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特開2022-141078膜電極接合体の検査方法および検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141078
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】膜電極接合体の検査方法および検査装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1004 20160101AFI20220921BHJP
   G01B 15/02 20060101ALI20220921BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20220921BHJP
【FI】
H01M8/1004
G01B15/02 H
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041216
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹下 慎也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼原 稔幸
【テーマコード(参考)】
2F067
5H126
【Fターム(参考)】
2F067AA27
2F067BB16
2F067EE04
2F067FF01
2F067HH04
2F067JJ03
2F067KK06
2F067PP12
2F067RR24
2F067RR35
5H126AA02
5H126BB06
(57)【要約】
【課題】膜電極接合体中の異物の大きさを、X線を用いて精度よく検出可能な技術を提供する。
【解決手段】膜電極接合体の検査方法は、膜電極接合体のX線透過像を取得する第1工程と、第1工程で取得したX線透過像において、周囲の領域よりも輝度が低い輝度低下領域を特定する第2工程と、膜電極接合体中の異物の平面サイズとX線の回折による輝度変化との相関関係に基づき、輝度低下領域の平面サイズに応じて第2工程で特定した輝度低下領域の輝度を補正する第3工程と、第3工程で補正した輝度に基づき膜電極接合体中の異物の厚みを求める第4工程と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜電極接合体の検査方法であって、
前記膜電極接合体のX線透過像を取得する第1工程と、
前記第1工程で取得した前記X線透過像において、周囲の領域よりも輝度が低い輝度低下領域を特定する第2工程と、
前記膜電極接合体中の異物の平面サイズとX線の回折による輝度変化との相関関係に基づき、前記輝度低下領域の平面サイズに応じて前記第2工程で特定した前記輝度低下領域の輝度を補正する第3工程と、
前記第3工程で補正した前記輝度に基づき前記膜電極接合体中の異物の厚みを求める第4工程と、
を備える膜電極接合体の検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の膜電極接合体の検査方法であって、
前記第4工程で求めた前記厚みと、前記輝度低下領域の前記平面サイズとに基づき、前記異物の立体サイズを求める第5工程、を備える膜電極接合体の検査方法。
【請求項3】
膜電極接合体の検査装置であって、
前記膜電極接合体のX線透過像を取得する取得部と、
前記X線透過像において、周囲の領域よりも輝度が低い輝度低下領域を特定し、
前記膜電極接合体中の異物の平面サイズとX線の回折による輝度変化との相関関係に基づき、前記輝度低下領域の平面サイズに応じて前記輝度低下領域の輝度を補正し、
補正した前記輝度に基づき前記膜電極接合体中の異物の厚みを求める
処理部と、
を備える検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、膜電極接合体の検査方法および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池用の膜電極接合体の検査方法に関し、例えば、特許文献1に開示された技術では、電解質膜に含まれる触媒粒子によってX線が吸収されることに着目し、電解質膜中の触媒粒子の担持量を、X線の照射強度と検出強度との差分から算出されるX線の透過率に基づき算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-162745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
膜電極接合体には、Fe粒子などのX線吸収能を有する異物が製造時に混入する場合がある。本開示は、こうした異物の大きさを、X線を用いて精度よく検出可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の第1の形態によれば、膜電極接合体の検査方法が提供される。この検査方法は、前記膜電極接合体のX線透過像を取得する第1工程と、前記第1工程で取得した前記X線透過像において、周囲の領域よりも輝度が低い輝度低下領域を特定する第2工程と、前記膜電極接合体中の異物の平面サイズとX線の回折による輝度変化との相関関係に基づき、前記輝度低下領域の平面サイズに応じて前記第2工程で特定した前記輝度低下領域の輝度を補正する第3工程と、前記第3工程で補正した前記輝度に基づき前記膜電極接合体中の異物の厚みを求める第4工程と、を備える。
このような形態であれば、X線の回折によるX線透過像の輝度への影響を補正することにより、膜電極接合体中の異物の大きさとして、異物の厚みを精度よく求めることができる。
(2)上記形態は、更に、前記第4工程で求めた前記厚みと、前記輝度低下領域の前記平面サイズとに基づき、前記異物の立体サイズを求める第5工程、を備えてもよい。このような形態であれば、膜電極接合体中の異物の大きさとして、異物の立体サイズを精度よく求めることができる。
【0007】
本開示は、上述した膜電極接合体の検査方法としての形態以外にも、例えば、膜電極接合体の検査装置や検査システムなどの種々の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】膜電極接合体の検査に用いる検査システムの説明図である。
図2】膜電極接合体の検査方法を示す工程図である。
図3】X線透過像の一部を拡大した模式図である。
図4】異物の平面サイズと輝度低下量との関係を示す説明図である。
図5】異物の厚みと輝度低下量との関係を示す説明図である。
図6】本実施形態の効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
図1は、膜電極接合体の検査に用いる検査システム100の説明図である。本実施形態において、検査システム100は、X線源10と、検出カメラ20と、ステージ30と、検査装置40とを備える。ステージ30には、膜電極接合体50が載置される。図1には、それぞれ直交するX,Y,Z方向が示されている。Z方向は、膜電極接合体50の厚み方向である。Y方向は、ステージ30の搬送方向である。X方向は、Y方向およびZ方向に直交する方向である。X方向およびY方向は、膜電極接合体50の面方向であり、本実施形態では水平方向である。
【0010】
X線源10は、ステージ30に載置された膜電極接合体50に向けてX線を照射する。本実施形態では、ステージ30に開口部60が設けられている。X線源10は、開口部60を通じて下方から膜電極接合体50にX線を照射する。X線源10としては、例えば、水冷式又は空冷式X線管球を用いることができ、管電圧は15~50kV、管電流は0.1~35mAとすることができる。
【0011】
検出カメラ20は、ステージ30を挟むようにX線源10に対向して配置されている。本実施形態では、検出カメラ20は、ステージ30の上側に下方を向けて配置される。検出カメラ20は、所定の画素分解能および輝度分解能を有しており、X線の照射された膜電極接合体50を撮像し、X線透過像を生成する。検出カメラ20により検出する異物は、X線吸収能を有する異物であり、本実施形態では、例えば、鉄やSUSなどの鉄系異物である。検出カメラ20としては、CCD(電荷結合素子)方式またはCMOS(相補型MOS)方式のリニアイメージセンサあるいはエリアイメージセンサを用いることができる。イメージセンサはTDI(Time Delay Integration)方式のセンサであってもよい。なお、検出カメラ20とX線源10の位置関係は、上下逆でもよい。
【0012】
本願において、X線透過像における「輝度」は、「信号強度」と同じ意味を有する。具体的には、各画素の輝度は、膜電極接合体50を透過したX線の信号強度を表し、輝度が高いほど、膜電極接合体50を透過したX線の信号強度が高いことを表す。膜電極接合体50内に、X線吸収能を有する異物が存在していれば、その異物によってX線が吸収されるため、膜電極接合体50を透過するX線の信号強度は弱くなり、輝度は低くなる。これにより、X線透過像内において異物が存在する領域は暗くなる。
【0013】
ステージ30は、X線源10と検出カメラ20との間を水平方向に移動可能に構成されている。ステージ30は、膜電極接合体50をステージ30上に固定するための図示していない固定治具を備えている。ステージ30は、図示していないリニアアクチュエータまたはベルトコンベアなどの移動装置によって水平方向に搬送され移動する。ステージ30は、複数用意され、ステージ30が次々にX線源10と検出カメラ20との間を移動することにより、複数の膜電極接合体50に対する検査が連続的に行われてもよい。
【0014】
検査装置40は、CPUおよび記憶装置を備えるコンピュータによって構成されており、X線源10、検出カメラ20およびステージ30の制御を行う。検査装置40は、検出カメラ20によって撮像されたX線透過像を取得する取得部41と、取得部41によって取得されたX線透過像に基づき、膜電極接合体50中の異物の大きさを求める処理部42と、を備える。取得部41および処理部42は、検査装置40に備えられたCPUが記憶装置に記憶されたプログラムを実行することによって実現される機能部である。なお、取得部41および処理部42は、回路によって構成されてもよい。
【0015】
膜電極接合体50は、電解質膜の両面に触媒電極層が形成された部材である。電解質膜は、例えば、フッ素系スルホン酸ポリマにより形成された固体高分子膜である。触媒電極層は、例えば、白金等の触媒粒子を担持した触媒担持カーボンと電解質樹脂とにより構成される。本実施形態では、膜電極接合体50の一方あるいは両方の面にカーボンペーパーやカーボン不織布等によって構成されたガス拡散層が配置され、膜電極接合体50の周囲に樹脂製のフレーム部材が接着剤によって固定された状態で検査が行われる。検査後、異物が検出されなかった膜電極接合体50とフレーム部材とを挟持するように一対のガスセパレータが配置されることで、燃料電池が完成する。なお、膜電極接合体50の検査は、フレーム部材やガス拡散層が配置されていない状態で行われてもよい。
【0016】
図2は、検査装置40において実行される膜電極接合体の検査方法を示す工程図である。まず、ステップS10において、検査装置40は、X線源10、検出カメラ20、ステージ30を制御して膜電極接合体50にX線を照射し、取得部41によってX線透過像を取得する。ステップS10の工程のことを、第1工程ともいう。
【0017】
ステップS20において、検査装置40の処理部42は、ステップS10において取得したX線透過像から、輝度低下領域を特定する。ステップS20の工程のことを、第2工程ともいう。
【0018】
図3は、X線透過像の一部を拡大した模式図である。処理部42は、X線透過像において、周囲の領域よりも輝度が低い領域を輝度低下領域BAとして特定する。具体的には、本実施形態では、周囲の画素の輝度値よりも、10倍以上暗い輝度値の画素の集合を、輝度低下領域BAとして特定する。図3において、輝度低下領域BAを、太線により囲って示している。処理部42は、輝度低下領域BAの中心の画素CPの輝度低下量を、輝度低下領域BAの輝度低下量として特定する。輝度低下量とは、X線透過像の最大輝度からの輝度の低下量のことをいい、X線の減衰量を表す。輝度低下量が大きいほど、輝度値は小さくなり、輝度低下量が小さいほど、輝度値は大きくなる。
【0019】
図2のステップS30において、処理部42は、ステップS20において特定された輝度低下領域の平面サイズに応じて、輝度低下領域の輝度低下量を補正する。本実施形態において、平面サイズとは、輝度低下領域BAの面積である。
【0020】
図4は、異物の平面サイズと輝度低下量との関係を示す説明図である。図4に示したグラフの横軸は異物の平面サイズであり、縦軸は、輝度低下量である。周知のように、X線は光と同様に、障害物の背後に回り込む性質を有する。そのため、膜電極接合体50内に異物が存在すると、X線は、その背後(図4において上側)に回折して、輝度低下領域の輝度低下量に影響を与える。その影響の大きさは、異物の平面サイズに応じて変化する。具体的には、図4に示すように、異物の平面サイズが小さいと、異物の背後に回り込むX線の量が多くなるため、輝度低下量が小さくなる。これに対して、異物の平面サイズが大きいと、異物の背後に回り込むX線の量が、異物の平面サイズに対して相対的に少なくなるため、輝度低下量が大きくなる。ただし、X線の回折は、異物の端部で生じるため、異物の平面サイズが一定以上大きくなると、X線の回折は異物の中心における輝度低下量に影響を与えなくなる。こうした現象により、異物の平面サイズに対する輝度低下量は、図4に示すように、異物の平面サイズが予め定められた値(閾値)未満の範囲では、異物の平面サイズが小さくなるほど小さくなり、平面サイズが閾値以上の範囲では、異物の平面サイズにかかわらず一定となる。なお、異物の平面サイズが本実施形態で想定している大きさの範囲(概ね直径1mm2 以下)であれば、異物の厚みが変わっても異物の平面サイズと輝度低下量との相関関係に変化はなかった。
【0021】
上記ステップS30では、図4に示した異物の平面サイズと輝度変化との相関関係に基づき、処理部42は、輝度低下領域BAの輝度低下量がX線の回折による影響を排除した本来の輝度低下量になるように補正する。具体的には、輝度低下領域BAの平面サイズが閾値未満であれば、平面サイズが小さいほど、輝度低下量を大きくするための補正量を多くする。また、処理部42は、輝度低下領域BAの平面サイズが閾値以上であれば、補正を行わない。異物の平面サイズと輝度変化との関係は、シミュレーションや実験を行うことによって関数やマップとして予め定めることができる。処理部42は、そのような関数やマップを用いることで上述した補正を行うことができる。ステップS30の工程のことを、第3工程ともいう。
【0022】
図2のステップS40において、処理部42は、補正された輝度低下量に基づき、輝度低下領域BAに存在する異物の厚みを求める。
【0023】
図5は、異物の厚みと輝度低下量との関係を示す説明図である。図5に示すグラフの横軸は異物の厚みを示し、縦軸は、輝度低下量を示している。X線吸収能を有する異物は、その厚みが大きいほどX線を多く吸収する。そのため、図5に示すように、異物の厚みが大きいほど、輝度低下量は大きい。処理部42は、異物の厚みと輝度低下量との関係をシミュレーションや実験によって予め定めた関数やマップを用いることにより、ステップS30において補正された輝度低下量から、その輝度低下量に対応する厚みを求める。ステップS40の工程のことを、第4工程ともいう。
【0024】
図2のステップS50において、処理部42は、ステップS40で求めた厚みと、輝度低下領域BAの平面サイズとに基づき、異物の立体サイズを求める。本実施形態では、このステップS50において、異物の表面積を求める。具体的には、ステップS20で特定した輝度低下領域BAを上面および下面に有し、ステップS40で求めた厚みを高さとして有する柱状形状の表面積を求める。ステップS50の工程のことを、第5工程ともいう。
【0025】
ステップS60において、処理部42は、ステップS50で求めた異物の立体サイズと、予め定められた不良判定閾値とを比較することにより、膜電極接合体50の良否判定処理を行う。処理部42は、ステップS50で求めた異物の立体サイズが、不良判定閾値以上となる場合に、膜電極接合体50が不良であると判定し、ステップS50で求めた異物の立体サイズが不良判定閾値未満の場合に、膜電極接合体50が良品であると判定する。なお、上記ステップS20において、複数の輝度低下領域BAが特定された場合には、上記ステップS30からステップS60までの処理を全ての輝度低下領域BAに対して実行し、1つでも不良判定された場合には、その膜電極接合体50は不良であると判定する。また、ステップS20において膜電極接合体50から輝度低下領域が1つも特定されなかった場合には、ステップS30からステップS50までの処理をスキップし、ステップS60において、その膜電極接合体50は良品であると判定する。検査装置40は、良否判定処理による判定結果を、検査装置40に接続された表示装置等の出力装置によって出力してもよい。
【0026】
検査システム100において、上記のように膜電極接合体50の良否が判定されると、良品と判定された膜電極接合体50が用いられ、燃料電池が製造される。図2に示した工程図は、1つの膜電極接合体50に対する検査工程を表している。そのため、上述したステップS10~S60の工程を繰り返し実行することによって、複数の膜電極接合体50について連続的に検査を行うことができる。
【0027】
以上で説明した本実施形態における膜電極接合体50の検査方法によれば、X線の回折によるX線透過像の輝度への影響を補正することにより、膜電極接合体50中の異物の大きさ、特に異物の厚みを精度よく求めることができる。更に、本実施形態では、補正された輝度低下量に基づき異物の厚み求め、その厚みと輝度低下領域の平面サイズとに基づき、異物の立体サイズを求めるので、膜電極接合体50中の異物の立体サイズを精度よく求めることができる。
【0028】
また、本実施形態では、X線透過像のみを用いて異物を検出できるので、他に蛍光X線分析など成分分析等の手法を用いることなく、簡便に検査を行うことができる。従って、膜電極接合体50の検査に要するサイクルタイムが短縮され、燃料電池を効率的に製造することが可能になる。
【0029】
図6は、本実施形態の効果を説明するための図である。図6に示すグラフは、横軸が異物の立体サイズの実測値を示し、縦軸が、上記検査方法によって異物の立体サイズを求めた値を示している。上記検査方法によって求めた値のことを、以下では、推定値という。実測値は、異物の三次元CT像を解析することによって求めた。図6には、上記検査方法のステップS30において輝度低下量を補正した異物のデータが入る3σの範囲を表す領域を「R1」として示し、補正しなかった異物のデータが入る3σの範囲を表す領域を「R2」として示している。これらの領域は、様々な形状をした30個の異物のサンプルについて、それぞれ、実測値と推定値とを求めることによって統計的に得られた領域である。
【0030】
図6に示すように、本実施形態において、上記検査方法のステップS30によって、異物の平面サイズに応じて輝度低下量を補正すると、輝度低下量を補正しない場合よりも、異物サイズの実測値と推定値とが強い相関を有するようになった。つまり、輝度低下量を補正することにより、精度よく、異物の立体サイズを推測することができる。この結果、膜電極接合体50の良否判定を行うための不良判定閾値の値に、大きな余裕を持たせる必要がないので、不良判定閾値を大きな値に設定することができる。この結果、補正なしの場合に不良と判定される膜電極接合体50の一部(図6のハッチング部分に異物の推定サイズが該当する膜電極接合体50)を、良品として判定することができ、膜電極接合体50の歩留まりを向上させることができる。
【0031】
B.他の実施形態:
(B-1)上記実施形態では、異物の立体サイズに基づき、膜電極接合体50の良否判定を行っている。これに対して、異物の厚みに基づいて、膜電極接合体50の良否判定を行ってもよい。この場合、図2に示した検査方法のステップS50を省略し、ステップS60では、異物の厚みと所定の良否判定閾値とを比較することで膜電極接合体50の良否判定を行う。
【0032】
(B-2)上記実施形態では、処理部42は、輝度低下領域BAの中心の画素の輝度低下量を、輝度低下領域BAの輝度低下量として特定している。これに対して、処理部42は、輝度低下領域BAにおいて最も大きな輝度低下量を、輝度低下領域BAの輝度低下量として特定してもよい。
【0033】
(B-3)上記実施形態では、処理部42は、輝度低下領域BAの平面サイズとして、輝度低下領域BAの面積を求めている。これに対して、処理部42は、輝度低下領域BAの平面サイズとして、輝度低下領域BAの平面方向における最大寸法や、X,Y方向のサイズのうちの大きい方のサイズを求めてもよい。
【0034】
(B-4)上記実施形態では、処理部42は、異物の立体サイズとして、異物の表面積を求めている。これに対して、処理部42は、異物の立体サイズとして、図2のステップS40で求めた厚みと、輝度低下領域BAの平面サイズとの積を算出することによって、異物の体積を求めてもよい。
【0035】
(B-5)上記実施形態では、処理部42は、輝度低下領域BAの輝度低下量を補正している。これに対して、処理部42は、輝度低下領域BAの輝度値を補正してもよい。輝度低下量および輝度値は、いずれも輝度の指標であるため、輝度低下量を補正することも、輝度値を補正することも、どちらも輝度を補正しているといえる。ただし、輝度値が大きいということは、輝度低下量が小さいことになり、輝度値が小さいということは、輝度低下量が大きいことになる。そのため、図2のステップS30において輝度値を補正する場合、処理部42は、輝度低下領域BAの平面サイズが閾値未満であれば、平面サイズが小さいほど、輝度値を小さくするための補正量を多くする。
【0036】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
10…X線源、20…検出カメラ、30…ステージ、40…検査装置、41…取得部、42…処理部、50…膜電極接合体、60…開口部、100…検査システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6