(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022141659
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】検出装置、撮像素子および撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/34 20210101AFI20220921BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20220921BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20220921BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
G02B7/34
G03B13/36
H04N5/225 300
H04N5/232 120
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100500
(22)【出願日】2022-06-22
(62)【分割の表示】P 2019041731の分割
【原出願日】2013-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2013114846
(32)【優先日】2013-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高原 宏明
(57)【要約】
【課題】光学系の焦点検出を適切に行うことができる検出装置を提供する。
【解決手段】第1方向に配置された複数の合焦検出画素からなる検出部を、前記第1方向と交わる第2方向に複数有し、光学系により形成された像を撮像し信号を出力する撮像素子と、1つの前記検出部からの信号に応じて、前記光学系による像の位置と前記撮像素子とのずれ量を1つの前記検出部から出力された第1信号を用いて算出する第1演算と、前記ずれ量を複数の前記検出部から出力された第2信号を用いて算出する第2演算とのいずれかを行う算出部と、を有する検出装置。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に配置された複数の合焦検出画素からなる検出部を、前記第1方向と交わる第2方向に複数有し、光学系により形成された像を撮像し信号を出力する撮像素子と、
1つの前記検出部からの信号に応じて、前記光学系による像の位置と前記撮像素子とのずれ量を1つの前記検出部から出力された第1信号を用いて算出する第1演算と、前記ずれ量を複数の前記検出部から出力された第2信号を用いて算出する第2演算とのいずれかを行う算出部と、
を有する検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置、撮像素子および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、撮像のための撮像画素と位相差検出方式による焦点検出を行うための焦点検出用画素とを有する撮像素子が知られている(たとえば、特許文献1参照)。しかしながら、この特許文献1の技術では、瞳分割された一方の光束を受光する第1焦点検出用画素と、瞳分割された他方の光束を受光する第2焦点検出用画素とを、横方向に沿って、交互に配置するものであるため、第1焦点検出用画素からの出力と、第2焦点検出用画素からの出力とが、0.5画素分ずれたものとなり、そのため、光学系の焦点検出を高精度に行うことができない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、光学系の焦点検出を適切に行うことができる検出装置、撮像素子および撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の解決手段によって上記課題を解決する。
【0006】
[1]本発明に係る検出装置は第1方向に配置された複数の合焦検出画素からなる検出部を、前記第1方向と交わる第2方向に複数有し、光学系により形成された像を撮像し信号を出力する撮像素子と、1つの前記検出部からの信号に応じて、前記光学系による像の位置と前記撮像素子とのずれ量を1つの前記検出部から出力された第1信号を用いて算出する第1演算と、前記ずれ量を複数の前記検出部から出力された第2信号を用いて算出する第2演算とのいずれかを行う算出部と、を有する。
[2]上記検出装置に係る発明において、前記算出部は、前記第1信号の大きさとコントラストとのいずれかに応じて、前記第1演算と前記第2演算とのいずれかを行うように構成することができる。
[3]上記検出装置に係る発明において、前記第1演算を行う場合の前記第1信号の大きさは、前記第2演算をおこなう場合の前記第1信号の大きさよりも大きくなるよう構成できる。
[4]上記検出装置に係る発明において、前記算出部で前記第1演算を行う場合の前記第1信号のコントラスト値は、前記第2演算をおこなう場合の前記第1信号のコントラスト値よりも高くなるよう構成できる。
[5]上記検出装置に係る発明において、前記第2信号は、複数の前記検出部から出力された信号を加算した信号であるよう構成できる。
[6]上記検出装置に係る発明において、前記算出部で行う前記第2演算は、前記第2信号に応じて、前記第2信号を用いた前記ずれ量を算出と、前記第2信号に前記検出部から出力された信号を加算した第3信号を用いた前記ずれ量を算出とのいずれかを行うよう構成できる。
[7]上記検出装置に係る発明において、前記算出部は、前記第2信号の大きさと出力信号のコントラストとのいずれかに応じて、前記第2信号を用いた前記ずれ量を算出と、前記第3信号を用いた前記ずれ量を算出とのいずれかを行うよう構成できる。
[8]上記検出装置に係る発明において、前記撮像素子が有する前記検出部には、前記光学系の第1の領域を通過した光を受光する第1画素と、前記光学系の前記第1の領域とは異なる第2の領域を通過した光を受光する第2画素とが、前記第1方向に交互に配置されているよう構成できる。
[9]上記検出装置に係る発明において、前記撮像素子には、前記第1画素と前記第2画素とが前記第2方向に交互に配置されているよう構成できる。
[10]上記検出装置に係る発明において、前記算出部で行う前記第2演算は、前記第2演算で用いる前記検出部の前記第2方向における前記第1画素の数と前記第2画素の数との比に応じて決定された係数を、前記第2演算で用いる前記検出部から出力された前記信号にそれぞれ乗じてから加算した信号を用いて前記ずれ量を算出するよう構成できる。
[11]本発明に係る検出装置は、被写体の像を形成する光学系の第1の領域を通過した光を受光する複数の第1画素と、前記光学系の前記第1の領域とは異なる第2の領域を通過した光を受光する複数の第2画素とを有する撮像素子と、第1方向に配置された複数の第1画素からなる第1画素列から出力された第1信号と、前記第1方向に配置された複数の第2画素からなる第2画素列から出力された第2信号と、の信号に応じて、前記第1信号と前記第2信号とから前記光学系による像の位置と前記撮像素子の撮像面とのずれ量に関する値を算出する第1演算と、前記第1方向と交わる第2方向に前記第1画素列とは異なる位置に配置され、前記第1方向に配置された複数の第1画素からなる第3画素列で生成される第3信号と、前記第2方向に前記第2画素列とは異なる位置に配置され、前記第1方向に配置された複数の第2画素からなる第4画素列で生成される第4信号前とを、それぞれ、前記第1信号及び前記第2信号に加算して生成した第5信号及び第6信号とから前記ずれ量に関する値を算出する第2演算とのいずれかを行う算出部と、を有する。
[12]本発明に係る撮像装置は、上記検出装置を有する。
[13]本発明に係る撮像素子は、被写体の像を形成する光学系の第1の領域を通過した光を受光する複数の第1画素と、前記光学系の前記第1の領域とは異なる第2の領域を通過した光を受光する複数の第2画素と、第1方向に配置された複数の前記第1画素からなる第1画素列で生成される第1信号、前記第1方向に配置された複数の前記第2画素からなる第2画素列で生成される第2信号、前記第1方向と交わる第2方向に前記第1画素列とは異なる位置に配置され、前記第1方向に配置された複数の第1画素からなる第3画素列で生成される第3信号、前記第2方向に前記第2画素列とは異なる位置に配置され、前記第1方向に配置された複数の第2画素からなる第4画素列で生成される第4信号、前記第1信号を構成する複数の信号と前記第3信号を構成する複数の信号とを前記第2方向に加算して生成した第5信号及び前記第2信号を構成する複数の信号と前記第4信号を構成する複数の信号とを前記第2方向に加算して生成した第6信号を出力する出力部と、を有する。
[14]本発明に係る撮像装置は、上記撮像素子を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光学系の焦点検出を適切に行うことができる撮像素子および該撮像素子を備える撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るカメラを示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す撮像素子の撮像面を示す正面図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII部を拡大して撮像画素221、焦点検出画素222a,222bの配列を模式的に示す正面図である。
【
図4】
図4(A)は、撮像画素221の一つを拡大して示す正面図、
図4(B)は、第1焦点検出画素222aの一つを拡大して示す正面図、
図4(C)は、第2焦点検出画素222bの一つを拡大して示す正面図、
図4(D)は、撮像画素221の一つを拡大して示す断面図、
図4(E)は、第1焦点検出画素222aの一つを拡大して示す断面図、
図4(F)は、第2焦点検出画素222bの一つを拡大して示す断面図である。
【
図5】
図5は、焦点検出画素222a,222bの配列を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、本実施形態における相関量とシフト量との関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、従来技術における相関量とシフト量との関係を示すグラフである。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係るカメラの動作を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る撮像素子22aの構成を模式的に示す正面図である。
【
図11】
図11は、焦点検出画素222a,222bの配列を模式的に示す図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係るカメラの動作を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、第3実施形態に係るカメラの動作を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、第4実施形態に係る撮像素子22aの構成を模式的に示す正面図である。
【
図15】
図15は、焦点検出画素222a,222bの配列を模式的に示す図である。
【
図16】
図16は、第4実施形態に係るカメラの動作を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、第5実施形態に係るカメラの動作を示すフローチャートである。
【
図18】
図18は、別の実施形態に係る撮像素子22cの構成を模式的に示す正面図である。
【
図19】
図19は、さらに別の実施形態に係る撮像素子22dの構成を模式的に示す正面図である。
【
図20】
図20は、さらに別の実施形態に係る撮像素子22eの構成を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
《第1実施形態》
図1は、本発明の実施形態に係るデジタルカメラ1を示す要部構成図である。本実施形態のデジタルカメラ1(以下、単にカメラ1という。)は、カメラ本体2とレンズ鏡筒3から構成され、これらカメラ本体2とレンズ鏡筒3はマウント部4により着脱可能に結合されている。
【0011】
レンズ鏡筒3は、カメラ本体2に着脱可能な交換レンズである。
図1に示すように、レンズ鏡筒3には、レンズ31,32,33、および絞り34を含む撮影光学系が内蔵されている。
【0012】
レンズ32は、フォーカスレンズであり、光軸L1方向に移動することで、撮影光学系の焦点状態を調節可能となっている。フォーカスレンズ32は、レンズ鏡筒3の光軸L1に沿って移動可能に設けられ、エンコーダ35によってその位置が検出されつつフォーカスレンズ駆動モータ36によってその位置が調節される。
【0013】
絞り34は、上記撮影光学系を通過して撮像素子22に至る光束の光量を制限するとともにボケ量を調整するために、光軸L1を中心にした開口径が調節可能に構成されている。絞り34による開口径の調節は、たとえば自動露出モードにおいて演算された適切な開口径が、カメラ制御部21からレンズ制御部37を介して送出されることにより行われる。また、カメラ本体2に設けられた操作部28によるマニュアル操作により、設定された開口径がカメラ制御部21からレンズ制御部37に入力される。絞り34の開口径は図示しない絞り開口センサにより検出され、レンズ制御部37で現在の開口径が認識される。
【0014】
レンズ制御部37は、カメラ制御部21からの指令に基づいて、フォーカスレンズ32の駆動、絞り34による開口径の調節などレンズ鏡筒3全体の制御を実行する。
【0015】
一方、カメラ本体2には、上記撮影光学系からの光束L1を受光する撮像素子22が、撮影光学系の予定焦点面に設けられ、その前面にシャッター23が設けられている。撮像素子22はCCDやCMOSなどのデバイスから構成され、受光した光信号を電気信号に変換してカメラ制御部21に送出する。カメラ制御部21に送出された撮影画像情報は、逐次、液晶駆動回路25に送出されて観察光学系の電子ビューファインダ(EVF)26に表示されるとともに、操作部28に備えられたレリーズボタン(不図示)が全押しされた場合には、その撮影画像情報が、記録媒体であるカメラメモリ24に記録される。なお、カメラメモリ24は着脱可能なカード型メモリや内蔵型メモリの何れをも用いることができる。撮像素子22の構造の詳細は後述する。
【0016】
カメラ本体2には、撮像素子22で撮像される像を観察するための観察光学系が設けられている。本実施形態の観察光学系は、液晶表示素子からなる電子ビューファインダ(EVF)26と、これを駆動する液晶駆動回路25と、接眼レンズ27とを備えている。液晶駆動回路25は、撮像素子22で撮像され、カメラ制御部21へ送出された撮影画像情報を読み込み、これに基づいて電子ビューファインダ26を駆動する。これにより、ユーザは、接眼レンズ27を通して現在の撮影画像を観察することができる。なお、光軸L2による上記観察光学系に代えて、または、これに加えて、液晶ディスプレイをカメラ本体2の背面等に設け、この液晶ディスプレイに撮影画像を表示させることもできる。
【0017】
カメラ本体2にはカメラ制御部21が設けられている。カメラ制御部21は、各種レンズ情報を受信するとともに、レンズ制御部37へデフォーカス量や絞り開口径などの情報を送信する。また、カメラ制御部21は、上述したように撮像素子22から画素出力を読み出すとともに、読み出した画素出力について、必要に応じて所定の情報処理を施すことにより画像情報を生成し、生成した画像情報を、電子ビューファインダ26の液晶駆動回路25やメモリ24に出力する。また、カメラ制御部21は、撮像素子22からの画像情報の補正やレンズ鏡筒3の焦点調節状態、絞り調節状態などを検出するなど、カメラ1全体の制御を司る。
【0018】
また、カメラ制御部21は、上記に加えて、撮像素子22から読み出した画素データに基づき、位相検出方式による撮影光学系の焦点状態の検出、およびコントラスト検出方式による撮影光学系の焦点状態の検出を行う。なお、具体的な焦点状態の検出方法については、後述する。
【0019】
操作部28は、シャッターレリーズボタンなどの撮影者がカメラ1の各種動作モードを設定するための入力スイッチであり、オートフォーカスモード/マニュアルフォーカスモードの切換が行えるようになっている。この操作部28により設定された各種モードはカメラ制御部21へ送出され、当該カメラ制御部21によりカメラ1全体の動作が制御される。また、シャッターレリーズボタンは、ボタンの半押しでONとなる第1スイッチSW1と、ボタンの全押しでONとなる第2スイッチSW2とを含む。
【0020】
次に、本実施形態に係る撮像素子22について説明する。
【0021】
図2は、撮像素子22の撮像面を示す正面図、
図3は、
図2のIII部を拡大して撮像画素221、焦点検出画素222a,222bの配列を模式的に示す正面図である。
【0022】
本実施形態の撮像素子22は、
図3に示すように、複数の撮像画素221が、撮像面の平面上に二次元的に配列され、緑色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する緑画素Gと、赤色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する赤画素Rと、青色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する青画素Bがいわゆるベイヤー配列(Bayer Arrangement)されたものである。すなわち、隣接する4つの画素群223(稠密正方格子配列)において一方の対角線上に2つの緑画素が配列され、他方の対角線上に赤画素と青画素が1つずつ配列されている。このベイヤー配列された画素群223を単位として、当該画素群223を撮像素子22の撮像面に二次元状に繰り返し配列することで撮像素子22が構成されている。なお、本実施形態においては、この4つの画素群223により、1画素を構成することとなる。
【0023】
なお、単位画素群223の配列は、図示する稠密正方格子以外にも、たとえば稠密六方格子配列にすることもできる。また、カラーフィルタの構成や配列はこれに限定されることはなく、補色フィルタ(緑:G、イエロー:Ye、マゼンタ:Mg,シアン:Cy)の配列を採用することもできる。
【0024】
図4(A)は、撮像画素221の一つを拡大して示す正面図、
図4(D)は断面図である。一つの撮像画素221は、マイクロレンズ2211と、光電変換部2212と、図示しないカラーフィルタから構成され、
図4(D)の断面図に示すように、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2212が造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2211が形成されている。光電変換部2212は、マイクロレンズ2211により撮影光学系31の射出瞳(たとえばF1.0)を通過する撮像光束を受光する形状とされ、撮像光束を受光する。
【0025】
また、撮像素子22の撮像面の中心、および中心から左右対称位置の3箇所には、上述した撮像画素221に代えて焦点検出画素222a,222bが配列された焦点検出画素列群22a,22b,22cが設けられている。そして、
図3に示すように、一つの焦点検出画素列群は、2つの焦点検出画素列、すなわち、第1焦点検出画素列L1および第2焦点検出画素列L2から構成され、各焦点検出画素列L1,L2は、複数の第1焦点検出画素222aおよび第2焦点検出画素222bが、互いに隣接して交互に、横一列に配列されて構成されている。本実施形態においては、
図3に示すように、第1焦点検出画素222aおよび第2焦点検出画素222bは、ベイヤー配列された撮像画素221の緑画素Gと青画素Bとの位置にギャップを設けることなく密に配列されている。
【0026】
なお、
図2に示す焦点検出画素列群22a~22cの位置は図示する位置にのみ限定されず、何れか一箇所、または二箇所等にすることもでき、また、四箇所以上の位置に配置することもできる。また、実際の焦点検出に際しては、複数配置された焦点検出画素列群22a~22cの中から、ユーザが操作部28を手動操作することにより所望の焦点検出画素列を、焦点検出位置として選択することもできる。
【0027】
図4(B)は、第1焦点検出画素222aの一つを拡大して示す正面図、
図4(E)は、第1焦点検出画素222aの断面図である。また、
図4(C)は、第2焦点検出画素222bの一つを拡大して示す正面図、
図4(F)は、第2焦点検出画素222bの断面図である。第1焦点検出画素222aは、
図4(B)に示すように、マイクロレンズ2221aと、矩形状の光電変換部2222aとから構成され、
図4(E)の断面図に示すように、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2222aが造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2221aが形成されている。また、第2焦点検出画素222bは、
図4(C)に示すように、マイクロレンズ2221bと、光電変換部2222bとから構成され、
図4(F)の断面図に示すように、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2222bが造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2221bが形成されている。そして、これら焦点検出画素222aおよび222bは、
図3に示すように、互いに隣接して交互に、横一列に配列されることにより、各焦点検出画素列L1,L2を構成する。
【0028】
なお、第1焦点検出画素222a、第2焦点検出画素222bの光電変換部2222a,2222bは、マイクロレンズ2221a,2221bにより撮影光学系の射出瞳の所定の領域(たとえばF2.8)を通過する光束を受光するような形状とされる。また、第1焦点検出画素222a、第2焦点検出画素222bにはカラーフィルタは設けられておらず、その分光特性は、光電変換を行うフォトダイオードの分光特性と、図示しない赤外カットフィルタの分光特性を総合したものとなっている。ただし、撮像画素221と同じカラーフィルタのうちの一つ、たとえば緑フィルタを備えるように構成することもできる。
【0029】
また、
図4(B)、
図4(C)に示す第1焦点検出画素222a、第2焦点検出画素222bの光電変換部2222a,2222bは矩形状としたが、光電変換部2222a,2222bの形状はこれに限定されず、他の形状、たとえば、半円形状、楕円形状、多角形状とすることもできる。
【0030】
図3に戻り、本実施形態の撮像素子22は、上述したように、2つの焦点検出画素列L1,L2を備えるものである。ここで、
図5は、
図3に示す撮像素子22の撮像面から撮像画素221を除き、2つの焦点検出画素列L1,L2を構成する第1焦点検出画素222aおよび第2焦点検出画素222bのみを模式的に示した図である。
図5に示すように、2つの焦点検出画素列L1,L2のうち、第1焦点検出画素列L1は、X軸方向(行方向)に沿って、第1焦点検出画素222a、第2焦点検出画素222bが、第1焦点検出画素222a、第2焦点検出画素222bの順に、交互に配列されることにより構成されている。これに対し、第2焦点検出画素列L2は、第1焦点検出画素列L1と同様に、第1焦点検出画素222a、第2焦点検出画素222bが交互に配列されることにより構成されたものであるが、第1焦点検出画素222a、第2焦点検出画素222bの配列順が、第1焦点検出画素列L1と異なるものとなっている。
【0031】
すなわち、
図5に示すように、X軸方向(行方向)に見た場合に、第1焦点検出画素列L1では、第1焦点検出画素222aが位置している場所に、第2焦点検出画素列L2では、第2焦点検出画素222bが位置しており、さらに、第1焦点検出画素列L1では、第2焦点検出画素222bが位置している場所に、第1焦点検出画素222aが位置しているような構成となっている。
【0032】
次いで、上述した焦点検出画素222a,222bの画素出力に基づいて撮影光学系の焦点状態を検出する、いわゆる位相差検出方式について説明する。
【0033】
図6は、
図3のVI-VI線に沿う断面図であり、撮影光軸L1近傍に配置され、互いに隣接する焦点検出画素222a-1,222b-1,222a-2,222b-2が、射出瞳350の測距瞳351,352から照射される光束AB1-1,AB2-1,AB1-2,AB2-2をそれぞれ受光していることを示している。なお、
図6においては、複数の焦点検出画素222a,222bのうち、撮影光軸L1近傍に位置するもののみを例示して示したが、
図6に示す焦点検出画素以外のその他の焦点検出画素についても、同様に、一対の測距瞳351,352から照射される光束をそれぞれ受光するように構成されている。
【0034】
ここで、射出瞳350とは、撮影光学系の予定焦点面に配置された焦点検出画素222a,222bのマイクロレンズ2221a,2221bの前方の距離Dの位置に設定された像である。距離Dは、マイクロレンズの曲率、屈折率、マイクロレンズと光電変換部との距離などに応じて一義的に決まる値であって、この距離Dを測距瞳距離と称する。また、測距瞳351,352とは、焦点検出画素222a,222bのマイクロレンズ2221a,2221bにより、それぞれ投影された光電変換部2222a,2222bの像をいう。
【0035】
なお、
図6において焦点検出画素222a-1,222b-1,222a-2,222b-2の配列方向は一対の測距瞳351,352の並び方向と一致している。
【0036】
また、
図6に示すように、焦点検出画素222a-1,222b-1,222a-2,222b-2のマイクロレンズ2221a-1,2221b-1,2221a-2,2221b-2は、撮影光学系の予定焦点面近傍に配置されている。そして、マイクロレンズ2221a-1,2221b-1,2221a-2,2221b-2の背後に配置された各光電変換部2222a-1,2222b-1,2222a-2,2222b-2の形状が、各マイクロレンズ2221a-1,2221b-1,2221a-2,2221b-2から測距距離Dだけ離れた射出瞳350上に投影され、その投影形状は測距瞳351,352を形成する。
【0037】
すなわち、測距距離Dにある射出瞳350上で、各焦点検出画素の光電変換部の投影形状(測距瞳351,352)が一致するように、各焦点検出画素におけるマイクロレンズと光電変換部の相対的位置関係が定められ、それにより各焦点検出画素における光電変換部の投影方向が決定されている。
【0038】
図6に示すように、焦点検出画素222a-1の光電変換部2222a-1は、測距瞳351を通過し、マイクロレンズ2221a-1に向う光束AB1-1によりマイクロレンズ2221a-1上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。同様に、焦点検出画素222a-2の光電変換部2222a-2は測距瞳351を通過し、マイクロレンズ2221a-2に向う光束AB1-2によりマイクロレンズ2221a-2上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。
【0039】
また、焦点検出画素222b-1の光電変換部2222b-1は測距瞳352を通過し、マイクロレンズ2221b-1に向う光束AB2-1によりマイクロレンズ2221b-1上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。同様に、焦点検出画素222b-2の光電変換部2222b-2は測距瞳352を通過し、マイクロレンズ2221b-2に向う光束AB2-2によりマイクロレンズ2221b-2上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。
【0040】
そして、上述した第1焦点検出画素222a、第2焦点検出画素222bの光電変換部2222a,2222bの出力を、測距瞳351と測距瞳352とのそれぞれに対応した出力グループにまとめることにより、測距瞳351と測距瞳352とのそれぞれを通過する焦点検出光束が焦点検出画素列上に形成する一対の像の強度分布に関するデータを得る。
【0041】
ここで、本実施形態においては、このような出力データを得るに際し、第1焦点検出画素列L1の出力データと、第2焦点検出画素列L2の出力データを加算し、これにより得られた画素加算出力データを得る。具体的には、
図5に示す第1焦点検出画素列L1の画素A1
L1の出力と、第2焦点検出画素列L2を構成する画素のうち、これと同じ測距瞳を通過する焦点検出光束を受光した画素A1
L2の出力とを加算し、画素加算出力I
A1を得る。同様に、第1焦点検出画素列L1の画素B1
L1の出力と、第2焦点検出画素列L2を構成する画素のうち、これと同じ測距瞳を通過する焦点検出光束を受光した画素B1
L2の出力とを加算し、画素加算出力I
B1を得る。以下、同様に、A2
L1とA2
L2の出力からI
A2、B2
L1とB2
L2の出力からI
B2、A3
L1とA3
L2の出力からI
A3、B3
L1とB3
L2の出力からI
B3を得る。
【0042】
そして、得られた画素加算出力を用いて、第1焦点検出画素222aに基づくデータ列、すなわち、第1像データ列IA1,IA2,IA3,...,IAnと、第2焦点検出画素222bに基づくデータ列、すなわち、第2像データ列IB1,IB2,IB3,...,IBnとを得て、これらを一次元状に相対的にシフトさせながら、下記式(1)に示す相関演算を行う。
C(k)=Σ|IA(n+k)-IB(n)| …(1)
なお、上記式(1)において、Σ演算はnについての累積演算(相和演算)を示し、像ずらし量kに応じてIA(n+k)、IB(n)のデータが存在する範囲に限定される。また、像ずらし量kは整数であり、各焦点検出画素222a,222bの画素間隔を単位としたシフト量である。なお、上記式(1)の演算結果においては、一対の像データの相関が高いシフト量において、相関量C(k)は極小(小さいほど相関度が高い)になる。
【0043】
そして、上記式(1)に従って、相関量C(k)の算出を行い、相関量の極小値C(x)が得られるシフト量xに基づいて、下記式(2)に従い、デフォーカス量dfを算出する。なお、上記式(2)において、kは、相関量の極小値C(x)が得られるシフト量xをデフォーカス量に変換するための変換係数(kファクター)である。
df=x・k …(2)
【0044】
図7に、相関量C(k)とシフト量の関係を表すグラフを示す。なお、
図7は、合焦状態(デフォーカス量がゼロの状態)における、相関量C(k)とシフト量の関係を示している。
【0045】
一方、
図8に、従来技術(たとえば、上述した特開2012-226088号公報)の撮像素子を用いた場合における、相関量C(k)とシフト量の関係を表すグラフを示す。なお、
図8においても、
図7と同様に、合焦状態(デフォーカス量がゼロの状態)における、相関量C(k)とシフト量の関係を示している。ここで、従来技術においては、本実施形態の第1焦点検出画素列L1を構成する各焦点検出画素の出力のみを用いるものであり、そのため、次のような不具合があった。
【0046】
すなわち、従来技術においては、本実施形態の第1焦点検出画素列L1のみを用いるものであるため、第1焦点検出画素222aと、第2焦点検出画素222bは、互いに0.5画素ずれた位置に存在することとなるため、これらの焦点検出画素を用いて得られる第1像データ列I
A1,I
A2,I
A3,...,I
Anと、第2像データ列I
B1,I
B2,I
B3,...,I
Bnとは、互いに0.5画素ずれたデータとなることとなる。そのため、
図8に示すように、相関量C(k)の極小値も0.5画素分ずれた位置となってしまうことなり、このような場合には、相関量C(k)が極小値を示すシフト量およびデフォーカス量を算出するためには、内挿演算等を用いる必要があり、結果として、焦点検出精度が低下してしまう場合があった。特に、焦点検出画素で検出された出力のコントラストレベルが低い場合に、このような問題が顕著になる傾向にあった。
【0047】
これに対し、本実施形態においては、撮像素子22を、第1焦点検出画素列L1および第2焦点検出画素列L2を備えるものとし、かつ、各画素列を構成する第1焦点検出画素222aと、第2焦点検出画素222bとを0.5画素分ずらした位置に配置し、かつ、これらの画素出力を加算することにより得られる画素加算出力を用いることで、従来技術の不具合を有効に解消するものである。すなわち、本実施形態によれば、
図7に示すように、合焦状態(デフォーカス量がゼロの状態)において、相関量C(k)が極小値を与えるシフト量を正確に求めることができ、これにより、焦点検出精度を適切に高めることができるものである。特に、本実施形態によれば、焦点検出画素で検出された出力のコントラストレベルが低い場合でも、適切に、焦点検出精度を適切に高めることができるものである。加えて、本実施形態によれば、画素出力を加算することにより、出力値を高めることができ、これにより、撮影シーンが低輝度である場合でも、適切に焦点検出を行うことができる。さらには、第1焦点検出画素列L1および第2焦点検出画素列L2を備えることにより、第1焦点検出画素列L1のみを用いる場合と比較して、焦点検出可能なエリアを広くとることができるため、非検出となってしまう可能性を低くすることもできる。
【0048】
なお、本実施形態においては、
図3に示すように、第1焦点検出画素列L1と、第2焦点検出画素列L2とを、3つの撮像画素221を挟んだ位置に配置したが、このような態様に特に限定されるものではない。ただし、各焦点検出画素列L1,L2を構成する焦点検出画素222a,222bは、撮影画像に適した画像出力を与えるものではないため、得られる撮影画像の精度をより高めるという観点より、これら焦点検出画素列L1,L2が配置されている位置においては、周囲に位置する撮像画素221の出力を用いた補間処理を行うことが望ましい。そのため、このような観点から、第1焦点検出画素列L1と、第2焦点検出画素列L2とは、撮像画素221を少なくとも1つ挟んだ位置に配置することが好ましい。また、一方で、第1焦点検出画素列L1と、第2焦点検出画素列L2とが離れすぎると、撮影する被写体や撮影シーンによっては、これらの画素列間で得られる出力パターンの差が大きくなるおそれがある。そのため、本実施形態では、
図3に示すように、第1焦点検出画素列L1と、第2焦点検出画素列L2とを、3つの撮像画素221を挟んだ位置に配置している。
【0049】
なお、これら位相差検出方式による像ズレ量の演算と、これに基づくデフォーカス量の演算は、カメラ制御部21により実行される。
【0050】
また、上述した第1焦点検出画素列L1の出力データと、第2焦点検出画素列L2の出力データを加算し、画素加算出力を得る際には、撮像素子22に備えられた演算部を用いて、画素加算出力を得て、これをカメラ制御部21に送信するような構成としてもよいし、あるいは、カメラ制御部21が、撮像素子22から、第1焦点検出画素列L1の出力データと、第2焦点検出画素列L2の出力データとを取得し、これらを用いて画素加算出力を得るような構成としてもよい。
【0051】
さらに、上記に加えて、カメラ制御部21は、撮像素子22の撮像画素221の出力を読み出し、読み出した画素出力に基づき、焦点評価値の演算を行う。この焦点評価値は、たとえば撮像素子22の撮像画素221からの画像出力の高周波成分を、高周波透過フィルタを用いて抽出し、これを積算することで求めることができる。また、遮断周波数が異なる2つの高周波透過フィルタを用いて高周波成分を抽出し、それぞれを積算することでも求めることができる。
【0052】
そして、カメラ制御部21は、レンズ制御部37に制御信号を送出してフォーカスレンズ32を所定のサンプリング間隔(距離)で駆動させ、それぞれの位置における焦点評価値を求め、該焦点評価値が最大となるフォーカスレンズ32の位置を合焦位置として求める、コントラスト検出方式による焦点検出を実行する。なお、この合焦位置は、たとえば、フォーカスレンズ32を駆動させながら焦点評価値を算出した場合に、焦点評価値が、2回上昇した後、さらに、2回下降して推移した場合に、これらの焦点評価値を用いて、内挿法などの演算を行うことで求めることができる。
【0053】
次いで、本実施形態におけるカメラ1の動作例を、
図9に示すフローチャートに沿って説明する。
【0054】
まず、ステップS1では、カメラ制御部21により、撮像素子22を構成する撮像画素221、ならびに第1焦点検出画素222aおよび第2焦点検出画素222bの出力データの取得が行われる。
【0055】
次いで、ステップS2では、カメラ制御部21により、上述した方法にしたがって、ステップS1で取得した第1焦点検出画素222aおよび第2焦点検出画素222bについて、画素加算を行うことで、画素加算出力の算出が行われる。すなわち、ステップS2では、上述した方法にしたがって、第1焦点検出画素列L1の出力データと、第2焦点検出画素列L2の出力データを加算し、これにより得られた画素加算出力データを得る。なお、上述したように、第1焦点検出画素列L1の出力データと、第2焦点検出画素列L2の出力データの加算は、カメラ制御部21に代えて、撮像素子22に備えられた演算部により行うような構成としてもよい。
【0056】
ステップS3では、上述した方法にしたがって、ステップS2で算出した画素加算出力データに基づき、第1焦点検出画素222aに基づく第1像データ列IA1,IA2,IA3,...,IAnと、第2焦点検出画素222bに基づく第2像データ列IB1,IB2,IB3,...,IBnとを得て、これらを用いて、上記式(1)にしたがって、シフト量演算を行い、相関量C(k)が極小値が得られるシフト量xを求めるシフト演算が行われる。なお、この際においては、必要に応じて内挿演算を行うような構成としてもよい。
【0057】
次いで、ステップS4では、ステップS3で求めた相関量C(k)が極小値が得られるシフト量xに基づき、上記式(2)にしたがって、デフォーカス量を求める。そして、求めたデフォーカス量に基づいて、フォーカスレンズ32の駆動量の算出およびフォーカスレンズ32の駆動が行われる。
【0058】
以上のようにして、光学系の焦点検出が行われる。
【0059】
本実施形態においては、撮像素子22を、第1焦点検出画素列L1および第2焦点検出画素列L2を備えるものとし、かつ、各画素列を構成する第1焦点検出画素222aと、第2焦点検出画素222bとを0.5画素分ずらした位置に配置し、これらの画素出力を加算することにより得られる画素加算出力を用いるものである。そして、本実施形態によれば、合焦状態(デフォーカス量がゼロの状態)において、相関量C(k)が極小値を与えるシフト量を正確に求めることができ、これにより、焦点検出精度を適切に高めることができるものである。
【0060】
《第2実施形態》
次いで、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、
図1に示すカメラ1において、以下に説明するような構成を備え、かつ、以下に説明するように動作する以外は、上述した第1実施形態と同様の構成を有するものである。
【0061】
すなわち、第2実施形態においては、撮像素子として、
図10に示すような構成を有する撮像素子22aを備える以外は、上述した第1実施形態と同様の構成を有する。
図10に示すように、第2実施形態に係る撮像素子22aは、第1焦点検出画素列L1、第2焦点検出画素列L2に加えて、第3焦点検出画素列L3、第4焦点検出画素列L4を備えるものである。そして、
図10に示すように、各焦点検出画素列L1~L4を構成する第1焦点検出画素222aおよび第2焦点検出画素222bの配列に関し、第1焦点検出画素列L1と、第3焦点検出画素列L3とで同じ配列となっており、また、第2焦点検出画素列L2と、第4焦点検出画素列L4とで同じ配列となっている。
【0062】
次いで、第2実施形態における画素加算出力の算出方法について、
図11を参照して説明を行う。
図11は、
図10に示す撮像素子22aの撮像面から撮像画素221を除き、4つの焦点検出画素列L1~L4を構成する第1焦点検出画素222aおよび第2焦点検出画素222bのみを模式的に示した図である。
【0063】
第2実施形態においては、4つの焦点検出画素列L1~L4のうち、これらの並びの中央付近に位置する第2焦点検出画素列L2の画素出力と、第3焦点検出画素列L3の画素出力とを加算することにより、得られる2画素加算出力と、4つの焦点検出画素列L1~L4の画素出力を加算することにより得られる4画素加算出力と算出する。
【0064】
具体的には、2画素加算出力は、次のようにして得られる。すなわち、
図11に示す第2焦点検出画素列L2の画素A1
L2の出力と、第3焦点検出画素列L3を構成する画素のうち、これと同じ測距瞳を通過する焦点検出光束を受光した画素A1
L3の出力とを加算し、画素加算出力I
A1を得る。同様に、第2焦点検出画素列L2の画素B1
L2の出力と、第3焦点検出画素列L3を構成する画素のうち、これと同じ測距瞳を通過する焦点検出光束を受光した画素B1
L3の出力とを加算し、画素加算出力I
B1を得る。以下、同様に、A2
L2とA2
L3の出力からI
A2、B2
L2とB2
L3の出力からI
B2、A3
L2とA3
L3の出力からI
A3、B3
L2とB3
L3の出力からI
B3を得る。これにより、2画素加算出力が得られる。
【0065】
また、4画素加算出力は、次のようにして得られる。すなわち、第1焦点検出画素列L1の画素A1L1、第2焦点検出画素列L2の画素A1L2、第3焦点検出画素列L3の画素A1L3、および第4焦点検出画素列L4の画素A1L4の4つの画素出力を加算することにより、画素加算出力IA1を得る。同様に、第1焦点検出画素列L1の画素B1L1、第2焦点検出画素列L2の画素B1L2、第3焦点検出画素列L3の画素B1L3、および第4焦点検出画素列L4の画素B1L4の4つの画素出力を加算することにより、画素加算出力IA1を得る。以下、同様に、A2L1とA2L2とA2L3とA2L4の出力からIA2、B2L1とB2L2とB2L3とB2L4の出力からIB2、A3L1とA3L2とA3L3とA3L4の出力からIA3、B3L1とB3L2とB3L3とB3L4の出力からIB3を得る。これにより、4画素加算出力が得られる。
【0066】
次いで、第2実施形態におけるカメラ1の動作例を、
図12に示すフローチャートに沿って説明する。
【0067】
まず、ステップS101では、
図9に示すステップS1と同様に、カメラ制御部21により、撮像素子22を構成する撮像画素221、ならびに第1焦点検出画素222aおよび第2焦点検出画素222bの出力データの取得が行われる。
【0068】
次いで、ステップS102では、カメラ制御部21により、上述した方法にしたがって、ステップS1で取得した第1焦点検出画素222aおよび第2焦点検出画素222bについて、画素加算を行うことで、2画素加算出力および4画素加算出力の算出が行われる。なお、2画素加算出力および4画素加算出力の算出は、カメラ制御部21に代えて、撮像素子22aに備えられた演算部により行うような構成としてもよい。
【0069】
ステップS103では、ステップS102で算出された2画素加算出力について、信号レベルおよびコントラストレベルが所定の判定閾値以上であるか否かの判定が行われる。なお、この際に使用される所定の判定閾値は、2画素加算出力が、焦点検出を行うのに十分な信号レベルおよびコントラストレベルを備えているか否かを判定できるような値に設定される。
【0070】
ステップS104では、ステップS103における判定の結果、2画素加算出力の信号レベルおよびコントラストレベルが所定の判定閾値以上であるか否かの判断、すなわち、2画素加算出力が、焦点検出を行うのに十分な信号レベルおよびコントラストレベルを備えているか否かの判断が行われる。2画素加算出力の信号レベルおよびコントラストレベルが所定の判定閾値以上である場合には、ステップS105に進み、ステップS105において、焦点検出演算に用いる出力として、2画素加算出力を選択する。一方、2画素加算出力の信号レベルおよびコントラストレベルが所定の判定閾値未満であった場合には、ステップS106に進み、ステップS106において、焦点検出演算に用いる出力として、4画素加算出力を選択する。
【0071】
次いで、ステップS107に進み、ステップS107では、ステップS105またはステップS106で選択された画素加算出力(すなわち、2画素加算出力または4画素加算出力)を用いて、第1焦点検出画素222aに基づく第1像データ列IA1,IA2,IA3,...,IAnと、第2焦点検出画素222bに基づく第2像データ列IB1,IB2,IB3,...,IBnとを得て、これらを用いて、上記式(1)にしたがって、シフト量演算を行い、相関量C(k)が極小値が得られるシフト量xを求めるシフト演算が行われる。なお、この際においては、必要に応じて内挿演算を行うような構成としてもよい。
【0072】
次いで、ステップS108に進み、ステップS108では、ステップS107で求めた相関量C(k)が極小値が得られるシフト量xに基づき、上記式(2)にしたがって、デフォーカス量を求める。そして、求めたデフォーカス量に基づいて、フォーカスレンズ32の駆動量の算出およびフォーカスレンズ32の駆動が行われる。
【0073】
以上のようにして、光学系の焦点検出が行われる。
【0074】
第2実施形態によれば、撮像素子22aを、4つの焦点検出画素列L1~L4を備えるものとし、かつ、各画素列を構成する第1焦点検出画素222aと、第2焦点検出画素222bとを0.5画素分ずらした位置に配置し、これらの画素出力を加算することにより2画素加算出力および4画素加算出力を得るものである。そして、第2実施形態によれば、これら2画素加算出力および4画素加算出力のうち、一方を、信号レベルおよびコントラストレベルに基づいて選択するものであり、これにより、焦点検出精度をより適切に高めることができるものである。すなわち、2画素加算出力でも、十分な信号レベルおよびコントラストレベルを備える場合には、比較的近くに位置している第2焦点検出画素列L2および第3焦点検出画素列L3の画素出力を加算することにより得られた2画素加算出力を用いることにより、画素列間で得られる出力パターンの差による影響を極めて低いものとすることができる。あるいは、第2実施形態によれば、2画素加算出力では、信号レベルまたはコントラストレベルが不十分な場合に、4画素加算出力を用いることにより、信号レベルおよびコントラストレベルを高めることができ、これにより、焦点検出精度をより適切に向上させることができる。
【0075】
なお、上記においては、2画素加算出力の信号レベルおよびコントラストレベルが所定の判定閾値以上であるか否かの判定、ならびに、焦点検出に用いる画素加算出力として、2画素加算出力および4画素加算出力のいずれを用いるかについての判定を、カメラ制御部21で行う構成を例示したが、これらは撮像素子22aで行ってもよい。
【0076】
また、上記においては、2画素加算出力を算出する際に、第2焦点検出画素列L2および第3焦点検出画素列L3の画素出力を用いる構成を例示したが、第1焦点検出画素列L1および第2焦点検出画素列L2の画素出力を用いるような構成としてもよいし、あるいは、第3焦点検出画素列L3および第4焦点検出画素列L4の画素出力を用いるような構成としてもよい。
【0077】
さらに、4画素加算出力を算出する際には、各焦点検出画素列の画素出力について、寄与度を調整するために、重み付け処理を行ってもよい。すなわち、たとえば、4つの焦点検出画素列L1~L4のうち、これらの並びの中心付近に位置する焦点検出画素列L2,L3について、焦点検出画素列L1,L4と比較して、得られる4画素加算出力を算出する際の寄与度が高くなるように、画素出力に対して重み付けを行い、これを加算するような構成とすることができる。
【0078】
《第3実施形態》
次いで、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態では、第2実施形態と同様の構成を有するカメラ1において、以下に説明するように動作する以外は、上述した第2実施形態と同様の構成を有するものである。
【0079】
以下、第3実施形態におけるカメラ1の動作例を、
図13に示すフローチャートに沿って説明する。
【0080】
まず、ステップS201、S202では、
図12に示すステップS101、S102と同様に、カメラ制御部21により、撮像素子22を構成する撮像画素221、第1焦点検出画素222aおよび第2焦点検出画素222bの出力データの取得、ならびに、2画素加算出力および4画素加算出力の算出が行われる。
【0081】
次いで、ステップS203では、ステップS201で取得された各焦点検出画素列L1~L4の焦点検出画素出力(すなわち、画素加算を行っていない出力)、およびステップS102で算出された2画素加算出力について、信号レベルおよびコントラストレベルが所定の判定閾値以上であるか否かの判定が行われる。なお、この際に用いる判定閾値は、各焦点検出画素列L1~L4の焦点検出画素出力と、2画素加算出力とで同じ判定閾値を用いてもよいが、異なる判定閾値を用いることが好ましく、異なる判定閾値を用いる場合には、焦点検出精度の確保という点より、2画素加算出力よりも、画素加算を行っていない各焦点検出画素列L1~L4の焦点検出画素出力の方が高い閾値を用いることが望ましい。
【0082】
ステップS204では、ステップS203における判定の結果、ステップS201で取得された各焦点検出画素列L1~L4の焦点検出画素出力(すなわち、画素加算を行っていない出力)の信号レベルおよびコントラストレベルが所定の判定閾値以上であるか否かの判断、すなわち、各焦点検出画素列L1~L4の焦点検出画素出力が、焦点検出を行うのに十分な信号レベルおよびコントラストレベルを備えているか否かの判断が行われる。各焦点検出画素列L1~L4の焦点検出画素出力の信号レベルおよびコントラストレベルが所定の判定閾値以上である場合には、ステップS205に進み、ステップS205において、焦点検出画素列L1~L4のうち、最もコントラストレベルの高い焦点検出画素列の画素出力を、焦点検出演算に用いる出力として選択する。
【0083】
一方、ステップS204において、各焦点検出画素列L1~L4の焦点検出画素出力の信号レベルおよびコントラストレベルが所定の判定閾値未満であると判定された場合には、ステップS206に進む。ステップS206では、
図12に示すステップS104と同様に、2画素加算出力の信号レベルおよびコントラストレベルが所定の判定閾値以上であるか否かの判断、すなわち、2画素加算出力が、焦点検出を行うのに十分な信号レベルおよびコントラストレベルを備えているか否かの判断が行われる。2画素加算出力の信号レベルおよびコントラストレベルが所定の判定閾値以上である場合には、ステップS207に進み、焦点検出演算に用いる出力として、2画素加算出力を選択する。一方、2画素加算出力の信号レベルおよびコントラストレベルが所定の判定閾値未満であった場合には、ステップS208に進み、焦点検出演算に用いる出力として、4画素加算出力を選択する。
【0084】
次いで、ステップS209に進み、
図12に示すステップS107と同様に、選択された画素出力(すなわち、最もコントラストレベルの高い焦点検出画素列の画素出力、または、2画素加算出力もしくは4画素加算出力)を用いて、シフト量演算が行われた後、ステップS210に進み、
図12に示すステップS108と同様に、デフォーカス量の算出が行われる。
【0085】
第3実施形態によれば、画素加算されてない各焦点検出画素列L1~L4の焦点検出画素出力でも、十分な信号レベルおよびコントラストレベルが確保されている場合には、画素加算されてない画素出力を用いることにより、素列間で得られる出力パターンの差による影響を抑えることが可能となる。
【0086】
《第4実施形態》
次いで、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態では、
図1に示すカメラ1において、以下に説明するような構成を備え、かつ、以下に説明するように動作する以外は、上述した第1実施形態と同様の構成を有するものである。
【0087】
第4実施形態においては、撮像素子として、
図14に示すような構成を有する撮像素子22bを備える以外は、上述した第1実施形態と同様の構成を有する。
図14に示すように、第4実施形態に係る撮像素子22bは、第1焦点検出画素列L1、第2焦点検出画素列L2に加えて、第3焦点検出画素列L3を備える。そして、
図14に示すように、第1焦点検出画素222aおよび第2焦点検出画素222bの配列に関し、第1焦点検出画素列L1と第3焦点検出画素列L3とは同じ配列となっている。一方、第2焦点検出画素列L2は、第1焦点検出画素列L1および第3焦点検出画素列L3に対して、X軸方向において、第1焦点検出画素222aおよび第2焦点検出画素222bが0.5画素ずれた位置に存在する。
【0088】
次いで、第4実施形態における画素加算出力の算出方法について、
図15を参照して説明を行う。
図15は、
図14に示す撮像素子22bの撮像面から撮像画素221を除き、3つの焦点検出画素列L1~L3を構成する第1焦点検出画素222aおよび第2焦点検出画素222bのみを模式的に示した図である。
【0089】
第4実施形態においては、3つの焦点検出画素列L1~L3の画素出力を、所定の重み(所定の寄与度)を付して加算することで、画素加算出力を算出する。具体的には、第1焦点検出画素列L1と第3焦点検出画素列L3とが同じ配列となっているため、配列の異なる画素出力(第1焦点検出画素列L1および第3焦点検出画素列L3の画素加算出力と、第2焦点検出画素列L2の画素出力と)が同じ大きさとなるように、第1焦点検出画素列L1および第3焦点検出画素列L3の画素出力の寄与度を、たとえば0.5に設定し、第2焦点検出画素列L2の画素出力の寄与度を、たとえば1に設定する。これにより、第1焦点検出画素列L1、第2焦点検出画素列L2、第3焦点検出画素列L3の画素出力の画素出力をそれぞれ1:2:1の比率で重み付けすることができ、重み付けした画素出力を加算することで、第1焦点検出画素列L1、第2焦点検出画素列L2、第3焦点検出画素列L3の画素出力の画素出力をそれぞれ1:2:1の比率で重み付けした画素加算出力を得ることができる。
【0090】
たとえば、
図15に示す例では、第1焦点検出画素列L1の画素A1
L1の出力と、第2焦点検出画素列L2の画素A1
L2の出力と、第3焦点検出画素列L3の画素A1
L3の出力とを1:2:1の比率で重み付けして加算し、画素加算出力I
A1を得る。同様に、第2焦点検出画素列L1の画素B1
L1の出力と、第2焦点検出画素列L2の画素B1
L2の出力と、第3焦点検出画素列L3の画素B1
L3の出力とをそれぞれ1:2:1の比率で重み付けして加算し、画素加算出力I
B1を得る。以下、同様に、A2
L1とA2
L2とA2
L3の出力を1:2:1の比率で重み付けして加算することで画素加算出力I
A2を、B2
L1とB2
L2とB2
L3の出力を1:2:1の比率で重み付けして加算することで画素加算出力I
B2を、A3
L1とA3
L2とA3
L3の出力を1:2:1の比率で重み付けして加算することで画素加算出力I
A3を、B3
L1とB3
L2とB3
L3の出力を1:2:1の比率で重み付けして加算することで画素加算出力I
B3を得る。なお、画素出力の重み付けは、カメラ制御部21が行ってもよいし、撮像素子22aに備えられた演算部により行う構成としてもよい。
【0091】
次いで、第4実施形態におけるカメラ1の動作例を、
図16に示すフローチャートに沿って説明する。
【0092】
まず、ステップS301では、カメラ制御部21により、撮像素子22を構成する撮像画素221、ならびに、第1焦点検出画素列L1、第2焦点検出画素列L2、第3焦点検出画素列L3をそれぞれ構成する第1焦点検出画素222aおよび第2焦点検出画素222bの出力データの取得が行われる。
【0093】
次いで、ステップS302では、カメラ制御部21により、ステップS301で取得された第1~第3焦点検出画素列L1~L3の第1焦点検出画素222aおよび第2焦点検出画素222bの画素出力について重み付けが行われる。たとえば、カメラ制御部21は、第1焦点検出画素列L1および第3焦点検出画素列L3の第1焦点検出画素222aおよび第2焦点検出画素222bの画素出力について寄与度0.25をそれぞれ乗じ、第2焦点検出画素列L2の第1焦点検出画素222aおよび第2焦点検出画素222bの画素出力について寄与度0.5を乗じることで、第1焦点検出画素列L1、第2焦点検出画素列L2、第3焦点検出画素列L3の画素出力をそれぞれ1:2:1の比率で重み付けを行う。
【0094】
ステップS303では、ステップS302で重み付けされた画素出力の加算が行われる。そして、ステップS304では、ステップS303で加算された画素加算出力に基づいて、シフト量の演算が行われ、その後、ステップS305に進み、算出されたシフト量に基づいて、デフォーカス量の算出が行われる。なお、シフト量およびデフォーカス量の演算は、第1実施形態のステップS3およびステップS4と同様に行うことができる。
【0095】
以上のようにして、光学系の焦点検出が行われる。
【0096】
第4実施形態によれば、撮像素子22aを、3つの焦点検出画素列L1~L3を備えるものとし、かつ、各画素列を構成する第1焦点検出画素222aと、第2焦点検出画素222bとを0.5画素分ずらした位置に配置し、これらの画素出力を加算することにより画素加算出力を得るものである。特に、第4実施形態では、第1焦点検出画素列L1、第2焦点検出画素列L2、第3焦点検出画素列L3の画素出力をそれぞれ1:2:1の比率で重み付けして加算することで、
図7に示すように、合焦状態(デフォーカス量がゼロの状態)において、相関量C(k)が極小値を与えるシフト量を正確に求めることができ、これにより、焦点検出精度を適切に高めることができるものである。
【0097】
《第5実施形態》
次いで、本発明の第5実施形態について説明する。第5実施形態では、
図1に示すカメラ1において、以下に説明するように動作する以外は、上述した第1実施形態と同様の構成を有するものである。ここで、
図17は、第5実施形態に係るカメラ1の動作例を示すフローチャートである。以下、
図17を参照して、第5実施形態に係るカメラ1の動作を説明する。
【0098】
まず、ステップS401では、カメラ制御部21により、操作部28に備えられたシャッターレリーズボタンの半押し(第1スイッチSW1のオン)がされたかどうかの判断が行なわれる。第1スイッチSW1がオンした場合は、ステップS402に進む。一方、第1スイッチSW1がオンされていない場合は、第1スイッチSW1がオンされるまで、ステップS401で待機する。
【0099】
ステップS402では、焦点検出処理の起動時であると判断され、カメラ制御部21により、画素加算フラグがオフに設定される。このように、本実施形態では、焦点検出処理の起動時に、第1焦点検出画素列L1および第2焦点検出画素列L2の画素出力の加算が行われないように、画素加算フラグをオフに設定する。ここで、被写体にピントが合っていない場合には、第1焦点検出画素列L1の画素出力および第2焦点検出画素列L2の画素出力において、低周波成分が検出されやすい。さらに、被写体像のボケ量が大きい場合には、第1焦点検出画素列L1の画素出力と第2焦点検出画素列L2の画素出力とを加算してしまうと、加算した画素出力の周波数成分が、第1焦点検出画素列L1の周波数成分の波形、および、第2焦点検出画素列L2の周波数成分の波形よりも平滑化(低周波数化)してしまい、被写体の検出がより困難となってしまう。そのため、焦点検出処理の起動時であり、被写体にピントが合っておらず、ボケ量が大きくなる可能性が高い場合には、画素加算フラグをオフに設定することで、被写体の検出精度を高めることができる。
【0100】
ステップS403では、カメラ制御部21により、第1実施形態のステップS1と同様に、カメラ制御部21により、撮像素子22を構成する撮像画素221、ならびに第1焦点検出画素222aおよび第2焦点検出画素222bの出力データの取得が行われる。
【0101】
ステップS404では、カメラ制御部21により、所定回数以上連続して測距不能であると判断されたか否かの判断が行われる。たとえば、カメラ制御部21は、デフォーカス量を算出することができなかった場合、または、デフォーカス量の信頼性が低いと判断された場合に、測距不能であると判断することができる。そして、前回処理までに、測距不能であるとの判断が所定回数以上連続して行われた場合には、ステップS405に進み、画素加算フラグがオフに設定される。このように、本実施形態では、焦点検出を行った結果、測距不能であると所定回数以上繰り返し判断された場合には、被写体像のボケ量が大きい可能性が高いものと判断し、画素加算フラグをオフに設定し、第1焦点検出画素列L1と第2焦点検出画素列L2との画素出力の加算を禁止する。これにより、被写体像のボケ量が大きい場合には、第1焦点検出画素列L1および第2焦点検出画素列L2の画素出力の加算が行われないため、上述したように、焦点検出精度を高めることができる。なお、デフォーカス量の信頼性の評価は、たとえば、一対の像データの一致度やコントラストなどに基づいて行うことができる。
【0102】
また、ステップS406では、カメラ制御部21により、第1焦点検出画素列L1および第2焦点検出画素列L2の画素出力が低コントラストであるか否かの判断が行われる。第1焦点検出画素列L1および第2焦点検出画素列L2の画素出力が低コントラストである場合には、ステップS407に進み、画素加算フラグがオフに設定される。ここで、画素出力が低コントラストである場合にも、加算した画素出力の周波数成分が、第1焦点検出画素列L1の周波数成分の波形、および、第2焦点検出画素列L2の周波数成分の波形よりも平滑化(低周波数化)してしまい、被写体の検出がより困難となってしまう場合がある。そのため、画素加算フラグをオフに設定することで、第1焦点検出画素列L1と第2焦点検出画素列L2との画素の加算を禁止する。これにより、焦点検出精度を高めることができる。一方、被写体が低コントラストではない場合には、ステップS408に進む。
【0103】
ステップS408では、カメラ制御部21により、被写体が高輝度であり、かつ、前回処理において測距不能であると判断されたか否かの判断が行われる。本実施形態では、焦点検出に適した露出が得られるように、被写体の輝度に基づいて、ISO感度の設定が行われており、カメラ制御部21は、設定されたISO感度が所定値以下である場合に、被写体の輝度が所定の輝度値以上である(被写体が高輝度である)と判断することができる。そして、被写体が高輝度であり、かつ、前回処理において測距不能と判断された場合には、ステップS409に進み、画素加算フラグがオフに設定される。ここで、ISO感度が低い場合には、ノイズの影響が比較的小さいため、画素出力の加算を行わなくても比較的高いS/N比を得ることができる。そのため、カメラ制御部21は、被写体が高輝度であり、かつ、測距不能である場合には、第1焦点検出画素列L1と第2焦点検出画素列L2との画素の加算を禁止することで、焦点検出精度を高めることができる。一方、被写体が低輝度である場合、または、測距可能と判断された場合には、画素加算を行うことで、焦点検出精度をより高めることができるため、画素加算フラグをオフに設定せずに、ステップS410に進む。
【0104】
ステップS410では、カメラ制御部21により、画素加算フラグがオンに設定されているか否かの判断が行われる。画素加算フラグがオンに設定されている場合には、ステップS411に進み、一方、画素加算フラグがオフに設定されている場合には、ステップS412に進む。
【0105】
ステップS411では、画素加算フラグがオンに設定されているため、第1実施形態のステップS2と同様に、第1焦点検出画素222aおよび第2焦点検出画素222bについて画素加算を行うことで、画素加算出力の算出が行われる。
【0106】
一方、ステップS412では、画素加算フラグがオフに設定されているため、第1焦点検出画素222aおよび第2焦点検出画素222bの画素出力について加算が行われず、第1焦点検出画素222aおよび第2焦点検出画素222bの画素出力の取得のみが行われる。
【0107】
そして、ステップS413では、ステップS411で加算した画素加算出力、または、ステップS412で取得された第1焦点検出画素222aおよび第2焦点検出画素222bの画素出力に基づいて、シフト量演算が行われる。そして、ステップS414では、ステップS413で算出したシフト量に基づいて、デフォーカス量の算出が行われ、続くステップS415では、算出したデフォーカス量に基づいて、フォーカスレンズ32の駆動が行われる。具体的には、カメラ制御部21は、ステップS414で算出されたデフォーカス量に基づいて、フォーカスレンズ32を合焦位置まで駆動させるのに必要となるレンズ駆動量を算出し、算出したレンズ駆動量が、レンズ制御部37を介して、フォーカスレンズ駆動モータ36に送出される。これにより、フォーカスレンズ駆動モータ36により、算出されたレンズ駆動量に基づいて、フォーカスレンズ32の駆動が行われる。
【0108】
ステップS416では、カメラ制御部21により、シャッターレリーズボタンの半押しが解除(第1スイッチSW1がオフ)されたか否かの判断が行われる。第1スイッチSW1がオンの場合には、ステップS417に進み、画素加算フラグがオンに設定され、ステップS403に戻る。これにより、焦点検出処理の起動時ではなく、所定回数以上連続して測距不能と判断された場合ではなく、画素出力が低コントラストではなく、かつ、被写体が高輝度かつ測距不能ではない場合に、ステップS411において、画素出力の加算が行われることとなる。一方、第1スイッチSW1がオフの場合には、
図16のカメラ1の動作を終了する。
【0109】
なお、ステップS417においては、被写体像のボケ量が所定値以下であるか否か、あるいは、焦点検出処理の起動後(シャッターレリーズボタンの半押し操作後)にフォーカスレンズ32の駆動が開始されたか否かを判断し、被写体像のボケ量が所定値以下となった場合、あるいは、焦点検出処理の起動後にフォーカスレンズ32の駆動が開始された場合に、画素加算フラグをオンに設定する構成としてもよい。
【0110】
以上のようにして、光学系の焦点検出が行われる。
【0111】
第5実施形態によれば、焦点検出処理の起動時、測距不能であるとの判断が数回以上繰り返し行われた場合、画素出力が低コントラストである場合、あるいは、被写体が高輝度かつ測距不能と判断された場合に、画素加算フラグをオフとすることで、画素加算を禁止する。すなわち、被写体にピントが合っていない状態では、高周波成分が少ないため、第1焦点検出画素列L1で検出される周波数成分および第2焦点検出画素列L2で検出される周波数成分の周波数は低くなり易い。このような場合に、第1焦点検出画素列L1の画素出力と第2焦点検出画素列L2の画素出力とを加算してしまうと、却って、加算した周波数成分(第1像データ列および第2像データ列)の波形は平滑化してしまい、被写体の検出がより困難となってしまう。そのため、焦点検出処理の起動時、測距不能であるとの判断が数回以上繰り返し行われた場合、被写体が低コントラストである場合、あるいは、被写体が高輝度かつ測距不能と判断された場合など、被写体像のボケ量が大きい可能性が高い場合には、画素出力の加算を禁止することで、被写体の検出精度を高めることができる。
【0112】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0113】
たとえば、上述した実施形態では、各焦点検出画素列の画素出力を加算して加算画素出力を得る態様を例示したが、画素加算出力に代えて、各焦点検出画素列の画素出力を平均して得られる平均画素出力を算出し、これを用いて焦点検出演算を行うような構成としてもよい。また、平均出力を算出する際には、画素加算出力を算出する場合と同様に、各焦点検出画素列の画素出力について、寄与度を調整するために、重み付け処理を行ってもよい。
【0114】
さらに、上述した実施形態では、焦点検出画素列を2つ、あるいは4つ備える構成を例示したが、焦点検出画素列の数はこれらに限定されるものではなく、適宜設定することができる。たとえば、焦点検出画素列として、3つの焦点検出画素列L1~L3を備える場合には、焦点検出画素の配列に関し、通常、焦点検出画素列L1と、焦点検出画素列L3とを同じ配列とし、焦点検出画素列L2を0.5画素ずらした構成とすることとなる。そのため、このような場合には、これらを画素加算して画素加算出力を得る場合、また平均して平均出力を算出する場合には、焦点検出画素列L1および焦点検出画素列L3の画素出力の寄与度を、たとえば、0.5に設定し、焦点検出画素列L2の画素出力の寄与度を、たとえば、1に設定することが望ましい。
【0115】
また、各焦点検出画素列を構成する第1焦点検出画素222aおよび第2焦点検出画素222bの配列は、これらが少なくとも、同じ列上において交互に配列されたものであればよく、たとえば、
図18に示す焦点検出画素列L1a、L1bや、
図19に示す焦点検出画素列L2a、L2bのように、焦点検出画素列中に、通常の撮像画素221が含まれるような構成としてもよい。
【0116】
さらに、上述した第4実施形態では、
図14に示すように、撮像素子22bが3つの焦点検出画素列L1~L3を備える構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、
図20に示すように、撮像素子22eが5つの焦点検出画素列L1~L5を備える構成としてもよい。この場合、第1焦点検出画素列L1と第3焦点検出画素列L3と第5焦点検出画素列L5とが同じ画素配列であり、第2焦点検出画素列L2と第4焦点検出画素列L4とが同じ画素配列であるため、これらを画素加算して画素加算出力を得る場合、また平均して平均出力を算出する場合には、第1焦点検出画素列L1、第3焦点検出画素列L3、第5焦点検出画素列L5の画素出力の寄与度を、たとえば0.16に設定し、第2焦点検出画素列L2、第4焦点検出画素列L4の画素出力の寄与度を、たとえば、0.25に設定する。すなわち、焦点検出画素列L1~L5の画素出力を2:3:2:3:2の比率で加算する。これにより、合焦状態(デフォーカス量がゼロの状態)において、相関量C(k)が極小値を与えるシフト量を正確に求めることができ、これにより、焦点検出精度を適切に高めることができる。
【0117】
また、
図20に示す例において、たとえば、第4焦点検出画素列L4において被写体のコントラストが低い場合には、この第4焦点検出画素列L4を除いた、第1焦点検出画素列L1、第2焦点検出画素列L2、第3焦点検出画素列L3、および第5焦点検出画素列L5の画素出力に基づいて、焦点検出を行う構成としてもよい。この場合、第1焦点検出画素列L1、第3焦点検出画素列L3、第5焦点検出画素列L5の画素出力の寄与度を、たとえば0.16に設定し、第2焦点検出画素列L2の画素出力の寄与度を、たとえば0.5に設定することができる。すなわち、焦点検出画素列L1~L3,L5の画素出力を1:3:1:1の比率で加算する。これにより、合焦状態(デフォーカス量がゼロの状態)において、相関量C(k)が極小値を与えるシフト量を正確に求めることができ、焦点検出精度を適切に高めることができる。
【0118】
なお、上述した実施形態では、画素出力の寄与度が合計で1となるように設定する構成を例示して説明したが、この構成に限定されず、たとえば、画素出力の比率が上述した比率となるものであれば、寄与度を合計で1以外の値となるように設定してもよい。たとえば、
図20に示す例では、第1焦点検出画素列L1、第3焦点検出画素列L3、第5焦点検出画素列L5の画素出力の寄与度を、たとえば1に設定し、第2焦点検出画素列L2、第4焦点検出画素列L4の画素出力の寄与度を、たとえば、1.5に設定する構成とすることができる。
【0119】
さらに、
図14に示す例において、たとえば、第3焦点検出画素列L3において、第1焦点検出画素列L1よりも被写体のコントラストが高い場合には、第3焦点検出画素列L1の画素出力の寄与度を、第1焦点検出画素列L1の画素出力の寄与度よりも大きくする構成としてもよい。たとえば、上述した例では、第1焦点検出画素列L1、第3焦点検出画素列L3の画素出力の寄与度を0.5に設定し、第2焦点検出画素列L2の画素出力の寄与度を1に設定したが、第3焦点検出画素列L3において、第1焦点検出画素列L1よりも被写体のコントラストが高い場合には、第1焦点検出画素列L1の画素出力の寄与度を0.25に設定し、第2焦点検出画素列L2の画素出力の寄与度を1に設定し、第3焦点検出画素列L3の画素出力の寄与度を0.75に設定する構成としてもよい。
【0120】
加えて、上述した第5実施形態では、焦点検出が開始された後は画素加算フラグをオフとすることで(ステップS402)、焦点検出処理の起動時における画素加算を禁止する構成を例示したが、「焦点検出処理の起動時」とは、このタイミングに限定されず、焦点検出の開始から一定時間内であってもよいし、焦点検出処理を所定回数繰り返すまでとしてもよい。
【符号の説明】
【0121】
1…デジタルカメラ
2…カメラ本体
21…カメラ制御部
22,22a~22e…撮像素子
221…撮像画素
L1~L5…焦点検出画素列
222a…第1焦点検出画素
222b…第2焦点検出画素
3…レンズ鏡筒
32…フォーカスレンズ
36…フォーカスレンズ駆動モータ
37…レンズ制御部