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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141368
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】ガス濃度検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/22 20060101AFI20220921BHJP
   B01D 53/68 20060101ALI20220921BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20220921BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
G01N1/22 D
B01D53/68 100
B01D53/78 ZAB
G01N1/00 101R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041631
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】大谷 玲弥
(72)【発明者】
【氏名】矢野 祥平
【テーマコード(参考)】
2G052
4D002
【Fターム(参考)】
2G052AA02
2G052AC24
2G052AC27
2G052AD02
2G052CA04
2G052HC22
2G052HC23
2G052HC27
2G052HC29
4D002AA18
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA16
4D002CA01
4D002DA02
4D002DA12
4D002GA02
4D002GB01
4D002GB02
4D002GB03
4D002GB20
(57)【要約】
【課題】 サンプリングガスのガス抜出管が閉塞しても、検知器にドレンが入り込むことのない簡単な構成のガス濃度検知装置を提供する。
【解決手段】 湿式除害設備から排出される湿式処理済みガスからガス抜出管1によって抜き取ったサンプリングガスを冷却するU字管4aで構成される冷却器4と、U字管4aの最下部に接続されたドレン回収管5を介して抜き出されるドレンを回収するドレン回収タンク6と、冷却器4を出たサンプリングガスが導入されるドレンポット8と、ドレンポット8を出たサンプリングガスが導入される検知器10とを有するガス濃度検知装置であって、ドレン回収管5の先端部は、ドレン回収タンク6内においてオーバーフローにより維持されている液位よりも下方に位置することでU字管4aが液封されており、ドレンポット8は、通常運転時における受入れ可能容量がドレン回収タンク6の液保有量よりも多い。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式除害設備から排出される湿式処理済みガスからガス抜出管によって抜き取ったサンプリングガスを内側に流しながら外側から冷却するU字管で構成される冷却器と、該U字管の最下部に接続されたドレン回収管を介して抜き出されるドレンを回収するドレン回収タンクと、該冷却器を出たサンプリングガスが導入されるドレンポットと、該ドレンポットを出たサンプリングガスが導入される検知器とを有するガス濃度検知装置であって、
前記ドレン回収管の先端部は、前記ドレン回収タンク内においてオーバーフローにより維持されている液位よりも下方に位置することで前記U字管が液封されており、前記ドレンポットは、通常運転時における受入れ可能容量が前記ドレン回収タンクの液保有量よりも多いことを特徴とするガス濃度検知装置。
【請求項2】
前記ドレンポットには、通常運転時における液位から、前記ドレン回収タンクにおける前記ドレン回収管の先端部が位置する液深レベルから前記オーバーフローにより維持されている液位までの液量に相当する液位に達したときに警報を発報する液面計が設置されている、請求項1に記載のガス濃度検知装置。
【請求項3】
前記冷却器の上流側にプレドレンポットが設けられている、請求項1又は2に記載のガス濃度検知装置。
【請求項4】
前記湿式処理済みガスのガス温度が60℃以上100℃以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載のガス濃度検知装置。
【請求項5】
前記検知器は、該検知器に導入する前記サンプリングガスの一部を該検知器の測定用セルに通過させ、余剰のサンプリングガスは放出する構造である、請求項1から4のいずれか1項に記載のガス濃度検知装置。
【請求項6】
前記ガス抜出管におけるガス流速が0.3~3.0m/sである、請求項1から5のいずれか1項に記載のガス濃度検知装置。
【請求項7】
前記湿式処理済みガスは、塩素ガス、水蒸気、前記湿式除害設備での除害処理に用いた処理液のミストの形態の水溶液、及び固形分を含有し、前記検知器では塩素ガスの濃度が検知される、請求項1から6のいずれか1項に記載のガス濃度検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス濃度検知装置に関し、特に、湿式処理設備からミストを随伴し且つ水分が飽和状態で排出される湿式処理済みガス中に含まれる検知対象物質の濃度を検知するガス濃度検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非鉄金属製錬工場や石油化学工場などにおいては、原料や中間原料に対して様々な化学的処理を施すことが一般的に行なわれており、この化学的処理を行なう設備からは、排出規制の対象となる化学物質を含んだ高温の工場排ガスが排出されることが多い。そのため、この工場排ガスは、通常はスクラバーなどの湿式の除害設備において特定の規制対象物質を除去する除害処理が施された後、大気に放出される。
【0003】
この場合、上記規制対象となる化学物質の濃度を常時監視するために、除害設備の出口側のダクトには湿式処理済みガス中の該規制対象物質の濃度を測定する検知器が付随して設けられている。そして、該ダクトから抜き出したサンプリングガス中の規制対象物質の濃度が、例えば排出基準値の10分の1以下に設定された管理値を超えていることが検知された場合、計器室等において警報を発報するようになっている。
【0004】
ところで、上記の高温の工場排ガスを湿式の除害設備で処理した後に排出される出口ガスのように、ミスト(飛沫)を随伴し且つ水分が飽和状態にある湿式処理済みガスから抜き出したサンプリングガスを上記の検知器に導入すると、該水分により該サンプリングガス中の規制対象物質の濃度を正確に測定できないことがある。そのため、該検知器の前段には、ドレンポットや冷却器等の水分除去装置が一般的に設けられており、該ドレンポットでミストをドレンとして除去したり、該冷却器でサンプリングガスを冷却することで水蒸気を凝縮水の形態で除去したりすることが行なわれている。これにより、水分の含有率が低減されたサンプリングガスが該検知器に導入されるので正確な検知が可能になる。
【0005】
例えば特許文献1には、被検ガスを検知する検知器の前段に該被検ガス中に含まれる水分を除去するドレントラップを備えたガス濃度検知装置が開示されている。この特許文献1のガス濃度検知装置は、被検ガスを検知器に導入するために該検知器の下流側に設けたポンプの排出ガスを、ドレントラップ内の水分を吸引して排出するエアエゼクタの駆動源として用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平02-297050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、高温の工場排ガスを除害処理する湿式除害設備から排出される湿式処理済みガスは、水蒸気が飽和状態で存在しているうえ、該除害処理に用いた処理液がミストの形態で随伴している。そのため、該湿式処理済みガス中の規制対象物質の濃度を検知器で測定すべく、該湿式処理済み排ガスの一部をサンプリングガスとしてガス抜出管を介して該除害設備の出口側のダクトから抜き出すと、外気等によってサンプリングガスの温度が直ちに低下するため、該サンプリングガスに含まれるミストや水蒸気が凝縮した凝縮水からなるドレンが発生し、上記ガス抜出管を閉塞させることがあった。
【0008】
このように、ガス抜出管がドレンにより閉塞すると、検知器の吸込側の圧力が低下するので、除去されたドレンを回収するドレン回収タンクが設けられている場合、該ドレン回収タンク内のドレンが吸い上げられて検知器に入り込むことがあった。その結果、ガス濃度の検知精度が低下したり、高価な精密機器で構成される検知器が故障したりする問題を引き起こすことがあった。特に、検知器が故障すると、その原因の究明や内部点検、機器や部品の清掃や交換等が必要になり、公害防止設備である除害設備そのものを停止せざるを得なくなる。これは、該除害設備で処理されている工場排ガスを排出している生産設備の操業を一時的に停止することを意味しているので、工場の稼働率に深刻な悪影響を及ぼすことになる。
【0009】
また、ガス抜出管がドレンにより閉塞すると、正常なガス濃度が検知されなくなる。よって、ガス抜出管がドレンにより閉塞したことを一早く検出し、速やかに修正処置を行なうのが望ましい。特に、検知器の導入管が、サンプリングガスの一部を分配して検知器の測定用セルに導入し、余剰分は該導入管から分岐する放出管によって放出する構造である場合、この分岐部分よりも上流側の導入管がドレンにより閉塞すると、ドレンが吸い上げられて検知器に入り込むまでには至らずとも、放出管で逆流が生じ、その結果、この放出管から吸込まれた空気でサンプリングガスが希釈されたり、空気が検出器に導入されたりするため、ガス濃度が正常に検知できなくなる。
【0010】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、高温の工場排ガスを除害処理する湿式除害設備から排出される湿式処理済みガス中の水分により生ずるドレンによりガス抜出管が閉塞しても、該湿式処理済みガス中の規制対象物質の濃度を測定する検知器にドレンが入り込むことのない簡単な構成のガス濃度検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するため、ガス濃度検知装置の構成について鋭意検討を重ねた結果、湿式処理済みガスから抜き取ったサンプリングガスを除湿するために冷却する冷却器の下流側にドレンポットを設置し、該冷却器で除湿した後のサンプリングガスを該ドレンポットを経由して検知器に導入することによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明のガス濃度検知装置は、湿式除害設備から排出される湿式処理済みガスからガス抜出管によって抜き出したサンプリングガスを内側に流しながら外側から冷却するU字管で構成される冷却器と、該U字管の最下部に接続されたドレン回収管を介して抜き出されるドレンを回収するドレン回収タンクと、該冷却器を出たサンプリングガスが導入されるドレンポットと、該ドレンポットを出たサンプリングガスが導入される検知器とを有するガス濃度検知装置であって、前記ドレン回収管の先端部は、前記ドレン回収タンク内においてオーバーフローにより維持されている液位よりも下方に位置することで前記U字管が液封されており、前記ドレンポットは、通常運転時における受入れ可能容量が前記ドレン回収タンクの液保有量よりも多いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、サンプリングガスの抜き出しを行なうガス抜出管で閉塞が生じても、該サンプリングガスから生じたドレンが検知器に入り込むことのない、簡単な構成のガス濃度検知装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態のガス濃度検知装置が設けられる湿式除害設備の模式的なフロー図である。
図2】本発明の参考例のガス濃度検知装置を示す構成図である。
図3】本発明の実施形態のガス濃度検知装置を示す構成図である。
図4図3のガス濃度検知装置が有する検知器の内部構造を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
各種工場の生産設備から排出される工場排ガスには、有害な化学物質が含まれることがあり、その除害処理には充填塔に代表される湿式除害設備が用いられる。例えば図1に示すように、充填塔Pによる除害処理では、塔底部から導入される工場排ガスに対して塔頂部から苛性ソーダ水溶液などの処理水を降らせて向流による気液接触を行なうことで、該工場排ガス中に含まれる化学物質を該処理水に吸収させる。このようにして除害処理された工場排ガスは、充填塔Pの塔頂から湿式処理済みガスとして排出され、ダクトD及び煙突Sを経て大気に放出される。ダクトDの近傍には湿式処理済みガスから抜き取ったサンプリングガス中の規制対象物質の濃度を測定する検知器10が付随して設けられており、このサンプリングガス中の規制対象物質の濃度が所定の管理値を超えていることが検知された場合、計器室等の警報手段Aにおいて警報を発報するようになっている。
【0016】
このように、湿式による除害処理では、一般的に工場排ガスを処理水と直接接触させることで該工場排ガスの除害処理を行なうため、該湿式除害設備から排出される湿式処理済みガスには水蒸気が飽和状態で含まれている。また、該湿式処理済みガスが排出される充填塔の塔頂部の出口には一般的にデミスターなどの液滴除去手段が設けられているが、この場合であっても、充填塔の塔頂部出口から排出される湿式処理済みガスにはデミスターにて捕集し切れなかったミストが随伴している。さらに、通常は、工場排ガスや処理水の温度は気温よりも高く、よって湿式処理済みガスの温度も気温よりも高くなる。かかる水分を含んだ湿式処理済みガスの一部を検知器にそのまま導入しようとすると、凝結等により湿式処理済みガスからドレンが生成し、そのドレンにより検知器の検知精度の低下や機器の故障が発生するおそれがある。
【0017】
この対策として、図2に示すように、検知器の前段にサンプリングガスに含まれる液滴状の水分を分離するプレドレンポット2、及び管内にサンプリングガスを流しながら管外から冷却する構造の冷却器4をこの順に設置することがある。具体的には、ダクトD内を流れている湿式処理済みガスの一部をサンプリングガスとしてガス抜出管1を介して抜き出して先ずプレドレンポット2に導入し、ここで該サンプリングガスに随伴しているミストを重力沈降により除去する。なお、除去されたミストはプレドレンポット2内に溜まるので、底部に設けたドレンバルブ2aを適宜開閉して抜き出す。
【0018】
上記のプレドレンポット2を出たサンプリングガスは、第1接続管3を介して冷却器4に導入される。この冷却器4は、U字管4aの内側を流れているサンプリングガスに対して、例えばボルテックスクーラーなどの図示しない冷却装置によって外側から冷却するものであり、サンプリングガスはこのU字管4aの内側を流れている間に冷却されることで、該サンプリングガスに含まれる水蒸気が凝縮して凝縮水の形態で該サンプリングガスから除去される。除去された凝縮水は、U字管4aの最下部から下方に延在するドレン回収管5を介してドレンとしてドレン回収タンク6内に回収される。
【0019】
ドレン回収タンク6には側面上部にオーバーフロー部6aが設けられており、回収されたドレンはこのオーバーフロー部6aから外部に排出されることで、ドレン回収タンク6内では回収したドレンからなる貯留水の液位が維持されている。上記ドレン回収管5は、その先端部がこのドレン回収タンク6内において上記オーバーフローで維持されている液位よりも下方に位置している。これにより、ドレン回収管5の先端部は、ドレン回収タンク6内の貯留水によって常時液封されるので、雰囲気ガスがガス濃度検知装置に侵入するのを防ぐことができる。この冷却器4を出たサンプリングガスは、ガス導入管9を介して最終的に検知器10に導入され、ここで該サンプリングガス中の特定の規制対象物質の濃度が測定される。そして、該サンプリングガス中の特定の規制対象物質の濃度が所定の上限値(しきい値)を超えた場合に警報が発報する。
【0020】
上記のガス濃度検知装置では、例えば、充填塔の充填物層やデミスターの詰まり具合等の充填塔の状態や、ガス抜出管1の距離や位置関係、外気温、ガス抜出管1の内壁での結晶生成や固形分の付着等の影響を受けて、ガス抜出管1内が該凝縮水で液満になってサンプリングガスのスムーズな流れが阻害されることがあった。なお、このスムーズな流れの阻害の問題は、ダクトD内を流れている湿式処理済みガスがより高温多湿な場合や、ガス抜出管1の内径や、ガス抜出管1内を流れるガス流速が適切ではない場合に特に生じやすかった。また、ダクトDを流れている湿式処理済みガスに固形分が含まれている場合は、ガス抜出管1の内壁での固形分の付着が起因して、ガス抜出管1を閉塞させることがあった。
【0021】
上記のサンプリングガスのスムーズな流れが妨げられている状態を放置しておくと、検知器10では内蔵するポンプ等の吸引手段によりサンプリングガスを吸引し続けているため、ガス濃度検知装置の系内の圧力が徐々に低下し、最終的にドレン回収タンク6内の液封用の貯留水が吸い上げられてガス導入管9を介して検知器10に入り込み、検知器10の検知精度が低下したり、検知器10を構成する機器が故障したりすることがあった。前述したように、検知器10は、所定のしきい値以上のガス濃度を検知した際に警報を発報するようになっているが、通常は、ガス濃度検知装置のガス抜出管1の閉塞を検知して警報を発報する機能は備わっていないため、上記のように検知器10に水が入り込んで故障等のトラブルが発生する問題を防止することは図2の構成では困難であった。
【0022】
そこで、図3に示すように、本発明の実施形態のガス濃度検知装置では、冷却器4、及びドレン回収タンク6に加えて、冷却器4の下流側にドレンポット8を設け、冷却器4で除湿した後のサンプリングガスをドレンポット8を経由して検知器10に導入している。これにより、ドレン等による閉塞によりガス抜出管1においてサンプリングガスのスムーズな流れが妨げられ、ガス濃度検知装置の系内の圧力が低下してドレン回収タンク6内の貯留水が吸い上げられても、この吸い上げられた貯留水をドレンポット8内に回収することができるので、該貯留水が検知器10に入り込むのを防ぐことができる。なお、図3にはプレドレンポット2が示されているが、プレドレンポット2を設ける構成は、本発明の必須の構成を示したものではない。
【0023】
より具体的に説明すると、冷却器4の下流側に位置するドレンポット8は、冷却器4の上流側に位置するプレドレンポット2と同様に、ドレンバルブ8aを適宜開閉して排水することで、通常運転時は内部にドレンがほとんど存在していないか又は液位が低い状態が維持されており、冷却器4を出たサンプリングガス中に含まれるミストを除去する役割を担わせることができる。すなわち、主として冷却器4での冷却により生じた凝縮水からなるミストを含んだサンプリングガスは、冷却器4を出た後、第2接続管7を介してドレンポット8内に導入され、ここで該ミストが重力沈降により除去される。ドレンポット8でミストが除去されたサンプリングガスは、ドレンポット8の頂部出口から出た後、ガス導入管9を介して検知器10に導入される。
【0024】
ドレンポット8は、上記のミストの除去の役割に加えて、ガス抜出管1や第1接続管3における閉塞によりサンプリングガスのスムーズな流れが妨げられて該閉塞箇所より下流側の系内の圧力が低下し、その結果、ドレン回収タンク6内の液封用の貯留水がドレン回収管5を逆流して吸い上げられたときに、この吸い上げられたドレン回収タンク6内の貯留水の全量を回収する役割を担っている。すなわち、前述したようにドレンポット8は通常運転時はほぼ空の状態にあるため、ドレンポット8の受入れ可能容量をドレン回収タンク6の液保有量よりも多くすることにより、上記のようにドレン回収タンク6内の貯留水がドレン回収管5によって吸い出されたとしても、その全量をドレンポット8内に受け入れることができるため、この吸い出されたドレンが検知器10に入り込んで故障等のトラブル生じさせるのを防ぐことができる。
【0025】
なお、上記のように、閉塞によりドレン回収タンク6内の液封用の貯留水が吸い上げられる場合の対策として、ドレン回収管5の長さを長くして、ドレン回収タンク6の液面からU字管4aの最下部までの高低差による液ヘッドを、検知器10に内蔵されたポンプ等の吸引装置の最大吸引圧力以上とすることが考えられる。しかし、この場合はドレン回収管5を長くした分だけドレン回収タンク6を冷却器4から下方に離間させるために、例えば、冷却器1を上方に配置したり、地面に穴を掘ったりする必要が生じ、ガス濃度検知装置の据付けや改造等にコストがかかるので現実的とはいえない場合が多い。また、装置が大掛かりになって運転管理に手間が掛かる。また、圧力計と遮断弁等の組合せも考えられるが、この場合もドレン回収管5の長さを長くする場合と同様、設置コストと運転管理の問題がある。
【0026】
上記のドレンポット8には液面計8bを設置してもよい。この場合は、ドレンポット8の液位が、通常運転時における液位から、上記したガス抜出管1や第1接続管3の閉塞時にドレン回収タンク6から吸い出される液量、すなわち、ドレン回収タンク6における上記ドレン回収管5の先端部が位置する液深レベルからオーバーフローにより維持されている液位までの液量Vに相当する液位に達したときに警報を発報するように液面計8bを設定するのが好ましい。これにより、液面計本来の使用目的に加えて圧力計としての機能も担保されることになり、ガス抜出管1や第1接続管3の閉塞等のトラブルをいち早く知ることができる。また、液面計8bを設置することにより、ドレンポット8の容量に過度の余裕を持たせる必要がなくなるので、装置全体の設置スペースを小さくでき、設置後の装置の改造も容易に行なうことができる。
【0027】
上記のように液量Vを検出できるように設置された液面計8bによれば、ドレン回収タンク6内の貯留水がドレン回収管5によって吸い出されたことを検出することができると同時に、ガス抜出管1や第1接続管3の閉塞を検出することができる。液面計8bが液量Vを検出できるように設置されていなければ、ガス抜出管1や第1接続管3の閉塞を検出するために、別途、圧力計と警報装置が必要となる。なお、通常運転時においてもドレンポット8内で徐々にドレンが貯まっていくことがあるので、ドレンポット8の液位が上昇することで、その受入れ可能容量が上記の閉塞時にドレン回収タンク6から吸い出される液量よりも少なくなったときにも警報を発報するように液面計8bを設定してもよい。さらに、液面計8bに上記2通りの警報設定を行っても良い。
【0028】
上記のドレンポット8の出口と検知器10のガス入口部10aとはガス導入管9で接続されており、ドレンポット8を出たサンプリングガスは、最終的に検知器10に導入される。この検知器10は、好適には検知対象物質の濃度測定に要するガス流量よりも過剰のサンプリングガスを検知器10内に流入させ、余剰分を検知器10のドレン出口10bから放出する構造になっている。
【0029】
具体的には、図4に示すように、検知器10は、サンプリングガスを吸引するポンプ11と、ポンプ11で吸引したサンプリングガスの流量を測定する流量計12と、流量計12を出たサンプリングガスに含まれるドレンを除去すると共に、後段のガスサンプラー14に送り込むガス流量を調整するドレントラップ13と、サンプリングガス中に含まれる検知対象物質の濃度を測定するガスサンプラー14とから構成される。このようにガスサンプラー14での検知対象物質の濃度測定に必要な流量よりも過剰のサンプリングガスを検知器10に送り込むことで、該検知対象物質の検知(濃度測定)を安定化させることができる。なお、測定が終了したサンプリングガスはガスサンプラー14を出た後、ガス出口10cを介して装置外に排出される。
【0030】
上記のように、ドレンポット8を冷却器4の下流側に設けることで、サンプリングガスから発生したドレン等によってガス抜出管1が閉塞しても検知器10にドレンが入り込むトラブルを防止することができるが、かかるガス抜出管1の閉塞をできるだけ抑えるため、ガス抜出管1におけるサンプリングガスのガス流速は0.3~3.0m/sの範囲内であるのが好ましい。さらに、ガス抜出管1の内径の下限値は9mm以上であるのが好ましく、12mm以上であるのがより好ましい。上記のように内径を大きくすることによって、ガス抜出管1の内容積に対する表面積を低減することができるので、サンプリングガスの温度低下を抑えることも可能になる。
【0031】
ガス抜出管1以降の材質には特に限定はなく、ポリ塩化ビニル等の各種樹脂、耐熱ガラス、ステンレス等の金属を適宜使用することができる。湿式除害設備から排出される湿式処理済みガスのガス温度が高温であり、該湿式除害設備において処理液として用いる苛性ソーダ水溶液等の腐食性の液体がミストとして該湿式処理済みガスに含まれているときは、ガス抜出管1、プレドレンポット2、第1接続管3等に、テフロン(登録商標)等のフッ素樹脂に代表される耐熱性及び耐腐食性に優れた材質を使用しても良い。
【0032】
特に、ガス抜出管1、第1接続管3、第2接続管7、ガス導入管9には、樹脂製チューブを用いることが最適であるが、検知対象物質を吸着する性質を有する樹脂は採用しないのが好ましい。例えば、検知対象物質が塩素ガスの場合は、樹脂への吸着が起こらない、PTFE(Poly Tetra Fluoro Ethylene)製のチューブを好適に用いることができる。以上、本発明の実施形態に係るガス濃度検知装置について説明したが、本発明のガス濃度検知装置は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形例や変更例を含むことができる。
【実施例0033】
ニッケルの湿式製錬プラントにおける塩素浸出処理の際に発生する工場排ガスを無害化する除害設備の運転状態を監視するため、該除害設備の出口から排出される湿式処理済みガスの一部をサンプリングガスとして抜き出して、図3に示す構成のガス濃度検知装置に導入し、該サンプリングガスに含まれる塩素濃度を測定した。このニッケルの湿式製錬プラントは、ニッケルを50~80%程度含んだ原料としてのニッケル硫化物に対して、塩素浸出工程及びセメンテーション工程で処理することで、該原料に含まれているニッケル、コバルト、鉄、銅等の金属成分を水溶液中に浸出させて浸出液を得る。その浸出液を、脱鉄工程、溶媒抽出工程(ニッケル、コバルト分離工程)、脱鉛工程、脱亜鉛工程、コバルト浄液工程、電解工程等にて順次処理することで、製品としての電気ニッケル、電気コバルトを製造するものである。
【0034】
上記の塩素浸出工程では原料に塩素を吹き込むため、この塩素浸出工程で発生する排ガスには、ごく微量の塩素が含まれている。また、塩素浸出工程では、吹き込んだ塩素ガスで銅イオンを酸化させ、その酸化した銅イオンによって原料中の金属成分が水溶液中に浸出される。塩素浸出工程における浸出反応は複雑な反応になるが、簡単に表せば、例えば下記の反応が起こる。塩素浸出工程で生成した固体状の硫黄は、水溶液中にスラリーの形で存在するため、固液分離によって固体分を取出し、溶融、濾過等を行なう硫黄回収工程を経て、製品として回収される。しかしながら、ごくわずかな硫黄の微粉末が塩素浸出工程の排ガスにも散逸するため、該塩素浸出工程で発生する排ガスには微量の硫黄も含まれている。
2Cu+Cl⇔2Cu2++2Cl
NiS+2Cu2+⇔Ni2++2Cu+S
【0035】
上記の塩素を含んだ工場排ガスを無害化する除害設備には、塔径2800mm、高さ5400mmの充填塔を使用し、その内部に充填材として、プラスチック充填物であるテラレット(登録商標)と、ニッタ化工品株式会社製のプラスチック充填剤であるハイレックス(商品名)とを充填した。そして、この充填塔の塔頂部から苛性ソーダ水溶液を降らすと共に塔底部から上記工場排ガスを導入することで、該工場排ガス中に含まれる塩素を苛性ソーダ水溶液に吸収させた。この充填塔による工場排ガスの除害処理により、充填塔入口において約5~10ppmであった塩素ガス濃度を、充填塔の塔頂部出口においてほぼゼロまで無害化することができた。
【0036】
この充填塔の塔頂部から排出される湿式処理済みガスは水蒸気で飽和しており、温度が約60℃から100℃の範囲内で変動した。そのため、外気による冷却により大量のドレンが発生するおそれがあり、また、前述の通り排ガスには微量の硫黄も含まれているので、これらドレンや硫黄分によるガス抜出管1での閉塞を生じにくくするため、ガス抜出管1の内径は12mmにした。そして、このガス抜出管1の先端部に図3に示す構成のガス濃度検知装置を接続し、検知対象物質としての塩素ガスの濃度を監視した。
【0037】
具体的には、プレドレンポット2には容量2Lのポリ塩化ビニル製の円筒形容器を使用し、冷却器4にはバイオニクス社製のボルテックスクーラーを外部に備えたU字管を使用し、ドレン回収管5には内径6mm、長さ300mmのステンレス製パイプを使用し、ドレン回収タンク6にはオーバーフロー部までの容量1.8Lのポリ塩化ビニル製の円筒形容器を使用した。そして、ドレンポット8は、通常運転時における受入れ可能容量がドレン回収タンク6の液保有量である上記1.8Lよりも大きくなるように、容量3Lのポリ塩化ビニル製の円筒形容器を使用し、第1接続管3及び第2接続管7には、いずれも内径6mmのPTFE製のチューブを使用した。
【0038】
さらに、ドレンポット8には液面計8bを設置した。そして、上記ドレン回収タンク6におけるオーバーフロー部6aでのオーバーフローにより維持される液位からドレン回収管5の先端部が位置する液深レベルまでの容量が0.7Lであったので、ドレンポット8内の液量が0.7Lに相当する液位に到達したときに警報が発報するように液面計8bの設定を調整した。
【0039】
検知器10には、バイオニクス製の型式SH-2713の塩素検知器を採用した。この塩素検知器は図4に示すような吸引式であり、内蔵式のポンプ11により連続的に吸引されるサンプリングガスを、流量計12及びドレントラップ13を経てガスサンプラー14に導入し、ここで隔膜電極方式のセンサによってサンプリングガス中の検知対象物質である塩素ガスの濃度を測定した。なお、ガスサンプラー14で測定された測定値は、信号変換器により増幅され、ガス濃度として出力される。このセンサのガス濃度測定レンジは0ppmから3ppmであり、0.1ppmで第1警報、0.5ppmで第2警報が発報するように設定した。
【0040】
上記構成を有する本発明の実施例のガス濃度検知装置に対して、前述した充填塔の塔頂部出口を出てダクトDを流れている湿式処理済みガスから、流量計12における流量が2L/minとなるようにガス抜出管1を介してサンプリングガスを抜き取り、プレドレンポット2、冷却器4、及びドレンポット8を経由させた後、検知器10に導入し、ドレントラップ13で余剰分を除去して最終的にガスサンプラー14に0.5L/minのサンプリングガスを供給した。この条件で、ニッケルの湿式製錬プラントから排出された工場排ガスを除害処理した後の湿式処理済みガスに含まれる塩素ガス濃度を1年間に亘って監視したところ、ガス濃度検知装置にサンプリングガスから生じたドレンに起因する異常が発生したことは1度もなかった。
【0041】
参考例として、図2に示すように、ドレンポット8を設置しないこと以外は上記実施例と同様のガス濃度検知装置を用い、上記実施例のガス濃度検知装置と同様にニッケル湿式製錬プラントから排出された工場排ガスを除害処理した後の湿式処理済みガスに含まれる塩素ガス濃度を1年間に亘って監視した。その結果、2ヶ月に1回の頻度でドレン回収タンク6から吸い上げられたドレンが検知器10に入り込んでその部品を破損させた。この破損の度に、検知器10の内部及び周辺の清掃及び部品交換が必要となり、そのために半日を要した。
【符号の説明】
【0042】
A 警報手段
D ダクト
P 充填塔
S 煙突
1 ガス抜出管
2 プレドレンポット
2a ドレンバルブ
3 第1接続管
4 冷却器
4a U字管
5 ドレン回収管
6 ドレン回収タンク
6a オーバーフロー部
7 第2接続管
8 ドレンポット
8a ドレンバルブ
8b 液面計
9 ガス導入管
10 検知器
10a ガス入口
10b ドレン出口
10c ガス出口
11 ポンプ
12 流量計
13 ドレントラップ
14 ガスサンプラー
図1
図2
図3
図4