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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140884
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】電線保護具
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20220921BHJP
   H02G 3/22 20060101ALI20220921BHJP
   F16L 5/00 20060101ALI20220921BHJP
   F16L 57/00 20060101ALI20220921BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
H02G3/04 062
H02G3/04 068
H02G3/22
F16L5/00 Q
F16L57/00 A
B60R16/02 622
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040928
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】平本 祥雄
(72)【発明者】
【氏名】小池 元
(72)【発明者】
【氏名】飯田 利之
【テーマコード(参考)】
3H024
5G357
5G363
【Fターム(参考)】
3H024AA01
3H024AB01
3H024AB07
3H024AC03
5G357DA10
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD01
5G357DD05
5G357DD10
5G357DE10
5G363AA07
5G363AA11
5G363AA20
5G363BA01
5G363CB08
(57)【要約】
【課題】周囲部品に対して近接又は当接した状態で固定されても不具合が生じない電線保護具を提供する。
【解決手段】本願発明に係る電線保護具(グロメット1)は、電線WHが挿通される筒体部2と、筒体部2の一方側端部にドア側取付部3と、筒体部2の他方側端部にボディ側取付部4とを有する。また、電線保護具(グロメット1)は、筒体部2の外周面に大径部分と小径部分を交互に繰り返す凸凹部20が形成され、凸凹部20のうちの凸部21から突出する突出部23が設けられている。そして、突出部23は、凸凹部20よりも柔軟性が高い棒状体(円錐形状)に形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線が挿通される筒体部と、
前記筒体部の少なくとも一方側端部に固定対象の取付孔に嵌合される取付部とを有する電線保護具であって、
前記筒体部の外周面に大径部分と小径部分を交互に繰り返す凸凹部が形成され、
前記凸凹部のうちの凸部及び凹部の少なくとも一方から突出する突出部が設けられ、
前記突出部は、前記凸凹部よりも柔軟性が高い棒状体又は板状体に形成された
電線保護具。
【請求項2】
前記突出部は、前記取付部から離間するにつれて次第に傾倒した姿勢から起立した姿勢に変化している
請求項1に記載の電線保護具。
【請求項3】
前記突出部は、前記取付部から離間するにつれて次第に長さ寸法が大きくなっている
請求項1又は請求項2に記載の電線保護具。
【請求項4】
前記突出部は、周囲部品との位置関係に応じて前記筒体部の長手方向及び周方向における長さ寸法が異なる
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電線保護具。
【請求項5】
前記突出部は、前記筒体部の径外側方向に対して無規則に傾倒又は湾曲している
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電線保護具。
【請求項6】
前記突出部は、前記筒体部の外周面に形成された台座部から突出している
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の電線保護具。
【請求項7】
前記突出部は、前記凸凹部のうちの前記凹部から突出している
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の電線保護具。
【請求項8】
前記突出部は、前記筒体部に対して脱着自在に設けられている
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の電線保護具。
【請求項9】
前記凸凹部は、前記筒体部の長手方向かつ周方向に対して斜めに連続する螺旋状に形成されている
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の電線保護具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線を保護する電線保護具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電線を保護する電線保護具が知られている(特許文献1及び特許文献2参照)。電線保護具は、電線が挿通される筒体部を備えており、この筒体部は電線の配索経路に沿って湾曲するように可撓性を有している。
【0003】
ところで、このような電線保護具は、周囲部品に対して近接又は当接した状態で固定される場合がある。このような場合、電線保護具が周囲部品と擦れ合って擦過痕が生じたり、電線保護具が勢いよく周囲部品に当接して異音が生じたりするという不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-209854号公報
【特許文献2】特開2019-169351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、周囲部品に対して近接又は当接した状態で固定されても不具合が生じない電線保護具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、電線が挿通される筒体部と、前記筒体部の少なくとも一方側端部に固定対象の取付孔に嵌合される取付部とを有する電線保護具であって、前記筒体部の外周面に大径部分と小径部分を交互に繰り返す凸凹部が形成され、前記凸凹部のうちの凸部及び凹部の少なくとも一方から突出する突出部が設けられ、前記突出部は、前記凸凹部よりも柔軟性が高い棒状体又は板状体に形成されている。
【0007】
なお、柔軟性とは、外力を受けて自在に変形する性質をいう。本発明においては、外力を受けたときの突出部の変形が凸凹部の変形よりも容易に起こり得るように構成されている。
【0008】
また、棒状体とは、基端側における径寸法(多角形状の場合は外接円の径寸法)よりも長さ寸法が大きい全ての形状を含む概念である。例えば、円錐形状、円錐台形状、円柱形状、角錐形状、角錐台形状、角柱形状等の棒状体が考えられる。さらに、板状体とは、基端側における厚さ寸法よりも長さ寸法及び板幅寸法が大きい全ての形状を含む概念である。例えば、平板形状、螺旋板形状等の板状体が考えられる。
【0009】
この発明により、周囲部品に対して近接又は当接した状態で固定されても不具合が生じることを防止できる。
詳述すると、本願発明に係る電線保護具は、筒体部の外周面に大径部分と小径部分を交互に繰り返す凸凹部が形成され、凸凹部のうちの凸部及び凹部の少なくとも一方から突出する突出部が設けられている。そして、突出部は、凸凹部よりも柔軟性が高い棒状体又は板状体に形成されている。
そのため、周囲部品に対して電線保護具が当接した状態で湾曲や振動をしても、突出部の変形によって当接部分の変位を抑え、この当接部分と周囲部品との擦過を防ぐことができる。したがって、擦過痕の発生を防ぐことが可能となる。また、周囲部品に対して電線保護具が当接していない状態から勢いよく当接した際には、突出部の変形によって衝撃力を減衰させることができる。したがって、異音の発生を防ぐことが可能となる。ひいては周囲部品に対して近接又は当接した状態で固定されても不具合が生じることを防止できる。
【0010】
この発明の態様として、前記突出部は、前記取付部から離間するにつれて次第に傾倒した姿勢から起立した姿勢に変化してもよい。
この発明により、取付部に対する筒体部の変位は、取付部に近接した位置から離間した位置にかけて大きくなるものの、この変位が大きい位置における突出部が高く立設されて周囲部品に対して当接する。
そのため、周囲部品に対して電線保護具が当接した状態で湾曲や振動をしても、突出部の変形によって当接部分の変位を抑え、この当接部分と周囲部品との擦過を防ぐことができる。したがって、確実に擦過痕の発生を防ぐことが可能となる。また、周囲部品に対して電線保護具が当接していない状態から勢いよく当接した際には、突出部の変形によって衝撃力を減衰させることができる。したがって、確実に異音の発生を防ぐことが可能となる。
【0011】
またこの発明の態様として、前記突出部は、前記取付部から離間するにつれて次第に長さ寸法が大きくなってもよい。
この発明により、取付部に対する筒体部の変位は、取付部に近接した位置から離間した位置にかけて大きくなるものの、この変位が大きい位置における突出部が高く立設されて周囲部品に対して当接する。
そのため、周囲部品に対して電線保護具が当接した状態で湾曲や振動をしても、突出部の変形によって当接部分の変位を抑え、この当接部分と周囲部品との擦過を防ぐことができる。したがって、確実に擦過痕の発生を防ぐことが可能となる。また、周囲部品に対して電線保護具が当接していない状態から勢いよく当接した際には、突出部の変形によって衝撃力を減衰させることができる。したがって、確実に異音の発生を防ぐことが可能となる。
【0012】
またこの発明の態様として、前記突出部は、周囲部品との位置関係に応じて前記筒体部の長手方向及び周方向における長さ寸法が異なってもよい。
【0013】
この発明により、周囲部品に対して近接又は当接する部分の突出部を長くすることで、筒体部の外周面を覆うことができる。
そのため、周囲部品に対して電線保護具が当接した状態で湾曲や振動をしても、突出部の変形によって当接部分の変位を抑え、この当接部分と周囲部品との擦過を防ぐことができる。したがって、確実に擦過痕の発生を防ぐことが可能となる。また、周囲部品に対して電線保護具が当接していない状態から勢いよく当接した際には、突出部の変形によって衝撃力を減衰させることができる。したがって、確実に異音の発生を防ぐことが可能となる。
【0014】
またこの発明の態様として、前記突出部は、前記筒体部の径外側方向に対して無規則に傾倒又は湾曲してもよい。
この発明により、突出部が筒体部の外周面を広くかつ隙間なく覆うので、比較的に小さい又は細い周囲部品、あるいは周囲部品から突出した角部等に対しても突出部が当接する。したがって、より確実に擦過痕の発生を防ぐことが可能となり、さらにはより確実に異音の発生を防ぐことが可能となる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記突出部は、前記筒体部の外周面に形成された台座部から突出してもよい。
この発明により、突出部が基端部分から倒伏しても、周囲部品に対して台座部が当接し、筒体部との当接を防ぐことができる。したがって、筒体部が破れて電線が露出することを防止できる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記突出部は、前記凸凹部のうちの前記凹部から突出してもよい。
この発明により、筒体部の曲げ角度が大きくなると、その内周側にて凸部と凸部の間に突出部が挟まる。したがって、電線保護具が特定の凹部において局所的に折れ曲がることを防止できる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記突出部は、前記筒体部に対して脱着自在に設けられてもよい。
この発明により、突出部の数や形状、向き、分布を自由に変えることができる。また、突出部の材質を変えることもできる。したがって、個別の環境に応じた仕様とすることができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記凸凹部は、前記筒体部の長手方向かつ周方向に対して斜めに連続する螺旋状に形成されてもよい。
この発明により、螺旋状の凸部が途切れることなく延設され、凸部に隣接する凹部が環状につながらない。したがって、電線保護具が特定の凹部において局所的に折れ曲がることを防止できる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、周囲部品に対して近接又は当接した状態で固定されても不具合が生じることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】グロメットを示す斜視図。
図2】グロメットを示す側面図。
図3図2におけるX-X矢視断面図。
図4図2におけるY-Y矢視断面図及びZ-Z矢視断面図。
図5】グロメットが湾曲や振動をした際に突出部が変形する状況の説明図。
図6】周囲部品に対してグロメットが当接した際に突出部が変形する状況の説明図。
図7】他の実施形態に係るグロメットを示す断面図。
図8】他の実施形態に係るグロメットを示す断面図。
図9】他の実施形態に係るグロメットを示す断面図。
図10】他の実施形態に係るグロメットを示す断面図。
図11】他の実施形態に係るグロメットを示す断面図。
図12】他の実施形態に係るグロメットの製造工程で筒体部に突出部を固定する状況の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の一実施例を図面に基づいて詳述する。本願発明に係る電線保護具は、自動車におけるバックドアとボディとの間に架け渡された電線WHを保護するグロメット1である。但し、電線保護具は、その他の用途に用いられるものであってもよい。
【0022】
本願においては、全ての図面でグロメット1の方向を規定している。すなわち、グロメット1の長手方向をLとし、幅方向をWとし、上下方向をHとしている。また、長手方向Lの一方側を+L側、他方側を-L側とし、幅方向Wの一方側を+W側、他方側を-W側とし、上下方向Hの一方側を+H側、他方側を-H側としている。
【0023】
図1はグロメット1を示す斜視図である。図2はグロメット1を示す側面図であり、図3図2におけるX-X矢視断面図であり、図4図2におけるY-Y矢視断面図及びZ-Z矢視断面図である。また、図5はグロメット1が湾曲や振動をした際に突出部23が変形する状況の説明図であり、図6は周囲部品Pに対してグロメット1が当接した際に突出部23が変形する状況の説明図である。
【0024】
図1及び図2に示すように、グロメット1は、電線WHが挿通される筒体部2と、筒体部2の一方側端部(+L側の端部)に設けられたドア側取付部3と、筒体部2の他方側端部(-L側の端部)に設けられたボディ側取付部4とを有している。また、グロメット1は、ボディ側取付部4から他方側(-L側)に向かって延設された電線保持部5を有している。
【0025】
筒体部2は、内部に挿通された電線WHを保護する部位である。筒体部2は、EPDM等の合成ゴムで形成されており、中空の円筒形状を維持しつつ自在に撓む可撓性を有している。筒体部2の外周面には、凸凹部20が形成されており、さらには凸凹部20のうちの凸部21から径外側方向に向かって突出する突出部23が設けられている。これらについては、ドア側取付部3やボディ側取付部4、電線保持部5を説明した後に詳しく説明するものとする。
【0026】
ドア側取付部3は、ドアパネルDの取付孔Dhに嵌合される部位である。ドア側取付部3は、筒体部2の一方側端部(+L側の端部)に一体的に設けられており、テーパー部31とフランジ部32と嵌合溝部33とを有している。テーパー部31は、長手方向Lの一方側(+L側)に向かって徐々に拡径された円錐部分を指し、フランジ部32は、テーパー部31の最大径よりも大きな径の円板部分を指す。そして、フランジ部32の最大径は、前述した突出部23の先端縁23tにおける径よりも大きいものとされている(図4(a)参照)。
【0027】
また、嵌合溝部33は、テーパー部31とフランジ部32の間に設けられている。嵌合溝部33は、テーパー部31の一方側端部(+L側の端部)から縮径された傾斜面331と、フランジ部32の長手方向Lに対して垂直となる当接面332とで構成されており、この当接面332には、外周縁33eを除き、一方側(+L側)に向かって窪んだ溝部33gが形成されている。このような構成により、嵌合溝部33には、ドアパネルDの取付孔Dhが嵌合し、当接面332の外周縁33eがドアパネルDの側面に対して隙間なく当接する。このため、ドアパネルDの取付孔Dhから塵や埃が侵入したり水滴が浸入したりすることを防止できる。
【0028】
なお、テーパー部31における矢印形の明示部3Eは、作業者がドアパネルDに対してドア側取付部3を取り付ける際に、取り付ける方向が一目で分かることを意図して設けられたものである。
【0029】
ボディ側取付部4は、ボディパネルBの取付孔Bhに嵌合される部位である。ボディ側取付部4は、筒体部2の他方側端部(-L側の端部)に一体的に設けられており、テーパー部41とフランジ部42と嵌合溝部43とを有している。テーパー部41は、長手方向Lの一方側(+L側)に向かって徐々に拡径された円錐部分を指し、フランジ部42は、テーパー部41の最大径よりも大きな径の円板部分を指す。そして、フランジ部42の最大径は、前述した突出部23の先端縁23tにおける径よりも大きいものとされている(図4(b)参照)。
【0030】
また、嵌合溝部43は、テーパー部41とフランジ部42の間に設けられている。嵌合溝部43は、テーパー部41の一方側端部(+L側の端部)から縮径された傾斜面431と、フランジ部42の長手方向Lに対して垂直となる当接面432とで構成されており、この当接面432には、外周縁43eを除き、一方側(+L側)に向かって窪んだ溝部43gが形成されている。このような構成により、嵌合溝部43には、ボディパネルBの取付孔Bhが嵌合し、当接面432の外周縁43eがボディパネルBの側面に対して隙間なく当接する。このため、ボディパネルBの取付孔Bhから塵や埃が侵入したり水滴が浸入したりすることを防止できる。
【0031】
なお、テーパー部41ならびにフランジ部42における矢印形の明示部4Eは、作業者がボディパネルBに対してボディ側取付部4を取り付ける際に、取り付ける方向が一目で分かることを意図して設けられたものである。
【0032】
電線保持部5は、内部に挿通された電線WHを保持する部位である。電線保持部5は、ボディ側取付部4の他方側端部(-L側の端部)に一体的に設けられており、円筒部51と返り部52とを有している。円筒部51は、長手方向Lに沿って一定の内径及び外径の円筒部分を指し、返り部52は、円筒部51の外周面における他方側端部(-L側の端部)に設けられた隆起部分を指す。そして、ボディ側取付部4のテーパー部41から返り部52までが後述するテープの巻き付け区間となる。
【0033】
また、電線保持部5は、円筒部51の他方側端部(-L側の端部)からテーパー部41の近傍までスリット51sが形成されている。スリット51sは、幅方向Wの一方側周面(+W側の周面)と他方側周面(-W側の周面)に設けられている。したがって、円筒部51と返り部52は、スリット51sよりも上方側の半円筒部分とスリット51sよりも下方側の半円筒部分で構成されている。このような構成により、円筒部51の外周面にテープを巻き付けることで、この円筒部51を縮径させることができる。このため、電線保持部5は、内部に挿通された電線WHを保持することが可能となる。
【0034】
次に、図2から図4を用いて、筒体部2の詳細について説明する。ここでは、筒体部2の周方向をCとしている(図4(a)及び図4(b)参照)。周方向Cは、中心軸Aを中心とした仮想円に沿う方向である。また、筒体部2の径外側方向をRとしている(図4(a)及び図4(b)参照)。径外側方向Rは、中心軸Aを中心とした放射状に広がる方向である。
【0035】
筒体部2の外周面には、長手方向Lかつ周方向Cに対して斜めに連続する凸凹部20が形成されている。凸凹部20は、大径部分である凸部21と小径部分である凹部22が交互に繰り返す形状であって、さらには一条の凸部21と一条の凹部22が互いに対して平行に螺旋状に配置された形状である(図2及び図3参照)。このような構成により、筒体部2の外周面に螺旋状の凸部21が途切れることなく延設されるため、筒体部2の長手方向Lに対する垂直断面においては、必ず凸部21が存在し、凸部21に隣接する凹部22が環状につながらない(図4(a)及び図4(b)参照)。
【0036】
より具体的に説明すると、図4(a)に示すように、所定の垂直断面においては、上下方向Hの一方側(+H側)が凸部21であり、上下方向Hの他方側(-H側)が凹部22となっている。また、図4(b)に示すように、所定の垂直断面においては、上下方向Hの一方側(+H側)が凹部22であり、上下方向Hの他方側(-H側)が凸部21となっている。このように、本グロメット1においては、凸部21の径寸法Daや凹部22の径寸法Dbならびにピッチ寸法Dc等を設定することで、1/2周以上が凸部21であり、1/2周未満が凹部22となるようにしている。
【0037】
また、凸凹部20のうちの凸部21には、径外側方向Rに向かって突出する突出部23が設けられている。突出部23は、凸部21に沿って並ぶ棒状体であり、それぞれの突出部23は、基端側における径寸法Ddよりも長さ寸法Deが大きい円錐形状とされている。本グロメット1においては、中心軸Aを中心とした所定の位相角毎に突出部23が配置されており、筒体部2の全周方向に放射状に突出部23が突出している。但し、本グロメット1は、前述した明示部3E,4Eが設けられ、周囲部品P(図5参照)との位置関係が定まっていることから、部分的に突出部23が突出していてもよい。
【0038】
なお、本グロメット1における突出部23は、筒体部2に一体的に形成されている。突出部23は、グロメット1を製造する金型に設けられた錐穴に溶融材料が流れ込んで形成されたものである。そのため、錐穴の径や深さを変えることで、突出部23の径寸法Ddや長さ寸法Deを変更することができる。また、錐穴の形状を変えることで、突出部23を円錐台形状、円柱形状、角錐形状、角錐台形状、角柱形状等に形成することもできる。
【0039】
次に、図5を用いて、突出部23を設けたことで擦過痕が生じなくなる理由について説明する。図5(a)は、グロメット1が湾曲や振動をする前の状況を示しており、図5(b)は、グロメット1が湾曲や振動をしている状況を示している。
【0040】
周囲部品Pに対してグロメット1が当接した状態で湾曲や振動をした場合においては、図5(b)に示すように、筒体部2が変位することとなる(矢印M参照)。このとき、突出部23の基端部分については、筒体部2と一体となって変位するものの(矢印Mb参照)、突出部23の周囲部品Pとの当接部分(先端縁23t)については、変位が小さく抑えられる(矢印Mt参照)。すなわち、突出部23が撓むことにより、突出部23における当接部分(先端縁23t)の変位が小さく抑えられるのである。したがって、擦過痕の発生を防ぐことが可能となる。
【0041】
次に、図6を用いて、突出部23を設けたことで異音が生じなくなる理由について説明する。図6(a)は、周囲部品Pに対してグロメット1が当接する前の状況を示しており、図6(b)は、周囲部品Pに対してグロメット1が当接している状況を示している。
【0042】
周囲部品Pに対してグロメット1が当接していない状態から勢いよく当接した場合においては、図6(b)に示すように、突出部23に衝撃力が加わることとなる(矢印N参照)。このとき、突出部23の周囲部品Pとの当接部分(先端縁23t)については、衝撃力が加わる方向に対して交差する方向に変位することで(矢印Nt参照)、周囲部品Pから受けた衝撃力を小さく減衰させることができる(矢印Nb参照)。すなわち、突出部23が撓むことにより、衝撃力を小さく減衰させることができるのである。したがって、異音の発生を防ぐことが可能となる。
【0043】
以上のように、本願発明に係るグロメット1は、電線WHが挿通される筒体部2と、筒体部2の一方側端部(+L側の端部)にドアパネルDの取付孔Dhに嵌合されるドア側取付部3と、筒体部2の他方側端部(-L側の端部)にボディパネルBの取付孔Bhに嵌合されるボディ側取付部4とを有する。また、グロメット1は、筒体部2の外周面に大径部分と小径部分を交互に繰り返す凸凹部20が形成され、凸凹部20のうちの凸部21から突出する突出部23が設けられている。そして、突出部23は、凸凹部20よりも柔軟性が高い棒状体(円錐形状)に形成されている。
【0044】
このようなグロメット1によれば、周囲部品Pに対して近接又は当接した状態で固定されても不具合が生じることを防止できる。
詳述すると、本願発明に係るグロメット1は、筒体部2の外周面に大径部分と小径部分を交互に繰り返す凸凹部20が形成され、凸凹部20のうちの凸部21から突出する突出部23が設けられている。そして、突出部23は、凸凹部20よりも柔軟性が高い棒状体(円錐形状)に形成されている。
そのため、周囲部品Pに対してグロメット1が当接した状態で湾曲や振動をしても、突出部23の変形によって当接部分(先端縁23t)の変位を抑え、この当接部分(先端縁23t)と周囲部品Pとの擦過を防ぐことができる。したがって、擦過痕の発生を防ぐことが可能となる。また、周囲部品Pに対してグロメット1が当接していない状態から勢いよく当接した際には、突出部23の変形によって衝撃力を減衰させることができる。したがって、異音の発生を防ぐことが可能となる。ひいては周囲部品Pに対して近接又は当接した状態で固定されても不具合が生じることを防止できる。
【0045】
また、本願発明に係るグロメット1において、凸凹部20は、筒体部2の長手方向Lかつ周方向Cに対して斜めに連続する螺旋状に形成されている。
【0046】
このようなグロメット1によれば、螺旋状の凸部21が途切れることなく延設され、凸部21に隣接する凹部22が環状につながらない。したがって、グロメット1が特定の凹部22において局所的に折れ曲がることを防止できる。
【0047】
この発明の構成と前述の実施形態との対応において、この発明の電線保護具はグロメット1に対応し、
以下同様に、
筒体部は筒体部2に対応し、
取付部はドア側取付部3及びボディ側取付部4に対応し、
凸凹部は凸凹部20に対応し、
凸部は凸部21に対応し、
凹部は凹部22に対応し、
突出部は突出部23に対応し、
周方向は周方向Cに対応し、
長手方向は長手方向Lに対応し、
径外側方向は径外側方向Rに対応し、
周囲部品は周囲部品Pに対応し、
長さ寸法は長さ寸法Deに対応し、
電線は電線WHに対応するも、この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0048】
例えば、本実施形態に係るグロメット1において、全ての突出部23は、凸部21に沿って並ぶ棒状体(円錐形状)とされている。しかし、図7(a)に示すように、凸部21に沿って並ぶ板状体(平板形状)であってもよい。あるいは図7(b)に示すように、凸部21に沿って連続する板状体(螺旋板形状)であってもよい。これらの板状体は、その基端側における厚さ寸法Dsよりも長さ寸法Dt及び板幅寸法(図示せず)が大きい形状となっている。
【0049】
このような構成により、突出部23が面外方向(厚み方向)にのみ変形自在となることから、突出部23の剛性を比較的に高く設定することが容易となる。
そのため、周囲部品Pに対してグロメット1が勢いよく当接しても、突出部23の変形によって衝撃力を減衰させることができる。したがって、確実に異音の発生を防ぐことが可能となる。
【0050】
また、本実施形態に係るグロメット1において、全ての突出部23は、径外側方向Rに対して平行かつ長さ寸法Deが等しく形成されている。しかし、図8(a)に示すように、ドア側取付部3及びボディ側取付部4から離間するにつれて次第に傾倒した姿勢から起立した姿勢に変化してもよい(次第に垂直に近づくように変化してもよい)。あるいは図8(b)に示すように、ドア側取付部3及びボディ側取付部4から離間するにつれて次第に長さ寸法Deが大きくなってもよい。
【0051】
このような構成により、ドア側取付部3及びボディ側取付部4に対する筒体部2の変位は、ドア側取付部3及びボディ側取付部4に近接した位置から離間した位置にかけて大きくなるものの、この変位が大きい位置における突出部23が高く立設されて周囲部品Pに対して当接する。
そのため、周囲部品Pに対してグロメット1が当接した状態で湾曲や振動をしても、突出部23の変形によって当接部分(先端縁23t)の変位を抑え、この当接部分(先端縁23t)と周囲部品Pとの擦過を防ぐことができる。したがって、確実に擦過痕の発生を防ぐことが可能となる。また、周囲部品Pに対してグロメット1が当接していない状態から勢いよく当接した際には、突出部23の変形によって衝撃力を減衰させることができる。したがって、確実に異音の発生を防ぐことが可能となる。
【0052】
また、本実施形態に係るグロメット1において、全ての突出部23は、長さ寸法Deが等しく形成されている。しかし、図9(a)に示すように、周囲部品Pとの位置関係に応じて筒体部2の長手方向Lにおける長さ寸法Deが異なってもよい。あるいは図9(b)に示すように、周囲部品Pとの位置関係に応じて筒体部2の周方向Cにおける長さ寸法Deが異なってもよい。
【0053】
このような構成により、周囲部品Pに対して近接又は当接する部分の突出部23を長くすることで、筒体部2の外周面を覆うことができる。
そのため、周囲部品Pに対してグロメット1が当接した状態で湾曲や振動をしても、突出部23の変形によって当接部分(先端縁23t)の変位を抑え、この当接部分(先端縁23t)と周囲部品Pとの擦過を防ぐことができる。したがって、確実に擦過痕の発生を防ぐことが可能となる。また、周囲部品Pに対してグロメット1が当接していない状態から勢いよく当接した際には、突出部23の変形によって衝撃力を減衰させることができる。したがって、確実に異音の発生を防ぐことが可能となる。
【0054】
また、本実施形態に係るグロメット1において、全ての突出部23は、径外側方向Rに対して平行に形成されている。しかし、図10(a)に示すように、径外側方向Rに対して無規則に傾倒してもよい。あるいは図10(b)に示すように、径外側方向Rに対して無規則に湾曲してもよい。
【0055】
このような構成により、突出部23が筒体部2の外周面を広くかつ隙間なく覆うので、比較的に小さい又は細い周囲部品P、あるいは周囲部品Pから突出した角部等に対しても突出部23が当接する。したがって、より確実に擦過痕の発生を防ぐことが可能となり、さらにはより確実に異音の発生を防ぐことが可能となる。
【0056】
また、本実施形態に係るグロメット1において、全ての突出部23は、凸凹部20の凸部21から突出している。しかし、図11(a)に示すように、筒体部2の外周面に形成された台座部24から突出してもよい。
【0057】
このような構成により、突出部23が基端部分から倒伏しても、周囲部品Pに対して台座部24が当接し、筒体部2との当接を防ぐことができる。したがって、筒体部2が破れて電線WHが露出することを防止できる。
【0058】
また、本実施形態に係るグロメット1において、全ての突出部23は、凸凹部20の凸部21から突出している。しかし、図11(b)に示すように、凸凹部20のうちの凹部22から突出してもよい。
【0059】
このような構成により、筒体部2の曲げ角度が大きくなると、その内周側にて凸部21と凸部21の間に突出部23が挟まる。したがって、グロメット1が特定の凹部22において局所的に折れ曲がることを防止できる。
【0060】
また、本実施形態に係るグロメット1において、全ての突出部23は、筒体部2に一体的に形成されている。しかし、図12(a)に示すように、筒体部2に形成された挿入孔2hに脱着自在に設けられてもよい。あるいは図12(b)に示すように、筒体部2に対して脱着自在とされるC形環25に設けられてもよい。
【0061】
このような構成により、突出部23の数や形状、向き、分布(突出部23を全く設けないことも含む)を自由に変えることができる。また、突出部23の材質を変えることもできる。したがって、個別の環境に応じた仕様とすることができる。
【0062】
最後に、本願においては、筒体部2の外周面における凸凹部20が螺旋状に形成されたグロメット1について説明を行った。しかしながら、かかる技術的思想は、筒体部2の外周面における凸凹部20が蛇腹状に形成されたグロメットにも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1…グロメット
2…筒体部
3…ドア側取付部
4…ボディ側取付部
20…凸凹部
21…凸部
22…凹部
23…突出部
C…周方向
L…長手方向
R…径外側方向
P…周囲部品
De…長さ寸法
WH…電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11
図12