(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142371
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】状態推定装置及び状態推定方法
(51)【国際特許分類】
H04W 24/08 20090101AFI20220922BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20220922BHJP
【FI】
H04W24/08
H04W16/28 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042520
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 友規
(72)【発明者】
【氏名】加藤 空知
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 俊介
(72)【発明者】
【氏名】藤橋 卓也
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 尚
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067BB21
5K067DD42
5K067DD43
5K067EE02
5K067EE10
5K067KK03
(57)【要約】
【課題】チャネル状態情報を高精度で推定することができる状態推定装置及び状態推定方法を提供する。
【解決手段】実施形態にかかる状態推定装置は、1つ以上の送信装置が1つ以上の受信装置へMIMO伝送を行うためにチャネルごとに用いる伝搬チャネル情報をそれぞれ受信する複数の受信部と、複数の前記受信部が受信した伝搬チャネル情報それぞれに基づいて、チャネルごとにチャネル状態情報を推定する複数の状態推定部と、複数の前記状態推定部がそれぞれ推定した複数のチャネル状態情報に基づいてカーネル密度推定を行うことにより、前記送信装置と前記受信装置との間の状態を推定する最終状態推定部とを有することを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の送信装置が1つ以上の受信装置へMIMO伝送を行うためにチャネルごとに用いる伝搬チャネル情報をそれぞれ受信する複数の受信部と、
複数の前記受信部が受信した伝搬チャネル情報それぞれに基づいて、チャネルごとにチャネル状態情報を推定する複数の状態推定部と、
複数の前記状態推定部がそれぞれ推定した複数のチャネル状態情報に基づいてカーネル密度推定を行うことにより、前記送信装置と前記受信装置との間の状態を推定する最終状態推定部と
を有することを特徴とする状態推定装置。
【請求項2】
複数の前記状態推定部がそれぞれ推定した複数のチャネル状態情報に対して重み付けを行う重み付け部をさらに有し、
前記最終状態推定部は、
前記重み付け部が重み付けを行った複数のチャネル状態情報に基づいてカーネル密度推定を行うこと
を特徴とする請求項1に記載の状態推定装置。
【請求項3】
複数の前記受信部は、
それぞれ異なるアンテナ、又はそれぞれ異なる周波数チャネルから伝搬チャネル情報をそれぞれ受信すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の状態推定装置。
【請求項4】
前記最終状態推定部は、
複数の前記状態推定部が推定したチャネル状態情報に基づいて、使用するカーネル関数を変更してカーネル密度推定を行うこと
を特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の状態推定装置。
【請求項5】
1つ以上の送信装置が1つ以上の受信装置へMIMO伝送を行うためにチャネルごとに用いる伝搬チャネル情報をそれぞれ受信する受信工程と、
受信した伝搬チャネル情報それぞれに基づいて、チャネルごとにチャネル状態情報を推定する状態推定工程と、
推定した複数のチャネル状態情報に基づいてカーネル密度推定を行うことにより、前記送信装置と前記受信装置との間の状態を推定する最終状態推定工程と
を含むことを特徴とする状態推定方法。
【請求項6】
推定した複数のチャネル状態情報に対して重み付けを行う重み付け工程をさらに含み、
前記最終状態推定工程では、
重み付けを行った複数のチャネル状態情報に基づいてカーネル密度推定を行うこと
を特徴とする請求項5に記載の状態推定方法。
【請求項7】
前記受信工程では、
異なるアンテナ又は異なる周波数チャネルから伝搬チャネル情報をそれぞれ受信すること
を特徴とする請求項5又は6に記載の状態推定方法。
【請求項8】
前記最終状態推定工程では、
前記状態推定工程で推定したチャネル状態情報に基づいて、使用するカーネル関数を変更してカーネル密度推定を行うこと
を特徴とする請求項5~7のいずれか1項に記載の状態推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、状態推定装置及び状態推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、送信装置となる無線基地局が受信装置となる無線端末局へMIMO(Multiple Input Multiple Output)伝送を行うために、伝搬チャネル情報に基づいて、信号が経由した無線チャネルの状態を表すCSI(Channel State Information:チャネル状態情報)を算出する技術が知られている。
【0003】
伝搬チャネル情報には、サブキャリアと呼ばれる複数の周波数における送受信アンテナ間の振幅及び位相情報が含まれる。伝搬チャネル情報は、例えばマルチユーザMIMO伝送における送信ビームフォーミングに用いられる。
【0004】
また、伝搬チャネル情報は、従来の信号強度情報よりも膨大な情報となるため、伝搬路の状態推定の高精度化につながることが知られている。さらに、5G(第5世代移動通信システム)などでは、アンテナ数の大規模化が検討されており、より多くの情報を取得することが可能になると考えられている。
【0005】
また、無線通信システムの対象エリア内に送信装置と受信装置を設置し、対象エリア内にある物体(エリア内にいる人)の状態を、伝搬チャネル情報を用いて検出する技術は公知である(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】YANG XU, WEI YANG, JIANXIN WANG, XING ZHOU, HONG LI, and LIUSHENG HUANG, "WiStep: Device-free Step Counting with WiFi Signals", Proceedings of the ACM on Interactive, Mobile, Wearable and Ubiquitous Technologies, Vol. 1, No. 4, Article 172., December 2017., p.1-23
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に普及している無線デバイスは、伝搬チャネル情報を出力しないものが多い。また、CSIを算出する送信装置と受信装置との間にある物体が、伝搬チャネル情報などを出力しない物体である場合、伝搬チャネル情報を出力する物体である場合に比べて、一般的に伝搬チャネル情報の変化が微小であるため、CSIを推定する精度を高めることが難しいという問題があった。
【0008】
例えば、個々のサブキャリアの電波は、送信装置と受信装置との間に存在する電波を発しない物体による遮蔽があっても、変動が小さく、CSIを推定する精度の向上が困難になる場合があった。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、チャネル状態情報を高精度で推定することができる状態推定装置及び状態推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態にかかる状態推定装置は、1つ以上の送信装置が1つ以上の受信装置へMIMO伝送を行うためにチャネルごとに用いる伝搬チャネル情報をそれぞれ受信する複数の受信部と、複数の前記受信部が受信した伝搬チャネル情報それぞれに基づいて、チャネルごとにチャネル状態情報を推定する複数の状態推定部と、複数の前記状態推定部がそれぞれ推定した複数のチャネル状態情報に基づいてカーネル密度推定を行うことにより、前記送信装置と前記受信装置との間の状態を推定する最終状態推定部とを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一実施形態にかかる状態推定方法は、1つ以上の送信装置が1つ以上の受信装置へMIMO伝送を行うためにチャネルごとに用いる伝搬チャネル情報をそれぞれ受信する受信工程と、受信した伝搬チャネル情報それぞれに基づいて、チャネルごとにチャネル状態情報を推定する状態推定工程と、推定した複数のチャネル状態情報に基づいてカーネル密度推定を行うことにより、前記送信装置と前記受信装置との間の状態を推定する最終状態推定工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、チャネル状態情報を高精度で推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態にかかる状態推定システムの構成例を示す図である。
【
図4】一実施形態にかかる状態推定装置の構成例を示す図である。
【
図5】一実施形態にかかる状態推定装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図6】状態推定装置の第1変形例の構成例を示す図である。
【
図7】状態推定装置の第2変形例の構成例を示す図である。
【
図8】他の実施形態にかかる状態推定システムの構成例を示す図である。
【
図9】無線基地局と無線端末との間に複数の物体がある場合の状態推定システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、一実施形態にかかる状態推定システムの構成例について、図面を用いて説明する。
図1は、一実施形態にかかる状態推定システム1の構成例を示す図である。状態推定システム1は、例えば無線基地局10と無線端末20とが例えば無線LAN(IEEE 802.11ax等)又は5Gなどのマルチキャリア伝送方式による無線通信を行い、無線基地局10と無線端末20との間の状態を状態推定装置30が推定するように構成されている。
【0015】
つまり、無線基地局10及び無線端末20は、いずれも送信装置としての機能、及び受信装置としての機能を備え、MIMO伝送を行うために互いに無線通信が可能な所定の対象エリア内に位置している。また、状態推定装置30は、無線基地局10及び無線端末20のいずれからも電波を受信可能な場所に位置している。
【0016】
例えば、無線基地局10と無線端末20との間(対象エリア内)に物体100が存在している場合、状態推定装置30は、無線基地局10が送信した信号が経由した無線チャネルの状態を表す伝搬チャネル情報を受信し、伝搬チャネル情報に基づいて物体100が存在することなどを検出する。つまり、状態推定システム1は、物体検出システムとしての機能を備えている。
【0017】
図2は、無線基地局10の構成例を示す図である。
図2に示すように、無線基地局10は、例えば信号生成部11、複数の送信部12、複数のアンテナ13、複数の受信部14、及び信号解析部15を有する。なお、無線基地局10は、一般的な無線基地局が備える他の機能(図示せず)も備えている。
【0018】
信号生成部11は、無線端末20が伝搬チャネル情報を測定するための送信信号、及びデータ用の送信信号を生成し、生成した送信信号を送信部12に対して出力する。
【0019】
なお、信号生成部11は、データ用の送信信号を生成する場合に、無線端末20から通知された信号を用いてビームフォーミングを行い、データ用の送信信号を生成してもよい。
【0020】
送信部12は、信号生成部11が出力した送信信号をそれぞれ所定の周波数の無線信号に変換し、アンテナ13に対してそれぞれ出力する。
【0021】
アンテナ13は、送信部12それぞれが出力した無線信号を空中に送信する。また、アンテナ13は、無線端末20が所定の周波数で送信した無線信号をそれぞれ受信し、受信部14に対してそれぞれ出力する。
【0022】
受信部14は、アンテナ13から入力された無線信号をそれぞれ受信信号に変換し、変換した受信信号をそれぞれ信号解析部15に対して出力する。
【0023】
信号解析部15は、受信部14それぞれが出力した信号を取得し、取得した信号それぞれに基づいて、伝搬チャネル情報及びデータなどを抽出する。そして、信号解析部15は、伝搬チャネル情報などの所定の信号を信号生成部11に対して出力する。
【0024】
なお、無線基地局10は、エクスプリシットビームフォーミングを行ってもよいし、インプリシットビームフォーミングを行ってもよい。
【0025】
図3は、無線端末20の構成例を示す図である。
図3に示すように、無線端末20は、例えば複数のアンテナ21、複数の受信部22、信号解析部23、通知信号生成部24、及び複数の送信部25を有する。なお、無線端末20は、一般的な無線端末が備える他の機能(図示せず)も備えている。
【0026】
アンテナ21は、無線基地局10が送信した伝搬チャネル情報を測定するための送信信号をそれぞれ受信し、受信部22に対して出力する。また、アンテナ21は、送信部25それぞれが出力した無線信号を空中に送信する。
【0027】
受信部22は、アンテナ21から入力された無線信号をそれぞれ受信信号に変換し、変換した受信信号をそれぞれ信号解析部23に対して出力する。
【0028】
信号解析部23は、受信部22それぞれが出力した受信信号に基づいて伝搬チャネル情報の測定を行い、測定結果を通知信号生成部24に対して出力する。
【0029】
通知信号生成部24は、信号解析部23が出力した測定結果に基づいて、例えば伝搬チャネル情報を含む通知信号を生成し、生成した通知信号を送信部25それぞれに対して出力する。
【0030】
なお、通知信号生成部24が生成する通知信号は、伝搬チャネル情報そのものを含む信号ではなく、情報圧縮された信号、又は特異値分解を施した変換情報など、チャネル状態を示す情報であれば、他の情報であってもよい。
【0031】
送信部25は、通知信号生成部24が出力した通知信号をそれぞれ所定の周波数の無線信号に変換し、アンテナ21に対してそれぞれ出力する。
【0032】
図4は、一実施形態にかかる状態推定装置30の構成例を示す図である。
図4に示すように、状態推定装置30は、例えば複数のアンテナ31、複数の受信部32、解析部33、複数のノイズ除去部34、複数のフーリエ変換部35、複数の状態推定部36、及び最終状態推定部37を有する。
【0033】
アンテナ31は、無線基地局10及び無線端末20それぞれが送信する無線信号を受信し、受信した無線信号を受信部32それぞれに対して出力する。
【0034】
受信部32は、それぞれ受信部32が出力した無線信号をそれぞれベースバンドの受信信号に変換し、変換した信号を解析部33に対してそれぞれ出力する。例えば、受信部32は、無線基地局10が無線端末20へMIMO伝送を行うためにチャネルごとに用いる伝搬チャネル情報をそれぞれ受信する。また、受信部32は、それぞれ異なるアンテナ31、又はそれぞれ異なる周波数チャネルから伝搬チャネル情報をそれぞれ受信してもよい。
【0035】
解析部33は、受信部32それぞれが出力した信号を用いて、例えば無線端末20が送信した通知信号を選別し、当該通知信号に基づいて伝搬チャネル情報、又は伝搬チャネル情報の変換情報を算出し、ノイズ除去部34それぞれに対して出力する。
【0036】
解析部33は、受信部32が出力した信号がチャネル状態を示す変換情報である場合、伝搬チャネル情報の全て又は一部を復元して取得し、ノイズ除去部34に対してサブキャリアごとにそれぞれ出力する。
【0037】
なお、無線端末20は、例えば所定の間隔で連続して通知信号を送信する。このとき、解析部33は、連続して送信されるそれぞれの通知信号ごとに伝搬チャネル情報を算出し、算出した時系列の伝搬チャネル情報をそれぞれノイズ除去部34に対して出力する。
【0038】
ノイズ除去部34は、解析部33が出力した時系列の伝搬チャネル情報に対して、移動平均処理やフィルタリング処理を行うことにより、ノイズ成分の除去をする処理を行い、処理結果をフーリエ変換部35に対してそれぞれ出力する。
【0039】
フーリエ変換部35は、ノイズ成分を除去された時系列の伝搬チャネル情報(時系列情報)に対してフーリエ変換を行うことにより、時間軸の時系列情報を周波数軸上の情報に変換し、それぞれ状態推定部36に対して出力する。
【0040】
状態推定部36は、フーリエ変換部35が出力した周波数軸上の情報に基づいて、無線基地局10と無線端末20との間のチャネルごとにチャネル状態をそれぞれ推定し、推定したチャネル状態を最終状態推定部37に対してそれぞれ出力する。
【0041】
例えば、状態推定部36は、フーリエ変換部35から連続的に入力される情報それぞれに対し、予め設定されたしきい値を超える大きさの周波数の信号を数え、しきい値を超えた回数を周波数ごと(サブキャリアごと)に記録して、記録した周波数ごとの回数情報を最終状態推定部37に対してそれぞれ出力する。
【0042】
つまり、複数の状態推定部36は、複数の受信部32が受信した伝搬チャネル情報それぞれに基づいて、チャネルごとにチャネル状態情報をそれぞれ推定する。
【0043】
最終状態推定部37は、状態推定部36それぞれが出力した周波数ごとの回数情報に対し、所定のしきい値を下回る周波数情報を削除することにより、相対的に特徴のない状態を除去するとともに、所定のしきい値以上の回数情報に対して、カーネル密度推定法を用いて周波数ごとの推定回数を推定する。カーネル密度推定法は、有限の標本点から全体の分布を推定する手法の1つである。
【0044】
つまり、最終状態推定部37は、複数の状態推定部36がそれぞれ推定した複数のチャネル状態情報に基づいてカーネル密度推定を行うことにより、無線基地局10と無線端末20との間の状態を推定する。
【0045】
また、最終状態推定部37は、例えば正規分布(ガウス分布)、均等化、若しくは三角化などのカーネル関数、又はノンパラメトリックモデル推定を適用してカーネル密度推定を行う。例えば、最終状態推定部37は、複数の状態推定部36が推定したチャネル状態情報(すなわち環境などに相当)に基づいて、使用するカーネル関数を変更してカーネル密度推定を行う。
【0046】
次に、状態推定装置30の動作例について説明する。
図5は、一実施形態にかかる状態推定装置30の動作例を示すフローチャートである。
図5に示すように、状態推定装置30は、例えば解析部33が複数のアンテナ31及び複数の受信部32を介して無線端末20が送信した通知信号を受信したか否かを判定する(S100)。解析部33は、無線端末20が送信した通知信号を受信した場合(S100:Yes)にはS102の処理に進み、通知信号を受信していない場合(S100:No)には処理を継続する。
【0047】
ステップ102(S102)において、解析部33は、通知信号に基づいて伝搬チャネル情報を取得する。
【0048】
ステップ104(S104)において、解析部33は、N個(無線端末20のアンテナ21の数)分の伝搬チャネル情報を取得したか否かを判定し、N個分の取得をした場合(S104:Yes)にはS106の処理に進み、N個分の取得をしていない場合(S104:No)にはS100の処理に戻る。
【0049】
ステップ106(S106)において、複数のノイズ除去部34は、解析部33が取得した伝搬チャネル情報それぞれに対し、サブキャリアごとにそれぞれノイズ除去を行い、ノイズを除去した信号を複数のフーリエ変換部35に対してそれぞれ出力する。
【0050】
ステップ108(S108)において、複数のフーリエ変換部35は、複数のノイズ除去部34それぞれが出力した信号に対し、サブキャリアごとにそれぞれフーリエ変換を行い、フーリエ変換した信号を複数の状態推定部36に対してそれぞれ出力する。
【0051】
ステップ110(S110)において、複数の状態推定部36は、複数のフーリエ変換部35がそれぞれフーリエ変換した信号を用いて、サブキャリアごとに状態推定を行い、チャネルごとのCSIを最終状態推定部37に対してそれぞれ出力する。
【0052】
ステップ112(S112)において、最終状態推定部37は、M(状態推定装置30のアンテナ31の数)個分のCSIの推定をしたか否かを判定し、M個分の推定をした場合(S112:Yes)にはS114の処理に進み、M個分の推定をしていない場合(S112:No)にはS100の処理に戻る。
【0053】
ステップ114(S114)において、最終状態推定部37は、カーネル密度推定を行って周波数ごとの状態推定回数を推定し、無線基地局10と無線端末20との間の最終状態を推定する。例えば、最終状態推定部37は、無線基地局10と無線端末20との間にある物体を検出する。
【0054】
このように、状態推定装置30は、複数の状態推定部36がそれぞれ推定した複数のチャネル状態情報に基づいてカーネル密度推定を行うことにより、無線基地局10と無線端末20との間の状態を推定するので、チャネル状態情報を高精度で推定することができる。
【0055】
次に、状態推定装置30の変形例について説明する。
図6は、状態推定装置30の第1変形例(状態推定装置30a)の構成例を示す図である。なお、
図6に示した状態推定装置30aにおいて、
図4に示した状態推定装置30の構成と実質的に同一の構成には同一の符号が付してある。
【0056】
図6に示したように、状態推定装置30aは、例えば複数のアンテナ31、複数の受信部32、解析部33、複数のノイズ除去部34、複数のフーリエ変換部35、複数の状態推定部36、重み付け部38、及び最終状態推定部37aを有する。
【0057】
重み付け部38は、複数の状態推定部36がそれぞれ推定した複数のチャネル状態情報に対して重み付けを行う。例えば、重み付け部38は、無線基地局10と無線端末20との間のサブキャリアごとの信号強度に比例する重み、又は、事前に測定された伝搬チャネル情報の精度、若しくはシミュレーションから算出された伝搬チャネル情報の精度に基づく重みなどをサブキャリアごとに付与する。
【0058】
そして、最終状態推定部37aは、重み付け部38が重み付けを行った複数のチャネル状態情報に基づいてカーネル密度推定を行う。したがって、状態推定装置30aは、状態推定装置30よりも精度よくチャネル状態情報を推定することが可能である。
【0059】
図7は、状態推定装置30の第2変形例(状態推定装置30b)の構成例を示す図である。なお、
図7に示した状態推定装置30bにおいて、
図4に示した状態推定装置30の構成と実質的に同一の構成には同一の符号が付してある。
【0060】
図7に示したように、状態推定装置30bは、例えば複数のアンテナ31、複数の受信部32、解析部33、複数の推定部39、及び最終状態推定部37bを有する。
【0061】
推定部39それぞれは、受信部32の数とそれぞれ同数のノイズ除去部34、フーリエ変換部35、及び状態推定部36を有する。また、複数の推定部39は、それぞれ異なるアンテナ31や周波数チャネルの情報を用いて複数のチャネル状態情報を推定する。
【0062】
そして、最終状態推定部37bは、複数の推定部39が推定した複数のチャネル状態情報に基づいてカーネル密度推定を行う。したがって、状態推定装置30bは、チャネル状態情報を推定するための情報量を状態推定装置30よりも多くすることができ、状態推定装置30よりも精度よくチャネル状態情報を推定することが可能である。
【0063】
さらに、状態推定装置30bは、上述した重み付け部38(
図6)を備え、サブキャリア・アンテナ31・周波数に対してそれぞれ重み付けを行うように構成されてもよい。
【0064】
図8は、他の実施形態にかかる状態推定システム1aの構成例を示す図である。
図8に示すように、状態推定システム1aは、例えば2台の無線基地局10と、2台の無線端末20とが例えば無線LAN(IEEE 802.11ax等)又は5Gなどのマルチキャリア伝送方式による無線通信を行い、無線基地局10と無線端末20それぞれの間の状態を状態推定装置30が推定するように構成されている。
【0065】
例えば、無線基地局10と無線端末20との間(対象エリア内)に物体100が存在している場合、状態推定装置30は、2台の無線基地局10が送信した信号が経由した無線チャネルの状態を表す伝搬チャネル情報をそれぞれ受信し、伝搬チャネル情報それぞれに基づいて物体100が存在することなどを検出する。つまり、状態推定システム1aは、上述した状態推定システム1よりも多い伝搬チャネル情報に基づいて物体100を精度よく検出することができる。
【0066】
図9は、無線基地局10と無線端末20との間に複数の物体100がある場合の状態推定システムの構成例を示す図である。
図9に示したように、無線基地局10と無線端末20との間に複数の物体100があっても、状態推定装置30は、複数の状態推定部36(
図4)がそれぞれサブキャリアごとに推定した複数のチャネル状態情報に基づいて、最終状態推定部37がカーネル密度推定を行うことにより、無線基地局10と無線端末20との間の状態を推定するので、チャネル状態情報を高精度で推定することができる。
【0067】
なお、上述した状態推定装置30、状態推定装置30a、及び状態推定装置30bそれぞれは、各機能の一部又は全部がPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアによって構成されてもよいし、CPU等のプロセッサが実行するプログラムとして構成されてもよい。
【0068】
例えば、一実施形態にかかる状態推定装置30、状態推定装置30a、及び状態推定装置30bそれぞれは、コンピュータとプログラムを用いて実現することができ、プログラムを記憶媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【符号の説明】
【0069】
1,1a・・・状態推定システム、10・・・無線基地局、11・・・信号生成部、12・・・送信部、13・・・アンテナ、14・・・受信部、15・・・信号解析部、20・・・無線端末、21・・・アンテナ、22・・・受信部、23・・・信号解析部、24・・・通知信号生成部、25・・・送信部、30,30a,30b・・・状態推定装置、31・・・アンテナ、32・・・受信部、33・・・解析部、34・・・ノイズ除去部、35・・・フーリエ変換部、36・・・状態推定部、37,37a,37b・・・最終状態推定部、38・・・重み付け部、39・・・推定部