(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143098
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】海水淡水化装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/22 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
C02F1/22 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043439
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】504145308
【氏名又は名称】国立大学法人 琉球大学
(71)【出願人】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】慶應義塾
(71)【出願人】
【識別番号】592009281
【氏名又は名称】株式会社IHIプラント
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 啓太
(72)【発明者】
【氏名】津金 佳汰
(72)【発明者】
【氏名】大村 亮
(72)【発明者】
【氏名】矢島 智美
(72)【発明者】
【氏名】中村 至高
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 亮
(72)【発明者】
【氏名】吉村 逸人
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮
(72)【発明者】
【氏名】戸村 重男
【テーマコード(参考)】
4D037
【Fターム(参考)】
4D037AA06
4D037AB18
4D037BA21
4D037BB01
4D037BB04
4D037BB06
4D037BB08
4D037CA01
4D037CA02
4D037CA03
4D037CA06
(57)【要約】
【課題】淡水の回収率を向上させる。
【解決手段】海水淡水化装置100は、海水とシクロペンタンとを混合して混合液を生成する混合部210と、シクロペンタンハイドレートおよび結晶塩化物の共晶温度に混合液を冷却して、シクロペンタンハイドレート、結晶塩化物、および、塩水を含む固液混合物を生成する生成部220と、固液混合物を、シクロペンタンハイドレートと、結晶塩化物と、塩水とに分離する分離部410と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水とシクロペンタンとを混合して混合液を生成する混合部と、
シクロペンタンハイドレートおよび結晶塩化物の共晶温度に前記混合液を冷却して、シクロペンタンハイドレート、前記結晶塩化物、および、塩水を含む固液混合物を生成する生成部と、
前記固液混合物を、前記シクロペンタンハイドレートと、前記結晶塩化物と、前記塩水とに分離する分離部と、
を備える海水淡水化装置。
【請求項2】
前記分離部によって分離された前記シクロペンタンハイドレートを加熱して、シクロペンタンと水とに分解する分解部を備える請求項1に記載の海水淡水化装置。
【請求項3】
前記生成部は、前記混合液と冷媒とを熱交換させ、
前記分解部は、前記生成部において熱交換された前記冷媒と、前記シクロペンタンハイドレートとを熱交換させる請求項2に記載の海水淡水化装置。
【請求項4】
前記分離部によって分離された前記塩水を前記混合部に返送する返送ポンプを備える請求項1から3のいずれか1項に記載の海水淡水化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水を淡水化する海水淡水化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海水を淡水化する技術として、多段フラッシュ(MSF: Multi-Stage Flash)法が利用されている。多段フラッシュ法は、海水を加熱して水を蒸発(フラッシュ)させ、蒸発した水(水蒸気)を冷却して凝縮する工程を複数回実行する。このため、多段フラッシュ法は、加熱に要する熱エネルギーが莫大となり、また、凝縮によって外部に廃棄される熱エネルギーも莫大となる。したがって、多段フラッシュ法は、加熱に要するコストが嵩むだけでなく、地球温暖化の要因ともなっている。
【0003】
そこで、逆浸透膜に高圧の海水を通過させる逆浸透(RO: Reverse Osmosis)法が開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記逆浸透法では、淡水の回収率が30%程度と低い。そこで、淡水の回収率を向上できる技術の開発が希求されている。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、淡水の回収率を向上させることが可能な海水淡水化装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る海水淡水化装置は、海水とシクロペンタンとを混合して混合液を生成する混合部と、シクロペンタンハイドレートおよび結晶塩化物の共晶温度に混合液を冷却して、シクロペンタンハイドレート、結晶塩化物、および、塩水を含む固液混合物を生成する生成部と、固液混合物を、シクロペンタンハイドレートと、結晶塩化物と、塩水とに分離する分離部と、を備える。
【0008】
また、上記海水淡水化装置は、分離部によって分離されたシクロペンタンハイドレートを加熱して、シクロペンタンと水とに分解する分解部を備えてもよい。
【0009】
また、生成部は、混合液と冷媒とを熱交換させ、分解部は、生成部において熱交換された冷媒と、シクロペンタンハイドレートとを熱交換させてもよい。
【0010】
また、上記海水淡水化装置は、分離部によって分離された塩水を混合部に返送する返送ポンプを備えてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、淡水の回収率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】海水淡水化装置の概略的な構成を説明する図である。
【
図3】混合部、生成部、および、冷媒冷却部の概略的構成を説明する図である。
【
図8】塩水中の塩化ナトリウム濃度と、シクロペンタンハイドレートの生成温度および氷結温度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
[海水淡水化装置100]
図1は、海水淡水化装置100の概略的な構成を説明する図である。なお、
図1中、実線の矢印は、海水、固液混合物SL、シクロペンタンハイドレートCH、分解水、シクロペンタンCP、および、循環塩水Jの流れを示す。また、
図1中、破線の矢印は、冷媒の流れを示す。
図1に示すように、海水淡水化装置100は、前処理部110と、混合部210と、生成部220と、冷媒冷却部310と、分離部410と、分解部510と、精製部610と、中央制御部710とを含む。
【0015】
前処理部110は、海水から夾雑物を取り除く。混合部210は、海水とシクロペンタンCPとを混合する。冷媒冷却部310は、冷媒を冷却する。生成部220は、海水およびシクロペンタンCPの混合液を冷媒で冷却して、シクロペンタンハイドレートCHおよび結晶塩化物を生成する。分離部410は、生成部220によって生成された固液混合物SLからシクロペンタンハイドレートCHおよび結晶塩化物を分離する。分解部510は、シクロペンタンハイドレートCHを水とシクロペンタンCPに分解する。精製部610は、シクロペンタンハイドレートCHが分解することによって得られる分解水(水)を生成する。
【0016】
中央制御部710は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成される。中央制御部710は、ROM(Read Only Memory:読み出し専用メモリ)からCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出す。中央制御部710は、プログラム、ワークエリアとしてのRAM(Random Access Memory:読み書き可能なメモリ)や他の電子回路と協働して海水淡水化装置100全体を管理および制御する。
【0017】
以下、前処理部110、混合部210、生成部220、冷媒冷却部310、分離部410、分解部510、精製部610について詳述する。
【0018】
[前処理部110]
図2は、前処理部110の概略的構成を説明する図である。
図2中、実線の矢印は、海水および淡水の流れを示す。
【0019】
図2に示すように、前処理部110は、粗精製部112と、海水昇圧ポンプ114と、逆浸透膜濾過器116と、浄水精製部118と、海水供給管120とを含む。
【0020】
粗精製部112は、海水(例えば、2℃以上28℃以下)の夾雑物を除去するとともに、海水を殺菌する。粗精製部112は、例えば、フィルタおよび殺菌灯で構成される。
【0021】
海水昇圧ポンプ114の吸入側は、粗精製部112に接続される。海水昇圧ポンプ114の吐出側は、逆浸透膜濾過器116に接続される。海水昇圧ポンプ114は、粗精製部112によって夾雑物が取り除かれ、殺菌された海水を昇圧して、逆浸透膜濾過器116に導く。
【0022】
逆浸透膜濾過器116は、海水から淡水を一部(海水昇圧ポンプ114から導かれた海水の約30%)回収する。回収された淡水は、浄水精製部118に導かれる。浄水精製部118は、淡水を浄化する。浄化された淡水は、飲料水等として利用される。
【0023】
一方、逆浸透膜濾過器116において、淡水が一部回収された海水(海水昇圧ポンプ114から導かれた海水の約70%)は、海水供給管120を通じて混合部210に導かれる。海水供給管120は、逆浸透膜濾過器116と混合部210とを接続する配管である。海水供給管120には、安全弁124および流量調整弁126が設けられる。
【0024】
[混合部210]
図3は、混合部210、生成部220、および、冷媒冷却部310の概略的構成を説明する図である。
図3中、実線の矢印は、海水、固液混合物SL、シクロペンタンハイドレートCH、シクロペンタンCP、および、循環塩水Jの流れを示す。また、
図3中、破線の矢印は、冷媒の流れを示す。
【0025】
図3に示すように、海水は、海水供給管120を通じて、前処理部110から混合部210に導かれる。また、シクロペンタンCPは、ゲスト供給管432を通じて、分離部410から混合部210に導かれる。循環塩水Jは、循環塩水供給管442を通じて、分離部410から混合部210に導かれる。
【0026】
混合部210は、海水と、シクロペンタンCPと、循環塩水Jとを混合(液液混合)する。混合部210は、例えば、螺旋型のライン混合器(流体の流れで回転し流体が撹拌される混合器)である。混合部210は、まず、海水供給管120から導かれた海水と、後述する分離部410から導かれたシクロペンタンCPとを混合する。その後、混合部210は、海水およびシクロペンタンCPの混合液(乳濁液)に循環塩水Jを混合する。
【0027】
混合部210において、海水およびシクロペンタンCPの混合液に、循環塩水J(-13.4℃)が混合されることにより、循環塩水Jによって、海水およびシクロペンタンCPの混合液が冷却される。これにより、ハイドレート生成反応が進行して、海水中の水が結晶水として取り込まれ、シクロペンタンハイドレートCHが生成される。
【0028】
なお、混合部210は、焼結金属またはセラミックで構成される発泡器を備える。発泡器は、シクロペンタンCPを10μm程度の粒径の液滴として海水に噴出させる。シクロペンタンCPは、水に不溶である。このため、シクロペンタンCPと水(海水)とのハイドレート生成反応は、液液界面で進行する。したがって、発泡器がシクロペンタンCPを10μm程度の粒径の液滴として海水に噴出させることにより、シクロペンタンCPと海水との接触面積を大きくすることができ、ハイドレート生成反応を促進させることが可能となる。
【0029】
また、ハイドレート生成反応は、発熱反応である。したがって、発泡器がシクロペンタンCPと海水との接触面積を大きくすることにより、反応熱を効率よく除去することができる。これにより、ハイドレート生成反応を促進させることが可能となる。
【0030】
また、シクロペンタンCPの粒径が小さすぎると、シクロペンタンCP粒子を囲む水の水素結合により、シクロペンタンCP粒子がチンダル現象を起こして乳濁液となり、新たな海水との接触が阻害され、反応速度が遅くなってしまう。そこで、シクロペンタンCPの粒径を10μm程度とすることにより、チンダル現象の発生を抑制することができる。これにより、シクロペンタンCPと新たな海水との接触が阻害されてしまう事態を回避することが可能となる。また、シクロペンタンCPの粒径を小さくしすぎる、つまり、発泡器の噴出孔の径を小さくしすぎると、発泡器へのシクロペンタンCPの注入圧力が高くなってしまい、加圧に要するエネルギーが大きくなってしまう。そこで、シクロペンタンCPの粒径を10μm程度とすることにより、発泡器への注入圧力を低くすることができ、加圧に要するエネルギーを低減することが可能となる。
【0031】
また、上記したように、混合部210は、海水およびシクロペンタンCPの混合液に、循環塩水Jを混合する。これにより、海水およびシクロペンタンCPの混合液におけるシクロペンタンハイドレートCHの急激な生成を抑制することができる。したがって、シクロペンタンハイドレートCHによって、発泡器の孔が閉塞されてしまう事態を回避することが可能となる。なお、海水およびシクロペンタンCPの混合液の温度は、冬季でも約4℃と推定される。このため、冬季であってもシクロペンタンハイドレートCHによって発泡器の孔が閉塞されることはない。
【0032】
なお、分離部410から導かれるシクロペンタンCPの量は、海水中の水のうち、シクロペンタンハイドレートCHとなり得る水の90%以上95%以下の水が結晶水としてシクロペンタンハイドレートCHに取り込まれる(転化する)量とする。これにより、シクロペンタンハイドレートCHによって、混合部210、固液混合物供給管212、生成部220、および、固液混合物送出管222が閉塞してしまう事態を回避することができる。
【0033】
また、分離部410から導かれる循環塩水Jの量は、前処理部110から導かれる海水の約8倍である。後述する生成部220において、混合部210で生成された固液混合物SLを冷却すると、迅速にシクロペンタンハイドレートCHが生成される。そうすると、固液混合物SL中の水が減少して塩化ナトリウム(NaCl)の濃度が上昇する。塩化ナトリウムの濃度が共晶濃度(例えば、23.8質量%)に達すると、塩化ナトリウム二水和物(NaCl・2H2O、結晶塩化物)が析出する。そこで、循環塩水Jの量を海水の約8倍とすることにより、生成部220において、生成される固体量(シクロペンタンハイドレートCHおよび塩化ナトリウム二水和物)を10質量%以下とすることができる。これにより、固液混合物送出管222の閉塞を防止することが可能となる。
【0034】
[生成部220]
生成部220は、固液混合物供給管212を通じて混合部210から導かれた固液混合物SLを、シクロペンタンハイドレートCHおよび結晶塩化物の共晶温度(例えば、-13.4℃)に冷却する。本実施形態において、生成部220は、固液混合物SLと冷媒とを熱交換させる熱交換器である。生成部220は、固液混合物SLを冷却し、冷媒を加熱する。生成部220によって冷却されることで、固液混合物SLにおいてハイドレート生成反応がさらに進行する。これにより、生成部220において、さらにシクロペンタンハイドレートCHが生成される。生成部220によって生成された、シクロペンタンハイドレートCH、結晶塩化物、および、共晶濃度の塩水を含む固液混合物SLは、固液混合物送出管222を通じて分離部410に導かれる。
【0035】
[冷媒冷却部310]
冷媒冷却部310は、バッファタンク320と、冷媒圧縮機330と、冷却器340と、バッファタンク350とを備える。
【0036】
バッファタンク320は、冷媒返送管322を通じて生成部220に接続される。また、バッファタンク320は、冷媒返送管324を通じて分離部410に接続される。バッファタンク320は、冷媒返送管322を通じて生成部220から導かれる気体状態の冷媒、および、冷媒返送管324を通じて分離部410から導かれる気体状態の冷媒を貯留する。冷媒冷却部310は、バッファタンク320を備えることにより、冷媒圧縮機330の吸入圧の変動、および、吸入量の変動を抑えることができる。
【0037】
冷媒圧縮機330の吸入側は、バッファタンク320に接続される。冷媒圧縮機330の吐出側は、冷却器340および分解部510に接続される。冷媒圧縮機330は、冷媒を昇圧する。冷媒圧縮機330によって圧縮された冷媒は、冷却器340および分解部510に導かれる。
【0038】
冷却器340は、冷媒圧縮機330によって昇圧された冷媒を冷却して凝縮する。冷却器340は、例えば、空冷装置、または、水冷装置で構成される。
【0039】
バッファタンク350は、冷却器340によって凝縮された冷媒(液体)、および、分解部510において凝縮された冷媒(液体)を貯留する。冷媒冷却部310は、バッファタンク350を備えることにより、冷媒(液体)の脈動(流量の変動、および、圧力の変動)を吸収することができる。
【0040】
冷媒供給管360は、冷媒圧縮機330の吐出側と分解部510(分解熱交換器522)とを接続する。冷媒供給管360には、流量調整弁362が設けられる。中央制御部710は、後述する分解部510の分解熱交換器522を通過する冷媒によってシクロペンタンハイドレートCHが分解されるように、流量調整弁362の開度を調整する。冷媒返送管364は、分解部510とバッファタンク350とを接続する。
【0041】
冷媒供給管370は、バッファタンク350と生成部220とを接続する。冷媒供給管370には、流量調整弁372が設けられる。中央制御部710は、生成部220における固液混合物SLの温度が共晶温度となるように、流量調整弁372の開度を調整する。
【0042】
冷媒供給管380は、バッファタンク350と分離部410とを接続する。冷媒供給管380には、流量調整弁382が設けられる。中央制御部710は、後述する分離部410の固液分離器412における固液混合物SLの温度が共晶温度(例えば、-13.4℃)となるように、流量調整弁382の開度を調整する。
【0043】
[分離部410]
図4は、分離部410の概略的構成を説明する図である。
図4中、実線の矢印は、固液混合物SL、シクロペンタンCP、循環塩水J、シクロペンタンハイドレートCH、および、結晶塩化物の流れを示す。
図4中、破線の矢印は、冷媒の流れを示す。また、
図4中、破線は、塩水とシクロペンタンCPとの界面を示し、一点鎖線は、シクロペンタンハイドレートCHとシクロペンタンCPとの界面を示し、二点鎖線は、シクロペンタンCPと気相(空気)との界面を示す。
【0044】
図4に示すように、分離部410は、固液分離器412と、熱交換器420と、脱水機422と、乾燥機424と、循環ポンプ430と、返送ポンプ440と、随伴液分離器450と、脱液機460と、ゲスト供給部470とを含む。
【0045】
固液分離器412は、円筒形状の容器である。固液分離器412の内部には、噴出部414と、仕切板416とが設けられる。噴出部414は、シクロペンタンCPを噴出する。仕切板416は、固液混合物SLからシクロペンタンハイドレートCHを分離する。
【0046】
図5は、
図4におけるV-V線断面図である。なお、
図5中、理解を容易にするために噴出部414を省略する。
【0047】
図5に示すように、仕切板416は、底面部416aと、前面部416bと、2つの側面部416cとを有する。底面部416aは、固液分離器412の側壁から固液分離器412内に、水平方向に突出する板である。底面部416aは、後述する塩水とシクロペンタンCPとの界面(
図4中、破線で示す)よりも上方に位置する。前面部416bは、底面部416aの先端から鉛直上方に延在する板である。側面部416cは、底面部416a、前面部416b、および、固液分離器412の内壁に連続する板である。このため、固液分離器412内において、底面部416a、前面部416b、側面部416c、および、固液分離器412の内壁で囲繞された仕切空間Sが形成される。
【0048】
詳しくは後述するが、固液分離器412内においてシクロペンタンハイドレートCHは、塩水中を浮上する。浮上したシクロペンタンハイドレートCHは、前面部416bおよび側面部416cの上端を越流(オーバーフロー)して仕切空間Sに導かれる。仕切空間Sに導かれたシクロペンタンハイドレートCHは、仕切空間Sを構成する固液分離器412の内壁に形成された排出口を通じて、後述する随伴液分離器450に導かれる。
【0049】
図4に戻って説明すると、固液分離器412の上部には、ガストラップ418が接続される。ガストラップ418は、固液分離器412から導かれた空気を排気したり、固液分離器412に空気を供給したりして、固液分離器412内の圧力を大気圧(0.1MPa程度)に維持する。ガストラップ418を備える構成により、昼夜の温度差、および、気圧の変動に拘わらず、固液分離器412内の圧力を大気圧に維持することができる。
【0050】
また、固液混合物送出管222は、生成部220と、固液分離器412における噴出部414と仕切板416との間とを接続する。したがって、生成部220から導かれた固液混合物SLは、固液分離器412における噴出部414と仕切板416との間に供給される。
【0051】
熱交換器420は、固液分離器412内の固液混合物SLを共晶温度(例えば、-13.4℃)に冷却する。熱交換器420には、冷媒供給管380および冷媒返送管324が接続される。熱交換器420は、冷媒冷却部310から導かれた冷媒と固液混合物SLとを熱交換して、固液混合物SLを冷却する。これにより、固液分離器412内において、ハイドレート生成反応がさらに促進される。そして、固液混合物SLの温度が共晶温度(例えば、-13.4℃)となると、固液混合物SLに含まれる塩水における塩化ナトリウムの濃度が共晶濃度(例えば、23.8質量%)に到達し、結晶塩化物が析出する。
【0052】
そして、固液分離器412内において、固液混合物SLが、シクロペンタンハイドレートCHと、結晶塩化物と、塩水と、シクロペンタンCPとに比重差で分離される。具体的に説明すると、シクロペンタンCPの比重は、0.75である。シクロペンタンハイドレートCHの比重は、0.95である。また、塩水の比重は、1.20である。結晶塩化物の比重は、1.69である。したがって、固液分離器412において、シクロペンタンハイドレートCHは塩水とシクロペンタンCPとの界面(
図4中、破線で示す)に浮上し、結晶塩化物は、塩水中に沈降する。なお、シクロペンタンハイドレートCHの約70%は、シクロペンタンCP層に位置し、約30%は、塩水中に位置する。なお、固液分離器412内において、シクロペンタンハイドレートCHとシクロペンタンCPとが十分に分離される程度に、シクロペンタンハイドレートCHの滞留時間が長くなるように、固液分離器412は設計される。
【0053】
こうして、浮上したシクロペンタンハイドレートCHは、上記仕切板416を越流して、随伴液分離器450に導かれる。なお、上記したように、仕切板416の底面部416aは、塩水とシクロペンタンCPとの界面の上方に設けられる。このため、仕切板416を越流したシクロペンタンハイドレートCHには、塩水がほとんど随伴されず、シクロペンタンCPが随伴されることになる。これにより、後段の分解部510において生成される水の塩化ナトリウム濃度を低減することができる。
【0054】
一方、沈降した結晶塩化物は、脱水機422によって脱水される。脱水機422によって脱水された結晶塩化物は、乾燥機424で乾燥される。一方、脱水機422によって生じた塩水は、後述するアキュムレータ456に導かれる。乾燥機424によって乾燥された結晶塩化物(塩化ナトリウム)は、製品として出荷される。
【0055】
また、脱水機422とアキュムレータ456とを接続する配管には、流量調整弁426が設けられる。中央制御部710は、脱水機422の脱水効率を維持するように、流量調整弁426の開度を調整する。
【0056】
また、固液分離器412内で浮上分離されたシクロペンタンCPは、循環ポンプ430によって混合部210および噴出部414に返送される。
【0057】
循環ポンプ430の吸入側は、固液分離器412における仕切板416の上方に接続される。循環ポンプ430の吐出側は、ゲスト供給管432に接続される。ゲスト供給管432は、循環ポンプ430と混合部210とを接続する配管である。ゲスト供給管432には、流量調整弁434が設けられる。中央制御部710は、混合部210に導かれるシクロペンタンCPの量が、海水中の水のうち、シクロペンタンハイドレートCHとなり得る水の90%以上95%以下の水が結晶水としてシクロペンタンハイドレートCHに取り込まれる量となるように、流量調整弁434の開度を調整する。
【0058】
ゲスト循環管436は、ゲスト供給管432における流量調整弁434と混合部210との間と、噴出部414とを接続する配管である。ゲスト循環管436には、流量調整弁438が設けられる。中央制御部710は、固液分離器412に導かれるシクロペンタンCPの量が、海水中の水のうち、シクロペンタンハイドレートCHとなり得る水の5%以上10%以下の水が結晶水としてシクロペンタンハイドレートCHに取り込まれる量となるように、流量調整弁438の開度を調整する。つまり、噴出部414から導かれるシクロペンタンCPによって、海水中の水のうち、シクロペンタンハイドレートCHとなり得る水のほとんどすべて(100%)をシクロペンタンハイドレートCHに転化させることができる。なお、中央制御部710は、後述する精製部610で設定される淡水の目標量となるように、流量調整弁434および流量調整弁438の開度を調整してもよい。
【0059】
また、固液分離器412内で分離された塩水(例えば、-13.4℃)は、返送ポンプ440によって混合部210に返送される。返送ポンプ440の吸入側は、固液分離器412における噴出部414の下方に接続される。返送ポンプ440の吐出側は、循環塩水供給管442に接続される。循環塩水供給管442は、返送ポンプ440と混合部210とを接続する配管である。循環塩水供給管442は、流量調整弁444が設けられる。中央制御部710は、混合部210に導かれる塩水(循環塩水J)の量が、海水の約8倍となるように、流量調整弁444の開度を調整する。
【0060】
随伴液分離器450には、シクロペンタンハイドレートCHと、シクロペンタンハイドレートCHに随伴される微量のシクロペンタンCPおよび塩水とが導かれる。随伴液分離器450は、比重差によって、シクロペンタンハイドレートCHと、シクロペンタンCPと、塩水とを分離する。
【0061】
随伴液分離器450内において、シクロペンタンCPは、上層に浮上して滞留する。また、シクロペンタンハイドレートCHと、遊離液との混合物は、中層を形成する。なお、遊離液は、塩水とシクロペンタンCPとの混合液である。また、塩水は、下層に滞留する。
【0062】
ゲスト返送管452は、随伴液分離器450の上部と、固液分離器412におけるシクロペンタンCPと空気との界面(
図4中、二点鎖線で示す)の上方とを接続する配管である。随伴液分離器450の上層を構成するシクロペンタンCPは、比重差で中層および下層に押上げられ、ゲスト返送管452を通じて、固液分離器412の気相中に自動的に返送される。
【0063】
随伴液分離器450において中層を形成するシクロペンタンハイドレートCHは、上昇および下層の液面で挟持されつつ、後述する脱液機460に吸引される。
【0064】
随伴液分離器450において下層を形成する塩水は、滞留水排出ポンプ454で吸引されて循環塩水供給管442を通じて混合部210に返送される。なお、随伴液分離器450と滞留水排出ポンプ454との間には、アキュムレータ456が設けられている。アキュムレータ456は、塩水とシクロペンタンCPとを比重差分離する。このため、滞留水排出ポンプ454は、アキュムレータ456によって分離された塩水を混合部210に返送する。また、アキュムレータ456によって分離されたシクロペンタンCPは、ゲスト返送管452を通じて、固液分離器412に返送される。
【0065】
なお、随伴液分離器450とアキュムレータ456とを接続する配管には、流量調整弁458が設けられる。中央制御部710は、随伴液分離器450における下層と、中層との界面が所定位置に維持されるように、流量調整弁458の開度を調整する。
【0066】
脱液機460は、随伴液分離器450から中層(シクロペンタンハイドレートCH)を吸引して、脱液する。脱液機460は、例えば、随伴液を30質量%以下にする。脱液機460によって脱液されたシクロペンタンハイドレートCHは、分解部510に導かれる。一方、脱液機460で生じた随伴液(シクロペンタンCPおよび塩水)は、随伴液分離器450に返送される。なお、脱液機460と随伴液分離器450との間には、流量調整弁462が設けられる。中央制御部710は、脱液機460の脱液効率を維持するように、流量調整弁462の開度を調整する。
【0067】
ゲスト供給部470は、シクロペンタンCPを固液分離器412に導く。ゲスト供給部470は、窒素ボンベ472と、タンク474と、ゲスト供給管478とを含む。窒素ボンベ472は、窒素を貯蔵する。タンク474は、シクロペンタンCPを貯蔵する。窒素ボンベ472と、タンク474とを接続する配管には安全弁476が設けられる。また、タンク474には、不図示のベント弁が設けられる。ゲスト供給管478は、タンク474とゲスト返送管452とを接続する。
【0068】
窒素ボンベ472に貯蔵された窒素は、タンク474に導かれる。タンク474に導かれた窒素によって、タンク474内のシクロペンタンCPは、ゲスト供給管478に押し出される。そして、シクロペンタンCPは、ゲスト供給管478、ゲスト返送管452を通じて、固液分離器412に導かれる。
【0069】
また、ゲスト供給管478には、流量調整弁480が設けられる。中央制御部710は、固液分離器412内におけるシクロペンタンCPと空気との界面が所定位置に維持されるように、流量調整弁480の開度を調整する。
【0070】
[分解部510]
分解部510は、分離部410によって分離されたシクロペンタンハイドレートCHを加熱して、シクロペンタンCPと水とに分解する。
図6は、分解部510の概略的構成を説明する図である。
図6中、実線の矢印は、シクロペンタンハイドレートCH、固液混合物、シクロペンタンCP、および、分解水の流れを示す。
図6中、破線の矢印は、冷媒の流れを示す。また、
図6中、破線は、水とシクロペンタンCPとの界面を示し、一点鎖線は、シクロペンタンCPの気相(空気)との界面を示す。
【0071】
図6に示すように、分解部510は、熱交換管512と、分解器520と、回収ポンプ530と、吸着塔540とを含む。
【0072】
熱交換管512は、分離部410の脱液機460と、分解器520とを接続する配管である。熱交換管512は、分離部410の脱液機460から導かれたシクロペンタンハイドレートCHと、冷媒冷却部310から導かれた冷媒とを熱交換させる。熱交換管512は、例えば、二重管である。シクロペンタンハイドレートCHは、熱交換管512の内管を通過する。冷媒供給管360を通じて冷媒冷却部310から導かれた冷媒は、熱交換管512の外管を通過する。熱交換管512を備える構成により、シクロペンタンハイドレートCHの一部が分解され、水(分解水)が生成される。これにより、分解水が潤滑液として機能し、脱液機460から分解器520へのシクロペンタンハイドレートCHの移送を容易に行うことができる。
【0073】
分解器520は、円筒形状の容器である。分解器520の内部には、分解熱交換器522が設けられる。分解熱交換器522は、分解器520内のシクロペンタンハイドレートCHと、冷媒冷却部310から導かれ、熱交換管512を通過した冷媒とを熱交換させる。分解熱交換器522は、冷媒の凝縮熱によって、シクロペンタンハイドレートCHを加熱する。
【0074】
除熱(冷却)された冷媒は、液トラップ366において一旦貯留された後、冷媒返送管364を通じて、バッファタンク350に返送される。
【0075】
一方、冷媒によって加熱されたシクロペンタンハイドレートCHは、シクロペンタンCPと水(分解水)とに分解される。上記したように、シクロペンタンCPの比重は、水より小さい。このため、分解器520内において、シクロペンタンCPが浮上して上層を形成し、分解水が沈降して下層を形成する。
【0076】
また、分解器520の上部には、ガストラップ524が接続される。ガストラップ524は、分解器520から導かれた空気を排気したり、分解器520に空気を供給したりして、分解器520内の圧力を大気圧(0.1MPa程度)に維持する。ガストラップ524を備える構成により、昼夜の温度差、および、気圧の変動に拘わらず、分解器520内の圧力を大気圧に維持することができる。
【0077】
分解器520の下層に滞留した分解水は、精製部610に導かれる。一方、分解器520の上層に滞留したシクロペンタンCPは、回収ポンプ530によって、吸着塔540に導かれる。
【0078】
回収ポンプ530の吸入側は、分解器520における上層の滞留位置に接続される。回収ポンプ530の吐出側は、吸着塔540に接続される。
【0079】
吸着塔540は、シクロペンタンCPに含まれる微量の不純物を吸着して除去する。吸着塔540によって不純物が除去されたシクロペンタンCPは、随伴液分離器450の上層に返送される。
【0080】
[精製部610]
図7は、精製部610の概略的構成を説明する図である。
図7中、実線の矢印は、水の流れを示す。
【0081】
図7に示すように、精製部610は、分解水昇圧ポンプ612と、逆浸透膜濾過器620と、浄水精製部622とを含む。
【0082】
分解水昇圧ポンプ612は、分解部510の分解熱交換器522で生成された分解水(水)を昇圧して逆浸透膜濾過器620に導く。分解水昇圧ポンプ612の吸入側は、分解熱交換器522の底部に接続される。分解水昇圧ポンプ612の吐出側は、逆浸透膜濾過器620に接続される。
【0083】
逆浸透膜濾過器620は、分解水から塩分濃度100ppm以下の淡水を回収する。回収された淡水(例えば、混合部210に導かれる海水の約88%)は、浄水精製部622に導かれる。浄水精製部622は、淡水を浄化する。浄化された淡水は、飲料水等として利用される。
【0084】
一方、逆浸透膜濾過器620において、淡水が回収された分解水の一部は、三方弁624を通じて、分離部410の固液分離器412に返送される。また、淡水が回収された分解水の残りは、三方弁624を通じて外部に廃棄される。
【0085】
[起動方法]
続いて、海水淡水化装置100の起動方法を説明する。まず、中央制御部710は、前処理部110の海水昇圧ポンプ114を駆動して、固液分離器412に海水(原料)を充填する。そして、固液分離器412におけるシクロペンタンハイドレートCHの排出口のわずかに下方まで海水が充填されたら、中央制御部710は、海水昇圧ポンプ114の駆動を停止する。そして、中央制御部710は、返送ポンプ440を駆動して、固液分離器412内の海水を循環させる。また、中央制御部710は、ゲスト供給部470を駆動して、固液分離器412にシクロペンタンCPを供給するとともに、循環ポンプ430を駆動して、シクロペンタンCPを混合部210に供給する。
【0086】
続いて、中央制御部710は、冷媒冷却部310を駆動する。なお、中央制御部710は、生成部220において、一定速度でシクロペンタンハイドレートCHが析出される、つまり、一定速度で塩水中の塩化ナトリウム濃度が増加するように、冷媒冷却部310を制御する。
【0087】
そして、循環塩水Jの温度(固液分離器412内の温度)が、共晶温度(-13.4℃)、循環塩水Jの塩化ナトリウム濃度(固液分離器412内の塩水の塩化ナトリウム濃度)が23.8質量%に到達したら、中央制御部710は、海水昇圧ポンプ114を起動し、通常運転に切り換える。また、中央制御部710は、冷媒冷却部310、循環ポンプ430、返送ポンプ440を通常運転に切り換える。
【0088】
以上説明したように、本実施形態に係る海水淡水化装置100は、海水からシクロペンタンハイドレートCHを生成し、シクロペンタンハイドレートCHを分解することで、海水のほとんどすべてを淡水に変換することができる。したがって、海水淡水化装置100は、逆浸透法のみを採用する技術と比較して、淡水の回収率を向上させることが可能となる。したがって、海水淡水化装置100は、ゼロエミッションを達成することができる。また、海水淡水化装置100は、ほぼ無排水化(ZLD:Zero Liquid Discharge)を図ることが可能となる。
【0089】
また、上記したように、海水淡水化装置100は、混合部210、生成部220、冷媒冷却部310、および、分離部410を備え、海水およびシクロペンタンCPを冷却してシクロペンタンハイドレートCHおよび結晶塩化物を並行して生成する。
図8は、塩水中の塩化ナトリウム濃度と、シクロペンタンハイドレートCHの生成温度および氷結温度との関係を示す図である。
図8中、横軸は、塩水中の塩化ナトリウム濃度[wt%(質量%)]を示す。
図8中、縦軸は、温度[℃]を示す。また、
図8中、実線は、シクロペンタンハイドレートCHの生成温度を示し、破線は氷結温度を示し、一点鎖線は塩化ナトリウムの飽和溶解度を示す。つまり、実線と一点鎖線の交点は、シクロペンタンハイドレートCHと塩化ナトリウム二水和物の共晶点(共晶温度)であり、破線と一点鎖線の交点は、氷と塩化ナトリウム二水和物の共晶点(共晶温度)である。
【0090】
図8に示すように、塩化ナトリウム濃度に拘わらず、シクロペンタンハイドレートCHハイドレートの生成温度は、氷結温度(氷点)よりも高い。このため、混合部210、生成部220、および、分離部410において、氷結に優先して、シクロペンタンハイドレートCHが生成される。
【0091】
また、シクロペンタンハイドレートCHハイドレートの生成温度は、氷結温度よりも高いため、海水を氷結させる場合と比較して、海水淡水化装置100は、冷媒冷却部310による冷媒の冷却負荷を低減することができる。
【0092】
また、上記したように、混合部210、生成部220、および、分離部410は、シクロペンタンハイドレートCHと結晶塩化物との共晶温度に維持される。したがって、海水淡水化装置100は、シクロペンタンハイドレートCHと結晶塩化物とを並行して製造することができる。
【0093】
また、上記したように、海水淡水化装置100は、海水昇圧ポンプ114、混合部210、生成部220、分離部410、分解部510、および、精製部610を備える。これにより、海水淡水化装置100は、淡水および塩を連続して製造することが可能となる。
【0094】
また、上記したように、シクロペンタンCPは、水に不溶である。このため、分解器520は、シクロペンタンCPと分解水とを容易に分離することが可能となる。また、比重差のみで、シクロペンタンCPと分解水とを分離できるため、海水淡水化装置100は、分解器520の内圧を大気圧下にすることができる。同様に、比重差のみで、シクロペンタンCPと、シクロペンタンハイドレートCHと、塩水とを分離できるため、海水淡水化装置100は、固液分離器412の内圧を大気圧下にすることができる。
【0095】
また、シクロペンタンCPは、水に不溶であるため、海水淡水化装置100は、分解水にシクロペンタンCPが溶存される事態を回避することができる。これにより、海水淡水化装置100は、分解水を安全な飲料水とすることが可能となる。
【0096】
また、上記したように、海水淡水化装置100は、冷媒冷却部310と分解熱交換器522とを備える。これにより、シクロペンタンハイドレートCHによって冷媒を冷却することができる。したがって、シクロペンタンハイドレートCHの反応熱を除去するためのエネルギーを低減することが可能となる。また、分解部510は、冷媒の熱でシクロペンタンハイドレートCHを分解することができる。これにより、海水淡水化装置100は、シクロペンタンハイドレートCHの分解に要する熱エネルギーを削減することが可能となる。
【0097】
また、上記したように、海水淡水化装置100は、返送ポンプ440を備える。これにより、海水淡水化装置100は、結晶塩化物および分解水の回収率を向上させることができる。
【0098】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0099】
例えば、上記実施形態において、前処理部110が、逆浸透膜濾過器116を備える場合を例に挙げた。しかし、逆浸透膜濾過器116は、必須の構成ではない。なお、逆浸透膜濾過器116を備えない場合、海水昇圧ポンプ114の吐出圧は、0.3MPaG程度と、逆浸透膜濾過器116を備える場合よりも低くなる。
【0100】
また、上記実施形態において、分解熱交換器522がシクロペンタンハイドレートCHと熱交換させることで冷却された冷媒によって、生成部220が混合液を冷却する場合を例に挙げた。しかし、シクロペンタンハイドレートCHの分解と、混合液の冷却とは、別の熱媒体や機器で行われてもよい。例えば、シクロペンタンハイドレートCHの分解は、燃焼排ガスとの熱交換で行われてもよい。また、混合液の冷却は、LNGとの熱交換で行われてもよい。
【0101】
また、上記実施形態において、海水淡水化装置100が返送ポンプ440を備える場合を例に挙げた。しかし、返送ポンプ440は、必須の構成ではない。
【0102】
また、上記実施形態において、分離部410(固液分離器412)が、固液混合物SLを、シクロペンタンハイドレートCHと、結晶塩化物と、塩水と、シクロペンタンCPとに比重差で分離する構成を例に挙げた。しかし、分離部410(固液分離器412)は、遠心分離機で構成されてもよい。つまり、分離部410(固液分離器412)は、固液混合物SLを、シクロペンタンハイドレートCHと、結晶塩化物と、塩水と、シクロペンタンCPとに遠心分離してもよい。これにより、海水淡水化装置100を船内等に設けることが可能となる。
【符号の説明】
【0103】
100 海水淡水化装置
210 混合部
220 生成部
410 分離部
440 返送ポンプ
510 分解部