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特開2022-140131使い捨て着用物品の評価方法、使い捨て着用物品の製造方法、及び、使い捨て着用物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140131
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】使い捨て着用物品の評価方法、使い捨て着用物品の製造方法、及び、使い捨て着用物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20220915BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20220915BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20220915BHJP
   A61F 13/496 20060101ALI20220915BHJP
   A61F 5/44 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
A61F13/15 311B
A61F13/15 355
A41D13/05 106
A41D13/05 125
A61F13/49 312
A61F13/496
A61F5/44 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040796
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】井上 康司
(72)【発明者】
【氏名】笹山 賢一
(72)【発明者】
【氏名】川口 浩太郎
【テーマコード(参考)】
3B011
3B200
4C098
【Fターム(参考)】
3B011AA05
3B011AB08
3B011AC17
3B200AA01
3B200BA12
3B200BB11
3B200CA03
3B200CA06
3B200DA01
3B200EA12
3B200EA23
4C098CE05
4C098FF10
(57)【要約】
【課題】客観的に歩行サポート性能の高い着用物品を提供する。
【解決手段】着用者の体幹を安定させるための弾性領域(40)を備えた使い捨て着用物品(1)による、着用者の歩行をサポートする程度を評価する使い捨て着用物品の評価方法であって、着用者が使い捨て着用物品(1)を着用した場合における、着用者のつまづきの頻度を特定する工程と、つまづきの頻度を、使い捨て着用物品(1)を着用しない場合又は着用者が使い捨て着用物品(1)とは異なる他の使い捨て着用物品を着用した場合におけるつまづきの頻度と比較する工程と、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の体幹を安定させるための高圧力領域を備えた使い捨て着用物品による、着用者の歩行をサポートする程度を評価する使い捨て着用物品の評価方法であって、
着用者が前記使い捨て着用物品を着用した場合における、着用者のつまづきの頻度を特定する工程と、
前記つまづきの頻度を、前記使い捨て着用物品を着用しない場合又は着用者が前記使い捨て着用物品とは異なる他の使い捨て着用物品を着用した場合におけるつまづきの頻度と比較する工程と、
を有することを特徴とする使い捨て着用物品の評価方法。
【請求項2】
請求項1に記載の使い捨て着用物品の評価方法であって、
前記つまづきの頻度は、着用者が前記使い捨て着用物品を着用した状態で歩行した際に、つまずいた回数を歩行した歩数で割った値である、ことを特徴とする使い捨て着用物品の評価方法。
【請求項3】
請求項1に記載の使い捨て着用物品の評価方法であって、
前記つまづきの頻度は、着用者が前記使い捨て着用物品を着用した状態で歩行した際に、つまずいた回数を歩行した距離で割った値である、ことを特徴とする使い捨て着用物品の評価方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の使い捨て着用物品の評価方法であって、
前記つまづきの頻度は、年齢65~90歳の着用者が前記使い捨て着用物品を着用した状態で歩行した際につまずいた回数に基づいて算出される、ことを特徴とする使い捨て着用物品の評価方法。
【請求項5】
請求項2~4の何れか1項に記載の使い捨て着用物品の評価方法であって、
前記つまづきの頻度は、活動量計若しくは加速度計を用いて測定されたデータに基づいて算出される、ことを特徴とする使い捨て着用物品の評価方法。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の使い捨て着用物品の評価方法によって前記高圧力領域について評価を行い、その評価結果に基づき選定した前記高圧力領域を用いて前記使い捨て着用物品を製造する、ことを特徴とする使い捨て着用物品の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の使い捨て着用物品の製造方法であって、
前記高圧力領域は、着用者の下腹部を斜め上側に締め付けて腹腔内圧を高めるように配置される、ことを特徴とする使い捨て着用物品の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の使い捨て着用物品の製造方法であって、
前記使い捨て着用物品は、腹側外装体及び背側外装体を備え、
前記高圧力領域は、前記腹側外装体及び前記背側外装体に、それぞれ第1高圧力領域と、第2高圧力領域と、を有し、
前記使い捨て着用物品の左右方向の両端部において、前記第1高圧力領域は、前記第2高圧力領域と離間しているとともに、前記第2高圧力領域よりも上側になるように配置され、
前記左右方向の中央において、後側の前記第1高圧力領域の下端が、前側の前記第1高圧力領域の下端よりも上側になるように配置される、ことを特徴とする使い捨て着用物品の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の使い捨て着用物品の製造方法であって、
前記腹側外装体において、前記第1高圧力領域は、下側に凸形状となる帯状の弾性部材によって形成される、ことを特徴とする使い捨て着用物品の製造方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の使い捨て着用物品の製造方法であって、
前記腹側外装体及び前記背側外装体は、前記左右方向の両端部にて、一対の端部接合部によって互いに接合されており、
前記一対の端部接合部の間の前記左右方向における長さを、伸長状態における前記腹側外装体及び前記背側外装体の前記一対の端部接合部の間の前記左右方向における長さの73~84.5%とした場合に、
前記腹側外装体及び前記背側外装体のうち前記高圧力領域を含む領域の前記左右方向における締め付け力は5.3N以上、16.9N以下である、ことを特徴とする使い捨て着用物品の製造方法。
【請求項11】
請求項6~10の何れか1項に記載の使い捨て着用物品の製造方法であって、
前記高圧力領域が設けられた前記使い捨て着用物品を着用した場合における着用者のつまづきの頻度が、前記使い捨て着用物品を着用しない場合又は着用者が前記使い捨て着用物品とは異なる他の使い捨て着用物品を着用した場合におけるつまづきの頻度よりも少ないことを、前記使い捨て着用物品の包装材に表示する工程を有する、ことを特徴とする使い捨て着用物品の製造方法。
【請求項12】
請求項6~11の何れか1項に記載の使い捨て着用物品の製造方法であって、
前記高圧力領域が設けられた前記使い捨て着用物品を着用した場合における着用者のつまづきの頻度が、前記使い捨て着用物品を着用しない場合又は着用者が前記使い捨て着用物品とは異なる他の使い捨て着用物品を着用した場合におけるつまづきの頻度よりも少ないことを、Webサイトに表示する工程を有する、ことを特徴とする使い捨て着用物品の製造方法。
【請求項13】
請求項6~12の何れか1項に記載の使い捨て着用物品の製造方法によって製造された使い捨て着用物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨て着用物品の評価方法、使い捨て着用物品の製造方法、及び、使い捨て着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨ておむつ等の着用物品として、パンツ型の使い捨ておむつが知られている。例えば、特許文献1には、胴回り開口から下側を上下3区間に区分にし、それぞれの区間に複数本の弾性伸縮部材を配置して各区間の弾性伸縮力を設定したパンツ型使い捨ておむつが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3914673号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような従来のパンツ型使い捨ておむつでは、装着のしやすさや装着時のフィット性を向上させることを重視している場合が多かった。しかしながら、実際にパンツ型使い捨ておむつ等の着用物品を着用して生活する際には、着用物品を着用した状態で着用者が活動しやすいことが要求される。例えば、高齢者等が着用物品を着用した状態でつまずくことなく歩行できる等、着用物品自体が歩行サポート機能を備えていることが望ましい。しかしながら、パンツ型使い捨ておむつ等の着用物品において、そのような歩行サポートの程度を評価する方法は知られていなかった。そのため、ユーザーが着用物品を購入する際に、複数種類の着用物品のなかから客観的に歩行サポート性能の高いものを選択すること等は困難であった。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、客観的に歩行サポート性能の高い着用物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、着用者の体幹を安定させるための高圧力領域を備えた使い捨て着用物品による、着用者の歩行をサポートする程度を評価する使い捨て着用物品の評価方法であって、着用者が前記使い捨て着用物品を着用した場合における、着用者のつまづきの頻度を特定する工程と、前記つまづきの頻度を、前記使い捨て着用物品を着用しない場合又は着用者が前記使い捨て着用物品とは異なる他の使い捨て着用物品を着用した場合におけるつまづきの頻度と比較する工程と、を有することを特徴とする使い捨て着用物品の評価方法である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、客観的に歩行サポート性能の高い着用物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】パンツ型使い捨ておむつ1の概略斜視図である。
図2】展開且つ伸長状態のおむつ1の概略平面図である。
図3図2のI-I線(左右方向の中央)での概略断面図である。
図4図4Aは、着用者がおむつ1を着用した状態を横側から見た図であり、図4Bは、着用者がおむつ1を着用した状態を後側(背側)から見た図である。
図5】おむつ1について着用者の歩行をサポートする程度について評価を行う際のフローを表す図である。
図6】おむつ1着用時におけるつまづき頻度と、比較例のおむつ着用時におけるつまづき頻度とを比較した結果を表すグラフである。
図7】おむつ1を収容する包装材100の一例について表す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
着用者の体幹を安定させるための高圧力領域を備えた使い捨て着用物品による、着用者の歩行をサポートする程度を評価する使い捨て着用物品の評価方法であって、着用者が前記使い捨て着用物品を着用した場合における、着用者のつまづきの頻度を特定する工程と、前記つまづきの頻度を、前記使い捨て着用物品を着用しない場合又は着用者が前記使い捨て着用物品とは異なる他の使い捨て着用物品を着用した場合におけるつまづきの頻度と比較する工程と、を有することを特徴とする使い捨て着用物品の評価方法である。
【0011】
このような使い捨て着用物品の評価方法によれば、所定の高圧力領域を備えた使い捨て着用物品(おむつ)を着用した場合と、そうでない場合とで歩行時における着用者のつまづきの頻度の差を比較することができる。これにより、高圧力領域を備えることによって捨て着用物品の歩行サポート機能が向上することを客観的に評価することが可能となり、歩行サポート性能の高い着用物品を提供することができる。
【0012】
かかる使い捨て着用物品の評価方法であって、前記つまづきの頻度は、着用者が前記使い捨て着用物品を着用した状態で歩行した際に、つまずいた回数を歩行した歩数で割った値である、ことが望ましい。
【0013】
このような使い捨て着用物品の評価方法によれば、複数のユーザーについて、同じ条件(歩数)でつまづき係数を求めることができる。これにより、使い捨て着用物品を着用した状態で歩行した際のつまづき難さを客観的に評価しやすくなり、また、評価の精度を高めることができる。
【0014】
かかる使い捨て着用物品の評価方法であって、前記つまづきの頻度は、着用者が前記使い捨て着用物品を着用した状態で歩行した際に、つまずいた回数を歩行した距離で割った値である、ことが望ましい。
【0015】
このような使い捨て着用物品の評価方法によれば、複数のユーザーについて、同じ条件(歩行距離)でつまづき係数を求めることができる。これにより、使い捨て着用物品を着用した状態で歩行した際のつまづき難さを客観的に評価しやすくなり、また、評価の精度を高めることができる。
【0016】
かかる使い捨て着用物品の評価方法であって、前記つまづきの頻度は、年齢65~90歳の着用者が前記使い捨て着用物品を着用した状態で歩行した際につまずいた回数に基づいて算出される、ことが望ましい。
【0017】
このような使い捨て着用物品の評価方法によれば、実際に歩行サポートを必要としている年齢層のユーザーに好適な歩行サポート機能を備えた使い捨て着用物品を提供することができる。
【0018】
かかる使い捨て着用物品の評価方法であって、前記つまづきの頻度は、活動量計若しくは加速度計を用いて測定されたデータに基づいて算出される、ことが望ましい。
【0019】
このような使い捨て着用物品の評価方法によれば、複数の調査対象者のそれぞれについて、歩行時におけるつまづき係数を正確に算出しやすくなる。すなわち、つまづきの頻度を正確に特定することができる。
【0020】
また、かかる使い捨て着用物品の評価方法によって前記高圧力領域について評価を行い、その評価結果に基づき選定した前記高圧力領域を用いて前記使い捨て着用物品を製造する、ことを特徴とする使い捨て着用物品の製造方法が明らかとなる。
【0021】
このような使い捨て着用物品の製造方法によれば、所定の高圧力領域を備えた使い捨て着用物品(おむつ)を着用した場合と、そうでない場合とで歩行時における着用者のつまづきの頻度の差を比較し、その結果に基づいて選定された高圧力領域を用いることによって、客観的に歩行サポート性能の高い使い捨て着用物品を提供することができる。
【0022】
かかる使い捨て着用物品の製造方法であって、前記高圧力領域は、着用者の下腹部を斜め上側に締め付けて腹腔内圧を高めるように配置される、ことが望ましい。
【0023】
このような使い捨て着用物品の製造方法によれば、骨盤やその周りの筋肉(腹筋など)の働きをサポートし、体幹を安定させることが可能な使い捨て着用物品を実現できる。これにより、使い捨て着用物品の着用時における足上がりや歩幅などの歩行性が向上し、歩行サポート性能の高い着用物品を提供することができる
【0024】
かかる使い捨て着用物品の製造方法であって、前記使い捨て着用物品は、腹側外装体及び背側外装体を備え、前記高圧力領域は、前記腹側外装体及び前記背側外装体に、それぞれ第1高圧力領域と、第2高圧力領域と、を有し、前記使い捨て着用物品の左右方向の両端部において、前記第1高圧力領域は、前記第2高圧力領域と離間しているとともに、前記第2高圧力領域よりも上側になるように配置され、前記左右方向の中央において、後側の前記第1高圧力領域の下端が、前側の前記第1高圧力領域の下端よりも上側になるように配置される、ことが望ましい。
【0025】
このような使い捨て着用物品の製造方法によれば、着用時に、着用者の上前腸骨棘を第1高圧力領域と第2高圧力領域とで挟み込むことで位置ずれが起こりにくくなる。また、下腹部を斜め上に締める(圧力を加える)ことにより、腹腔内圧を高めやすくすることができる。これにより、使い捨て着用物品の歩行サポート機能を発揮させやすくすることができる。
【0026】
かかる使い捨て着用物品の製造方法であって、前記腹側外装体において、前記第1高圧力領域は、下側に凸形状となる帯状の弾性部材によって形成される、ことが望ましい。
【0027】
このような使い捨て着用物品の製造方法によれば、上下方向に所定の幅を有する帯状の領域で左右方向の収縮力を高めやすくすることができる。また、腹側外装体側で第1高圧力領域が下側に凸形状となることで、下腹部に対して斜め上側に圧力が加えやすくなり、腹腔内圧を高めて使い捨て着用物品による歩行サポート機能を発揮させやすくすることができる。
【0028】
かかる使い捨て着用物品の製造方法であって、前記腹側外装体及び前記背側外装体は、前記左右方向の両端部にて、一対の端部接合部によって互いに接合されており、前記一対の端部接合部の間の前記左右方向における長さを、伸長状態における前記腹側外装体及び前記背側外装体の前記一対の端部接合部の間の前記左右方向における長さの73~84.5%とした場合に、前記腹側外装体及び前記背側外装体のうち前記高圧力領域を含む領域の前記左右方向における締め付け力は5.3N以上、16.9N以下である、ことが望ましい。
【0029】
このような使い捨て着用物品の製造方法によれば、締め付け力を16.9N以下とすることで、締め付け力が強すぎて着用者に不快感を生じさせてしまうことを抑制することができる。また、締め付け力を5.3N以上とすることで、良好な歩行サポート性能を有する使い捨て着用物品を実現することができる。
【0030】
かかる使い捨て着用物品の製造方法であって、前記高圧力領域が設けられた前記使い捨て着用物品を着用した場合における着用者のつまづきの頻度が、前記使い捨て着用物品を着用しない場合又は着用者が前記使い捨て着用物品とは異なる他の使い捨て着用物品を着用した場合におけるつまづきの頻度よりも少ないことを、前記使い捨て着用物品の包装材に表示する工程を有する、ことが望ましい。
【0031】
このような使い捨て着用物品の製造方法によれば、使い捨て着用物品を着用することによって、つまづきの頻度を低減させることができることを、ユーザーに周知させやすくすることができる。また、つまづきの頻度が少ないことを包装材に視覚的に表示することで、ユーザーは、使い捨て着用物品の歩行サポート機能を具体的にイメージしやすくなり、安心して使い捨て着用物品を購入しやすくなる。
【0032】
かかる使い捨て着用物品の製造方法であって、前記高圧力領域が設けられた前記使い捨て着用物品を着用した場合における着用者のつまづきの頻度が、前記使い捨て着用物品を着用しない場合又は着用者が前記使い捨て着用物品とは異なる他の使い捨て着用物品を着用した場合におけるつまづきの頻度よりも少ないことを、Webサイトに表示する工程を有する、ことが望ましい。
【0033】
このような使い捨て着用物品の製造方法によれば、つまづきの頻度が少ないことをWebサイトに表示することにより、使い捨て着用物品が良好な歩行サポート機能を有していることをより多くのユーザーに広く知らせることができる。
【0034】
また、かかる使い捨て着用物品の製造方法によって製造された使い捨て着用物品が明らかとなる。
【0035】
このような使い捨て着用物品によれば、所定の高圧力領域を備えた使い捨て着用物品(おむつ)を着用した場合と、そうでない場合とで歩行時における着用者のつまづきの頻度の差を比較し、その結果に基づいて選定された高圧力領域を用いることによって、客観的に歩行サポート性能の高い使い捨て着用物品を提供することができる。
【0036】
===実施形態===
本発明に係る着用物品の一例として、パンツ型使い捨ておむつ1(以下、「おむつ1」とも呼ぶ)を例に挙げて説明する。ただし、本発明に係る着用物品は、パンツ型ナプキンやその他のパンツ型吸収性物品等、おむつ以外の着用物品に適用することも可能である。
【0037】
<おむつ1の全体構成>
図1は、パンツ型使い捨ておむつ1(おむつ1)の概略斜視図である。図2は、展開且つ伸長状態のおむつ1の概略平面図である。なお、「伸長状態」とは、おむつ1を皺なく伸長させた状態であり、おむつ1を構成する各部材(例えば外装体20を構成するシート等)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い長さになるまで伸長した状態である。図3は、図2のI-I線(左右方向の中央)での概略断面図である。
【0038】
おむつ1は、図1に示されるパンツ型状態において、互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、胴回り開口1aと一対の脚回り開口1b,1bとを有している。上下方向において、着用者の胴側となる側(胴回り開口1aが形成されている側)を上側とし、着用者の股下となる側を下側とする。前後方向において、着用者の腹側となる側を前側とし、着用者の背側となる側を後側とする。また、図2の展開状態において、おむつ1は、互いに交差する縦方向と横方向とを有する。縦方向は、図1における上下方向に沿った方向であり、吸収性本体10の長手方向に相当する。横方向は、図1における左右方向に沿った方向である。また、図3に示すように、おむつ1を構成する資材が積層された方向を厚さ方向とする。厚さ方向において着用者の肌と接する側を肌側とし、その反対側を非肌側とする。
【0039】
おむつ1は、平面視長方形状である吸収性本体10と、吸収性本体10の非肌側に位置する外装体20とを有している。外装体20は、前後方向における前側に位置する腹側外装体21(前側ベルト部に相当)と、前後方向における後側に位置する背側外装体22(後側ベルト部に相当)と、それらを繋ぐ股下外装体23とを有している。厚さ方向に隣接する上記部材は接着剤等で接合されている。
【0040】
また、吸収性本体10の長手方向(図2の展開状態における縦方向)の一端側に、腹側外装体21が位置し、吸収性本体10の長手方向の他端側に、背側外装体22が位置している。吸収性本体10の長手方向(縦方向)において、腹側外装体21が位置する側を前側とし、背側外装体22が位置する側を後側とする。また、股下外装体23は腹側外装体21及び背側外装体22よりも肌側に位置している。
【0041】
なお、本実施形態のおむつ1では外装体20が3部材(腹側外装体21、背側外装体22、及び、股下外装体23)から構成されているが、これに限らない。例えば、腹側外装体21、背側外装体22、及び、股下外装体23が1部材で構成されていてもよい。また、股下外装体23を有さない構成としてもよい。
【0042】
図2に示す展開状態のおむつ1は、縦方向における中央位置CLで2つ折りされ、腹側外装体21の左右方向の両端部と背側外装体22の左右方向の両端部とが溶着や接着等の公知の接合手段によって接合されることにより、図1に示すパンツ型となる。つまり、吸収性本体10の長手方向がおむつ1の上下方向に沿い、腹側外装体21と背側外装体22とが環状につながって、胴回り開口1a及び一対の脚回り開口1bが形成される。以下、腹側外装体21と背側外装体22とが接合された左右方向の両端部を端部接合部24という。
【0043】
吸収性本体10は、図3に示すように、吸収性コア11と、吸収性コア11の肌側に位置するトップシート12と、吸収性コア11の非肌側に位置するバックシート13とを有している。
【0044】
吸収性コア11は、尿等の排泄液を吸収して保持する部材であり、例えば高吸収性ポリマー(SAP)が混入したパルプ繊維等の液体吸収性繊維により形成される。図示しないが、吸収性コア11は、ティッシュペーパーや不織布等の液透過性のシートによって、外周面が覆われていてもよい。
【0045】
トップシート12は、液透過性のシートであり、例えば親水性のエアスルー不織布やスパンボンド不織布等が用いられる。バックシート13は、液不透過性シート13a、及び、その非肌側に配された液透過性シート13bの二層構造である。液不透過性シート13aとしては、例えば樹脂フィルム等が用いられ、液透過性シート13bとしては、例えば柔軟性を有する不織布等が用いられる。なお、バックシート13は液不透過性シート13aの一層構造であってもよい。
【0046】
また、詳細は図示しないが、図1に示すように、吸収性本体10の左右方向の両側部に、肌側に起立可能な立体ギャザー部14を設けてもよい。
【0047】
腹側外装体21、及び、背側外装体22は、それぞれ図2に示すように、上下方向において端部接合部24が位置する胴回り領域211,221と、胴回り領域211,221よりも下側の股下側領域212,222とを有している。
【0048】
胴回り領域211,221は平面視長方形状を成している。また、背側外装体22の胴回り領域211は、縦方向における中央位置CL(パンツ型形状におけるおむつ1の下端)と背側外装体22の上端(パンツ型形状におけるおむつ1の上端)との間の中央BCLよりも上に位置している。
【0049】
股下側領域212,222は略台形形状を成し、下側に向かうにつれて横幅(左右方向の長さ)が狭くなっている。腹側外装体21に比べて背側外装体22の方が、股下側領域222が大きく、着用者の臀部を被覆可能となっている。
【0050】
腹側外装体21、及び、背側外装体22は、それぞれ図3に示すように、肌側に位置する肌側シート213,223と、非肌側に位置する非肌側シート214,224と、それらの間に位置し、少なくともおむつ1の左右方向に伸縮性を備える伸縮性不織布215,225と、を有している。
【0051】
肌側シート213,223、及び、非肌側シート214,224は、柔軟なシートであることが好ましく、例えばスパンボンド不織布やSMS不織布等が用いられる。
【0052】
伸縮性不織布215,225は、例えば、弾性を有する熱可塑性エラストマー性繊維であるポリウレタン系エラストマーと、非弾性を有する熱可塑性樹脂性繊維であるポリオレフィン系樹脂のポリプロピレン(PP)とを有しており、ギア延伸等の適宜な延伸処理が施された不織布である。この延伸処理により、伸縮性不織布215,225は、おむつ1の左右方向及び上下方向の伸縮性を有するものとする。なお、延伸処理は、互いに直交する方向に延伸処理を行うものであってもよいし、所定方向にのみ延伸処理を行うものであってもよい。所定方向にのみ延伸処理を行った場合、所定方向における伸縮性が発現されるが、すべての繊維の配向が所定方向に沿っているとは限らないため、所定方向と直交する方向にも伸縮性が発現される。
【0053】
肌側シート213,223、非肌側シート214,224、及び、伸縮性不織布215,225は、点在する複数の溶着部(不図示)により接合されている。このため、例えば固化する接着剤により接合される場合に比べて、肌触りが柔らかくなっている。また、溶着部の間において、伸縮性不織布215,225が収縮することで、肌側シート213,223、及び、非肌側シート214,224が厚さ方向の外側に湾曲して突出する。つまり、肌側シート213,223、及び、非肌側シート214,224が溶着部の間で膨らむため、肌触りがより柔らかくなり、視覚的にも柔らかい印象を使用者に付与できる。溶着部は、比較的に狭い間隔で点在しているため、本実施形態のおむつ1では、多方向に延び、且つ、きめ細やかな膨らみ(皺)が発生し、おむつ特有の一方向の皺(縦皺等)の発生を防止できるため、おむつ1の美観性が良い。
【0054】
また、腹側外装体21、及び、背側外装体22には、胴回り開口1aの縁に沿う領域には複数の胴回り弾性部材26(例えば糸ゴム等)が配されている。また、脚回り開口1bの縁に沿う領域には複数の脚回り弾性部材27が配されている。脚回り弾性部材27は、胴回り弾性部材26と同様に、例えば糸ゴム等で構成されている。これにより、おむつ1の胴回り及び脚回りは、胴回り弾性部材26及び脚回り弾性部材27により着用者にしっかりと密着する。よって、おむつ1のずれ落ちや脚回りからの漏れを防止できる。
【0055】
さらに、本実施形態のおむつ1の腹側外装体21及び背側外装体22には、少なくとも左右方向(横方向)に伸縮性を有する帯状弾性部材33,35が配されている。帯状弾性部材33,35としては、ウレタンやスチレンのようなエストラマー樹脂を溶融し、均一厚さのシート状とした伸縮性を有する弾性部材を例示できる。また、例えば、エラストマー層の表面と裏面にポリオレフィン層を一体化した伸縮性フィルムでもよい。
【0056】
そして、図2の斜線部で示されるように、おむつ1の外装体20において帯状弾性部材33,35が配置されている領域を高圧力領域40とする。一方、外装体20において、帯状弾性部材33,35が配置されていない領域を低圧力領域50とする。高圧力領域40は、帯状弾性部材33,35が配置されている分だけ、低圧力領域50に比べて、おむつ着用時の締め付け圧力が高くなっている。詳しくは、上下方向における単位幅の高圧力領域40を、左右方向に単位長さ伸長させるための力は、上下方向における単位幅の低圧力領域50を、左右方向に単位長さ伸長させるための力よりも大きい。つまり、単位幅の高圧力領域40において左右方向に働く収縮力が、単位幅の低圧力領域50において左右方向に働く収縮力よりも大きく、高圧力領域40は着用者に強く密着する。
【0057】
以下では、高圧力領域40のうち、前後方向における前側(腹側)の帯状弾性部材33f、及び、後側(背側)の帯状弾性部材33bによって形成されている部分を第1高圧力領域41とする。同様に、前後方向における前側(腹側)の帯状弾性部材35f、及び、後側(背側)の帯状弾性部材35bによって形成されている部分を第2高圧力領域42とする。
【0058】
なお、高圧力領域40(41,42)の全域に帯状弾性部材33,35が配置されるに限らない。例えば、図2に示すように、左右方向に延びた複数の帯状弾性部材33,35が上下方向に間隔を空けて配置されていてもよい。この場合、第1高圧力領域41を形成する複数の帯状弾性部材33,33…のうち、最も上側に位置する帯状弾性部材33の上端と、第2高圧力領域42を形成する複数の帯状弾性部材35,35…のうち、最も下側に位置する帯状弾性部材35の下端と、一対の端部接合部24とによって囲まれた領域を高圧力領域40(図2の斜線部参照)とする。
【0059】
股下外装体23は、長手方向の中央部分において左右方向の内側へ湾曲した平面視略砂時計形状を成している。また、図3に示すように、股下外装体23は、肌側に位置する肌側シート231と、非肌側に位置する非肌側シート232と、それらの間に位置し、おむつ1の上下方向(吸収性本体10の長手方向)に伸縮性を備える伸縮性不織布233とを有している。これらの肌側シート231、非肌側シート232、伸縮性不織布233は、それぞれ、複数の溶着部(不図示)により接合されている。
【0060】
股下外装体23の伸縮性不織布233により、吸収性コア11は着用者の股下部に密着でき、また、排泄により吸収性コア11の重量が増しても、おむつ1の垂れ下がりを抑制できる。なお、伸縮性不織布233は、おむつ1の左右方向に伸縮性を有するものでもよいし、おむつ1の上下方向及び左右方向に伸縮性を有するものでもよい。また、股下外装体23のうち脚回り開口1bに沿う領域に、股下弾性部材28が配されている。股下弾性部材28は、胴回り弾性部材26及び脚回り弾性部材27と同様に糸ゴムなどで構成されている。これにより、股下外装体23が着用者の脚回りに密着するようになっている。
【0061】
<おむつ1における歩行サポート特性について>
続いて、おむつ1における歩行サポート特性について説明する。図4は、おむつ1を着用した状態を示す概念図である。図4Aは、着用者がおむつ1を着用した状態を横側から見た図であり、図4Bは、着用者がおむつ1を着用した状態を後側(背側)から見た図である。
【0062】
本実施形態のおむつ1の外装体20には第1高圧力領域41、及び、第2高圧力領域42が設けられている。第1高圧力領域41において、腹側外装体21側(前側)の3本の帯状弾性部材33fと、それらに対応する背側外装体22側(後側)の3本の帯状弾性部材33bとは、それぞれ、上下方向の位置が同じになるように配置され、端部接合部24においてそれぞれ左右方向の端部同士が接続されている。これにより、図4Aに示すように、腹側外装体21側の第1高圧力領域41と背側外装体22側の第1高圧力領域41とが、端部接合部24で連続するように繋がり、第1高圧力領域41は、腹側外装体21と背側外装体22に亘って周状に形成される。
【0063】
同様に、第2高圧力領域42において、腹側外装体21側(前側)の3本の帯状弾性部材35fと、それらに対応する背側外装体22側(後側)の3本の帯状弾性部材35bとは、それぞれ、上下方向の位置が同じになるように配置され、端部接合部24においてそれぞれ左右方向の端部同士が接続されている。これにより、腹側外装体21側の第2高圧力領域42と背側外装体22側の第2高圧力領域42とが、端部接合部24で連続するように繋がり、第2高圧力領域42は、腹側外装体21と背側外装体22に亘って周状に形成される。
【0064】
また、おむつ1の端部接合部24において、第1高圧力領域41と第2高圧力領域42とは重なっていない。すなわち、端部接合部24において、第1高圧力領域41は、第2高圧力領域42と離間していると共に第2高圧力領域42よりも上側に配置されている。より具体的には、第1高圧力領域41は、少なくとも上端が着用者の上前腸骨棘よりも上側になるように配置されており、第2高圧力領域42は、少なくとも下端が上前腸骨棘よりも下側になるように配置されている。本実施形態では、第1高圧力領域41の下端が上前腸骨棘の上を通る配置になっている。なお、上前腸骨棘は、骨盤最大の骨である腸骨の突起部分であり、腰に手を当てた時に指に触れる出っ張りである。これにより、おむつ1の着用時に、着用者の上前腸骨棘を第1高圧力領域41と第2高圧力領域42とで挟み込むようにできる。このように、上前腸骨棘を第1高圧力領域41と第2高圧力領域42で挟み込むことにより、おむつ1を着用する際に位置ずれが起こりにくくなり、狙いの位置を確実に高圧力に保持することができる。すなわち、おむつ1における歩行サポート機能を発揮させやすくすることができる。
【0065】
また、第1高圧力領域41は、腹側外装体21側では下側に凸となるように湾曲して配置されており、背側外装体22側では胴回り弾性部材26に沿ってほぼ水平に配置されている(図2及び図4A参照)。このため、おむつ1の左右方向の中央部において、背側外装体22側(後側)の第1高圧力領域41の下端が、腹側外装体21側(前側)の第1高圧力領域41の下端よりも上側に配置されている。これにより、下腹部を斜め上に締める(圧力を加える)ことができ、腹腔内圧を高めることができる。特に、本実施形態では腹側外装体21側で第1高圧力領域41が下側に凸形状となるように配置されているので、腹腔内圧を高めやすい。また、このような構成とすることで、骨盤周りの筋肉(腹筋など)の働きや骨盤が効率的にサポートされ、体幹を安定させやすくすることができる。これにより、おむつ1着用時における足上がりや歩幅などの歩行性の向上を図ることができる。また、図2に示すように、第1高圧力領域41は、吸収性コア11の上端よりも上に配置されている(吸収性コア11とは重なっていない)。これにより、腹腔内圧を逃がさないようにできる。
【0066】
また、第2高圧力領域42は、腹側外装体21側ではほぼ水平に配置されており、背側外装体22側では上側に凸となるように湾曲して配置されている(図2及び図4A参照)。このため、おむつ1の左右方向の中央部において、背側外装体22側(後側)の第2高圧力領域42の下端が、腹側外装体21側(前側)の第2高圧力領域42の下端よりも上側に配置されている。これにより、上前腸骨棘を挟んでさらに下側の部分(下腹部)の腹腔内圧を高めることができる。また、背側外装体22側で第2高圧力領域42が上側に凸となっているので、臀部の形に沿いやすい。また、第2高圧力領域42は、吸収性コア11の上端よりも上に配置されている(吸収性コア11とは重なっていない)。これにより、吸収性コア11に皺がよりにくく、吸収性を低下させないようにできる。
【0067】
また、背側外装体22側において、第1高圧力領域41及び第2高圧力領域42は、胴回り領域221内に設けられている(図2参照)。したがって、背側外装体22側(後側)において、第1高圧力領域41及び第2高圧力領域42は、共におむつ1の上下方向の中央BCLよりも上に配置されている。これにより、臀部を避けて締め付けることができ、歩行時の動作を妨げないようにできる。
【0068】
さらに、背側外装体22側において、第1高圧力領域41及び第2高圧力領域42は、図4Bに示すように、着用者(人体)の中臀筋の形状に合わせた配置となっている。よって、おむつ1の着用時に、高圧力領域40は着用者の中臀筋を締め付けることで、中臀筋の動きを補助できる。その結果、歩行等の動作時の体幹が安定し、着用者の歩行動作をサポートしやすくなっている。
【0069】
また、左右方向において、腹側外装体21(背側外装体22)両端部に設けられた一対の端部接合部24,24の間の長さを、おむつ1を伸長状態にしたときの端部接合部24,24の間の長さの73~84.5%まで伸長させた状態で、高圧力領域40を含む領域の左右方向における締め付け力(左右方向に働く収縮力)が5.3N以上、16.9N以下となるように、高圧力領域40を設定することが望ましい。高圧力領域40による締め付け力が16.9N以下であれば、締め付け力が強すぎて着用者に不快感を生じさせてしまうことが抑制される。また、締め付け力が5.3N以上であれば、後述する歩行サポート特性の評価において、良好な歩行サポート性能を発揮することができるようになる。
【0070】
なお、高圧力領域40による締め付け力は、以下のようにして測定することができる。まず、腹側外装体21及び背側外装体22から試験片を作成する。具体的には、腹側外装体21及び背側外装体22を腹背の高圧力領域40の上端及び下端に沿って左右方向に平行に切断し、環状の試験片を得る。次に、当該環状の試験片の一方側と他方側をそれぞれ引張試験機(例えば、インストロン社製:万能材料試験機等)のチャックに固定する。そして、100mm/minの引っ張り速度にて引張試験を行う。チャックに固定するための固定治具間の距離は、張試験機開始時において、左右方向における試験片の自然長未満とする。そして、試験片を最も伸長させた状態(上述の伸長状態に相当)の寸法の87%となるまで伸長させてから収縮セル動作を行う。この伸長・収縮動作を二度繰り返し、二度目に収縮させるときにかかる応力を測定する。
【0071】
<歩行サポート特性の評価方法>
上述したような歩行サポート特性を有するおむつ1を実際に着用した際に、着用者の歩行をサポートする程度について客観的に評価する方法について説明する。図5は、おむつ1について着用者の歩行をサポートする程度について評価を行う際のフローを表す図である。
【0072】
はじめに、おむつ1に設ける高圧力領域40の設計を行う(S101)。高圧力領域40は、図4A及び図4Bで説明したように、着用者の胴回り域において所定の締め付け力を発現することによって、腹腔内圧を高めやすく、骨盤周りの筋肉(腹筋や中殿筋など)の働きを補助して体幹を安定させる機能を有するように設計される。
【0073】
次いで、S101で設計された高圧力領域40を備えたおむつ1を試作する(S102)。本工程で試作されるおむつ1は、製品として流通されるおむつ1と同等の資材(不織布や弾性部材等)を用いて形成され、また、次工程で実証実験を行うのに十分な数量が試作される。
【0074】
次いで、S102で試作されたおむつ1を実際に着用して歩行した場合において、着用者のつまづきの頻度を特定するための実証実験を行う(S103)。実験は、例えば以下のようにして行う。先ず、普段から使い捨ておむつを使用している不特定のユーザーの中から、複数のユーザー(本実施形態では18人)を調査対象者(サンプル)として選定する。そして、試作されたおむつ1を着用した状態で各調査対象者に所定の条件に基づいて歩行を行わせ、歩行中につまづいた回数を測定して、調査対象者毎のつまづきの頻度をつまづき係数として算出する。
【0075】
本実施形態における「つまづき係数」は、着用者がおむつ1を着用した状態で所定歩数だけ歩行した際に、つまずいた回数を歩行した歩数で割った値である。複数のユーザーに対して同じ条件でつまづき係数を求めることによって、おむつ1を着用した状態で歩行した際のつまづき難さを客観的に表すことができる。そして、このようにしてつまづき係数を求めることによって、おむつ1着用時におけるつまづきの頻度を正確に特定することが可能となるため、評価の精度を高めることができる。
【0076】
具体的な実験の方法としては、例えば、複数の調査対象者の各々におむつ1を着用した状態で所定の調査期間内に、合計で10万歩の歩行を行ってもらい、10万歩の歩行におけるつまづき頻度を調査する。調査における歩行時の歩数は、例えば手首等の身体に装着するタイプの公知の活動量計や加速度計、歩数計等を用いて計測することができる。また、つまづいた回数は、着用者または介助者が数え、計測日毎につまづいた回数と歩行した歩数とを記録する。このようにして記録したデータに基づいて、調査対象者毎に上述したつまづき係数(すなわち、つまづきの頻度)を正確に算出することができる。なお、使用者がつまづいたことを検知できる機能を有する活動量計やスマートフォン等を用いてつまづきの頻度を自動的に計測するようにしても良い。
【0077】
なお、調査対象者が10万歩の歩行を行うことが困難である等の事情により、実際に10万歩の測定を行うことができない場合には、実際に歩行を行った歩数におけるつまづき頻度を、10万歩あたりのつまづき頻度に換算して測定を行う。例えば、実際に歩行した歩数が5万歩であった場合には、5万歩におけるつまづき回数を倍にして10万歩あたりのつまづき頻度としてつまづき係数を算出する。
【0078】
また、本実施形態のおむつ1は、ユーザーの歩行をサポートする機能を備えているため、例えば、比較的年齢が高く(65歳~90歳)、歩行に不安を有している高齢者を調査対象者として評価を行うことが望ましい。これにより、実際に歩行サポートを必要としている年齢層のユーザーに好適な機能(高圧力領域40による歩行サポート機能)を備えたおむつ1を提供することができる。
【0079】
次いで、図5に戻って、比較例として、高圧力領域40を備えていない従来のおむつを着用して歩行した場合における、着用者のつまづきの頻度を特定するための実験を行う(S104)。実験は、S103で説明したのと同様にして行う。すなわち、S103で選定した調査対象者(本実施形態では18人)のそれぞれに対して、市販されている一般的なパンツ型使い捨ておむつ(おむつ1とは異なる着用物品)を着用した状態でS103と同様の条件で10万歩の歩行を行ってもらう。そして、10万歩の歩行時におけるつまづきの回数を測定し、つまづき係数(つまづきの頻度)を求める。なお、比較例のおむつとして、図1図3で説明した本実施形態のおむつ1から高圧力領域40を除去したものを作成してつまづきの頻度を測定しても良いし、おむつを着用していな状態で歩行を行った場合におけるつまづきの頻度を測定するのであっても良い。
【0080】
そして、S103で特定したおむつ1着用時におけるつまづき頻度(つまづき係数)と、S104で特定した比較例のおむつ着用時におけるつまづき頻度とを比較する(S105)。図6は、本実施形態のおむつ1着用時におけるつまづき頻度と、比較例のおむつ着用時におけるつまづき頻度とを比較した結果を表すグラフである。
【0081】
図6に示されるように、ほとんどのサンプルにおいて、比較例のおむつを着用した状態で歩行した場合と比較して、本実施形態のおむつ1を着用した状態で歩行した場合の方がつまづき係数が低くなっていることが明らかとなった。少なくとも、図6に示される18のサンプルのうち13のサンプルにおいて本実施形態のおむつ1を着用したときの方がつまづき係数が低くなっていた。したがって、高圧力領域40を有するおむつ1は、高圧力領域を有していない従来のおむつ(比較例)よりも、高い歩行サポート機能を備えていることが確認できた。
【0082】
また、図6において、おむつ1を着用した場合におけるつまづき係数は0~15程度の範囲に分布し、平均は3.96、標準偏差は4.23であった。一方、比較例のおむつを着用した状態で歩行した場合、つまづき係数は0~25程度の範囲に分布し、平均は6.89、標準偏差は7.20であった。すなわち、本実施形態のおむつ1を着用した際のつまづき係数の平均は、比較例のおむつを着用した際のつまづき係数の平均の半分程度であり、おむつ1によってつまづきの頻度を半減できることが客観的に明らかとなった。また、本実施形態のおむつ1を着用した際のつまづき係数の標準偏差も、比較例のおむつを着用した際のつまづき係数の標準偏差よりも小さくなっており、おむつ1では、着用者によるつまづき頻度のばらつきが生じ難く、歩行サポート性能を安定して発揮しやすいことが客観的に明らかとなった。
【0083】
このように、おむつ1着用時におけるつまづき頻度と比較例のおむつ着用時におけるつまづき頻度とを比較して、その差が所定の範囲以上である場合には(S105がYes)、おむつ1のサポート機能が十分なものであると判断できる。すなわち、おむつ1では高圧力領域40を有していることにより、比較例のおむつと比較して高い歩行サポート機能を有していると判断できる。したがって、この場合、高圧力領域40が十分な歩行サポート機能を有しているものとして評価され、当該高圧力領域40がおむつ1に搭載される高圧力領域として正式に選定される。
【0084】
一方、おむつ1着用時におけるつまづき頻度と比較例のおむつ着用時におけるつまづき頻度とを比較して、その差が所定の範囲未満である場合には(S105がNo)、おむつ1のサポート機能が不十分なものであると判断できる。すなわち、おむつ1では高圧力領域40が十分に高い歩行サポート機能を有していないと評価される。この場合、高圧力領域40が所望の性能を有していないことから、S101に戻って高圧力領域40を再設計し、再設計された高圧力領域40を備えたおむつ1を試作してつまづき頻度について再度検証を行う(S102~S104)。このようにして、高圧力領域40の最適化を行うことにより、歩行サポート性能の高いおむつ1を実現することができる。
【0085】
<おむつ1の製造について>
本実施形態におけるおむつ1は、上述のような評価方法に基づいて選定された高圧力領域40を用いて製造される。具体的には、外装体20の製造工程において、腹側外装体21を構成する肌側シート213及び非肌側シート214との厚さ方向の間に、所定の伸長倍率で左右方向に伸長させた状態の帯状弾性部材33f及び帯状弾性部材35fを設けることによって、高圧力領域40を備えた腹側外装体21が製造される。同様に、背側外装体22を構成する肌側シート223及び非肌側シート224との厚さ方向の間に、所定の伸長倍率で左右方向に伸長させた状態の帯状弾性部材33b及び帯状弾性部材35bを設けることによって、高圧力領域40を備えた背側外装体22が製造される。
【0086】
このようにして製造された外装体20に対して、外装体20とは別の工程で製造された吸収性本体10を厚さ方向に重ねて接合する(図2図3参照)。そして、縦方向における中央位置CLにて2つ折りにする工程、腹側外装体21と背側外装体22の左右方向の両端部同士を接合して一対の端部接合部24を形成する工程、左右方向(搬送方向)に複数連なって並んでいる状態のおむつ1の連続体を個々のおむつ1に切断する工程等を経て、良好な歩行サポート機能を備えたパンツ型のおむつ1が形成される(図1参照)。
【0087】
パンツ型に形成されたおむつ1は、それぞれ上下方向や左右方向に折り畳まれ、所定数量ずつ包装材に収容(パッケージング)され、おむつ1の包装体として市場に流通する。本実施形態のおむつ1の製造工程において、おむつ1を収容する包装材に、おむつ1の着用時におけるつまづきの頻度が、おむつ1を着用していない場合若しくはおむつ1とは異なるおむつ(高圧力領域40を備えていないおむつ)を着用している場合におけるつまづきの頻度よりも少ないことを表示する工程を設けても良い。
【0088】
図7は、おむつ1を収容する包装材100の一例について表す概略斜視図である。包装材100は、例えばフィルムや樹脂シートで形成された軟質の容器であり、内部に1個以上のおむつ1を収容することが可能である。図7において、包装材100は略直方体形状に形成されているが、包装材100の形状はこの限りではない。包装材100の表面には、第1表示部110と、第2表示部120とが設けられている。第1表示部110は、内部に収容されているおむつ1の機能についての説明等を表示する部分である。図7の例では、第1表示部110に「歩きやすく、つまづきにくい」の文字が表示されており、おむつ1を着用することによってつまづきの頻度を低減させることができることを、ユーザーに周知することができる。また、図7の第1表示部110は、包装材100の正面中央部等の目立ちやすい位置に配置されていることから、ユーザーの目につきやすく、おむつ1が良好な歩行サポート機能を有していることをユーザーに理解させると共に、購買意欲を惹起させやすくすることができる。
【0089】
第2表示部120にはおむつ1の歩行サポート機能の説明を補強する図が示されている。例えば、おむつ1を着用した際の高圧力領域40の作用について、図を用いて視覚的に表示することで、ユーザーは、おむつ1が有する歩行サポート機能を具体的にイメージしやすくなり、安心しておむつ1を購入しやすくなる。
【0090】
また、おむつ1の着用時におけるつまづきの頻度が、おむつ1を着用していない場合、若しくは、おむつ1とは異なるおむつ(高圧力領域40を備えていないおむつ)を着用している場合におけるつまづきの頻度よりも少ないことを、Webサイト(例えば、販売者のホームページ)上で表示する工程を設けても良い。例えば、Webサイト上で、図7で示した包装材100(おむつ1の包装体)の写真(画像)を表示したり、「歩きやすく、つまづきにくい」ことの説明(図7の第1表示部110や第2表示部120に表示されている情報に相当)や、実証実験の結果等を表示するようにしても良い。このような情報をWebサイトに表示することにより、おむつ1が良好な歩行サポート機能を有していることをより多くのユーザーに広く知らせることが可能となる。また、ユーザーは販売店に出かけて直接おむつ1を確認する等の必要が無く、おむつ1の情報を簡単に入手することができるため、ユーザーの利便性を向上させることができる。また、Webサイト上に情報を表示する場合、包装材100に情報を表示する場合と比較して、表示面積の制限等が少ないため、より詳細な情報を表示しやすく、ユーザーにおむつ1の歩行サポート機能を正確に理解させやすくすることができる。
【0091】
===その他の実施形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
【0092】
前述の実施形態では、第1高圧力領域41及び第2高圧力領域42が、それぞれ、複数(3本)の帯状弾性部材33,35で構成されていたが、これには限られない。例えば、一つの伸縮性フィルムで高圧力領域40を構成してもよい。ただし、前述の実施形態のように複数の伸縮性フィルム(帯状弾性部材33,35)を上下に間隔を空けて形成することによって、伸縮性フィルムが無い箇所の厚み方向の部材数を少なくでき、通気性や履き心地が良くなる。また、高圧力領域を構成する部材としては、伸縮性フィルムには限られず、ポリウレタン樹脂や天然ゴムからなる糸状・帯状の弾性部材などを用いてもよい。
【0093】
前述の実施形態では、端部接合部24において、各高圧力領域(第1高圧力領域41、第2高圧力領域42が、完全に連続するように接続されていたが、少なくとも一部が胴回りの周方向に連続していればよい。例えば、前側の高圧力領域と後側の高圧力領域がそれぞれ水平方向に沿って、且つ、後側の高圧力領域の方が前側の高圧力領域よりも上に配置され、端部接合部24において、段差が設けられて一部が繋がっていてもよい。このような場合においても、第1高圧力領域41と第2高圧力領域42が、それぞれ、端部接合部24で少なくとも一部連続していることにより周方向に締め付けることができ、また、後側の高圧力領域の方が前側の高圧力領域よりも上に配置されるので、下腹部を斜め上に締めることができる。
【0094】
前述の実施形態では、おむつ1(高圧力領域40)のつまづき頻度を評価する際に、「つまづき係数」は、着用者がおむつ1を着用した状態で歩行した際につまずいた回数を歩行した歩数(例えば10万歩)で割ることによって算出されていたが、つまづき係数の算出方法はこれに限られない。例えば、着用者がおむつ1を着用した状態で歩行した際につまずいた回数を歩行した距離で割った値をつまづき係数としても良い。このような場合であっても、複数のユーザーについて同じ条件でつまづき係数を求めることができるため、おむつ1を着用時におけるつまづき難さを客観的に表すことが可能となる。すなわち、おむつ1着用時におけるつまづきの頻度を正確に特定することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 おむつ(着用物品、パンツ型使い捨ておむつ)、
1a 胴回り開口、1b 脚回り開口、
10 吸収性本体、
11 吸収性コア、
12 トップシート、13 バックシート、14 立体ギャザー部、
20 外装体、
21 腹側外装体(腹側ベルト部)、
211 胴回り領域、212 股下側領域、213 肌側シート、214 非肌側シート、215 伸縮性不織布、
22 背側外装体(後側ベルト部)、
221 胴回り領域、222 股下側領域、223 肌側シート、224 非肌側シート、225 伸縮性不織布、
23 股下外装体、
231 肌側シート、232 非肌側シート、233 伸縮性不織布、
24 端部接合部、
26 胴回り弾性部材、27 脚回り弾性部材、28 股下弾性部材、
33 帯状弾性部材、33f・33b 帯状弾性部材、
35 帯状弾性部材、35f・35b 帯状弾性部材、
40 高圧力領域、
41 第1高圧力領域、
42 第2高圧力領域、
50 低圧力領域、
100 包装材、
110 第1表示部、120 第2表示部、
CL 中央位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7