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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140859
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】有機EL表示装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/24 20060101AFI20220921BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220921BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220921BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20220921BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20220921BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
H05B33/24
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/22 C
H05B33/26 Z
H05B33/22 A
H05B33/12 B
G09F9/30 365
G09F9/30 338
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019112910
(22)【出願日】2019-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】神戸 江美子
(72)【発明者】
【氏名】澤野 将太
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅人
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 雅俊
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC05
3K107CC37
3K107DD10
3K107DD22
3K107DD27
3K107DD53
3K107DD66
3K107DD71
3K107DD74
3K107DD75
3K107EE33
3K107FF15
3K107FF19
5C094AA10
5C094BA27
5C094DA13
5C094EA05
5C094FB01
5C094JA02
5C094JA08
(57)【要約】
【課題】高性能な有機EL表示装置を提供すること。
【解決手段】青色有機EL素子10Bと赤色有機EL素子10Rとをそれぞれ画素として有し、青色有機EL素子10B及び赤色有機EL素子10Rのいずれも、光反射層2、透明電極3、正孔輸送帯域4、発光層5、電子輸送帯域6及び半透過性電極7をこの順で有し、青色有機EL素子10Bは、蛍光性の化合物FLを含む青色発光層5Bを有し、赤色有機EL素子10Rは、遅延蛍光性の化合物DFを含む赤色発光層5Rを有し、正孔輸送帯域4は、有機EL素子10B,10Rに亘って同じ膜厚で共通して設けられ、赤色有機EL素子10Rは、光反射層2と半透過性電極7との間で干渉次数が一次の共振器構造を有しており、赤色発光層5Rの膜厚は、50nm未満であり、有機EL素子10B,10Rのそれぞれにおける透明電極3及び正孔輸送帯域4の膜厚の和が40nm未満である有機EL表示装置1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
青色有機EL素子と、赤色有機EL素子と、をそれぞれ画素として有し、
前記青色有機EL素子及び前記赤色有機EL素子のいずれも、
光反射層、
透明電極、
正孔輸送帯域、
発光層、
電子輸送帯域、及び
半透過性電極をこの順で有し、
前記青色有機EL素子及び前記赤色有機EL素子のいずれにおいても、
前記光反射層と前記透明電極とが直接接し、
前記透明電極と前記正孔輸送帯域とが直接接し、
前記正孔輸送帯域と前記発光層とが直接接し、
前記発光層と前記電子輸送帯域とが直接接し、
前記電子輸送帯域と前記半透過性電極とが直接接し、
前記青色有機EL素子は、前記発光層としての青色発光層を有し、
前記赤色有機EL素子は、前記発光層としての赤色発光層を有し、
前記青色発光層は、蛍光性の化合物FLを含み、
前記赤色発光層は、遅延蛍光性の化合物DFを含み、
前記正孔輸送帯域は、前記青色有機EL素子及び前記赤色有機EL素子に亘って同じ膜厚で共通して設けられ、
前記赤色有機EL素子は、前記光反射層と前記半透過性電極との間で干渉次数が一次の共振器構造を有しており、
前記赤色発光層の膜厚は、50nm未満であり、
前記青色有機EL素子及び前記赤色有機EL素子のそれぞれにおける前記透明電極及び前記正孔輸送帯域の膜厚の和が40nm未満である、
有機EL表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の有機EL表示装置において、
前記青色有機EL素子における電子輸送帯域の厚さは、前記赤色有機EL素子における電子輸送帯域の厚さよりも小さい、
有機EL表示装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の有機EL表示装置において、
前記青色有機EL素子及び前記赤色有機EL素子のそれぞれにおける前記透明電極及び前記正孔輸送帯域の膜厚の和が15nm以上である、
有機EL表示装置。
【請求項4】
青色有機EL素子と、緑色有機EL素子と、赤色有機EL素子と、をそれぞれ画素として有し、
前記青色有機EL素子、前記緑色有機EL素子及び前記赤色有機EL素子のいずれも、
光反射層、
透明電極、
正孔輸送帯域、
発光層、
電子輸送帯域、及び
半透過性電極をこの順で有し、
前記青色有機EL素子、前記緑色有機EL素子及び前記赤色有機EL素子のいずれにおいても、
前記光反射層と前記透明電極とが直接接し、
前記透明電極と前記正孔輸送帯域とが直接接し、
前記正孔輸送帯域と前記発光層とが直接接し、
前記発光層と前記電子輸送帯域とが直接接し、
前記電子輸送帯域と前記半透過性電極とが直接接し、
前記青色有機EL素子は、前記発光層としての青色発光層を有し、
前記緑色有機EL素子は、前記発光層としての緑色発光層を有し、
前記赤色有機EL素子は、前記発光層としての赤色発光層を有し、
前記青色発光層は、蛍光性の化合物FLを含み、
前記赤色発光層は、遅延蛍光性の化合物DFを含み、
前記正孔輸送帯域は、前記青色有機EL素子、前記緑色有機EL素子及び前記赤色有機EL素子に亘って同じ膜厚で共通して設けられ、
前記赤色有機EL素子は、前記光反射層と前記半透過性電極との間で干渉次数が一次の共振器構造を有しており、
前記赤色発光層の膜厚は、50nm未満であり、
前記青色有機EL素子、前記緑色有機EL素子及び前記赤色有機EL素子のそれぞれにおける前記透明電極及び前記正孔輸送帯域の膜厚の和が40nm未満である、
有機EL表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の有機EL表示装置において、
前記緑色発光層は、遅延蛍光性の化合物DFを含み、
前記緑色有機EL素子は、前記光反射層と前記半透過性電極との間で干渉次数が一次の共振器構造を有しており、
前記緑色発光層の膜厚は、40nm未満である、
有機EL表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載の有機EL表示装置において、
前記緑色発光層は、さらに、蛍光性の化合物FLを含み、
前記遅延蛍光性の化合物DFの一重項エネルギーS(DF)と、前記蛍光性の化合物FLの一重項エネルギーS(FL)とが、下記数式(数2A)の関係を満たす、
有機EL表示装置。
(DF)>S(FL) …(数2A)
【請求項7】
請求項6に記載の有機EL表示装置において、
前記緑色発光層は、さらに、化合物SHを含み、
前記遅延蛍光性の化合物DFの一重項エネルギーS(DF)と、前記化合物SHの一重項エネルギーS(SH)とが、下記数式(数2B)の関係を満たす、
有機EL表示装置。
(SH)>S(DF) …(数2B)
【請求項8】
請求項4から請求項7のいずれか一項に記載の有機EL表示装置において、
前記青色有機EL素子における電子輸送帯域の厚さは、前記緑色有機EL素子における電子輸送帯域の厚さよりも小さく、
前記緑色有機EL素子における電子輸送帯域の厚さは、前記赤色有機EL素子における電子輸送帯域の厚さよりも小さい、
有機EL表示装置。
【請求項9】
請求項4から請求項8のいずれか一項に記載の有機EL表示装置において、
前記青色有機EL素子、前記緑色有機EL素子及び前記赤色有機EL素子のそれぞれにおける前記透明電極及び前記正孔輸送帯域の膜厚の和が15nm以上である、
有機EL表示装置。
【請求項10】
請求項4から請求項9のいずれか一項に記載の有機EL表示装置において、
前記緑色有機EL素子における電子輸送帯域が複数の層からなる、
有機EL表示装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の有機EL表示装置において、
前記赤色発光層は、さらに、蛍光性の化合物FLを含み、
前記遅延蛍光性の化合物DFの一重項エネルギーS(DF)と、前記蛍光性の化合物FLの一重項エネルギーS(FL)とが、下記数式(数1A)の関係を満たす、
有機EL表示装置。
(DF)>S(FL) …(数1A)
【請求項12】
請求項11に記載の有機EL表示装置において、
前記赤色発光層は、さらに、化合物SHを含み、
前記遅延蛍光性の化合物DFの一重項エネルギーS(DF)と、前記化合物SHの一重項エネルギーS(SH)とが、下記数式(数1B)の関係を満たす、
有機EL表示装置。
(SH)>S(DF) …(数1B)
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の有機EL表示装置において、
前記赤色有機EL素子における電子輸送帯域が複数の層からなる、
有機EL表示装置。
【請求項14】
青色有機EL素子と、緑色有機EL素子と、をそれぞれ画素として有し、
前記青色有機EL素子及び前記緑色有機EL素子のいずれも、
光反射層、
透明電極、
正孔輸送帯域、
発光層、
電子輸送帯域、及び
半透過性電極をこの順で有し、
前記青色有機EL素子及び前記緑色有機EL素子のいずれにおいても、
前記光反射層と前記透明電極とが直接接し、
前記透明電極と前記正孔輸送帯域とが直接接し、
前記正孔輸送帯域と前記発光層とが直接接し、
前記発光層と前記電子輸送帯域とが直接接し、
前記電子輸送帯域と前記半透過性電極とが直接接し、
前記青色有機EL素子は、前記発光層としての青色発光層を有し、
前記緑色有機EL素子は、前記発光層としての緑色発光層を有し、
前記青色発光層は、蛍光性の化合物FLを含み、
前記緑色発光層は、遅延蛍光性の化合物DFを含み、
前記正孔輸送帯域は、前記青色有機EL素子及び前記緑色有機EL素子に亘って同じ膜厚で共通して設けられ、
前記緑色有機EL素子は、前記光反射層と前記半透過性電極との間で干渉次数が一次の共振器構造を有しており、
前記緑色発光層の膜厚は、40nm未満であり、
前記青色有機EL素子及び前記緑色有機EL素子のそれぞれにおける前記透明電極及び前記正孔輸送帯域の膜厚の和が40nm未満である、
有機EL表示装置。
【請求項15】
請求項14に記載の有機EL表示装置において、
前記緑色発光層は、さらに、蛍光性の化合物FLを含み、
前記遅延蛍光性の化合物DFの一重項エネルギーS(DF)と、前記蛍光性の化合物FLの一重項エネルギーS(FL)とが、下記数式(数2A)の関係を満たす、
有機EL表示装置。
(DF)>S(FL) …(数2A)
【請求項16】
請求項15に記載の有機EL表示装置において、
前記緑色発光層は、さらに、化合物SHを含み、
前記遅延蛍光性の化合物DFの一重項エネルギーS(DF)と、前記化合物SHの一重項エネルギーS(SH)とが、下記数式(数2B)の関係を満たす、
有機EL表示装置。
(SH)>S(DF) …(数2B)
【請求項17】
請求項14から請求項16のいずれか一項に記載の有機EL表示装置において、
前記青色有機EL素子における電子輸送帯域の厚さは、前記緑色有機EL素子における電子輸送帯域の厚さよりも小さい、
有機EL表示装置。
【請求項18】
請求項14から請求項17のいずれか一項に記載の有機EL表示装置において、
前記青色有機EL素子及び前記緑色有機EL素子のそれぞれにおける前記透明電極及び前記正孔輸送帯域の膜厚の和が15nm以上である、
有機EL表示装置。
【請求項19】
請求項14から請求項18のいずれか一項に記載の有機EL表示装置において、
前記緑色有機EL素子における電子輸送帯域が複数の層からなる、
有機EL表示装置。
【請求項20】
請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の有機EL表示装置において、
前記透明電極の膜厚は、15nm以下である、
有機EL表示装置。
【請求項21】
請求項1から請求項20のいずれか一項に記載の有機EL表示装置において、
前記透明電極の膜厚は、5nm以上である、
有機EL表示装置。
【請求項22】
請求項1から請求項21のいずれか一項に記載の有機EL表示装置において、
前記正孔輸送帯域の膜厚は、10nm以上25nm未満である、
有機EL表示装置。
【請求項23】
請求項1から請求項22のいずれか一項に記載の有機EL表示装置において、
前記正孔輸送帯域が単一の層のみからなる、
有機EL表示装置。
【請求項24】
請求項1から請求項23のいずれか一項に記載の有機EL表示装置において、
前記青色有機EL素子における電子輸送帯域が複数の層からなる、
有機EL表示装置。
【請求項25】
請求項1から請求項24のいずれか一項に記載の有機EL表示装置を搭載した電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子という場合がある。)は、陽極及び陰極の間に発光層を挟んだ構造を有する。陽極から発光層に正孔が注入され、陰極から発光層に電子が注入される。発光層で正孔と電子とが再結合することによって、有機EL素子は、発光する。
【0003】
有機EL表示装置は、有機EL素子を画素として含む。画素としての有機EL素子は、発光色に応じた色で発光可能な発光層を有する。
例えば、特許文献1には、赤色有機EL素子、緑色有機EL素子及び青色有機EL素子をそれぞれ画素として有する有機EL表示装置が記載されている。
特許文献1に記載の有機EL表示装置においては、緑色有機EL素子の発光層が遅延蛍光材料を有する。
【0004】
有機EL素子として熱活性化遅延蛍光(以下、単に「遅延蛍光」という場合がある。)を利用した蛍光型の有機EL素子が提案され、研究がなされている。
例えば、TADF(Thermally Activated Delayed Fluorescence、熱活性化遅延蛍光)機構(メカニズム)が研究されている。このTADFメカニズムは、一重項準位と三重項準位とのエネルギー差(ΔST)の小さな材料を用いた場合に、三重項励起子から一重項励起子への逆項間交差が熱的に生じる現象を利用するメカニズムである。熱活性化遅延蛍光については、例えば、『安達千波矢編、「有機半導体のデバイス物性」、講談社、2012年4月1日発行、261-268ページ』に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-114428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
TADFメカニズムを利用した有機EL素子は、従来の蛍光型の有機EL素子とは異なるメカニズムで発光する。そのため、TADF材料を含む有機EL素子を搭載した有機EL表示装置は、TADFメカニズムを考慮して構造設計される。
【0007】
本発明の目的は、高性能な有機EL表示装置、例えば、生産効率を低下させずに、光取り出し効率及び/または発光色の角度依存性が小さい有機EL表示装置を提供すること、並びに当該有機EL表示装置を搭載した電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、青色有機EL素子と、赤色有機EL素子と、をそれぞれ画素として有し、
前記青色有機EL素子及び前記赤色有機EL素子のいずれも、
光反射層、
透明電極、
正孔輸送帯域、
発光層、
電子輸送帯域、及び
半透過性電極をこの順で有し、
前記青色有機EL素子及び前記赤色有機EL素子のいずれにおいても、
前記光反射層と前記透明電極とが直接接し、
前記透明電極と前記正孔輸送帯域とが直接接し、
前記正孔輸送帯域と前記発光層とが直接接し、
前記発光層と前記電子輸送帯域とが直接接し、
前記電子輸送帯域と前記半透過性電極とが直接接し、
前記青色有機EL素子は、前記発光層としての青色発光層を有し、
前記赤色有機EL素子は、前記発光層としての赤色発光層を有し、
前記青色発光層は、蛍光性の化合物FLを含み、
前記赤色発光層は、遅延蛍光性の化合物DFを含み、
前記正孔輸送帯域は、前記青色有機EL素子及び前記赤色有機EL素子に亘って同じ膜厚で共通して設けられ、
前記赤色有機EL素子は、前記光反射層と前記半透過性電極との間で干渉次数が一次の共振器構造を有しており、
前記赤色発光層の膜厚は、50nm未満であり、
前記青色有機EL素子及び前記赤色有機EL素子のそれぞれにおける前記透明電極及び前記正孔輸送帯域の膜厚の和が40nm未満である、
有機EL表示装置が提供される。
【0009】
本発明の一態様によれば、青色有機EL素子と、緑色有機EL素子と、赤色有機EL素子と、をそれぞれ画素として有し、
前記青色有機EL素子、前記緑色有機EL素子及び前記赤色有機EL素子のいずれも、
光反射層、
透明電極、
正孔輸送帯域、
発光層、
電子輸送帯域、及び
半透過性電極をこの順で有し、
前記青色有機EL素子、前記緑色有機EL素子及び前記赤色有機EL素子のいずれにおいても、
前記光反射層と前記透明電極とが直接接し、
前記透明電極と前記正孔輸送帯域とが直接接し、
前記正孔輸送帯域と前記発光層とが直接接し、
前記発光層と前記電子輸送帯域とが直接接し、
前記電子輸送帯域と前記半透過性電極とが直接接し、
前記青色有機EL素子は、前記発光層としての青色発光層を有し、
前記緑色有機EL素子は、前記発光層としての緑色発光層を有し、
前記赤色有機EL素子は、前記発光層としての赤色発光層を有し、
前記青色発光層は、蛍光性の化合物FLを含み、
前記赤色発光層は、遅延蛍光性の化合物DFを含み、
前記正孔輸送帯域は、前記青色有機EL素子、前記緑色有機EL素子及び前記赤色有機EL素子に亘って同じ膜厚で共通して設けられ、
前記赤色有機EL素子は、前記光反射層と前記半透過性電極との間で干渉次数が一次の共振器構造を有しており、
前記赤色発光層の膜厚は、50nm未満であり、
前記青色有機EL素子、前記緑色有機EL素子及び前記赤色有機EL素子のそれぞれにおける前記透明電極及び前記正孔輸送帯域の膜厚の和が40nm未満である、
有機EL表示装置が提供される。
【0010】
本発明の一態様によれば、
青色有機EL素子と、緑色有機EL素子と、をそれぞれ画素として有し、
前記青色有機EL素子及び前記緑色有機EL素子のいずれも、
光反射層、
透明電極、
正孔輸送帯域、
発光層、
電子輸送帯域、及び
半透過性電極をこの順で有し、
前記青色有機EL素子及び前記緑色有機EL素子のいずれにおいても、
前記光反射層と前記透明電極とが直接接し、
前記透明電極と前記正孔輸送帯域とが直接接し、
前記正孔輸送帯域と前記発光層とが直接接し、
前記発光層と前記電子輸送帯域とが直接接し、
前記電子輸送帯域と前記半透過性電極とが直接接し、
前記青色有機EL素子は、前記発光層としての青色発光層を有し、
前記緑色有機EL素子は、前記発光層としての緑色発光層を有し、
前記青色発光層は、蛍光性の化合物FLを含み、
前記緑色発光層は、遅延蛍光性の化合物DFを含み、
前記正孔輸送帯域は、前記青色有機EL素子及び前記緑色有機EL素子に亘って同じ膜厚で共通して設けられ、
前記緑色有機EL素子は、前記光反射層と前記半透過性電極との間で干渉次数が一次の共振器構造を有しており、
前記緑色発光層の膜厚は、40nm未満であり、
前記青色有機EL素子及び前記緑色有機EL素子のそれぞれにおける前記透明電極及び前記正孔輸送帯域の膜厚の和が40nm未満である、
有機EL表示装置が提供される。
【0011】
本発明の一態様によれば、前述の本発明の一態様に係る有機EL表示装置のいずれかを搭載した電子機器が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、高性能な有機EL表示装置を提供できる。本発明の一態様によれば、当該有機EL表示装置を搭載した及び電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る有機EL表示装置の概略構成を示す図である。
図2】過渡PLを測定する装置の概略図である。
図3】過渡PLの減衰曲線の一例を示す図である。
図4】赤色発光層における遅延蛍光性の化合物及び蛍光性の化合物のエネルギー準位並びにエネルギー移動の関係を示す図である。
図5】第2実施形態に係る有機EL表示装置の概略構成を示す図である。
図6】緑色発光層における遅延蛍光性の化合物及び蛍光性の化合物のエネルギー準位並びにエネルギー移動の関係を示す図である。
図7】第3実施形態に係る有機EL表示装置の概略構成を示す図である。
図8】第4実施形態に係る有機EL表示装置において、赤色発光層における遅延蛍光性の化合物、蛍光性の化合物及び第三成分としての化合物のエネルギー準位及びエネルギー移動の関係を示す図である。
図9】第5実施形態に係る有機EL表示装置において、緑色発光層における遅延蛍光性の化合物、蛍光性の化合物及び第三成分としての化合物のエネルギー準位及びエネルギー移動の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔第1実施形態〕
[有機EL表示装置]
第1実施形態に係る有機EL表示装置の一例の構成について図1を参照して説明する。
図1には、有機EL表示装置1が記載されている。
有機EL表示装置1は、青色有機EL素子10Bと、赤色有機EL素子10Rと、をそれぞれ画素として有する。
【0015】
青色有機EL素子10B及び赤色有機EL素子10Rのいずれも、光反射層2、透明電極3、正孔輸送帯域4、発光層5、電子輸送帯域6、及び半透過性電極7を有する。本明細書において、正孔輸送帯域4、発光層5及び電子輸送帯域6を有機層と称する場合がある。
青色有機EL素子10B及び赤色有機EL素子10Rのいずれも、光反射層2、透明電極3、正孔輸送帯域4、発光層5、電子輸送帯域6、及び半透過性電極7をこの順で有する。有機EL表示装置1においては、画素としての青色有機EL素子10B及び赤色有機EL素子10Rが基板8の上に並列に配置されている。
【0016】
青色有機EL素子10B及び赤色有機EL素子10Rのいずれにおいても、透明電極3と正孔輸送帯域4とが直接接し、正孔輸送帯域4と発光層5とが直接接し、発光層5と電子輸送帯域6とが直接接し、電子輸送帯域6と半透過性電極7とが直接接している。
【0017】
有機EL表示装置1は、青色画素としての青色有機EL素子10B及び赤色画素としての赤色有機EL素子10Rを有する。各画素には独立してそれぞれ電圧がかかる。有機EL表示装置1において、青色画素及び赤色画素を選択的に発光させることができる。有機EL表示装置1は、青色画素及び赤色画素を1つずつ含む単位を、複数、有してもよい。この場合、当該青色画素及び赤色画素からなる単位が、複数、基板上に繰り返し配列されていてもよい。また、一単位中にそれぞれの画素が、複数、含まれていてもよく、例えば、青色画素が1つ、赤色画素が2つである構成を一単位としてもよい。なお、本実施形態に係る有機EL表示装置は、青色画素及び赤色画素以外の他の色で発光する画素を有してもよい。
【0018】
(赤色有機EL素子)
赤色有機EL素子10Rは、発光層5としての赤色発光層5Rを有する。図1中、赤色発光層5Rは「R」と示される。
【0019】
赤色有機EL素子10Rは、光反射層2、透明電極3、正孔輸送帯域4、発光層5、電子輸送帯域6、及び半透過性電極7のそれぞれに対応する、光反射層2R、透明電極3R、正孔輸送帯域4R、赤色発光層5R、電子輸送帯域6R、及び半透過性電極7Rを有する。
【0020】
赤色発光層5Rは、正孔輸送帯域4Rと電子輸送帯域6Rとの間に含まれる。
赤色発光層5Rは、正孔輸送帯域4Rと直接接し、さらに、電子輸送帯域6Rとも直接接している。
【0021】
赤色発光層5Rの膜厚は、50nm未満である。赤色発光層5Rの膜厚は、15nm以上であることが好ましい。
赤色発光層5Rの膜厚は、青色発光層5Bの膜厚よりも大きい。
【0022】
(層又は帯域の膜厚の測定方法)
有機EL素子が含む各層又は帯域の膜厚は、以下のように測定できる。
測定対象となる層又は帯域を有する有機EL素子の中心部を、測定対象の層又は帯域の形成面に対して垂直方向(つまり有機層の厚さ方向)に切断し、その中心部の切断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察して、膜厚を測定する。
例えば、赤色有機EL素子10Rの赤色発光層5Rの膜厚を測定する場合、測定対象となる層を有する赤色有機EL素子10Rの中心部を、赤色発光層5Rの形成面に対して垂直方向(つまり赤色発光層5Rの厚さ方向)に切断し、その中心部の切断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察して、膜厚を測定する。赤色有機EL素子10Rの中心部は、図1中、符号CLで示し、青色有機EL素子10Bの中心部は、図1中、符号CLで示す。
なお、有機EL素子の中心部とは、各画素において、有機EL素子を半透過性電極側から投影した形状の中心部を意味し、例えば、投影形状が矩形状である場合には矩形の対角線の交点を意味する。
本明細書において、厚さとは、目的とする帯域又は層がそれぞれ複数層で構成される場合、複数の層の厚さの和を意味する。
【0023】
本実施形態に係る有機EL表示装置1において、赤色有機EL素子10Rが、光反射層2と半透過性電極7との間で干渉次数が一次の共振器構造を有する。具体的には、赤色有機EL素子10Rは、光反射層2Rと半透過性電極7Rとの間で干渉次数が一次の共振器構造を有する。赤色有機EL素子10Rにおける光反射層2Rと半透過性電極7Rとの間隔d1は、正孔輸送帯域4Rの厚さ、赤色発光層5Rの厚さ及び電子輸送帯域6Rの厚さの和に相当する。
【0024】
[共振器構造]
以下に有機EL素子における共振器構造について説明する。
有機EL表示装置1が有する有機EL素子を、光反射層2と半透過性電極7との間で発光光を共振させて取り出す共振器構造とすることで、取り出し光の色純度を向上させ、共振の中心波長付近の取り出し光の強度を向上させることができる。
光反射層2の発光層5側の反射端面を第1端部P1とし、
半透過性電極7の発光層5側の反射端面を第2端部P2とし、
有機層(正孔輸送帯域4、発光層5及び電子輸送帯域6)を共振部として、
発光層5で発生した光を共振させて第2端部P2側から取り出す共振器構造とした場合には、下記数式(OP1)を満たすように、共振器の第1端部P1と第2端部P2との間の光学的距離Lを設定する。光学的距離Lは、実際には、数式(OP1)を満たす正の最小値となるように選択することが好ましい。
【0025】
【数1】
【0026】
上記数式(OP1)における記号の説明は、以下の通りである。
Lは、第1端部P1と第2端部P2との間の光学的距離である。
Φは、第1端部P1で生じる反射光の位相シフトΦ1と第2端部P2で生じる反射光の位相シフトΦ2との和(Φ=Φ1+Φ2)であり、位相シフトの単位は、radである。
λは、第2端部P2の側から取り出したい光のスペクトルのピーク波長である。
mは、Lが正となる整数であり、mは、干渉次数に相当する。mが1のとき、有機EL素子は、干渉次数が一次である共振器構造を有する。
数式(OP1)において、L及びλは、単位が共通すればよく、L及びλの単位は、例えば、nmである。
【0027】
光学的距離Lは、光反射層2と半透過性電極7との間の有機層の光学膜厚(=屈折率(n)×膜厚(d))の総和(=n+n+・・・)である。なお、実際に光反射層2並びに半透過性電極7にて光が反射する際、反射界面を構成する電極材料及び有機材料の組み合わせにより、位相シフトの和Φが変化する。
【0028】
有機EL表示装置1においては、発光層5の最大発光位置と第1端部P1との間の光学的距離Lが下記数式(OP2)を満たし、最大発光位置と第2端部P2との間の光学的距離Lが下記数式(OP3)を満たすように調整されていることが好ましい。ここで、最大発光位置とは、発光領域のうちで最も発光強度が大きい位置を言う。例えば、発光層5の光反射層2側の界面及び半透過性電極7側の界面の両方で発光する場合、最大発光位置は、それら界面の内、発光強度が大きい方の界面である。
【0029】
【数2】
【0030】
上記数式(OP2)における記号の説明は、以下の通りである。
tLは、第1端部P1と最大発光位置との間の光学的理論距離である。
は、発光層5における発光分布に基づく補正量である。
λは、取り出したい光のスペクトルのピーク波長である。
Φは、第1端部P1で生じる反射光の位相シフトであり、単位は、radである。
は、0又は整数である。有機EL表示装置1において、mは、0である。mが0であるときの光学的距離Lの位置が光反射層2側からみた「0次干渉位置」に相当する。
【0031】
【数3】
【0032】
上記数式(OP3)における記号の説明は、以下の通りである。
tLは、第2端部P2と最大発光位置との間の光学的理論距離である。
は、発光層5における発光分布に基づく補正量である。
λは、取り出したい光のスペクトルのピーク波長である。
Φは、第2端部P2で生じる反射光の位相シフトであり、単位は、radである。
は、0または整数である。mは、1であることが好ましい。
が0であり、mが1であることがより好ましい。mが1であるときの光学的距離Lの位置が半透過性電極7側からみた「1次干渉位置」に相当する。
【0033】
上記数式(OP2)は、発光層5で発生した光のうち光反射層2の方へ向かう光が第1端部P1で反射して戻ってきたときに、その戻り光の位相と発光時の位相とが同一となり、発光した光のうち半透過性電極7の方へ向かう光と強め合う関係となるようにするための条件を表す。
また、数式(OP3)は、発光層5で発生した光のうち半透過性電極7の方へ向かう光が第2端部P2で反射して戻ってきたときに、その戻り光の位相と発光時の位相とが同一となり、発光した光のうち光反射層2の方へ向かう光と強め合う関係となるようにするための条件を表す。
【0034】
本実施形態の有機EL表示装置1では、電子輸送帯域6の膜厚を正孔輸送帯域4の膜厚よりも厚く形成することで、上記数式(OP2)及び(OP3)中のm及びmが、m>mとなるように設計することが可能である。m>mとなるように設計することにより、有機EL表示装置1の視野角を改善することができる。
【0035】
尚、数式(OP2)の光学的理論距離tL及び数式(OP3)の光学的理論距離tLは、発光領域に広がりがないと考えた場合に、第1端部P1又は第2端部P2での位相変化量と、進行することでの位相変化量がちょうど打ち消し合い、戻り光の位相と発光時の位相とが同一となる理論値である。ただし、発光領域には通常広がりがあるので、数式(OP2)及び数式(OP3)では、発光分布に基づく補正量a及びaが加えられている。
【0036】
補正量a及びaは、発光分布により異なるが、最大発光位置が発光層5の半透過性電極7側にあり、発光分布が最大発光位置から光反射層2側に広がっている場合、又は最大発光位置が発光層5の光反射層2側にあり、発光分布が最大発光位置から半透過性電極7側に広がっている場合には、例えば、下記数式(OP4)により補正量a及びaを求めることができる。
【0037】
【数4】
【0038】
上記数式(OP4)における記号の説明は、以下の通りである。
bは、発光層5における発光分布が最大発光位置から光反射層2の方向へ広がっている場合には2n≦b≦6nの範囲内の値であり、最大発光位置から半透過性電極7の方向へ広がっている場合には-6n≦b≦-2nの範囲内の値である。
sは、発光層5における発光分布に関する物性値(1/e減衰距離)である。
nは、取り出したい光のスペクトルのピーク波長λにおける第1端部P1と第2端部P2との間の平均屈折率である。
【0039】
以上が有機EL表示装置における共振器構造の説明である。
本実施形態に係る有機EL表示装置1は、赤色有機EL素子10Rが共振器構造を有する。共振器構造を有する赤色有機EL素子10Rについては、上記共振器構造の説明中、光反射層2、半透過性電極7、正孔輸送帯域4、発光層5及び電子輸送帯域6のそれぞれを、光反射層2R、半透過性電極7R、正孔輸送帯域4R、赤色発光層5R及び電子輸送帯域6Rとして読み替えて適用できる。
【0040】
(赤色発光層)
赤色発光層5Rは、遅延蛍光性の化合物DFを含む。
【0041】
一実施形態においては、赤色発光層5Rは、さらに、蛍光性の化合物FLを含むことが好ましい。本明細書において、「蛍光性の化合物」は、遅延蛍光性を示さない化合物である。よって、蛍光性の化合物FLは、遅延蛍光性を示さない化合物である。
【0042】
赤色発光層5Rが遅延蛍光性の化合物DF及び蛍光性の化合物FLを含む場合、遅延蛍光性の化合物DFの一重項エネルギーS(DF)と、蛍光性の化合物FLの一重項エネルギーS(FL)とが、下記数式(数1A)の関係を満たすことが好ましい。
(DF)>S(FL) …(数1A)
【0043】
赤色発光層5Rが蛍光性の化合物FLを含む場合、化合物FLは、赤色蛍光発光性の化合物であることが好ましい。
【0044】
赤色発光層5Rにおいて、蛍光性の化合物FLは、ドーパント材料(ゲスト材料、エミッター又は発光材料と称する場合もある。)であることが好ましく、遅延蛍光性の化合物DFは、ホスト材料(マトリックス材料と称する場合もある。)であることが好ましい。
【0045】
赤色発光層5Rは、燐光発光性材料を含まないことが好ましい。
赤色発光層5Rは、重金属錯体及び燐光発光性の希土類金属錯体を含まないことが好ましい。ここで、重金属錯体としては、例えば、イリジウム錯体、オスミウム錯体、及び白金錯体等が挙げられる。
また、赤色発光層5Rは、金属錯体を含まないことも好ましい。
【0046】
・赤色発光層における化合物の含有率
本実施形態の赤色発光層5Rにおいて、蛍光性の化合物FLの含有率は、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、遅延蛍光性の化合物DFの含有率は、80質量%以上99.99質量%以下であることが好ましい。赤色発光層5Rにおける蛍光性の化合物FL、および遅延蛍光性の化合物DFの合計含有率の上限は、100質量%である。なお、本実施形態は、赤色発光層5Rに、蛍光性の化合物FL、および遅延蛍光性の化合物DF以外の材料が含まれることを除外するものではない。
赤色発光層5Rは、蛍光性の化合物FLを1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。赤色発光層5Rは、遅延蛍光性の化合物DFを1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0047】
本明細書において、赤色の発光とは、蛍光スペクトルの主ピーク波長が600nm以上、660nm以下の範囲内である発光をいう。
蛍光性の化合物FLが赤色蛍光発光性の化合物である場合、蛍光性の化合物FLの主ピーク波長は、600nm以上、660nm以下であることが好ましく、600nm以上、640nm以下であることがより好ましく、600nm以上、630nm以下であることがさらに好ましい。
本明細書において、主ピーク波長とは、測定対象化合物が10-6モル/リットル以上10-5モル/リットル以下の濃度で溶解しているトルエン溶液について、測定した蛍光スペクトルにおける発光強度が最大となる蛍光スペクトルのピーク波長をいう。測定装置は、分光蛍光光度計(日立ハイテクサイエンス社製、F-7000)を用いる。
【0048】
・遅延蛍光性
遅延蛍光については、「有機半導体のデバイス物性」(安達千波矢編、講談社発行)の261~268ページで解説されている。その文献の中で、蛍光発光材料の励起一重項状態と励起三重項状態のエネルギー差ΔE13を小さくすることができれば、通常は遷移確率が低い励起三重項状態から励起一重項状態への逆エネルギー移動が高効率で生じ、熱活性化遅延蛍光(ThermallyActivated delayed Fluorescence,TADF)が発現すると説明されている。さらに、当該文献中の図10.38で、遅延蛍光の発生メカニズムが説明されている。本実施形態における遅延蛍光性の化合物DFは、このようなメカニズムで発生する熱活性化遅延蛍光を示す化合物であることが好ましい。
【0049】
一般に、遅延蛍光の発光は過渡PL(Photo Luminescence)測定により確認できる。
【0050】
過渡PL測定から得た減衰曲線に基づいて遅延蛍光の挙動を解析することもできる。過渡PL測定とは、試料にパルスレーザーを照射して励起させ、照射を止めた後のPL発光の減衰挙動(過渡特性)を測定する手法である。TADF材料におけるPL発光は、最初のPL励起で生成する一重項励起子からの発光成分と、三重項励起子を経由して生成する一重項励起子からの発光成分に分類される。最初のPL励起で生成する一重項励起子の寿命は、ナノ秒オーダーであり、非常に短い。そのため、当該一重項励起子からの発光は、パルスレーザーを照射後、速やかに減衰する。
一方、遅延蛍光は、寿命の長い三重項励起子を経由して生成する一重項励起子からの発光のため、ゆるやかに減衰する。このように最初のPL励起で生成する一重項励起子からの発光と、三重項励起子を経由して生成する一重項励起子からの発光とでは、時間的に大きな差がある。そのため、遅延蛍光由来の発光強度を求めることができる。
【0051】
図2には、過渡PLを測定するための例示的装置の概略図が示されている。図2を用いた過渡PLの測定方法、及び遅延蛍光の挙動解析の一例を説明する。
【0052】
図2の過渡PL測定装置100は、所定波長の光を照射可能なパルスレーザー部101と、測定試料を収容する試料室102と、測定試料から放射された光を分光する分光器103と、2次元像を結像するためのストリークカメラ104と、2次元像を取り込んで解析するパーソナルコンピュータ105とを備える。なお、過渡PLの測定は、図2に記載の装置に限定されない。
【0053】
試料室102に収容される試料は、マトリックス材料に対し、ドーピング材料が12質量%の濃度でドープされた薄膜を石英基板に成膜することで得られる。
【0054】
試料室102に収容された薄膜試料に対し、パルスレーザー部101からパルスレーザーを照射してドーピング材料を励起させる。励起光の照射方向に対して90度の方向へ発光を取り出し、取り出した光を分光器103で分光し、ストリークカメラ104内で2次元像を結像する。その結果、縦軸が時間に対応し、横軸が波長に対応し、輝点が発光強度に対応する2次元画像を得ることができる。この2次元画像を所定の時間軸で切り出すと、縦軸が発光強度であり、横軸が波長である発光スペクトルを得ることができる。また、当該2次元画像を波長軸で切り出すと、縦軸が発光強度の対数であり、横軸が時間である減衰曲線(過渡PL)を得ることができる。
【0055】
例えば、マトリックス材料として、下記参考化合物H1を用い、ドーピング材料として下記参考化合物D1を用いて上述のようにして薄膜試料Aを作製し、過渡PL測定を行った。
【0056】
【化1】
【0057】
ここでは、前述の薄膜試料A、及び薄膜試料Bを用いて減衰曲線を解析した。薄膜試料Bは、マトリックス材料として下記参考化合物H2を用い、ドーピング材料として前記参考化合物D1を用いて、上述のようにして薄膜試料を作製した。
【0058】
図3には、薄膜試料A及び薄膜試料Bについて測定した過渡PLから得た減衰曲線が示されている。
【0059】
【化2】
【0060】
上記したように過渡PL測定によって、縦軸を発光強度とし、横軸を時間とする発光減衰曲線を得ることができる。この発光減衰曲線に基づいて、光励起により生成した一重項励起状態から発光する蛍光と、三重項励起状態を経由し、逆エネルギー移動により生成する一重項励起状態から発光する遅延蛍光との、蛍光強度比を見積もることができる。遅延蛍光性の材料では、素早く減衰する蛍光の強度に対し、緩やかに減衰する遅延蛍光の強度の割合が、ある程度大きい。
【0061】
具体的には、遅延蛍光性の材料からの発光としては、Prompt発光(即時発光)と、Delay発光(遅延発光)とが存在する。Prompt発光(即時発光)とは、当該遅延蛍光性の材料が吸収する波長のパルス光(パルスレーザーから照射される光)で励起された後、当該励起状態から即座に観察される発光である。Delay発光(遅延発光)とは、当該パルス光による励起後、即座には観察されず、その後観察される発光である。
【0062】
Prompt発光とDelay発光の量とその比は、“Nature 492, 234-238, 2012”(参考文献1)に記載された方法と同様の方法により求めることができる。なお、Prompt発光とDelay発光の量の算出に使用される装置は、前記参考文献1に記載の装置、または図2に記載の装置に限定されない。
【0063】
また、本実施形態では、化合物DFの遅延蛍光性の測定には、次に示す方法により作製した試料を用いる。例えば、化合物DFをトルエンに溶解し、自己吸収の寄与を取り除くため励起波長において吸光度が0.05以下の希薄溶液を調製する。また酸素による消光を防ぐため、試料溶液を凍結脱気した後にアルゴン雰囲気下で蓋付きのセルに封入することで、アルゴンで飽和された酸素フリーの試料溶液とする。
上記試料溶液の蛍光スペクトルを分光蛍光光度計FP-8600(日本分光社製)で測定し、また同条件で9,10-ジフェニルアントラセンのエタノール溶液の蛍光スペクトルを測定する。両スペクトルの蛍光面積強度を用いて、Morris et al. J.Phys.Chem.80(1976)969中の(1)式により全蛍光量子収率を算出する。
【0064】
Prompt発光とDelay発光の量とその比は、“Nature 492, 234-238, 2012”(参考文献1)に記載された方法と同様の方法により求めることができる。なお、Prompt発光とDelay発光の量の算出に使用される装置は、前記参考文献1に記載の装置、または図2に記載の装置に限定されない。
本実施形態においては、測定対象化合物(化合物DF)のPrompt発光(即時発光)の量をXとし、Delay発光(遅延発光)の量をXとしたときに、X/Xの値が0.05以上であることが好ましい。
本明細書における化合物DF以外の化合物のPrompt発光とDelay発光の量とその比の測定も、化合物DFのPrompt発光とDelay発光の量とその比の測定と同様である。
【0065】
(TADF機構)
本実施形態の赤色有機EL素子10Rでは、化合物DFとしてΔST(DF)が小さい化合物を用いることが好ましく、外部から与えられる熱エネルギーによって、化合物DFの三重項準位から化合物DFの一重項準位への逆項間交差が起こり易くなる。有機EL素子内部の電気励起された励起子の励起三重項状態が、逆項間交差によって、励起一重項状態へスピン交換がされるエネルギー状態変換機構をTADF機構と呼ぶ。
【0066】
図4は、赤色発光層5Rにおける化合物DF及び化合物FLのエネルギー準位の関係の一例を示す図である。図4中の記号の説明は、以下の通りである。
S0は、基底状態を表す。
S1(DF)は、化合物DFの最低励起一重項状態を表す。
T1(DF)は、化合物DFの最低励起三重項状態を表す。
S1(FL)は、化合物FLの最低励起一重項状態を表す。
T1(FL)は、化合物FLの最低励起三重項状態を表す。
【0067】
図4中のS1(DF)からS1(FL)へ向かう破線の矢印は、化合物DFの最低励起一重項状態から化合物FLの最低励起一重項状態へのフェルスター型エネルギー移動を表す。なお、本実施形態では、最低励起一重項状態S1と最低励起三重項状態T1との差を、ΔSTとして定義する。
図4に示すように、化合物DFとしてΔST(DF)の小さな化合物を用いると、最低励起三重項状態T1(DF)は、熱エネルギーにより、最低励起一重項状態S1(DF)に逆項間交差が可能である。そして、化合物DFの最低励起一重項状態S1(DF)から化合物FLへのフェルスター型エネルギー移動が生じ、最低励起一重項状態S1(FL)が生成する。この結果、化合物FLの最低励起一重項状態S1(FL)からの蛍光発光を観測することができる。このTADF機構による遅延蛍光を利用することによっても、理論的に内部効率を100%まで高めることができると考えられている。
【0068】
・三重項エネルギーと77[K]におけるエネルギーギャップとの関係
ここで、三重項エネルギーと77[K]におけるエネルギーギャップとの関係について説明する。本実施形態では、77[K]におけるエネルギーギャップは、通常定義される三重項エネルギーとは異なる点がある。
三重項エネルギーの測定は、次のようにして行われる。まず、測定対象となる化合物を適切な溶媒中に溶解した溶液を石英ガラス管内に封入した試料を作製する。この試料について、低温(77[K])で燐光スペクトル(縦軸:燐光発光強度、横軸:波長とする。)を測定し、この燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値に基づいて、所定の換算式から三重項エネルギーを算出する。
ここで、本実施形態に係る化合物の内、熱活性化遅延蛍光性の化合物は、ΔSTが小さい化合物であることが好ましい。ΔSTが小さいと、低温(77[K])状態でも、項間交差、及び逆項間交差が起こりやすく、励起一重項状態と励起三重項状態とが混在する。その結果、上記と同様にして測定されるスペクトルは、励起一重項状態、及び励起三重項状態の両者からの発光を含んでおり、いずれの状態から発光したのかについて峻別することは困難であるが、基本的には三重項エネルギーの値が支配的と考えられる。
そのため、本実施形態では、通常の三重項エネルギーTと測定手法は同じであるが、その厳密な意味において異なることを区別するため、次のようにして測定される値をエネルギーギャップT77Kと称する。測定対象となる化合物をEPA(ジエチルエーテル:イソペンタン:エタノール=5:5:2(容積比))中に、濃度が10μmol/Lとなるように溶解し、この溶液を石英セル中に入れて測定試料とする。この測定試料について、
低温(77[K])で燐光スペクトル(縦軸:燐光発光強度、横軸:波長とする。)を測定し、この燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]に基づいて、次の換算式(F1)から算出されるエネルギー量を77[K]におけるエネルギーギャップT77Kとする。
換算式(F1):T77K[eV]=1239.85/λedge
【0069】
燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線は以下のように引く。燐光スペクトルの短波長側から、スペクトルの極大値のうち、最も短波長側の極大値までスペクトル曲線上を移動する際に、長波長側に向けて曲線上の各点における接線を考える。この接線は、曲線が立ち上がるにつれ(つまり縦軸が増加するにつれ)、傾きが増加する。この傾きの値が極大値をとる点において引いた接線(すなわち変曲点における接線)が、当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とする。
なお、スペクトルの最大ピーク強度の15%以下のピーク強度をもつ極大点は、上述の最も短波長側の極大値には含めず、最も短波長側の極大値に最も近い、傾きの値が極大値をとる点において引いた接線を当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とする。
燐光の測定には、(株)日立ハイテクノロジー製のF-4500形分光蛍光光度計本体を用いることができる。なお、測定装置はこの限りではなく、冷却装置、及び低温用容器と、励起光源と、受光装置とを組み合わせることにより、測定してもよい。
【0070】
・最低励起一重項エネルギーS
溶液を用いた最低励起一重項エネルギーSの測定方法(溶液法と称する場合がある。)としては、下記の方法が挙げられる。
測定対象となる化合物の10μmol/Lトルエン溶液を調製して石英セルに入れ、常温(300K)でこの試料の吸収スペクトル(縦軸:吸収強度、横軸:波長とする。)を測定する。この吸収スペクトルの長波長側の立ち下がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]を次に示す換算式(F2)に代入して最低励起一重項エネルギーを算出する。
換算式(F2):S[eV]=1239.85/λedge
吸収スペクトル測定装置としては、例えば、日立社製の分光光度計(装置名:U3310)が挙げられるが、これに限定されない。
【0071】
吸収スペクトルの長波長側の立ち下がりに対する接線は以下のように引く。吸収スペクトルの極大値のうち、最も長波長側の極大値から長波長方向にスペクトル曲線上を移動する際に、曲線上の各点における接線を考える。この接線は、曲線が立ち下がるにつれ(つまり縦軸の値が減少するにつれ)、傾きが減少しその後増加することを繰り返す。傾きの値が最も長波長側(ただし、吸光度が0.1以下となる場合は除く)で極小値をとる点において引いた接線を当該吸収スペクトルの長波長側の立ち下がりに対する接線とする。
なお、吸光度の値が0.2以下の極大点は、上記最も長波長側の極大値には含めない。
【0072】
本実施形態では、最低励起一重項エネルギーSと、77[K]におけるエネルギーギャップT77Kとの差(S-T77K)をΔSTとして定義する。
【0073】
本実施形態において、遅延蛍光性の化合物DFの最低励起一重項エネルギーS(DF)と、遅延蛍光性の化合物DFの77[K]におけるエネルギーギャップT77K(DF)との差ΔST(DF)は、好ましくは0.3eV未満、より好ましくは0.2eV未満、さらに好ましくは0.1eV未満である。すなわち、ΔST(DF)は、下記数式(数10)、(数11)又は(数12)の関係を満たすことが好ましい。
ΔST(DF)=S(DF)-T77K(DF)<0.3eV …(数10)
ΔST(DF)=S(DF)-T77K(DF)<0.2eV …(数11)
ΔST(DF)=S(DF)-T77K(DF)<0.1eV …(数12)
【0074】
(青色有機EL素子)
青色有機EL素子10Bは、発光層5としての青色発光層5Bを有する。図1中、青色発光層5Bは「B」と示される。
【0075】
青色有機EL素子10Bは、光反射層2、透明電極3、正孔輸送帯域4、発光層5、電子輸送帯域6、及び半透過性電極7のそれぞれに対応する、光反射層2B、透明電極3B、正孔輸送帯域4B、青色発光層5B、電子輸送帯域6B、及び半透過性電極7Bを有する。
【0076】
青色発光層5Bは、正孔輸送帯域4Bと電子輸送帯域6Bとの間に含まれる。
青色発光層5Bは、正孔輸送帯域4Bと直接接し、さらに、電子輸送帯域6Bとも直接接している。
【0077】
青色発光層5Bの膜厚は、15nm以上であることが好ましい。青色発光層5Bの膜厚は、30nm以下であることが好ましい。青色発光層5Bの膜厚及び赤色発光層5Rの膜厚は、正孔輸送帯域4の膜厚の測定方法と同様にして測定することができる。
【0078】
青色発光層5Bは、蛍光性の化合物FLを含む。本明細書において、「蛍光性の化合物」は、遅延蛍光性を示さない化合物である。よって、蛍光性の化合物FLは、遅延蛍光性を示さない化合物である。
【0079】
蛍光性の化合物FLは、青色蛍光発光性の化合物であることが好ましい。青色蛍光発光性の化合物としては、特に制限されない。
【0080】
本明細書において、青色の発光とは、蛍光スペクトルの主ピーク波長が430nm以上、500nm以下の範囲内である発光をいう。
蛍光性の化合物FLが青色蛍光発光性の化合物である場合、蛍光性の化合物FLの主ピーク波長は、430nm以上、500nm以下であることが好ましく、430nm以上、500nm未満であることがより好ましい。
【0081】
一実施形態においては、青色発光層5Bは、さらに、化合物FHを含むことが好ましい。
青色発光層5Bが化合物FHと、蛍光性の化合物FLとを含む場合、化合物FLの一重項エネルギーS(FL)と、化合物FHの一重項エネルギーS1(FH)とが、下記数式(数3A)の関係を満たすことが好ましい。
(FH)>S(FL) …(数3A)
【0082】
青色発光層5Bが化合物FHと、蛍光性の化合物FLとを含む場合、蛍光性の化合物FLは、ドーパント材料(ゲスト材料、エミッター又は発光材料と称する場合もある。)であることが好ましく、化合物FHは、ホスト材料(マトリックス材料と称する場合もある。)であることが好ましい。化合物FHとしては、例えば、青色蛍光発光性の化合物(ドーパント材料)と組み合わせて使用できるホスト材料であれば、特に限定されず、例えば、アントラセン誘導体等が挙げられる。
【0083】
(光反射層)
光反射層2は、透明電極3と直接接している。
光反射層2の透明電極3との界面における反射率は、50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
光反射層2は、金属層であることが好ましい。金属層を構成する金属としては、特に限定されないが、例えば、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)及び銀(Ag)からなる群から選択される金属、並びにこれら金属の群から選択される複数種の金属を含む合金等が挙げられる。光反射層2としては、例えば、APC層が挙げられる。APCは、銀(Ag)、パラジウム(Pd)及び銅(Cu)の合金である。
【0084】
有機EL表示装置1における光反射層2は、非共通層であることが好ましい。すなわち、光反射層2R及び光反射層2Bは、それぞれ、非共通層であることが好ましい。
本明細書においては、複数の素子に亘って共通して設けられている層を共通層と称する場合がある。本明細書において、複数の素子に亘って共通して設けられておらず、有機EL素子ごとに設けられている層(共通層ではない層)を非共通層と称する場合がある。
【0085】
(透明電極)
透明電極3は、光反射層2と正孔輸送帯域4との間に含まれる。
透明電極3は、光反射層2と直接接し、さらに、正孔輸送帯域4とも直接接している。
透明電極3は、透明導電膜であることが好ましい。透明電極3としての透明導電膜は、例えば、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)膜及びインジウム亜鉛酸化物膜等が挙げられる。
透明電極3の透過率は、50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。透明電極3の透過率は、100%以下であることが好ましい。多重反射による減衰を抑える観点から、透明電極3の消光係数は、0.05以下であることが好ましく、0.01以下であることがより好ましい。
【0086】
透明電極3の膜厚は、15nm以下であることが好ましい。
透明電極3の膜厚は、5nm以上であることが好ましい。
透明電極3の膜厚は、前述の「層又は帯域の膜厚の測定方法」によって測定することができる。透明電極3の膜厚が15nm以下であることによって、正孔輸送帯域及び透明電極の膜厚の和を40nm未満に維持しながら、正孔輸送帯域の膜厚を厚くすることができる。透明電極3の膜厚が5nm以上であることによって、正孔を安定的に注入することができる。
【0087】
有機EL表示装置1における透明電極3は、非共通層であることが好ましい。すなわち、透明電極3R及び透明電極3Bは、それぞれ、非共通層であることが好ましい。
透明電極3R及び透明電極3Bが非共通層である場合、透明電極3R及び透明電極3Bの膜厚は、それぞれ独立に、5nm以上、15nm以下であることが好ましい。
【0088】
(正孔輸送帯域)
正孔輸送帯域4は、少なくとも透明電極3と発光層5との間に含まれる。
正孔輸送帯域4は、青色有機EL素子10B及び赤色有機EL素子10Rに亘って同じ膜厚で共通して設けられている。
本明細書においては、複数の素子に亘って共通して設けられている帯域を共通帯域と称する場合がある。
正孔輸送帯域4は、共通帯域であり、青色有機EL素子10B及び赤色有機EL素子10Rに亘って同じ膜厚である。正孔輸送帯域4が共通帯域であるため、赤色有機EL素子10R及び青色有機EL素子10Bのそれぞれの正孔輸送帯域4を、マスク等を入れ替えずに作製できる。その結果、有機EL表示装置1の生産性が向上する。
【0089】
正孔輸送帯域の膜厚は、10nm以上、25nm未満であることが好ましく、10nm以上、20nm以下であることがより好ましい。具体的には、有機EL表示装置1において、青色有機EL素子10Bにおける正孔輸送帯域4Bの膜厚が、10nm以上、25nm未満であり、かつ赤色有機EL素子10Rにおける正孔輸送帯域4Rの膜厚が、10nm以上、25nm未満であることが好ましく、正孔輸送帯域4Bの膜厚が、10nm以上、20nm以下であり、かつ正孔輸送帯域4Rの膜厚が、10nm以上、20nm以下であることがより好ましい。
正孔輸送帯域4の膜厚は、前述の「層又は帯域の膜厚の測定方法」によって測定することができる。
【0090】
青色有機EL素子10B及び赤色有機EL素子10Rのそれぞれにおける透明電極3及び正孔輸送帯域4の膜厚の和が40nm未満である。具体的には、青色有機EL素子10Bにおける透明電極3Bの膜厚と正孔輸送帯域4Bの膜厚との和が40nm未満であり、かつ、赤色有機EL素子10Rにおける透明電極3Rの膜厚と正孔輸送帯域4Rの膜厚との和が40nm未満である。透明電極3及び正孔輸送帯域4の膜厚の和は、図1中、dHT1として示す。
青色有機EL素子10B及び赤色有機EL素子10Rのそれぞれにおける透明電極3及び正孔輸送帯域4の膜厚の和が40nm未満であることによって、視野角を改善することができる。
【0091】
青色有機EL素子10B及び赤色有機EL素子10Rのそれぞれにおける透明電極3及び正孔輸送帯域4の膜厚の和が15nm以上であることが好ましい。具体的には、青色有機EL素子10Bにおける透明電極3Bの膜厚と正孔輸送帯域4Bの膜厚との和が15nm以上であり、かつ、赤色有機EL素子10Rにおける透明電極3Rの膜厚と正孔輸送帯域4Rの膜厚との和が15nm以上であることが好ましい。
【0092】
正孔輸送帯域とは、正孔が移動する領域を意味する。正孔輸送帯域における正孔移動度μは、10-6[cm/(V・s)]以上であることが好ましい。正孔移動度μ[cm/(V・s)]は、特開2014-110348号公報に記載のインピーダンス分光法にて測定することができる。
【0093】
正孔輸送帯域4は、単一の層のみからなることも好ましい。
正孔輸送帯域4は、複数の層からなることも好ましい。
正孔輸送帯域4を構成する層としては、例えば、正孔注入層、正孔輸送層及び電子障壁層が挙げられる。
正孔輸送帯域4が複数の層で構成される場合、正孔輸送帯域4を構成する各層が、青色有機EL素子10B及び赤色有機EL素子10Rに亘って同じ膜厚で共通して設けられている共通層である。
【0094】
(電子輸送帯域)
電子輸送帯域6は、少なくとも発光層5と半透過性電極7との間に含まれる。
電子輸送帯域6は、発光層5と直接接し、さらに、半透過性電極7とも直接接している。
【0095】
青色有機EL素子10Bにおける電子輸送帯域6(電子輸送帯域6B)の膜厚は、赤色有機EL素子10Rにおける電子輸送帯域6(電子輸送帯域6R)の膜厚よりも小さいことが好ましい。電子輸送帯域6B及び電子輸送帯域6Rの膜厚は、正孔輸送帯域4の膜厚の測定方法と同様にして測定することができる。
【0096】
電子輸送帯域6とは、電子が移動する領域を意味する。電子輸送帯域6における電子移動度μは、10-6[cm/(V・s)]以上であることが好ましい。電子移動度μ[cm/(V・s)]は、特開2014-110348号公報に記載のインピーダンス分光法にて測定することができる。
【0097】
電子輸送帯域6は、単層であっても複数層であってもよい。すなわち、赤色有機EL素子10Rにおける電子輸送帯域6Rは、単層からなる帯域であっても、複数層からなる帯域であってもよく、青色有機EL素子10Bにおける電子輸送帯域6Bは、単層からなる帯域であっても、複数層からなる帯域であってもよい。
電子輸送帯域6を構成する層としては、例えば、電子注入層、電子輸送層及び正孔障壁層が挙げられる。
【0098】
(半透過性電極)
半透過性電極7は、光を透過させると共に、電子輸送帯域6との界面で光を反射させる。半透過性電極7の透過率は、50%以上であることが好ましい。
半透過性電極7の膜厚は、5nm以上、30nm以下であることが好ましい。
半透過性電極7は、金属材料の単体又は合金で構成されることが好ましい。消衰係数が大きい金属材料の場合、半透過性電極7を光が透過する際に光吸収により透過光量が減少してしまう。半透過性電極7から効率よく光を取り出すためには、光吸収を抑えることが好ましい。そのため、半透過性電極7の材料としては、実部屈折率の小さい金属材料の単体又は合金を選ぶことが好ましく、金属材料としては、例えば、銀、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム及び金等が挙げられる。
【0099】
半透過性電極7は、複数の有機EL素子に亘って同じ膜厚で共通して設けられている共通層であることが好ましい。すなわち、有機EL表示装置1においては、半透過性電極7R及び半透過性電極7Bが共通層であることが好ましい。
【0100】
本実施形態に係る有機EL表示装置1においては、少なくとも光反射層2及び透明電極3により反射性電極が構成される。有機EL表示装置1は、いわゆるトップエミッション型の有機EL素子を有する。有機EL表示装置1の青色有機EL素子10B及び赤色有機EL素子10Rのそれぞれにおいては、基板8上に反射性電極を備え、有機層を挟んで反対側の半透過性電極7から光が取り出される。
本実施形態に係る有機EL表示装置1においては、反射性電極が陽極であり、半透過性電極7が陰極である。
【0101】
(キャッピング層)
有機EL表示装置1がトップエミッション型である場合、有機EL表示装置1は、陰極としての半透過性電極7の上部にキャッピング層を有してもよい。
キャッピング層の材料としては、例えば、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物、窒化ケイ素及びシリコン化合物(酸化ケイ素等)等が挙げられる。
また、キャッピング層の材料としては、例えば、芳香族アミン誘導体、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、フルオレン誘導体及びジベンゾフラン誘導体等が挙げられる。
また、有機EL表示装置1は、キャッピング層に用いられる材料を含む複数の層を積層させた積層体を、キャッピング層として有してもよい。
【0102】
(基板)
基板8は、画素としての有機EL素子を支持する支持体である。基板8の材質としては、例えば、ガラス、石英及びプラスチックが挙げられる。また、基板8として、可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板とは、折り曲げることができる(フレキシブル)基板のことである。可撓性基板としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル又はポリ塩化ビニルからなるプラスチック基板等が挙げられる。また、基板8として無機蒸着フィルムを用いることもできる。
【0103】
(層厚)
有機EL表示装置1において、陽極としての反射性電極と、半透過性電極7との間に含まれる有機層を構成する各層の膜厚は、本明細書で特に規定した場合を除いて、特に制限されない。一般に、有機層を構成する各層の膜厚は、薄すぎるとピンホール等の欠陥が生じやすく、厚すぎると高い印加電圧が必要となり効率が悪くなる。有機層を構成する各層の膜厚は、通常、数nmから1μmの範囲が好ましい。
【0104】
<有機EL表示装置の製造方法>
本実施形態の有機EL表示装置1の製造方法について説明する。
基板8上に光反射層2を積層してパターニングする。光反射層2は、トップエミッション型の構造の場合には反射層である金属層(例えばAPC層)を用いる。
次に、光反射層2の上に透明電極3を形成する。
次に、共通帯域としての正孔輸送帯域4を光反射層2及び透明電極3からなる反射性電極(陽極)の上に亘って形成する。赤色有機EL素子10R及び青色有機EL素子10Bの正孔輸送帯域4は、同じ材料、かつ、同じ膜厚で形成する。
次に、正孔輸送帯域4の上であって、青色有機EL素子10Bの透明電極3Bに対応する領域に、所定の成膜用マスクを用いて、所定膜厚で青色発光層5Bを形成する。
同様に、正孔輸送帯域4の上であって、赤色発光層5Rの透明電極3Rに対応する領域に、所定の成膜用マスクを用いて、所定膜厚で赤色発光層5Rを形成する。
青色発光層5B及び赤色発光層5Rは、それぞれ、異なる材料で形成される。
次に、青色発光層5B及び赤色発光層5Rに亘って同じ材料で電子輸送帯域6を形成する。青色有機EL素子10Bの電子輸送帯域6Bの膜厚と赤色有機EL素子10Rの電子輸送帯域6Rの膜厚とは異なる。
次に、電子輸送帯域6の上に半透過性電極7を形成する。半透過性電極7の上にキャッピング層を形成してもよい。
以上のようにして、図1に示す有機EL表示装置1を製造する。
【0105】
本明細書に記載の有機EL表示装置が有する有機EL素子の各層の形成方法としては、上記で特に言及した以外には制限されないが、乾式成膜法又は湿式成膜法等の公知の方法を採用することができる。乾式成膜法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ法、及びイオンプレーティング法等が挙げられる。湿式成膜法としては、例えば、スピンコーティング法、ディッピング法、フローコーティング法及びインクジェット法等が挙げられる。
【0106】
本実施形態によれば、高性能な有機EL表示装置1を提供できる。その理由を以下に説明する。
有機EL素子の発光層は、所定の膜厚で形成されている。主に光が発生する発光層中の位置(最大発光位置と称する場合がある。)は、発光層ごとに異なる。最大発光位置は、発光層中で正孔と電子とが再結合して励起子が主に生成及び失活する位置である。
一方で、有機EL素子には、電極間の光の干渉により生じる、「発光を強め合う位置(発光層の厚さ方向の位置)」が存在する。有機EL素子は、「発光を強め合う位置」と「最大発光位置」とが重なるように設計される。
「発光を強め合う位置」は、発光波長の関数である。従って、画素としての有機EL素子(本実施形態では、青色有機EL素子及び赤色有機EL素子)のそれぞれにおいて、「発光を強め合う位置」が、互いに異なる。なお、通常は、画素としての有機EL素子のそれぞれにおける総膜厚も、互いに異なる。
【0107】
このような実情において、本発明者らは、遅延蛍光性の化合物DFを含有する赤色発光層5Rにおける「最大発光位置」は、従来考えられていた位置とは異なり、具体的には、赤色発光層5Rの電子輸送帯域6R側の領域で、局在的に正孔と電子とが再結合することを見出した。遅延蛍光性の化合物を含む発光層において最大発光位置が電子輸送帯域側となるのは、遅延蛍光性の化合物は、電子トラップ性が強いためと考えられる。
【0108】
例えば、従来、赤色有機EL素子の赤色発光層及び緑色有機EL素子の緑色発光層には、燐光発光材料が用いられている。このような燐光発光性の有機EL素子(以下、デバイスAと称する場合がある。)においても「発光を強め合う位置」(1次干渉位置)と「最大発光位置」とが重なり合うように設計されている。しかしながら、遅延蛍光性の化合物を含有する発光層における「最大発光位置」は、燐光発光性の有機EL素子における「最大発光位置」とは異なるため、従来、燐光発光性の有機EL素子向けに設計されている素子構造のまま、燐光発光材料に代えて遅延蛍光性の化合物を用いた場合、「発光を強め合う位置」(1次干渉位置)と「最大発光位置」とがずれてしまい、光取り出し効率が低下する。
【0109】
また、遅延蛍光性の化合物を含有する発光層(以下、遅延蛍光発光層と称する場合がある。)における「最大発光位置」と「発光を強め合う位置」(1次干渉位置)とが重なるように、有機EL素子における正孔輸送帯域及び電子輸送帯域の膜厚を厚くした構造を有する有機EL素子(以下、デバイスBと称する場合がある。)も考えられる。このような素子構造によれば、遅延蛍光発光層における「最大発光位置」と「発光を強め合う位置」(1次干渉位置)とが重なって、光取り出し効率を向上できる。この場合、遅延蛍光発光層を有する有機EL素子については、他の有機EL素子(本実施形態では、青色有機EL素子)の成膜工程と共通して実施できない工程(正孔輸送帯域の膜厚を厚くするための工程、及び電子輸送帯域の膜厚を厚くするための工程)を実施することになる。その結果、成膜時のマスク回数が増加して、有機EL表示装置の生産性を向上させ難い。
【0110】
また、デバイスA及びデバイスBは、発光層の「最大発光位置」が、「発光を強め合う位置」の内の「1次干渉位置」に重なるように設計されている。従来技術であるデバイスAのように、燐光発光性の赤色有機EL素子及び緑色有機EL素子においては、発光スペクトルの半値幅が大きいため、燐光発光層の「最大発光位置」と「1次干渉位置」とが重なり合う素子構造でも問題が少なかった。
一方、遅延蛍光発光層の「最大発光位置」と「1次干渉位置」とが重なり合う素子構造においては、遅延蛍光発光層からの発光(特に遅延蛍光性の化合物とともに蛍光性の化合物を含む発光層からの発光)は、燐光素子に比べて発光スペクトルの半値幅が小さいため、発光色の角度依存性が大きくなってしまうという課題を、本発明者らは、見出した。
【0111】
また、デバイスA及びデバイスBにおける青色有機EL素子の発光層としては、蛍光性の化合物を含有する青色蛍光発光層が使用される。青色蛍光発光層は、電子輸送性が強いため、デバイスA及びデバイスBの構成のように正孔輸送帯域の膜厚を厚くすると、蛍光発光層中の正孔が不足して、青色有機EL素子の寿命が短くなるという課題も、本発明者らは、見出した。
【0112】
本実施形態によれば、生産効率を低下させずに、光取り出し効率、ひいては電流効率を向上させ、発光色の角度依存性が小さい、有機EL表示装置1を提供することができる。
有機EL表示装置1においては、正孔輸送帯域4は、青色有機EL素子10B及び赤色有機EL素子10Rに亘って同じ膜厚で共通して設けられている。そのため、デバイスBのようにマスク回数を増加させることなく、有機EL表示装置1を製造できる。
さらに、赤色有機EL素子10Rの赤色発光層5Rは、遅延蛍光性の化合物DFを含有し、赤色有機EL素子10Rは、干渉次数が1次の共振器構造を有し、赤色発光層5Rの膜厚が50nm未満であり、赤色有機EL素子10Rにおける透明電極3R及び正孔輸送帯域4Rの膜厚の和が40nm未満である。その結果、有機EL表示装置1の赤色有機EL素子10Rにおいては、赤色発光層5Rの「最大発光位置」と光反射層2側から見た「0次干渉位置」とが重なり、発光色の角度依存性が小さく、光取り出し効率が向上する。
さらに、青色有機EL素子は、蛍光性の化合物FLを含有する青色発光層5B(蛍光発光層)を有し、青色有機EL素子10Bにおける透明電極3B及び正孔輸送帯域4Bの膜厚の和が40nm未満である。その結果、有機EL表示装置1の青色有機EL素子10Bにおいては、青色発光層5Bの「最大発光位置」と光反射層2側から見た「0次干渉位置」とが重なり、発光色の角度依存性が小さく、光取り出し効率が向上する。さらに、青色有機EL素子10Bにおける正孔輸送帯域4B側の膜厚が薄いため、青色発光層5Bに正孔が注入され易くなり、青色有機EL素子10Bの寿命が長くなると考えられる。青色発光層において通常使用される青色ホスト化合物は、電子輸送性が高いため、青色発光層への正孔の供給が不足すると青色有機EL素子の寿命が短くなる傾向にある。本実施形態の有機EL表示装置1の構成では、正孔輸送帯域4の膜厚を薄くするため、青色発光層5Bへのホール供給量が増加し、青色発光層5B中のキャリアバランスが改善して、青色有機EL素子10Bの寿命が向上すると考えられる。
【0113】
有機EL表示装置の具体例としては、例えば、表示部品(例えば、有機ELパネルモジュール等)、テレビ、携帯電話、タブレット、及びパーソナルコンピュータ等が挙げられる。以降の実施形態等における有機EL表示装置についても、これらと同様の具体例が挙げられる。
【0114】
〔第2実施形態〕
第2実施形態に係る有機EL表示装置の一例の構成について図5を参照して説明する。
図5には、有機EL表示装置1Aが記載されている。
有機EL表示装置1Aは、青色有機EL素子10Bと、緑色有機EL素子10Gと、をそれぞれ画素として有する。
有機EL表示装置1Aは、第1実施形態の有機EL表示装置1の赤色有機EL素子10Rに代えて緑色有機EL素子10Gを有する点で、第1実施形態と相違し、その他の点は、第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態と同様の点は、同一の符号を付す等して、説明を省略又は簡略化する。
【0115】
青色有機EL素子10B及び緑色有機EL素子10Gのいずれも、光反射層2、透明電極3、正孔輸送帯域4、発光層5、電子輸送帯域6、及び半透過性電極7を有する。本明細書において、正孔輸送帯域4、発光層5及び電子輸送帯域6を有機層と称する場合がある。
青色有機EL素子10B及び緑色有機EL素子10Gのいずれも、光反射層2、透明電極3、正孔輸送帯域4、発光層5、電子輸送帯域6、及び半透過性電極7をこの順で有する。有機EL表示装置1においては、画素としての青色有機EL素子10B及び緑色有機EL素子10Gが基板8の上に並列に配置されている。
【0116】
有機EL表示装置1Aの青色有機EL素子10B及び緑色有機EL素子10Gのいずれにおいても、透明電極3と正孔輸送帯域4とが直接接し、正孔輸送帯域4と発光層5とが直接接し、発光層5と電子輸送帯域6とが直接接し、電子輸送帯域6と半透過性電極7とが直接接している。
【0117】
有機EL表示装置1Aは、青色画素としての青色有機EL素子10B及び緑色画素としての緑色有機EL素子10Gを有する。各画素には独立してそれぞれ電圧がかかる。有機EL表示装置1Aにおいて、青色画素及び緑色画素を選択的に発光させることができる。有機EL表示装置1Aは、青色画素及び緑色画素を1つずつ含む単位を、複数、有してもよい。この場合、当該青色画素及び緑色画素からなる単位が、複数、基板上に繰り返し配列されていてもよい。また、一単位中にそれぞれの画素が、複数、含まれていてもよく、例えば、青色画素が1つ、緑色画素が2つである構成を一単位としてもよい。なお、本実施形態に係る有機EL表示装置は、青色画素及び緑色画素以外の他の色で発光する画素を有してもよい。
【0118】
(緑色有機EL素子)
緑色有機EL素子10Gは、発光層5としての緑色発光層5Gを有する。図5中、緑色発光層5Gは「G」と示される。
【0119】
緑色有機EL素子10Gは、光反射層2、透明電極3、正孔輸送帯域4、発光層5、電子輸送帯域6、及び半透過性電極7のそれぞれに対応する、光反射層2G、透明電極3G、正孔輸送帯域4G、緑色発光層5G、電子輸送帯域6G、及び半透過性電極7Gを有する。
【0120】
緑色発光層5Gは、正孔輸送帯域4Gと電子輸送帯域6Gとの間に含まれる。
緑色発光層5Gは、正孔輸送帯域4Gと直接接し、さらに、電子輸送帯域6Gとも直接接している。
【0121】
緑色発光層5Gの膜厚は、40nm未満である。緑色発光層5Gの膜厚は、15nm以上であることが好ましい。
緑色発光層5Gの膜厚は、青色発光層5Bの膜厚よりも大きい。緑色発光層5G及び青色発光層5Bの膜厚は、前述の「層又は帯域の膜厚の測定方法」によって測定することができる。なお、緑色有機EL素子10Gの中心部は、図5中、符号CLで示し、青色有機EL素子10Bの中心部は、図5中、符号CLで示す。
【0122】
本実施形態に係る有機EL表示装置1Aにおいて、緑色有機EL素子10Gが、光反射層2と半透過性電極7との間で干渉次数が一次の共振器構造を有する。具体的には、緑色有機EL素子10Gは、光反射層2Gと半透過性電極7Gとの間で干渉次数が一次の共振器構造を有する。緑色有機EL素子10Gにおける光反射層2Gと半透過性電極7Gとの間隔d2は、正孔輸送帯域4Gの厚さ、緑色発光層5Gの厚さ及び電子輸送帯域6Gの厚さの和に相当する。
【0123】
本実施形態に係る有機EL表示装置1Aは、緑色有機EL素子10Gが共振器構造を有する。共振器構造を有する緑色有機EL素子10Gについては、第1実施形態における共振器構造の説明中、有機EL表示装置1、光反射層2、半透過性電極7、正孔輸送帯域4、発光層5及び電子輸送帯域6のそれぞれを、有機EL表示装置1A、光反射層2G、半透過性電極7G、正孔輸送帯域4G、緑色発光層5G及び電子輸送帯域6Gとして読み替えて適用できる。
【0124】
(緑色発光層)
緑色発光層5Gは、遅延蛍光性の化合物DFを含む。
【0125】
一実施形態においては、緑色発光層5Gは、さらに、蛍光性の化合物FLを含むことが好ましい。本明細書において、「蛍光性の化合物」は、遅延蛍光性を示さない化合物である。よって、蛍光性の化合物FLは、遅延蛍光性を示さない化合物である。
【0126】
緑色発光層5Gが遅延蛍光性の化合物DF及び蛍光性の化合物FLを含む場合、遅延蛍光性の化合物DFの一重項エネルギーS(DF)と、蛍光性の化合物FLの一重項エネルギーS(FL)とが、下記数式(数2A)の関係を満たすことが好ましい。
(DF)>S(FL) …(数2A)
【0127】
緑色発光層5Gが蛍光性の化合物FLを含む場合、化合物FLは、緑色蛍光発光性の化合物であることが好ましい。
【0128】
緑色発光層5Gにおいて、蛍光性の化合物FLは、ドーパント材料(ゲスト材料、エミッター又は発光材料と称する場合もある。)であることが好ましく、遅延蛍光性の化合物DFは、ホスト材料(マトリックス材料と称する場合もある。)であることが好ましい。
【0129】
緑色発光層5Gは、燐光発光性材料を含まないことが好ましい。
緑色発光層5Gは、重金属錯体及び燐光発光性の希土類金属錯体を含まないことが好ましい。ここで、重金属錯体としては、例えば、イリジウム錯体、オスミウム錯体、及び白金錯体等が挙げられる。
また、緑色発光層5Gは、金属錯体を含まないことも好ましい。
【0130】
・緑色発光層における化合物の含有率
本実施形態の緑色発光層5Gにおいて、蛍光性の化合物FLの含有率は、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、遅延蛍光性の化合物DFの含有率は、80質量%以上99.99質量%以下であることが好ましい。緑色発光層5Gにおける蛍光性の化合物FL、および遅延蛍光性の化合物DFの合計含有率の上限は、100質量%である。なお、本実施形態は、緑色発光層5Gに、蛍光性の化合物FL、および遅延蛍光性の化合物DF以外の材料が含まれることを除外するものではない。
緑色発光層5Gは、蛍光性の化合物FLを1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。緑色発光層5Gは、遅延蛍光性の化合物DFを1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0131】
本明細書において、緑色の発光とは、蛍光スペクトルの主ピーク波長が500nm以上、560nm以下の範囲内である発光をいう。
蛍光性の化合物FLが緑色蛍光発光性の化合物である場合、蛍光性の化合物FLの主ピーク波長は、500nm以上、560nm以下であることが好ましく、500nm以上、540nm以下であることがより好ましく、510nm以上、530nm以下であることがさらに好ましい。
【0132】
本実施形態において、遅延蛍光性の化合物DFの最低励起一重項エネルギーS(DF)と、遅延蛍光性の化合物DFの77[K]におけるエネルギーギャップT77K(DF)との差ΔST(DF)は、好ましくは0.3eV未満、より好ましくは0.2eV未満、さらに好ましくは0.1eV未満である。すなわち、ΔST(DF)は、下記数式(数20)、(数21)又は(数22)の関係を満たすことが好ましい。
ΔST(DF)=S(DF)-T77K(DF)<0.3eV …(数20)
ΔST(DF)=S(DF)-T77K(DF)<0.2eV …(数21)
ΔST(DF)=S(DF)-T77K(DF)<0.1eV …(数22)
【0133】
(TADF機構)
本実施形態の緑色有機EL素子10Gでは、化合物DFとしてΔST(DF)が小さい化合物を用いることが好ましく、外部から与えられる熱エネルギーによって、化合物DFの三重項準位から化合物DFの一重項準位への逆項間交差が起こり易くなる。有機EL素子内部の電気励起された励起子の励起三重項状態が、逆項間交差によって、励起一重項状態へスピン交換がされるエネルギー状態変換機構をTADF機構と呼ぶ。
【0134】
図6は、緑色発光層5Gにおける化合物DF及び化合物FLのエネルギー準位の関係の一例を示す図である。図6中の記号の説明は、以下の通りである。
S0は、基底状態を表す。
S1(DF)は、化合物DFの最低励起一重項状態を表す。
T1(DF)は、化合物DFの最低励起三重項状態を表す。
S1(FL)は、化合物FLの最低励起一重項状態を表す。
T1(FL)は、化合物FLの最低励起三重項状態を表す。
【0135】
図6中のS1(DF)からS1(FL)へ向かう破線の矢印は、化合物DFの最低励起一重項状態から化合物FLの最低励起一重項状態へのフェルスター型エネルギー移動を表す。なお、本実施形態では、最低励起一重項状態S1と最低励起三重項状態T1との差を、ΔSTとして定義する。
図6に示すように、化合物DFとしてΔST(DF)の小さな化合物を用いると、最低励起三重項状態T1(DF)は、熱エネルギーにより、最低励起一重項状態S1(DF)に逆項間交差が可能である。そして、化合物DFの最低励起一重項状態S1(DF)から化合物FLへのフェルスター型エネルギー移動が生じ、最低励起一重項状態S1(FL)が生成する。この結果、化合物FLの最低励起一重項状態S1(FL)からの蛍光発光を観測することができる。このTADF機構による遅延蛍光を利用することによっても、理論的に内部効率を100%まで高めることができると考えられている。
【0136】
(青色有機EL素子)
有機EL表示装置1Aにおける青色有機EL素子10Bは、発光層5としての青色発光層5Bを有する。図5中、青色発光層5Bは「B」と示される。
本実施形態の青色有機EL素子10Bは、第1実施形態における青色有機EL素子10Bと同様であるため、説明を省略する。
【0137】
(正孔輸送帯域)
正孔輸送帯域4は、少なくとも透明電極3と発光層5との間に含まれる。
正孔輸送帯域4は、青色有機EL素子10B及び緑色有機EL素子10Gに亘って同じ膜厚で共通して設けられている。
正孔輸送帯域4は、共通帯域であり、青色有機EL素子10B及び緑色有機EL素子10Gに亘って同じ膜厚である。正孔輸送帯域4が共通帯域であるため、緑色有機EL素子10G及び青色有機EL素子10Bのそれぞれの正孔輸送帯域4を、マスク等を入れ替えずに作製できる。その結果、有機EL表示装置1Aの生産性が向上する。
【0138】
有機EL表示装置1Aにおいて、正孔輸送帯域4の膜厚は、10nm以上25nm未満であることが好ましく、10nm以上20nm以下であることがより好ましい。具体的には、有機EL表示装置1Aにおいて、青色有機EL素子10Bにおける正孔輸送帯域4Bの膜厚が、10nm以上25nm未満であり、かつ緑色有機EL素子10Gにおける正孔輸送帯域4Gの膜厚が、10nm以上25nm未満であることが好ましく、正孔輸送帯域4Bの膜厚が、10nm以上20nm以下であり、かつ正孔輸送帯域4Gの膜厚が、10nm以上20nm以下であることがより好ましい。
有機EL表示装置1Aにおける正孔輸送帯域4の膜厚は、第1実施形態における「層又は帯域の膜厚の測定方法」によって測定することができる。
【0139】
青色有機EL素子10B及び緑色有機EL素子10Gのそれぞれにおける透明電極3及び正孔輸送帯域4の膜厚の和が40nm未満である。具体的には、青色有機EL素子10Bにおける透明電極3Bの膜厚と正孔輸送帯域4Bの膜厚との和が40nm未満であり、かつ、緑色有機EL素子10Gにおける透明電極3Gの膜厚と正孔輸送帯域4Gの膜厚との和が40nm未満である。透明電極3及び正孔輸送帯域4の膜厚の和は、図5中、dHT2として示す。
青色有機EL素子10B及び緑色有機EL素子10Gのそれぞれにおける透明電極3及び正孔輸送帯域4の膜厚の和が40nm未満であることによって、視野角を改善することができる。
【0140】
青色有機EL素子10B及び緑色有機EL素子10Gのそれぞれにおける透明電極3及び正孔輸送帯域4の膜厚の和が15nm以上であることが好ましい。具体的には、青色有機EL素子10Bにおける透明電極3Bの膜厚と正孔輸送帯域4Bの膜厚との和が15nm以上であり、かつ、緑色有機EL素子10Gにおける透明電極3Gの膜厚と正孔輸送帯域4Gの膜厚との和が15nm以上であることが好ましい。
【0141】
有機EL表示装置1Aにおける正孔輸送帯域4は、単一の層のみからなることも好ましい。
有機EL表示装置1Aにおける正孔輸送帯域4は、複数の層からなることも好ましい。
有機EL表示装置1Aにおける正孔輸送帯域4を構成する層としては、例えば、正孔注入層、正孔輸送層及び電子障壁層が挙げられる。
有機EL表示装置1Aにおける正孔輸送帯域4が複数の層で構成される場合、正孔輸送帯域4を構成する各層が、青色有機EL素子10B及び緑色有機EL素子10Gに亘って同じ膜厚で共通して設けられている共通層である。
【0142】
(その他の構成)
有機EL表示装置1Aにおける光反射層2、透明電極3、電子輸送帯域6、半透過性電極7及びキャッピング層は、それぞれ、第1実施形態における光反射層2、透明電極3、電子輸送帯域6、半透過性電極7及びキャッピング層と同様であるため、説明を省略又は簡略化する。
【0143】
本実施形態においても、光反射層2は、非共通層であることが好ましい。すなわち、光反射層2G及び光反射層2Bは、それぞれ、非共通層であることが好ましい。
【0144】
本実施形態においても、透明電極3は、非共通層であることが好ましい。すなわち、透明電極3G及び透明電極3Bは、それぞれ、非共通層であることが好ましい。透明電極3G及び透明電極3Bが非共通層である場合、透明電極3G及び透明電極3Bの膜厚は、それぞれ独立に、5nm以上、15nm以下であることが好ましい。
【0145】
本実施形態においても、青色有機EL素子10Bにおける電子輸送帯域6(電子輸送帯域6B)の膜厚は、緑色有機EL素子10Gにおける電子輸送帯域6(電子輸送帯域6G)の膜厚よりも小さいことが好ましい。電子輸送帯域6B及び電子輸送帯域6Gの膜厚は、正孔輸送帯域4の膜厚の測定方法と同様にして測定することができる。
本実施形態においても、電子輸送帯域6は、単層であっても複数層であってもよい。すなわち、緑色有機EL素子10Gにおける電子輸送帯域6Gは、単層からなる帯域であっても、複数層からなる帯域であってもよく、青色有機EL素子10Bにおける電子輸送帯域6Bは、単層からなる帯域であっても、複数層からなる帯域であってもよい。
【0146】
本実施形態においても、半透過性電極7は、複数の有機EL素子(緑色有機EL素子及び青色有機EL素子)に亘って共通して設けられている共通層であることが好ましい。すなわち、有機EL表示装置1Aにおいては、半透過性電極7G及び半透過性電極7Bが共通層であることが好ましい。
【0147】
また、有機EL表示装置1Aは、赤色発光層5Rに代えて、緑色発光層5Gを形成すること以外、第1実施形態の有機EL表示装置1とほぼ同様の方法で製造できるため、説明を省略する。
【0148】
本実施形態によれば、生産効率を低下させずに、光取り出し効率を向上させ、発光色の角度依存性が小さい有機EL表示装置1Aを提供することができる。
有機EL表示装置1Aにおいては、正孔輸送帯域4は、青色有機EL素子10B及び緑色有機EL素子10Gに亘って同じ膜厚で共通して設けられている。そのため、デバイスBのようにマスク回数を増加させることなく、有機EL表示装置1Aを製造できる。
さらに、緑色有機EL素子10Gの緑色発光層5Gは、遅延蛍光性の化合物DFを含有し、緑色有機EL素子10Gは、干渉次数が1次の共振器構造を有し、緑色発光層5Gの膜厚が40nm未満であり、緑色有機EL素子10Gにおける透明電極3G及び正孔輸送帯域4Gの膜厚の和が40nm未満である。その結果、有機EL表示装置1Aの緑色有機EL素子10Gにおいては、緑色発光層5Gの「最大発光位置」と光反射層2側から見た「0次干渉位置」とが重なり、発光色の角度依存性が小さく、光取り出し効率が向上する。
さらに、青色有機EL素子10Bについては、第1実施形態での説明と同様、発光色の角度依存性が小さく、光取り出し効率が向上する。また、青色有機EL素子10Bについては、第1実施形態での説明と同様、寿命が向上すると考えられる。
【0149】
〔第3実施形態〕
第3実施形態に係る有機EL表示装置の一例の構成について図7を参照して説明する。
図7には、有機EL表示装置1Bが記載されている。
有機EL表示装置1Bは、青色有機EL素子10Bと、緑色有機EL素子10Gと、赤色有機EL素子10Rと、をそれぞれ画素として有する。
有機EL表示装置1Bは、第1実施形態の有機EL表示装置1の青色有機EL素子10B及び赤色有機EL素子10Rに加えて、さらに第2実施形態の緑色有機EL素子10Gを有し、画素として3種の有機EL素子を有する点で、第1実施形態又は第2実施形態と相違し、その他の点は、第1実施形態又は第2実施形態と同様である。そのため、第1実施形態又は第2実施形態と同様の点は、同一の符号を付す等して、説明を省略又は簡略化する。
【0150】
青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rのいずれも、光反射層2、透明電極3、正孔輸送帯域4、発光層5、電子輸送帯域6、及び半透過性電極7を有する。本明細書において、正孔輸送帯域4、発光層5及び電子輸送帯域6を有機層と称する場合がある。
青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rのいずれも、光反射層2、透明電極3、正孔輸送帯域4、発光層5、電子輸送帯域6、及び半透過性電極7をこの順で有する。有機EL表示装置1においては、画素としての青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rが基板8の上に並列に配置されている。
【0151】
有機EL表示装置1Bの青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rのいずれにおいても、透明電極3と正孔輸送帯域4とが直接接し、正孔輸送帯域4と発光層5とが直接接し、発光層5と電子輸送帯域6とが直接接し、電子輸送帯域6と半透過性電極7とが直接接している。
【0152】
有機EL表示装置1Bは、青色画素としての青色有機EL素子10B、緑色画素としての緑色有機EL素子10G及び赤色画素としての赤色有機EL素子10Rを有する。各画素には独立してそれぞれ電圧がかかる。有機EL表示装置1Bにおいて、青色画素、緑色画素及び赤色画素を選択的に発光させることができる。有機EL表示装置1Bは、青色画素、緑色画素及び赤色画素を1つずつ含む3つの画素からなる単位を、一単位としてもよく、有機EL表示装置1Bは、この単位を複数、有してもよい。この場合、当該青色画素、緑色画素及び赤色画素からなる単位が、複数、基板上に繰り返し配列されていてもよい。また、一単位中にそれぞれの画素が、複数、含まれていてもよく、例えば、青色画素が1つ、緑色画素が1つ、赤色画素が2つからなる4つの画素からなる単位を一単位としてもよい。なお、本発明に係る有機EL表示装置は、青色画素、緑色画素及び赤色画素以外の他の色で発光する画素を有してもよい。
【0153】
有機EL表示装置1Bは、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rを有し、これら有機EL素子は、第1実施形態又は第2実施形態で説明した青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rと同様であるため、以下、説明を省略又は簡略化する。
【0154】
緑色発光層5Gは、遅延蛍光性の化合物DFを含み、赤色発光層5Rは、遅延蛍光性の化合物DFを含む。
赤色発光層5Rの膜厚は、50nm未満であり、緑色発光層5Gの膜厚は、40nm未満である。
有機EL表示装置1Bにおいて、赤色発光層5Rの膜厚は、緑色発光層5Gの膜厚よりも大きく、緑色発光層5Gの膜厚は、青色発光層5Bの膜厚よりも大きい。
【0155】
本実施形態に係る有機EL表示装置1Bにおいて、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rのそれぞれが、光反射層2と半透過性電極7との間で干渉次数が一次の共振器構造を有する。具体的には、赤色有機EL素子10Rは、光反射層2Rと半透過性電極7Rとの間で干渉次数が一次の共振器構造を有する。赤色有機EL素子10Rにおける光反射層2Rと半透過性電極7Rとの間隔d1は、正孔輸送帯域4Rの厚さ、赤色発光層5Rの厚さ及び電子輸送帯域6Rの厚さの和に相当する。また、緑色有機EL素子10Gは、光反射層2Gと半透過性電極7Gとの間で干渉次数が一次の共振器構造を有する。緑色有機EL素子10Gにおける光反射層2Gと半透過性電極7Gとの間隔d2は、正孔輸送帯域4Gの厚さ、緑色発光層5Gの厚さ及び電子輸送帯域6Gの厚さの和に相当する。
【0156】
本実施形態に係る有機EL表示装置1Bは、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rのそれぞれが、共振器構造を有する。共振器構造を有する緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rについては、第1実施形態における共振器構造の説明中、有機EL表示装置1、光反射層2、半透過性電極7、正孔輸送帯域4、発光層5及び電子輸送帯域6のそれぞれを、有機EL表示装置1B、光反射層2G又は光反射層2R、半透過性電極7G又は半透過性電極7R、正孔輸送帯域4G又は正孔輸送帯域4R、緑色発光層5G又は赤色発光層5R、及び電子輸送帯域6G又は電子輸送帯域6Rとして読み替えて適用できる。
また、図7に示すように、緑色有機EL素子10Gの光反射層2Gの緑色発光層5G側の反射端面を第1端部PG1とし、半透過性電極7Gの緑色発光層5G側の反射端面を第2端部PG2とし、赤色有機EL素子10Rの光反射層2Rの赤色発光層5R側の反射端面を第1端部PR1とし、半透過性電極7Rの赤色発光層5R側の反射端面を第2端部PR2とした。第1実施形態における共振器構造の説明中、緑色有機EL素子10Gについては、第1端部P1及び第2端部P2を第1端部PG1及び第2端部PG2として読み替えて適用でき、赤色有機EL素子10Rについては、第1端部P1及び第2端部P2を第1端部PR1及び第2端部PR2として読み替えて適用できる。
【0157】
(正孔輸送帯域)
有機EL表示装置1Bの正孔輸送帯域4は、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rに亘って同じ膜厚で共通して設けられている。
【0158】
有機EL表示装置1Bにおいて、正孔輸送帯域4の膜厚は、10nm以上、25nm未満であることが好ましく、10nm以上、20nm以下であることがより好ましい。具体的には、有機EL表示装置1Bにおいて、青色有機EL素子10Bにおける正孔輸送帯域4Bの膜厚が、10nm以上、25nm未満であり、緑色有機EL素子10Gにおける正孔輸送帯域4Gの膜厚が、10nm以上25nm未満であり、かつ赤色有機EL素子10Rにおける正孔輸送帯域4Rの膜厚が、10nm以上、25nm未満であることが好ましく、正孔輸送帯域4Bの膜厚が、10nm以上、20nm以下であり、正孔輸送帯域4Gの膜厚が、10nm以上、20nm以下であり、かつ、正孔輸送帯域4Rの膜厚が、10nm以上、20nm以下であることがより好ましい。
有機EL表示装置1Bにおける正孔輸送帯域4の膜厚は、第1実施形態における「層又は帯域の膜厚の測定方法」によって測定することができる。
【0159】
有機EL表示装置1Bにおいて、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rのそれぞれにおける透明電極3及び正孔輸送帯域4の膜厚の和が40nm未満である。具体的には、青色有機EL素子10Bにおける透明電極3Bの膜厚と正孔輸送帯域4Bの膜厚との和が40nm未満であり、緑色有機EL素子10Gにおける透明電極3Gの膜厚と正孔輸送帯域4Gの膜厚との和が40nm未満であり、かつ、赤色有機EL素子10Rにおける透明電極3Rの膜厚と正孔輸送帯域4Rの膜厚との和が40nm未満である。透明電極3及び正孔輸送帯域4の膜厚の和は、図7中、dHT1又はdHT2として示す。
青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rのそれぞれにおける透明電極3及び正孔輸送帯域4の膜厚の和が40nm未満であることによって、視野角を改善することができる。
【0160】
青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rのそれぞれにおける透明電極3及び正孔輸送帯域4の膜厚の和が15nm以上であることが好ましい。具体的には、青色有機EL素子10Bにおける透明電極3Bの膜厚と正孔輸送帯域4Bの膜厚との和が15nm以上であり、緑色有機EL素子10Gにおける透明電極3Gの膜厚と正孔輸送帯域4Gの膜厚との和が15nm以上であり、かつ、赤色有機EL素子10Rにおける透明電極3Rの膜厚と正孔輸送帯域4Rの膜厚との和が15nm以上であることが好ましい。
【0161】
有機EL表示装置1Bにおいて、正孔輸送帯域4は、単一の層のみからなることも好ましい。
有機EL表示装置1Bにおいて、正孔輸送帯域4は、複数の層からなることも好ましい。
有機EL表示装置1Bにおいて、正孔輸送帯域4を構成する層としては、例えば、正孔注入層、正孔輸送層及び電子障壁層が挙げられる。
有機EL表示装置1Bにおいて、正孔輸送帯域4が複数の層で構成される場合、正孔輸送帯域4を構成する各層が、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rに亘って同じ膜厚で共通して設けられている共通層である。
【0162】
(その他の構成)
有機EL表示装置1Bにおける光反射層2、透明電極3、電子輸送帯域6、半透過性電極7及びキャッピング層は、それぞれ、第1実施形態又は第2実施形態における光反射層2、透明電極3、電子輸送帯域6、半透過性電極7及びキャッピング層と同様であるため、説明を省略又は簡略化する。
【0163】
本実施形態においても、光反射層2は、非共通層であることが好ましい。すなわち、光反射層2R、光反射層2G及び光反射層2Bは、それぞれ、非共通層であることが好ましい。
【0164】
本実施形態においても、透明電極3は、非共通層であることが好ましい。すなわち、透明電極3R、透明電極3G及び透明電極3Bは、それぞれ、非共通層であることが好ましい。透明電極3R、透明電極3G及び透明電極3Bが非共通層である場合、透明電極3R、透明電極3G及び透明電極3Bは、それぞれ独立に、5nm以上、15nm以下であることが好ましい。
【0165】
本実施形態において、青色有機EL素子10Bにおける電子輸送帯域6(電子輸送帯域6B)の膜厚は、緑色有機EL素子10Gにおける電子輸送帯域6(電子輸送帯域6G)の膜厚よりも小さく、緑色有機EL素子10Gにおける電子輸送帯域6(電子輸送帯域6G)の膜厚は、赤色有機EL素子10Rにおける電子輸送帯域6(電子輸送帯域6R)の膜厚よりも小さいことが好ましい。電子輸送帯域6B、電子輸送帯域6G及び電子輸送帯域6Rの膜厚は、正孔輸送帯域4の膜厚の測定方法と同様にして測定することができる。
本実施形態においても、電子輸送帯域6は、単層であっても複数層であってもよい。すなわち、赤色有機EL素子10Rにおける電子輸送帯域6Rは、単層からなる帯域であっても、複数層からなる帯域であってもよく、緑色有機EL素子10Gにおける電子輸送帯域6Gは、単層からなる帯域であっても、複数層からなる帯域であってもよく、青色有機EL素子10Bにおける電子輸送帯域6Bは、単層からなる帯域であっても、複数層からなる帯域であってもよい。
【0166】
本実施形態においても、半透過性電極7は、複数の有機EL素子(赤色有機EL素子、緑色有機EL素子及び青色有機EL素子)に亘って共通して設けられている共通層であることが好ましい。すなわち、有機EL表示装置1Bにおいては、半透過性電極7R、半透過性電極7G及び半透過性電極7Bが共通層であることが好ましい。
【0167】
また、有機EL表示装置1Bは、緑色有機EL素子10Gを第2実施形態と同様にしてさらに形成すること以外、第1実施形態の有機EL表示装置1とほぼ同様の方法で製造できるため、説明を省略する。
【0168】
本実施形態によれば、生産効率を低下させずに、光取り出し効率を向上させ、発光色の角度依存性が小さく、画素としての青色有機EL素子の寿命が長い、有機EL表示装置1Bを提供することができる。
有機EL表示装置1Bにおいては、正孔輸送帯域4は、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rに亘って同じ膜厚で共通して設けられている。そのため、デバイスBのようにマスク回数を増加させることなく、有機EL表示装置1Bを製造できる。
さらに、緑色有機EL素子10Gの緑色発光層5Gは、遅延蛍光性の化合物DFを含有し、緑色有機EL素子10Gは、干渉次数が1次の共振器構造を有し、緑色発光層5Gの膜厚が40nm未満であり、緑色有機EL素子10Gにおける透明電極3G及び正孔輸送帯域4Gの膜厚の和が40nm未満である。その結果、有機EL表示装置1Bの緑色有機EL素子10Gにおいては、緑色発光層5Gの「最大発光位置」と光反射層2側から見た「0次干渉位置」とが重なり、発光色の角度依存性が小さく、光取り出し効率が向上する。
さらに、赤色有機EL素子10Rの赤色発光層5Rは、遅延蛍光性の化合物DFを含有し、赤色有機EL素子10Rは、干渉次数が1次の共振器構造を有し、赤色発光層5Rの膜厚が50nm未満であり、赤色有機EL素子10Rにおける透明電極3R及び正孔輸送帯域4Rの膜厚の和が40nm未満である。その結果、有機EL表示装置1の赤色有機EL素子10Rにおいては、赤色発光層5Rの「最大発光位置」と光反射層2側から見た「0次干渉位置」とが重なり、発光色の角度依存性が小さく、光取り出し効率が向上する。
さらに、青色有機EL素子10Bについては、第1実施形態での説明と同様、発光色の角度依存性が小さく、光取り出し効率が向上する。また、青色有機EL素子10Bについては、第1実施形態での説明と同様、寿命が向上すると考えられる。
【0169】
〔第4実施形態〕
第4実施形態に係る有機EL表示装置は、赤色発光層5Rが、さらに化合物SHを含んでいる点で、第一実施形態及び第三実施形態に係る有機EL素子と異なる。その他の点については第一実施形態及び第三実施形態と同様である。
【0170】
化合物SHは、遅延蛍光性の化合物DF及び蛍光性の化合物FLとは異なる化合物である。この態様の場合、蛍光性の化合物FLは、ドーパント材料であることが好ましく、遅延蛍光性の化合物DFは、ホスト材料であることが好ましい。
【0171】
遅延蛍光性の化合物DFの一重項エネルギーS(DF)と、化合物SHの一重項エネルギーS(SH)とが、下記数式(数1B)の関係を満たすことが好ましい。
(SH)>S(DF) …(数1B)
【0172】
遅延蛍光性の化合物DFの一重項エネルギーS(DF)と、蛍光性の化合物FLの一重項エネルギーS(FL)と、化合物SHの一重項エネルギーS(SH)とが、下記数式(数1C)の関係を満たすことがより好ましい。
(SH)>S(DF)>S(FL) …(数1C)
【0173】
化合物SHは、遅延蛍光性の化合物でもよいし、遅延蛍光性を示さない化合物でもよい。
化合物SHとしては、特に限定されないが、アミン化合物以外の化合物であることが好ましい。また、例えば、化合物SHとしては、カルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、及びジベンゾチオフェン誘導体からなる群から選択される誘導体を用いることができるが、これら誘導体に限定されない。
【0174】
赤色発光層5Rにおいて、遅延蛍光性の化合物DFの電子アフィニティ準位Af(DF)と、化合物SHの電子アフィニティ準位Af(SH)とが、下記数式(数1D)の関係を満たすことが好ましい。
Af(SH)<Af(DF) …(数1D)
【0175】
数式(数1D)の関係を満たすことで、赤色発光層5Rに注入された電子が遅延蛍光性の化合物DFによって補足(トラップ)され、赤色発光層5Rにおける再結合領域が電子輸送帯域6R側に局在化しやすくなると考えられる。
【0176】
赤色発光層5Rにおいて、化合物SHの77[K]におけるエネルギーギャップT77K(SH)は、蛍光性の化合物FLの77[K]におけるエネルギーギャップT77K(FL)よりも大きいことが好ましい。
赤色発光層において、化合物SHの77[K]におけるエネルギーギャップT77K(SH)は、遅延蛍光性の化合物DFの77[K]におけるエネルギーギャップT77K(DF)よりも大きいことが好ましい。
【0177】
赤色発光層5Rにおいて、化合物SH、遅延蛍光性の化合物DF、及び蛍光性の化合物FLは、下記数式(数1E)の関係を満たすことが好ましい。
77K(SH)>T77K(DF)>T77K(FL) …(数1E)
【0178】
本実施形態の有機EL素子を発光させたときに、各発光層において、主に各発光層に含まれるドーパント材料が発光していることが好ましい。
発光層が赤色発光層である場合、主に赤色発光層に含まれる蛍光性の化合物FLが発光していることが好ましい。
【0179】
・赤色発光層における化合物の含有率
本実施形態の有機EL表示装置では、赤色発光層5Rにおいて、蛍光性の化合物FLの含有率は、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以上1質量%以下であることがさらに好ましい。
遅延蛍光性の化合物DFの含有率は、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、10質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上60質量%であることがさらに好ましい。
化合物SHの含有率は、10質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
赤色発光層における蛍光性の化合物FL、遅延蛍光性の化合物DF、及び化合物SHの合計含有率の上限は、100質量%である。なお、本実施形態は、赤色発光層に、蛍光性の化合物FL、遅延蛍光性の化合物DF、及び化合物SH以外の材料が含まれることを除外しない。
赤色発光層5Rは、蛍光性の化合物FLを1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。赤色発光層5Rは、遅延蛍光性の化合物DFを1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。赤色発光層5Rは、化合物SHを1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0180】
図8は、赤色発光層5Rにおける蛍光性の化合物FL、遅延蛍光性の化合物DF、及び化合物SHのエネルギー準位の関係の一例を示す図である。
図8中の記号の説明は、以下の通りである。
S0は、基底状態を表す。
S1(FL)は、化合物FLの最低励起一重項状態を表す。
T1(FL)は、化合物FLの最低励起三重項状態を表す。
S1(DF)は、化合物DFの最低励起一重項状態を表す。
T1(DF)は、化合物DFの最低励起三重項状態を表す。
S1(SH)は、化合物SHの最低励起一重項状態を表す。
T1(SH)は、化合物SHの最低励起三重項状態を表す。
【0181】
図8中のS1(DF)からS1(FL)へ向かう破線の矢印は、遅延蛍光性の化合物DFの最低励起一重項状態から蛍光性の化合物FLの最低励起一重項状態へのフェルスター型エネルギー移動を表す。
図8に示すように、遅延蛍光性の化合物DFとしてΔST(DF)の小さな化合物を用いると、最低励起三重項状態T1(DF)は、熱エネルギーにより、最低励起一重項状態S1(DF)に逆項間交差が可能である。そして、遅延蛍光性の化合物DFの最低励起一重項状態S1(DF)から蛍光性の化合物FLへのフェルスター型エネルギー移動が生じ、最低励起一重項状態S1(FL)が生成する。この結果、蛍光性の化合物FLの最低励起一重項状態S1(FL)からの蛍光発光を観測することができる。このTADFメカニズムによる遅延蛍光を利用することによっても、理論的に内部量子効率を100%まで高めることができると考えられている。
【0182】
第4実施形態に係る有機EL素子によれば、第1実施形態及び第3実施形態の奏する効果に加えて、発光効率をさらに向上させることができる。
【0183】
〔第5実施形態〕
第5実施形態に係る有機EL表示装置は、緑色発光層5Gが、さらに化合物SHを含んでいる点で、第二実施形態、第三実施形態及び第四実施形態に係る有機EL素子と異なる。その他の点については第二実施形態、第三実施形態及び第四実施形態と同様である。
【0184】
化合物SHは、遅延蛍光性の化合物DF及び蛍光性の化合物FLとは異なる化合物である。この態様の場合、蛍光性の化合物FLは、ドーパント材料であることが好ましく、遅延蛍光性の化合物DFは、ホスト材料であることが好ましい。
【0185】
遅延蛍光性の化合物DFの一重項エネルギーS(DF)と、化合物SHの一重項エネルギーS(SH)とが、下記数式(数2B)の関係を満たすことが好ましい。
(SH)>S(DF) …(数2B)
【0186】
遅延蛍光性の化合物DFの一重項エネルギーS(DF)と、蛍光性の化合物FLの一重項エネルギーS(FL)と、化合物SHの一重項エネルギーS(SH)とが、下記数式(数2C)の関係を満たすことがより好ましい。
(SH)>S(DF)>S(FL) …(数2C)
【0187】
化合物SHは、遅延蛍光性の化合物でもよいし、遅延蛍光性を示さない化合物でもよい。
化合物SHとしては、特に限定されないが、アミン化合物以外の化合物であることが好ましい。また、例えば、化合物SHとしては、カルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、及びジベンゾチオフェン誘導体からなる群から選択される誘導体を用いることができるが、これら誘導体に限定されない。
【0188】
緑色発光層5Gにおいて、遅延蛍光性の化合物DFの電子アフィニティ準位Af(DF)と、化合物SHの電子アフィニティ準位Af(SH)とが、下記数式(数2D)の関係を満たすことが好ましい。
Af(SH)<Af(DF) …(数2D)
【0189】
数式(数2D)の関係を満たすことで、緑色発光層5Gに注入された電子が遅延蛍光性の化合物DFによって補足(トラップ)され、緑色発光層5Gにおける再結合領域が電子輸送帯域6G側に局在化しやすくなると考えられる。
【0190】
緑色発光層5Gにおいて、化合物SHの77[K]におけるエネルギーギャップT77K(SH)は、蛍光性の化合物FLの77[K]におけるエネルギーギャップT77K(FL)よりも大きいことが好ましい。
緑色発光層において、化合物SHの77[K]におけるエネルギーギャップT77K(SH)は、遅延蛍光性の化合物DFの77[K]におけるエネルギーギャップT77K(DF)よりも大きいことが好ましい。
【0191】
緑色発光層5Gにおいて、化合物SH、遅延蛍光性の化合物DF、及び蛍光性の化合物FLは、下記数式(数2E)の関係を満たすことが好ましい。
77K(SH)>T77K(DF)>T77K(FL) …(数2E)
【0192】
本実施形態の有機EL素子を発光させたときに、各発光層において、主に各発光層に含まれるドーパント材料が発光していることが好ましい。
発光層が緑色発光層である場合、主に緑色発光層に含まれる光性の化合物FLが発光していることが好ましい。
【0193】
・緑色発光層における化合物の含有率
本実施形態の有機EL表示装置では、緑色発光層5Gにおいて、蛍光性の化合物FLの含有率は、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以上1質量%以下であることがさらに好ましい。
遅延蛍光性の化合物DFの含有率は、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、10質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上60質量%であることがさらに好ましい。
化合物SHの含有率は、10質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
緑色発光層における蛍光性の化合物FL、遅延蛍光性の化合物DF、及び化合物SHの合計含有率の上限は、100質量%である。なお、本実施形態は、緑色発光層に、蛍光性の化合物FL、遅延蛍光性の化合物DF、及び化合物SH以外の材料が含まれることを除外しない。
緑色発光層5Gは、蛍光性の化合物FLを1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。緑色発光層5Gは、遅延蛍光性の化合物DFを1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。緑色発光層5Gは、化合物SHを1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0194】
図9は、緑色発光層5Gにおける蛍光性の化合物FL、遅延蛍光性の化合物DF、及び化合物SHのエネルギー準位の関係の一例を示す図である。
図9中の記号の説明は、以下の通りである。
S0は、基底状態を表す。
S1(FL)は、化合物FLの最低励起一重項状態を表す。
T1(FL)は、化合物FLの最低励起三重項状態を表す。
S1(DF)は、化合物DFの最低励起一重項状態を表す。
T1(DF)は、化合物DFの最低励起三重項状態を表す。
S1(SH)は、化合物SHの最低励起一重項状態を表す。
T1(SH)は、化合物SHの最低励起三重項状態を表す。
【0195】
第5実施形態の緑色有機EL素子の緑色発光層においても、第4実施形態の赤色有機EL素子の赤色発光層と同様に、図9に示すようなエネルギー移動が生じる。第5実施形態の有機EL表示装置においても、TADFメカニズムによる遅延蛍光を利用することによっても、理論的に内部量子効率を100%まで高めることができると考えられている。
【0196】
第5実施形態に係る有機EL表示装置によれば、第2実施形態、第3実施形態及び第4実施形態の奏する効果に加えて、発光効率をさらに向上させることができる。
【0197】
〔第6実施形態〕
[電子機器]
本実施形態に係る電子機器は、いずれかの実施形態に係る有機EL表示装置を搭載している。電子機器としては、例えば、表示部品(例えば、有機ELパネルモジュール等)、テレビ、携帯電話、タブレット、及びパーソナルコンピュータ等が挙げられる。また、有機EL表示装置を電子機器としての発光装置としても用いることができ、発光装置としては、例えば、照明及び車両用灯具等が挙げられる。
【0198】
〔有機EL表示装置の発光層に用いる化合物〕
有機EL表示装置の発光層に用いる化合物について、説明する。
【0199】
(遅延蛍光性の化合物)
遅延蛍光性の化合物は、遅延蛍光性を有する化合物であれば特に限定されない。
遅延蛍光性の化合物は、例えば、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0200】
【化3】
【0201】
前記一般式(1)において、
Lは、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30の芳香族炭化水素基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~30の芳香族複素環基であり、
CNは、シアノ基であり、
kは、1以上の整数であって、Lに結合するシアノ基の数であり、
Dは、下記一般式(10)又は一般式(11)で表される基であり、
mは、1以上の整数であって、Lに結合するDの数であり、
mが2以上の整数のとき、複数のDは、互いに同一であるか、又は異なり、
Rは、水素原子もしくは置換基であるか、又は隣接するR同士の組が互いに結合して環を形成し、
nは、0又は1以上の整数であって、Lに結合するRの数であり、
nが2以上の整数のとき、複数のRは、互いに同一であるか、又は異なり、
置換基としてのRは、
ハロゲン原子、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~30のハロゲン化アルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3~30のアルキルシリル基、または
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~60のアリールシリル基であり、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~30の複素環基としてのRは、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キノリル基、イソキノリニル基、ナフチリジニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンズイミダゾリル基、インダゾリル基、イミダゾピリジニル基、ベンズトリアゾリル基、フリル基、チエニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イソキサゾリル基、イソチアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ピペリジニル基、ピロリジニル基、ピペラジニル基、モルホリル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、又はフェノキサジニル基である。
【0202】
【化4】
【0203】
【化5】
【0204】
前記一般式(10)において、
11~R18は、それぞれ独立に、水素原子もしくは置換基であるか、またはR11及びR12の組、R12及びR13の組、R13及びR14の組、R15及びR16の組、R16及びR17の組、並びにR17及びR18の組のいずれか1つ以上の組が互いに結合して環を形成し、
置換基としてのR11~R18は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~30の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~30のハロゲン化アルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3~30のアルキルシリル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~60のアリールシリル基
置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリールオキシ基、
置換もしくは無置換の炭素数2~30のアルキルアミノ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~60のアリールアミノ基、
置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキルチオ基、又は
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~60のアリールチオ基であり、
Aは、下記一般式(10a)又は下記一般式(10b)で表される環構造であり、
環構造Aは、隣接する環構造と縮合することができ、
pは、0、1、2、3又は4であって、環構造Aの数であり、
pが2、3又は4の場合、複数の環構造Aは、互いに同一であるか、又は異なり、
*は、前記一般式(1)中のLとの結合位置である。
【0205】
前記一般式(11)において、
101~R108は、それぞれ独立に、水素原子もしくは置換基であるか、またはR101及びR102の組、R102及びR103の組、R103及びR104の組、R105及びR106の組、R106及びR107の組、並びにR107及びR108の組のいずれか1つ以上の組が互いに結合して環を形成し、
置換基としてのR101~R108は、それぞれ独立に、置換基としてのR11~R18と同義であり、
B及びCは、それぞれ独立に、下記一般式(10a)又は下記一般式(10b)で表される環構造であり、
環構造Bは、隣接する環構造と縮合することができ、
pxは、1、2、3又は4であって、環構造Bの数であり、
pxが2、3又は4の場合、複数の環構造Bは、互いに同一であるか、又は異なり、
環構造Cは、隣接する環構造と縮合することができ、
pyは、1、2、3又は4であって、環構造Cの数であり、
pyが2、3又は4の場合、複数の環構造Cは、互いに同一であるか、又は異なり、
*は、前記一般式(1)中のLとの結合位置である。
【0206】
【化6】
【0207】
前記一般式(10a)において、
19及びR20は、それぞれ独立に、水素原子もしくは置換基であるか、またはR19及びR20の組が互いに結合して環を形成し、
置換基としてのR19及びR20は、それぞれ独立に、置換基としてのR11~R18と同義である。
前記一般式(10b)において、
は、CR111112、NR113、硫黄原子又は酸素原子であり、
111及びR112は、それぞれ独立に、水素原子もしくは置換基であるか、またはR111及びR112の組が互いに結合して環を形成し、
113は、水素原子もしくは置換基であり、
置換基としての、R111、R112及びR113は、それぞれ独立に、置換基としてのR11~R18と同義である。
【0208】
前記一般式(10)におけるpが0である場合、前記一般式(10)で表される基は、下記一般式(10A)で表される。
【0209】
【化7】
【0210】
前記一般式(10A)においては、R11~R18は、それぞれ独立に、前記一般式(10)におけるR11~R18と同義であり、
*は、前記一般式(1)中のLとの結合位置である。
【0211】
遅延蛍光性の化合物の具体的な例を以下に挙げるが、本発明は、これらの具体例に限定されない。
【0212】
【化8】
【0213】
(蛍光性の化合物)
蛍光性の化合物は、遅延蛍光性を示さない化合物であって、蛍光性を示す化合物であれば、特に限定されない。
【0214】
緑色発光層及び赤色発光層の少なくともいずれかに用いられる蛍光性の化合物としては、例えば、下記一般式(20)で表される化合物等が挙げられる。
【0215】
【化9】
【0216】
前記一般式(20)において、
Xは、窒素原子、又はYと結合する炭素原子であり、
Yは、水素原子又は置換基であり、
21~R26は、それぞれ独立に、水素原子もしくは置換基であるか、又はR21及びR22の組、R22及びR23の組、R24及びR25の組、並びにR25及びR26の組のいずれか1つ以上の組が互いに結合して環を形成し、
置換基としてのY、及びR21~R26は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~30のハロゲン化アルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~30のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、
置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、
置換もしくは無置換の炭素数1~30のハロゲン化アルコキシ基、
置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキルチオ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリールオキシ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリールチオ基、
置換もしくは無置換の炭素数2~30のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数7~30のアラルキル基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~30のヘテロアリール基、
ハロゲン原子、
カルボキシ基、
置換もしくは無置換のエステル基、
置換もしくは無置換のカルバモイル基、
置換もしくは無置換のアミノ基、
ニトロ基、
シアノ基、
置換もしくは無置換のシリル基、及び
置換もしくは無置換のシロキサニル基からなる群から選択され、
21及びZ22は、それぞれ独立に、置換基であるか、又はZ21及びZ22が互いに結合して環を形成し、
置換基としてのZ21及びZ22は、それぞれ独立に、
ハロゲン原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~30のハロゲン化アルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基、
置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、
置換もしくは無置換の炭素数1~30のハロゲン化アルコキシ基、及び
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリールオキシ基からなる群から選択される。
【0217】
蛍光性の化合物としては、例えば、下記化合物等が挙げられるが、本発明は、これらの具体例に限定されない。
【0218】
【化10】
【0219】
(第三成分としての化合物)
化合物SH及び化合物SHのように発光層において遅延蛍光性の化合物及び蛍光性の化合物以外の第三成分として含まれる化合物としては、例えば、下記化合物等が挙げられるが、本発明は、この具体例に限定されない。
【0220】
【化11】
【0221】
〔その他の説明〕
本明細書において、Rx及びRyが互いに結合して環を形成するとは、例えば、Rx及びRyが炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子又はケイ素原子を含み、Rxに含まれる原子(炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子又はケイ素原子)と、Ryに含まれる原子(炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子又はケイ素原子)とが、単結合、二重結合、三重結合、又は二価の連結基を介して結合し、環形成原子数が5以上の環(具体的には、複素環又は芳香族炭化水素環)を形成することを意味する。xは、数字、文字、又は、数字と文字との組み合わせである。yは、数字、文字、又は、数字と文字との組み合わせである。
二価の連結基としては特に制限されないが、例えば、-O-、-CO-、-CO-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-NRa-、及びこれらの連結基を2以上組み合わせた基等が挙げられる。
複素環の具体例としては、後述の「一般式中における各置換基についての説明」で例示した「ヘテロアリール基Sub」から結合手を除いた環構造(複素環)が挙げられる。これらの複素環は置換基を有していてもよい。
芳香族炭化水素環の具体例としては、後述の「一般式中における各置換基についての説明」で例示した「アリール基Sub」から結合手を除いた環構造(芳香族炭化水素環)が挙げられる。これらの芳香族炭化水素環は置換基を有していてもよい。
Raとしては、例えば、後述の「一般式中における各置換基についての説明」で例示した置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基Sub、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール基Sub、置換もしくは無置換の環形成原子数5~30のヘテロアリール基Sub等が挙げられる。
例えば、Rx及びRyが互いに結合して環を形成するとは、下記一般式(E1)で表される分子構造において、Rxに含まれる原子と、Ryに含まれる原子とが、一般式(E2)で表される環(環構造)Eを形成すること;一般式(F1)で表される分子構造において、Rxに含まれる原子と、Ryに含まれる原子とが、一般式(F2)で表される環Fを形成すること;一般式(G1)で表される分子構造において、Rxに含まれる原子と、Ryに含まれる原子とが、一般式(G2)で表される環Gを形成すること;一般式(H1)で表される分子構造において、Rxに含まれる原子と、Ryに含まれる原子とが、一般式(H2)で表される環Hを形成すること;一般式(I1)で表される分子構造において、Rxに含まれる原子と、Ryに含まれる原子とが、一般式(I2)で表される環Iを形成すること;を意味する。
一般式(E1)~(I1)中、*は、それぞれ独立に、一分子中の他の原子との結合位置を表す。一般式(E1)中の2つの*は一般式(E2)中の2つの*にそれぞれ対応し、一般式(F1)中の2つの*は一般式(F2)中の2つの*にそれぞれ対応し、一般式(G1)中の2つの*は一般式(G2)中の2つの*にそれぞれ対応し、一般式(H1)中の2つの*は一般式(H2)中の2つの*にそれぞれ対応し、一般式(I1)中の2つの*は一般式(I2)中の2つの*にそれぞれ対応する。
【0222】
【化12】
【0223】
【化13】
【0224】
一般式(E2)~(I2)で表される分子構造において、E~Iはそれぞれ環構造(前記環形成原子数が5以上の環)を表す。一般式(E2)~(I2)中、*は、それぞれ独立に、一分子中の他の原子との結合位置を表す。一般式(E2)中の2つの*は一般式(E1)中の2つの*にそれぞれ対応する。一般式(F2)~(I2)中の2つの*についても同様に、一般式(F1)~(I1)中の2つの*にそれぞれ対応する。
【0225】
例えば、一般式(E1)において、Rx及びRyが互いに結合して一般式(E2)中の環Eを形成し、環Eが無置換のベンゼン環である場合、一般式(E1)で表される分子構造は、下記一般式(E3)で表される分子構造になる。ここで、一般式(E3)中の2つの*は、それぞれ独立に、一般式(E2)及び一般式(E1)中の2つの*に対応する。
例えば、一般式(E1)において、Rx及びRyが互いに結合して一般式(E2)中の環Eを形成し、環Eが無置換のピロール環である場合、一般式(E1)で表される分子構造は、下記一般式(E4)で表される分子構造になる。ここで、一般式(E4)中の2つの*は、それぞれ独立に、一般式(E2)及び一般式(E1)中の2つの*に対応する。一般式(E3)及び(E4)中、*は、それぞれ独立に、一分子中の他の原子との結合位置を表す。
【0226】
【化14】
【0227】
本明細書において、環形成炭素数とは、原子が環状に結合した構造の化合物(例えば、単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、複素環化合物)の当該環自体を構成する原子のうちの炭素原子の数を表す。当該環が置換基によって置換される場合、置換基に含まれる炭素は環形成炭素数には含まない。以下で記載される「環形成炭素数」については、特筆しない限り同様とする。例えば、ベンゼン環は環形成炭素数が6であり、ナフタレン環は環形成炭素数が10であり、ピリジニル基は環形成炭素数が5であり、フラニル基は環形成炭素数4である。また、ベンゼン環やナフタレン環に置換基として例えばアルキル基が置換している場合、当該アルキル基の炭素数は、環形成炭素数の数に含めない。また、フルオレン環に置換基として例えばフルオレン環が結合している場合(スピロフルオレン環を含む)、置換基としてのフルオレン環の炭素数は環形成炭素数の数に含めない。
【0228】
本明細書において、環形成原子数とは、原子が環状に結合した構造(例えば単環、縮合環、環集合)の化合物(例えば単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、複素環化合物)の当該環自体を構成する原子の数を表す。環を構成しない原子や、当該環が置換基によって置換される場合の置換基に含まれる原子は環形成原子数には含まない。以下で記載される「環形成原子数」については、特筆しない限り同様とする。例えば、ピリジン環は、環形成原子数が6であり、キナゾリン環は、環形成原子数が10であり、フラン環は、環形成原子数が5である。ピリジン環やキナゾリン環の炭素原子にそれぞれ結合している水素原子や置換基を構成する原子については、環形成原子数の数に含めない。また、フルオレン環に置換基として例えばフルオレン環が結合している場合(スピロフルオレン環を含む)、置換基としてのフルオレン環の原子数は環形成原子数の数に含めない。
【0229】
・一般式中の各置換基についての説明(各置換基の説明)
次に、本明細書における一般式中の各置換基について説明する。
【0230】
本明細書におけるアリール基(芳香族炭化水素基と称する場合がある。)は、例えば、アリール基Subであり、アリール基Subは、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、ピレニル基、クリセニル基、フルオランテニル基、ベンゾ[a]アントリル基、ベンゾ[c]フェナントリル基、トリフェニレニル基、ベンゾ[k]フルオランテニル基、ベンゾ[g]クリセニル基、ベンゾ[b]トリフェニレニル基、ピセニル基、及びペリレニル基からなる群から選択される少なくともいずれかの基である。
【0231】
本明細書におけるアリール基Subとしては、環形成炭素数が、6~30であることが好ましく、6~20であることがより好ましく、6~14であることがさらに好ましく、6~12であることがよりさらに好ましい。上記アリール基Subの中でもフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、ターフェニル基、及びフルオレニル基が好ましい。1-フルオレニル基、2-フルオレニル基、3-フルオレニル基及び4-フルオレニル基については、9位の炭素原子に、後述する本明細書における置換もしくは無置換のアルキル基Subや、置換もしくは無置換のアリール基Subが置換されていることが好ましい。
【0232】
本明細書におけるヘテロアリール基(複素環基、ヘテロ芳香族環基、又は芳香族複素環基と称する場合がある。)は、例えば、複素環基Subである。複素環基Subは、ヘテロ原子として、窒素、硫黄、酸素、ケイ素、セレン原子、及びゲルマニウム原子からなる群から選択される少なくともいずれかの原子を含む基である。複素環基Subは、ヘテロ原子として、窒素、硫黄、及び酸素からなる群から選択される少なくともいずれかの原子を含む基であることが好ましい。
【0233】
本明細書における複素環基Subは、例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キノリル基、イソキノリニル基、ナフチリジニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、インドリル基、ベンズイミダゾリル基、インダゾリル基、イミダゾピリジニル基、ベンズトリアゾリル基、カルバゾリル基、フリル基、チエニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イソキサゾリル基、イソチアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ピペリジニル基、ピロリジニル基、ピペラジニル基、モルホリル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、及びフェノキサジニル基からなる群から選択される少なくともいずれかの基である。
【0234】
本明細書における複素環基Subとしては、環形成原子数が、5~30であることが好ましく、5~20であることがより好ましく、5~14であることがさらに好ましい。上記複素環基Subの中でも1-ジベンゾフラニル基、2-ジベンゾフラニル基、3-ジベンゾフラニル基、4-ジベンゾフラニル基、1-ジベンゾチエニル基、2-ジベンゾチエニル基、3-ジベンゾチエニル基、4-ジベンゾチエニル基、1-カルバゾリル基、2-カルバゾリル基、3-カルバゾリル基、4-カルバゾリル基、及び9-カルバゾリル基がさらにより好ましい。1-カルバゾリル基、2-カルバゾリル基、3-カルバゾリル基及び4-カルバゾリル基については、9位の窒素原子に、本明細書における置換もしくは無置換のアリール基Subや、置換もしくは無置換の複素環基Subが置換していることが好ましい。
【0235】
また、本明細書において、複素環基Subは、例えば、下記一般式(XY-1)~(XY-18)で表される部分構造から誘導される基であってもよい。
【0236】
【化15】
【0237】
【化16】
【0238】
【化17】
【0239】
前記一般式(XY-1)~(XY-18)において、X及びYは、それぞれ独立に、ヘテロ原子であり、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、ケイ素原子、又はゲルマニウム原子であることが好ましい。前記一般式(XY-1)~(XY-18)で表される部分構造は、任意の位置で結合手を有して複素環基となり、この複素環基は、置換基を有していてもよい。
【0240】
また、本明細書において、複素環基Subは、例えば、下記一般式(XY-19)~(XY-22)で表される基であってもよい。また、結合手の位置も適宜変更され得る。
【0241】
【化18】
【0242】
本明細書におけるアルキル基は、直鎖のアルキル基、分岐鎖のアルキル基又は環状のアルキル基のいずれであってもよい。
本明細書におけるアルキル基は、例えば、アルキル基Subである。
本明細書における直鎖のアルキル基は、例えば、直鎖のアルキル基Sub31である。
本明細書における分岐鎖のアルキル基は、例えば、分岐鎖のアルキル基Sub32である。
本明細書における環状のアルキル基は、例えば、環状のアルキル基Sub33である。
アルキル基Subは、例えば、直鎖のアルキル基Sub31、分岐鎖のアルキル基Sub32、及び環状のアルキル基Sub33からなる群から選択される少なくともいずれかの基である。
【0243】
直鎖のアルキル基Sub31又は分岐鎖のアルキル基Sub32は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、ネオペンチル基、アミル基、イソアミル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-ペンチルヘキシル基、1-ブチルペンチル基、1-ヘプチルオクチル基、及び3-メチルペンチル基からなる群から選択される少なくともいずれかの基である。
【0244】
本明細書における直鎖のアルキル基Sub31又は分岐鎖のアルキル基Sub32の炭素数は、1~30であることが好ましく、1~20であることがより好ましく、1~10であることがさらに好ましく、1~6であることがよりさらに好ましい。上記直鎖のアルキル基Sub31又は分岐鎖のアルキル基Sub32としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、アミル基、イソアミル基、及びネオペンチル基がさらにより好ましい。
【0245】
本明細書における環状のアルキル基Sub33は、例えば、シクロアルキル基Sub331である。
【0246】
本明細書におけるシクロアルキル基Sub331は、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、アダマンチル基、及びノルボルニル基からなる群から選択される少なくともいずれかの基である。シクロアルキル基Sub331の環形成炭素数は、3~30であることが好ましく、3~20であることがより好ましく、3~10であることがさらに好ましく、5~8であることがよりさらに好ましい。シクロアルキル基Sub331の中でも、シクロペンチル基やシクロヘキシル基がさらにより好ましい。
【0247】
本明細書におけるハロゲン化アルキル基は、例えば、ハロゲン化アルキル基Subであり、ハロゲン化アルキル基Subは、例えば、アルキル基Subが1以上のハロゲン原子、好ましくはフッ素原子で置換されたアルキル基である。
【0248】
本明細書におけるハロゲン化アルキル基Subは、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、トリフルオロメチルメチル基、トリフルオロエチル基、及びペンタフルオロエチル基からなる群から選択される少なくともいずれかの基である。
【0249】
本明細書における置換シリル基は、例えば、置換シリル基Subであり、置換シリル基Subは、例えば、アルキルシリル基Sub51及びアリールシリル基Sub52からなる群から選択される少なくともいずれかの基である。
【0250】
本明細書におけるアルキルシリル基Sub51は、例えば、上記アルキル基Subを有するトリアルキルシリル基Sub511である。
トリアルキルシリル基Sub511は、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ-n-ブチルシリル基、トリ-n-オクチルシリル基、トリイソブチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジメチル-n-プロピルシリル基、ジメチル-n-ブチルシリル基、ジメチル-t-ブチルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、及びトリイソプロピルシリル基からなる群から選択される少なくともいずれかの基である。トリアルキルシリル基Sub511における3つのアルキル基Subは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0251】
本明細書におけるアリールシリル基Sub52は、例えば、ジアルキルアリールシリル基Sub521、アルキルジアリールシリル基Sub522、及びトリアリールシリル基Sub523からなる群から選択される少なくともいずれかの基である。
【0252】
ジアルキルアリールシリル基Sub521は、例えば、上記アルキル基Subを2つ有し、上記アリール基Subを1つ有するジアルキルアリールシリル基である。ジアルキルアリールシリル基Sub521の炭素数は、8~30であることが好ましい。
【0253】
アルキルジアリールシリル基Sub522は、例えば、上記アルキル基Subを1つ有し、上記アリール基Subを2つ有するアルキルジアリールシリル基である。アルキルジアリールシリル基Sub522の炭素数は、13~30であることが好ましい。
【0254】
トリアリールシリル基Sub523は、例えば、上記アリール基Subを3つ有するトリアリールシリル基である。トリアリールシリル基Sub523の炭素数は、18~30であることが好ましい。
【0255】
本明細書における置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基は、例えば、アルキルスルホニル基Subであり、アルキルスルホニル基Subは、-SOで表される。-SOにおけるRは、置換もしくは無置換の上記アルキル基Subを表す。
【0256】
本明細書におけるアラルキル基(アリールアルキル基と称する場合がある)は、例えば、アラルキル基Subである。アラルキル基Subにおけるアリール基は、例えば、上記アリール基Sub及び上記ヘテロアリール基Subの少なくとも一方を含む。
【0257】
本明細書におけるアラルキル基Subは、アリール基Subを有する基であることが好ましく、-Z-Zと表される。このZは、例えば、上記アルキル基Subに対応するアルキレン基等である。このZは、例えば、上記アリール基Subである。このアラルキル基Subは、アリール部分が炭素数6~30(好ましくは6~20、より好ましくは6~12)、アルキル部分が炭素数1~30(好ましくは1~20、より好ましくは1~10、さらに好ましくは1~6)であることが好ましい。このアラルキル基Subは、例えば、ベンジル基、2-フェニルプロパン-2-イル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルイソプロピル基、2-フェニルイソプロピル基、フェニル-t-ブチル基、α-ナフチルメチル基、1-α-ナフチルエチル基、2-α-ナフチルエチル基、1-α-ナフチルイソプロピル基、2-α-ナフチルイソプロピル基、β-ナフチルメチル基、1-β-ナフチルエチル基、2-β-ナフチルエチル基、1-β-ナフチルイソプロピル基、及び2-β-ナフチルイソプロピル基からなる群から選択される少なくともいずれかの基である。
【0258】
本明細書におけるアルコキシ基は、例えば、アルコキシ基Subであり、アルコキシ基Subは、-OZと表される。このZは、例えば、上記アルキル基Subである。アルコキシ基Subは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、及びヘキシルオキシ基からなる群から選択される少なくともいずれかの基である。アルコキシ基Subの炭素数は、1~30であることが好ましく、1~20であることがより好ましい。
【0259】
本明細書におけるハロゲン化アルコキシ基は、例えば、ハロゲン化アルコキシ基Subであり、ハロゲン化アルコキシ基Subは、例えば、上記アルコキシ基Subが1以上のハロゲン原子、好ましくはフッ素原子で置換されたアルコキシ基である。
【0260】
本明細書におけるアリールオキシ基(アリールアルコキシ基と称する場合がある)は、例えば、アリールアルコキシ基Sub10である。アリールアルコキシ基Sub10におけるアリール基は、アリール基Sub及びヘテロアリール基Subの少なくとも一方を含む。
【0261】
本明細書におけるアリールアルコキシ基Sub10は、-OZと表される。このZのは、例えば、アリール基Sub又はヘテロアリール基Subである。アリールアルコキシ基Sub10の環形成炭素数は、6~30であることが好ましく、6~20であることがより好ましい。このアリールアルコキシ基Sub10としては、例えば、フェノキシ基が挙げられる。
【0262】
本明細書における置換アミノ基は、例えば、置換アミノ基Sub11であり、置換アミノ基Sub11は、例えば、アリールアミノ基Sub111及びアルキルアミノ基Sub112からなる群から選択される少なくともいずれかの基である。
アリールアミノ基Sub111は、-NHRV1、又は-N(RV1と表される。このRV1は、例えば、アリール基Subである。-N(RV1における2つのRV1は、同一又は異なる。
アルキルアミノ基Sub112は、-NHRV2、又は-N(RV2と表される。このRV2は、例えば、アルキル基Subである。-N(RV2における2つのRV2は、同一又は異なる。
【0263】
本明細書におけるアルケニル基は、例えば、アルケニル基Sub12であり、アルケニル基Sub12は、直鎖又は分岐鎖のいずれかであり、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、スチリル基、2,2-ジフェニルビニル基、1,2,2-トリフェニルビニル基、及び2-フェニル-2-プロペニルからなる群から選択される少なくともいずれかの基である。
【0264】
本明細書におけるアルキニル基は、例えば、アルキニル基Sub13であり、アルキニル基Sub13は、直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよく、例えば、エチニル、プロピニル、及び2-フェニルエチニルからなる群から選択される少なくともいずれかの基である。
【0265】
本明細書におけるアルキルチオ基は、例えば、アルキルチオ基Sub14である。
アルキルチオ基Sub14は、-SRV3と表される。このRV3は、例えば、アルキル基Subである。アルキルチオ基Sub14の炭素数は、1~30であることが好ましく、1~20であることがより好ましい。
本明細書におけるアリールチオ基は、例えば、アリールチオ基Sub15である。
アリールチオ基Sub15は、-SRV4と表される。このRV4は、例えば、アリール基Subである。アリールチオ基Sub15の環形成炭素数は、6~30であることが好ましく、6~20であることがより好ましい。
【0266】
本明細書におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
【0267】
本明細書における置換ホスフィノ基は、例えば、置換ホスフィノ基Sub16であり、置換ホスフィノ基Sub16は、例えば、フェニルホスファニル基である。
【0268】
本明細書におけるアリールカルボニル基は、例えば、アリールカルボニル基Sub17であり、アリールカルボニル基Sub17は、-COY’と表される。このY’は、例えば、アリール基Subである。本明細書におけるアリールカルボニル基Sub17は、例えば、フェニルカルボニル基、ジフェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、及びトリフェニルカルボニル基からなる群から選択される少なくともいずれかの基である。
【0269】
本明細書におけるアシル基は、例えば、アシル基Sub18であり、アシル基Sub18は、-COR’と表される。このR’は、例えば、アルキル基Subである。本明細書におけるアシル基Sub18は、例えば、アセチル基及びプロピオニル基からなる群から選択される少なくともいずれかの基である。
【0270】
本明細書における置換ホスホリル基は、例えば、置換ホスホリル基Sub19であり、置換ホスホリル基Sub19は、下記一般式(P)で表される。
【0271】
【化19】
【0272】
前記一般式(P)において、ArP1及びArP2は、上記アルキル基Sub、及び上記アリール基Subからなる群から選択されるいずれかの置換基である。
【0273】
本明細書におけるエステル基は、例えば、エステル基Sub20であり、エステル基Sub20は、例えば、アルキルエステル基及びアリールエステル基 からなる群から選択される少なくともいずれかの基である。
本明細書におけるアルキルエステル基は、例えば、アルキルエステル基Sub201であり、アルキルエステル基Sub201は、-C(=O)ORで表される。Rは、例えば、置換もしくは無置換の上記アルキル基Sub(好ましくは炭素数1~10)である。
本明細書におけるアリールエステル基は、例えば、アリールエステル基Sub202であり、アリールエステル基Sub202は、-C(=O)ORArで表される。RArは、例えば、置換もしくは無置換の上記アリール基Subである。
【0274】
本明細書におけるシロキサニル基は、例えば、シロキサニル基Sub21であり、シロキサニル基Sub21は、エーテル結合を介したケイ素化合物基である。シロキサニル基Sub21は、例えば、トリメチルシロキサニル基である。
【0275】
本明細書におけるカルバモイル基は、-CONHで表される。
本明細書における置換のカルバモイル基は、例えば、カルバモイル基Sub22であり、カルバモイル基Sub22は、-CONH-Ar、又は-CONH-Rで表される。Arは、例えば、置換もしくは無置換の上記アリール基Sub(好ましくは環形成炭素数6~10)及び上記ヘテロアリール基Sub(好ましくは環形成原子数5~14)からなる群から選択される少なくともいずれかの基である。Arは、アリール基Subとヘテロアリール基Subとが結合した基であってもよい。
は、例えば、置換もしくは無置換の上記アルキル基Sub(好ましくは炭素数1~6)である。
【0276】
本明細書において、「環形成炭素」とは飽和環、不飽和環、又は芳香環を構成する炭素原子を意味する。「環形成原子」とはヘテロ環(飽和環、不飽和環、及び芳香環を含む)を構成する炭素原子及びヘテロ原子を意味する。
【0277】
また、本明細書において、水素原子とは、中性子数の異なる同位体、すなわち、軽水素(Protium)、重水素(Deuterium)、三重水素(Tritium)を包含する。
【0278】
以下、アルキル基Subとは、「各置換基の説明」で説明した直鎖のアルキル基Sub31、分岐鎖のアルキル基Sub32、及び環状のアルキル基Sub33のいずれか1以上の基を意味する。
同様に、置換シリル基Subとは、アルキルシリル基Sub51及びアリールシリル基Sub52のいずれか1以上の基を意味する。
同様に、置換アミノ基Sub11とは、アリールアミノ基Sub111及びアルキルアミノ基Sub112のいずれか1以上の基を意味する。
【0279】
本明細書において、「置換もしくは無置換の」という場合における置換基としては、例えば置換基RF1であり、置換基RF1は、アリール基Sub、ヘテロアリール基Sub、アルキル基Sub、ハロゲン化アルキル基Sub、置換シリル基Sub、アルキルスルホニル基Sub、アラルキル基Sub、アルコキシ基Sub、ハロゲン化アルコキシ基Sub、アリールアルコキシ基Sub10、置換アミノ基Sub11、アルケニル基Sub12、アルキニル基Sub13、アルキルチオ基Sub14、アリールチオ基Sub15、置換ホスフィノ基Sub16、アリールカルボニル基Sub17、アシル基Sub18、置換ホスホリル基Sub19、エステル基Sub20、シロキサニル基Sub21、カルバモイル基Sub22、無置換のアミノ基、無置換のシリル基、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、チオール基、ニトロ基、及びカルボキシ基からなる群から選択される少なくとも一種の基である。
【0280】
本明細書において、「置換もしくは無置換の」という場合における置換基RF1は、ジアリールホウ素基(ArB1ArB2B-)であってもよい。このArB1及びArB2の例としては、上述のアリール基Subが挙げられる。ArB1ArB2B-におけるArB1及びArB2は同一又は異なる。
【0281】
置換基RF1の具体例及び好ましい基としては、「各置換基の説明」中の置換基(例えば、アリール基Sub、ヘテロアリール基Sub、アルキル基Sub、ハロゲン化アルキル基Sub、置換シリル基Sub、アルキルスルホニル基Sub、アラルキル基Sub、アルコキシ基Sub、ハロゲン化アルコキシ基Sub、アリールアルコキシ基Sub10、置換アミノ基Sub11、アルケニル基Sub12、アルキニル基Sub13、アルキルチオ基Sub14、アリールチオ基Sub15、置換ホスフィノ基Sub16、アリールカルボニル基Sub17、アシル基Sub18、置換ホスホリル基Sub19、エステル基Sub20、シロキサニル基Sub21、及びカルバモイル基Sub22)の具体例及び好ましい基と同様の基が挙げられる。
【0282】
「置換もしくは無置換の」という場合における置換基RF1は、アリール基Sub、ヘテロアリール基Sub、アルキル基Sub、ハロゲン化アルキル基Sub、置換シリル基Sub、アルキルスルホニル基Sub、アラルキル基Sub、アルコキシ基Sub、ハロゲン化アルコキシ基Sub、アリールアルコキシ基Sub10、置換アミノ基Sub11、アルケニル基Sub12、アルキニル基Sub13、アルキルチオ基Sub14、アリールチオ基Sub15、置換ホスフィノ基Sub16、アリールカルボニル基Sub17、アシル基Sub18、置換ホスホリル基Sub19、エステル基Sub20、シロキサニル基Sub21、カルバモイル基Sub22、無置換のアミノ基、無置換のシリル基、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、チオール基、ニトロ基、及びカルボキシ基からなる群から選択される少なくとも一種の基(以下、置換基RF2とも称する)によってさらに置換されてもよい。また、これらの置換基RF2は複数が互いに結合して環を形成してもよい。
【0283】
「置換もしくは無置換の」という場合における「無置換」とは前記置換基RF1で置換されておらず、水素原子が結合していることを意味する。
【0284】
なお、本明細書において、「置換もしくは無置換の炭素数XX~YYのZZ基」という表現における「炭素数XX~YY」は、ZZ基が無置換である場合の炭素数を表し、置換されている場合の置換基RF1の炭素数は含めない。
【0285】
本明細書において、「置換もしくは無置換の原子数XX~YYのZZ基」という表現における「原子数XX~YY」は、ZZ基が無置換である場合の原子数を表し、置換されている場合の置換基RF1の原子数は含めない。
【0286】
本明細書において説明する化合物、又はその部分構造において、「置換もしくは無置換の」という場合についても、前記と同様である。
【0287】
本明細書において、置換基同士が互いに結合して環が構築される場合、当該環の構造は、飽和環、不飽和環、芳香族炭化水素環、又は複素環である。
【0288】
本明細書において、連結基における芳香族炭化水素基としては、例えば、上述した一価のアリール基Subから、1つ以上の原子を除いて得られる二価以上の基が挙げられる。
本明細書において、連結基における複素環基としては、例えば、上述した一価のヘテロアリール基Subから、1つ以上の原子を除いて得られる二価以上の基が挙げられる。
【0289】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前に記載される数値を下限値とし、「~」の後に記載される数値を上限値として含む範囲を意味する。
【0290】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変更、改良などは、本発明に含まれる。
【0291】
有機EL表示装置1又は有機EL表示装置1Aにおいては、青色有機EL素子10B及び赤色有機EL素子10R又は緑色有機EL素子10Gが基板8の上に並列して配置されている態様を例に挙げて説明したが、本発明は、このような態様に限定されない。本発明の一態様に係る有機EL表示装置として、少なくとも、画素としての青色有機EL素子及び赤色有機EL素子又は緑色有機EL素子が基板の上に並列して配置されていればよい。また、本発明の一態様に係る有機EL表示装置として、少なくとも、画素としての青色有機EL素子及び緑色有機EL素子が基板の上に並列して配置されていればよい。また、本発明の一態様に係る有機EL表示装置として、少なくとも、画素としての青色有機EL素子、緑色有機EL素子及び赤色有機EL素子が基板の上に並列して配置されていればよく、他の発光色の有機EL素子が配置されていてもよい。
【0292】
有機EL表示装置おいて、共振器構造を有する有機EL素子は、前記実施形態で説明した有機EL素子に限定されない。
例えば、第1実施形態に係る有機EL表示装置の場合、赤色有機EL素子だけでなく、青色有機EL素子も光反射層と半透過性電極との間で干渉次数が一次の共振器構造を有していてもよい。第2~第5実施形態に係る有機EL表示装置についても、青色有機EL素子も光反射層と半透過性電極との間で干渉次数が一次の共振器構造を有していてもよい。有機EL表示装置において光反射層と半透過性電極との間とは、光反射層、透明電極及び半透過性電極を含まず、正孔輸送帯域、発光層及び電子輸送帯域からなる帯域である。有機EL表示装置において光反射層と半透過性電極との間隔d1は、正孔輸送帯域の厚さ、発光層の厚さ及び電子輸送帯域の厚さの和に相当する。
【0293】
第3、第4及び第5実施形態における緑色有機EL素子10G及び緑色発光層5Gは、第2実施形態で説明した緑色有機EL素子10G及び緑色発光層5Gであるが、本発明の別の態様としては、このような態様に限定されない。例えば、第3、第4及び第5実施形態における緑色有機EL素子が緑色で発光可能な画素としての有機EL素子である態様が挙げられ、この態様における緑色有機EL素子は、例えば、緑色発光層に遅延蛍光性の化合物DFを含んでいなくてもよいし、光反射層と半透過性電極との間で干渉次数が一次の共振器構造を有していなくてもよい。
【0294】
その他、本発明の実施における具体的な構造及び形状などは、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などとしてもよい。
【実施例0295】
以下、本発明に係る実施例を説明する。本発明はこれらの実施例によって何ら限定されない。
【0296】
<化合物>
実施例及び比較例に係る有機EL素子の製造に用いた化合物を以下に示す。
【0297】
【化20】
【0298】
【化21】
【0299】
【化22】
【0300】
【化23】
【0301】
【化24】
【0302】
【化25】
【0303】
<有機EL表示装置の作製>
有機EL表示装置を以下のように作製し、評価した。
【0304】
〔実施例1〕
先ず、素子作製用基板としてのガラス基板の上に、銀合金層であるAPC(Ag-Pd-Cu)層をスパッタリング法により成膜した。APC層の膜厚は、100nmとした。APC層は、反射層に相当する。
次に、APC層の上に、膜厚10nmの酸化亜鉛(IZO)膜をスパッタリング法により成膜した。この酸化亜鉛膜は、透明電極に相当する。
【0305】
続いて通常のリソグラフィ技術を用いて、レジストパターンをマスクに用いたエッチングにより、酸化亜鉛膜をパターニングし、下部電極(陽極)を形成した。
なお、パネル駆動のためには上記陽極の下部にTFTを形成し、TFT上面の凸凹を平坦化するための有機材料からなる平坦化膜及びTFT出力端と上記下部電極(陽極)とを電気的に接続するためのコンタクトホールを介して接続して形成してもよい。
下部電極が形成された基板をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。
【0306】
UVオゾン洗浄の後、真空蒸着法を用いて、化合物HT-1及び化合物HAを用いて、共通層としての正孔注入層を下部電極の上に形成した。正孔注入層における化合物HT-1の質量比を98質量%とし、化合物HAの質量比を2質量%とした。正孔注入層の膜厚は、10nmとした。
【0307】
次に、真空蒸着法を用いて、共通層としての正孔輸送層を正孔注入層の上に形成した。正孔輸送層の形成に化合物HT-2を用いた。正孔輸送層の膜厚は、5nmとした。
正孔注入層と正孔輸送層とを合わせて、正孔輸送帯域と呼ぶ。
【0308】
続いて、発光パターンに対応したマスクを用いて同一基板上に対する蒸着の塗分けを施した。
【0309】
赤色の画素部には、化合物CBP、化合物RD及び化合物TADF-1を用いて、膜厚40nmの赤色発光層を形成した。赤色発光層における化合物CBPの質量比を79質量%とし、化合物RDの質量比を1質量%とし、化合物TADF-1の質量比を20質量%とした。
【0310】
緑色の画素部には、化合物CBP、化合物GD及び化合物TADF-2を用いて、膜厚30nmの緑色発光層を形成した。緑色発光層における化合物CBPの質量比を79質量%とし、GDの質量比を1質量%とし、TADF-2の質量比を20質量%とした。
【0311】
青色の画素部には、化合物BH及び化合物BDを用いて、膜厚20nmの青色発光層を形成した。青色発光層における化合物BHの質量比を95質量%とし、化合物BDの質量比を5質量%とした。
赤色発光層、緑色発光層及び青色発光層は、正孔輸送帯域の上に形成した。
【0312】
次に、赤色画素の赤色発光層及び緑色画素の緑色発光層のそれぞれの上に、正孔障壁層及び電子輸送層を形成した。
正孔障壁層及び電子輸送層を形成する際、マスクを用いた真空蒸着法により、赤色画素部には化合物ET-1を用いて、膜厚10nmの正孔障壁層を形成した後、化合物ET-2を用いて、膜厚95nmの電子輸送層を形成した。赤色画素における正孔障壁層及び電子輸送層からなる2層(合計膜厚105nm)は、光学干渉距離を調整するために設けた。
【0313】
また、緑色画素部の正孔障壁層及び電子輸送層を形成する際にも、マスクを用いた真空蒸着法により、緑色の画素部には化合物ET-1を用いて、膜厚10nmの正孔障壁層を形成した後、化合物ET-2を用いて、膜厚25nmの電子輸送層を形成した。緑色画素における正孔障壁層及び電子輸送層からなる2層(合計膜厚35nm)は、光学干渉距離を調整するために設けた。
【0314】
青色画素の青色発光層の上には、光学干渉距離を調整するための層を形成しなかった。
【0315】
次に、赤色画素及び緑色画素の光学干渉距離を調整するための層の上、並びに青色画素の発光層の上に、化合物ET-2を用いて、膜厚150nmの共通層としての電子輸送層を真空蒸着法により形成した。
【0316】
次に、カソード電極用マスクに変更し、電子輸送層の上に、LiFを用いて、膜厚1nmの共通層としての電子注入層を形成した。
正孔障壁層と電子輸送層と電子注入層とを合わせて、電子輸送帯域と呼ぶ。
【0317】
次に、電子注入層の上に、Mg:Agの質量比が1:9である膜厚12nmの共通層としての電極(カソード)を形成し、この電極(カソード)の上に、化合物Cap1を用いて、膜厚70nmの共通層としての有機キャッピング層を形成した。
【0318】
実施例1に係る有機EL表示装置の製造においてマスク蒸着が必要なのは、発光層の成膜と光学干渉距離を調整するために設けた正孔障壁層及び電子輸送層の成膜であり、有機機能層の成膜に必要なマスク蒸着回数は、5回であった。
【0319】
実施例1に係る有機EL表示装置の赤色画素、緑色画素及び青色画素の正面での電流効率及び45°での電流効率を、電流密度10mA/cmで測定した。
測定の結果、遅延蛍光性の化合物を有する発光層からの発光である赤色画素及び緑色画素、また、通常の蛍光発光である青色画素において高い効率が得られた。また、正面での電流効率及び45°での電流効率の発光効率差が小さかった。
【0320】
〔比較例1〕
比較例1に係る有機EL表示装置を次のようにして製造した。
【0321】
実施例1と同様にして、ガラス基板の上へのAPC(Ag-Pd-Cu)層の形成からUVオゾン洗浄まで実施した。
UVオゾン洗浄の後、下部電極の上に、化合物HT-1及び化合物HAを用いて、共通層としての正孔注入層を真空蒸着法により形成した。正孔注入層における化合物HT-1の質量比を98質量%とし、化合物HAの質量比を2質量%とした。正孔注入層の膜厚は、10nmとした。
【0322】
次に、正孔注入層の上に、化合物HT-1を用いて、共通層としての第1正孔輸送層を真空蒸着法により形成した。第1正孔輸送層の膜厚は、123nmとした。
【0323】
続いて、発光パターンに対応したマスクを用いて同一基板上に対する蒸着の塗分けを施した。赤色画素の第1正孔輸送層及び緑色画素の第1正孔輸送層のそれぞれの上に、光学干渉距離を調整するための層を形成した。
光学干渉距離を調整するための層として、赤色画素部には、化合物HT-1を用いて、膜厚90nmの層を、マスクを用いた真空蒸着法により形成した。
光学干渉距離を調整するための層として、緑色画素部には、化合物HT-1を用いて、膜厚30nmの層を、マスクを用いた真空蒸着法により形成した。
青色画素の第1正孔輸送層の上には、光学干渉距離を調整するための層を形成しなかった。
【0324】
次に、青色画素の第1正孔輸送層の上、並びに赤色画素及び緑色画素の光学干渉距離を調整するための層の上に、化合物HT-2を用いて、共通層としての第2正孔輸送層を真空蒸着法により形成した。第2正孔輸送層の膜厚は、10nmとした。
比較例1において、正孔注入層と第1正孔輸送層と光学干渉距離を調整するための層と第2正孔輸送層とを合わせて、正孔輸送帯域と呼ぶ。
【0325】
続いて発光パターンに対応したマスクを用いて同一基板上に対する蒸着の塗分けを施した。
【0326】
赤色の画素部には、化合物CBP、化合物RD及び化合物TADF-1を用いて、膜厚40nmの赤色発光層を形成した。赤色発光層における化合物CBPの質量比を79質量%とし、化合物RDの質量比を1質量%とし、化合物TADF-1の質量比を20質量%とした。
【0327】
緑色の画素部には、化合物CBP、化合物GD及び化合物TADF-2を用いて、膜厚30nmの緑色発光層を形成した。緑色発光層における化合物CBPの質量比を79質量%とし、GDの質量比を1質量%とし、TADF-2の質量比を20質量%とした。
【0328】
青色の画素部には、化合物BH及び化合物BDを用いて、膜厚20nmの青色発光層を形成した。青色発光層における化合物BHの質量比を95質量%とし、化合物BDの質量比を5質量%とした。
赤色発光層、緑色発光層及び青色発光層は、正孔輸送帯域の上に形成した。
【0329】
次に、赤色画素の赤色発光層、緑色画素の緑色発光層及び青色画素の青色発光層のそれぞれの上に、化合物ET-1を用いて、共通層としての第1電子輸送層を真空蒸着法により形成した。第1電子輸送層の膜厚は、10nmとした。
【0330】
次に、赤色画素、緑色画素及び青色画素の共通層としての第1電子輸送層の上に、化合物ET-2を用いて、共通層としての第2電子輸送層を真空蒸着法により形成した。第2電子輸送層の膜厚は、20nmとした。
【0331】
次に、カソード電極用マスクに変更し、共通層としての第2電子輸送層の上に、LiFを用いて、膜厚1nmの共通層としての電子注入層を形成した。
【0332】
第1電子輸送層と第2電子輸送層と電子注入層とを合わせて、電子輸送帯域と呼ぶ。
【0333】
次に、電子注入層の上に、Mg:Agの質量比が1:9である膜厚12nmの共通層としての電極(カソード)を形成し、この電極(カソード)の上に、化合物Cap1を用いて、膜厚70nmの共通層としての有機キャッピング層を形成した。
【0334】
比較例1に係る有機EL表示装置の製造においてマスク蒸着が必要なのは、光学干渉距離を調整するために設けた層の成膜と発光層の成膜であり、有機機能層の成膜に必要なマスク蒸着回数は、5回であった。
【0335】
比較例1に係る有機EL表示装置の赤色画素、緑色画素及び青色画素の正面での電流効率及び45°での電流効率を、電流密度10mA/cmで測定した。
測定の結果、正孔及び電子の再結合位置が電子輸送帯域側である、遅延蛍光性の化合物を有する発光層からの発光である赤色画素及び緑色画素の効率が低下した。また、赤色画素及び緑色画素の正面での電流効率及び45°での電流効率の発光効率差が大きかった。
【0336】
〔比較例2〕
比較例2に係る有機EL表示装置を次のようにして製造した。
【0337】
実施例1と同様にして、ガラス基板の上へのAPC(Ag-Pd-Cu)層の形成からUVオゾン洗浄まで実施した。
UVオゾン洗浄の後、下部電極の上に、化合物HT-1及び化合物HAを用いて、共通層としての正孔注入層を真空蒸着法により形成した。正孔注入層における化合物HT-1の質量比を98質量%とし、化合物HAの質量比を2質量%とした。正孔注入層の膜厚は、10nmとした。
【0338】
次に、正孔注入層の上に、化合物HT-1を用いて、共通層としての第1正孔輸送層を真空蒸着法により形成した。第1正孔輸送層の膜厚は、123nmとした。
【0339】
続いて、発光パターンに対応したマスクを用いて同一基板上に対する蒸着の塗分けを施した。赤色画素の第1正孔輸送層及び緑色画素の第1正孔輸送層のそれぞれの上に、光学干渉距離を調整するための層を形成した。
光学干渉距離を調整するための層として、赤色画素部には、化合物HT-1を用いて、膜厚60nmの層を、マスクを用いた真空蒸着法により形成した。
光学干渉距離を調整するための層として、緑色画素部には、化合物HT-1を用いて、膜厚15nmの層を、マスクを用いた真空蒸着法により形成した。
青色画素の第1正孔輸送層の上には、光学干渉距離を調整するための層を形成しなかった。
【0340】
次に、青色画素の第1正孔輸送層の上、並びに赤色画素及び緑色画素の光学干渉距離を調整するための層の上に、化合物HT-2を用いて、共通層としての第2正孔輸送層を真空蒸着法により形成した。第2正孔輸送層の膜厚は、10nmとした。
比較例2において、正孔注入層と第1正孔輸送層と光学干渉距離を調整するための層と第2正孔輸送層とを合わせて、正孔輸送帯域と呼ぶ。
【0341】
続いて発光パターンに対応したマスクを用いて同一基板上に対する蒸着の塗分けを施した。
【0342】
赤色の画素部には、化合物CBP、化合物RD及び化合物TADF-1を用いて、膜厚40nmの赤色発光層を形成した。赤色発光層における化合物CBPの質量比を79質量%とし、化合物RDの質量比を1質量%とし、化合物TADF-1の質量比を20質量%とした。
【0343】
緑色の画素部には、化合物CBP、化合物GD及び化合物TADF-2を用いて、膜厚30nmの緑色発光層を形成した。緑色発光層における化合物CBPの質量比を79質量%とし、GDの質量比を1質量%とし、TADF-2の質量比を20質量%とした。
【0344】
青色の画素部には、化合物BH及び化合物BDを用いて、膜厚20nmの青色発光層を形成した。青色発光層における化合物BHの質量比を95質量%とし、化合物BDの質量比を5質量%とした。
赤色発光層、緑色発光層及び青色発光層は、正孔輸送帯域の上に形成した。
【0345】
続いて、発光パターンに対応したマスクを用いて同一基板上に対する蒸着の塗分けを施した。赤色画素の赤色発光層及び緑色画素の緑色発光層のそれぞれの上に、光学干渉距離を調整するための層を形成した。
【0346】
光学干渉距離を調整するための層として、マスクを用いた真空蒸着法により、赤色画素部には化合物ET-1を用いて、膜厚10nmの正孔障壁層を形成した後、化合物ET-2を用いて、膜厚20nmの電子輸送層を形成した。赤色画素における正孔障壁層及び電子輸送層からなる2層の合計膜厚は、30nmとした。
【0347】
光学干渉距離を調整するための層として、マスクを用いた真空蒸着法により、緑色画素部には化合物ET-1を用いて、膜厚10nmの正孔障壁層を形成した後、化合物ET-2を用いて、膜厚5nmの電子輸送層を形成した。緑色画素における正孔障壁層及び電子輸送層からなる2層の合計膜厚は、15nmとした。
【0348】
青色画素の青色発光層の上には、光学干渉距離を調整するための層を形成しなかった。
【0349】
次に、赤色画素及び緑色画素の光学干渉距離を調整するための層の上、並びに青色画素の発光層の上に、化合物ET-2を用いて、膜厚30nmの共通層としての電子輸送層を真空蒸着法により形成した。
【0350】
次に、カソード電極用マスクに変更し、電子輸送層の上に、LiFを用いて、膜厚1nmの共通層としての電子注入層を形成した。
正孔障壁層と電子輸送層と電子注入層とを合わせて、電子輸送帯域と呼ぶ。
【0351】
次に、電子注入層の上に、Mg:Agの質量比が1:9である膜厚12nmの共通層としての電極(カソード)を形成し、この電極(カソード)の上に、化合物Cap1を用いて、膜厚70nmの共通層としての有機キャッピング層を形成した。
【0352】
比較例2に係る有機EL表示装置の製造においてマスク蒸着が必要なのは、光学干渉距離を調整するために設けた層の成膜と発光層の成膜であり、有機機能層の成膜に必要なマスク蒸着回数は、7回であった。すなわち、実施例1及び比較例1に比較して、光学干渉距離を調整するための層を追加したことで、マスク蒸着回数が2回増加した。
【0353】
比較例2に係る有機EL表示装置の赤色画素、緑色画素及び青色画素の正面での電流効率及び45°での電流効率を、電流密度10mA/cmで測定した。結果を表1に示した。
【0354】
〔比較例3〕
比較例3に係る有機EL表示装置を次のようにして製造した。
【0355】
実施例1と同様にして、ガラス基板の上へのAPC(Ag-Pd-Cu)層の形成からUVオゾン洗浄まで実施した。
UVオゾン洗浄の後、下部電極の上に、化合物HT-1及び化合物HAを用いて、共通層としての正孔注入層を真空蒸着法により形成した。正孔注入層における化合物HT-1の質量比を98質量%とし、化合物HAの質量比を2質量%とした。正孔注入層の膜厚は、10nmとした。
【0356】
次に、正孔注入層の上に、化合物HT-1を用いて、共通層としての第1正孔輸送層を真空蒸着法により形成した。第1正孔輸送層の膜厚は、123nmとした。
【0357】
次に、正孔注入層の上に、化合物HT-2を用いて、共通層としての第2正孔輸送層を真空蒸着法により形成した。第2正孔輸送層の膜厚は、10nmとした。
正孔注入層と第1正孔輸送層と第2正孔輸送層とを合わせて、正孔輸送帯域と呼ぶ。
【0358】
続いて、発光パターンに対応したマスクを用いて同一基板上に対する蒸着の塗分けを施した。
【0359】
赤色の画素部には、化合物CBP、化合物RD及び化合物TADF-1を用いて、膜厚100nmの赤色発光層を形成した。赤色発光層における化合物CBPの質量比を79質量%とし、化合物RDの質量比を1質量%とし、化合物TADF-1の質量比を20質量%とした。
【0360】
緑色の画素部には、化合物CBP、化合物GD及び化合物TADF-2を用いて、膜厚45nmの緑色発光層を形成した。緑色発光層における化合物CBPの質量比を79質量%とし、GDの質量比を1質量%とし、TADF-2の質量比を20質量%とした。
【0361】
青色の画素部には、化合物BH及び化合物BDを用いて、膜厚20nmの青色発光層を形成した。青色発光層における化合物BHの質量比を95質量%とし、化合物BDの質量比を5質量%とした。
赤色発光層、緑色発光層及び青色発光層は、正孔輸送帯域の上に形成した。
【0362】
続いて、発光パターンに対応したマスクを用いて同一基板上に対する蒸着の塗分けを施した。赤色画素の赤色発光層及び緑色画素の緑色発光層のそれぞれの上に、光学干渉距離を調整するための層を形成した。
【0363】
光学干渉距離を調整するための層として、マスクを用いた真空蒸着法により、赤色画素部には化合物ET-1を用いて、膜厚10nmの正孔障壁層を形成した後、化合物ET-2を用いて、膜厚20nmの電子輸送層を形成した。赤色画素における正孔障壁層及び電子輸送層からなる2層の合計膜厚は、30nmとした。
【0364】
光学干渉距離を調整するための層として、マスクを用いた真空蒸着法により、緑色画素部には化合物ET-1を用いて、膜厚10nmの正孔障壁層を形成した後、化合物ET-2を用いて、膜厚5nmの電子輸送層を形成した。緑色画素における正孔障壁層及び電子輸送層からなる2層の合計膜厚は、15nmとした。
【0365】
青色画素の青色発光層の上には、光学干渉距離を調整するための層を形成しなかった。
【0366】
次に、赤色画素及び緑色画素の光学干渉距離を調整するための層の上、並びに青色画素の発光層の上に、化合物ET-2を用いて、膜厚30nmの共通層としての電子輸送層を真空蒸着法により形成した。
【0367】
次に、カソード電極用マスクに変更し、電子輸送層の上に、LiFを用いて、膜厚1nmの共通層としての電子注入層を形成した。
正孔障壁層と電子輸送層と電子注入層とを合わせて、電子輸送帯域と呼ぶ。
【0368】
次に、電子注入層の上に、Mg:Agの質量比が1:9である膜厚12nmの共通層としての電極(カソード)を形成し、この電極(カソード)の上に、化合物Cap1を用いて、膜厚70nmの共通層としての有機キャッピング層を形成した。
【0369】
比較例3に係る有機EL表示装置の製造においてマスク蒸着が必要なのは、発光層の成膜と光学干渉距離を調整するために設けた層の成膜であり、有機機能層の成膜に必要なマスク蒸着回数は、5回であった。
【0370】
比較例3に係る有機EL表示装置の赤色画素、緑色画素及び青色画素の正面での電流効率及び45°での電流効率を、電流密度10mA/cmで測定した。
比較例3に係る有機EL表示装置の製造においては、比較例2と比べて光学干渉距離を調整するために設けた層を減らし、発光層の膜厚を厚くしたことで、マスク蒸着回数は、実施例1及び比較例1と同様に5回であった。
しかしながら、発光層の膜厚が厚いことに起因して、有機EL素子の発光効率が大幅に低下した。
【0371】
<有機EL表示装置の評価>
実施例及び比較例で作製した有機EL表示装置について、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0372】
(電流効率)
・電流効率
電流密度が10mA/cmとなるように各色の素子に電圧を印加した時の分光放射輝度スペクトルを分光放射輝度計CS-2000(コニカミノルタ株式会社製)で計測した。得られた分光放射輝度スペクトルから、ランバシアン放射を行ったと仮定し、電流効率(cd/A)を算出した。
角度0°の時の電流効率をEとし、角度45°の時の電流効率をE45とする。電流効率の単位は、cd/Aである。
表1には、実施例1の赤色画素の電流効率E及びE45を100とした場合における、比較例1~3の赤色画素の電流効率の値を示した。例えば、電流効率Eの場合は、{(対象となる赤色画素の電流効率E)/(実施例1の赤色画素の電流効率E)}×100の数式で算出され、電流効率E45の場合は、{(対象となる赤色画素の電流効率E45)/(実施例1の赤色画素の電流効率E45)}×100の数式で算出される。緑色画素及び青色画素についても、赤色画素の場合と同様に算出される。
また、表1には、各画素の電流効率E45の測定値を電流効率Eの測定値で除した電流効率比E45/E0も示した。
【0373】
【表1】
【0374】
<化合物の評価>
実施例及び比較例で使用した化合物の物性値を以下の方法で測定した。
【0375】
(遅延蛍光性)
・化合物TADF-1の遅延蛍光性
遅延蛍光性は図2に示す装置を利用して過渡PLを測定することにより確認した。前記化合物TADF-1をトルエンに溶解し、自己吸収の寄与を取り除くため励起波長において吸光度が0.05以下の希薄溶液を調製した。また酸素による消光を防ぐため、試料溶液を凍結脱気した後にアルゴン雰囲気下で蓋付きのセルに封入することで、アルゴンで飽和された酸素フリーの試料溶液とした。
上記試料溶液の蛍光スペクトルを分光蛍光光度計FP-8600(日本分光社製)で測定し、また同条件で9,10-ジフェニルアントラセンのエタノール溶液の蛍光スペクトルを測定した。両スペクトルの蛍光面積強度を用いて、Morris et al. J.Phys.Chem.80(1976)969中の(1)式により全蛍光量子収率を算出した。
前記化合物TADF-1が吸収する波長のパルス光(パルスレーザーから照射される光)で励起された後、当該励起状態から即座に観察されるPrompt発光(即時発光)と、当該励起後、即座には観察されず、その後観察されるDelay発光(遅延発光)とが存在する。本実施例における遅延蛍光発光とは、Delay発光(遅延発光)の量がPrompt発光(即時発光)の量に対して5%以上を意味する。具体的には、Prompt発光(即時発光)の量をXとし、Delay発光(遅延発光)の量をXとしたときに、X/Xの値が0.05以上であることを意味する。
Prompt発光とDelay発光の量とその比は、“Nature 492, 234-238, 2012” (参考文献1)に記載された方法と同様の方法により求めることができる。なお、Prompt発光とDelay発光の量の算出に使用される装置は、前記参考文献1に記載の装置、または図2に記載の装置に限定されない。
化合物TADF-1について、Delay発光(遅延発光)の量がPrompt発光(即時発光)の量に対して5%以上あることが確認された。
具体的には、化合物TADF-1について、X/Xの値が0.05以上であった。
【0376】
・化合物TADF-2の遅延蛍光性
化合物TADF-1に代えて、化合物TADF-2をそれぞれ用いたこと以外、上記と同様にして化合物TADF-2の遅延蛍光性を確認した。
化合物TADF-2について、X/Xの値は、0.05以上であった。
【0377】
(一重項エネルギーS
測定対象化合物の一重項エネルギーSを、前述の溶液法により測定した。測定結果を表2に示す。
【0378】
【表2】
【0379】
(77[K]におけるエネルギーギャップ)
化合物TADF-1及び化合物TADF-2の77[K]におけるエネルギーギャップT77Kを前述の方法により測定した。
【0380】
(ΔST)
測定した一重項エネルギーSと77[K]におけるエネルギーギャップT77Kとに基づいて、ΔSTを算出した。化合物TADF-1及び化合物TADF-2のΔSTは、いずれも、0.01eV未満と確認した。
【0381】
(主ピーク波長)
測定対象となる化合物の5μmol/Lトルエン溶液を調製して石英セルに入れ、常温(300K)でこの試料の蛍光スペクトル(縦軸:蛍光発光強度、横軸:波長とする。)を測定した。本実施例では、蛍光スペクトルを日立社製の分光光度計(装置名:F-7000)で測定した。なお、蛍光スペクトル測定装置は、ここで用いた装置に限定されない。蛍光スペクトルにおいて、発光強度が最大となる蛍光スペクトルのピーク波長を主ピーク波長とした。
化合物RDの主ピーク波長は、609nmであった。
化合物GDの主ピーク波長は、516nmであった。
化合物BDの主ピーク波長は、449nmであった。
【符号の説明】
【0382】
1,1A,1B…有機EL表示装置
10B…青色有機EL素子
10G…緑色有機EL素子
10R…赤色有機EL素子
2,2B,2G,2R…光反射層
3,3B,3G,3R…透明電極
4,4B,4G,4R…正孔輸送帯域
5…発光層
5B…青色発光層
5G…緑色発光層
5R…赤色発光層
6,6B,6G,6R…電子輸送帯域
7,7B,7G,7R…半透過性電極
8…基板
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9