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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142156
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】測定装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
G01B11/24 B
G01B11/24 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042197
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】小倉 隆志
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA53
2F065BB08
2F065DD03
2F065FF51
2F065GG03
2F065GG04
2F065GG07
2F065GG24
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065LL02
2F065MM03
2F065MM04
2F065PP12
2F065PP22
2F065QQ21
2F065QQ28
2F065QQ29
(57)【要約】
【課題】ワークの内面の形状を高さ方向の広範囲にわたって精度よくかつ容易に測定することが可能な測定装置及び方法を提供する。
【解決手段】測定装置は、円筒形状のワークが載置され、ワークの高さ方向に沿う回転軸の周りに回転可能な回転ステージと、回転ステージの回転軸に対して垂直な直動移動方向に直動移動可能な直動ステージと、回転軸及び直動移動方向に対して45°傾斜した反射面を有し、直動ステージ上に固定され、回転ステージに形成された穴を貫通するように配置されたミラー部材と、測定光を反射面で反射させることによりワークの内面に測定光を照射し、円筒形状のワークの内面の形状を測定する白色干渉顕微鏡と、直動ステージを直動移動させることにより、測定光が照射される測定視野を高さ方向に沿って移動させ、回転ステージを回転させることにより、測定視野をワークの周方向に移動させる制御部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状のワークが載置される回転ステージであって、前記ワークの高さ方向に沿う回転軸の周りに回転可能な回転ステージと、
前記回転ステージの回転軸に対して垂直な直動移動方向に直動移動可能な直動ステージと、
前記回転軸及び前記直動移動方向に対して45°傾斜した反射面を有するミラー部材であって、前記直動ステージ上に固定され、前記回転ステージに形成された穴を貫通するように配置されており、前記直動ステージの直動移動に伴って前記直動ステージが設けられた基台に対して直動移動可能なミラー部材と、
測定光を前記反射面で反射させることにより前記ワークの内面に前記測定光を照射し、前記円筒形状のワークの内面の形状を測定する白色干渉顕微鏡と、
前記直動ステージを直動移動させることにより、前記測定光が照射される測定視野を前記高さ方向に沿って移動させ、前記回転ステージを回転させることにより、前記測定視野を前記ワークの周方向に移動させる制御部と、
を備える測定装置。
【請求項2】
前記測定視野ごとの測定データをつなぎ合わせる画像処理部を備える請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
円筒形状のワークが載置される回転ステージであって、前記ワークの高さ方向に沿う回転軸の周りに回転可能な回転ステージと、
前記回転ステージの回転軸に対して垂直な直動移動方向に直動移動可能な直動ステージと、
前記回転軸及び前記直動移動方向に対して45°傾斜した反射面を有するミラー部材であって、前記直動ステージ上に固定され、前記回転ステージに形成された穴を貫通するように配置されており、前記直動ステージの直動移動に伴って前記直動ステージが設けられた基台に対して直動移動可能なミラー部材と、
測定光を前記反射面で反射させることにより前記ワークの内面に前記測定光を照射し、前記円筒形状のワークの内面の形状を測定する白色干渉顕微鏡とを備える測定装置における測定方法であって、
前記直動ステージを直動移動させることにより、前記測定光が照射される測定視野を前記高さ方向に沿って移動させるステップと、
前記回転ステージを回転させることにより、前記測定視野を前記ワークの周方向に移動させるステップと、
を含む測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定装置及び方法に係り、特に円筒形状のワークの内面の形状を測定することが可能な測定装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒形状のワークの内面の形状を非接触で測定する形状測定装置が提案されている。例えば、特許文献1には、円筒形状のワークの中に円錐プリズムを互いの中心軸が一致するように配置し、円錐プリズムにより測定光を直角に偏向することにより、ワークの内面に測定光を照射して、ワークの内面の三次元形状を測定する形状測定装置が開示されている。特許文献1に記載の形状測定装置によれば、円筒形状のワークをカットすることなく、その内面の三次元形状を測定することができる。また、特許文献1に記載の形状測定装置によれば、円錐プリズムの中心軸を中心とした周方向全体に向けて出射させることにより、円筒内面の周方向全体の形状を一度に測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-075577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の形状測定装置では、ワークの内面の三次元形状を高さ方向(Z方向)の広範囲にわたって測定する場合、ワークの内面に設定される測定エリアと形状測定装置との相対位置をZ方向に変更する必要がある。ワークの内面を上部から下部に走査する場合、ワークの測定エリアが上部から下部になるに伴い、光学系の拡大倍率が悪化し、空間分解能が悪化する。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ワークの内面の形状を高さ方向の広範囲にわたって精度よくかつ容易に測定することが可能な測定装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る測定装置は、円筒形状のワークが載置される回転ステージであって、ワークの高さ方向に沿う回転軸の周りに回転可能な回転ステージと、回転ステージの回転軸に対して垂直な直動移動方向に直動移動可能な直動ステージと、回転軸及び直動移動方向に対して45°傾斜した反射面を有するミラー部材であって、直動ステージ上に固定され、回転ステージに形成された穴を貫通するように配置されており、直動ステージの直動移動に伴って直動ステージが設けられた基台に対して直動移動可能なミラー部材と、測定光を反射面で反射させることによりワークの内面に測定光を照射し、円筒形状のワークの内面の形状を測定する白色干渉顕微鏡と、直動ステージを直動移動させることにより、測定光が照射される測定視野を高さ方向に沿って移動させ、回転ステージを回転させることにより、測定視野をワークの周方向に移動させる制御部とを備える。
【0007】
本発明の第2の態様に係る測定装置は、第2の態様において、測定視野ごとの測定データをつなぎ合わせる画像処理部を備える。
【0008】
本発明の第3の態様は、円筒形状のワークが載置される回転ステージであって、ワークの高さ方向に沿う回転軸の周りに回転可能な回転ステージと、回転ステージの回転軸に対して垂直な直動移動方向に直動移動可能な直動ステージと、回転軸及び直動移動方向に対して45°傾斜した反射面を有するミラー部材であって、直動ステージ上に固定され、回転ステージに形成された穴を貫通するように配置されており、直動ステージの直動移動に伴って直動ステージが設けられた基台に対して直動移動可能なミラー部材と、測定光を反射面で反射させることによりワークの内面に測定光を照射し、円筒形状のワークの内面の形状を測定する白色干渉顕微鏡とを備える測定装置における測定方法であって、直動ステージを直動移動させることにより、測定光が照射される測定視野を高さ方向に沿って移動させるステップと、回転ステージを回転させることにより、測定視野をワークの周方向に移動させるステップとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ワークの内面の形状を高さ方向の広範囲にわたって精度よくかつ容易に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る測定装置を示すブロック図である。
図2図2は、ワークの内面を高さ方向(Z方向)に走査する手順を示す図である。
図3図3は、ワークの内面を高さ方向(Z方向)及び周方向に走査する手順を示す図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る測定方法を示すフローチャートである。
図5図5は、図4のZ方向測定工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に従って本発明に係る測定装置及び方法の実施の形態について説明する。
【0012】
[測定装置の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る測定装置を示すブロック図である。
【0013】
本実施形態に係る測定装置1は、ステージSTに載置されたワーク(被測定物)Wの形状(表面粗さ、三次元形状及び輪郭等を含む。)の測定を行うため装置であり、ステージST、制御装置10と、白色干渉顕微鏡50とを含んでいる。以下の説明では、ステージSTのワークWが載置される載置面に沿う平面をXY平面とし、高さ方向をZ方向とする3次元直交座標系を用いて説明する。
【0014】
(ステージST)
まず、ワークWが載置されるステージSTについて説明する。
【0015】
図1に示すように、ステージSTは、回転ステージST1、直動ステージST2及び基台ST3を含んでいる。
【0016】
直動ステージST2は、基台ST3の上に設けられており、基台ST3に対して直動移動可能となっている。すなわち、基台ST3に対して回転ステージST1及び直動ステージST2が直動移動方向(X方向)に直動移動する構造となっている。直動ステージST2には、斜切円柱形状のミラー部材Mが固定されている。
【0017】
回転ステージST1は、直動ステージST2の上にZ軸周りに回転可能に設けられている。回転ステージST1には、ミラー部材Mよりも大径の穴Hが形成されており、ミラー部材Mはこの穴Hを貫通するように配置されている。ミラー部材Mは、直動ステージST2の直動移動に伴い、基台ST3に対して直動移動可能となっている。
【0018】
図1に示すように、ワークWの内面Winの測定を行う場合、被測定物である円筒形状のワークWは、回転ステージST1に形成された穴Hに重なるように配置される。ここで、図1に示す例では、対物部64の光軸AX(図2(b)参照)と回転ステージST1に形成された穴Hの中心軸とは一致している。また、ワークWの中心軸は、回転ステージST1の中心軸と一致するように、不図示の保持手段(例えば、クランプ等)により保持される。
【0019】
白色干渉顕微鏡50から出射した測定光L0は、ミラー部材Mの反射面Mに反射されてワークWの内面Winに到達する。これにより、ワークWの内面Winの表面粗さを測定することが可能になる。
【0020】
なお、本実施形態では、ミラー部材Mを斜切円柱形状としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、斜切多角柱形状、円錐形状又は多角錐形状であってもよいし、任意の形状の反射板を柱で支持する構造であってもよい。
【0021】
(制御装置10)
次に、測定装置1の制御装置10について説明する。
【0022】
制御装置10は、白色干渉顕微鏡50の各部の制御を行い、白色干渉顕微鏡50による測定の結果を処理する装置であり、制御部12、入出力部14、記憶部16及び信号処理部18を含んでいる。制御装置10は、例えば、パーソナルコンピュータ、ワークステーション等の汎用のコンピュータによって実現可能である。
【0023】
制御部12は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含んでいる。制御部12は、入出力部14を介して作業者から操作入力を受け付けて、制御装置10の各部を制御する。また、制御部12は、白色干渉顕微鏡50の光源部52の出力制御を行って、ワークWに照射される照明光の光量等を調整する。制御部12は、回転ステージ駆動部80及び直動ステージ駆動部82の駆動制御を行ってステージST1及びST2を動作させて、ワークWの観察対象位置(測定位置)の調整等を行う(図2及び図5参照)。また、制御部12は、鏡筒56とステージST1との間の高さ方向(Z方向)の相対位置(距離)の制御を行う。制御部12は、本発明の制御部及び画像処理部の一例である。
【0024】
入出力部14は、作業者の操作入力を受け付けるための操作部材(例えば、キーボード、ポインティングデバイス等)と、白色干渉顕微鏡50によるワークWの測定の結果等を表示するための表示部(例えば、液晶ディスプレイ等)とを含んでいる。
【0025】
信号処理部18は、白色干渉顕微鏡50の検出器76から検出信号を取得して、この検出信号に対して信号処理を行い、干渉縞の形状及び振幅等を算出する。
【0026】
記憶部16は、白色干渉顕微鏡50の制御及びワークWの測定結果等の測定データの処理のためのプログラム、並びに測定データを保存するためのストレージデバイスである。記憶部16としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等を用いることができる。
【0027】
(白色干渉顕微鏡50)
次に、測定装置1の白色干渉顕微鏡50について説明する。以下の説明では、円筒形状のワークWの内面Winの測定を行う例について説明する。
【0028】
白色干渉顕微鏡50は、光源部52、ライトガイド54及び鏡筒56を含んでいる。鏡筒56の下端部にはターレット62が取り付けられており、鏡筒56の上端部には検出器76が取り付けられている。ターレット62には、複数(図1に示す例では3個)の対物部64が取り付けられている。複数の対物部64に含まれる干渉対物レンズ66は、相互に倍率が異なっており、ターレット62を回転させることにより、ワークWの測定に使用する干渉対物レンズ66を切り替えることが可能となっている。
【0029】
光源部52は、白色光を出力する光源であり、例えば、ハロゲンランプ、レーザー光源又はLED(Light Emitting Diode)光源等である。ここで、白色光とは、可視光領域(波長約400nm~約720nm)の波長の可視光線を混ぜ合わせた光であり、例えば、赤、緑及び青の3色(3原色)の光を適切な比率で混合した光であってもよい。
【0030】
ライトガイド54は、光源部52から出力された白色光を鏡筒56に伝播する光路を形成する部材であり、例えば、光ファイバである。
【0031】
鏡筒56は、同軸落射型の照明光学系を有している。鏡筒56には、照明用レンズ58、ビームスプリッター60、結像レンズ72及び絞り74が配置されている。鏡筒56とステージST1との高さ方向(Z方向)の相対位置(距離)は、制御部12により変更可能となっている。なお、図1に示す例では、鏡筒56をZ方向に移動させるようにしたが、基台ST3にZ方向の駆動機構を設けてステージST1を移動させるようにしてもよいし、両者を移動可能としてもよい。
【0032】
照明用レンズ58は、ライトガイド54を介して鏡筒56に入射した白色光(照明光)を干渉対物レンズ66の瞳位置に導光する(結像させる)光学系を有する。照明用レンズ58から出力された照明光は、ビームスプリッター60によって反射されて対物部64に導光される。
【0033】
ビームスプリッター60を介して導光された照明光は、干渉対物レンズ66により対物部64の出射側に導光される。対物部64の出射側に導光された照明光のうちハーフミラー68を透過した成分(測定光L0)は、ステージST1に載置された円筒形状のワークWの内部に導光された後、ミラー部材Mの反射面Mで反射されてワークWの内面Winに到達して反射される。そして、ワークWの内面Winからの第1の反射光L1は、ハーフミラー68を透過して結像レンズ72に到達する。一方、対物部64の出射側に導光された照明光のうちハーフミラー68に反射された成分(第2の反射光L2)は、参照ミラー70に導光されて反射される。参照ミラー70は、干渉対物レンズ66の出射側(ワークW側)の焦点位置と共役な位置に配置されている。参照ミラー70からの第2の反射光L2は、ハーフミラー68に反射されて結像レンズ72に到達する。
【0034】
結像レンズ72は、ワークWの内面Winからの反射光L1と、参照ミラー70からの第2の反射光L2とを検出器76の光検出面に結像させる光学系を有する。
【0035】
絞り74は、結像レンズ72と検出器76との間に設けられており、結像レンズ72から検出器76に導光される第1の反射光L1及び第2の反射光L2の一部を遮光する。
【0036】
検出器76は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の光検出アレイ素子(以下、イメージセンサーという。)を含んでいる。検出器76は、イメージセンサーの各受光素子が検出した光強度を示すアナログ又はデジタルの検出信号を生成し、信号処理部18に出力する。これにより、ワークWの内面Winの画像が取得される。また、検出器76は、この画像の各画素の干渉波形(インターフェログラム)を取得する。
【0037】
検出器76は、ワークWの内面Winからの第1の反射光L1及び参照ミラー70からの第2の反射光L2を受光して検出信号を生成し、信号処理部18に出力する。
【0038】
信号処理部18は、白色干渉顕微鏡50の検出器76から検出信号を取得して、この検出信号に対して所定の信号処理を行い、干渉縞の形状及び振幅等を算出する。ここで、干渉対物レンズ66を高さ方向(Z方向)に走査したときに得られる輝度変化曲線(干渉波形)をインターフェログラムという。
【0039】
制御部12は、干渉対物レンズ66を高さ方向(Z方向)に走査したときに、信号処理部18によって算出された干渉縞の形状及び振幅等に基づいて、ワークWの内面Winの形状、表面粗さ等の測定を行う。具体的には、制御部12は、ワークWの内面Winとハーフミラー68との間の距離と、参照ミラー70とハーフミラー68との間の距離の差(以下、光路差という。)を利用して、ワークWの内面Winの形状、表面粗さ等の測定を行う。このような測定方法は、垂直走査法(VSI:Vertical Scanning Interferometry)と呼ばれる。垂直走査法については、例えば、米国特許第4340306号明細書に記載されている。なお、垂直走査法は、CSI(Coherence Scanning Interferometry)として、国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)により規格化されている(ISO25178-604:2013)。
【0040】
光路差が変化すると、第1の反射光L1と第2の反射光L2との間に位相差が変化し、この位相差の変化に応じて干渉縞が変化する。光路差がゼロの場合、すなわち、ワークWの内面Winに合焦している場合には、第1の反射光L1と第2の反射光L2との間に位相差が生じない。このため、干渉強度が最大となり、干渉縞の振幅が最大になる。一方、光路差が大きくなると、干渉強度が小さくなる。
【0041】
制御部12は、例えば、信号処理部18によって算出された干渉縞の振幅が最大になるときの干渉対物レンズ66の高さ方向(Z方向)の位置(Z軸高さ)を取得する。ここで、干渉縞の振幅が最大になるときの干渉対物レンズ66の高さ方向の位置は、インターフェログラムにおける包絡線から求めることができる。そして、制御部12は、この干渉対物レンズ66の位置に基づいて、ワークWの内面Winの高さ位置(合焦位置)を算出し、ワークWの内面Winの形状、表面粗さ等の測定を行う。制御部12は、この測定の結果を記憶部16に格納したり、入出力部14の表示部に表示させることが可能となっている。
【0042】
なお、ワークWの内面Winの高さ位置の測定方法は、VSI又はCSIに限定されない。ワークWの内面Winの高さ位置の測定方法としては、例えば、周波数領域法(FDA:Frequency Domain Analysis)又は位相シフト法(PSI:Phase Shifting Interferometry)を適用してもよい。周波数領域法は、インターフェログラムをフーリエ変換し、振幅スペクトルのピーク位置付近で、波数に対する位相の勾配を求めることにより、ワークWの内面Winの高さ位置を求める方法である。周波数領域法については、例えば、米国特許第5398113号明細書に記載されている。位相シフト法は、干渉対物レンズ66の焦点位置を光軸方向にシフトさせたときの画素の濃度値の変化に基づいて、ワークWの内面Winの高さ位置を求める方法である。位相シフト法については、例えば、J. H. Bruning et al.: "Digital Wavefront Measuring Interferometer for Testing Optical Surfaces and Lenses, Applied Optics, Vol. 13, Issue 11, pp. 2693-2703 (1974)に記載されている。
【0043】
ワークWの内面Winの形状を測定する場合、Z方向に沿う走査は、直動ステージ駆動部82により行われる。直動ステージ駆動部82は、基台ST3に対して回転ステージST1及び直動ステージST2をX方向に直動移動させるための駆動機構(例えば、アクチュエータ等)を備えている。
【0044】
また、ワークWの周方向に沿う走査は、回転ステージ駆動部80により行われる。回転ステージ駆動部80は、回転ステージST1をZ軸回りに回転させるための駆動機構(例えば、アクチュエータ等)を備えている。
【0045】
制御部12は、回転ステージ駆動部80及び直動ステージ駆動部82により、ワークWの内面Winの撮像を順次行う。そして、制御部12は、順次撮像された画像をつなぎ合わせることにより、ワークWの測定対象範囲全体の合成画像を作成することができる(例えば、特開2020-159759号公報参照)。これにより、ワークWの測定対象範囲全体の形状の測定を行うことが可能になる。
【0046】
[ワークWの内面Winの走査手順]
次に、円筒形状のワークWの内面Winを測定する場合の走査手順について説明する。
【0047】
図2は、ワークWの内面Winを高さ方向(Z方向)に走査する手順を示す図(正面図及び一部断面図)である。図2において、(b)は、ミラー部材Mの中心軸と対物部64の光軸AXとが一致した状態を示しており、(a)及び(c)は、円筒形状のワークWとミラー部材Mが(b)を基準としてそれぞれ±X方向に直動移動した状態を示している。なお、ワークWの中心軸は、回転ステージST1の中心軸と一致するように配置されている。
【0048】
図2に示すように、ミラー部材Mの反射面Mは、Z軸(回転ステージST1の回転軸)及びX軸(直動移動方向)に対して45°傾斜しており、ワークWに照射される測定光L0は反射面Mにより直角に折り曲げられてワークWの内面Winに入射する。ワークWに照射される測定光L0の照射位置(観察対象位置)は、直動ステージ駆動部82により直動ステージST2をX方向に移動させることによりZ方向に変更可能となっている。
【0049】
図2(b)に示すように、ミラー部材Mの反射面Mが位置M(0)にある場合、測定光L0の照射位置V(0)が測定可能な領域(以下、測定視野という。)となる。
【0050】
図2(b)において、対物レンズ64から、反射面M上における測定光L0の到達位置(反射位置)P(0)までの距離をZ、位置P(0)から位置V(0)までの距離をXとする。このとき、対物レンズ64から位置V(0)までの光路長D(0)は、D(0)=Z+Xとなる。
【0051】
次に、図2(a)に示すように、直動ステージST2の直動移動に伴って回転ステージST1も共に+X方向にΔX移動した場合、ワークWの内面Winが位置Win(0)から+X方向にΔX移動した位置Win(+)に移動し、ミラー部材Mの反射面Mが位置M(0)から+X方向にΔX移動した位置M(+)に移動する。この場合、測定光L0の照射位置が上側(+Z側)にΔZ移動し、測定視野がV(+)となる。
【0052】
図2(a)において、対物レンズ64から、反射面M上における測定光L0の到達位置P(+)までの距離は(Z-ΔZ)、位置P(+)から位置V(+)までの距離は(X+ΔX)となる。このとき、対物レンズ64から位置V(+)までの光路長D(+)は、D(+)=(Z-ΔZ)+(X+ΔX)となる。ここで、反射面MSの傾斜角が45°であるから、ΔX=ΔZである。したがって、D(+)=Z+Xとなる。
【0053】
また、図2(c)に示すように、直動ステージST2の直動移動に伴って回転ステージST1も共に-X方向にΔX移動した場合、ワークWの内面Winが位置Win(0)から-X方向にΔX移動した位置Win(-)に移動し、ミラー部材Mの反射面Mが位置M(0)から-X方向にΔX移動した位置M(-)に移動する。この場合、測定光L0の照射位置が下側(-Z側)にΔZ移動し、測定視野がV(-)となる。
【0054】
図2(c)において、対物レンズ64から、反射面M上における測定光L0の到達位置P(-)までの距離は(Z+ΔZ)、位置P(-)から位置V(-)までの距離は(X-ΔX)となる。このとき、対物レンズ64から位置V(-)までの光路長D(+)は、D(+)=(Z-ΔZ)+(X+ΔX)=Z+Xとなる。
【0055】
このように、直動移動を繰り返してワークWの内面Winを順次走査することにより、Z方向の全測定対象範囲の測定データを得ることが可能になる。図2に示すように、本実施形態では、ミラー部材Mの直動移動によりZ方向の走査を行うので、直動移動の前後で対物部64からワークWの内面Winまでの距離が変化しない(D(0)=D(-)=D(+))。このため、ワークWの内面Winを上部から下部に走査してもあらためてピント合わせを行う必要がないので、ワークWの内面Winの形状を高さ方向の広範囲にわたって精度よくかつ容易に測定することができる。
【0056】
図3は、ワークWの内面Winを高さ方向(Z方向)及び周方向に走査する手順を示す図である。
【0057】
直動ステージST2を-X方向に順次移動させると、図3に示すように、測定視野が位置V(1,1)、V(1,2)、…、V(1,N)の順に移動する。ここで、直動移動量ΔX及び直動移動の繰り返し回数(移動回数)Nは、測定視野V(i,j)の形状、大きさ及び測定データ(画像)のつなぎ合わせのための重複領域(位置合わせに使用する画素群。例えば、特開2020-159759号公報参照。)の大きさZによって決まる。図3に示す例では、測定視野V(i,j)は略矩形であるため、直動移動量ΔX及び直動移動の繰り返し回数Nは、Z方向の測定対象範囲(Z方向測定範囲)Z、測定視野V(i,j)のZ方向寸法Z及び測定データ(画像)のつなぎ合わせのための重複領域の大きさZにより決定される。この場合、直動移動量ΔXは、Z-Zとなる。また、直動移動の繰り返し回数Nは、N×Z-(N-1)×Z≧Zとなる範囲で決定される。なお、測定視野V(i,j)の形状によっては、Zは上下で異なりうる。
【0058】
Z方向測定範囲Z全体の走査が終了すると、回転ステージST1をZ軸周りに回転角θ回転させて、次の列V(2,1)、V(2,2)、…、V(2,N)の走査が行われる。ここで、回転角θは、測定視野V(i,j)の形状、大きさ及び測定データ(画像)のつなぎ合わせのための重複領域の大きさCによって決まる。図3に示す例では、測定視野V(i,j)は略矩形であるため、回転移動の繰り返し回数Mは、ワークWの内面Winの周の長さC、測定視野V(i,j)の周方向寸法C及び測定データ(画像)のつなぎ合わせのための重複領域の大きさCにより決定される。この場合、回転移動の繰り返し回数Mは、M×C-(M-2)×C≧Cとなる範囲で決定される。なお、測定視野V(i,j)の形状によっては、Cは左右で異なりうる。
【0059】
上記のように、Z方向及び周方向の走査を繰り返すことにより、ワークWの内面Winの測定対象範囲全体の測定を行うことができる。
【0060】
なお、上記の例では、Z方向の走査と周方向の走査をV(1,1)~V(1,N)、V(2,1)~V(2,N)、…、V(M,1)~V(M,N)の順番で行ったが、走査の順番は上記の例に限定されない。ワークWの形状及び大きさ等に応じてより効率的な走査の順番を選択可能である。例えば、Z方向の走査の順番を隔行で逆にしてもよい(V(1,1)~V(1,N)、V(2,N)~V(2,1)、V(3,1)~V(3,N)、…)。また、周方向の走査を先に行ってもよい(例えば、V(1,1)~V(M,1)、V(M,2)、V(1,2)~V(M-1,2)、V(M-1,3)、…)。
【0061】
[測定方法]
図4は、本発明の一実施形態に係る測定方法を示すフローチャートであり、図5は、図4のZ方向測定工程を示すフローチャートである。
【0062】
まず、ワークWを回転ステージST1に設置し(ステップS10)、白色干渉顕微鏡50の光学系(鏡筒56)とワークWをZ方向に相対移動させてピント合わせを行う(ステップS12)。ステップS10において、ワークWの中心軸は、対物部64の光軸AXと一致するように配置される。そして、ステップS12のピント合わせは、ミラー部材Mの中心軸と対物部64の光軸AXとが一致した状態で行う(図2(b)参照)。
【0063】
次に、入出力部12により、ワークWの内面WinにおけるZ方向測定範囲Zを設定する(ステップS14)。
【0064】
次に、測定視野V(i,j)の大きさに基づいて直動ステージの移動量ΔX、移動回数N及び回転角度θを算出する(ステップS16)。
【0065】
次に、周方向走査の繰り返しパラメータiを初期化してi=1とし(ステップS18)、ワークのZ方向測定範囲Z(測定視野V(i,j))の測定を順次行う(ステップS20)。
【0066】
図5に示すように、ステップS20(Z方向測定工程)では、まず、Z方向走査の繰り返しパラメータjを初期化してj=1とし(ステップS200)、測定視野V(1,1)の測定を行う(ステップS202)。次に、直動ステージST2をΔX移動させて(ステップS204のNo、ステップS206)、j=j+1として(ステップS208)、測定視野V(1,2)の測定を行う(ステップS202)。
【0067】
上記のように、ステップS202からS208を繰り返すことにより、ワークWのZ方向測定範囲Z(測定視野V(1,1)~V(1,N))の測定を行う。そして、j=Nとなって、ワークWのZ方向測定範囲Z(測定視野V(1,1)~V(1,N))の測定が終了すると(ステップS204のYes)、ワークWの内面WinのZ方向測定範囲Z(測定視野V(1,1)~V(1,N))の測定データをつなぎ合わせる(ステップS210)。
【0068】
このように、Z方向測定工程(ステップS20)が行われた後、図4に示すように、i=Mでない場合、すなわち、ワークWの全周の測定が終了していない場合(ステップS22のNo)には、回転ステージST1をθ回転させ(ステップS24)、i=i+1として(ステップS26)、ワークWのZ方向測定範囲Z(測定視野V(2,1)~V(2,N))の測定を行う。
【0069】
上記のように、ステップS20からS26を繰り返すことにより、ワークWの周方向の走査を繰り返す。そして、i=Mとなって、ワークWの全周の測定が終了すると(ステップS22のYes)、ワークの全周の測定データをつなぎ合わせる(ステップS28)。これにより、ワークWの内面Winの測定対象範囲全体の測定データ(合成画像)を得ることができる。
【0070】
本実施形態によれば、ワークWの内面Winを上部から下部に走査してもあらためてピント合わせを行う必要がないので、ワークWの内面Winの形状を高さ方向の広範囲にわたって精度よくかつ容易に測定することができる。
【0071】
なお、図5に示す例では、Z方向測定工程のループごとに画像のつなぎ合わせを行ったが、全周の測定終了後(ステップS28)で全測定データのつなぎ合わせを行うようにしてもよい。また、周方向の走査を先に行う場合には、周方向のつなぎ合わせを先に行ってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1…測定装置、10…制御装置、12…制御部、14…入出力部、16…記憶部、18…信号処理部、50…白色干渉顕微鏡、52…光源部、54…ライトガイド、56…鏡筒、58…照明用レンズ、60…ビームスプリッター、62…ターレット、64…対物部、66…干渉対物レンズ、68…ハーフミラー、70…参照ミラー、72…結像レンズ、74…絞り、76…検出器、80…回転ステージ駆動部、82…直動ステージ駆動部、ST…ステージ、ST1…回転ステージ、ST2…直動ステージ、ST3…基台、M…ミラー部材
図1
図2
図3
図4
図5