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特開2022-140293紫外線硬化性樹脂組成物、透明材料、及び塗装物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140293
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】紫外線硬化性樹脂組成物、透明材料、及び塗装物品
(51)【国際特許分類】
   C08G 75/045 20160101AFI20220915BHJP
   C09D 183/08 20060101ALI20220915BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20220915BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20220915BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
C08G75/045
C09D183/08
C09D4/00
C09D5/00 Z
B32B27/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010125
(22)【出願日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2021040701
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】吉川 昌
【テーマコード(参考)】
4F100
4J030
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AK25B
4F100AK52A
4F100AL05A
4F100AT00B
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CC00A
4F100EH46A
4F100EJ08A
4F100JB14A
4F100JK06
4F100JK12
4F100JL11
4J030BA04
4J030BA26
4J030BA42
4J030BA44
4J030BA47
4J030BA51
4J030BB08
4J030BC33
4J030BC43
4J030BF19
4J030BG02
4J030BG25
4J038DL091
4J038GA13
4J038JA69
4J038KA08
4J038KA10
4J038KA12
4J038NA01
4J038NA11
4J038PA17
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】エン-チオール反応を利用した紫外線硬化性樹脂組成物であって、紫外線によって容易に硬化し、スクラッチ傷に対する自己修復性を有する硬化物を実現するための紫外線硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】式(1)で表される構成単位を2個以上含むポリシルセスキオキサン化合物(A)と、炭素-炭素二重結合を2個以上有する化合物(B)とを含む紫外線硬化性樹脂組成物であって、化合物(A)が含む式(1)で表される構成単位と、化合物(B)が含む炭素-炭素二重結合のうち少なくとも一方は3個以上であり、化合物(B)が、2~4個のアリル基を有する複素脂環式炭化水素及び2~4個のアリル基を有する脂環式炭化水素からなる群より選ばれる1種以上である、紫外線硬化性樹脂組成物。
SiO3/2 ・・・式(1)
(式中、Rは、チオール基を有しかつ芳香環を有しない炭素数1~12の有機基を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構成単位を2個以上含むポリシルセスキオキサン化合物(A)と、炭素-炭素二重結合を2個以上有する化合物(B)とを含む紫外線硬化性樹脂組成物であって、前記ポリシルセスキオキサン化合物(A)が含む下記式(1)で表される構成単位と、前記化合物(B)が含む炭素-炭素二重結合のうち少なくとも一方は3個以上であり、前記化合物(B)が、2~4個のアリル基を有する複素脂環式炭化水素及び2~4個のアリル基を有する脂環式炭化水素からなる群より選ばれる1種以上である、紫外線硬化性樹脂組成物。
SiO3/2 ・・・式(1)
(式中、Rは、チオール基を有しかつ芳香環を有しない炭素数1~12の有機基を表す。)
【請求項2】
前記化合物(B)が、2~4個のアリル基を有する鎖式飽和炭化水素をさらに含む、請求項1に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記化合物(B)が、2~4個のアリルエステル基を有する鎖式飽和炭化水素、2~4個のアリルエーテル基を有する複素脂環式炭化水素、及び2~4個のアリルエステル基を有する脂環式炭化水素からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記式(1)記載の化合物のうち、Rがチオール基を有する炭素数1~12の飽和炭化水素基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記化合物(B)がクエン酸トリアリル、イソソルビドジアリルエーテル、シクロヘキセンジカルボン酸ジアリル、4-メチルヘキサヒドロフタル酸ジアリル、ヘキサヒドロフタル酸ジアリル及びアジピン酸ジアリルからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
光照射によりラジカルを発生する化合物を含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
エン-チオール反応を抑制する化合物を含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、透明材料。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物であるコーティング層を基材上に有する、塗装物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化性樹脂組成物、前記組成物を紫外線硬化させて得られる硬化物、及びこれらから誘導される各種物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チオール基を有する化合物と、炭素-炭素二重結合を有する化合物との反応、すなわちエン-チオール反応を用いた紫外線硬化性組成物が種々提案されている。前記紫外線硬化性樹脂組成物は、重合開始剤を含まなくても、硬化が進行する。また、酸素による反応阻害を受けず、硬化収縮が小さいなどの利点を有する。
【0003】
例えば、特許文献1には、前記エン-チオール反応を利用した紫外線硬化性樹脂組成物として、式:RSi(ORで示されるチオール基含有化合物(a1)の加水分解縮合物(A)と、炭素-炭素二重結合を有する化合物(B)とを含む組成物が開示されている。特許文献1に記載の紫外線硬化性樹脂組成物を紫外線の照射により硬化させて得られた硬化物は、耐熱性及び表面硬度を高めることができ、導光板、偏光板、液晶パネル、ELパネル、PDPパネル、OHPフィルム、光ファイバー、カラーフィルター、光ディスク基板、レンズ、液晶セル用プラスチック基板又はプリズムの用途に適した塗装物品を提供できることが記載されている。
【0004】
特許文献2及び3には、チオール基を含有するシルセスキオキサンと炭素-炭素二重結合を有する化合物からなる紫外線硬化性樹脂組成物、及び前記紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物にガラス繊維が埋め込まれている透明複合シートについて開示されており、前記透明複合シートは液晶表示素子やEL素子などに利用できることが記載されている。
【0005】
特許文献4には、有機変性ポリシロキサンもしくはその誘導体を有する層又は三次元成形体について開示されており、前記有機変性ポリシロキサンがエン-チオール反応を利用して得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5489389号公報
【特許文献2】特開2011-190402号公報
【特許文献3】特開2011-219727号公報
【特許文献4】特許第6351627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1~3には、導光板や液晶パネルなどの光学材料に適した紫外線硬化性樹脂組成物を提供できることが記載されているが、使用過程で発生するスクラッチ傷に起因して画質の低下が起こりやすい。このため、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物のスクラッチ傷に対する自己修復性に問題点を有する。
特許文献4には、炭素-炭素二重結合を有する化合物としては、アクリル基又はメタクリル基を有する化合物が挙げられている。これらの化合物は、チオール基との反応に優先して、炭素-炭素二重結合を有する官能基同士が重合してしまい、均一な硬化物を得ることが困難になる点に問題点を有する。
【0008】
本発明の目的は、エン-チオール反応を利用した紫外線硬化性樹脂組成物であって、紫外線によって容易に硬化し、スクラッチ傷に対する自己修復性を有する硬化物を実現するための紫外線硬化性樹脂組成物を提供すること、及び前記組成物から得られる硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するため、本発明は、以下の態様を有する。
[1]下記式(1)で表される構成単位を2個以上含むポリシルセスキオキサン化合物(A)と、炭素-炭素二重結合を2個以上有する化合物(B)とを含む紫外線硬化性樹脂組成物であって、前記ポリシルセスキオキサン化合物(A)が含む下記式(1)で表される構成単位と、前記化合物(B)が含む炭素-炭素二重結合のうち少なくとも一方は3個以上であり、前記化合物(B)が、2~4個のアリル基を有する複素脂環式炭化水素及び2~4個のアリル基を有する脂環式炭化水素からなる群より選ばれる1種以上である、紫外線硬化性樹脂組成物。
SiO3/2 ・・・式(1)
(式中、Rは、チオール基を有しかつ芳香環を有しない炭素数1~12の有機基を表す。)
[2]前記化合物(B)が、2~4個のアリル基を有する鎖式飽和炭化水素をさらに含む、[1]に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
[3]前記化合物(B)が、2~4個のアリルエステル基を有する鎖式飽和炭化水素、2~4個のアリルエーテル基を有する複素脂環式炭化水素、及び2~4個のアリルエステル基を有する脂環式炭化水素からなる群より選ばれる1種以上である、[1]又は[2]に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
[4]Rがチオール基を有する炭素数1~12の飽和炭化水素基である、[1]~[3]のいずれかに記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
[5]前記化合物(B)がクエン酸トリアリル、イソソルビドジアリルエーテル、シクロヘキセンジカルボン酸ジアリル、4-メチルヘキサヒドロフタル酸ジアリル、ヘキサヒドロフタル酸ジアリル及びアジピン酸ジアリルからなる群より選ばれる1種以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
[6]光照射によりラジカルを発生する化合物を含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
[7]エン-チオール反応を抑制する化合物を含有する、[1]~[6]のいずれかに記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
[8][1]~[7]のいずれかに記載の紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、透明材料。
[9][1]~[7]のいずれかに記載の紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物であるコーティング層を基材上に有する、塗装物品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エン-チオール反応を利用した紫外線硬化性樹脂組成物であって、紫外線によって容易に硬化し、スクラッチ傷に対する自己修復性を有する硬化物を実現するための紫外線硬化性樹脂組成物を提供することができる。加えて、前記組成物から得られる硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0012】
本発明の紫外線硬化性樹脂組成物は化合物(A)(以下、成分(A)ともいう)と、化合物(B)(以下、成分(B)ともいう)とを含有する。
【0013】
(成分(A))
成分(A)は、下記式(1)で表される構成単位を2個以上含むポリシルセスキオキサン化合物である。
SiO3/2 ・・・式(1)
(式中、Rは、チオール基を有しかつ芳香環を有しない炭素数1~12の有機基を表す。)
【0014】
塗装物品の表面硬度が良好となる点から、Rは、チオール基を有する炭素数1~12の飽和炭化水素基であることが好ましい。
【0015】
成分(A)は、例えば、下記式(2)で示されるチオール基含有アルコキシシラン類(a1)を加水分解反応及び縮合反応を行うことで得ることができる。
Si(OR ・・・式(2)
(式中、Rはチオール基を有しかつ芳香環を有しない炭素数1~12の有機基を表し、Rは水素原子、炭素数1~8の炭化水素基、又は芳香族炭化水素基を表す。)
【0016】
チオール基含有アルコキシシラン類(a1)(以下、成分(a1)ともいう)の具体例としては、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3-メルカプトプロピルトリブトキシシラン、1,4-ジメルカプト-2-(トリメトキシシリル)ブタン、1,4-ジメルカプト-2-(トリエトキシシリル)ブタン、1,4-ジメルカプト-2-(トリプロポキシシリル)ブタン、1,4-ジメルカプト-2-(トリブトキシシリル)ブタン、2-メルカプトメチル-3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトメチル-3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトメチル-3-メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、2-メルカプトメチル-3-メルカプトプロピルトリブトキシシラン、1,2-ジメルカプトエチルトリメトキシシラン、1,2-ジメルカプトエチルトリエトキシシラン、1,2-ジメルカプトエチルトリプロポキシシラン、1,2-ジメルカプトエチルトリブトキシシランなどが挙げられ、前記の例示化合物はいずれか単独で、又は適宜組み合わせて使用できる。前記例示化合物のうち、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランは、加水分解反応の反応性が高く、かつ入手が容易であるため好ましい。
【0017】
また、成分(a1)に加えて、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシランなどのトリアルキルアルコキシシラン類、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのジアルキルジアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどのアルキルトリアルコキシシラン類、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン類、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどのテトラアルコキシチタン類、テトラエトキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウムなどのテトラアルコキシジルコニウム類などの金属アルコキシド類(以下、成分(a2)ともいう)を使用しうる。成分(a2)は、いずれか単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、トリアルキルアルコキシシラン類、ジアルキルジアルコキシシラン類、テトラアルコキシシラン類を用いることで、成分(A)の架橋密度を調整できる。アルキルトリアルコキシシラン類を用いることで、成分(A)中に含まれるチオール基の量を調整できる。テトラアルコキシチタン類、テトラアルコキシジルコニウム類などの金属アルコキシド類を用いることで、最終的に得られる紫外線硬化物の屈折率を高くすることができる。
【0018】
成分(a1)と成分(a2)とを併用する場合は、紫外線硬化性が良好となる点から、[成分(a1)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(a1)と成分(a2)との合計モル数](モル比:1分子あたりに含まれるチオール基の平均個数を示す)が0.2以上であることが好ましい。0.2未満である場合、得られる成分(A)中に含まれるチオール基の数が少なくなるため、紫外線硬化性が低下する。
【0019】
成分(A)の含有量は、紫外線硬化性樹脂組成物100質量部に対して、50~90質量部が好ましく、60~80質量部がより好ましい。成分(A)の含有量が前記下限値以上であると、硬化物の表面硬度をより高められる。成分(A)の含有量が前記上限値以下であると、スクラッチ傷に対する自己修復性をより高められる。
【0020】
(成分(B))
成分(B)は、炭素-炭素二重結合を2個以上有する化合物である。
本発明で用いられる成分(B)としては、アリル基を2個以上有する多官能アリル化合物が挙げられる。化合物(B)は、2~4個のアリル基を有する複素脂環式炭化水素及び2~4個のアリル基を有する脂環式炭化水素からなる群より選ばれる1種以上であるが、スクラッチ傷に対する自己修復性を発現しつつ、全光線透過率とヘーズの良好な硬化物を得られる点から、化合物(B)は、2~4個のアリル基を有する鎖式飽和炭化水素をさらに含むことが好ましい。
【0021】
また、化合物(B)は、スクラッチ傷に対する自己修復性を発現しつつ、表面硬度の高い硬化物を得られる点から、化合物(B)は、2~4個のアリル基を有する鎖式飽和炭化水素、2~4個のアリル基を有する複素脂環式炭化水素及び2~4個のアリル基を有する脂環式炭化水素からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、2~4個のアリルエステル基を有する鎖式飽和炭化水素、2~4個のアリルエーテル基を有する複素脂環式炭化水素、及び2~4個のアリルエステル基を有する脂環式炭化水素からなる群より選ばれる1種以上であることがより好ましく、クエン酸トリアリル、イソソルビドジアリルエーテル、シクロヘキセンジカルボン酸ジアリル、4-メチルヘキサヒドロフタル酸ジアリル、ヘキサヒドロフタル酸ジアリル、及びアジピン酸ジアリルからなる群より選ばれる1種以上であることがさらに好ましい。これらはいずれか単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
成分(A)のチオール基が、成分(B)の炭素-炭素二重結合と反応、すなわちエン-チオール反応をする。そのため、紫外線の照射により紫外線硬化性樹脂組成物を硬化し、硬化物を与える。
前記ポリシルセスキオキサン化合物(A)が含む前記式(1)で表される構成単位と、前記化合物(B)が含む炭素-炭素二重結合のうち少なくとも一方は3個以上である。
【0023】
本発明の紫外線硬化性樹脂組成物の調製に際しての成分(A)と成分(B)との使用割合は、前記組成物の硬化物の耐候性と臭気が良好となる点から、[成分(A)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数](モル比)が、0.9~1.1となるよう配合することが好ましく、より好ましくは1.0である。0.9未満である場合は、紫外線硬化後にも炭素-炭素2重結合が残存し、耐候性が低下する傾向がある。また、1.1を超える場合は、チオール基が残存し、その分解によって悪臭を発生させる場合がある。
【0024】
成分(B)の含有量は、紫外線硬化性樹脂組成物100質量部に対して、10~50質量部が好ましく、20~40質量部がより好ましい。成分(B)の含有量が前記下限値以上であると、スクラッチ傷に対する自己修復性をより高められる。成分(B)の含有量が前記上限値以下であると、硬化物の透明性(全光線透過率とヘーズ)や表面硬度をより高められる。
【0025】
成分(B)が2~4個のアリル基を有する鎖式飽和炭化水素(以下、成分(b1)ともいう)を有する場合、成分(b1)の含有量は、紫外線硬化性樹脂組成物100質量部に対して、5~30質量部が好ましく、10~20質量部がより好ましい。成分(b1)の含有量が前記下限値以上であると、硬化物の透明性をより高められる。成分(b1)の含有量が前記上限値以下であると、スクラッチ傷に対する自己修復性をより高められる。
【0026】
(光照射によりラジカルを発生する化合物)
紫外線硬化性樹脂組成物には、用途に応じ、光照射によりラジカルを発生する化合物(光ラジカル開始剤)を配合できる。光ラジカル開始剤としては、特に限定されず、従来公知の光ラジカル開始剤を任意に選択できる。光ラジカル開始剤としては、例えば、Omnirad184、Omnirad651、Omnirad907(商品名、いずれもIGM Resins B.V.社製)、ベンゾフェノン等があげられる。光ラジカル開始剤の含有量は、紫外線硬化性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.1~15質量部とされる。なお、得られる硬化物の耐候性低下が懸念される場合、特に高い耐候性、透明性が求められる光学部材などに用いられる場合には、光反応開始剤や光増感剤などの光ラジカル開始剤を使用しないほうがよい。
【0027】
(エン-チオール反応を抑制する化合物)
紫外線硬化性樹脂組成物には、安定性をより向上させるため、エン-チオール反応を抑制する化合物を配合できる。このような化合物としては、トリフェニルホスフィン、亜リン酸トリフェニル等のリン系化合物;p-メトキシフェノ-ル、ハイドロキノン、ピロガロ-ル、ナフチルアミン、tert-ブチルカテコ-ル、塩化第一銅、2、6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾ-ル、2、2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノ-ル)、2、2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノ-ル)、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、ジフェニルニトロソアミン等のラジカル重合禁止剤;ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアミノメチル)フェノール、ジアザビシクロウンデセン等の3級アミン類;2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-エチルへキシルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダール等のイミダゾール類が挙げられる。
【0028】
リン系化合物のうち、亜リン酸トリフェニルはエン-チオール反応の抑制効果が高く、かつ室温で液状であり、取り扱いが容易であるため好ましい。紫外線硬化性樹脂組成物に配合するリン系化合物の量は、エン-チオール反応の抑制効果及び硬化物の物性が良好となる点から、紫外線硬化性樹脂組成物100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましい。0.1質量部に満たない場合は、エン-チオール反応を抑制する効果が不足し、また10質量部を超える場合は、得られる硬化物中の残存量が多くなり硬化物の物性が低下する傾向がある。
【0029】
ラジカル重合禁止剤のうち、ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩は少量でもエン-チオール反応の抑制効果が高く、かつ得られる硬化物の色調に優れるため好ましい。紫外線硬化性樹脂組成物に配合するラジカル重合禁止剤の量は、エン-チオール反応の抑制効果及び紫外線硬化性樹脂組成物の硬化性が良好となる点から、紫外線硬化性樹脂組成物100質量部に対して、0.0001~0.1質量部であることが好ましい。0.0001質量部に満たない場合は、エン-チオール反応を抑制する効果が不足し、また0.1質量部を超える場合は、紫外線硬化性が低下する傾向がある。
【0030】
3級アミン類のうち、ベンジルジメチルアミンは少量でもエン-チオール反応の抑制効果が高く、かつ室温で液状であり、取り扱いが容易であるため好ましい。紫外線硬化性樹脂組成物に配合する3級アミン類の量は、エン-チオール反応の抑制効果及び成分(A)のゲル化防止効果が良好となる点から、紫外線硬化性樹脂組成物100質量部に対して、0.001~5質量部であることが好ましい。0.001質量部に満たない場合は、エン-チオール反応を抑制する効果が不足し、また5質量部を超える場合は、成分(A)が縮合反応してゲル化する傾向があるため好ましくない。
【0031】
(他の成分)
本発明に係る紫外線硬化性樹脂組成物では、成分(A)、成分(B)、光照射によりラジカルを発生する化合物、及びエン-チオール反応を抑制する化合物の他に、他の成分を添加してもよい。このような他の成分としては溶剤を挙げることができる。紫外線硬化性樹脂組成物をコーティング剤として用いる場合は、溶剤で希釈し、所望の粘度とすればよい。紫外線硬化性樹脂組成物中の成分(A)、成分(B)の固形分の濃度は、用途に応じて適宜に決定でき、必要に応じて溶剤を配合することができる。溶剤としては、従来公知のものを任意に用いることができる。なお、溶剤は、成分(A)、成分(B)、光照射によりラジカルを発生する化合物、エン-チオール反応を抑制する化合物に含まれていてもよい。
例えば、紫外線硬化性樹脂組成物を1mm以上の厚膜に硬化させる場合には、成分(A)、成分(B)の固形分の合計濃度を90質量%以上にすることが好ましく、95質量%以上にすることがより好ましい。前記合計濃度は、成分(A)及び(B)の固形分の濃度と紫外線硬化性樹脂組成物の仕込み時に加えた溶剤の量とにより計算で求めてもかまわないし、紫外線硬化性樹脂組成物に含まれる溶剤の沸点以上で2時間程度加熱し、加熱前後の質量変化により求めることもできる。前記コーティング剤用途では、成分(A)、成分(B)の固形分の合計濃度が90質量%未満の場合、硬化、成形時に発泡したり、硬化物中に溶剤が残存したりする等により、硬化物の物性が低下する傾向がある。また、紫外線硬化性樹脂組成物を調製した後、用いた溶剤を揮発させて、成分(A)、成分(B)の固形分の合計濃度を高めることもできる。
【0032】
紫外線硬化性樹脂組成物には、用途に応じ、前記成分(a1)及びその加水分解物(但し、縮合物は除く)[以下、併せて成分(C)ともいう]の1種以上を配合できる。成分(C)を含有する紫外線硬化性樹脂組成物を、ガラス、金属等の無機基材に対するコーティング剤として用いると、密着性をより向上できる利点がある。成分(C)の配合量は、無機基材への密着性及び紫外線硬化性樹脂組成物の厚膜硬化性(1mm以上の厚膜に硬化させること)が良好となる点から、紫外線硬化性樹脂組成物100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましい。0.1質量部未満の場合は、紫外線硬化性樹脂組成物の無機基材に対する密着性向上効果が不充分となる傾向がある。また、20質量部を超える場合、成分(C)が加水分解、縮合反応する際の揮発分が多くなるため、紫外線硬化性樹脂組成物が厚膜硬化できなくなる、又は得られる硬化物が脆くなる等の傾向がある。前記成分(C)としては、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランが、密着性向上効果の点で好ましい。
【0033】
紫外線硬化性樹脂組成物には、用途に応じ、エポキシ基含有化合物(D)(以下、成分(D)ともいう)を配合できる。成分(D)としては、従来公知のエポキシ基を持つ化合物を用いることができる。成分(D)を含有する紫外線硬化性樹脂組成物を、プラスチック等の有機基材に対するコーティング剤として用いると、有機基材に対する密着性をより向上できる利点がある。成分(D)は、成分(A)のチオール基と反応し、化学結合によって硬化物中に組み込まれ、前記硬化物の耐熱性等の物性低下を抑制できる利点がある。成分(D)がエポキシ基を2つ以上有する化合物である場合には、成分(A)との架橋密度が高くなり、物性低下が最小限となるため好ましい。紫外線硬化性樹脂組成物の有機基材に対する密着性、並びに紫外線硬化性樹脂組成物の保存安定性及び硬化性が良好となる点から、成分(D)の配合量は、紫外線硬化性樹脂組成物100質量部に対して、0.1~20質量部であり、かつ[成分(A)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数と成分(D)に含まれるエポキシ基のモル数との合計](モル比)が、0.9~1.1程度となるように配合することが好ましく、より好ましくは1.0である。成分(D)の配合量が0.1質量部に満たない場合は、有機基材に対する密着性向上効果が不充分となる傾向がある。成分(D)の配合量が20質量部を超える場合は、紫外線硬化性樹脂組成物の保存安定性が低下したり、紫外線硬化性が低下したりするなどの傾向がある。成分(D)のうち、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、エポキシ基を2個含有するものであり、かつ入手が容易であることより好ましい。
【0034】
紫外線硬化性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、各種用途での必要性に応じて、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤、粘度調節剤、フィラー等の添加剤をさらに配合してもよい。
添加剤を配合する場合、添加剤の配合量は、紫外線硬化性樹脂組成物100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましい。添加剤の配合量が前記下限値以上であると、紫外線硬化性樹脂組成物に添加剤の物性を付与できる。添加剤の配合量が前記上限値以下であると、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化性及び硬化物の透明性をより高められる。
【0035】
(透明材料)
本発明に係る紫外線硬化性樹脂組成物に紫外線を照射することにより硬化が進行し、硬化物を含む本発明の透明材料が得られる。紫外線としては、例えば、200nm~400nmの波長の光線を用いることができる。
【0036】
紫外線硬化性樹脂組成物を用いて所望の硬化物を調製するためには、前記組成物を所定の基材(無機基材又は有機基材)に塗布(コーティング)し、又は所定の型枠に充填し、溶剤を含む場合は前記溶剤を揮発させた後、紫外線を照射すればよい。溶剤の揮発方法は溶剤の種類、量、膜厚等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、40~150℃、好ましくは60~100℃に加熱し、常圧又は減圧下で5秒~2時間の条件を挙げることができる。紫外線の照射量は、紫外線硬化性樹脂組成物の種類、膜厚等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、積算光量が50~10000mJ/cmとなるよう照射すればよい。また、厚膜でコーティングや充填を行った場合には、前述のように前記組成物に光反応開始剤や光増感剤を添加することにより、光硬化性を向上させることができる。
【0037】
また、紫外線照射して得られた硬化物を、さらに加熱することで、硬化物の物性を一層向上させることができる。加熱の方法は、適宜決定すればよいが、例えば、40~300℃、好ましくは100~250℃に加熱し、1分~6時間の条件を挙げることができる。
【0038】
(紫外線硬化性樹脂組成物のコーティング剤への適用)
スクラッチ傷に対する自己修復性が良好となる点から、本発明の塗装物品は、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物であるコーティング層を基材上に有することが好ましい。
紫外線硬化性樹脂組成物を所望の基材にコーティングし、紫外線硬化させることでコーティング層を得ることができる。基材としては、ガラス、鉄、アルミ、銅、ITO等の無機基材、PE、PP、PET、PEN、PMMA、PSt、PC、ABS等の有機基材など、各種公知のものを使用できる。無機基材へ前記組成物をコーティングする際、密着性が不足する場合には、前記成分(C)を併用することが好ましい。また、有機基材へ前記組成物をコーティングする際、密着性が不足する場合には、前記成分(D)を併用することが好ましい。また、紫外線硬化性樹脂組成物を溶剤希釈することで、コーティング性をある程度向上させることもできる。前記紫外線硬化性樹脂組成物をコーティングし、紫外線硬化させることで、自動車の内外装用プラスチック、内外装用建材、導光板、偏光板、液晶パネル、ELパネル、PDPパネル、OHPフィルム、光ファイバー、カラーフィルター、光ディスク基板、レンズ、液晶セル用プラスチック基板、プリズム等にコーティング層を形成させることができる。
【0039】
(本発明が効果を奏する理由)
本発明が効果を奏する理由は、未だ明らかではないが、以下のように推察される。本発明では、エン-チオール反応を用いた紫外線硬化性樹脂組成物において、炭素-炭素二重結合を有する化合物として有機化合物を、チオール基を有する化合物としてポリシルセスキオキサン化合物をそれぞれ用いている。前記ポリシルセスキオキサン化合物が有するチオール基と、前記有機化合物が有する炭素-炭素二重結合のうち少なくとも一方は3個以上であるため、エン-チオール反応によりポリシルセスキオキサンと有機化合物からなる網目構造を有する硬化物が形成する。有機化合物の炭素骨格はポリシルセスキオキサンの無機(シロキサン;Si-O)骨格よりも柔軟である。前記紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は、これらの柔軟な構造単位と剛直な構造単位とが分子スケールで混合された状態で結合しているため、この構造が弾性体のように働き、弾性変形に対して外力を加えることなく元の形状に戻ることができる。このため、前記紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物は、スクラッチ傷に対する自己修復性を示したものと推察される。
【実施例0040】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書中に表示される種々の測定値の測定方法及び評価は次のようにして行った。
【0041】
<塗装物品の評価>
(1)硬化性
照射直後及び光照射10秒後の硬化物を指触することにより、タックの有無で塗装物品の硬化性を評価した。タックなしの場合は「良」、タック有りの場合は「不可」と評価した。
【0042】
(2)透明性
透明性は全光線透過率及びヘーズをJIS K 7136に準拠して、日本電色工業(株)製のヘーズメーター、商品名「NDH2000」を用いて測定して、塗装物品の透明性を評価した。全光線透過率が90%以上の場合は「〇」、80%以上90%未満の場合は「△」、80%未満の場合は「×」とし、ヘーズ値が1%未満の場合は「〇」、1%以上5%以下の場合は「△」、5%を超える場合は「×」とした。総合的に、全光線透過率とヘーズのいずれも「〇」の場合は「良」、いずれかが「△」又は「×」の場合は「不可」とした。
【0043】
(3)基材への密着性
JIS K 5600によるクロスカット法に準拠して基材への密着性を評価した。評価結果もJIS K 5600に準じて「0」~「5」の6段階で評価した。
【0044】
(4)表面硬度
JIS K 5600による鉛筆法に準拠して塗装物品の表面硬度を評価した。鉛筆としては日本塗料検査協会検定の三菱鉛筆(株)製の鉛筆を用い、荷重は760gとした。なお、コーティング層にタックがある場合やコーティング層の基材への密着性がなく、評価が行えない場合には「評価不可」とした。
【0045】
(5)スクラッチ傷の修復性
JIS K 5600による鉛筆法に準拠した塗装物品の表面硬度の評価において、コーティング層の表面硬度と同じ又は一段階硬度の低い硬度の鉛筆を用いて評価を行い、その際にコーティング層に生じたスクラッチ傷が元に戻るまでの時間を測定することで塗装物品のスクラッチ傷の修復性を評価した。スクラッチ傷の修復性は、生じたスクラッチ傷が元に戻るまでの時間が30分未満を「優」、30分以上2時間以下を「良」、2時間よりも長く6時間以下を「可」、6時間より時間が経過しても元に戻らない場合を「不可」とした。なお、コーティング層にタックがある場合やコーティング層の基材への密着性がなく、評価が行えない場合には「評価不可」とした。
【0046】
<使用した原料>
実施例、比較例で用いた原料は以下の通りである。
(成分(A))
コンポセラン(登録商標)SQ107(荒川化学工業(株)製。エチレングリコールジメチルエーテル(DMG)を24質量%、トルエンを4質量%含有。固形分濃度は72質量%。)、コンポセラン(登録商標)HBSQ106(荒川化学工業(株)製。エチレングリコールジメチルエーテル(DMG)を24質量%、トルエンを4質量%含有。固形分濃度は72質量%。)、コンポセラン(登録商標)HBSQ183(荒川化学工業(株)製。エチレングリコールジメチルエーテル(DMG)を18質量%、トルエンを10質量%含有。固形分濃度は72質量%。)。
(チオール基を2個以上有する有機化合物)
ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学(株)製、商品名「PEMP」)、トリメチロールプロパン トリス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学(株)製、商品名「TMMP」)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート(SC有機化学(株)製、商品名「TEMPIC」)。
(成分(B))
クエン酸トリアリル(富士フイルムワコーケミカル(株)製)、イソソルビドジアリルエーテル((株)大阪ソーダ製)、シクロヘキセンジカルボン酸ジアリル((株)大阪ソーダ製)、4-メチルヘキサヒドロフタル酸ジアリル((株)大阪ソーダ製)、ビスフェノールAジアリルエーテル((株)大阪ソーダ製)、水素化ビスフェノールAジアリルエーテル((株)大阪ソーダ製)、トリメリット酸トリアリル(Fluorochem Ltd.製)、フタル酸ジアリル(東京化成工業(株)製)、シアヌル酸トリアリル(東京化成工業(株)製)、ヘキサヒドロフタル酸ジアリル(富士フイルムワコーケミカル(株)製)、アジピン酸ジアリル(東京化成工業(株)製)、1,3-ジアリルオキシ-2-プロパノール(富士フイルムワコーケミカル(株)製)、2,2-ビス(アリルオキシメチル)-1-ブタノール (モノ-,トリ-置換体含む)(東京化成工業(株)製)。
(光ラジカル開始剤)
Omnirad184(IGM Resins B.V.社製)。
【0047】
(実施例1)
コンポセラン(登録商標)SQ107を63.2質量部と、イソソルビドジアリルエーテルを17.4質量部、ヘキサヒドロフタル酸ジアリルを19.4質量部([成分(A)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数](モル比)=1.0)とを混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。得られた紫外線硬化性樹脂組成物をPMMA板上に、硬化後膜厚が約50μmとなるようコーティングし、80℃で10分間溶剤を乾燥させた。乾燥後、高圧水銀灯を用いて365nmの紫外線検出器で積算光量が1400mJ/cmとなるよう紫外線を照射し、塗装物品を得た。得られた塗装物品について各種評価を行い、評価結果を表3に示す。
【0048】
(実施例2)
コンポセラン(登録商標)SQ107を64.6質量部と、イソソルビドジアリルエーテルを17.7質量部、アジピン酸ジアリルを17.7質量部([成分(A)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数](モル比)=1.0)とを混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。得られた紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に塗装物品の作製と評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0049】
(実施例3)
コンポセラン(登録商標)SQ107を66.4質量部と、クエン酸トリアリルを33.6質量部([成分(A)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数](モル比)=1.0)とを混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。得られた紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に塗装物品の作製と評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0050】
(実施例4)
コンポセラン(登録商標)SQ107を64.6質量部と、イソソルビドジアリルエーテルを35.4質量部([成分(A)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数](モル比)=1.0)とを混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。得られた紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に塗装物品の作製と評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0051】
(実施例5)
実施例4において、紫外線硬化性樹脂組成物の調製にあたり、光ラジカル開始剤としてOmnirad184を前記組成物100質量部に対して0.1質量部加えた以外は実施例4と同様に、紫外線硬化性樹脂組成物を調製し、塗装物品の作製と評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0052】
(実施例6)
コンポセラン(登録商標)SQ107を71.2質量部と、シクロヘキセンジカルボン酸ジアリルを28.8質量部([成分(A)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数](モル比)=1.0)とを混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。得られた紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に塗装物品の作製と評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0053】
(実施例7)
コンポセラン(登録商標)SQ107を60.7質量部と、4-メチルヘキサヒドロフタル酸ジアリルを39.3質量部([成分(A)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数](モル比)=1.0)とを混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。得られた紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に塗装物品の作製と評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0054】
(実施例8)
コンポセラン(登録商標)SQ107を62.1質量部と、ヘキサヒドロフタル酸ジアリルを37.9質量部([成分(A)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数](モル比)=1.0)とを混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。得られた紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に塗装物品の作製と評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0055】
(実施例9)
コンポセラン(登録商標)HBSQ183を67.0質量部と、ヘキサヒドロフタル酸ジアリルを33.0質量部([成分(A)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数](モル比)=1.0)とを混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。得られた紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に塗装物品の作製と評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0056】
(実施例10)
コンポセラン(登録商標)HBSQ183を74.5質量部と、ヘキサヒドロフタル酸ジアリルを25.5質量部([成分(A)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数](モル比)=1.0)とを混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。得られた紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に塗装物品の作製と評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0057】
(実施例11)
コンポセラン(登録商標)HBSQ183を75.6質量部と、シクロヘキセンジカルボン酸ジアリルを24.4質量部([成分(A)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数](モル比)=1.0)とを混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。得られた紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に塗装物品の作製と評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0058】
(実施例12)
コンポセラン(登録商標)HBSQ106を69.4質量部と、アジピン酸ジアリルを30.6質量部([成分(A)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数](モル比)=1.0)とを混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。得られた紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に塗装物品の作製と評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0059】
(実施例13)
コンポセラン(登録商標)SQ107を70.6質量部と、1,3-ジアリルオキシ-2-プロパノールを29.4質量部([成分(A)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数](モル比)=1.0)とを混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。得られた紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に塗装物品の作製と評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0060】
(実施例14)
コンポセラン(登録商標)HBSQ106を74.9質量部と、1,3-ジアリルオキシ-2-プロパノールを25.1質量部([成分(A)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数](モル比)=1.0)とを混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。得られた紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に塗装物品の作製と評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0061】
(実施例15)
コンポセラン(登録商標)HBSQ106を70.6質量部と、2,2-ビス(アリルオキシメチル)-1-ブタノール (モノ-,トリ-置換体含む)を29.4質量部([成分(A)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数](モル比)=1.0)とを混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。得られた紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に塗装物品の作製と評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0062】
(比較例1)
コンポセラン(登録商標)SQ107を62.6質量部と、フタル酸ジアリルを37.4質量部([成分(A)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数](モル比)=1.0)とを混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。得られた紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に塗装物品の作製と評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0063】
(比較例2)
コンポセラン(登録商標)SQ107を57.2質量部と、ビスフェノールAジアリルエーテルを42.8質量部([成分(A)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数](モル比)=1.0)とを混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。得られた紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に塗装物品の作製と評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0064】
(比較例3)
比較例2において、紫外線硬化性樹脂組成物の調製にあたり、光ラジカル開始剤としてOmnirad184を前記組成物100質量部に対して0.1質量部加えた以外は比較例2と同様に、紫外線硬化性樹脂組成物を調製し、塗装物品の作製と評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0065】
(比較例4)
コンポセラン(登録商標)SQ107を56.9質量部と、水素化ビスフェノールAジアリルエーテルを43.1質量部([成分(A)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数](モル比)=1.0)とを混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。得られた紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に塗装物品の作製と評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0066】
(比較例5)
コンポセラン(登録商標)SQ107を65.2質量部と、トリメリット酸トリアリルを34.8質量部([成分(A)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数](モル比)=1.0)とを混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。得られた紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に塗装物品の作製と評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0067】
(比較例6)
コンポセラン(登録商標)SQ107を71.3質量部と、シアヌル酸トリアリルを28.7質量部([成分(A)に含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数](モル比)=1.0)とを混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。得られた紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に塗装物品の作製と評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0068】
(比較例7)
PEMPを54.0質量部と、クエン酸トリアリルを46.0質量部([PEMPに含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数](モル比)=1.0)とを混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。得られた紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に塗装物品の作製と評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0069】
(比較例8)
TMMPを56.1質量部と、クエン酸トリアリルを43.9質量部([TMMPに含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数](モル比)=1.0)とを混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。得られた紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に塗装物品の作製と評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0070】
(比較例9)
TEMPICを62.7質量部と、クエン酸トリアリルを37.3質量部([TEMPICに含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数](モル比)=1.0)とを混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。得られた紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に塗装物品の作製と評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0071】
(比較例10)
PEMPを51.9質量部と、イソソルビドジアリルエーテルを48.1質量部([PEMPに含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数](モル比)=1.0)とを混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。得られた紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に塗装物品の作製と評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0072】
(比較例11)
TMMPを54.0質量部と、イソソルビドジアリルエーテルを46.0質量部([TMMPに含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数](モル比)=1.0)とを混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。得られた紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に塗装物品の作製と評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0073】
(比較例12)
TEMPICを61.0質量部と、イソソルビドジアリルエーテルを39.0質量部([TEMPICに含まれるチオール基のモル数]/[成分(B)に含まれる炭素-炭素2重結合のモル数](モル比)=1.0)とを混合し、紫外線硬化性樹脂組成物を得た。得られた紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に塗装物品の作製と評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
表1~4より、本発明で規定した成分からなる紫外線硬化性樹脂組成物は、その硬化物のすべての評価で優れ、かつスクラッチ傷の修復性を示していることが確認できた(実施例1~15)。これに対して、本発明で規定する要素を満足していないものは、その硬化物の評価において、基材への密着性、表面硬度、スクラッチ傷の修復性のいずれか1つ以上が劣ることが確認できた(比較例1~12)。
【0079】
具体的には、本発明で規定した成分(B)を含有していないと、その硬化物の評価において、硬化性、透明性、基材への密着性、表面硬度のいずれかに劣っており(比較例1~5)、硬化性、透明性、基材への密着性、表面硬度を満たしていたとしてもスクラッチ傷の修復性を示さない(比較例6)。また、本発明で規定した成分(A)を含有していないと、その硬化物の評価において、硬化性、透明性、基材への密着性、表面硬度のいずれかに劣る(比較例7~12)。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、エン-チオール反応による紫外線硬化性を活用するとともに、スクラッチ傷に対する自己修復性を有する硬化物を提供しうる紫外線硬化性樹脂組成物を提供できる。また、本発明の紫外線硬化性樹脂組成物は、コーティング剤として有用である。
したがって、本発明の紫外線硬化性樹脂組成物は、コーティング剤の分野において好適に利用でき、産業上極めて重要である。