(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141601
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】走行ロボット
(51)【国際特許分類】
B62D 57/028 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
B62D57/028 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037140
(22)【出願日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2021041165
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】515263989
【氏名又は名称】株式会社計測工業
(71)【出願人】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】芝 雄大
(72)【発明者】
【氏名】高田 洋吾
(72)【発明者】
【氏名】中島 啓太
(72)【発明者】
【氏名】小林 翔太
(72)【発明者】
【氏名】小野 孝輔
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 直樹
(57)【要約】
【課題】 被走行部の下面から上面に向けて確実に吸着走行することができる走行ロボットを提供する。
【解決手段】 互いに回動自在に連結された本体前部11および本体後部12を有する装置本体10と、本体前部11および本体後部12にそれぞれ支持された前輪20および後輪30と、前輪20および後輪30をそれぞれ駆動する前輪駆動装置25および後輪駆動装置35と、本体前部11に回動自在に支持されて押圧体42bを進退させる押出装置40と、前輪駆動装置25、後輪駆動装置35および押出装置40の作動を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前輪20および後輪30が被走行部の下面から上面に向けた前進中にそれぞれ上面および下面に吸着した状態で、押出装置40を作動させることにより、押圧体42bを被走行部の上面に当接した状態から押し出して本体後部12を引き上げる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平に配置された磁性を有する平板状の被走行部を下面から上面に向けて走行可能な走行ロボットであって、
走行方向の前後にそれぞれ配置されて互いに回動自在に連結された本体前部および本体後部を有する装置本体と、
前記本体前部および本体後部にそれぞれ支持されて、前記被走行部に磁力により吸着する前輪および後輪と、
前記前輪および後輪をそれぞれ駆動する前輪駆動装置および後輪駆動装置と、
前記本体前部に回動自在に支持されて押圧体を進退させる押出装置と、
前記前輪駆動装置、後輪駆動装置および押出装置の作動を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記前輪および後輪が前記被走行部の下面から上面に向けた前進中にそれぞれ上面および下面に吸着した状態で、前記押出装置を作動させることにより、前記押圧体を前記被走行部の上面に当接した状態から押し出して前記本体後部を引き上げる走行ロボット。
【請求項2】
前記制御装置は、前記前輪および後輪がそれぞれ前記被走行部の上面および下面に吸着した状態での走行不能を検出すると、前記前輪の前進を維持しつつ前記後輪を後進させて、前記装置本体を前記被走行部の端部に接近させる請求項1に記載の走行ロボット。
【請求項3】
前記装置本体が前記被走行部の端部に接近したことを検知する端部検知センサを更に備え、
前記制御装置は、前記端部検知センサの検出に基づいて前記押出装置を作動させる請求項2に記載の走行ロボット。
【請求項4】
前記制御装置は、前記押出装置の作動により前記本体後部を引き上げた後、前記後輪を前進させながら、前記前輪を一旦後進させた後に前進させる請求項1から3のいずれかに記載の走行ロボット。
【請求項5】
前記押出装置を前記本体前部に対して回動させる回動装置を更に備え、
前記制御装置は、前記押圧体が前記被走行部の上面と直交する方向に押し出されるように前記回動装置を作動させる請求項1から4のいずれかに記載の走行ロボット。
【請求項6】
前記押圧体は、前記被走行部に当接する転動部材を備える請求項1から5のいずれかに記載の走行ロボット。
【請求項7】
前記転動部材は、前記押圧体の下端面の中央から突出するように設けられており、
前記制御装置は、前記本体後部を引き上げる際に、前記押圧体の押出方向が前記被走行部の上面と直交する方向から傾斜した後も、前記押圧体と前記上面との当接状態を維持するように前記押圧体の押出量を徐々に増加させて、前記下端面の周縁部を前記上面に当接させる請求項6に記載の走行ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行ロボットに関し、より詳しくは、被走行部の走行面に磁力により吸着して走行する走行ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁等の構造物の壁面を走行する走行ロボットとして、例えば、特許文献1に開示された移動装置が知られている。この移動装置は、ベース部材の左右両側に固定された第1非変形部の前後に、変形部を介して第2非変形部がそれぞれ支持されており、各第2非変形部には、永久磁石を有する車輪を支持する懸架部材が取り付けられている。
【0003】
この移動装置によれば、変形部の変形によって、走行面の状況に応じて柔軟に対応しつつ移動することができ、例えば、オーバーハング部の水平な下面から垂直な側面を乗り越えて上面に移行可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の走行ロボットは、被走行部の下面から上面に向けて走行する際に、スムーズに移行できないおそれがあった。
図9は、従来の走行ロボット100の一例を示す側面図であり、前輪20および後輪30をそれぞれ支持する本体前部11および本体後部12が、回動軸13により互いに回動可能に連結されている。
【0006】
この走行ロボット100が、水平な平板状の被走行部90を下面91から上面92に向けて矢示A方向に走行する際に、前輪20および後輪30が上面92および下面91にそれぞれ吸着した状態になると、後輪30の駆動による矢示B方向の移動によって、走行ロボット100には矢示C方向のモーメントが作用する。一方、本体前部11および本体後部12には、前輪20および後輪30の回転に伴い矢示D1方向および矢示D2方向の反トルクが作用すると共に、自重による矢示D3方向の力が作用するため、走行ロボット100には、これらの合力として、矢示C方向とは逆方向である矢示E方向のモーメントが作用する。このため、矢示E方向のモーメントが矢示C方向のモーメントよりも大きくなる条件においては、走行ロボット100が走行不能になるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、被走行部の下面から上面に向けて確実に吸着走行することができる走行ロボットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の前記目的は、水平に配置された磁性を有する平板状の被走行部を下面から上面に向けて走行可能な走行ロボットであって、走行方向の前後にそれぞれ配置されて互いに回動自在に連結された本体前部および本体後部を有する装置本体と、前記本体前部および本体後部にそれぞれ支持されて、前記被走行部に磁力により吸着する前輪および後輪と、前記前輪および後輪をそれぞれ駆動する前輪駆動装置および後輪駆動装置と、前記本体前部に回動自在に支持されて押圧体を進退させる押出装置と、前記前輪駆動装置、後輪駆動装置および押出装置の作動を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記前輪および後輪が前記被走行部の下面から上面に向けた前進中にそれぞれ上面および下面に吸着した状態で、前記押出装置を作動させることにより、前記押圧体を前記被走行部の上面に当接した状態から押し出して前記本体後部を引き上げる走行ロボットにより達成される。
【0009】
この走行ロボットにおいて、前記制御装置は、前記前輪および後輪がそれぞれ前記被走行部の上面および下面に吸着した状態での走行不能を検出すると、前記前輪の前進を維持しつつ前記後輪を後進させて、前記装置本体を前記被走行部の端部に接近させることが好ましい。この場合、前記装置本体が前記被走行部の端部に接近したことを検知する端部検知センサを更に備えることが好ましく、前記制御装置は、前記端部検知センサの検出に基づいて前記押出装置を作動させることができる。
【0010】
前記制御装置は、前記押出装置の作動により前記本体後部を引き上げた後、前記後輪を前進させながら、前記前輪を一旦後進させた後に前進させることが好ましい。
【0011】
前記押出装置を前記本体前部に対して回動させる回動装置を更に備えることが好ましく、前記制御装置は、前記押圧体が前記被走行部の上面と直交する方向に押し出されるように前記回動装置を作動させることが好ましい。
【0012】
前記押圧体は、前記被走行部に当接する転動部材を備えることが好ましい。前記転動部材は、前記押圧体の下端面の中央から突出するように設けられていることが好ましく、前記制御装置は、前記本体後部を引き上げる際に、前記押圧体の押出方向が前記被走行部の上面と直交する方向から傾斜した後も、前記押圧体と前記上面との当接状態を維持するように前記押圧体の押出量を徐々に増加させて、前記下端面の周縁部を前記上面に当接させることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被走行部の下面から上面に向けて確実に吸着走行することができる走行ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る走行ロボットの斜視図である。
【
図5】
図1に示す走行ロボットの作動工程図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る走行ロボットの作動工程図である。
【
図7】
図6に示す走行ロボットの要部拡大図である。
【
図9】従来の走行ロボットの作動を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る走行ロボットの斜視図である。また、
図2から
図4は、それぞれ
図1に示する走行ロボットの正面図、底面図、側面図である。
図1から
図4に示すように、走行ロボット1は、装置本体10、前輪20、後輪30、押出装置40、回動装置50および制御装置60を、主な構成要素として備えている。
【0016】
装置本体10は、走行方向の前後にそれぞれ配置された本体前部11および本体後部12を備えている。本体前部11および本体後部12は、矩形平板状に形成されており、縁部同士が回動軸13により回動自在に連結されて、走行方向に沿って屈曲可能に構成されている。
【0017】
前輪20は、環状の永久磁石からなる車輪本体21と、強磁性材料からなり外周面がギヤ状に形成された一対のリング部材22,22とを備えており、車輪本体21が一対のリング部材22,22により挟持されて構成されている。前輪20は、本体前部11の下面に固定されたコ字状のブラケット23に回転軸24を介して支持されており、サーボモータ等の前輪駆動装置25により回転駆動されることで、磁性を有する被走行部を吸着走行する。リング部材22,22の外周面の形状は、必ずしもギヤ状である必要はなく、例えば、円形状等であってもよい。
【0018】
後輪30は、前輪20と同様に、車輪本体31が一対のリング部材32,32により挟持されて構成されており、本体後部12の下面に固定されたブラケット33に回転軸34を介して支持されてサーボモータ等の後輪駆動装置35により回転駆動されることで、磁性を有する被走行部を吸着走行する。
【0019】
前輪20および後輪30は、本体前部11および本体後部12における左右両側の2か所にそれぞれ設けられており、個別に設けられた前輪駆動装置25および後輪駆動装置35によって独立に駆動することができる。前輪20および後輪30の個数は特に制限されるものではなく、それぞれ3つ以上設けてもよい。あるいは、走行方向が一方向のみの場合には、前輪20および後輪30がそれぞれ単一であってもよい。
【0020】
押出装置40は、
図2に一部を切り欠いて示すように、筐体41と、筐体41の内部に収容された昇降板42と、昇降板42に設けられたナット42aが螺合する台形ねじ軸などの送りねじ43と、昇降板42から筐体41の底壁開口を介して下方に突出する押圧体44と、押圧体44を進退させるサーボモータ等のモータ45とを備えている。モータ45は、本実施形態においては筐体41の前方側に設けているが、筐体41の後方側に設けてもよく、これによって、例えば走行ロボット1が水平面から垂直面に移行する際に、モータ45が垂直面に干渉して移行の妨げになるのを確実に防止することができる。
【0021】
筐体41は、本体前部11の中央に形成された切欠部に収容されて、左右の前輪20,20の間に配置されており、回動軸51により本体前部11に回動自在に支持されている。昇降板42は、帯板状に形成されており、中央に設けられたナット42aを送りねじ43が貫通している。送りねじ43は、上端部に従動ギヤ43aを備えており、下端側が筐体41の下部に設けられた軸受43bに支持されている。従動ギヤ43aは、モータ45の出力軸に設けられた駆動ギヤ45aに噛合しており、モータ45の駆動により昇降板42が昇降することで、昇降板42に支持された押圧体44を進退させることができる。押圧体44を進退させる機構は、クランク機構やラック・ピニオン機構等のように回転運動を直線運動に変換する他の公知の機構であってもよく、あるいは、油圧シリンダ等を用いることもできる。
【0022】
押圧体44は、棒状に形成されており、上端が昇降板42の下面に固定されている。押圧体44の下部には、下端面から一部が突出するように回転自在に収容された球状の転動部材44aを備えている。押圧体44は、本実施形態では左右に2つ設けられており、昇降板42の昇降により一体的に進退するように構成されている。但し、押圧体44の数は特に限定されず、単一あるいは3つ以上でもよい。
【0023】
回動装置50は、サーボモータ等からなり、出力軸に設けられた駆動ギヤ50aが、押出装置40を支持する回動軸51の従動ギヤ51aに噛合することで、押出装置40を本体前部11に対して回動させることができる。
【0024】
制御装置60は、前輪駆動装置25、後輪駆動装置35、押出装置40および回動装置50の駆動を制御する。制御装置60は、
図4に破線で示すように、本体後部12の上面に配置することができる。なお、
図4以外の図面においては、制御装置の図示を省略している。装置本体10の上面には、制御装置60以外に、例えば、橋梁、塔、タンク等の構造物の腐食の有無を検査する検査装置を搭載することができる。
【0025】
上記の構成を備える走行ロボット1は、磁性を有する構造物の壁面に前輪20および後輪30が吸着することにより、構造物の上面だけでなく、側面や下面も走行することができる。また、走行中に障害物等が存在する場合には、押出装置40の作動により押圧体44を進出させて走行面を押圧することにより、前輪20が障害物を容易に乗り越えることができる。
【0026】
装置本体10は、本体前部11および本体後部12が互いに回動自在に連結されているため、例えば、走行ロボット1が水平面から垂直面に向けて走行する場合においても、確実に移行させることができる。但し、橋梁のフランジ等のように水平に配置された平板状の被走行部を下面から上面に向けて走行する際には、上述したように走行不能になるおそれがあるため、下記の駆動制御が行われる。
【0027】
図5(a)に示すように、水平平板状の被走行部90の下面91から上面92に向けて走行ロボット1が前進中に、前輪20および後輪30がそれぞれ上面92および下面91に吸着した状態で、走行ロボット1が走行不能になると、制御装置は、走行不能状態の検出に基づき回動装置50(
図1等参照)を作動させて、押出装置40を矢示方向に回動させることにより、
図5(b)に示すように、押圧体44が鉛直方向に進退可能となるように押出装置40を起立させる。走行不能状態の検出は、例えば、前輪20および後輪30を駆動する前輪駆動装置25および前輪駆動装置35の過負荷を電流値等により検知して行うことができる。あるいは、本体前部11および本体後部12にジャイロセンサ等の姿勢センサを別途設けて、本体前部11および本体後部12が所定の姿勢になった状態を走行不能状態とみなして検出してもよい。押出装置40は、走行中に被走行部90と干渉しないように回動可能であれば、回動装置50を設けずに自重で回動する構成であってもよい。
【0028】
図5(b)において、前輪20および後輪30をそれぞれ矢示方向に回転させると、前輪20は前進方向Fに移動する一方、後輪30は後進方向Rに移動する。これにより、
図5(c)に示すように、押圧体44の転動部材44aが上面92に沿って転動し、被走行部90の端部93に装置本体10が所定距離まで接近する。押圧体44が上面92に沿ってスムーズに移動するように、押圧体44の先端には本実施形態のように転動部材44aを備えることが好ましいが、転動部材44aを設けずに、押圧体44の先端が上面92を低摩擦抵抗で摺動するように構成してもよい。
【0029】
図5(c)に示す装置本体10と端部93との接近状態は、例えば、走行不能状態からの前輪20または後輪30の移動距離を、前輪駆動装置25または後輪駆動装置35が備えるエンコーダの検出値に基づいて計測し、この移動距離に基づいて検出することができる。あるいは、端部93との接近を検知する圧力センサ、光センサ、磁気センサ、近接センサ等の端部検知センサを装置本体10に別途設けて、接近状態を検出してもよい。
【0030】
図5(c)において、押出装置40の押圧体44を、上面92に当接した状態から矢示方向に押し出すと、本体後部12が矢示のように引き上げられて、
図5(d)に示すように、前輪20および後輪30が僅かに前進する。
図5(d)において、前輪20および後輪30をそれぞれ矢示方向に回転させて、前輪20および後輪30を後進方向Rおよび前進方向Fにそれぞれ所定距離移動すると、
図5(e)に示すように、前輪20および後輪30が端部93の近傍に配置される。押出装置40による押圧体44の押出方向は、上面92と直交する方向が好ましいが、必ずしもこの方向に限定されるものではなく、例えば、上面92との直交方向に対して若干傾斜させて、押圧体44をやや後方に押し出してもよい。走行ロボット1が、
図5(d)の状態から
図5(e)の状態に移動する過程では、本実施形態では押圧体44の押出量を一定に維持しているが、走行ロボット1の移動と共に押圧体44の押出量を徐々に増加させるように制御してもよい。
【0031】
図5(e)に示す状態から、後輪30の前進方向Fへの移動を維持しつつ、前輪20を矢示方向に回転させて前進方向Fに移動させると、
図5(f)に示すように、後輪30が端部93を経て上方に引き上げられる。こうして、前輪20および後輪30を上面92に沿って前進させることが可能になる。
【0032】
本実施形態の走行ロボット1は、
図5(c)に示すように、前輪20および後輪30が被走行部90の下面91から上面92に向けた前進中にそれぞれ上面92および下面91に吸着した状態で、制御装置60が押出装置40を作動させることにより、押圧体44を上面92に当接した状態から押し出して、
図5(d)に示すように本体後部12を引き上げることができる。本体後部12の引き上げによって、後輪30の前進により走行ロボット1に作用する前進方向のモーメント(
図9に示す矢示C方向のモーメント)を増大させることができるので、走行ロボット1を下面91から上面92に向けて確実に吸着走行させることが可能になる。本体後部12の引上量は必ずしも限定されないが、
図5(d)に示すように、平板状の本体後部12の法線Nが、下面91に対して前進方向Fに向けて若干上方に傾斜する位置まで、本体後部12を引き上げることが好ましい。
【0033】
また、押出装置40の作動は、
図5(b)に示すように、前輪20の前進を維持しつつ後輪30を後進させて、装置本体10を被走行部90の端部93に接近させてから行われるため、押圧体44を上面92に確実に当接させることができる。
【0034】
また、押出装置40の作動により本体後部12を引き上げた後、
図5(d)および(e)に示すように、後輪30を前進させながら、前輪20を一旦後進させた後に前進させることにより、本体後部12をスムーズに引き上げることができる。
【0035】
本実施形態においては、
図5(e)の状態から
図5(f)の状態に移動する過程で、押圧体44の押出量を一定に維持しているが、この間に押圧体44の押出量を増加させてもよい。すなわち、本体後部12を引き上げる際に、
図6(a)に示すように押圧体44の押出方向が上面92と直交する状態から、走行ロボット1を矢示F方向に移動させながら押圧体44の押出量を徐々に増加することで、
図6(b)に示すように、押圧体44の押出方向が上面92と直交する方向から傾斜した後も、押圧体44と上面92との当接状態を維持するように制御してもよい。押圧体44による上面92の押圧は、例えば、平板状の本体後部12の法線Nと水平方向とのなす角度θが15度以上になるまで継続することが好ましい。
【0036】
図7に示すように、転動部材44aは、押圧体44の下端面44bの中央から突出するように設けられており、押圧体44が傾斜すると、下端面44bの周縁部が上面92に当接する。したがって、押圧体44が傾斜した後も上面92の押圧を確実に継続することができ、これによって本体後部12の引き上げを容易にすることができる。
図8に示すように、押圧体44の下端面44bの周縁部には、ゴム材等の摩擦係数の大きい材料からなるストッパ44cを設けてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 走行ロボット
10 装置本体
11 本体前部
12 本体後部
13 回動軸
20 前輪
25 前輪駆動装置
30 後輪
35 後輪駆動装置
40 押出装置
44 押圧体
44a 転動部材
50 回動装置
60 制御装置
90 被走行部
91 下面
92 上面
93 端部