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特開2022-140741ドーナツシュガー及びドーナツシュガーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140741
(43)【公開日】2022-09-27
(54)【発明の名称】ドーナツシュガー及びドーナツシュガーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20220915BHJP
   A21D 13/60 20170101ALI20220915BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
A23L27/00 F
A21D13/60
A23G3/34 108
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124560
(22)【出願日】2022-08-04
(62)【分割の表示】P 2018168402の分割
【原出願日】2018-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000226998
【氏名又は名称】株式会社日清製粉グループ本社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】野村 光生
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 康人
(72)【発明者】
【氏名】光岡 徹弥
(57)【要約】
【課題】 高い吸湿耐性および良好な付着性を有するドーナツシュガー、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 粉糖類の粒子12と、前記粉糖類の粒子表面に形成された融点が100℃以上の脂肪酸塩の層14と、前記脂肪酸塩の層の外側に形成された融点が50℃以下の低融点油脂の層16とを備える。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉糖類の粒子と、
前記粉糖類の粒子表面に形成された融点が100℃以上の脂肪酸塩の層と
を備えるドーナツシュガー。
【請求項2】
粉糖類の粒子と、
前記粉糖類の粒子表面に形成された融点が50℃以下の低融点油脂の層と
を備えるドーナツシュガー。
【請求項3】
粉糖類の粒子と融点が100℃以上の脂肪酸塩とを混合容器に投入する投入工程と、
前記粉糖類の粒子と前記脂肪酸塩とを加温する加温工程と、
前記粉糖類の粒子と前記脂肪酸塩とを攪拌する攪拌工程と、
前記攪拌工程の後、前記混合容器内を冷却する冷却工程と
を有するドーナツシュガーの製造方法。
【請求項4】
粉糖類の粒子を混合容器に投入する第1投入工程と、
前記粉糖類の粒子を加温する加温工程と、
融点が50℃以下の低融点油脂を混合容器に投入する第2投入工程と、
前記粉糖類と、前記低融点油脂とを攪拌する攪拌工程と、
前記攪拌工程の後、前記混合容器内を冷却する冷却工程と
を有するドーナツシュガーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドーナツシュガー及びドーナツシュガーの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からドーナツ等の油揚げ菓子、パン、洋菓子等の表面に、粉糖、グラニュー糖、ぶどう糖、ドーナツシュガー等の粉糖類をふりかけて風味や外観を改良することが行われてきた。
【0003】
これらの粉糖類は吸湿性があるため、時間の経過とともに形がなくなり透明な水飴状となる、いわゆる“泣く”という潮解現象が発生し、商品価値が損なわれてしまうという問題があった。そのため、粉糖類の吸湿性を改善するために種々の研究が行われている。
【0004】
例えば特許文献1では、ふりかけ直後のみならず、3日以上経過しても粉糖類が吸湿せず、適度な口どけの良さと良好な食味を感じるコーティングシュガー(ドーナツシュガー)を得ることを目的とした、ブドウ糖、テキストリン、及び融点が45~55℃と55~65℃の異なる範囲で両者の融点の差が5℃以上である2種の油脂の均一混合物からなるコーティングシュガー組成物が開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、吸湿性が極めて低くドーナツへ等への付着性が良好な被覆粉糖類を得ることを目的とした、粉糖類の粒子表面に融点が50℃以上の油脂からなる被覆層を設け、さらに該被覆層の外層部に25℃におけて液状を呈する油脂を付着させた被覆粉糖類が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-201166号公報
【特許文献2】特開平11-56290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、流通や店舗オペレーションの問題からより吸湿耐性(泣き耐性)が向上したドーナツシュガーが市場から望まれ、また、外観の観点からドーナツシュガーをドーナツ等に確実に付着させられることが求められている。このような事情に鑑みて、ドーナツシュガーのさらなる改良が求められている。
【0008】
本発明の目的は、高い吸湿耐性または/および良好な付着性を有するドーナツシュガー、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の脂肪酸塩を粉糖類または/および特定の低融点油脂を用いることにより、高い吸湿耐性または/および良好な付着性が得られることを見出し、上記目的を達成するに至った。
【0010】
即ち、本発明によれば、
(1) 粉糖類の粒子と、前記粉糖類の粒子表面に形成された融点が100℃以上の脂肪酸塩の層とを備えるドーナツシュガー、
(2) 粉糖類の粒子と、前記粉糖類の粒子表面に形成された融点が50℃以下の低融点油脂の層とを備えるドーナツシュガー、
(3) 粉糖類の粒子と融点が100℃以上の脂肪酸塩とを混合容器に投入する投入工程と、前記粉糖類の粒子と前記脂肪酸塩とを加温する加温工程と、前記粉糖類の粒子と前記脂肪酸塩とを攪拌する攪拌工程と、前記攪拌工程の後、前記混合容器内を冷却する冷却工程とを有するドーナツシュガーの製造方法、
(4) 粉糖類の粒子を混合容器に投入する第1投入工程と、前記粉糖類の粒子を加温する加温工程と、融点が50℃以下の低融点油脂を混合容器に投入する第2投入工程と、前記粉糖類と、前記低融点油脂とを攪拌する攪拌工程と、前記攪拌工程の後、前記混合容器内を冷却する冷却工程とを有するドーナツシュガーの製造方法
が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高い吸湿耐性または/および良好な付着性を有するドーナツシュガー、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施の形態に係るドーナツシュガーの製造工程を示すフローチャートである。
図2】第1の実施の形態に係るドーナツシュガーの製造に用いるミキサーを示す図である。
図3】第1の実施の形態に係るドーナツシュガーを示す模式図である。
図4】第2の実施の形態に係るドーナツシュガーの製造工程を示すフローチャートである。
図5】第3の実施の形態に係るドーナツシュガーの製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の第1の実施の形態に係るドーナツシュガーおよびドーナツシュガーの製造方法について説明する。
【0014】
本発明の第1の実施の形態に係るドーナツシュガーは、粉糖類の粒子と、粉糖類の粒子表面に形成された融点が100℃以上の脂肪酸塩の層と、脂肪酸塩の層の外側に形成された融点が50℃以下の低融点油脂の層とを備える。また、本発明の第1の実施の形態に係るドーナツシュガーの製造方法は、粉糖類の粒子と融点が100℃以上の脂肪酸塩とを混合容器に投入する第1投入工程と、粉糖類の粒子と脂肪酸塩とを加温する加温工程と、粉糖類の粒子と脂肪酸塩とを攪拌する第1攪拌工程と、融点が50℃以下の低融点油脂を混合容器に投入する第2投入工程と、脂肪酸塩の層が形成された粉糖類と、低融点油脂とを攪拌する第2攪拌工程と、第2攪拌工程の後、混合容器内を冷却する冷却工程とを有する。
【0015】
図1は第1の実施の形態に係るドーナツシュガーの製造工程を示すフローチャートである。第1の実施の形態に係るドーナツシュガーの製造にはミキサーを用いるが、図2に示すチョッパー付きミキサーを用いることが好ましい。なお、図2(a)はチョッパー付きミキサーを水平方向から見た図、図2(b)はチョッパー付きミキサーを鉛直上方向から見た図である。図2に示すようにチョッパー付きミキサー2は、投入された材料を混合する混合容器4、混合容器4内において回転軸が鉛直方向に設けられた攪拌翼であるアジテータ6、混合容器4内において回転軸が水平方向に設けられたせん断翼であるチョッパー8を備えている。また、混合容器4は、ジャケット等により加温可能な構成となっている。また、アジテータ6およびチョッパー8は独立して駆動するように構成されている。
【0016】
第1の実施の形態に係るドーナツシュガーの製造においては、まず、チョッパー付きミキサー2の混合容器4を好ましくは50~100℃、より好ましくは60~80℃に加温し、混合容器4に、粉糖類、融点が100℃以上の脂肪酸塩および必要に応じて用いられる澱粉を投入する(ステップS1)。
【0017】
ここで、粉糖類としては、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラクトース、デキストリン、粉飴等が挙げられる。
【0018】
また、融点が100℃以上の脂肪酸塩としては、ステアリン酸カルシウム(融点148℃)、ステアリン酸マグネシウム(融点155℃)等が挙げられる。融点が100℃以上の脂肪酸塩の投入量は、粉糖類の投入量100重量部に対して、好ましくは0.5~15重量部、より好ましくは0.5~10重量部である。
【0019】
また、澱粉としては、コーンスターチ等が挙げられる。澱粉は粉糖類の凝集を防ぐ効果があり、その場合の澱粉の投入量は、粉糖類の投入量100重量部に対して、好ましく0.1~20重量部、より好ましくは5~15重量部である。
【0020】
そして、攪拌を行いながら、混合容器4内の原材料(粉糖類、脂肪酸塩および澱粉)温度が所定温度(好ましくは40~60℃)となるまで加温する(ステップS2)。
【0021】
次に、混合容器4内の原材料温度が所定温度まで達すると、さらに好ましくは1~10分間攪拌する(ステップS3)。これにより、加温により柔らかい物性となった融点が100℃以上の脂肪酸塩が粉糖類と衝突するため、粉糖類の粒子表面に融点が100℃以上の脂肪酸塩の層を形成することができる。
【0022】
その後、融点が50℃以下の低融点油脂を混合容器4に投入する(ステップS4)。ここで、融点が50℃以下の低融点油脂としては、パーム油脂、菜種油、大豆油、及びこれらの硬化処理油脂等が挙げられる。また、融点が50℃以下の低融点油脂の投入量は、粉糖類の投入量100重量部に対して、好ましくは0.1~5重量部、より好ましくは1~3.5重量部である。
【0023】
そして、さらに好ましくは1~10分間攪拌する(ステップS5)。
【0024】
次に、チョッパー8の回転を停止させ、アジテータ6の回転数を維持した状態にて混合容器4内の内容物を冷却する(ステップS6)。冷却方法は特に限定されないが、ドライアイス、液化炭酸ガス等を混合容器4に投入することが好ましい。そして、混合容器4の内容物の温度が低融点油脂の融点以下(例えば10~30℃の範囲の所定の温度)となったときにアジテータ6の回転を停止させる。
【0025】
上記の工程により、粉糖類の粒子表面に融点が100℃以上の脂肪酸塩の層を備え、前記脂肪酸塩の層の外側に融点が50℃以下の低融点油脂の層を備えるドーナツシュガーを得ることができる。
【0026】
図3は、第1の実施の形態に係るドーナツシュガーを示す模式図である。図3に示すように上記の工程により得られるドーナツシュガー10は、粉糖類12の粒子表面に融点が100℃以上の脂肪酸塩の層14を備え、脂肪酸塩の層14の外側に融点が50℃以下の低融点油脂の層16を備えている。また、粉糖類の粒子表面には澱粉18が付着している。なお、粉糖類12の粒子径は通常200μm~300μm、澱粉18の粒子径は通常10~20μmである。
【0027】
また、脂肪酸塩の層14は、粉糖類12の外側を実質的に包囲することが好ましく、被覆層であることがより好ましい。また、低融点油脂の層16は、脂肪酸塩の層14を実質的に包囲することが好ましく、被覆層であることがより好ましい。
【0028】
第1の実施の形態に係るドーナツシュガーにおいては、脂肪酸塩の層により吸湿耐性(泣き耐性)を付与することができ、低融点油脂の層により付着性を付与することができる。
【0029】
したがって、第1の実施の形態に係るドーナツシュガーは、高い吸湿耐性(泣き耐性)および良好な付着性を有する。
【0030】
なお、粉糖類の量に対する融点が100℃以上の脂肪酸塩および融点が50℃以下の低融点油脂の量は上記の範囲であれば優れた泣き耐性および付着性を有するドーナツシュガーを得ることができるが、粉糖類100重量部に対して融点が100℃以上の脂肪酸塩を好ましくは0.1~5重量部、より好ましくは1~3.5重量部、融点が50℃以下の低融点油脂を好ましくは1~3.5重量部、より好ましくは2~3重量部とすると、さらに優れた泣き耐性および付着性を両立したドーナツシュガーを得ることができる。
【0031】
次に、図面を参照して本発明の第2の実施の形態に係るドーナツシュガーおよびドーナツシュガーの製造方法について説明する。なお、この第2の実施の形態に係るドーナツシュガー及びドーナツシュガーの製造方法は、第1の実施の形態における低融点油脂の層を省略したものである。従って、第1の実施の形態と同一の構成についての詳細な説明は省略し、異なる部分のみについて詳細に説明する。また、第1の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付して説明する。
【0032】
本発明の第2の実施の形態に係るドーナツシュガーは、粉糖類の粒子と、粉糖類の粒子表面に形成された融点が100℃以上の脂肪酸塩の層とを備える。また、本発明の第2の実施の形態に係るドーナツシュガーの製造方法は、粉糖類の粒子と融点が100℃以上の脂肪酸塩とを混合容器に投入する投入工程と、粉糖類の粒子と脂肪酸塩とを加温する加温工程と、粉糖類の粒子と脂肪酸塩とを攪拌する攪拌工程と、攪拌工程の後、混合容器内を冷却する冷却工程とを有する。
【0033】
図4は第2の実施の形態に係るドーナツシュガーの製造工程を示すフローチャートである。第2の実施の形態に係るドーナツシュガーの製造にはミキサーを用いるが、第1の実施の形態と同様に図2に示すチョッパー付きミキサーを用いることが好ましい。
【0034】
第2の実施の形態に係るドーナツシュガーの製造においては、まず、図2に示すチョッパー付きミキサー2の混合容器4を好ましくは50~100℃、より好ましくは60~80℃に加温し、混合容器4に、粉糖類、脂肪酸塩および必要に応じて用いられる澱粉を投入する(ステップS11)。
【0035】
ここで、粉糖類、融点が100℃以上の脂肪酸塩および澱粉としては、第1の実施の形態において例示したものが挙げられ、また、融点が100℃以上の脂肪酸塩の投入量および澱粉の投入量は第1の実施の形態における投入量と同様とすることができる。
【0036】
そして、さらに攪拌を行いながら、混合容器4内の原材料(粉糖類、脂肪酸塩および澱粉)温度が所定温度(好ましくは40~60℃)となるまで加温する(ステップS12)。
【0037】
次に、混合容器4内の原材料温度が所定温度まで達すると、さらに好ましくは1~10分間攪拌する(ステップS13)。
【0038】
次に、チョッパー8の回転を停止させ、混合容器4内の内容物を冷却する(ステップS14)。冷却方法は特に限定されないが、ドライアイス、液化炭酸ガス等を混合容器4に投入することが好ましい。そして、混合容器4の内容物の温度が好ましくは10~30℃となったときにアジテータ6の回転を停止させる。
【0039】
上記の工程により、粉糖類の粒子表面に融点が100℃以上の脂肪酸塩の層を備えるドーナツシュガーを得ることができる。なお、脂肪酸塩の層は、粉糖類の外側を実質的に包囲することが好ましく、被覆層であることがより好ましい。
【0040】
第2の実施の形態に係るドーナツシュガーにおいては、脂肪酸塩の層により吸湿耐性(泣き耐性)を付与することができる。したがって、第2の実施の形態に係るドーナツシュガーは、高い吸湿耐性(泣き耐性)を有する。
【0041】
次に、図面を参照して本発明の第3の実施の形態に係るドーナツシュガーおよびドーナツシュガーの製造方法について説明する。なお、この第3の実施の形態に係るドーナツシュガー及びドーナツシュガーの製造方法は、第1の実施の形態における脂肪酸塩の層を省略したものである。従って、第1の実施の形態と同一の構成についての詳細な説明は省略し、異なる部分のみについて詳細に説明する。また、第1の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付して説明する。
【0042】
本発明の第3の実施の形態に係るドーナツシュガーは、粉糖類の粒子と、粉糖類の粒子表面に形成された融点が50℃以下の低融点油脂の層とを備える。また、本発明の第3の実施の形態に係るドーナツシュガーの製造方法は、粉糖類の粒子を混合容器に投入する第1投入工程と、粉糖類の粒子を加温する加温工程と、粉糖類の粒子を攪拌する第1攪拌工程と、融点が50℃以下の低融点油脂を混合容器に投入する第2投入工程と、粉糖類と、低融点油脂とを攪拌する第2攪拌工程と、第2攪拌工程の後、混合容器内を冷却する冷却工程とを有する。
【0043】
図5は第3の実施の形態に係るドーナツシュガーの製造工程を示すフローチャートである。第3の実施の形態に係るドーナツシュガーの製造にはミキサーを用いるが、第1の実施の形態と同様に図2に示すチョッパー付きミキサーを用いることが好ましい。
【0044】
第3の実施の形態に係るドーナツシュガーの製造においては、まず、図2に示すチョッパー付きミキサー2の混合容器4を好ましくは50~100℃、より好ましくは60~80℃に加温し、混合容器4に、粉糖類および必要に応じて用いられる澱粉を投入する(ステップS21)。
【0045】
そして、攪拌を行いながら、混合容器4内の原材料(粉糖類および澱粉)温度が所定温度(好ましくは40~60℃)となるまで加温する(ステップS22)。
【0046】
次に、混合容器4内の原材料温度が所定温度まで達すると、さらに好ましくは1~10分間攪拌する(ステップS23)。ただし、事前に原材料の温度が所定温度に達しているとき、または原材料が一種類のときは、撹拌工程は省略できる。
【0047】
その後、融点が50℃以下の低融点油脂を混合容器4に投入する(ステップS24)。
【0048】
ここで、融点が50℃以下の低融点油脂および澱粉としては第1の実施の形態において例示したものを挙げることができ、また、融点が50℃以下の低融点油脂の投入量および澱粉の投入量は第1の実施の形態における投入量と同様とすることができる。
【0049】
そして、さらに好ましくは1~10分間攪拌する(ステップS25)。
【0050】
次に、チョッパー8の回転を停止させ、アジテータ6の回転数を維持した状態にて混合容器4内の内容物を冷却する(ステップS26)。冷却方法は特に限定されないが、ドライアイス、液化炭酸ガス等を混合容器4に投入することが好ましい。そして、混合容器4の内容物の温度が低融点油脂の融点以下(例えば10~30℃の範囲の所定の温度)となったときにアジテータ6の回転を停止させる。
【0051】
上記の工程により、粉糖類の粒子表面に融点が50℃以下の低融点油脂の層を備えるドーナツシュガーを得ることができる。なお、低融点油脂の層は、粉糖類の外側を実質的に包囲することが好ましく、被覆層であることがより好ましい。
【0052】
第3の実施の形態に係るドーナツシュガーにおいては、低融点油脂の層により付着性を付与することができる。したがって、第3の実施の形態に係るドーナツシュガーは、良好な付着性を有する。
【実施例0053】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限られるものではない。実施例および比較例において泣き耐性および付着性の評価、総合評価は以下のように行った。
【0054】
(泣き耐性)
常法に従いドーナツを油揚げし、フライ後の粗熱が取れた後、得られた各ドーナツ表面に各実施例および比較例にて得られたドーナツシュガーをそれぞれ0.5gまぶし、まぶした直後のドーナツ上のドーナツシュガー(即ち、白い部分)の面積を測定し、3日間室温にて放置した後にドーナツ上に残存しているドーナツシュガー(即ち、白い部分)の面積を測定した。そして、下記基準によりドーナツシュガーの泣き耐性を評価した。残存したドーナツシュガーが多いほど泣き耐性に優れることを示す。
A:3日後のドーナツシュガーの残存面積がまぶした直後の90%以上である。
B:3日後のドーナツシュガーの残存面積がまぶした直後の80%以上90%未満である。
C:3日後のドーナツシュガーの残存面積がまぶした直後の70%以上80%未満である。
D:3日後のドーナツシュガーの残存面積がまぶした直後の50%以上70%未満である。
E:3日後のドーナツシュガーの残存面積がまぶした直後の20%以上50%未満である。
F:3日後のドーナツシュガーの残存面積がまぶした直後の20%未満である。
【0055】
(付着性)
常法に従いドーナツを油揚げし、フライ後の粗熱が取れた後、ドーナツシュガー付着前のドーナツの重量d1を測定した。そして、各実施例および比較例において得られたドーナツシュガー100gと上記にて得られたドーナツ2個とを容器に入れ、この容器を振ることでドーナツシュガーをドーナツに付着させ、ドーナツシュガー付着後のドーナツの重量d2を測定した。付着率は、(d2-d1)/d1×100(%)により求め、下記基準によりドーナツシュガーの付着性を評価した。付着率が高いほど付着性に優れることを示す。また、ブドウ糖のみを用いステアリン酸カルシウム及び低融点油脂を用いない場合(比較例1)よりも付着率が高い場合には、付着性が良好であると判断することができる。
A:付着率が3.9%以上である。
B:付着率が2.9%以上3.9%未満である。
C:付着率が1.9%以上2.9%未満である。
D:付着率が1.4%以上1.9%未満である。
E:付着率が0.9%以上1.4%未満である。
F:付着率が0.9%未満である。
【0056】
(総合評価)
上記泣き耐性の評価においてAを5点、Bを4点、Cを3点、Dを2点、Eを1点、Fを0点と換算し、また、上記付着性の評価においてAを5点、Bを4点、Cを3点、Dを2点、Eを1点、Fを0点と換算し、泣き耐性の評価および付着性の評価の点数を合計して総合評価とした。点数が高いほど総合評価に優れることを示す。
【0057】
(実施例1)
図2に示すチョッパー付きミキサー2の混合容器4を70℃に加温した。そして、混合容器4に粉糖としてのブドウ糖100重量部、澱粉としてのコーンスターチ15重量部を投入し攪拌した後、さらに混合容器4に脂肪酸塩としてのステアリン酸カルシウム(太平化学産業株式会社製)2.5重量部投入した。
【0058】
次に、攪拌を行いながら、原材料(ブドウ糖、ステアリン酸カルシウムおよびコーンスターチ)の温度が48℃となるまで加温した。原材料の温度が48℃に到達すると、3分間攪拌を行った。
【0059】
次に、融点が50℃以下の低融点油脂(融点約48℃±1℃)3.1重量部を混合容器4に投入し、この状態で3分間攪拌を行った。
【0060】
その後、チョッパー8の回転を停止させ、アジテータ6の回転を継続させた状態として、混合容器4にドライアイスを投入することにより、混合容器4内の内容物の温度が20℃となるまで冷却し、ドーナツシュガーを得た。泣き耐性及び付着性の評価結果、総合評価を表1に示す。
【0061】
(実施例2)
混合容器4に投入するステアリン酸カルシウムの量を1.2重量部に変更した以外は、実施例1と同様にドーナツシュガーの製造を行った。泣き耐性及び付着性の評価結果、総合評価を表1に示す。
【0062】
(実施例3)
混合容器4に投入するステアリン酸カルシウムの量を0.6重量部に変更した以外は、実施例1と同様にドーナツシュガーの製造を行った。泣き耐性及び付着性の評価結果、総合評価を表1に示す。
【0063】
(実施例4)
混合容器4に投入するステアリン酸カルシウムの量を3.7重量部に変更した以外は、実施例1と同様にドーナツシュガーの製造を行った。泣き耐性及び付着性の評価結果、総合評価を表1に示す。
【0064】
(実施例5)
混合容器4に投入するステアリン酸カルシウムの量を1.2重量部に変更し、さらに低融点油脂の量を1.2重量部に変更した以外は、実施例1と同様にドーナツシュガーの製造を行った。泣き耐性及び付着性の評価結果、総合評価を表1に示す。
【0065】
(実施例6)
図2に示すチョッパー付きミキサー2の混合容器4を70℃に加温した。そして、混合容器4に粉糖としてのブドウ糖100重量部、澱粉としてのコーンスターチ15重量部を投入し攪拌した後、脂肪酸塩としてのステアリン酸カルシウムを6.6重量部投入した。
【0066】
次に、攪拌を行いながら、原材料(ブドウ糖、ステアリン酸カルシウムおよびコーンスターチ)の温度が48℃となるまで加温した。原材料の温度が48℃に到達すると、3分間攪拌を行った。
【0067】
次に、チョッパー8の回転を停止させた状態として、混合容器4にドライアイスを投入することにより、混合容器4内の内容物の温度が20℃となるまで冷却し、ドーナツシュガーを得た。泣き耐性及び付着性の評価結果、総合評価を表1に示す。
【0068】
(実施例7)
図2に示すチョッパー付きミキサー2の混合容器4を70℃に加温した。そして、混合容器4に粉糖としてのブドウ糖100重量部、澱粉としてのコーンスターチ15重量部を投入し攪拌を行いながら、温度が48℃となるまで加温した。
【0069】
次に、混合容器4に融点が50℃以下の低融点油脂(融点約48℃±1℃)3.1重量部を投入し、この状態で3分間攪拌を行った。
【0070】
その後、チョッパー8の回転を停止させ、アジテータ6の回転を継続させた状態にて、混合容器4にドライアイスを投入することにより、混合容器4内の内容物の温度が20℃となるまで冷却し、ドーナツシュガーを得た。泣き耐性及び付着性の評価結果、総合評価を表1に示す。
【0071】
(比較例1)
ステアリン酸カルシウムおよび低融点油脂を加えなかった以外は、実施例1と同様にドーナツシュガーの製造を行った。泣き耐性及び付着性の評価結果、総合評価を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
表1に示すように、ブドウ糖の粒子と、ブドウ糖の粒子表面に形成された融点が100℃以上のステアリン酸カルシウムの層と、ステアリン酸カルシウムの層の外側に形成された融点が50℃以下の低融点油脂の層とを備えるドーナツシュガーは、泣き耐性及び付着性に優れることが示された。
【0074】
また、ブドウ糖の粒子と、ブドウ糖の粒子表面に形成されたステアリン酸カルシウムの層とを備えるドーナツシュガーは、泣き耐性に優れることが示された。
【0075】
また、ブドウ糖の粒子と、ブドウ糖の粒子表面に形成された融点が50℃以下の低融点油脂の層とを備えるドーナツシュガーは、付着性に優れることが示された。
【符号の説明】
【0076】
2…チョッパー付きミキサー、4…混合容器、6…アジテータ、8…チョッパー、10…ドーナツシュガー、12…粉糖類、14…融点が100℃以上の脂肪酸塩の層、16…融点が50℃以下の低融点油脂の層
図1
図2
図3
図4
図5