(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022142935
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】感情記録支援装置と感情記録支援方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/04817 20220101AFI20220926BHJP
G06F 3/04842 20220101ALI20220926BHJP
【FI】
G06F3/0481 170
G06F3/0484 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043215
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】小林 吉之
(72)【発明者】
【氏名】沓澤 岳
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA02
5E555AA48
5E555AA71
5E555BA02
5E555BA03
5E555BA05
5E555BA06
5E555BB02
5E555BB03
5E555BB05
5E555BB06
5E555BC17
5E555CC03
5E555DA01
5E555DB18
5E555DB32
5E555DB53
5E555DC18
5E555DD11
5E555EA05
5E555EA07
5E555EA14
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】ユーザの感情をより的確に記録するための感情記録支援装置と感情記録支援方法を提供する。
【解決手段】
同じ属性を持つユーザ群における回答結果のばらつきを示す指標が所定値より小さい感情尺度コンテンツを構成要素とした上記ユーザ群用のサブセットを記憶する記憶部5と、感情記録対象ユーザの属性を入力するための入力部6と、入力部6により入力された属性に対応した上記サブセットに含まれる感情尺度コンテンツを上記感情記録対象ユーザに呈示して、上記感情記録対象ユーザによる感情に応じた上記感情尺度コンテンツの選択情報を記憶部5に記録させる制御部4を備えた感情記録支援装置1を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ属性を持つユーザ群における回答結果のばらつきを示す指標が所定値より小さい感情尺度コンテンツを構成要素とした前記ユーザ群用のサブセットを記憶する記憶手段と、
感情記録対象ユーザの属性を入力するための入力手段と、
前記入力手段により入力された前記属性に対応した前記サブセットに含まれる前記感情尺度コンテンツを前記感情記録対象ユーザに呈示して、前記感情記録対象ユーザによる感情に応じた前記感情尺度コンテンツの選択情報を前記記憶手段に記録させる制御手段を備えた感情記録支援装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記入力手段により入力された各ユーザの属性情報を前記記憶手段に記憶させると共に、前記記憶手段に予め記憶された前記感情尺度コンテンツを前記各ユーザに呈示して、各々の前記感情尺度コンテンツに見合う感情を予め設定した複数の選択肢の中から前記入力手段を用いて回答させて前記記憶手段に記憶させ、得られた回答結果を前記同じ属性を持つユーザ群ごとに集計して前記感情尺度コンテンツ毎に前記回答結果の前記指標を算出する、請求項1に記載の感情記録支援装置。
【請求項3】
前記属性情報は、出身地、年齢、及び性別を示す情報のうち少なくとも一つを含む、請求項2に記載の感情記録支援装置。
【請求項4】
前記感情尺度コンテンツは、人の表情を表した絵文字である、請求項1に記載の感情記録支援装置。
【請求項5】
各ユーザの属性情報を取得する第一のステップと、
前記各ユーザに予め用意した複数の感情尺度コンテンツを呈示する第二のステップと、
各々の前記感情尺度コンテンツに見合う感情を予め設定した複数の選択肢の中から前記ユーザに回答してもらう第三のステップと、
前記第三のステップで得られた回答結果を同じ属性を持つユーザ群ごとに集計し、前記感情尺度コンテンツ毎に前記回答結果のばらつきを示す指標を算出する第四のステップと、
前記指標が所定値より小さい前記感情尺度コンテンツを構成要素とした、前記ユーザ群用のサブセットを作成して記憶する第五のステップと、
感情記録対象ユーザの属性を取得する第六のステップと、
前記第六のステップで得られた前記属性に応じて一つの前記サブセットを選択する第七のステップと、
前記第七のステップで選択した前記サブセットに含まれる前記感情尺度コンテンツを前記感情記録対象ユーザに呈示する第八のステップと、
前記感情記録対象ユーザによる感情に応じた前記感情尺度コンテンツの選択情報を記録する第九のステップを有する感情記録支援方法。
【請求項6】
前記属性情報は、出身地、年齢、及び性別を示す情報のうち少なくとも一つを含む、請求項5に記載の感情記録支援方法。
【請求項7】
前記感情尺度コンテンツは、人の表情を表した絵文字である、請求項5に記載の感情記録支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの感情を記録する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の情報社会においては、種々の情報機器や端末が使用されているが、これに伴って特許文献1に記載されているような各種のユーザインタフェースも考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、ユーザの感情を入力するための手段として人の顔を模したいわゆる絵文字からなる感情入力ボタンが開示されているが、人の感情には個人差があり、そもそも客観的に数値化することも困難であるという側面を持つため、ユーザにより選択された各絵文字がユーザ間で同一の感情を示す情報であるとは必ずしも言い切れないという課題がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、ユーザの感情をより的確に記録するための感情記録支援装置と感情記録支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、同じ属性を持つユーザ群における回答結果のばらつきを示す指標が所定値より小さい複数の感情尺度コンテンツを構成要素とした上記ユーザ群用のサブセットを記憶する記憶手段と、感情記録対象ユーザの属性を入力するための入力手段と、入力手段により入力された属性に対応した上記サブセットに含まれる感情尺度コンテンツを上記感情記録対象ユーザに呈示して、上記感情記録対象ユーザによる感情に応じた上記感情尺度コンテンツの選択情報を記憶手段に記録させる制御手段を備えた感情記録支援装置を提供する。
【0007】
また、上記課題を解決するため、本発明は、各ユーザの属性情報を取得する第一のステップと、上記各ユーザに予め用意した複数の感情尺度コンテンツを呈示する第二のステップと、各々の上記感情尺度コンテンツに見合う感情を予め設定した複数の選択肢の中から上記ユーザに回答してもらう第三のステップと、第三のステップで得られた回答結果を同じ属性を持つユーザ群ごとに集計し、上記感情尺度コンテンツ毎に上記回答結果のばらつきを示す指標を算出する第四のステップと、上記指標が所定値より小さい上記感情尺度コンテンツを構成要素とした、上記ユーザ群用のサブセットを作成して記憶する第五のステップと、感情記録対象ユーザの属性を取得する第六のステップと、第六のステップで得られた属性に応じて一つの上記サブセットを選択する第七のステップと、第七のステップで選択した上記サブセットに含まれる感情尺度コンテンツを上記感情記録対象ユーザに呈示する第八のステップと、上記感情記録対象ユーザによる感情に応じた上記感情尺度コンテンツの選択情報を記録する第九のステップを有する感情記録支援方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ユーザの感情をより的確に記録するための感情記録支援装置と感情記録支援方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る感情記録支援装置1の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る感情記録支援方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図2に示されたサブセットの作成方法を説明するための第一のグラフであり、
図3(a)及び
図3(b)はそれぞれ、絵文字C1,C2について、ユーザにより選択された選択肢の比率を示す円グラフである。
【
図4】
図2に示されたサブセットの作成方法を説明するための第二のグラフであり、折れ線グラフG3,G4はそれぞれ、異なる絵文字について、ユーザにより選択された感情の強度分布を示す。
【
図5】
図2に示されたユーザ群用のサブセットの具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ詳しく説明する。なお、図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係る感情記録支援装置1の構成を示すブロック図である。
図1に示されるように、感情記録支援装置1はバス2と、それぞれバス2に接続された表示部3、制御部4、記憶部5、及び入力部6を備える。
【0012】
ここで、表示部3は、モニタ等から構成され、ユーザに種々の情報を示す。また、制御部4は、中央演算処理装置(CPU)等から構成され、感情記録支援装置1の動作を制御する。なお、本制御の方法については、後に詳しく説明する。
【0013】
また、記憶部5は、メモリ等から構成され、上記CPUに所定の演算を実行させるためのプログラムや上記種々の情報を記憶する。入力部6は、キーボードやマウス等から構成され、ユーザから感情記録支援装置1へ情報を伝達するためのインターフェースとして機能する。
【0014】
図2は、本発明の実施の形態に係る感情記録支援方法を示すフローチャートである。以下においては、
図1に示された感情記録支援装置1を用いて本発明の実施の形態に係る感情記録支援方法を実現する場合について説明するが、本方法は上記感情記録支援装置1に限らず実施できることは言うまでもない。
【0015】
図2に示されるように、ステップS1では、制御部4が入力部6で取得されたユーザの属性情報を記憶部5に記憶させる。ここで、属性情報とは、上記ユーザの出身地や年齢、性別等といったユーザが持つ属性の少なくとも一つを示す情報を言う。
【0016】
なお、入力部6による上記属性情報の取得は、当該ユーザによる手入力のほか、人工知能等による判別結果を利用する方法により実現しても良い。
【0017】
次に、ステップS2では、制御部4が、予め記憶部5に記憶させた感情尺度コンテンツを、表示部3に表示させることによって上記ユーザに呈示する。ここで、感情尺度コンテンツとは、人の表情を表した絵文字や、いわゆるスタンプ、イラスト等、言語を用いずにユーザの感情を示すコミュニケーションツールとしてのコンテンツを言う。
【0018】
次に、ステップS3では、制御部4が、予め記憶部5に記憶させた複数の選択肢を表示部3に表示させ、各々の感情尺度コンテンツに見合う感情をそれらの中から前記ユーザに選択回答してもらう。
【0019】
次に、ステップS4では、制御部4が、ステップS3で得られた回答結果を同じ属性を持つユーザ群ごとに集計し、感情尺度コンテンツ毎に回答結果のばらつきを示す指標を算出する。ここで、「ばらつきを示す指標」としては、標準偏差や四分位間距離のほか、分布のばらつき具合を表す種々の指標を用いることができるが、以下においては、標準偏差を利用した場合につき説明する。
【0020】
また、以下では一例として、感情尺度コンテンツが人の表情を模した絵文字であり、この絵文字が示す感情として、予め用意された「敵意」、「不安」、「倦怠」、「親和」、「驚愕」という選択肢の中から最も合致すると思われるものと、当該絵文字が示す感情の強度、例えば、「とても弱い」、「弱い」、「どちらでもない」、「強い」、「とても強い」という五段階評価、を回答してもらう場合について説明する。
【0021】
このようなアンケートは、種々の属性を持ったユーザを対象として実施されるが、例えば、「出身地が関東で19歳までの男性」という同じ属性をもったユーザ群の回答結果を集計する。具体的には例えば、ユーザが回答したすべての絵文字毎について、
図3の円グラフに示されるように、上記選択肢の比率を算出すると共に、
図4の折れ線グラフに示されるように、上記感情の強度分布を算出する。なお、グラフG1、G2はそれぞれ、絵文字C1,C2について作成された円グラフの例を示し、グラフG3,G4はそれぞれ、異なる絵文字について作成された折れ線グラフの例を示す。
【0022】
そして、感情の強度につき上記標準偏差を算出する。なお、それぞれ、
図4の縦軸は回答率などの回答頻度、横軸は上記五段階評価のレベル(感情の強度)を示す。
【0023】
ここで、ユーザにより選択された上記選択肢のばらつきや、上記標準偏差が大きい絵文字ほど、同じ感情尺度コンテンツから得られる印象がユーザによって異なることを意味し、その逆に小さいほど、当該コンテンツは同じ属性内の誰が使用しても同じような感情状態を表すものと考えることができる。従って、
図3に示される例では、グラフG1で示される感情尺度コンテンツの方が、グラフG2で示される感情尺度コンテンツよりも、また、標準偏差がより小さいグラフG3で示される感情尺度コンテンツの方が、グラフG4で示される感情尺度コンテンツよりも、ユーザ間で共通認識が得られるものであると言える。
【0024】
次に、ステップS5では、制御部4は、上記のように算出された上記指標、例えば標準偏差、が所定値より小さい感情尺度コンテンツを構成要素とした上記ユーザ群用のサブセットを、ユーザ群毎に作成して記憶部5に記憶させる。
【0025】
図5は、上記ユーザ群用のサブセットの具体例を示す図である。
図5に示されるように、例えば、上記例のように「出身地が関東で19歳までの男性」という属性を持つユーザ群用のサブセットをサブセットA、「出身地が関東で20歳から39歳までの男性」という属性を持つユーザ群用のサブセットをサブセットBとし、以下同様に、同じ属性を持つユーザ群用のサブセットC~Hが作成される。なお、
図5では出身地が関東であるユーザのみを例示したが、出身地が異なるユーザについても、同様にユーザ群毎のサブセットが作成されることになる。
【0026】
以上のステップは、いわゆる学習フェーズであり、本フェーズにおいて準備されたサブセットを利用して、以下のような方法により感情記録対象ユーザの感情を記録する。
【0027】
制御部4は、ステップS6で入力部6に入力された感情記録対象ユーザの属性に応じて、記憶部5に記憶された複数のサブセットの中から、対応する一つのサブセットをステップS7で選択する。従って、例えば、入力部6に入力された感情記録対象ユーザの属性が「出身地が関東で19歳までの女性」である場合には、制御部4は
図5に示されたサブセットEを選択することになる。
【0028】
次に、ステップS8では、制御部4がステップS7において選択したサブセットに含まれる感情尺度コンテンツを表示部3に表示することによって、これらのコンテンツを当該感情記録対象ユーザに呈示する。
【0029】
次に、ステップS9では、制御部4が、当該感情記録対象ユーザによる感情に応じて選択された感情尺度コンテンツの選択情報を記憶部5に記憶させる。ここで、記録の精度を高めるため、選択情報には、当該感情記録対象ユーザが選択した日時や、選択した場所を示す位置情報等を含ませると好適である。
【0030】
なお、上記において、
図2に示されたステップS9における選択情報の記録は種々の方法で行うことができる。例えば、
図1に示された制御部4が、一日の間に予め設定した回数だけ所定の時刻に
図2に示されるステップS8の呈示を行うことにより、その時々の感情を断続的に記録するようにしても良い。
【0031】
また、上記感情記録支援装置1は、スマートフォンやスマートウォッチ等のウェアラブル端末といった単体の端末として構成するほか、
図1に示された制御部4及び記憶部5の機能の一部をクラウド側のサーバで実行するようにしてもよい。
【0032】
具体的には、例えば、上記サーバに全感情尺度コンテンツを予め格納した上で、サーバ側で
図2に示されたステップS1からステップS5を実行し、各ユーザ群用のサブセットを作成して保存する。そして、感情記録対象ユーザが利用する端末に入力された当該感情記録対象ユーザの属性に応じて、当該サーバが最適なサブセットを選択し、当該サブセットに含まれる感情尺度コンテンツを上記端末へ送信するという方法により、
図2に示されたステップS6からステップS9までを実行するようにしても良い。
【0033】
以上より、本発明の実施の形態に係る感情記録支援装置1及び感情記録支援方法によれば、ユーザの属性に応じて当該属性を持つユーザ群で共通認識がなされる感情尺度コンテンツを用いることができるため、ユーザの感情をより的確に記録することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 感情記録支援装置、4 制御部、5 記憶部、6 入力部。