた外周端部とを分離する。その結果、エッジトリミングされた被加工物11が得られる。
【0094】
なお、レーザー照射装置48における加工点の位置(レーザービームが照射される被加工物11の位置)の調整は、レーザービーム照射ユニット52に収容された光学系を調整することによって行われてもよい。すなわち、この加工点の調整は、レーザービーム照射ユニット52に収容されたミラー及び/又はレンズの傾き等を調整することによって行われてもよい。
【0095】
その他、上述した実施形態にかかる構造及び方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0096】
2 :切削装置
4 :基台(4a:開口)
6,8:カバー
10 :保持テーブル(10a:ポーラス板)
12 :支持構造(12a:立設部、12b:腕部)
14 :Y軸方向移動機構
16 :Y軸ガイドレール
18 :Y軸移動プレート
20 :ねじ軸
22 :Z軸方向移動機構
24 :Z軸ガイドレール
26 :Z軸移動プレート
28 :ねじ軸
30 :モータ
32 :切削ユニット(加工ユニット)
34 :スピンドルハウジング
36 :切削ブレード
38 :撮像ユニット
40 :カバー
42 :タッチパネル
44 :制御ユニット
46 :入力画面(46a,46b,46c:枠、46d:入力アイコン)
11 :ウェーハ(11a:表面、11b:側面、11c:ノッチ)
(11d:裏面、11e:段差)
13a:デバイス領域
13b:外周余剰領域
15 :デバイス
15a,15b,15c,15d:デバイス
48 :レーザー照射装置
50 :保持テーブル(50a:ポーラス板)
52 :レーザービーム照射ユニット(加工ユニット)
54 :ヘッド
56 :連結部
58 :撮像ユニット