(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142739
(43)【公開日】2022-09-30
(54)【発明の名称】導電性高分子組成物、及び導電性高分子膜
(51)【国際特許分類】
C08L 65/00 20060101AFI20220922BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220922BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20220922BHJP
C08G 61/12 20060101ALI20220922BHJP
H01B 1/20 20060101ALI20220922BHJP
H01B 1/12 20060101ALI20220922BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20220922BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20220922BHJP
C09D 5/24 20060101ALI20220922BHJP
C09D 181/00 20060101ALI20220922BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220922BHJP
【FI】
C08L65/00
C08K3/04
C08K7/06
C08G61/12
H01B1/20 A
H01B1/12 F
H01B5/14 A
H01B13/00 503B
C09D5/24
C09D181/00
C09D7/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005973
(22)【出願日】2022-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2021042198
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021171227
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】工藤 一希
(72)【発明者】
【氏名】川上 淳一
(72)【発明者】
【氏名】箭野 裕一
【テーマコード(参考)】
4J002
4J032
4J038
5G301
5G307
5G323
【Fターム(参考)】
4J002CE001
4J002DA016
4J002DA026
4J002DA036
4J002FA056
4J002FD116
4J002GQ02
4J032BA04
4J032BB01
4J032BC03
4J032BD01
4J032CG01
4J038DK001
4J038GA13
4J038HA036
4J038JA19
4J038KA06
4J038KA19
4J038NA20
5G301DA18
5G301DA19
5G301DA28
5G301DD01
5G307FA01
5G307FA02
5G307FB03
5G307FB04
5G307FC10
5G323BA05
5G323BB01
5G323BB06
5G323BC03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】固体電解コンデンサ等の性能をさらに向上させるため、導電性を高めた自己ドープ型導電性高分子組成物を提供する。
【解決手段】下式(3)で表されるチオフェンモノマーを重合させ、必要に応じて酸処理することにより得られるポリチオフェン(A)を0.001~10重量%含み、且つカーボン材料(B)を0.001~5重量%含む導電性高分子組成物を用いる。
式において、R
2は、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表し、mは、1~10の整数を表し、nは、0又は1を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を少なくとも2つ以上含むポリチオフェン(A)を0.001~10重量%含み、且つカーボン材料(B)を0.001~5重量%含む導電性高分子組成物。
【化1】
[上記一般式(1)及び(2)において、R
2は、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表し、mは、1~10の整数を表し、nは、0又は1を表す。]
【請求項2】
前記のカーボン材料(B)が、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン、カーボンナノホーン、活性炭、グラファイト、カーボンナノファイバー、カーボンブラック、及び多孔質カーボンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子組成物。
【請求項3】
前記のカーボン材料(B)が、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、及び多層カーボンナノチューブからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子組成物。
【請求項4】
前記のカーボン材料(B)が、単層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子組成物。
【請求項5】
前記のポリチオフェン(A)と前記のカーボン材料(B)の組成比率が、ポリチオフェン(A) 1重量部に対して、カーボン材料(B) 0.001~50重量部である、請求項1乃至4のいずれかに記載の導電性高分子組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の導電性高分子組成物を支持体に塗布し、次いで、乾燥させることを特徴とする導電性高分子膜の製造方法。
【請求項7】
下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)とカーボン材料(B)を含む導電性高分子膜。
【化2】
[上記一般式(1)及び(2)において、R
2は、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表し、mは、1~10の整数を表し、nは、0又は1を表す。]
【請求項8】
前記のポリチオフェン(A)と前記のカーボン材料(B)の組成比率が、ポリチオフェン(A) 1重量部に対して、カーボン材料(B) 0.001~5重量部である、請求項7に記載の導電性高分子膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子組成物、及び導電性高分子膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、又はポリピロール等に代表されるπ共役系高分子に、電子受容性化合物をドーパントとしてドープした導電性高分子材料が開発され、例えば、帯電防止剤、コンデンサの固体電解質、導電性塗料、電磁波シールド、エレクトロクロミック素子、電極材料、熱電変換材料、透明導電膜、化学センサ、アクチュエータ等への応用が検討されている。これらの導電性高分子材料の中でも、化学的安定性の面からポリチオフェン系導電性高分子材料が実用上有用である。
【0003】
ポリチオフェン系導電性高分子材料としては、ドーパントとなるポリスチレンスルホン酸(PSS)の水溶液中で、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)を重合させることで得られるPEDOT/PSS水分散体や、水溶性の付与とドーピング作用を兼ね備えた置換基(スルホ基、スルホネート基等)を直接又はスペーサを介してポリマー主鎖中に有する、いわゆる自己ドープ型導電性高分子があり、例えば、スルホン化ポリアニリン、PEDOT-S等が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
近年、新規な用途として透明電極や低ESRコンデンサへの適用検討が盛んに検討されており、市場からはさらに高い導電性を有する導電性高分子の要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-63652号公報
【特許文献2】特開2015-147834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自己ドープ型導電性高分子は帯電防止材、コンデンサの固体電解質、透明電極等への応用が期待される。ただし、従来公知の自己ドープ型導電性高分子については、固体電解コンデンサ等に要求される高導電性を発現させることが困難であった。自己ドープ型導電性高分子の導電性を高めることができれば、固体電解コンデンサ等の性能をさらに向上させることが可能である。本発明の目的は、高導電性を示す自己ドープ型導電性高分子組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の自己ドープ型導電性高分子とカーボン材料を含む導電性高分子組成物を用いることによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は以下に示す導電性高分子組成物、及び導電性高分子膜に関するものである。
【0009】
[1]
下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を少なくとも2つ以上含むポリチオフェン(A)を0.001~10重量%含み、且つカーボン材料(B)を0.001~5重量%含む導電性高分子組成物。
【0010】
【0011】
[上記一般式(1)及び(2)において、R2は、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表し、mは、1~10の整数を表し、nは、0又は1を表す。]
[2]
前記のカーボン材料(B)が、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン、カーボンナノホーン、活性炭、グラファイト、カーボンナノファイバー、カーボンブラック、及び多孔質カーボンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする上記[1]に記載の導電性高分子組成物。
【0012】
[3]
前記のカーボン材料(B)が、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、及び多層カーボンナノチューブからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする上記[1]に記載の導電性高分子組成物。
【0013】
[4]
前記のカーボン材料(B)が、単層カーボンナノチューブであることを特徴とする[1]に記載の導電性高分子組成物。
【0014】
[5]
前記のポリチオフェン(A)と前記のカーボン材料(B)の組成比率が、ポリチオフェン(A) 1重量部に対して、カーボン材料(B) 0.001~50重量部である、上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の導電性高分子組成物。
【0015】
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の導電性高分子組成物を支持体に塗布し、次いで、乾燥させることを特徴とする導電性高分子膜の製造方法。
【0016】
[7]
下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)とカーボン材料(B)を含む導電性高分子膜。
【0017】
【0018】
[上記一般式(1)及び(2)において、R2は、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表し、mは、1~10の整数を表し、nは、0又は1を表す。]
[8]
前記のポリチオフェン(A)と前記のカーボン材料(B)の組成比率が、ポリチオフェン(A) 1重量部に対して、カーボン材料(B) 0.001~50重量部である、上記[7]に記載の導電性高分子膜。
【発明の効果】
【0019】
本発明の導電性高分子組成物を用いて作成した導電性高分子膜は、本発明で使用した導電性高分子、カーボン材料それぞれ単独で作成した導電性高分子膜よりも高い導電性を示すという従来に無い顕著な効果を奏する。このため、本発明の導電性高分子組成物は、固体電解コンデンサ等の性能を向上させることができる点で、産業上極めて有用である。
【0020】
なお、本発明の導電性高分子組成物については、従来公知の導電性ポリマーを用いた導電性高分子組成物とは異なる高導電か挙動を示す点で、異質な効果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
本発明は、下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を少なくとも2つ以上含むポリチオフェン(A)を0.001~10重量%含み、且つカーボン材料(B)を0.001~5重量%含む導電性高分子組成物である。
【0023】
【0024】
[一般式(1)及び(2)において、R2は、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表し、mは、1~10の整数を表し、nは、0又は1を表す。]
上記一般式(1)及び(2)中、R2は、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表す。
【0025】
炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、n-へキシル基、2-エチルブチル基、又はシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0026】
上記のR2については、成膜性の点で、水素原子、メチル基、エチル基、又はフッ素原子であることが好ましく、水素原子、又はメチル基であることがより好ましい。
【0027】
上記一般式(1)及び(2)中、mは、1~10の整数を表し、成膜性の点で、1~6の整数であることが好ましく、1~4の整数であることがより好ましく、2又は3であることがより好ましい。
【0028】
上記一般式(1)及び(2)中、nは、0又は1を表し、導電性に優れる点で、1であることが好ましい。
【0029】
上記一般式(2)で表される構造単位は、上記一般式(1)で表される構造単位のドーピング状態を表す。
【0030】
ドーピングにより絶縁体-金属転移を引き起こすドーパントは、アクセプタとドナーに分けられる。前者は、ドーピングにより導電性ポリマーの高分子鎖の近くに入り主鎖の共役系からπ電子を奪う。結果として、主鎖上に正電荷(正孔、ホール)が注入されるため、p型ドーパントとも呼ばれる。また、後者は、逆に主鎖の共役系に電子を与えることになり、この電子が主鎖の共役系を動くことになるため、n型ドーパントとも呼ばれる。
【0031】
本発明におけるドーパントは、ポリマー分子内に共有結合で結びついたスルホ基又はスルホナート基であり、p型ドーパントである。このように外部からドーパントを添加することなく導電性を発現するポリマーは自己ドープ型高分子と呼ばれている。
【0032】
本発明のポリチオフェン(A)は、下記一般式(3)で表されるチオフェンモノマーを、水又はアルコール溶媒中、酸化剤の存在下に重合させ、次いで必要に応じて酸処理することで製造することができる。
【0033】
【0034】
[上記一般式(3)において、Mは、水素イオン、又は金属イオンを表す。R2は、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表し、mは、1~10の整数を表し、nは、0又は1を表す。]
一般式(3)におけるMで表される金属イオンとしては、特に限定するものではないが、遷移金属イオン、貴金属イオン、非鉄金属イオン、アルカリ金属イオン(例えば、Liイオン、Naイオン、及びKイオン)、又はアルカリ土類金属イオン等が挙げられる。
【0035】
一般式(3)におけるR2、m、及びnの定義及び好ましい範囲については、それぞれ、一般式(1)及び(2)におけるR2、m、及びnの定義及び好ましい範囲と同じである。
【0036】
上記一般式(3)で表されるチオフェンモノマーとしては、特に限定するものではないが、具体的には、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸ナトリウム、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸リチウム、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸カリウム、8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸、8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸ナトリウム、8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸カリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロパンスルホン酸カリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-エチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロピル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ブチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ペンチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ヘキシル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソプロピル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソブチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソペンチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-フルオロ-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸カリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸アンモニウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸トリエチルアンモニウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ブタンスルホン酸ナトリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ブタンスルホン酸カリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-ブタンスルホン酸ナトリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-ブタンスルホン酸カリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-フルオロ-1-ブタンスルホン酸ナトリウム、又は4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-フルオロ-1-ブタンスルホン酸カリウム等が例示される。
【0037】
一般式(3)で表されるチオフェンモノマー重合後のポリマーが金属イオンの塩である場合(Mが金属イオンである場合)は、得られたポリマーを酸処理する(例えば陽イオン交換樹脂でイオン交換する)ことでMを水素イオンへ変換可能である。すなわち、一般式(3)におけるMが金属イオンであったとしても、上記の一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)を製造することができる。
【0038】
本願発明の導電性高分子組成物については、導電性や塗工性に優れる点で、更に、上記一般式(1)で表される構造単位及び上記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を少なくとも2つ以上含むポリチオフェン(A)のスルホン酸基とイオン対を形成可能な化合物(C)を含有していてもよい。前記のスルホン酸基とイオン対を形成可能な化合物(C)としては、特に限定するものではないが、例えば、アルカリ金属化合物、アンモニア、有機アミン化合物、第4級アンモニウム塩を挙げることができる。これらの化合物(C)は、それぞれ、前記のポリチオフェン(A)のスルホン酸基と作用して、前記のポリチオフェン(A)のアルカリ金属イオン塩、アンモニウムイオン塩、有機アンモニウムイオン塩、及び第4級アンモニウムイオン塩を形成する。
【0039】
前記のアルカリ金属化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、アルカリ金属塩化合物(例えば、塩化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化ルビジウム、塩化セシウム、臭化リチウム、臭化カリウム、臭化ナトリウム、臭化ルビジウム、臭化セシウム等)、又はアルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等)を挙げることができる。
【0040】
前記のアルカリ金属化合物を本発明の導電性高分子組成物に含有させることによって、前記のポリチオフェン(A)のアルカリ金属イオン塩を調製することができる。この時、前記のポリチオフェン(A)は、後述する一般式(1’)で表される構造単位及び一般式(2’)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェンであって、Mがアルカリ金属イオンであるものとなる。前記のアルカリ金属イオンとしては、特に限定するものではないが、例えば、リチウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、ルビジウムイオン、又はセシウムイオン等を挙げることができる。
【0041】
前記の有機アミン化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、総炭素数が1~30の1級、2級、若しくは3級のアミン化合物を例示することができ、より具体的には、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、トリエチルアミン、ノルマル-プロピルアミン、イソプロピルアミン、ノルマルブチルアミン、イソブチルアミン、ジイソブチルアミン、トリイソブチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、トリヘキシルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、(2-エチルヘキシル)アミン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、トリス(2-エチルヘキシル)アミン、アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、メチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、3-メチルアミノ-1,2-プロパンジオール、3-ジメチルアミノ-1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジアミン、トリイソブチルアミン、トリイソペンチルアミン、トリイソオクチルアミン、イミダゾール、N-メチルイミダゾール、1、2-ジメチルイミダゾール、ピリジン、ピコリン、又はルチジン等を例示することができる。
【0042】
前記の有機アミン化合物を本発明の導電性高分子組成物に含有させることによって、当該有機アミン化合物は、前記のポリチオフェン(A)と作用し、有機アンモニウムイオンとなり、前記のポリチオフェン(A)の有機アンモニウムイオン塩が調製される。この時、前記のポリチオフェン(A)は、後述する一般式(1’)で表される構造単位及び一般式(2’)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェンであって、Mが有機アンモニウムイオンであるものとなる。前記の有機アンモニウムイオンとしては、特に限定するものではないが、例えば、総炭素数が1~30の1級、2級、若しくは3級のアンモニウムイオンを例示することができ、より具体的には、例えば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ノルマル-プロピルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ノルマルブチルアンモニウム、イソブチルアンモニウム、ジイソブチルアンモニウム、トリイソブチルアンモニウム、ヘキシルアンモニウム、ジヘキシルアンモニウム、トリヘキシルアンモニウム、ジオクチルアンモニウム、トリオクチルアンモニウム、(2-エチルヘキシル)アンモニウム、ビス(2-エチルヘキシル)アンモニウム、トリス(2-エチルヘキシル)アンモニウム、2-ヒドロキシエチルアンモニウム、N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、ジ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、N-メチル-N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、N,N,N-トリ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、2,3-ジヒドロキシプロピルアンモニウム、N-メチル-N-(2,3-ジヒドロキシプロピル)アンモニウム、N,N-ジメチル-N-(2,3-ジヒドロキシプロピル)アンモニウム、1,4-ブタンジアンモニウム、トリイソブチルアンモニウム、トリイソペンチルアンモニウム、トリイソオクチルアンモニウム、イミダゾールカチオン、N-メチルイミダゾールカチオン、1、2-ジメチルイミダゾールカチオン、ピリジニウムイオン、ピコリニウムイオン、又はルチジニウムイオンを挙げることができる。
【0043】
前記の4級アンモニウム化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラノルマルプロピルアンモニウムクロリド、テトラノルマルブチルアンモニウムクロリド、又はテトラノルマルヘキシルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0044】
前記の4級アンモニウム化合物を本発明の導電性高分子組成物に含有させることによって、当該4級アンモニウム化合物は、前記のポリチオフェン(A)と作用し、4級アンモニウムイオンとなり、前記のポリチオフェン(A)の4級アンモニウムイオン塩が調製される。この時、前記のポリチオフェン(A)は、後述する一般式(1’)で表される構造単位及び一般式(2’)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェンであって、Mが4級アンモニウムイオンであるものとなる。当該4級アンモニウムイオンとしては、特に限定するものではないが、例えば、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラノルマルプロピルアンモニウムイオン、テトラノルマルブチルアンモニウムイオン、又はテトラノルマルヘキシルアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0045】
本発明の導電性高分子組成物において、前述した化合物(C)の含有量については、0.001~20重量%であることが好ましく、表面抵抗値に優れる(低抵抗である)点で、0.001~15重量%であることがより好ましく、0.003~10重量%であることがより好ましい。
【0046】
本願発明の導電性高分子組成物が、前記の化合物(C)を含む場合、前記の一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)については、下記の一般式(1’)で表される構造単位及び一般式(2’)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)として記載することができる。
【0047】
【0048】
[上記一般式(1’)及び一般式(2’)において、R2は、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表し、mは、1~10の整数を表し、nは、0又は1を表す。Mは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、有機アンモニウムイオン、又は第4級アンモニウムイオンを表す。]
上記一般式(1’)及び一般式(2’)中、R2、m、及びnの定義及び好ましい範囲は、上記一般式(1)及び一般式(2)において示したR2、m、及びnの定義及び好ましい範囲と同義である。
【0049】
上記のMにおける、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、有機アンモニウムイオン、及び第4級アンモニウムイオンについては、前述の通りである。なお、上記の一般式(1’)で表される構造単位及び一般式(2’)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)については、Mは単一である必要はなく、複数種類共存することができる。
【0050】
本願発明の導電性高分子組成物については、表面抵抗値に優れる点(低抵抗)で、そのpHが、1.0~10.0の範囲であることが好ましく、1.5~8.0の範囲であることがより好ましく、1.5~7.5の範囲であることがより好ましい。当該pHについては、前述した化合物(C)の種類と含有量によって制御することができる。
【0051】
一般式(1’)で表される構造単位及び一般式(2’)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェンは、前記の一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)と、ポリチオフェン(A)のスルホン酸基とイオン対を形成可能な化合物(C)(例えば、上述のアルカリ金属化合物、アンモニア、アミン化合物、又は4級アンモニウム化合物)とを混合することによって製造することができる。
【0052】
本発明においてポリチオフェン(A)の導電率は、特に限定するものではないが、フィルム状態での導電率(電気伝導度)として、10S/cm以上であることが好ましく、50S/cm以上であることがより好ましく、100S/cm以上であることがより好ましい。
【0053】
なお、本発明におけるポリチオフェン(A)については、公知情報に基づいて合成したものを用いることができる。
【0054】
本発明の導電性高分子組成物において、前述した一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)の濃度については、0.001~10重量%の範囲であることを特徴とする。なお、導電率及び操作性に優れる点で、本発明の導電性高分子組成物中のポリチオフェン(A)の濃度は、0.03~7重量%の範囲であることが好ましく、0.05~5重量%の範囲であることがより好ましい。
【0055】
本発明の導電性高分子組成物は、カーボン材料(B)を含有し、その濃度が0.001~5重量%あることを特徴とする。この特徴により、導電率の高い塗膜を得ることができる。なお、前記カーボン材料(B)の含有量については、上記のポリチオフェン(A)との相溶性が高く、高い導電性が維持できるという点で、好ましくは0.003~2重量%であり、より好ましくは0.005~1重量%である。
【0056】
前記のカーボン材料(B)としては、特に限定するものではないが、具体的には、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン、カーボンナノホーン、活性炭、グラファイト、カーボンナノファイバー、カーボンブラック、及び多孔質カーボンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、得られる導電性高分子膜の導電率の観点から、カーボンナノチューブがより好ましい。
【0057】
前記のカーボンナノチューブとしては、特に限定するものではないが、具体的には、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、及び多層カーボンナノチューブからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、得られる導電性高分子膜の導電率の観点から、単層カーボンナノチューブがより好ましい。
【0058】
前記の単層カーボンナノチューブの直径としては、特に限定するものではないが、例えば20nm以下であってもよく、好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下である。なお、単層カーボンナノチューブの直径の下限は特に制限されるものではないが、例えば0.4nm以上であってよく、0.5nmであってもよい。
【0059】
上記のカーボンブラックとしては、特に限定するものではないが、具体的には、ケッチェンブラック、又はアセチレンブラック等が挙げられる。
【0060】
前記のカーボン材料(B)のうち、上記のポリチオフェン(A)との相溶性が高く、高い導電性が維持できるという点で、カーボンナノチューブが好ましく、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、及び多層カーボンナノチューブからなる群より選ばれる少なくとも一種であることがより好ましく、単層カーボンナノチューブであることがより好ましい。
【0061】
このようなカーボン材料(B)については、市販品をそのまま用いることもできるし、別途公知の方法で作製したものを用いることもできる。なお、カーボン材料(B)については、安定性などの観点から、水分散剤で市販されていることが多い。本願発明の組成物については、カーボン材料(B)の水分散剤をそのまま用いて調製することもできるし、カーボン材料(B)の水分散剤を別途脱溶媒や精製を行ったものを用いて調製することもできる。
【0062】
本願発明の導電性高分子組成物については、得られる導電性高分子膜の導電率の観点から、前記のポリチオフェン(A)と前記のカーボン材料(B)の組成比率が、ポリチオフェン(A) 1重量部に対して、カーボン材料(B) 0.001~50重量部であることが好ましく、0.005~30重量部であることがより好ましく、0.01~20重量部であることがより好ましく、0.01~15重量部であることがより好ましい。
【0063】
本願発明の導電性高分子組成物については、特に限定するものではないが、有機溶媒及び水からなる群より選ばれる1種以上の溶媒(D)を含んでいてもよく、有機溶媒及び水からなる群より選ばれる1種以上の溶媒(D)を含んでいることが好ましい。
【0064】
前記の溶媒(D)については、上記の一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)の溶液や、カーボン材料(B)に同伴する溶媒(D)によって構成されていてもよいし、別途溶媒(D)を追加して本願発明の導電性高分子組成物に含ませてもよい。
【0065】
前記の水については、特に限定するものではないが、例えば、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等を例示することができる。なお、当該追加される水については、可能な限り高純度のものを用いることが好ましい。
【0066】
前記の有機溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、アルコール、ケトン、エーテル、芳香族化合物等を挙げることができ、より詳しい例として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、ブトキシエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ピロリドン、N-メチルピロリドン、ジオキサン、トルエン、キシレン、又はクロロベンゼン等を挙げることができる。
【0067】
本願発明の導電性高分子組成物における溶媒(D)の濃度(含有量)としては、特に限定するものではないが、施工性に優れる点で、85~99.9重量%の範囲であることが好ましく、90~99.9重量%であることがより好ましく、95~99.8重量%であることがより好ましい。
【0068】
本願発明の導電性高分子組成物については、上記以外の添加剤(E)を含んでいてもよい。
【0069】
前記の上記以外の添加剤(E)としては、特に限定するものではないが、例えば、バインダー、又は界面活性剤等を挙げることができる。なお、添加剤(E)については、単独で用いられてもよいし、複数同時に組み合わせて用いられてもよい。
【0070】
前記のバインダーとしては、特に限定するものではないが、例えば、水溶性樹脂が好ましく、より詳しい例として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース、水溶性ポリエステル樹脂化合物、水溶性ポリウレタン樹脂化合物、又は多価アルコールとカルボキシル基を2つ以上持つ有機酸の混合物等が挙げられる。
【0071】
前記の水溶性ポリエステル樹脂化合物としては、例えば、ポエチレンテレフタラートやポリトリメチレンテレフタラート等を挙げることができる。当該水溶性ポリエステル樹脂化合物については、自己乳化型であってもよいし、強化乳化型であってもよいが、耐水性、耐溶剤性の観点から自己乳化型水溶性ポリエステル樹脂化合物であることが好ましい。
【0072】
前記の水溶性ポリエステル樹脂化合物としては、例えば、東洋紡株式会社製、商品名:バイロナール(登録商標)、や、高松油脂株式会社製、商品名:ペスレジン、互応化学株式会社製、商品名:プラスコート(登録商標)、東亞合成株式会社製、商品名:アロンメルト(登録商標)、高松油脂株式会社製、商品名:ぺスレジンA、DIC株式会社製、商品名:ウォーターゾール(登録商標)などが商業的に容易に入手することができる。
【0073】
前記の水溶性ポリエステル樹脂化合物は、1種を単独で用いることができるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0074】
前記の水溶性ポリウレタン樹脂化合物は、ウレタン樹脂エマルションとして主に産業用途に用いられており、自己乳化型であってもよいし、強化乳化型であってもよいが、耐水性、耐溶剤性の観点から自己乳化型水溶性ポリウレタン樹脂化合物であることが好ましい。自己乳化型としては、アニオン型、カチオン型、非イオン型特が挙げられるが、いずれであってもよい。また、当該水溶性ポリウレタン樹脂化合物については、特に限定するものではないが、ポリエーテル型、ポリエステル型、ポリカーボネート型等が挙げられる。
【0075】
水溶性ポリウレタン樹脂化合物は、例えば、三洋化成工業株式会社製、商品名:ユーコート(登録商標)、パーマリン(登録商標)、ユープレン(登録商標)や、楠本化成株式会社製、商品名:NeoRez、株式会社ADEKA製、商品名:アデカボンタイター(登録商標)、明成化学工業株式会社製、商品名:パスコール(登録商標)、DIC株式会社製、商品名:ハイドラン(登録商標)などが商業的に容易に入手することができる。
【0076】
前記の水溶性ポリウレタン樹脂化合物は、1種を単独で用いることができるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0077】
前記の多価アルコールとしては、特に限定するものではないが、例えば、エリスリトールやペンタエリトリトール等を挙げることができる。
【0078】
前記のカルボキシル基を2つ以上持つ有機酸としては、特に限定するものではないが、例えば、アジピン酸やフタル酸等を挙げることができる。
【0079】
前記の界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、又はシリコーン系界面活性剤等が使用できるが、より好ましくは非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種である。
【0080】
前記のアニオン界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウムやドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0081】
前記のカチオン界面活性剤としては、特に限定するものではないが、市販品を用いることもできるし、一般公知のものを別途製造して用いることもできる。
【0082】
前記の非イオン界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、ポリエチレングリコール型界面活性剤、アセチレングリコール型界面活性剤、多価アルコール型界面活性剤、高分子型非イオン界面活性剤等が挙げられる。
【0083】
前記のポリエチレングリコール型界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、又はポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0084】
前記のアセチレングリコール型界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、サーフィノール(エアプロダクツ社製、登録商標)、オルフィン(日信化学工業社製、登録商標)等が挙げられる。
【0085】
前記の多価アルコール型界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、高アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。
【0086】
前記の両性界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、ベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。ベタイン型両性界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、アルキルジメチルベタイン、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等が挙げられる。
【0087】
前記のフッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基を有するものであれば特に限定されないが、例えば、プラスコート(登録商標) RY-2、パーフルオロアルカン、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸、又はパーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0088】
前記のシリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性ポリジメチルシロキサン、ヒドロキシル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基含有ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、又はシリコーン変性アクリル化合物などが挙げられる。
【0089】
なお、フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤はレベリング剤として塗膜の平坦性を改善するのに有効である。
【0090】
本発明の導電性高分子組成物において、前述した添加剤(E)の含有量については、0.001~20重量%であることを特徴とするが、操作性に優れる点で、0.01~15重量%であることが好ましく、0.1~10重量%であることがより好ましい。
【0091】
本発明の導電性高分子組成物を調製する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、上記のポリチオフェン(A)の溶液又は固体と、カーボン材料(B)の溶媒分散物を混合する方法が挙げられる。このとき、必要に応じて、前記の化合物(C)、前記の溶媒(D)、及び/又は前記の添加剤(E)を添加して混合することもできる。なお、各材料はそれぞれ水に添加・溶解した後に混合することが好ましいが、材料を添加混合する順番については、特に限定されるものはなく、これらの材料を任意の順で混合することにより本発明の導電性高分子組成物を調製することができる。
【0092】
ここで、混合する際の温度は、特に限定するものではないが、例えば、室温~加温下で行うことができる。0℃以上100℃以下が好ましい。
【0093】
混合する際の雰囲気は、特に限定するものではないが、大気中でも、不活性ガス中でもよい。
【0094】
また、混合する際には、スターラーチップや攪拌羽根等による一般的な混合溶解操作に加えて、超音波照射、ホモジナイズ処理(例えば、メカニカルホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等の使用)を行ってもよい。ホモジナイズ処理する場合には、ポリマーの熱劣化を防ぐため、冷温しながら行うことが好ましい。
【0095】
本発明の導電性高分子組成物の粘度(20℃)は、200mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは100mPa・s以下、さらに好ましくは50mPa・s以下である。
【0096】
本発明の導電性高分子組成物における各成分の濃度は、配合比で調整してもよいし、配合後に濃縮又は希釈により調整してもよい。濃縮の方法は、減圧下に溶媒を留去する方法であっても、限外ろ過膜を利用する方法であってもよい。
【0097】
本発明の導電性高分子組成物については、水以外の全成分の濃度が、0.1~20重量%の範囲であることが好ましく、0.3~15重量%の範囲であることがより好ましく、0.5~10重量%の範囲であることがより好ましい。
【0098】
本発明の導電性高分子組成物を用いることによって、導電率の高い、及び/又は電磁波遮蔽効果を示す導電性高分子膜を製造することができる。
【0099】
本発明の導電性高分子組成物から導電性高分子膜を形成する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、本発明の導電性高分子組成物を、支持体に塗布し、次いで、乾燥する方法を挙げることができる。
【0100】
支持体としては、本発明の導電性高分子組成物が塗布可能なものであれば特に限定するものではないが、例えば、高分子基材又は無機基材が挙げられる。高分子基材としては、例えば、熱可塑性樹脂、不織布、紙、レジスト膜基板等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリレート、又はポリカーボネート等が挙げられる。不織布としては、例えば、天然繊維、又は合成繊維製のいずれでもよい。紙としては一般的なセルロースを主成分とするものでよい。無機基材としては、ガラス、ガラス繊維、セラミックス、酸化アルミニウム、又は酸化タンタル等が挙げられる。
【0101】
導電性高分子組成物の塗布方法としては、例えば、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ディスペンサ法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷、スクリーン印刷法、又はオフセット印刷法等が挙げられる。
【0102】
塗膜の乾燥温度は、均一な導電性高分子膜が得られる温度及び基材の耐熱温度以下であれば特に限定するものではないが、室温~300℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは室温~250℃の範囲であり、さらに好ましくは室温~200℃の範囲である。
【0103】
乾燥雰囲気は大気中、不活性ガス中、真空中、又は減圧下のいずれであってもよい。導電性高分子膜の劣化抑制の観点からは、窒素、アルゴン等の不活性ガス中が好ましい。
【0104】
得られる導電性高分子膜の膜厚としては特に限定するものではないが、10-3~103μmの範囲が好ましい。より好ましくは10-3~102μmである。
【0105】
本発明の導電性高分子組成物から得られた導電性高分子膜は導電性に優れる。
【0106】
また前記の導電性高分子膜は、例えば、コンデンサの固体電解質、透明電極として使用される。
【0107】
すなわち、前記の導電性高分子膜は、前記の一般式(1)で表される構造単位及び前記の一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)とカーボン材料(B)を含むことを特徴とし、前述の導電性高分子組成物が含有していてもよい成分を含有していてもよい。
【0108】
なお、前記の導電性高分子膜において、前記のポリチオフェン(A)と前記のカーボン材料(B)の組成比率は、ポリチオフェン(A) 1重量部に対して、カーボン材料(B) 0.001~5重量部であることが好ましい。
【実施例0109】
以下に本発明に関する実施例を示す。
【0110】
なお、本実施例で用いた分析機器及び測定方法を以下に列記する。
[GC測定]
装置:Shimadzu製、GC-2014
[NMR測定]
装置:VARIAN製、Gemini-200
[表面抵抗値測定]
装置:三菱化学社製ロレスタGP MCP-T600 又は、三菱化学社製ハイレスタUX MCP-HT8000
[膜厚測定]
装置:BRUKER社製 DEKTAK XT
[粘度測定]
コンプリート型粘度計/BROOKFIELD VISCOMETER DV-1 Prime
[粒径測定]
装置:日機装社製、Microtrac Nanotrac UPA-UT151
[自己ドープ型導電性高分子の導電率測定]
自己ドープ型導電性ポリマーを含む溶液 0.5mlを、UVオゾン処理を行った25mm角の無アルカリガラス板にキャストし、ホットプレートで60℃30分乾燥し、その後200℃30分加熱して導電性高分子膜を得た。得られた導電性高分子膜について、上記の表面抵抗値測定、及び膜厚測定を行った。表面抵抗値、及び膜厚から、以下の式に基づき導電率を算出した。
[導電率]
導電率[S/cm]=104/(表面抵抗値[Ω/□]×膜厚[μm])
[電波吸収材の作製方法]
ポリエステルフィルム(東洋紡製 コスモシャイン A4100)上に、ワイヤーバーコーターを使用して、実施例で調製した導電性高分子組成物を塗布し、wet膜厚100μmの塗膜を形成させた。ついで、大気下、120℃で5分間、加熱乾燥し、電波吸収材を得た。
[電波遮蔽測定]
フリースペース法にてKEYCOM社製DPS10及びアンリツ社製ME7838Aを使用し、26.5GHz~40GHzの測定を行った。
[導電性フィルムの作製方法]
500mm角の無アルカリガラス板上に、ワイヤーバーコーターを使用して、実施例で調製した導電性高分子組成物を塗布し、wet膜厚100μmの塗膜を形成させた。ついで、大気下、120℃で5分間、加熱乾燥し、導電性フィルムを得た。
【0111】
合成例1.
3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム[下記式(6)で表される化合物]の合成.
窒素雰囲気下、100mlナス型フラスコに60%水素化ナトリウム 0.437g(10.9mmol)、トルエン 37mlを仕込んだ後、(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メタノール 1.52g(8.84ml)を添加した。その後、反応液を還流温度に昇温させ同温度で1時間攪拌した。その後、2,4-ブタンスルトン 1.21g(8.89mmol)とトルエン 10mlとからなる混合液を滴下し、同温度で2時間攪拌した。冷却後、得られた反応液をアセトン 160mlに滴下し再沈を行った。得られた粉末を濾過し、真空乾燥させることで1.82gの淡黄色粉末を収率62%で得た。NMR測定から、これが下記式(6)で表される3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムであることを確認した。
【0112】
【0113】
1H-NMR(D2O)δ(ppm);6.67(s,2H),4.54-4.60(m,1H),4.45(dd,1H,J=12.0,2.2Hz),4.26(dd,1H,J=12.0,6.8Hz),3.90-3.81(m,4H),3.10-3.18(m,1H),2.30-2.47(m,1H),1.77-1.92(m,1H),1.45(d,3H)
13C-NMR(D2O)δ(ppm);14.91,31.22,53.13,66.18,69.18,73.29,73.36,100.81,100.94,140.88,141.06
合成例2.
ポリチオフェン(A)[下記式(7)又は下記式(8)で表される構造単位を含む重合体]の合成.
500mlセパラブルフラスコに、合成例1に準じて合成した3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム 10g(30mmol)と水 150gを加えた。溶解後、室温下、無水塩化鉄(III) 2.94g(18.1mmol)を加えて20分攪拌した。その後、過硫酸ナトリウム 14.5g(60.4mmol)と水 100gからなる混合溶液を反応液温度が30℃以下を保持しながら滴下した。室温で3時間攪拌したのち、反応液を800gのアセトンに滴下させ黒色のNa型のポリマーを析出させた。ポリマーを濾過・真空乾燥することで、18.0gの3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムの粗ポリマーを得た。
【0114】
次に、この粗ポリマー 14.5gに水を加え2重量%溶液に調製した溶液 700gを、陽イオン交換樹脂Lewatit MonoPlus S100(H型) 200mlを充填したカラムに通液(空間速度=1.1)することによりH型のポリマー溶液を738g得た。更に、本ポリマー溶液をクロスフロー式限外ろ過(ろ過器=ビバフロー200、分画分子量=5,000、透過倍率=5)により精製することにより下記式(7)又は式(8)で表される構造単位からなるポリマー(ポリチオフェン(A))の濃群青色溶液 698gを得た。本ポリマー溶液に含まれるポリチオフェン(A)の量は0.74重量%であった。又、鉄イオン、及びナトリウムイオンを、各々44ppm、及び12ppm(対ポリマー)含有していた。
【0115】
【0116】
【0117】
合成例3.
合成例2で得られたポリチオフェン(A)の水溶液にジオクチルアミンのメタノール溶液を添加し、混合撹拌することによって、前記ポリチオフェン(A)とジオクチルアミンの組成物(C)を得た。その後、水及びメタノールを減圧濾過によって取り除き、前記ポリチオフェン(A)とジオクチルアミンの組成物である固体を得た。2-プロパノール 99gに前記固体 1gを混合撹拌し、ポリチオフェン(A)IPA溶液を得た。
【0118】
実施例1.
合成例2で得られた濃群青色溶液(濃度0.74重量%のポリチオフェン(A)水溶液)を濃度調整して作製した、上記式(7)又は上記式(8)で表される構造単位からなるポリチオフェン(A)を1.2重量%含む水溶液 5.00gに、カーボン材料(B)として名城ナノカーボン製単層カーボンナノチューブ水分散液(固形分濃度0.2重量%の水分散液、単層カーボンナノチューブの直径は1~3nm)を1.00g、及び水 14.0gを加えて、混合温度25℃で1時間攪拌混合し、固形分濃度が0.31重量%の導電性高分子組成物を得た。この導電性高分子組成物を用いて、上記の[自己ドープ型導電性高分子の導電率測定]に記載した方法で導電性高分子膜を作成し、導電率を測定した。結果を表1に示す。
【0119】
実施例2.
実施例1において、ポリチオフェン(A)を1.2重量%含む水溶液 5.00gに、カーボン材料(B)として名城ナノカーボン製単層カーボンナノチューブ水分散液 EC-DH(固形分濃度0.2重量%の水分散液、単層カーボンナノチューブの直径は1~3nm)を3.00g使用し、水 12.0gを使用した以外は実施例1の方法に準じて導電性高分子組成物及び導電性高分子膜を得、評価を行った。結果を表1に示す。
【0120】
実施例3.
実施例1において、ポリチオフェン(A)を1.2重量%含む水溶液 5.00gに、カーボン材料(B)として名城ナノカーボン製単層カーボンナノチューブ水分散液 EC-DH(固形分濃度0.2重量%の水分散液、単層カーボンナノチューブの直径は1~3nm)を9.00g使用し、水 6.00gを使用した以外は実施例1の方法に準じて導電性高分子組成物及び導電性高分子膜を得、評価を行った。結果を表1に示す。
【0121】
実施例4.
実施例1において、ポリチオフェン(A)を1.2重量%含む水溶液 5.00gに、カーボン材料(B)として名城ナノカーボン製単層カーボンナノチューブ水分散液 EC-DH(固形分濃度0.2重量%の水分散液、単層カーボンナノチューブの直径は1~3nm)を15.0g使用した以外は実施例1の方法に準じて導電性高分子組成物及び導電性高分子膜を得、評価を行った。結果を表1に示す。
【0122】
実施例5.
実施例2において、混合温度を60℃に変更した以外は実施例2の方法に準じて導電性高分子組成物及び導電性高分子膜を得、評価を行った。結果を表1に示す。
【0123】
比較例1.
合成例2で得られた濃群青色溶液(濃度0.74重量%のポリチオフェン(A)水溶液)を濃度調整して作製した、上記式(7)又は上記式(8)で表される構造単位からなるポリチオフェン(A)を1.2重量%含む水溶液 5.00gに、水 15.0gを加えて、混合温度25℃で1時間攪拌混合し、固形分濃度が0.30重量%の導電性高分子水溶液を得た。この導電性高分子水溶液 0.5mlを、UVオゾン処理を行った25mm角の無アルカリガラス板にキャストし、ホットプレートで60℃30分乾燥し、その後200℃30分加熱して導電膜を得た。得られた導電膜の評価結果を表2に示す。
【0124】
比較例2.
カーボン材料(B)として名城ナノカーボン製単層カーボンナノチューブ水分散液 EC-DH(固形分濃度0.2重量%の水分散液、単層カーボンナノチューブの直径は1~3nm) 0.5mlを、UVオゾン処理を行った25mm角の無アルカリガラス板にキャストし、ホットプレートで60℃30分乾燥し、その後200℃30分加熱して導電膜を得た。得られた導電膜の評価結果を表2に示す。
【0125】
比較例3.
PEDOT:PSS水分散液(固形分濃度1.1重量%の水分散液)5.44gに、エチレングリコール 1.00g、及び水 13.56gを加えて、混合温度25℃で1時間攪拌混合し、固形分濃度が0.30重量%の導電性組成物を得た。この導電性組成物 0.5mlを、UVオゾン処理を行った25mm角の無アルカリガラス板にキャストし、ホットプレートで60℃30分乾燥し、その後200℃30分加熱して導電膜を得た。得られた導電膜の評価結果を表2に示す。
【0126】
比較例4.
PEDOT:PSS水分散液(固形分濃度1.1重量%の水分散液)5.44gに、カーボン材料(B)として名城ナノカーボン製単層カーボンナノチューブ水分散液 EC-DH(固形分濃度0.2重量%の水分散液、単層カーボンナノチューブの直径は1~3nm)を3.00g、エチレングリコール 1.00g、及び水 10.56gを加えて、混合温度25℃で1時間攪拌混合し、固形分濃度が0.33重量%の導電性組成物を得た。この導電性組成物 0.5mlを、UVオゾン処理を行った25mm角の無アルカリガラス板にキャストし、ホットプレートで60℃30分乾燥し、その後200℃30分加熱して導電膜を得た。得られた導電膜の評価結果を表2に示す。
【0127】
【0128】
【0129】
表1及び表2に示した通り、従来公知の導電性高分子であるPEDOT:PSSとカーボン材料の組合せても導電率はほとんど向上しない(595S/cm→655S/cm)にも拘わらず、本願発明の導電性高分子とカーボン材料を組み合わせた場合は、顕著な導電率の向上が確認された(642S/cm→約900S/cm)。このような顕著な導電率の向上は本願発明の導電性高分子特有の作用に基づくものであり、従来にない異質な効果を示すものである。
【0130】
実施例6.
合成例2で得られた濃群青色溶液(濃度0.74重量%のポリチオフェン(A)水溶液)を濃度調整して作製した、上記式(7)又は上記式(8)で表される構造単位からなるポリチオフェン(A)を2.8重量%含む水溶液 3.60gに、カーボン材料(B)として名城ナノカーボン製単層カーボンナノチューブ水分散液EC-DH(固形分濃度0.2重量%の水分散液、単層カーボンナノチューブの直径は1~3nm)を5.00g、及び水 1.40gを加えて、混合温度25℃で1時間攪拌混合し、固形分濃度が1.1重量%の導電性高分子組成物を得た。上記の[電波吸収材の作製方法]に記載した方法で電波吸収材を作製し、電波吸収性能を測定した。26.5~40GHzにおける最大電波遮蔽特性を表3に示す。
【0131】
実施例7.
実施例6において、名城ナノカーボン製単層カーボンナノチューブ水分散液EC-DH 5.00gを6.00gに変更し、水 1.40gを0.4gに変更した以外は、実施例6と同様の操作を行い、固形分濃度が1.12重量%の導電性高分子組成物を得た。上記の[電波吸収材の作製方法]に記載した方法で電波吸収材を作製し、電波吸収性能を測定した。26.5~40GHzにおける最大電波遮蔽特性を表3に示す。
【0132】
実施例8.
実施例6において、名城ナノカーボン製単層カーボンナノチューブ水分散液EC-DH 5.00gを1.00gに変更し、水 1.40gを5.4gに変更した以外は、実施例6と同様の操作を行い、固形分濃度が1.01重量%の導電性高分子組成物を得た。上記の[電波吸収材の作製方法]に記載した方法で電波吸収材を作製し、電波吸収性能を測定した。26.5~40GHzにおける最大電波遮蔽特性を表3に示す。
【0133】
参考例1
合成例2で得られた濃群青色溶液(濃度0.74重量%のポリチオフェン(A)水溶液)を濃度調整して作製した、上記式(7)又は上記式(8)で表される構造単位からなるポリチオフェン(A)を1.0重量%含む導電性高分子水溶液 10.00gを用いて、上記の[電波吸収材の作製方法]に記載した方法で電波吸収材を作製し、電波吸収性能を測定した。26.5~40GHzにおける最大電波遮蔽特性を表3に示す。
【0134】
参考例2
カーボン材料(B)として名城ナノカーボン製単層カーボンナノチューブ水分散液 EC-DH(固形分濃度0.2重量%の水分散液、単層カーボンナノチューブの直径は1~3nm)を5.00gと水 5.00gを混合し、温度25℃で1時間攪拌混合し、固形分濃度が0.1重量%のカーボンナノチューブの水分散物を得た。上記の[電波吸収材の作製方法]に記載した方法で電波吸収材を作製し、電波吸収性能を測定した。26.5~40GHzにおける最大電波遮蔽特性を表3に示す。
【0135】
【0136】
表3に示した通り、上記式(7)又は上記式(8)で表される構造単位を含むポリチオフェン(A)とカーボン材料(B)を含む本願発明の組成物については、前記の(A)又は(B)がそれぞれ単独では得ることができない、優れた電波遮蔽特性を発揮するという効果を奏する。
【0137】
実施例9.
合成例3で得られた濃度1.00重量%のポリチオフェン(A)IPA溶液 0.1gに、カーボン材料(B)としてSIGMA―Aldrich製792462 単層カーボンナノチューブ/アルコール溶液(固形分濃度0.13重量%のアルコール分散液)を9.9g加えて、混合温度25℃で1時間攪拌混合し、固形分濃度が0.14重量%の導電性高分子組成物 10gを得た。当該導電性高分子組成物を用いて、上記の[導電性フィルムの作製方法]に記載した方法で導電性フィルムを作製し、導電率を測定した。導電率を表4に示す。
【0138】
実施例10.
合成例3で得られた濃度1.00重量%のポリチオフェン(A)IPA溶液 0.5gに、カーボン材料(B)としてSIGMA―Aldrich製792462 単層カーボンナノチューブ/アルコール溶液(固形分濃度0.13重量%のアルコール分散液)を9.5g加えて、混合温度25℃で1時間攪拌混合し、固形分濃度が0.17重量%の導電性高分子組成物 10gを得た。当該導電性高分子組成物を用いて、上記の[導電性フィルムの作製方法]に記載した方法で導電性フィルムを作製し、導電率を測定した。導電率を表4に示す。
【0139】
参考例3
合成例3で得られた濃度1.00重量%のポリチオフェン(A)IPA溶液を導電性高分子組成物用い、上記の[導電性フィルムの作製方法]に記載した方法で導電性フィルムを作製し、導電率を測定した。導電率を表4に示す。
【0140】
参考例4
カーボン材料(B)としてSIGMA―Aldrich製792462 単層カーボンナノチューブ/アルコール溶液(固形分濃度0.13重量%のアルコール分散液)を導電性高分子組成物として用い、上記の[導電性フィルムの作製方法]に記載した方法で導電性フィルムを作製し、導電率を測定した。導電率を表4に示す。
【0141】
【0142】
表4に示した通り、ポリチオフェン(A)とカーボン材料(B)と化合物(C)を含む本願発明の組成物については、前記の(A)又は(B)がそれぞれ単独では得ることができない、優れた導電率を発揮するという効果を奏する。
本発明のポリチオフェンは、従来(例えば、特許文献1、2)よりも高い導電性を有するため、帯電防止剤、コンデンサの固体電解質、並びに帯電防止フィルム、巻回型アルミ電解コンデンサ用のセパレータへの利用が可能である。その他、エレクトロクロミック素子、透明電極、透明導電膜、熱電変換材料、化学センサ、アクチュエータ、電磁波シールド材等への応用も期待できる。