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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022139808
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】撮像素子および撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20220915BHJP
   H04N 5/3745 20110101ALI20220915BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H04N5/3745
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040349
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 崇志
(72)【発明者】
【氏名】小倉 大輝
【テーマコード(参考)】
4M118
5C024
【Fターム(参考)】
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA14
4M118BA19
4M118CA02
4M118CA14
4M118DB09
4M118DD04
4M118DD09
4M118GA02
4M118GC07
4M118GD04
4M118HA25
4M118HA31
5C024CX41
5C024GX03
5C024GX16
5C024GX18
5C024GY39
5C024GY41
(57)【要約】
【課題】リセット中に生成される電荷を光電変換出力に寄与させること。
【解決手段】撮像素子は、第1ポテンシャルを有し、光電変換された電荷が転送される第1蓄積部と、前記第1ポテンシャルよりも低い第2ポテンシャルを有する第2蓄積部と、前記第1蓄積部と前記第2蓄積部との間の接続を制御する制御部と、前記第2蓄積部に蓄積された電荷量に応じて制御信号を生成する制御信号生成部と、前記第2蓄積部の電位をリセットするリセット部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポテンシャルを有し、光電変換された電荷が転送される第1蓄積部と、
前記第1ポテンシャルよりも低い第2ポテンシャルを有する第2蓄積部と、
前記第1蓄積部と前記第2蓄積部との間の接続を制御する制御部と、
前記第2蓄積部に蓄積された電荷量に応じて制御信号を生成する制御信号生成部と、
前記第2蓄積部の電位をリセットするリセット部と、
を備える撮像素子。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像素子において、
前記制御部は、前記制御信号に基づいて、前記第1蓄積部から前記第2蓄積部への電荷の移動を阻止する、撮像素子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の撮像素子において、
前記リセット部は、前記制御部により前記第1蓄積部から前記第2蓄積部への電荷の移動が阻止されている間に前記第2蓄積部の電位をリセットする、撮像素子。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記制御部は、前記第1蓄積部と前記第2蓄積部との間のポテンシャルを前記第1ポテンシャルより高く制御して前記第1蓄積部から前記第2蓄積部への電荷の移動を阻止する、撮像素子。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記制御部は、前記第1蓄積部と前記第2蓄積部との間のポテンシャルを前記第1ポテンシャルより低く制御して前記第1蓄積部から前記第2蓄積部へ電荷を移動させる、撮像素子。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1ポテンシャルは、前記リセット部でリセットする前の前記第2蓄積部の電位に対応する第3ポテンシャルよりも高い、撮像素子。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の撮像素子において、
光を電荷に変換する光電変換部を有し、
前記第1ポテンシャルは、前記光電変換部の空乏化電位に対応する第4ポテンシャルよりも低い、撮像素子。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の撮像素子において、
設定されている露光時間において、前記第2蓄積部による電荷の蓄積と、前記リセット部による前記第2蓄積部の電位のリセットとを繰り返す、撮像素子。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の撮像素子と、
前記撮像素子からの信号に基づいて画像データを生成する画像生成部と、
を備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトダイオード等の光電変換部からフローティングディフュージョンへ転送された電荷に基づく信号を出力するCMOSセンサ等の撮像素子が知られている。従来より、フローティングディフュージョンに転送された電荷に基づく信号を精度よく検出することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-23590号公報
【発明の概要】
【0004】
発明の第1の態様による撮像素子は、第1ポテンシャルを有し、光電変換された電荷が転送される第1蓄積部と、前記第1ポテンシャルよりも低い第2ポテンシャルを有する第2蓄積部と、前記第1蓄積部と前記第2蓄積部との間の接続を制御する制御部と、前記第2蓄積部に蓄積された電荷量に応じて制御信号を生成する制御信号生成部と、前記第2蓄積部の電位をリセットするリセット部と、を備える。
発明の第2の態様による撮像装置は、第1の態様による撮像素子と、前記撮像素子からの信号に基づいて画像データを生成する画像生成部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】実施の形態に係る撮像装置の構成を例示するブロック図である。
図2】撮像素子の断面構造を例示する図である。
図3】撮像素子の画素の構成を例示する回路図である。
図4図4(a)~図4(d)は、画素における電荷転送路のポテンシャルを説明する模式図である。
図5図5(a)および図5(b)は、画素における電荷転送路のポテンシャルを説明する模式図である。
図6】A/D変換回路の構成を例示する回路図である。
図7図4(d)の状態における、主要な信号波形を例示するタイミングチャートを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。
<撮像装置の構成>
図1は、実施の形態に係る撮像素子を搭載する撮像装置の構成を例示するブロック図である。撮像装置1は、撮影光学系2、撮像素子3、および制御部4を備える。撮像装置1は、例えばカメラである。撮影光学系2は、撮像素子3上に被写体像を結像する。撮像素子3は、撮影光学系2により結像される被写体像を撮像して画像信号を生成する。撮像素子3は、例えばCMOSイメージセンサである。制御部4は、撮像素子3の動作を制御するための制御信号を撮像素子3に出力する。また、制御部4は、撮像素子3から出力された画像信号に対して各種の画像処理を施し、画像データを生成する画像生成部として機能する。
なお、撮影光学系2は、撮像装置1から着脱可能に構成してもよい。
【0007】
<撮像素子の断面構造>
図2は、図1の撮像素子3の断面構造を例示する図である。図2に示す撮像素子3は、裏面照射型の撮像素子である。撮像素子3は、第1基板111と、第2基板112と、第3基板113と、第4基板114とを備える。第1基板111、第2基板112、第3基板113および第4基板114は、それぞれ半導体基板等により構成される。第1基板111は、配線層140と配線層141を介して第2基板112に積層される。第2基板112は、配線層142と配線層143を介して第3基板113に積層される。第3基板113は、配線層144と配線層145を介して第4基板114に積層される。
【0008】
白抜き矢印で示す入射光Lは、Z軸プラス方向へ向かって入射する。また、座標軸に示すように、Z軸に直交する紙面右方向をX軸プラス方向、Z軸およびX軸に直交する紙面手前方向をY軸プラス方向とする。撮像素子3は、入射光Lが入射する方向に、第1基板111と第2基板112と第3基板113と第4基板114とが積層されている。
【0009】
撮像素子3はさらに、マイクロレンズ層101、カラーフィルタ層102、パッシベーション層103を有する。これらのパッシベーション層103、カラーフィルタ層102およびマイクロレンズ層101は、第1基板111に順次積層されている。
マイクロレンズ層101は、複数のマイクロレンズMLを有する。マイクロレンズMLは、入射した光を後述する光電変換部12に集光する。カラーフィルタ層102は、複数のカラーフィルタFを有する。パッシベーション層103は、窒化膜や酸化膜で構成される。
【0010】
第1基板111、第2基板112、第3基板113、および第4基板114は、それぞれゲート電極やゲート絶縁膜が設けられる第1面105a、106a、107a、108aと、第1面とは異なる第2面105b、106b、107b、108bとを有する。また、第1面105a、106a、107a、108aには、それぞれトランジスタ等の各種素子が設けられる。第1基板111の第1面105a、第2基板112の第1面106a、第3基板113の第1面107a、および第4基板114の第1面108aには、それぞれ配線層140、141、144、145が積層して設けられる。また、第2基板112の第2面106bおよび第3基板113の第2面107bには、それぞれ配線層(基板間接続層)142、143が積層して設けられる。配線層140~配線層145は、導体膜(金属膜)および絶縁膜を含む層であり、それぞれ複数の配線やビアなどが配置される。
【0011】
第1基板111の第1面105aの素子および第2基板112の第1面106aの素子は、配線層140、141を介してバンプや電極等の接続部109により電気的に接続される。同様に第3基板113の第1面107aの素子および第4基板114の第1面108aの素子は、配線層144、145を介してバンプや電極等の接続部109により電気的に接続される。また、第2基板112および第3基板113は、複数の貫通電極110を有する。第2基板112の貫通電極110は、第2基板112の第1面106aおよび第2面106bに設けられた回路を互いに接続し、第3基板113の貫通電極110は、第3基板113の第1面107aおよび第2面107bに設けられた回路を互いに接続する。第2基板112の第2面106bに設けられた回路および第3基板113の第2面107bに設けられた回路は、基板間接続層142、143を介してバンプや電極等の接続部109により電気的に接続される。
なお、実施の形態では第1基板111、第2基板112、第3基板113、および第4基板114が積層される場合を例示するが、積層される基板の数は、実施の形態より多くても少なくてもよい。
また、第1基板111、第2基板112、第3基板113、および第4基板114を、それぞれ第1層、第2層、第3層および第4層と称してもよい。
【0012】
<画素の構成>
図3は、撮像素子3の画素の構成を例示する回路図である。画素10は、例えば、フォトダイオード(PD)等の光電変換部12と、光電変換部12で生成された電荷に基づく信号を読み出す読出部30とを有する。
画素10は、第1層に構成される。読出部30は、第2層、第3層および第4層のうちの一つの層に構成してもよいし、第1層から第4層のうちの複数の層に分けて構成してもよい。
【0013】
光電変換部12は、入射した光を電荷に変換し、光電変換された電荷を蓄積する機能を有する。
読出部30は、転送部13と、排出部14と、第1のフローティングディフュージョン(FD1)15と、第2のフローティングディフュージョン(FD2)19と、制御スイッチ部20と、増幅部16と、電流源17とを有する。
【0014】
転送部13は、信号φTXにより制御される。信号φTXは、例えば不図示の画素制御部で生成される。光電変換部12で光電変換された電荷は、転送部13を介して第2のフローティングディフュージョン19または第1のフローティングディフュージョン15に転送される。転送部13は、光電変換部12と、第2のフローティングディフュージョン19および第1のフローティングディフュージョン15との間に電荷転送路を形成する。
なお、転送部13は、信号φTXによりオフされている状態でも、光電変換部12からあふれた電荷を通過させるように構成されている。
【0015】
制御スイッチ部20は、信号φOFにより制御される。信号φOFは、例えば図6を参照して後述する第2制御回路210からの出力信号φOF-に基づいて生成される。制御スイッチ部20は、光電変換部12からの電荷を第1のフローティングディフュージョン15で保持する、または、光電変換部12からの電荷を第1のフローティングディフュージョン15で保持しない、の切り替えを行う。実施の形態では、電荷を第1のフローティングディフュージョン15で保持することは、電荷を第2のフローティングディフュージョン19へ送らないことに対応し、光電変換部12からの電荷を第1のフローティングディフュージョン15で保持しないことは、電荷を制御スイッチ部20を介して第2のフローティングディフュージョン19へ送ることに対応する。
【0016】
第2のフローティングディフュージョン19は、後述する排出部14が信号φRESによりオフされている状態で、光電変換部12から送られた電荷を保持(蓄積)する。
第1のフローティングディフュージョン15は、制御スイッチ部20が信号φOFによりオフされている状態で、光電変換部12からあふれた電荷を一時的に保持(蓄積)する。
増幅部16は、第2のフローティングディフュージョン19に蓄積された電荷による信号を増幅し、信号線18に出力する。図3に示す例では、増幅部16は、ドレイン端子、ゲート端子およびソース端子がそれぞれ、電源VDD、第2のフローティングディフュージョン19および電流源17に接続されるトランジスタM3により構成される。
【0017】
排出部(リセット部)14は、信号φRESにより制御される。信号φRESは、例えば図6を参照して後述する第2制御回路210で生成される。排出部14は、第2のフローティングディフュージョン19に蓄積されている電荷を排出し、第2のフローティングディフュージョン19の電位を電源VDDの電位(リセット電位と呼ぶ)にリセットする。
また、必要に応じて制御スイッチ部20も併用し、図4(a)を参照して後述するように、第1のフローティングディフュージョン15の電荷も排出する。
転送部13、制御スイッチ部20、および排出部14は、それぞれトランジスタM1、トランジスタM4およびトランジスタM2により構成される。
以上説明した読出部30により、光電変換部12で生成された電荷に応じた信号(光電変換信号)が、信号線18を介して後述するA/D変換回路へ送出される。
【0018】
<電荷転送路のポテンシャルダイアグラム>
画素10における電荷転送路のポテンシャルについて、図4(a)~図4(d)、図5(a)および図5(b)を参照して説明する。実施の形態では、リセット電位を基準としてポテンシャルを表す。図4(a)~図4(d)、図5(a)および図5(b)は、画素10における電荷転送路のポテンシャルを説明する模式図である。これらの図は、図3における破線A-Bに沿った電荷転送路のポテンシャルの高低を示す。横軸は、位置Aから位置Bへ向かう電荷転送路を示し、縦軸は、ポテンシャルの高低を示す。実施の形態では、光電変換部12のポテンシャルが1番高く(換言すると、光電変換部12の空乏化電位が1番低い)、リセット時の第2のフローティングディフュージョン19のポテンシャルが1番低い(換言すると、リセット電位が1番高い)。
【0019】
また、図4(d)を参照して後述するように、第1のフローティングディフュージョン15のポテンシャルは、光電変換部12よりも低く(換言すると、第1のフローティングディフュージョン15の電位は光電変換部の空乏化電位よりも高い)、リセット直前の第2のフローティングディフュージョン19のポテンシャルよりも高くなる(換言すると、第1のフローティングディフュージョン15の電位はリセット直前の第2のフローティングディフュージョン19の電位よりも低い)ように構成されている。
このようなポテンシャルの高低の設定は、例えば、光電変換部12、第2のフローティングディフュージョン19、および第1のフローティングディフュージョン15を構成する半導体基板に注入する不純物イオンの濃度を変更することにより、設定してもよい。
【0020】
図4(a)は、第2のフローティングディフュージョン19のリセットに加えて、光電変換部12および第1のフローティングディフュージョン15からも電荷を排出する状態を示す。上記信号φTX、上記信号φOFおよび上記信号φRESにより、各画素のトランジスタM1、トランジスタM4およびトランジスタM2はいずれもオンされる。
光電変換部12および第1のフローティングディフュージョン15に蓄積されていた電荷は、ポテンシャルが1番低い第2のフローティングディフュージョン19へ移動する。また、リセット動作により、第2のフローティングディフュージョン19の電荷が排出され、第2のフローティングディフュージョン19の電位がリセット電位にリセットされる。
【0021】
図4(b)は、光電変換部12に対する露光が開始された状態、換言すると、光電変換により生成された電荷の蓄積が開始された状態を示す。上記信号φTX、上記信号φOFおよび上記信号φRESにより、各画素のトランジスタM1、トランジスタM4およびトランジスタM2は、それぞれオフ、オン、オフされる。
【0022】
図4(c)は、光電変換部12に蓄積された電荷が光電変換部12の蓄積容量を超えてあふれ出す状態を示す。トランジスタM1、トランジスタM4およびトランジスタM2は、図4(b)の場合と同様に、それぞれオフ、オン、オフされている。光電変換部12から第1のフローティングディフュージョン15へあふれた電荷は、トランジスタM4を介して第1のフローティングディフュージョン15よりもポテンシャルが低い第2のフローティングディフュージョン19へ移動して蓄積される。これにより、第2のフローティングディフュージョン19の電位が下がり始める。
【0023】
図4(d)は、第2のフローティングディフュージョン19に蓄積された電荷量が所定量に達し、第2のフローティングディフュージョン19の電位が閾値電位まで低下した状態を示す。トランジスタM1、トランジスタM4およびトランジスタM2は、図4(b)および図4(c)の場合と同様に、それぞれオフ、オン、オフされている。第2のフローティングディフュージョン19の電位が閾値電位まで低下すると、この電位の変化がトランジスタM3で増幅され、画素信号として読み出される。後述する第2制御回路210は、読み出された画素信号の信号レベルに基づいて、第2のフローティングディフュージョン19をリセットさせる信号φRESを発生させる。そのため、閾値電位は、リセット直前の第2のフローティングディフュージョン19のポテンシャルに対応する。
【0024】
図5(a)は、光電変換部12および第1のフローティングディフュージョン15の電荷を保持したままで、第2のフローティングディフュージョン19をリセットする状態を示す。上記信号φTX、上記信号φOFおよび上記信号φRESにより、各画素のトランジスタM1、トランジスタM4およびトランジスタM2は、それぞれオフ、オフ、オンされる。図4(d)において第2のフローティングディフュージョン19に保持されていた電荷は、トランジスタM2を介して排出され、第2のフローティングディフュージョン19の電位がリセット電位にリセットされる。
【0025】
第2のフローティングディフュージョン19のリセット中に第1のフローティングディフュージョン15へ流入する電荷は、トランジスタM4がオフされていることによって第1のフローティングディフュージョン15に保持される。すなわち、第1のフローティングディフュージョン15に一時的に蓄積される。
【0026】
図5(b)は、リセット後の第2のフローティングディフュージョン19に対して電荷の蓄積が再開された状態を示す。上記信号φTX、上記信号φOFおよび上記信号φRESにより、各画素のトランジスタM1、トランジスタM4およびトランジスタM2は、それぞれオフ、オン、オフされる。図5(a)において第1のフローティングディフュージョン15に蓄積されていた電荷は、トランジスタM4を介して、第1のフローティングディフュージョン15よりもポテンシャルが低い第2のフローティングディフュージョン19に移動して蓄積される。つまり、第2のフローティングディフュージョン19のリセット動作の間に光電変換部12から第1のフローティングディフュージョン15に移動し蓄積された電荷は、消失することなく第2のフローティングディフュージョン19に蓄積される。
図5(b)の状態以降は、撮像装置1に設定されている露光時間が終了するまで、図4(c)、図4(d)、図5(a)および図5(b)の状態を繰り返すように各画素のトランジスタM1、トランジスタM4およびトランジスタM2のオン/オフが制御される。
【0027】
実施の形態では、撮像装置1に設定されている露光時間の間に、第2のフローティングディフュージョン19に対する所定量の電荷の蓄積と、第2のフローティングディフュージョン19のリセットとが繰り返し行われる。そのため、露光時間の間に生成される画素当たりの電荷量は、図4(d)を参照して説明した閾値電位に達するときの電荷の量と、第2のフローティングディフュージョン19をリセットした回数との積で表すことができる。このようなA/D変換方式で電荷量を求める手法は、第2のフローティングディフュージョン19の電位が閾値電位に達する毎にパルス信号を発生させ、発生したパルス信号の数をカウントすることから、パルスカウント方式のA/D変換と称される。
画素当たりの第2のフローティングディフュージョン19のリセット回数をカウントする回路例について、図6を参照して説明する。
【0028】
<A/D変換回路>
図6は、実施の形態に係るA/D変換回路250の構成を例示する回路図である。上述したように、第2のフローティングディフュージョン19に保持された電荷に基づく信号は、増幅部16で増幅され、信号線18を介して画素信号として読み出される。
画素信号は、比較部としてのコンパレータ40の端子41に入力される。第1制御回路200は、例えば、不図示の画素制御部からの指示に基づいて所定の電圧レベルの基準信号を生成する。基準信号は、図4(d)を参照して説明した、第2のフローティングディフュージョン19の電位が閾値電位まで低下した状態で生成される画素信号の電圧レベルに対応する。第1制御回路200で生成された基準信号は、コンパレータ40の端子42に入力される。
【0029】
コンパレータ40は、画素10からの画素信号と基準信号とを比較し、画素10からの画素信号のレベルが基準信号のレベルとほぼ一致すると、出力信号40_Outの電位を遷移させる。
実施の形態では、第2のフローティングディフュージョン19の電位が閾値電位まで低下する(図4(d)に示す状態)と、コンパレータ40の出力信号40_OutがHレベルからLレベルに反転するように構成される。出力信号40_Outは、インバータ回路44に入力される。
【0030】
インバータ回路44は、複数のインバータが接続されており、出力が順次反転して伝達される。インバータを複数段接続したことにより、インバータ回路44の出力信号は、コンパレータ40の出力信号40_Outに比べて遅れたタイミングでLレベルに反転する。このような遅延回路を含めることで、回路動作を安定化させることができる。なお、インバータの段数は、適宜変更して構わない。
【0031】
インバータ回路44の出力信号は、第2制御回路210に入力される。第2制御回路210は、インバータ回路44の出力信号がHレベルからLベルに反転したことに基づき、パルス状のカウント信号210_Outと、信号φRESと、信号φOF-とをそれぞれ生成する。
【0032】
カウント信号210_Outは、カウンタ回路220に供給される。カウンタ回路220は、入力されるカウント信号210_Outの数、換言すると、画素当たりの第2のフローティングディフュージョン19のリセット回数をカウントする。
【0033】
信号φRESは、排出部14を構成するトランジスタM2を制御する信号であり、排出部14に供給される。第2制御回路210は、例えば、不図示の画素制御部からの指示に基づいて、カウント信号210_Outよりもパルス半値幅を広げた信号φRESを生成するとともに、後述する信号φOF-に比べて遅れたタイミングで信号φRESを出力する。信号φRESのパルス半値幅は、例えば50nsec以下である。
【0034】
信号φOF-は、制御スイッチ部20を構成するトランジスタM4を制御する信号φOFの元になる信号である。実施の形態では、信号φOF-の論理レベルをインバータ回路46で反転させた信号を、信号φOFとする。第2制御回路210は、例えば、不図示の画素制御部からの指示に基づいて、カウント信号210_Outよりもパルス半値幅を広げたφOF-を生成する。信号φOF-のパルス半値幅は、例えば60nsecである。
【0035】
カウンタ回路220のカウント値は、セレクタ回路230を介してデータバス300に出力される。なお、カウンタ回路220は、撮像装置1に設定されている露光時間を終了すると、カウント値が読み出された後にリセットされる。つまり、カウンタ回路220は、露光時間が開始された以降に入力されるカウント信号210_Outの数をカウントし、露光時間が終了するとカウント値がリセットされる。
【0036】
<タイミングチャートの説明>
図7は、図4(d)を参照して説明した、第2のフローティングディフュージョン19の電位が閾値電位まで低下する状態において、主要な信号波形を例示するタイミングチャートを例示する図である。上から順に、信号φOF、第2のフローティングディフュージョン19の電位を示す信号Sig_FD2、コンパレータ40の出力信号40_Out、カウント信号210_Out、および信号φRESの波形を示す。
【0037】
第2のフローティングディフュージョン19の電位が閾値電位まで低下した時刻をt1とすると、コンパレータ40は、出力信号40_OutをHレベルからLレベルに反転させる。第2制御回路210は、入力される信号がHレベルからLベルに反転したことに基づき、パルス状のカウント信号210_Outを出力するとともに、パルス半値幅を広げた信号φOF-を出力する。図7に示す信号φOFは、信号φOF-の論理レベルをインバータ回路46で反転した信号である。第2制御回路210はさらに、時刻t1より所定時間(例えば5nsec)遅い時刻t2に、信号φOF-よりも狭いパルス半値幅の信号φRESを出力する。
【0038】
このように構成したので、信号φOF-の元になる信号φOFを出力した後に信号φRESが出力される。そのため、図5(a)に例示したように、制御スイッチ部20を構成するトランジスタM4をオフしてから、排出部14を構成するトランジスタM2をオンして第2のフローティングディフュージョン19のリセット動作を開始させることができる。
第2のフローティングディフュージョン19のリセット動作が開始すると、第2のフローティングディフュージョン19の電位を示す信号Sig_FD2のレベルが上がり、リセット電位にリセットされる。
【0039】
時刻t3において、信号φRESに基づいた第2のフローティングディフュージョン19のリセット動作が終了する。時刻t3の時点では、制御信号φOFによってスイッチ部20を構成するトランジスタM4がオフされている。リセット動作の終了後、制御信号φOFによってスイッチ部20を構成するトランジスタM4がオンされて、第2のフローティングディフュージョン19に対して電荷の蓄積が再開される。
このように構成したので、第2のフローティングディフュージョン19のリセット動作中に第1のフローティングディフュージョン15へ流入する電荷は、トランジスタM4がオフされていることによって第1のフローティングディフュージョン15に保持される(図5(a))。すなわち、リセット動作による排出を避けることができる。
なお、リセット動作中に第1のフローティングディフュージョン15に蓄積された電荷は、第2のフローティングディフュージョン19での電荷の蓄積が再開されると、第2のフローティングディフュージョン19に移動する(図5(b))。
【0040】
以上説明した実施の形態によれば、以下の作用効果が得られる。
(1)撮像装置1に搭載される撮像素子3は、第1ポテンシャルを有し、光電変換された電荷が転送される第1のフローティングディフュージョン15と、第1ポテンシャルよりも低い第2ポテンシャルを有する第2のフローティングディフュージョン19と、第1のフローティングディフュージョン15と第2のフローティングディフュージョン19との間の接続を制御する制御スイッチ部20と、第2のフローティングディフュージョン19に蓄積された電荷量に応じて制御信号を生成するA/D変換回路250と、第2のフローティングディフュージョン19の電位をリセットする排出部14と、を備える。
このように構成したので、第2のフローティングディフュージョン19のリセット動作中に生成された電荷に基づく信号を検出することが可能になる。例えば、第2のフローティングディフュージョン19のリセット中は、第1のフローティングディフュージョン15から第2のフローティングディフュージョン19へ電荷が移動しないように制御スイッチ部20が制御を行うことで、第1のフローティングディフュージョン15から第2のフローティングディフュージョン19へ移動した電荷が検出されることなく排出部14で排出されることを防ぐことができる。
また、第2のフローティングディフュージョン19のリセット終了後は、第1のフローティングディフュージョン15から第2のフローティングディフュージョン19へ電荷が移動するように制御スイッチ部20が制御を行うことで、第1のフローティングディフュージョン15で一時的に保持した電荷を第2のフローティングディフュージョン19へ移動させて、移動した電荷に基づく信号を検出することが可能になる。
【0041】
(2)制御スイッチ部20は、制御信号としての信号φOFに基づいて、第1のフローティングディフュージョン15から第2のフローティングディフュージョン19への電荷の移動を阻止する。
このように構成したので、A/D変換回路250は、第2のフローティングディフュージョン19に蓄積された電荷量に基づいて適切なタイミングで信号φOFを生成する。これにより、制御スイッチ部20は、第1のフローティングディフュージョン15から第2のフローティングディフュージョン19への電荷の移動を適切なタイミングで阻止することができる。
【0042】
(3)リセット部としての排出部14は、制御スイッチ部20により第1のフローティングディフュージョン15から第2のフローティングディフュージョン19への電荷の移動が阻止されている間に第2のフローティングディフュージョン19の電位をリセットする。
このように構成したので、第1のフローティングディフュージョン15から第2のフローティングディフュージョン19へ移動した電荷が検出されることなく排出されることを、適切に防止することができる。
【0043】
(4)制御スイッチ部20は、第1のフローティングディフュージョン15と第2のフローティングディフュージョン19との間(トランジスタM4)のポテンシャルを上記第1ポテンシャルより高く制御して第1のフローティングディフュージョン15から第2のフローティングディフュージョン19への電荷の移動を阻止する。
このように構成したので、第1のフローティングディフュージョン15から第2のフローティングディフュージョン19へ電荷が移動することを、適切に阻止することができる。
【0044】
(5)制御スイッチ部20は、第1のフローティングディフュージョン15と第2のフローティングディフュージョン19との間(トランジスタM4)のポテンシャルを上記第1ポテンシャルより低く制御して第1のフローティングディフュージョン15から第2のフローティングディフュージョン19へ電荷を移動させる。
このように構成したので、第1のフローティングディフュージョン15から第2のフローティングディフュージョン19へ、電荷を適切に移動させることができる。
【0045】
(6)第1ポテンシャルは、排出部14でリセットする直前の第2のフローティングディフュージョン19の電位、すなわち閾値電位に対応する第3ポテンシャルよりも高い。
このように構成したので、第2のフローティングディフュージョン19の電位が閾値電位に低下するまでは、第1のフローティングディフュージョン15から第2のフローティングディフュージョン19へ、電荷を適切に移動させることができる。
【0046】
(7)撮像素子3はさらに、光を電荷に変換する光電変換部12を有し、第1ポテンシャルは、光電変換部12の空乏化電位に対応する第4ポテンシャルよりも低い。
このように構成したので、光電変換部12から第1のフローティングディフュージョン15へ、電荷を適切に移動させることができる。
【0047】
(8)撮像素子3は、設定されている露光時間において、第2のフローティングディフュージョン19による電荷の蓄積と、排出部14による第2のフローティングディフュージョン19の電位のリセットとを繰り返す。
このように構成したので、パルスカウント方式のA/D変換における電荷の蓄積とリセットとを適切に繰り返すことができる。
【0048】
(変形例1)
上述した実施の形態では、撮像素子3は、裏面照射型の構成とする例について説明した。これに代えて、撮像素子3を、光が入射する入射面側に配線層140を設ける表面照射型の構成としてもよい。
【0049】
(変形例2)
上述した実施の形態では、光電変換部12としてフォトダイオードを用いる例について説明した。しかし、光電変換部12として光電変換膜を用いるようにしてもよい。
【0050】
(変形例3)
撮像素子3は、カメラ、スマートフォン、タブレット、PCに内蔵のカメラ、車載カメラ等に適用されてもよい。
【0051】
(変形例4)
実施の形態の説明では、パルスカウント方式によりA/D変換する例を説明した。実施の形態の変形例4では、パルスカウント方式と、パルスカウント方式と異なる他のA/D変換方式とを併用してもよい。他のA/D変換方式は、例えば、シングルスロープ方式のA/D変換を採用することができる。
シングルスロープ方式は、画素10からの画素信号と、ランプ信号と呼ばれる基準信号とをコンパレータ回路で比較する。ランプ信号のレベルは、シングルスロープ方式用のカウンタのクロック信号に同期して変化させるとともに、上記シングルスロープ方式用のカウンタのカウント値と相関を持たせる。
コンパレータ40は、画素10からの画素信号とランプ信号とを比較し、画素10からの画素信号のレベルがランプ信号のレベルとほぼ一致すると、出力信号の電位を遷移させる。シングルスロープ方式では、画素信号のレベルとランプ信号のレベルとが一致した時点でのシングルスロープ方式用のカウンタのカウント値に基づいて、画素信号のレベルが検出される。
【0052】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。実施の形態および変形例で示された各構成を組み合わせて用いる態様も本発明の範囲内に含まれる。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1…撮像装置、3…撮像素子、4…制御部、10…画素、12…光電変換部、13…転送部、14…排出部、15…第1のフローティングディフュージョン、16…増幅部、18…信号線、19…第2のフローティングディフュージョン、20…制御スイッチ部、M1、M2、M4…トランジスタ、40…コンパレータ、44、46…インバータ回路、200…第1制御回路、210…第2制御回路、220…カウンタ回路、250…A/D変換回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7