(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142501
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】脂肪族芳香族ポリエステル組成物および脂肪族芳香族ポリエステル組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20220922BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20220922BHJP
C08K 5/524 20060101ALI20220922BHJP
C08K 5/053 20060101ALI20220922BHJP
C08K 5/20 20060101ALI20220922BHJP
C08G 63/181 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K5/09
C08K5/524
C08K5/053
C08K5/20
C08G63/181
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042693
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】岡部 未紗子
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊資
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇
【テーマコード(参考)】
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
4J002CF031
4J002CF041
4J002CF071
4J002DH036
4J002DH046
4J002EC056
4J002EG026
4J002EG036
4J002EG046
4J002EP016
4J002EW126
4J002FD206
4J002GA00
4J002GB00
4J002GG02
4J002GL00
4J029AD06
4J029AE03
4J029AE06
4J029BA05
4J029CA04
4J029CB03A
4J029CC03A
4J029CF07
4J029HA01
4J029HB01
4J029JB123
4J029JF251
4J029KC02
4J029KD02
4J029KD07
4J029KE08
(57)【要約】
【課題】従来の脂肪族芳香族ポリエステルの結晶化不足を改善し、高結晶化度の脂肪族芳香族ポリエステル組成物を提供する。
【解決手段】脂肪族芳香族ポリエステル及び核剤を含有する脂肪族芳香族ポリエステル組成物であって、該脂肪族芳香族ポリエステルが脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位及び芳香族ジカルボン酸単位を有し、該核剤が、脂肪酸金属塩、リン酸塩、芳香族ホスホン酸塩、多価アルコール、脂肪酸アミド、およびオレフィンとマレイン酸の共重合体よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物よりなり、該脂肪族芳香族ポリエステル100質量部に対して、該核剤を0.01~100質量部含有する、脂肪族芳香族ポリエステル組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族芳香族ポリエステル及び核剤を含有する脂肪族芳香族ポリエステル組成物であって、
該脂肪族芳香族ポリエステルが脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位及び芳香族ジカルボン酸単位を有し、
該核剤が、脂肪酸金属塩、リン酸塩、芳香族ホスホン酸塩、多価アルコール、脂肪酸アミド、およびオレフィンとマレイン酸の共重合体よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物よりなり、
該脂肪族芳香族ポリエステル100質量部に対して、該核剤を0.01~100質量部含有する、脂肪族芳香族ポリエステル組成物。
【請求項2】
前記脂肪族芳香族ポリエステル中の前記脂肪族ジカルボン酸単位:前記芳香族ジカルボン酸単位のモル比が20:80~80:20である、請求項1に記載の脂肪族芳香族ポリエステル組成物。
【請求項3】
前記脂肪族芳香族ポリエステルがポリブチレンサクシネートフラノエートである、請求項1又は2に記載の脂肪族芳香族ポリエステル組成物。
【請求項4】
前記核剤が、モンタン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、アルミニウム=ビス(4,4’,6,6’-テトラ-tert-ブチル-2,2’-メチレンジフェニル=ホスファート)=ヒドロキシド、リン酸カルシウム、ペンタエリスリトール、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、フェニルホスホン酸亜鉛、およびα-オレフィンと無水マレイン酸の共重合体よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物よりなる、請求項1乃至3の何れか1項に記載の脂肪族芳香族ポリエステル組成物。
【請求項5】
脂肪族芳香族ポリエステルおよび核剤を含有する脂肪族芳香族ポリエステル組成物の製造方法であって、脂肪族ジオール成分と脂肪族ジカルボン酸成分及び芳香族ジカルボン酸成分とをエステル化あるいはエステル交換反応させた後に重縮合反応させる工程と、得られた溶融状態の樹脂に核剤を添加する工程とを有し、該核剤が、脂肪酸金属塩、リン酸塩、芳香族ホスホン酸塩、多価アルコール、脂肪酸アミド、およびオレフィンとマレイン酸の共重合体よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物である、脂肪族芳香族ポリエステル組成物の製造方法。
【請求項6】
脂肪族芳香族ポリエステルおよび核剤を含有する脂肪族芳香族ポリエステル組成物の製造方法であって、該脂肪族芳香族ポリエステルが脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位及び芳香族ジカルボン酸単位を有し、溶融状態の該脂肪族芳香族ポリエステルに、脂肪酸金属塩、リン酸塩、芳香族ホスホン酸塩、多価アルコール、脂肪酸アミド、およびオレフィンとマレイン酸の共重合体よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を混練する工程を有する、脂肪族芳香族ポリエステル組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の脂肪族芳香族ポリエステル組成物の製造方法であって、更に前記脂肪族芳香族ポリエステル以外の樹脂を溶融混練する工程を有する、脂肪族芳香族ポリエステル組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族芳香族ポリエステルと特定の核剤とを含有する脂肪族芳香族ポリエステル組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種食品、薬品、雑貨用等の液状物や粉粒物、固形物の包装用資材、農業用資材、建築資材などの用途に、紙、プラスチック、アルミ箔等の様々な材料が用いられている。中でも、プラスチックは、強度、耐水性、成形性、透明性、コスト等において優れていることから、袋や容器などとして多様な用途で使用されている。現在、これらの用途には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等が用いられている。しかしながら、これらのプラスチック製品は、自然環境下においては、分解され難いために、使用後、埋設処理された場合に土中に残存したり、投棄された場合に景観を損ねたりすることがある。また、焼却処理された場合でも、有害なガスを発生したり、焼却炉を傷めたりするなどの問題がある。
【0003】
これらの問題を解決する環境にやさしいプラスチックとして、生分解性樹脂が注目されてきている。生分解性樹脂製のフィルムは、使用後に分解されるため、地球温暖化防止、環境汚染防止を図ることができる。そのため、近年は、ゴミ袋、買い物袋等に生分解性樹脂製のフィルムが利用されつつある。
【0004】
生分解性樹脂としては、例えば、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)、ポリブチレンサクシネートフラノエート(PBSF)等の脂肪族芳香族ポリエステルが提案されている。脂肪族芳香族ポリエステルは、エステル化反応及び/又はエステル交換反応を経て重縮合反応させることにより製造することができる(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、一般的に、コポリエステルを含む共重合ポリマーは、主鎖中に共重合成分を含むため、対応するホモポリマーに比べて、結晶性に劣る傾向にある。特にポリブチレンサクシネート(PBS)に芳香族ジカルボン酸成分としてフランジカルボン酸成分を共重合する場合、フランジカルボン酸はテレフタル酸よりも樹脂の熱物性への影響が大きい傾向があり、5質量%共重合するだけでも結晶化度が大きく低下することが知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】N.Jacquel et al.,Polymer 2015, 59, 234-242.“Bio-based alternatives in the synthesis of aliphatic-aromatic polyesters dedicated to biodegradable film applications.”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らが特許文献1に記載の方法でPBSTを製造したところ、得られたポリエステルの結晶化が不十分なために、ポリエステルペレット同士がブロッキングしてしまうことが判明した。このため、PBSTをフィルムやインフレーション成形してなる袋などの成形品にしても、フィルム同士の融着によりカッティングし難い、袋の口開きが不十分になる等の問題が起こることが懸念された。また、結晶化時間を長くすると、高温ポリマーの冷却プロセスが長大となり、高コストで非効率なプロセスとなる恐れのあることが判明した。そして、更に、特にPBSにフランジカルボン酸が共重合されたPBSFについては、これらの問題がより深刻になる可能性が高いと予想された。
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題を解決すべく、従来の脂肪族芳香族ポリエステルの結晶化不足を改善し、高結晶化度の脂肪族芳香族ポリエステル組成物ならびにその製造方法を提供することを課題とする。また、特に結晶化速度の遅いPBSFについても、生産性や成形性に優れたPBSF組成物ならびにその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。この結果、PBSF等の脂肪族芳香族ポリエステルと特定の核剤を含有する脂肪族芳香族ポリエステル組成物とすることにより、結晶化不足を改善し、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は下記[1]~[7]に存する。
【0011】
[1] 脂肪族芳香族ポリエステル及び核剤を含有する脂肪族芳香族ポリエステル組成物であって、該脂肪族芳香族ポリエステルが脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位及び芳香族ジカルボン酸単位を有し、該核剤が、脂肪酸金属塩、リン酸塩、芳香族ホスホン酸塩、多価アルコール、脂肪酸アミド、およびオレフィンとマレイン酸の共重合体よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物よりなり、該脂肪族芳香族ポリエステル100質量部に対して、該核剤を0.01~100質量部含有する、脂肪族芳香族ポリエステル組成物。
【0012】
[2] 前記脂肪族芳香族ポリエステル中の前記脂肪族ジカルボン酸単位:前記芳香族ジカルボン酸単位のモル比が20:80~80:20である、[1]に記載の脂肪族芳香族ポリエステル組成物。
【0013】
[3] 前記脂肪族芳香族ポリエステルがポリブチレンサクシネートフラノエートである、[1]又は[2]に記載の脂肪族芳香族ポリエステル組成物。
【0014】
[4] 前記核剤が、モンタン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、アルミニウム=ビス(4,4’,6,6’-テトラ-tert-ブチル-2,2’-メチレンジフェニル=ホスファート)=ヒドロキシド、リン酸カルシウム、ペンタエリスリトール、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、フェニルホスホン酸亜鉛、およびα-オレフィンと無水マレイン酸の共重合体よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物よりなる、[1]乃至[3]の何れかに記載の脂肪族芳香族ポリエステル組成物。
【0015】
[5] 脂肪族芳香族ポリエステルおよび核剤を含有する脂肪族芳香族ポリエステル組成物の製造方法であって、脂肪族ジオール成分と脂肪族ジカルボン酸成分及び芳香族ジカルボン酸成分とをエステル化あるいはエステル交換反応させた後に重縮合反応させる工程と、得られた溶融状態の樹脂に核剤を添加する工程とを有し、該核剤が、脂肪酸金属塩、リン酸塩、芳香族ホスホン酸塩、多価アルコール、脂肪酸アミド、およびオレフィンとマレイン酸の共重合体よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物である、脂肪族芳香族ポリエステル組成物の製造方法。
【0016】
[6] 脂肪族芳香族ポリエステルおよび核剤を含有する脂肪族芳香族ポリエステル組成物の製造方法であって、該脂肪族芳香族ポリエステルが脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位及び芳香族ジカルボン酸単位を有し、溶融状態の該脂肪族芳香族ポリエステルに、脂肪酸金属塩、リン酸塩、芳香族ホスホン酸塩、多価アルコール、脂肪酸アミド、およびオレフィンとマレイン酸の共重合体よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を混練する工程を有する、脂肪族芳香族ポリエステル組成物の製造方法。
【0017】
[7] [5]又は[6]に記載の脂肪族芳香族ポリエステル組成物の製造方法であって、更に前記脂肪族芳香族ポリエステル以外の樹脂を溶融混練する工程を有する、脂肪族芳香族ポリエステル組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、PBSF等の脂肪族芳香族ポリエステルに特定の核剤を存在させることにより、結晶化不足を改善し、樹脂ペレット同様のブロッキングやフィルム同士の融着等の問題のない脂肪族芳香族ポリエステル組成物を製造することができ、この脂肪族芳香族ポリエステル組成物を用いて、高品質の成形品を提供することが期待される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定はされない。
【0020】
なお、本発明において、「ジカルボン酸成分」は、ジカルボン酸及びジカルボン酸アルキルエステル等のジカルボン酸誘導体などのポリエステル原料となる化合物を言う。本発明において、「ジオール成分」は、ポリエステル原料となるジオール化合物を言う。
本発明において、「ジカルボン酸単位」は、ジカルボン酸及びジカルボン酸アルキルエステル等のジカルボン酸誘導体などのポリエステル原料に由来する脂肪族芳香族ポリエステルの構成単位を言う。本発明において、「ジオール単位」は、ポリエステル原料となるジオール成分に由来する脂肪族芳香族ポリエステルの構成単位を言う。
本発明において、「芳香族ジカルボン酸」は、芳香族性を有するジカルボン酸であればよく、「複素芳香族ジカルボン酸」を包含する。
本発明において、核剤は、結晶核になりうるもの及び所謂結晶化促進剤も含むこととする。
【0021】
〔脂肪族芳香族ポリエステル組成物〕
本発明の脂肪族芳香族ポリエステル組成物は、脂肪族芳香族ポリエステル(以下、「本発明に係る脂肪族芳香族ポリエステル」又は単に「脂肪族芳香族ポリエステル」と言う場合がある。)と核剤(以下、「本発明に係る核剤」又は単に「核剤」と言う場合がある。)を含有する。本発明の脂肪族芳香族ポリエステルは、脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位及び芳香族ジカルボン酸単位を有する。
【0022】
本発明の脂肪族芳香族ポリエステル組成物に含有される核剤は、脂肪酸金属塩、リン酸塩、芳香族ホスホン酸塩、多価アルコール、脂肪酸アミド、およびオレフィンとマレイン酸の共重合体のうちのいずれかの化合物である。本発明の脂肪族芳香族ポリエステル組成物に含有される核剤の量は、脂肪族芳香族ポリエステル100質量部に対して、合計で0.01~100質量部である。
【0023】
[脂肪族芳香族ポリエステル]
<ジオール単位>
本発明に係る脂肪族芳香族ポリエステルが有する脂肪族ジオール単位は、特に制限はなく、通常ポリエステルの原料として用いられるジオール化合物由来の単位を有する。
脂肪族ジオール単位としては、具体的には、以下のジオール化合物由来の単位が挙げられる。
すなわち、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルキレンジオール;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのオキシアルキレンジオール;1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどのシクロアルキレンジオールなどの脂肪族ジオール化合物由来の単位が挙げられる。
上記脂肪族ジオール化合物の炭素数は、2~13が好ましく、4以上がより好ましく、10以下がより好ましく、6以下が更に好ましく、4が特に好ましい。
【0024】
脂肪族ジオール化合物としては、脂肪族芳香族ポリエステルの物性の面から、アルキレンジオールおよびシクロアルキレンジオールが好ましく、炭素数10以下のアルキレンジオールおよびシクロアルキレンジオールがより好ましく、炭素数6以下のアルキレンジオールおよびシクロアルキレンジオールがさらに好ましく、1,4-ブタンジオールが特に好ましい。
【0025】
本発明に係る脂肪族芳香族ポリエステルは、脂肪族ジオール単位の1種類のみを有していてもよく、2種類以上を有していてもよい。
【0026】
本発明に係る脂肪族芳香族ポリエステルは、脂肪族ジオール単位の合計量(モル比)が全ジオール単位の中で最も高いことが好ましく、全ジオール単位の50モル%以上が脂肪族ジオール単位であることがより好ましく、この割合は60モル%以上であることがさらに好ましく、70モル%以上であることが特に好ましく、90モル%以上であることが最も好ましい。なお、ジオール単位中の脂肪族ジオールの割合の上限は100モル%である。
【0027】
脂肪族ジオール単位として1,4-ブタンジオール単位を有する場合、1,4-ブタンジオール単位の割合は、脂肪族芳香族ポリエステルの融点(耐熱性)、生分解性、力学特性の観点から全脂肪族ジオール単位に対して50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。なお、この割合の上限は100モル%である。
【0028】
脂肪族ジオール単位のうち、エチレングリコール単位、1,3-プロパンジオール単位および1,4-ブタンジオール単位は、環境負荷軽減の観点から、バイオマス(植物原料)由来の単位が好ましい。
【0029】
<ジカルボン酸単位>
本発明に係る脂肪族芳香族ポリエステルが有する脂肪族ジカルボン酸単位および芳香族ジカルボン酸単位は、特に制限はなく、通常ポリエステルの原料として用いられる脂肪族ジカルボン酸化合物由来の単位および芳香族ジカルボン酸化合物由来の単位を有する。
【0030】
ジカルボン酸単位は、環境負荷軽減の観点から、バイオマス(植物原料)由来の単位であることが好ましく、バイオマス(植物原料)由来の単位が多いことがより好ましい。 バイオマス(植物原料)由来のジカルボン酸単位としては、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などに由来する単位が特に好ましい。
【0031】
脂肪族ジカルボン酸単位としては、具体的には、以下のジカルボン酸およびジカルボン酸のアルキルエステル等のジカルボン酸化合物由来の単位が挙げられる。すなわち、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸由来の単位などが挙げられる。これらの中でも、脂肪族芳香族ポリエステルの物性の面から、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸或いはそのアルキルエステル等の誘導体に由来する単位が好ましい。
【0032】
脂肪族ジカルボン酸単位を構成する主鎖炭素数は、2~50が好ましく、その上限は、18以下がより好ましく、13以下がさらに好ましく、10以下がよりさらに好ましく、9以下が特に好ましく、8以下がとりわけ好ましい。また、一方で、脂肪族ジカルボン酸単位を構成する主鎖炭素数の下限は3以上がより好ましい。この炭素数は4が最も好ましい。特に、脂肪族芳香族ポリエステルの結晶性が高くなりやすいことから、脂肪族ジカルボン酸としてはコハク酸が最も好ましい。
【0033】
本発明に係る脂肪族芳香族ポリエステルは、脂肪族ジカルボン酸単位の1種類のみを有していてもよく、2種類以上を有していてもよい。
【0034】
脂肪族ジカルボン酸単位がコハク酸単位である場合、コハク酸単位の割合は、脂肪族芳香族ポリエステルの融点(耐熱性)、生分解性、力学特性の観点から、全脂肪族ジカルボン酸単位に対して50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることが更に好ましい。なお、この上限は100モル%である。
【0035】
芳香族ジカルボン酸単位としては、具体的には、以下のジカルボン酸およびジカルボン酸のアルキルエステル等のジカルボン酸化合物由来の単位が挙げられる。すなわち、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、フランジカルボン酸、或いはそのアルキルエステル等の誘導体等由来のジカルボン酸単位が挙げられる。脂肪族芳香族ポリエステルの物性の面から、テレフタル酸、イソフタル酸、フランジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸、フランジカルボン酸が特に好ましい。
【0036】
本発明に係る脂肪族芳香族ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸単位の1種類のみを有していてもよく、2種類以上を有していてもよい。
【0037】
芳香族ジカルボン酸単位は、バイオマス(植物原料)由来のジカルボン酸由来の単位が好ましく、バイオマス由来のフランジカルボン酸、テレフタル酸由来の単位が特に好ましい。
【0038】
芳香族ジカルボン酸単位がフランジカルボン酸単位である場合、フランジカルボン酸単位の割合は、脂肪族芳香族ポリエステルの融点(耐熱性)、力学特性の観点から、全芳香族ジカルボン酸単位中で最も多いことが好ましく、全芳香族ジカルボン酸単位に対して50モル%以上であることがより好ましく、60モル%以上であることが更に好ましく、80モル%以上であることが特に好ましい。なお、この上限は100モル%である。
【0039】
PBSFは高いバイオ度としやすい点で好ましい。しかしながら、PBSFは結晶化速度が遅い。そこで、核剤による結晶化促進効果が発現しやすい点では、本発明に係る脂肪族芳香族ポリエステルはPBSFが特に好ましい。
【0040】
本発明に係る脂肪族芳香族ポリエステルが有するジカルボン酸単位における脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位のモル比は、脂肪族芳香族ポリエステルの耐熱性、生分解性、機械的特性、成形性の観点から、脂肪族ジカルボン酸単位:芳香族ジカルボン酸単位=20:80~80:20であることが好ましく、30:70~70:30であることがより好ましく、30:70~60:40であることがさらに好ましく、40:60~60:40であることがより好ましく、50:50~60:40であることが特に好ましい。
【0041】
<その他の共重合単位>
本発明に係る脂肪族芳香族ポリエステルは、脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位および芳香族ジカルボン酸単位以外の構成単位を有していてもよい。このようなその他の共重合単位としては、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸、2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル酪酸、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸、2-ヒドロキシイソカプロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、クエン酸、フマル酸等のオキシカルボン酸、及びこれらオキシカルボン酸のエステルやラクトン、オキシカルボン酸重合体等、あるいはグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上の多価アルコール、あるいは、プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸ベンゾフェノンテトラカルボン酸及びこれらの無水物などの3官能以上の多価カルボン酸又はその無水物等に由来する単位などが挙げられる。
【0042】
これらのうち、3官能以上のオキシカルボン酸、3官能以上のアルコール、3官能以上のカルボン酸などに由来する単位を少量有することにより、ポリエステルが高粘度になりやすい。中でも、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸などのオキシカルボン酸もしくはグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールに由来する単位が好ましく、特にはトリメチロールプロパンに由来する単位が好ましい。
【0043】
本発明に係る脂肪族芳香族ポリエステルが3官能以上の多官能化合物由来の単位を有する場合、その割合は、多いと脂肪族芳香族ポリエステルの粘度が高くなりやすく、また、一方で、少ないと脂肪族芳香族ポリエステル中にゲル(未溶融物)が生成し難い。そこで、3官能以上の多官能化合物由来の単位の割合は、全ジカルボン酸単位に対して、0.001~5モル%であることが好ましく、0.05~0.5モル%であることがより好ましい。
【0044】
<脂肪族芳香族ポリエステルの固有粘度>
本発明の脂肪族芳香族ポリエステルの固有粘度(IV)は、高いと機械強度が高い成形品を得やすく、低いと溶融粘度が低く成形しやすい。本発明の脂肪族芳香族ポリエステルの固有粘度は、1.0dL/g以上であることが好ましく、1.2dL/g以上であることがより好ましい。また、一方で、2.5dL/g以下であることが好ましく、2.2dL/g以下であることがより好ましく、2.0dL/g以下であることがさらに好ましい。なお、固有粘度は、後述する実施例で測定した方法により測定する。
【0045】
[核剤]
本発明の脂肪族芳香族ポリエステル組成物は、脂肪酸金属塩、リン酸塩、芳香族ホスホン酸塩、多価アルコール、脂肪酸アミド、およびオレフィンとマレイン酸の共重合体の少なくともいずれか1種の核剤を含有する。
【0046】
脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12-ヒドロキシステアリン酸アルミニウム、12-ヒドロキシステアリン酸バリウム、12-ヒドロキシステアリン酸リチウム、12-ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸リチウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸マグネシウム、モンタン酸アルミニウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸リチウム、ラウリン酸ナトリウムリシノール酸カルシウム、リシノール酸バリウム、リシノール酸亜鉛、カプリル酸カリウム、カプリル酸ナトリウム、カプリル酸カルシウム、カプリル酸マグネシウム、オクチル酸アルミニウム、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、スルホイソフタル酸ジメチルナトリウムなどが挙げられる。
これらの脂肪酸金属塩のうち、脂溶性が高く、ポリエステルと相溶しやすい観点から、12-ヒドロキシステアリン酸塩、ステアリン酸塩、モンタン酸塩が好ましく、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0047】
リン酸塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸鉄、リン酸アンモニウム塩などが挙げられる。これらのうち、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウムが好ましい。
芳香族ホスホン酸塩としては、フェニルホスホン酸亜鉛、2-ヒドロキシ-2-オキソ-4,6,10,12-テトラ-tert-ブチル-1,3,2-ジベンゾ[d,g]ペルヒドロジオキサホスファロシンのNa塩を含む組成物、アルミニウム=ビス(4,4’、6,6’-テトラ-tert-ブチル-2,2’-メチレンジフェニル=ホスファート)=ヒドロキシドなどが挙げられる。
【0048】
多価アルコールとしては、トリメチロールプロパン、イノシトール、ペンタエリスリトールが挙げられる。これらのうち、好ましくはペンタエリスリトールである。
なお、核剤としての多価アルコールは既に製造され脂肪族芳香族ポリエステルに対して添加されるものであり、前述の共重合成分として脂肪族芳香族ポリエステルの中に多価アルコール単位として含まれる多価アルコールとは明確に区別される。
【0049】
脂肪酸アミドとしては、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、ラウリン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、N-メチロールステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エルカ酸アミド等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、N-オレイルステアリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミドであり、特に好ましくはヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミドである。
【0050】
オレフィンとマレイン酸の共重合体としては、オレフィンと無水マレイン酸の共重合体の他にスチレンと無水マレイン酸の共重合体などが挙げられる。好ましくは、オレフィンと無水マレイン酸の共重合体である。
核剤は、安全性の点から、食品衛生法に基づく食品用器具・容器包装のポジティブリストに掲載されている化合物、米国食品医薬品局の食品添加物申請制度(Food Additive Petition)において食品添加物として承認されている化合物、欧州の食品に接触する素材および製品に関する規則(Regulation(EC) No.1935/2004)の認証を受けている化合物が好ましい。すなわち、脂肪酸金属塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム
、リン酸鉄、リン酸アンモニウム塩、ペンタエリスリトールおよびヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミドは、安全性が高く、好ましい。
【0051】
本発明の脂肪族芳香族ポリエステル組成物は、これらの核剤の1種のみを含有していても、2種類以上を含有していてもよい。
【0052】
本発明の脂肪族芳香族ポリエステル組成物に含有される核剤の量は、結晶化が進行した脂肪族芳香族ポリエステルとなりやすい点では多いことが好ましいが、また、一方で、核剤が分散しやすい点では少ないことが好ましい。そこで、本発明の脂肪族芳香族ポリエステル組成物は、脂肪族芳香族ポリエステル100質量部に対して、核剤を合計0.01~100質量部含有する。核剤の含有量は、好ましくは0.01~25質量部であり、より好ましくは0.01~10質量部であり、さらに好ましくは0.01~1質量部であり、特に好ましくは0.02~0.5質量部であり、最も好ましくは0.05~0.3質量部である。
【0053】
<その他の成分>
本発明の脂肪族芳香族ポリエステル組成物には、脂肪族芳香族ポリエステルと核剤の他、脂肪族ポリエステルや脂肪族オキシカルボン酸系ポリエステル等を含有していてもよい。更に、カルボジイミド化合物、充填材、可塑剤、上述した以外の生分解性樹脂、例えば、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、セルロースエステル等や、澱粉、セルロース、紙、木粉、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、クルミ殻粉末等の動物/植物物質微粉末、あるいはこれらの混合物を含有していてもよい。また、熱安定剤、可塑剤、滑剤、ブロッキング防止剤、上述の核剤以外の核剤、無機フィラー、着色剤、顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、改質剤、架橋剤等が含有していてもよい。
【0054】
[脂肪族芳香族ポリエステル組成物の物性]
<融解エンタルピー比>
本発明の脂肪族芳香族ポリエステル組成物に特定の核剤が含有されることによる結晶化促進の効果は、核剤を用いずに製造した組成物と比較した融解エンタルピー比により評価することができる。すなわち、融解エンタルピー比が高いことにより、結晶化が十分に促進されていることがわかる。本発明の脂肪族芳香族ポリエステル組成物の融解エンタルピー比は、1.2以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、2.5以上であることがさらに好ましく、3以上であることが特に好ましく、5以上であることが殊更好ましく、7以上であることが最も好ましい。なお、融解エンタルピー比の上限については特に制限はない。
本発明において、融解エンタルピーは、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0055】
[脂肪族芳香族ポリエステル組成物の製造方法]
本発明の脂肪族芳香族ポリエステルおよび核剤を含有する脂肪族芳香族ポリエステル組成物は、脂肪族芳香族ポリエステルの原料となるジオール成分とジカルボン酸成分をエステル化あるいはエステル交換反応させた後に重縮合反応させる工程、および得られた溶融状態の樹脂に核剤を添加する工程とを有する。また、このポリエステル製造時又はこの方法により製造されたポリエステルに上述の本発明に係る核剤を添加する工程を有する。
【0056】
ジオール成分とジカルボン酸成分をエステル化あるいはエステル交換反応させた後に重縮合反応させる工程については、公知のポリエステルの製造方法により行うことができる。また、ジオール成分とジカルボン酸成分の反応は、アルコールが副生せず、安全性が高い点でエステル化反応が好ましく、ポリエステルの製造方法としては、所謂直重法が好ましい。
【0057】
原料となるジオール成分およびジカルボン酸成分は、上述のジオール単位およびジカルボン酸単位となる化合物が好ましい。また、ポリエステル製造に用いる添加剤等についても上述の脂肪族芳香族ポリエステルに含まれていてもよいその他成分と同様である。
【0058】
本発明の脂肪族芳香族ポリエステル組成物を製造する方法(以下、「本発明の脂肪族芳香族ポリエステル組成物の製造方法」又は「本発明のポリエステル組成物の製造方法」と言う場合がある。)は、ポリエステル製造時に核剤を添加しても、製造されたポリエステルに核剤を添加してもよい。
【0059】
ポリエステルに核剤を添加する方法としては、特に限定されず、核剤をエステル化又はエステル交換反応系内に存在させても、重縮合反応系内に存在させても、押出機で溶融状態の樹脂に混合してもよい。ポリエステルへの核剤の添加は、溶融状態の脂肪族芳香族ポリエステルに核剤を混練することで行うことが好ましく、すなわち、本発明の脂肪族芳香族ポリエステル組成物の製造方法は、溶融状態の脂肪族芳香族ポリエステルに核剤を混練する工程を有することが好ましい。
【0060】
押出機を用いて溶融状態の脂肪族芳香族ポリエステルに核剤を添加する場合、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダーブレンダー等の混練機を用いて混練することにより混合する方法が挙げられる。核剤は、1回で添加しても2回以上に分けて樹脂に添加してもよい。
【0061】
また、本発明の脂肪族芳香族ポリエステル組成物に、更に、本発明の脂肪族芳香族ポリエステル以外の樹脂を溶融混練してもよい。すなわち、本発明の脂肪族芳香族ポリエステル組成物の製造方法は、更に、本発明に係る脂肪族芳香族ポリエステル以外の樹脂を溶融混練する工程を有していてもよい。
【実施例0062】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0063】
なお、以下の諸例で採用した物性及び評価項目の測定方法は、次の通りである。
【0064】
<固有粘度(IV)(dL/g)>
ウベローデ型粘度計を使用し、次の要領で求めた。フェノール/テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒を使用し、30℃において、濃度0.5g/dLのポリエステル組成物溶液及び溶媒のみの落下秒数を測定し、以下の式(1)より固有粘度を求めた。
IV=((1+4KHηSP)0.5-1)/(2KHC) …(1)
ただし、ηSP=η/η0-1であり、ηは試料溶液の落下秒数、η0は溶媒の落下秒数、Cは試料溶液の濃度(g/dL)、KHはハギンズの定数である。KHは0.33を採用した。
【0065】
<融解エンタルピー比>
測定は、DSC7020(日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、室温(25℃)から200℃に、10℃/minの速度で昇温した後、200℃から-50℃まで10℃/minの速度で冷却し、更に-50℃から200℃まで10℃/minで昇温して行った。
脂肪族芳香族ポリエステル組成物ならびにこの組成物から核剤を除いたポリエステルについて、この方法によりDSC測定を行った。ここで、2回目の昇温過程における試料樹脂の融解に対応する吸熱ピークの面積を融解エンタルピー(それぞれΔHm,ΔHm0)と定義する。この時、ΔHmをΔHm0で除した値(ΔHm/ΔHm0)を融解エンタルピー比と定義し、評価に用いた。
【0066】
[実施例]
以下の核剤とPBSFを用いて組成物を製造した。なお、核剤とPBSFは、いずれもヤマト科学株式会社製の真空乾燥機「DP33」を用いて、60℃で15時間乾燥したものを使用した。
【0067】
<核剤>
実施例では、以下のN-1~N-9の核剤を用いた。
N-1:日東化成工業株式会社製のモンタン酸ナトリウム「NS-8」
N-2:東京家政工業株式会社社製のステアリン酸マグネシウム
N-3:株式会社ADEKA社製のアルミニウム=ビス(4,4’,6,6’-テトラ-tert-ブチル-2,2’-メチレンジフェニル=ホスファート)=ヒドロキシドと有機化合物の混合物「NA-21」
N-4:富士フィルム和光純薬品社製のリン酸カルシウム
N-5:東京化成工業株式会社製のペンタエリスリトール
N-6:三菱ケミカル株式会社製のヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド「スリパックスZHH」
N-7:三菱ケミカル株式会社製のエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド「スリパックスH」
N-8:三菱ケミカル株式会社製のα-オレフィンと無水マレイン酸の共重合体「ダイヤカルナ30」
N-9:日産化学工業社製のフェニルホスホン酸亜鉛「エコプロモート」
比較例2,3では、以下のn-1~n-2の核剤を用いた。
n-1:日本タルク株式会社製のタルク(含水珪酸マグネシウム(Mg3Si4O10(OH)2))「ナノエースD600」
n-2:日本タルク株式会社製のタルク(含水珪酸マグネシウム(Mg3Si4O10(OH)2))「「MS-KY」
【0068】
<ポリエステルの製造>
1,4-ブタンジオール単位:コハク酸単位:2,5-フランジカルボン酸単位(モル比)=50:20:30のPBSFを製造した。
撹拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計及び減圧口を備えた反応容器に、原料としてコハク酸24.2質量部、2,5-フランジカルボン酸48.0質量部、1,4-ブタンジオール92.4質量部、トリメチロールプロパン0.138質量部を入れた。これに、テトラ-n-ブチルチタネートを得られるポリエステルあたりチタン原子として30質量ppmとなるように添加した。容器内を撹拌しながら窒素ガスを導入し、減圧置換によって系内を窒素雰囲気下にした。次に、系内を撹拌しながら180℃から195℃に1時間かけて昇温し、195℃で2時間反応させた。その後、テトラ-n-ブチルチタネートを得られるポリエステルあたりチタン原子として70質量ppmとなる量添加し、1.5時間かけて240℃まで昇温しながら0.07×103Pa以下になるように減圧し、加熱減圧状態を保持したまま重縮合を継続し、1.5時間経ったところで重合を終了し、脂肪族芳香族ポリエステルを得た。得られた脂肪族芳香族ポリエステルの固有粘度は1.361dL/gであった。
【0069】
<ポリエステル組成物の製造>
卓上型混練試験装置ラボプラストミル「KF-6V」(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、PBSFと各核剤を以下の手順で混練した。混練部の温度を180℃に昇温した後、ブレードの回転数を10rpmとして、サンプル投入口にPBSFを5.5g投入した後、表1に示す核剤を0.055g(PBSF100質量部に対して1質量部)投入した(比較例1では核剤添加せず)。ブレードの回転数を300rpmとして3分間混練し、PBSFと核剤の混練物を得た。混練は、大気下で行った。得られた組成物の融解エンタルピー比を測定し、結果を下記表1に纏めた。
【0070】
【0071】
表1より、本発明の脂肪族芳香族ポリエステル組成物は、特定の核剤を含有することにより結晶化が促進されたことが裏付けられた。