(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140332
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】放送送出装置及び放送受信装置
(51)【国際特許分類】
H04N 21/2389 20110101AFI20220915BHJP
H04N 21/236 20110101ALI20220915BHJP
H04N 21/2347 20110101ALI20220915BHJP
H04H 20/28 20080101ALI20220915BHJP
H04H 20/95 20080101ALI20220915BHJP
【FI】
H04N21/2389
H04N21/236
H04N21/2347
H04H20/28
H04H20/95
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031190
(22)【出願日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2021039626
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】西村 敏
(72)【発明者】
【氏名】袴田 千草
(72)【発明者】
【氏名】梶田 海成
(72)【発明者】
【氏名】大竹 剛
(72)【発明者】
【氏名】松村 欣司
(72)【発明者】
【氏名】山本 正男
【テーマコード(参考)】
5C164
【Fターム(参考)】
5C164FA04
5C164PA02
5C164SB03P
5C164SB11P
5C164SB25P
5C164UB03S
5C164UB11S
5C164UB24S
(57)【要約】
【課題】MMTを用いるデジタル放送システムにおいて、部分的にスクランブルされたコンテンツを効率的に伝送可能とする。
【解決手段】多重化方式としてMMTを用いるデジタル放送システムのための放送送出装置100は、映像又は音声の放送コンテンツのストリームから抽出されたサブサンプルにスクランブルの対象であるスクランブル部が含まれる場合、スクランブル部に対してスクランブルを施すスクランブル手段140と、スクランブルが施されたスクランブル部とスクランブルが施されていない非スクランブル部とを含むサブサンプルをMMTPパケットのペイロードに格納する場合、当該スクランブル部及び当該非スクランブル部ののうち、当該MMTPパケットのペイロードに格納される分割範囲のそれぞれの長さ情報を含むスクランブル範囲情報を当該MMTPパケットのヘッダー部に配置する多重化手段150とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重化方式としてMMTを用いるデジタル放送システムのための放送送出装置であって、
映像又は音声の放送コンテンツのストリームから抽出されたサブサンプルにスクランブルの対象であるスクランブル部が含まれる場合、前記スクランブル部に対してスクランブルを施すスクランブル手段と、
前記スクランブルが施された前記スクランブル部とスクランブルが施されていない非スクランブル部とを含む前記サブサンプルをMMTPパケットのペイロードに格納する場合、当該スクランブル部及び当該非スクランブル部のうち、当該MMTPパケットのペイロードに格納される分割範囲のそれぞれの長さ情報を含むスクランブル範囲情報を当該MMTPパケットのヘッダー部に配置する多重化手段と、
を備えることを特徴とする放送送出装置。
【請求項2】
前記多重化手段は、前記スクランブル範囲情報を、MMT方式のヘッダー拡張を用いて前記ヘッダー部の拡張領域に配置する
ことを特徴とする請求項1に記載の放送送出装置。
【請求項3】
前記サブサンプルのうち前記スクランブル部のみで構成される分割範囲を前記ペイロードに格納する場合、前記多重化手段は、前記スクランブル範囲情報を前記ヘッダー部に配置せずに、当該分割範囲を前記ペイロードに含むスクランブル有りのMMTPパケットを生成し、
前記サブサンプルのうち非スクランブル部のみで構成される分割範囲を前記ペイロードに格納する場合、前記多重化手段は、前記スクランブル範囲情報を前記ヘッダー部に配置せずに、当該分割範囲を前記ペイロードに含むスクランブル無しのMMTPパケットを生成する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の放送送出装置。
【請求項4】
複数の前記サブサンプル、あるいは、サブサンプルのうちMMTPパケットに格納される分割範囲を前記ペイロードに格納する場合であって、且つ、当該複数のサブサンプルのいずれかが前記スクランブル部を含み、当該複数のサブサンプルのいずれかが前記非スクランブル部を含む場合、前記多重化手段は、当該複数のサブサンプルに対応する複数の前記スクランブル範囲情報を前記ヘッダー部に配置する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放送送出装置。
【請求項5】
前記放送コンテンツは、圧縮符号化された映像データを含み、
前記非スクランブル部は、前記圧縮符号化された映像データに含まれる情報であって、受信側の映像デコーダの動作を管理するための情報を含む
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の放送送出装置。
【請求項6】
前記放送コンテンツのストリームから抽出されたサンプルが複数のサブサンプルで構成されている場合、当該サンプルの最後を除くサブサンプルのスクランブル部の長さを0もしくはスクランブルに用いる暗号鍵長の整数倍とし、当該サブサンプルのMMTPパケットのペイロードに格納される分割範囲がスクランブル部を含み、且つ当該分割範囲が当該サンプルの最後のサブサンプルの最終バイトを含まない場合、当該スクランブル部の長さが暗号鍵長の整数倍である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の放送送出装置。
【請求項7】
多重化方式としてMMTを用いるデジタル放送システムのための放送受信装置であって、
ヘッダー部にスクランブル範囲情報が配置されたMMTPパケットを受信した場合、前記スクランブル範囲情報に含まれる長さ情報を用いて、サブサンプルにおける当該MMTPパケットのペイロードに格納される分割範囲のうちスクランブルが施されたスクランブル部と前記分割範囲のうちスクランブルが施されていない非スクランブル部とを前記MMTPパケットのペイロードから取得する分離手段と、
前記スクランブル部に対してスクランブル復号を施すスクランブル復号手段と、
前記非スクランブル部と、前記スクランブル復号が施された前記スクランブル部とに含まれる放送コンテンツを圧縮復号することで再生する再生手段と、
を備えることを特徴とする放送受信装置。
【請求項8】
前記スクランブル範囲情報は、MMT方式のヘッダー拡張を用いて前記ヘッダー部の拡張領域に配置されている
ことを特徴とする請求項7に記載の放送受信装置。
【請求項9】
前記分離手段は、前記ヘッダー部に複数の前記スクランブル範囲情報が配置された前記MMTPパケットを受信した場合、当該複数のスクランブル範囲情報のそれぞれに含まれる前記長さ情報を用いて、前記スクランブル部と前記非スクランブル部との複数のセットを前記ペイロードから取得する
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の放送受信装置。
【請求項10】
前記放送コンテンツは、圧縮符号化された映像データであり、
前記再生手段は、映像デコーダを含み、
前記非スクランブル部は、前記映像デコーダの動作を管理するための情報を含む
ことを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の放送受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル放送システムのための放送送出装置及び放送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のデジタル放送では、有料放送において契約者のみに放送を限定して受信させる限定受信方式、及び無料放送用のコンテンツ保護方式が用いられている。中でも多重化方式としてMMT(MPEG Media Transport、ISO/IEC 23008-1)を用いるデジタル放送のアクセス制御方式では、放送コンテンツを伝送するMMTPパケットにおけるMMTPペイロードのデータ部分を範囲として、MMTPパケット単位でスクランブルが施される(非特許文献1参照)。
【0003】
ところで、放送コンテンツや通信コンテンツで利用されるH.264/AVCやH.265/HEVCなどの映像圧縮方式では、映像ストリームはNAL(Network Abstraction Layer)ユニット形式であり、先頭32ビットにNALユニット長が、次の1バイトにはNALユニットのタイプが記述されている。NALユニットのタイプには、VPS、SPS、PPS、SEIなどの非VCL(Video Coding Layer)NALユニットや、映像データを含むVCLユニットがある。VPS、SPS、PPS、SEIは、映像ストリームを復号するために必要な情報である。受信側の映像再生アプリケーションは、この非VCL NALユニットや、VCL NALユニットのスライスヘッダーの情報から、映像のサイズ、フレームレートやバッファ量など映像デコーダの動作を管理するための情報を得ている。
【0004】
そのため、通信コンテンツのスクランブルに用いられるCENC(MPEG Common Encryption: ISO/IEC 23001-7)においては、映像再生アプリケーションが、スクランブルされたコンテンツに対してスクランブル復号を施す前であっても、非VCL NALユニットやVCL NALユニットのスライスヘッダーの情報にアクセスできるように、それらの情報のみをスクランブルせずに伝送する仕様を定めている(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ARIB STD-B61 「デジタル放送におけるアクセス制御方式(第2世代)及びCASプログラムのダウンロード方式」 第一編 「アクセス制御方式(第2世代)」
【非特許文献2】ISO/IEC 23001-07 「Information technology-MPEG systems technologies-Part7:Common encryption in ISO base media file format files」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
MMTを用いるデジタル放送では、前述の通り、MMTPパケット化する際に、ペイロードに格納される映像ストリーム全体にスクランブルが施されるため、非スクランブル部及びスクランブル部を一つのペイロードに含むことはできなかった。
【0007】
VCL NALユニットのうち、スクランブルをかけないスライスヘッダーのみをスクランブル無しのMMTPパケットで伝送し、残りのスライスデータをスクランブル有りのMMTPパケットで伝送するといったように、非スクランブル部及びスクランブル部を別々のMMTPパケットとして伝送することは可能である。しかし、スライスヘッダーのバイト数が小さいため、多重化効率が低下し得る。
【0008】
そこで、本発明は、MMTを用いるデジタル放送システムにおいて、部分的にスクランブルされたコンテンツを効率的に伝送可能とする放送送出装置及び放送受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様に係る放送送出装置は、多重化方式としてMMTを用いるデジタル放送システムのための放送送出装置であって、映像又は音声の放送コンテンツのストリームから抽出されたサブサンプルにスクランブルの対象であるスクランブル部が含まれる場合、前記スクランブル部に対してスクランブルを施すスクランブル手段と、前記スクランブルが施された前記スクランブル部とスクランブルが施されていない非スクランブル部とを含む前記サブサンプルをMMTPパケットのペイロードに格納する場合、当該スクランブル部及び当該非スクランブル部のうち、当該MMTPパケットのペイロードに格納される分割範囲のそれぞれの長さ情報を含むスクランブル範囲情報を当該MMTPパケットのヘッダー部に配置する多重化手段と、を備えることを要旨とする。
【0010】
第2の態様に係る放送受信装置は、多重化方式としてMMTを用いるデジタル放送システムのための放送受信装置であって、ヘッダー部にスクランブル範囲情報が配置されたMMTPパケットを受信した場合、前記スクランブル範囲情報に含まれる長さ情報を用いて、サブサンプルにおける当該MMTPパケットのペイロードに格納される分割範囲のうちスクランブルが施されたスクランブル部と前記サブサンプルにおける当該MMTPパケットのペイロードに格納される分割範囲のうちスクランブルが施されていない非スクランブル部とを前記MMTPパケットのペイロードから取得する分離手段と、前記スクランブル部に対してスクランブル復号を施すスクランブル復号手段と、前記非スクランブル部と、前記スクランブル復号が施された前記スクランブル部とに含まれる放送コンテンツを圧縮復号することで再生する再生手段と、を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、MMTを用いるデジタル放送システムにおいて、部分的にスクランブルされたコンテンツを効率的に伝送可能とする放送送出装置及び放送受信装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係るデジタル放送システムの構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係る放送送出装置の構成を示す図である。
【
図3】実施形態に係る放送送出装置の動作を説明するための図である。
【
図4】実施形態に係るスクランブル部を運ぶMMTPパケットの構成を示す図である。
【
図5】実施形態に係るスクランブル関連情報マルチタイプヘッダー拡張の具体例を示す図である。
【
図6】実施形態に係るスクランブル範囲情報マルチタイプヘッダー拡張の具体例を示す図である。
【
図7】実施形態に係る放送受信装置の構成を示す図である。
【
図8】実施形態に係る多重化方法を示すフロー図である(その1)。
【
図9】実施形態に係る多重化方法を示すフロー図である(その2)。
【
図10】実施形態に係るデジタル放送システムの変形例を示す図である。
【
図11】変更例に係るデジタル放送システムにおける多重化方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して実施形態について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。
【0014】
(デジタル放送システム)
まず、本実施形態に係るデジタル放送システムについて説明する。
図1は、本実施形態に係るデジタル放送システム1の構成を示す図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係るデジタル放送システム1は、ARIB規格に基づく放送システムであって、放送送出装置100と、放送受信装置200とを有する。
【0016】
放送送出装置100は、部分的にスクランブルされた放送コンテンツを送出する装置である。放送コンテンツは、映像・音声などのメディアデータである。放送送出装置100は、例えば放送局に設けられる。本実施形態において、放送送出装置100は、部分的にスクランブルされた放送コンテンツを、ARIB STD-B60の規格に基づいてMMTP化したストリームとして伝送する。
【0017】
放送受信装置200は、放送伝送路10を介して放送コンテンツを受信する装置である。放送伝送路10は、いずれの放送の伝送路であってもよいが、例えば地上放送、衛星放送、ケーブル放送などの伝送路である。放送受信装置200は、チューナーなどの放送受信機能を搭載しており、ARIB STD-B60の規格に基づいて受信コンテンツに対するスクランブル復号を施し、放送コンテンツを再生する。
【0018】
(放送送出装置)
次に、本実施形態に係る放送送出装置100について説明する。
図2は、本実施形態に係る放送送出装置100の構成を示す図である。
図3は、本実施形態に係る放送送出装置100の動作を説明するための図である。
【0019】
図2に示すように、本実施形態に係る放送送出装置100は、サンプル化手段110と、サブサンプル化手段120と、ユニット化手段130と、スクランブル手段140と、多重化手段150とを有する。
【0020】
サンプル化手段110は、
図3(a)及び(b)に示すように、映像又は音声の放送コンテンツのストリームを例えば1フレーム毎のサンプルに分割する。放送コンテンツは、例えば、H.264|MPEG-4 AVC(Advanced Video Coding)、H.265|MPEG-H HEVC(High Efficiency Video Coding)といった映像符号化方式により圧縮符号化されたNAL(Network Abstraction Layer)構造の映像ストリームや、MPEG-4 AAC(Advanced Audio Coding)等の音声ストリームなどを含むものとする。
【0021】
サブサンプル化手段120は、
図3(c)及び(d)に示すように、サンプルを、一対の非スクランブル部・スクランブル部の組み合わせ、或いはいずれか一方のみからなる複数のサブサンプルに分割する。この時、サブサンプル化手段120は、NAL構造の映像フレームにおいては、例えばVCL(Video Coding Layer)NALユニットの前に配置された複数の非VCL(Video Coding Layer)NALユニットや、VCL NALユニットスライスヘッダーまでの情報を含む部分を非スクランブル部とし、VCL NALユニットのスライスデータをスクランブル部とすることができる。
図3においては、各サンプルを3つのサブサンプルに分割する一例を示しているが、サブサンプル分割数は、1又は2であってもよいし、4以上であってもよい(ユニットに収まるように分割したサブサンプルの一部を「分割範囲」と呼ぶ)。
【0022】
但し、サブサンプル化手段120は任意の位置を非スクランブル部・スクランブル部に分類してもよいし、非VCLユニットとVCLユニットを別のサブサンプルとしてもよい。
図3(d)において、各サブサンプルが非スクランブル部とスクランブル部とのセットを含む一例を示しているが、非スクランブル部のみで構成されるサブサンプルが存在してもよいし、スクランブル部のみで構成されるサブサンプルが存在してもよい。
【0023】
ユニット化手段130は、
図3(e)に示すように、各サブサンプルを、予め設定したMMTPパケットのサイズ(例えば1400バイト)を超えないように分割したり、MMTPパケットサイズよりも小さい連続する複数のサブサンプルをMMTPパケットのサイズを超えないように纏めることによりユニット化する。
図3(e)においては、1つのサブサンプルを2つのユニットに分割する一例と、2つのサブサンプルを1つのユニットに纏める一例を示している。
【0024】
スクランブル手段140は、別途設定する暗号鍵を用いて、例えばAES 128ビットCTRモードにより、各ユニットのスクランブル部に順次スクランブルを施す。スクランブルに関しては、ユニットの先頭から順次スクランブル部を16バイト毎のブロックに分割し(ユニットの最後もしくはサブサンプルの最後のブロックは16バイト未満となる場合もある)、ブロック毎に暗号鍵と、MMTスクランブル初期値にカウンタ値を加算した値とを用いてスクランブルを施す。カウンタ値は、ユニットの最初のブロックでは0であり、ユニット内の全てのブロックのスクランブルが終わるまで継続してブロック毎に1ずつインクリメントされる。
【0025】
多重化手段150は、MMTに基づく多重化を行う。多重化手段150は、
図3(e)及び(f)に示すように、1つのユニットをペイロードに含むMMTPパケットを順次生成し、これらのMMTPパケットを1本のストリームに多重化して送出する。なお、
図3(f)に示すように、MMTPパケットのヘッダー部には、MMT方式のヘッダー拡張による拡張ヘッダー領域を設けることができる。特に、ARIB規格では、ヘッダー拡張のARIB固有の仕様としてマルチタイプヘッダー拡張が規定されている。
【0026】
図4は、本実施形態に係るスクランブル部を運ぶMMTPパケットの構成を示す図である。
図4(a)はペイロードに格納されるユニットがスクランブル部のみで構成されるスクランブルMMTPパケットを示し、
図4(b)はペイロードに格納されるユニットが非スクランブル部及びスクランブル部で構成される部分的スクランブルMMTPパケットを示す。
【0027】
図4(a)及び(b)に示すように、多重化手段150は、スクランブル部を運ぶMMTPパケットのヘッダー部に、スクランブルに関する情報を含むスクランブル関連情報マルチタイプヘッダー拡張を配置する。多重化手段150は、スクランブル部を運ばないMMTPパケット(非スクランブルMMTPパケット)のヘッダー部には、スクランブル関連情報マルチタイプヘッダー拡張を配置しなくてもよい。
【0028】
図4(b)に示すように、多重化手段150は、スクランブルが施されたスクランブル部と非スクランブル部とを含むサブサンプルあるいはその分割範囲をMMTPパケットのペイロードに格納する場合、当該スクランブル部及び当該非スクランブル部のそれぞれの長さ情報を含むスクランブル範囲情報を当該MMTPパケットのヘッダー部に配置する。本実施形態において、多重化手段150は、スクランブル範囲情報を、マルチタイプヘッダー拡張を用いてヘッダー部の拡張領域(拡張ヘッダー領域)に配置するものとする。このようなマルチタイプヘッダー拡張を「スクランブル範囲情報マルチタイプヘッダー拡張」と呼ぶこととする。
【0029】
図4(b)に示す例において、非スクランブル部の長さがaバイトであって、スクランブル部の長さがbバイトである。この場合、多重化手段150は、非スクランブル部の長さがaバイトであって、スクランブル部の長さがbバイトである旨の長さ情報をスクランブル範囲情報マルチタイプヘッダー拡張に含める。1つのMMTPパケットのペイロードが複数のサブサンプルを含み、いずれかのサブサンプルが非スクランブル部を含み、かついずれかのサブサンプルがスクランブル部を含む場合、多重化手段150は、当該複数のサブサンプルと同数のスクランブル範囲情報マルチタイプヘッダー拡張を当該MMTPパケットのヘッダー部に設ける。スクランブル範囲情報マルチタイプヘッダー拡張の具体例については後述する。
【0030】
図5は、本実施形態に係るスクランブル関連情報マルチタイプヘッダー拡張の具体例を示す図である。なお、
図5の一部は、ARIB STD-B61 2.3版 第一編 第 1 部
図3-1を引用している。
【0031】
図5に示すように、ARIB B61に基づき、マルチ拡張ヘッダータイプを0x0001としている。ユニットがサブサンプルもしくはその分割範囲の非スクランブル部のみで構成される場合、多重化手段150は、マルチタイプヘッダー拡張のMMTPスクランブル制御ビットを0x00とするか、又はマルチタイプヘッダー拡張を利用しないことで、当該MMTPパケットにスクランブルを施されていないことを示す。
【0032】
一方、ユニットがスクランブル部を含む一つ或いは複数のサブサンプルで構成される場合、多重化手段150は、マルチタイプヘッダー拡張のMMTPスクランブル制御ビットを0x10(スクランブル有り・偶数鍵)又は0x11(スクランブル有り・奇数鍵)とすることでスクランブルが施されていることを示す。
【0033】
また、多重化手段150は、スクランブルの初期値情報であるMMTスクランブル初期値については、MMTスクランブル初期値制御ビットを0x00とし、ARIB TR-B39第5編第4章4.5節に記載の初期カウンタ値生成方法に基づいてMMTスクランブル初期値を決定してもよい。或いは、多重化手段150は、MMTスクランブル初期値制御ビットを0x01としたうえで、MMTスクランブル初期値情報として、別途決定した当該ユニットのスクランブル初期値のデータを記述してもよい。なお、現在使用している暗号鍵が奇数鍵か偶数鍵であるかは、ECM(Entitlement Control Message)等により別途識別するものとする。ECMについては、ARIB STD-B61に詳しい。
【0034】
図6は、本実施形態に係るスクランブル範囲情報マルチタイプヘッダー拡張の具体例を示す図である。スクランブル範囲情報マルチタイプヘッダー拡張には、各サブサンプルあるいはその分割範囲の非スクランブル部及びスクランブル部のそれぞれのバイト数が記述される。スクランブル範囲情報マルチタイプヘッダー拡張には、一例としてARIB STD-B60に記載のマルチタイプヘッダー拡張を用いることができる。
図6において、1つのサブサンプルあるいはその分割範囲の非スクランブル部・スクランブル部の組み合わせの情報を含むスクランブル範囲情報マルチタイプヘッダー拡張のデータ構造の一例を示している。
【0035】
図6に示すように、スクランブル範囲情報マルチタイプヘッダー拡張(Header_extension_byte_for_scramble_range_information)は、hdr_ext_end_flagと、hdr_ext_typeと、hdr_ext_lengthと、bytes_of_clear_dataと、bytes_of_protected_dataとを有する。
【0036】
hdr_ext_end_flagは、当該MMTPパケット内に、本マルチタイプヘッダー拡張に続く他のマルチタイプヘッダー拡張が存在するか否かを示すフラグである。例えば、後続のマルチタイプヘッダー拡張が存在する場合は1、存在しない場合は0とする。
【0037】
hdr_ext_typeは、マルチタイプヘッダー拡張のタイプを示す値である。サブサンプル関連情報マルチタイプヘッダー拡張のタイプを示す値は、例えば0x0004と定義するものとする。
【0038】
hdr_ext_lengthは、本マルチタイプヘッダー拡張における、本フィールドに後続するデータの長さを示す。
【0039】
bytes_of_clear_dataは、当該サブサンプルあるいはその分割範囲の非スクランブル部のバイト数を示し、bytes_of_protected_dataは、当該サブサンプルあるいはその分割範囲のスクランブル部のバイト数を示す。
【0040】
サブサンプルが複数存在する場合、hdr_ext_end_flagを0(他のマルチタイプヘッダーが存在することを示す)とし、それぞれのサブサンプルのスクランブル範囲情報マルチタイプヘッダー拡張を順次追記することで記述可能である。
【0041】
(放送受信装置)
次に、本実施形態に係る放送受信装置200について説明する。
図7は、本実施形態に係る放送受信装置200の構成を示す図である。
【0042】
図7に示すように、放送受信装置200は、分離手段210と、スクランブル復号手段220と、再生手段230とを有する。
【0043】
分離手段210は、MMTに基づく多重分離を行う。受信ストリームからスクランブルコンテンツを抽出する。分離手段210は、ヘッダー部にスクランブル範囲情報が配置されたMMTPパケットを受信した場合、スクランブル範囲情報に含まれる長さ情報を用いて、ユニットに含まれるサブサンプルもしくはその分割範囲のうちスクランブルが施されたスクランブル部とユニットに含まれるサブサンプルもしくはその分割範囲のうちスクランブルが施されていない非スクランブル部とをMMTPパケットのペイロードから取得する。また、分離手段210は、ヘッダー部に複数のスクランブル範囲情報が配置されたMMTPパケットを受信した場合、当該複数のスクランブル範囲情報のそれぞれに含まれる長さ情報を用いて、スクランブル部と非スクランブル部との複数のセットをペイロードから取得する。
【0044】
スクランブル復号手段220は、取得されたスクランブル部に対してスクランブル復号を施す。具体的には、スクランブル復号手段220は、スクランブル関連情報マルチタイプヘッダー拡張及びスクランブル範囲情報マルチタイプヘッダー拡張の情報に従って、スクランブル復号を行う。
【0045】
再生手段230は、取得された非スクランブル部とスクランブル復号が施されたスクランブル部とに含まれる放送コンテンツを圧縮復号することで再生する。放送コンテンツが圧縮符号化された映像データであって、再生手段230が映像デコーダを含んでもよい。
【0046】
(多重化方法)
次に、本実施形態に係る多重化方法について説明する。
図8及び
図9は、本実施形態に係る多重化方法を示すフロー図である。本フロー図では、1つのサンプルにおける1つのユニットの多重化について示す。また、暗号鍵は別途設定されており、本フロー図では偶数鍵であるとする。
【0047】
ステップS1において、サンプル化手段110は、入力ストリームからサンプルを分離する。
【0048】
ステップS2において、サブサンプル化手段120は、当該サンプルを、スクランブルをかけない部分である非スクランブル部とそれに続くスクランブルをかける部分であるスクランブル部、或いはいずれか一方を含む、複数のサブサンプルに分割する。
【0049】
ステップS3において、ユニット化手段130は、サブサンプルを所定のサイズ(例えば1400バイト)以下になるように分割するか、所定サイズ以下の連続する複数のサブサンプルを纏めて、所定サイズ以下のユニットを生成する。
【0050】
ステップS4において、多重化手段150は、当該ユニットが非スクランブル部のサブサンプルのみであるか否かを判定する。当該ユニットが非スクランブル部のみである場合(ステップS4:YES)、ステップS5において、多重化手段150は、スクランブル無しのMMTPパケットとして送出し、当該ユニットについての処理を終了する。
【0051】
一方、当該ユニットが非スクランブル部以外も含む場合(ステップS4:NO)、ステップS6において、スクランブル手段140は、当該ユニットのスクランブルの初期化情報であるMMTスクランブル初期値IVを決定し、カウンタCを0にセットする。
【0052】
ステップS7において、多重化手段150は、当該ユニットがスクランブル部のサブサンプルのみであるか否かを判定する。当該ユニットがスクランブル部のサブサンプルのみである場合(ステップS7:YES)、ステップS8において、多重化手段150は、マルチタイプヘッダー拡張終了フラグを1として、スクランブル関連情報マルチタイプヘッダー拡張を生成する。そして、ステップS9において、多重化手段150は、サブサンプル数Nを1として、ステップS17の処理に移る。
【0053】
一方、当該ユニットがスクランブル部以外も含む場合(ステップS7:NO)、ステップS10において、多重化手段150は、マルチタイプヘッダー拡張終了フラグを0(後続するマルチタイプ拡張ヘッダーがあることを示す。)として、スクランブル範囲情報マルチタイプヘッダー拡張を生成する。そして、ステップS11において、多重化手段150は、ループカウンタiを0、サブサンプル数をNとして、ループ処理(ステップS12乃至S16)を開始する。
【0054】
ステップS12において、多重化手段150は、サブサンプル(i)が当該ユニットの最後のサブサンプル(i=N-1)であるか否かを判定する。
【0055】
最後のサブサンプルでない場合(ステップS12:NO)、ステップS13において、多重化手段150は、マルチタイプヘッダー拡張終了フラグを0として、サブサンプル(i)の非スクランブル部のバイト数及びスクランブル部のバイト数を含むスクランブル範囲情報マルチタイプヘッダー拡張を生成する。
【0056】
一方、最後のサブサンプルである場合(ステップS12:YES)、ステップS14において、多重化手段150は、マルチタイプヘッダー拡張終了フラグを1として、サブサンプル(i)の非スクランブル部のバイト数及びスクランブル部のバイト数を含むスクランブル範囲情報マルチタイプヘッダー拡張を生成する。
【0057】
ステップS15において、多重化手段150は、ループカウンタiをインクリメントする。
【0058】
ステップS16において、多重化手段150は、ループカウンタiがNよりも小さいか否かを判定する。ループカウンタiがNよりも小さい場合(ステップS16:YES)、S12に戻り、ループ処理を継続する。
【0059】
一方、すべてのサブサンプルの処理が終了(i=N)した場合(ステップS16:NO)、ステップS17において、多重化手段150は、ループカウンタiを0にリセットし、サブサンプルのスクランブルの処理に移す。
【0060】
ステップS18において、スクランブル手段140は、サブサンプル(i)のスクランブル部を16バイト毎のブロックに分割する(サブサンプルの最後のブロックは16バイト未満の場合もある。)。
【0061】
ステップS19において、スクランブル手段140は、ブロックのループカウンタkを0、ブロック数をMとして、ブロックに対するループ処理(ステップS20乃至S22)を開始する。
【0062】
ステップS20において、スクランブル手段140は、暗号鍵と、MMTスクランブル初期値IV及びカウンタCを加算した値とを用いて、AES128ビットによりブロック(k)にスクランブルを施す。
【0063】
ステップS21において、スクランブル手段140は、カウンタC及びループカウンタkのそれぞれをインクリメントする。
【0064】
ステップS22において、スクランブル手段140は、ループカウンタkがMよりも小さいか否かを判定する。ループカウンタkがMよりも小さい場合(ステップS22:YES)、S20に戻り、次のブロックの処理に移る。
【0065】
すべてのブロックの処理が終了(k=M)した場合(ステップS22:NO)、ステップS23において、多重化手段150は、ループカウンタiをインクリメントする。
【0066】
ステップS24において、多重化手段150は、ループカウンタiがNよりも小さいか否かを判定する。ループカウンタiがNよりも小さい場合(ステップS24:YES)、ステップS18に戻って次のサブサンプルの処理に移る。
【0067】
一方、すべてのサブサンプルの処理が終了(i=N)した場合(ステップS24:NO)、ステップS25において、多重化手段150は、これらのサブサンプルを含むスクランブル有りのMMTパケットとして送出して、処理を終了する。
【0068】
(実施形態のまとめ)
以上説明したように、多重化方式としてMMTを用いるデジタル放送システム1のための放送送出装置100は、映像又は音声の放送コンテンツのストリームから抽出されたサブサンプルにスクランブルの対象であるスクランブル部が含まれる場合、スクランブル部に対してスクランブルを施すスクランブル手段140と、スクランブルが施されたスクランブル部とスクランブルが施されていない非スクランブル部とを含むサブサンプルをMMTPパケットのペイロードに格納する場合、当該スクランブル部及び当該非スクランブル部のうち、当該MMTPパケットのペイロードに格納される分割範囲のそれぞれの長さ情報を含むスクランブル範囲情報を当該MMTPパケットのヘッダー部に配置する多重化手段150と、を有する。
【0069】
また、放送受信装置200は、ヘッダー部にスクランブル範囲情報が配置されたMMTPパケットを受信した場合、スクランブル範囲情報に含まれる長さ情報を用いて、サブサンプルにおける当該MMTPパケットのペイロードに格納される分割範囲のうちスクランブルが施されたスクランブル部とサブサンプルにおける当該MMTPパケットのペイロードに格納される分割範囲のうちスクランブルが施されていない非スクランブル部とをMMTPパケットのペイロードから取得する分離手段210と、スクランブル部に対してスクランブル復号を施すスクランブル復号手段220と、非スクランブル部と、スクランブル復号が施されたスクランブル部とに含まれる放送コンテンツを圧縮復号することで再生する再生手段230と、を有する。
【0070】
これにより、MMTPパケットのペイロードに格納するサブサンプルが部分的にスクランブルされる場合であっても、MMTPパケットのヘッダー部に配置されたスクランブル範囲情報によって、放送受信装置200がMMTPパケットのペイロード内の非スクランブル部及びスクランブル部のそれぞれを特定可能になるため、非スクランブル部及びスクランブル部を1つのMMTPパケットのペイロードに含めることが可能である。よって、MMTを用いるデジタル放送システム1において、部分的にスクランブルされたコンテンツを効率的に伝送可能になる。
【0071】
特に、非VCL NALユニットやVCL NALユニットのスライスヘッダー等の映像デコーダの動作を管理するための情報などを非スクランブル部とすることにより、放送受信装置200の再生手段230(映像デコーダを含む)は、スクランブル復号を行う前に、映像デコーダの動作を管理するための情報を得ることができるため、速やかな映像再生が可能になる。
【0072】
なお、スクランブル部のみで構成されるサブサンプルをMMTPパケットのペイロードに格納する場合、多重化手段150は、スクランブル範囲情報をMMTPパケットのヘッダー部に配置せずに、当該サブサンプルをペイロードに含むスクランブル有りのMMTPパケットを生成する。非スクランブル部のみで構成されるサブサンプルをペイロードに格納する場合、多重化手段150は、スクランブル範囲情報をMMTPパケットのヘッダー部に配置せずに、当該サブサンプルをMMTPパケットのペイロードに含むスクランブル無しのMMTPパケットを生成する。これにより、必要な場合に限りスクランブル範囲情報を配置することができるため、オーバーヘッドの増大を抑制できる。
【0073】
本実施形態において、放送送出装置100の多重化手段150は、スクランブル範囲情報を、MMT方式のマルチタイプヘッダー拡張を用いてヘッダー部の拡張領域に配置する。これにより、既存のARIB規格を大幅に変更することなく、MMTPパケット単位でスクランブル範囲情報を伝送可能である。
【0074】
本実施形態において、放送送出装置100の多重化手段150は、複数のサブサンプルをペイロードに格納する場合であって、且つ、当該複数のサブサンプルのいずれかがスクランブル部及を含み、かついずれかが非スクランブル部を含む場合、当該複数のサブサンプルに対応する複数のスクランブル範囲情報をヘッダー部に配置する。これにより、スクランブル部及び非スクランブル部を含む複数のサブサンプルを1つのMMTPパケットで纏めて効率的に伝送できる。
【0075】
(デジタル放送システムの変形例)
次に、上述のデジタル放送システム1の変形例について説明する。
図10は、デジタル放送システム1の変形例を示す図である。
【0076】
図10に示すように、本変形例に係るデジタル放送システム1は、中継装置300及び通信端末400をさらに有する。
【0077】
中継装置300は、放送伝送路10を介してスクランブルコンテンツを受信する。中継装置300は、チューナーなどの放送受信機能を搭載した中継装置であり、デジタル放送で伝送されたスクランブルコンテンツを受信し、スクランブル復号を施すことなく、通信ネットワーク20を介してスクランブルコンテンツを通信端末400に中継する。通信ネットワーク20は、例えば宅内に設けられるLAN(Local Area Network)である。LANは、無線LANであってもよい。
【0078】
通信端末400は、放送受信機能を搭載していない端末である。通信端末400は、例えば、PC(Perosonal Computer)、スマートフォン、又はタブレット端末などである。通信端末400は、中継装置300により中継されたスクランブルコンテンツを通信ネットワーク20経由で受信し、受信したスクランブルコンテンツに対してスクランブル復号を施し、放送コンテンツを再生する。通信端末400は、通信コンテンツ向けのスクランブル方式であるCENC方式に従ってスクランブル復号を行う。
【0079】
なお、放送受信装置200は、ARIB STD-B61で規定されるデジタル放送のアクセス制御方式(以下、「ARIB方式」と呼ぶ)に従ってスクランブル復号(以下、「放送スクランブル復号」と呼ぶ)を行う。
【0080】
このように、中継装置300によりスクランブルコンテンツを通信端末400に中継することにより、放送受信機能を搭載していない通信端末400であっても放送コンテンツを再生可能である。ここで、通信ネットワーク20上ではスクランブルが施された状態で伝送されるため、コンテンツ保護も担保できる。しかしながら、スクランブルの方式に関し、ARIB方式はCENC方式と互換性がないため、通信端末400がARIB方式でスクランブルされた放送コンテンツに対して通信スクランブル復号を行うことは困難である。
【0081】
そこで、本変更例において、放送送出装置100は、ARIB方式に準拠しつつ、CENC方式と互換性があるかたちで放送コンテンツのスクランブル及び多重化を行ってスクランブルコンテンツを伝送することにより、通信端末400がスクランブルコンテンツに対して通信スクランブル復号を行うことを可能とする。
【0082】
図11は、本変更例に係るデジタル放送システム1における多重化方法を説明するための図である。
図11(a)はARIB方式及びCENC方式を比較して示し、
図11(b)は本変更例に係る多重化方法を示す。
【0083】
図11(a)に示すように、ARIB方式は、MMTPパケットにおけるMMTPペイロードのデータ部分をスクランブル範囲として、MMTPパケット単位でスクランブルを施す。スクランブルに用いるスクランブル初期値(IV:Initialization Vector)はMMTPパケット単位で設定される。
【0084】
一方、CENC方式のSubsample encryptionは、サンプル(例えば映像・音声の1フレーム)を分割して得たサブサンプル単位でスクランブルを施す。但し、コンテンツのヘッダー情報(非スクランブル部)をスクランブルせずに、スクランブル部のみをスクランブルする。スクランブルに用いるスクランブル初期値(IV)は、サンプル単位で設定される。
【0085】
図11(b)に示すように、本変更例に係る多重化方法は、サンプルが複数のサブサンプルで構成されている場合、当該サンプルの最後を除くサブサンプルのスクランブル部の長さを0もしくはスクランブルに用いる暗号鍵長の整数倍とし、サブサンプルをMMTPパケットに収まるサイズにユニット化した際に、ユニットがスクランブル部を含み、且つ当該分割範囲が当該サンプルの最後のサブサンプルの最終バイトを含まない場合、ユニットのスクランブル部の長さが暗号鍵長の整数倍となるようにサブサンプル化及びユニット化することにより、MMTPパケット単位でスクランブルを完結させる。これにより、ARIB方式及びCENC方式の両方式のスクランブル単位に関する制約を満たすことができる。
【0086】
また、本変更例に係る多重化方法は、上述のように、非スクランブル部及びスクランブル部を示すスクランブル範囲情報のマルチタイプヘッダー拡張を新たに定義し、ペイロードのスクランブル部だけをスクランブル範囲とする。このようなマルチタイプヘッダー拡張により、部分的なスクランブルを可能としつつ、ARIB方式及びCENC方式の両方式のスクランブル範囲に関する制約を満たすことができる。
【0087】
さらに、本変更例に係る多重化方法は、サンプルの先頭となるスクランブル部を含むサブサンプルの先頭のスクランブル部を含むユニットのIVはサンプルのIVと共通とし、2つ目以降の各ユニットに対するIVは直前のユニットのIVに基づきユニットごと(すなわち、MMTPパケットごと)に設定する。これにより、ARIB方式及びCENC方式の両方式のスクランブル初期値に関する制約を満たすことができる。
【0088】
なお、本変更例に係る多重化方法は、スクランブルに用いる暗号アルゴリズムとして、ARIB方式及びCENC方式の両方式で利用可能な暗号アルゴリズムを採用する。このような暗号アルゴリズムは、AES CTRモードである。
【0089】
このような多重化方法を用いることにより、ARIB方式に準拠しつつ、CENC方式と互換性があるかたちで放送コンテンツのスクランブル及び多重化を行うことができるため、放送受信装置200及び通信端末400のいずれも同一のスクランブルコンテンツに対してスクランブル復号を行うことが可能である。よって、デジタル放送で伝送されたスクランブルコンテンツを多様な端末で再生できるようになる。
【0090】
なお、AES CTRモードを暗号アルゴリズムとして用いる一例について説明したが、ARIB方式及びCENC方式で共通する暗号アルゴリズムであればよく、そのような共通の暗号アルゴリズムが新たに導入された場合にはAES CTRモードに代えて当該新たな暗号アルゴリズムを採用してもよい。
【0091】
(その他の実施形態)
上述の各装置(放送送出装置100、放送受信装置200、中継装置300、通信端末400)が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROMなどの記録媒体であってもよい。また、上述の各装置(放送送出装置100、放送受信装置200、中継装置300、通信端末400)が行う各処理を実行する回路を集積化し、当該装置を半導体集積回路(チップセット、SoC)により構成してもよい。
【0092】
以上、図面を参照して実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更などをすることが可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 :デジタル放送システム
10 :放送伝送路
20 :通信ネットワーク
100 :放送送出装置
110 :サンプル化手段
120 :サブサンプル化手段
130 :ユニット化手段
140 :スクランブル手段
150 :多重化手段
200 :放送受信装置
210 :分離手段
220 :スクランブル復号手段
230 :再生手段
300 :中継装置
400 :通信端末