(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143203
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】シロキサン化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 77/26 20060101AFI20220926BHJP
C07F 7/18 20060101ALI20220926BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20220926BHJP
C08F 290/14 20060101ALI20220926BHJP
C08F 299/08 20060101ALI20220926BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20220926BHJP
A61L 27/52 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C08G77/26
C07F7/18 X
C08F290/06
C08F290/14
C08F299/08
A61L27/18
A61L27/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043601
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】岡村 薫
【テーマコード(参考)】
4C081
4H049
4J127
4J246
【Fターム(参考)】
4C081AB21
4C081AB22
4C081AB23
4C081BB02
4C081BB03
4C081CA27
4H049VN01
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4H049VQ02
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4H049VW02
4J127AA04
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4J246CA26X
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4J246CA74M
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4J246CA76U
4J246CA76X
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4J246FE35
4J246GB02
4J246HA52
4J246HA57
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アミド結合および(メタ)アクリレート基を有し、医療用材料として有益な純度を有するシロキサン化合物、並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】下記式(2)で表される基を1分子中に2個以上有するシロキサン化合物。
(式(2)中、R
3は水素原子又はメチル基であり、R
4は水素原子又は炭素数1~6の1価炭化水素基であり、L
1は、炭素数1~5の2価炭化水素基であり、L
2は、エーテル結合を含んでよい炭素数2~10の2価炭化水素基であり、*で示される部位はシロキサン主鎖のケイ素原子との結合箇所である)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表され、下記式(2)で表される基を1分子中に2個以上有するシロキサン化合物
【化1】
[式(1)中、Rは、互いに独立に炭素数1~10の1価炭化水素基であり、R
1は、互いに独立に、上記Rで定義される基、又は、下記式(2)または(3)で表される基であり、R
2は、互いに独立に、下記式(2)または(3)で表される基であり、pは0~500の整数であり、qは0~50の整数であり、但し下記式(2)で表される基を1分子中に2個以上有し、シロキサン単位の結合順は上記に制限されず、ブロック単位を成していてもランダム結合でもよく、
【化2】
(式(2)中、R
3は水素原子又はメチル基であり、R
4は水素原子又は炭素数1~6の1価炭化水素基であり、L
1は、炭素数1~5の2価炭化水素基であり、L
2は、エーテル結合を含んでよい炭素数2~10の2価炭化水素基であり、*で示される部位は前記式(1)中のケイ素原子との結合箇所である)
【化3】
(式(3)中、R
4、L
1、及びL
2は上記の通りであり、**で示される部位は前記式(1)中のケイ素原子との結合箇所である)]。
【請求項2】
R3がメチル基である、請求項1記載のシロキサン化合物。
【請求項3】
上記式(2)で表される基を1分子中に2~50個有する、請求項1又は2記載のシロキサン化合物。
【請求項4】
pは0~200の整数であり、qは0又は1~20の整数である、請求項1~3のいずれか1項記載のシロキサン化合物。
【請求項5】
pは10~100の整数であり、qは0又は3~10の整数である、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
qが0であり、R1が上記式(2)で表される基である、請求項1~5のいずれか1項記載のシロキサン化合物。
【請求項7】
Rがメチル基である、請求項1~6のいずれか1項記載のシロキサン化合物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項記載のシロキサン化合物の重合体。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項記載のシロキサン化合物と他の重合性モノマーとの重合物である共重合体。
【請求項10】
共重合体の質量に対する前記シロキサン化合物から導かれる繰り返し単位の質量割合が10質量%以上80質量%以下である、請求項9記載の共重合体。
【請求項11】
他の重合性モノマーの少なくとも1がシロキサン化合物でない(メタ)アクリルモノマーであり、前記シロキサン化合物から導かれる繰り返し単位および前記(メタ)アクリルモノマーから導かれる繰り返し単位の合計質量が、共重合体の質量に対し50質量%以上である、請求項9または10記載の共重合体。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか1項記載の(共)重合体を含むハイドロゲル。
【請求項13】
請求項8~11のいずれか1項記載の(共)重合体を含む医療用材料。
【請求項14】
下記式(1)で表され、下記式(2)で表される基を1分子中に2個以上有するシロキサン化合物の製造方法であって、
【化4】
[式(1)中、Rは、互いに独立に炭素数1~10の1価炭化水素基であり、R
1は、互いに独立に、上記Rで定義される基、又は、下記式(2)または(3)で表される基であり、R
2は、互いに独立に、下記式(2)または(3)で表される基であり、pは0~500の整数であり、qは0~50の整数であり、但し下記式(2)で表される基を1分子中に2個以上有し、シロキサン単位の結合順は上記に制限されず、ブロック単位を成していてもランダム結合でもよく、
【化5】
(式(2)中、R
3は水素原子又はメチル基であり、R
4は水素原子又は炭素数1~6の1価炭化水素基であり、L
1は、炭素数1~5の2価炭化水素基であり、L
2は、エーテル結合を含んでよい炭素数2~10の2価炭化水素基であり、*で示される部位は前記式(1)中のケイ素原子との結合箇所である)
【化6】
(式(3)中、R
4、L
1、及びL
2は上記の通りであり、**で示される部位は前記式(1)中のケイ素原子との結合箇所である)]
下記式(5)で表されるアミノ基を有するシロキサン化合物と
【化7】
(式中、R
5は互いに独立に、上記Rで定義される基、または下記式(6)で表される基であり、R
6は互いに独立に、下記式(6)で表される基であり、R、p、及びqは上記の通りであり、及び、該式(5)は下記式(6)で表される基を1分子中に2個以上有する)
【化8】
(式中、R
4、L
2は上記の通りであり、***で示される部位は前記式(5)中のケイ素原子との結合箇所である)
炭素数2~6のラクトン化合物とを反応させて、下記式(4)で表される化合物を得る工程と、
【化9】
(式中、R、p、qは上記の通りであり、R
1’は互いに独立に、上記Rで定義される基、または上記式(3)で表される基であり、R
2’は互いに独立に、上記式(3)で表される基であり、及び、該式(4)は上記式(3)で表される基を1分子中に2個以上有する)
上記式(4)で表される化合物と、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物とを反応させて上記式(1)で表されるシロキサン化合物を得る工程とを含む、
前記化合物の製造方法。
【請求項15】
前記ラクトン化合物が、α-アセトラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、及びε-カプロラクトンから選ばれる、請求項14記載の製造方法。
【請求項16】
前記(メタ)アクリル酸ハロゲン化物が、メタクリル酸クロライド、アクリル酸クロライド、メタクリル酸ブロミド、又はアクリル酸ブロミドである、請求項14または15記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシロキサン化合物及びその製造方法に関する。詳細には、医療用材料に好適なシロキサン化合物を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来、眼科用デバイスをはじめとした医療用材料に用いられる化合物として、シロキサンを有するモノマーが知られている。例えば、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート(TRIS)は、医療材料用モノマーとして広く用いられている。このTRISと2-ヒドロキシエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミドやN-ビニル-2-ピロリドンなどの親水性モノマーとを共重合して得られるポリマーは高酸素透過性であるという有益な特長を有する。しかし、疎水性の高いシロキサンモノマーはこれらの親水性モノマーとの相溶性が高いとは言えず、医療用材料となるハイドロゲルを作製した際に相分離が起こり、白濁してしまうという問題がある。そのため、シロキサンモノマー分子内に親水基を導入することで、相溶性を改善する試みが行われてきた。
【0003】
特許文献1、2、3には、下記式(a)又は(a’)で示されるグリセロールメタクリレートを有するシロキサン化合物:メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロールメタクリレート(SiGMA)が記載されている。
【化1】
該SiGMAは、メタクリル酸とエポキシ変性シロキサン化合物の付加反応により形成されるモノマーであり、分子内に水酸基を有するために良好な親水性を発現する。しかし、SiGMAは、カルボン酸とエポキシ変性シロキサン化合物の付加反応における副反応が避けられず、目的とするシロキサン化合物の純度が低下するという問題があり、医療材料の原料として好ましくない。
【0004】
特許文献4、5には、(メタ)アクリルアミド基を有するシロキサン化合物が記載されている。該化合物は分子内に(メタ)アクリルアミドを有するために良好な親水性と他の(メタ)アクリルアミドモノマーとの良好な反応性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭54-55455号公報
【特許文献2】特開昭56-22325号公報
【特許文献3】特開2004-182724号公報
【特許文献4】特開平5-17577号公報
【特許文献5】特表2017-517585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シロキサン化合物と重合させる他の医療材料用モノマーの多くは(メタ)アクリレートを有する。上記特許文献4及び5記載の(メタ)アクリルアミド基を有するシリコーン化合物は、(メタ)アクリレート基を有するモノマーとの反応性は良いとは言えず、(メタ)アクリレート基を有する化合物との反応性に劣り、重合時に相分離が起こるなど、得られる材料に不均一性が生じる恐れがある。
【0007】
また上記の通り、親水性基を有するシロキサン化合物は親水性モノマーとの相溶性を有するが、反応性や純度などに課題があり、(メタ)アクリル樹脂の原料、特には医療用材料の原料として好ましくない。従って、従来のシロキサン化合物は、有益な親水性や透明性、強度を有する材料を提供することが困難である。そこで、これらの欠点を克服する化合物及び組成物に対する需要が依然として存在する。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、アミド結合および(メタ)アクリレート基を有するシロキサン化合物を提供することを目的とする。さらには、医療用材料として有益な純度を有するシロキサン化合物を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討し、シロキサン単位と(メタ)アクリレート基を有し、かつその連結基部位にアミド結合を有する化合物が、親水性モノマーをはじめとした他のモノマーとの相溶性に優れ、かつ良好な反応性を有することを見出した。さらに、アミノ基を有するシロキサン化合物とラクトン化合物、及び(メタ)アクリル酸ハロゲン化物から得られる本シロキサン化合物は、高純度であり、医療用材料である(メタ)アクリル樹脂の原料として好ましいことを見出した。
【0010】
即ち、本発明は、下記式(1)で表され、下記式(2)で表される基を1分子中に2個以上有するシロキサン化合物を提供する。
【化2】
[式(1)中、Rは、互いに独立に炭素数1~10の1価炭化水素基であり、R
1は、互いに独立に、上記Rで定義される基、又は、下記式(2)または(3)で表される基であり、R
2は、互いに独立に、下記式(2)または(3)で表される基であり、pは0~500の整数であり、qは0~50の整数であり、シロキサン単位の結合順は上記に制限されず、ブロック単位を有していてもランダムに結合していてもよい
【化3】
(式(2)中、R
3は水素原子又はメチル基であり、R
4は水素原子又は炭素数1~6の1価炭化水素基であり、L
1は、炭素数1~5の2価炭化水素基であり、L
2は、エーテル結合を含んでよい炭素数2~10の2価炭化水素基であり、*で示される部位はは前記式(1)中のケイ素原子との結合箇所である)
【化4】
(式(3)中、R
4、L
1、及びL
2は上記の通りであり、**で示される部位は前記式(1)中のケイ素原子との結合箇所である)]。
さらに本発明は該シロキサン化合物の製造方法、該化合物から導かれる繰り返し単位を含むポリマー、及び該ポリマーを含む医療用材料、特には眼科用デバイスを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシロキサン化合物は、他の重合性モノマー、特には(メタ)アクリルモノマーとの相溶性及び反応性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例2のシロキサン化合物と他の重合性モノマーとの重合反応における反応液の粘弾性変化、及び比較例2のシロキサン化合物と他の重合性モノマーとの重合反応における反応液の粘弾性変化をレオメーターで測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の化合物について、詳細に説明する。
【0014】
本発明の化合物は上記式(1)で表され、上記式(2)で表される基を1分子中に2個以上有するシロキサン化合物である。シロキサン単位、アミド結合、及び(メタ)アクリレート基を有することを特徴とする。該化合物はアミド結合を有するため他のモノマーとの相溶性に優れる。また、本発明の化合物において重合性基となる(メタ)アクリレート基は他の(メタ)アクリルモノマーとの反応性に優れる。
【0015】
前記式(1)において、Rは、互いに独立に、炭素数1~10の、好ましくは炭素数1~6の1価炭化水素基である。1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、及びトリル基等のアリール基等が挙げられる。Rは、好ましくは炭素数1~10の、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基であり、更に好ましくはRがメチル基又はブチル基である。
【0016】
前記式(1)において、pは0~500の整数である。好ましくは、0~200の整数であり、さらに好ましくは10~100である。
【0017】
前記式(1)において、qは0~50の整数である。好ましくは、0又は1~20の整数であり、さらに好ましくは0又は3~10の整数である。qが0のとき、R1はいずれも式(2)で表される基である。
上記式(1)においてシロキサン単位の結合順は制限されず、ブロック単位を形成していても、ランダムに結合していてもよい。
【0018】
前記式(1)において、R
1は、互いに独立に、上記Rで定義される基、又は、下記式(2)または(3)で表される基であり、R
2は、互いに独立に、下記式(2)または(3)で表される基である。ただし、上記式(1)で表されるシロキサン化合物は下記式(2)で表される基を1分子中に2個以上有することを特徴とし、好ましくは下記式(2)で表される基を1分子中に2~50個、好ましくは2~20個、さらには3~10個有するのがよい。上記の通りqが0のときには、下記式(2)で表される基をシロキサン化合物の両末端に1つずつ有する。式(2)で表される基が1個以下の場合、式(1)で示されるシロキサン化合物の、他の(メタ)アクリルモノマーとの反応性が劣ってしまう可能性があるため好ましくない。
【化5】
(式(2)中、R
3は水素原子又はメチル基であり、R
4は水素原子又は炭素数1~6の1価炭化水素基であり、L
1は、炭素数1~5の2価炭化水素基であり、L
2は、エーテル結合を含んでよい炭素数2~10の2価炭化水素基であり、*で示される部位は前記式(1)中のケイ素原子との結合箇所である)
【化6】
(式(3)中、R
4、L
1、及びL
2は上記の通りであり、**で示される部位は前記式(1)中のケイ素原子との結合箇所である)。
【0019】
上記式(2)において、R3は水素原子又はメチル基である。好ましくはメチル基である。
【0020】
上記式(2)及び(3)において、R4は水素原子又は炭素数1~6の1価炭化水素基である。1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基等のアリール基等が挙げられる。R4は、好ましくは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、更に好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0021】
上記式(2)及び(3)において、L1は炭素数1~5の2価炭化水素基である。好ましくは炭素数1~5の脂肪族炭化水素基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、1,3-プロピレン基、1-メチルプロピレン基、1,1-ジメチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、1,2-ジメチルプロピレン基、1,4-ブチレン基、2-メチル-1,4-ブチレン基、3-メチル-1,4-ブチレン基、1,5-ペンチレン基基等が挙げられる。好ましくは、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1,5-ペンチレン基である。
【0022】
前記式(2)及び(3)において、L2はエーテル結合を含んでよい、炭素数2~10の2価炭化水素基である。好ましくは炭素数2~10の、より好ましくは炭素数2~5の脂肪族炭化水素基であり、例えば、エチレン基、1,3-プロピレン基、1-メチルプロピレン基、1,1-ジメチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、1,2-ジメチルプロピレン基、1,1,2-トリメチルプロピレン基、1,4-ブチレン基、2-メチル-1,4-ブチレン基、2、2-ジメチル-1,4-ブチレン基、3-メチル-1,4-ブチレン基、2,2-ジメチル-1,4-ブチレン基、2,3-ジメチル-1,4-ブチレン基、2,2,3-トリメチル-1,4-ブチレン基、1,5-ペンチレン基、1,6-ヘキサニレン基、1,7-ヘプタニレン基、1,8-オクタニレン基、1,9-ノナニレン基、及び1,10-デカニレン基等のアルキレン基が挙げられる。エーテル結合を含む基としては、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基が挙げられる。好ましくは1,3-プロピレン基である。
【0023】
[シロキサン化合物の製造方法]
以下、前記式(1)で示される化合物の製造方法を説明する。
本発明の製造方法は、下記式(5)で表されるアミノ基を有するシロキサン化合物と
【化7】
(式中、R
5は互いに独立に、上記Rで定義される基、または下記式(6)で表される基であり、R
6は互いに独立に、下記式(6)で表される基であり、R、p、及びqは上記の通りであり、及び、該式(5)は下記式(6)で表される基を1分子中に2個以上有する)
【化8】
(式中、R
4、L
2は上記の通りであり、***で示される部位は前記式(5)中のケイ素原子との結合箇所である)
炭素数2~6のラクトン化合物とを反応させて、下記式(4)で表される化合物を得るアミド化工程と、
【化9】
(式中、R、p、qは上記の通りであり、R
1’は互いに独立に、上記Rで定義される基、または下記式(3)で表される基であり、R
2’は互いに独立に、下記式(3)で表される基であり、及び、該式(4)は下記式(3)で表される基を1分子中に2個以上有する)
【化10】
(式(3)中、R
4、L
1、及びL
2は上記の通りであり、**で示される部位は前記式(1)中のケイ素原子との結合箇所である)
および、上記式(4)で表される化合物と、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物とを反応させて上記式(1)で表される化合物を得る(メタ)アクリル化工程とを含むことを特徴とする。
【0024】
前記式(4)及び(5)において、pは0~500の整数である。好ましくは、0~200の整数であり、さらに好ましくは10~100である。また、qは0~50の整数である。好ましくは、0又は1~20の整数であり、さらに好ましくは0又は3~10の整数である。式(5)においてqが0のときR5はいずれも上記式(6)で表される基である。
【0025】
以下、各工程について詳細に説明する。
【0026】
[アミド化工程]
前記アミド化工程は上記式(5)で表されるアミノ基を有するシロキサン化合物とラクトン化合物とを反応させて、上記式(4)で表されるアミド結合及び水酸基を有するシロキサン化合物を製造する工程である。
【0027】
炭素数2~6を有するラクトン化合物は、α-アセトラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。入手の容易性から好ましくは、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトンである。
【0028】
アミド化工程の反応条件は従来公知の方法に従い行えばよい。例えば、式(5)で表されるアミノ基を有するシロキサン化合物1モルに対し、ラクトン化合物1モル以上を添加して反応させればよい。、好ましくは、アミノ基を有するシロキサン化合物1モルに対し、ラクトン化合物1.0~10.0モルであり、更に好ましくは1.1~5.0モルであり、特に好ましくは1.2~3.0モルである。アミノ基を有するシロキサン化合物に対してラクトン化合物を1モル当量以上添加することでアミノ基を有するシロキサン化合物の残存および副反応の抑制ができる。また、上限値は制限されないが、上記範囲とすることが収率や経済性の点から好ましい。
【0029】
アミド化反応は、空気中、不活性ガス雰囲気中いずれでも行うことができるが、アミノ基の酸化を抑制するために不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。反応温度は特に制限されるものでないが、0℃から150℃の温度で行われるのが好ましく、50℃から120℃の範囲で行われるのがより好ましい。該反応は溶媒や触媒や安定剤の存在下で行ってもよく、溶媒を用いる場合は、前記反応温度は使用する溶媒の沸点を超えない程度の温度が好ましい。
【0030】
溶媒は、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル及びポリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸エチル及び安息香酸メチル等のエステル系溶媒;n-ヘキサン、n-ヘプタン及びn-オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン及びエチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;工業用ガソリンなどの石油系溶媒等;メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒;及び、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びポリエチレングリコールなどのグリコール系溶媒が挙げられる。前記溶媒は1種を単独で使用しても、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0031】
触媒は、例えば、塩基性化合物、有機リン系化合物、第3級アミン、及びルイス酸等が挙げられる。塩基性化合物としては例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物が挙げられる。有機リン系化合物としては例えば、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、オクチルジフェニルホスフィン、ジオクチルフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。第3級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、1-メチルイミダゾール等が挙げられる。ルイス酸としては例えば、三弗化ホウ素、塩化アルミニウム、メチルジクロロアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリメチルアルミニウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、四塩化チタン、ジクロロチタンビストリフレート、ビスシクロペンタジエニルチタニウムビストリフレート、ジクロロチタニウムビスフルオロスルホネート、四塩化スズ、スズ(II)ビストリフレート等が挙げられる。前記触媒は1種を単独で使用しても、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0032】
安定剤は、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、及びイオウ系酸化防止剤等が挙げられる。フェノール系酸化防止剤としては、特に限定するものではないが、例えば、p-メトキシフェノール、ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、4,4-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2′-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、フェノール樹脂類、及びクレゾール樹脂類からなる群より選択される化合物等が挙げられる。リン系酸化防止剤としては、特に限定するものではないが、例えば、トリス[2-[[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、トリス[2-[(4,6,9,11-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-2-イル)オキシ]エチル]アミン、および亜リン酸エチルビス(2,4-ジtert-ブチル-6-メチルフェニル)等が挙げられる。アミン系酸化防止剤としては、特に限定するものではないが、例えば、トリ又はテトラC1-3アルキルピペリジン又はその誘導体、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)オギサレート、1,2-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシ)エタン、フェニルナフチルアミン、N,N′-ジフェニル-1,4-フェニレンジアミン、N-フェニル-N′-シクロヘキシル-1,4-フェニレンジアミン等が挙げられる。イオウ系酸化防止剤としては、特に限定するものではないが、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等が挙げられる。前記安定剤は1種を単独で使用しても、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0033】
上記の反応において、反応終点は、従来公知の方法に従い、例えば、薄層クロマトグラフィー(TCL)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)又はガスクロマトグラフィー(GC)等によって原料化合物のピークが消失したことで確認できる。反応終了後は、従来公知の方法に従い精製すればよい。例えば、有機層を水で洗浄した後、溶媒や原料を除去することにより生成物を単離することができる。また減圧蒸留や活性炭処理などを使用してもよい。
【0034】
[(メタ)アクリル化工程]
前記(メタ)アクリル化工程は、上記式(4)で表されるアミド結合及び水酸基を有するシロキサン化合物と(メタ)アクリル酸ハロゲン化物とを反応させて、上記式(1)で表されるシロキサン化合物を製造する工程である。
【0035】
(メタ)アクリル化工程の反応条件は従来公知の方法に従い行えばよい。例えば、式(4)で表されるシロキサン化合物1モルに対し(メタ)アクリル酸ハロゲン化物2モル以上を添加して反応させればよく、好ましくは2.0~4.0モルであり、更に好ましくは2.1~3.0モルであり、特に好ましくは2.2~2.6モルである。シロキサン化合物に対して(メタ)アクリル酸ハロゲン化物を1モル当量以上添加することでシロキサン化合物の残存の抑制ができる。また、上限値は制限されないが、上記範囲内とすることが収率や経済性の点から好ましい。
【0036】
反応温度は特に制限されるものでないが、例えば、0℃から80℃の温度で行われるのがよく、0℃から40℃の範囲で行われるのがより好ましい。該反応は溶媒や触媒や安定剤の存在下で行ってもよく、溶媒を用いる場合は、前記反応温度は、使用する溶媒の沸点を超えない程度の温度が好ましい。溶媒や触媒や安定剤は従来公知のものであればよく、前記アミド化工程で例示したものが使用できる。
【0037】
該反応は、空気中、不活性ガス雰囲気中いずれでも行うことができるが、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物の失活を抑制するために不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0038】
(メタ)アクリル酸ハロゲン化物は、メタクリル酸クロライド、アクリル酸クロライド、メタクリル酸ブロミド、アクリル酸ブロミド等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0039】
前記(メタ)アクリル化反応は、塩基性化合物、または第3級アミンを触媒として行われることが好ましい。塩基性化合物、第3級アミンは前述のアミド化工程の触媒として挙げたものが使用でき、1種を単独で使用しても、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0040】
該反応において溶媒は、上記アミド化工程で記載した溶媒が使用できるが、アルコール系溶媒、グリコール系溶媒、及びグリコールエーテル系溶媒のうち水酸基を有するものは好ましくない。水酸基を有する溶媒は、水酸基が(メタ)アクリル酸ハロゲン化物と反応する恐れがあり、反応の不良や純度の低下を招く恐れがある。
【0041】
本発明の製造方法の一例を以下に示す。
先ず、上記式(5)で表されるシロキサン化合物1モル当量とラクトン化合物2.0モル当量を窒素雰囲気下100℃で加熱撹拌を行う。6時間程度反応させることにより反応は完結する。続いて未反応の原料を減圧留去することにより、上記式(4)で表されるシロキサン化合物を得ることができる。
【0042】
次いで、上記式(4)で表されるアミド結合と水酸基を有するシロキサン化合物1モル当量、トリエチルアミン2.2モル当量、及びトルエン2質量当量を添加し、(メタ)アクリル酸クロライド2.2モル当量を添加する。添加後、室温で撹拌を行う。10時間程度反応させることにより反応は完結する。また、その際にシロキサン化合物またはメタクリル酸クロライドをGC測定等でモニタリングすることで反応の進行を確認できる。反応の完結後、有機層を水で洗浄し、有機層に存在する溶媒、未反応の原料を減圧留去することで、上記式(1)で表されるシロキサン化合物を得ることができる。
【0043】
上記本発明の製造方法に従えば、上記式(1)で示され、不純物や副生成物の少ない高純度シロキサン化合物を得ることができる。すなわち、前記式(1)で表される構造のうち、特定の一の構造を有するシロキサン化合物の割合が95質量%以上である高純度シロキサン化合物を得ることができる。
【0044】
[重合体への応用]
本発明のシロキサン化合物は(メタ)アクリル基の付加重合から導かれる繰り返し単位を有する重合体を与えることができる。本発明のシロキサン化合物は、(メタ)アクリル基などの重合性基を有する他の化合物(以下、重合性モノマーという)との相溶性が良好であるため、重合性モノマーと共重合することにより、無色透明の共重合体を与えることができる。また、単独で重合することも可能である。
【0045】
前記シロキサン化合物由来の繰り返し単位と他の重合性モノマーとの重合から導かれる繰返し単位を含む共重合体の製造において、前記シロキサン化合物から導かれる繰り返し単位の質量割合は、ポリマー全体の質量に対して10質量%以上であればよい。より詳細には、本発明の化合物と他の重合性モノマーとの合計100質量部に対して、本発明の化合物を好ましくは10~80質量部、より好ましくは10~60質量部となる量で共重合させるのがよい。
【0046】
重合性モノマーとしては、シロキサン化合物以外の(メタ)アクリルモノマー、アクリル酸誘導体、N-ビニルピロリドン、その他の不飽和脂肪族もしくは芳香族化合物、及び(メタ)アクリル基などの重合性基を有するシロキサンモノマーが挙げられる。より詳細には、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジメタクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2,3―ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリルモノマー;N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-アクリロイルモルホリン、N-メチル(メタ)アクリルアミド等のアクリル酸誘導体;N-ビニルピロリドン等、その他の不飽和脂肪族もしくは芳香族化合物、例えばクロトン酸、桂皮酸、ビニル安息香酸;及び(メタ)アクリル基などの重合性基を有する上記式(1)以外のシロキサンモノマーが挙げられる。これらは1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0047】
本発明のシロキサン化合物との反応性の観点から、好ましくは、他の重合性モノマーの少なくとも1がシロキサン化合物以外の(メタ)アクリルモノマーであるのが好ましい。本発明のシロキサン化合物と上記他の重合性モノマーとの合計100質量部に対して、本発明のシロキサン化合物とシロキサン化合物以外の(メタ)アクリルモノマーを、50質量部以上、好ましくは50~100質量部、より好ましくは70~100質量部となる量で重合させるのがよい。すなわち、得られる共重合体において、本発明のシロキサン化合物から導かれる繰り返し単位および前記(メタ)アクリルモノマーから導かれる繰り返し単位の質量割合が、共重合体の全質量に対し50質量%以上、好ましくは70質量%以上であるのがよい。上限は特に制限されないが、好ましくは100質量%が、本発明のシロキサン化合物から導かれる繰り返し単位および前記(メタ)アクリルモノマーから導かれる繰り返し単位であるのがよい。
【0048】
前記シロキサン化合物と上記他の重合性モノマーとの共重合は従来公知の方法により行えばよい。例えば、熱重合開始剤や光重合開始剤など既知の重合開始剤を使用して行うことができる。該重合開始剤としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩などがあげられる。これら重合開始剤は単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。重合開始剤の配合量は、重合成分の合計100質量部に対して0.001~2質量部、好ましくは0.01~1質量部であるのがよい。
【0049】
前記シロキサン化合物から導かれる繰返し単位を含む重合体は、親水性に優れる。また、該重合体から得られるハイドロゲルは透明性および強度に優れる。従って、本発明の化合物は、医療用材料、例えば、眼科デバイス、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜を製造するのに好適である。該重合体を用いた医療用材料の製造方法は特に制限されるものでなく、従来公知の医療用材料の製造方法に従えばよい。例えば、コンタクトレンズ、眼内レンズなどレンズの形状に成形する際には、切削加工法や鋳型(モールド)法などを使用できる。
【実施例0050】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。下記実施例において、1H-NMR分析はJEOL製のECS400を用い、測定溶媒として重クロロホルムを使用して実施した。
【0051】
またレオメーター測定は、すべて下記の条件で行われた。
TAインスツルメント社DISCOVERY HR-2にエクセリタス社製 OMNICURE series 2000を接続したものを使用した。
UV照射強度:45mW/cm2
ジオメトリ:20mm石英プレート
温度:25℃
環境:N2雰囲気下
時間:10分間
ギャップ:200μm
サンプリング:Oscillation-Fast Sampling
サンプル量:100μL
【0052】
合成例1
ジムロート、温度計を付けた300mLの三口ナスフラスコに、窒素雰囲気下で下記式(9A)で表されるシロキサン化合物120.0g、γ-ブチロラクトン28.0gを添加し、100℃まで加熱し、6時間熟成した。反応後に内温120℃で未反応の原料などを減圧留去することにより下記式(9B)で表される無色透明液体を得た。収量131.4g。
【化11】
【0053】
合成例2
合成例1において前記式(9A)で表されるシロキサン化合物を下記式(10A)で表されるシロキサン化合物に替えた他は合成例1と同様の方法で、下記式(10B)で表される無色透明液体を得た。収量140.3g。尚、シロキサン単位の結合順は下記に制限されない。
【化12】
【0054】
合成例3
合成例1において前記式(9A)で表されるシロキサン化合物を下記式(11A)で表されるシロキサン化合物に替えた他は合成例1と同様の方法で、下記式(11B)で表される無色透明液体を得た。収量145.5g。尚、シロキサン単位の結合順は下記に制限されない。
【化13】
【化14】
【0055】
実施例1
ジムロート、温度計を付けた500mLの三口ナスフラスコに、窒素雰囲気下で合成例1において得られた(9B)100.0g、トリエチルアミン15.2g、トルエン300.0gを添加し、10℃まで冷却した。次いで、メタクリル酸クロライド15.8gを滴下し、20℃で10時間熟成した。反応後に脱イオン水を用いて3回水洗を行い、内温80℃で溶媒および未反応の原料などを減圧留去することにより下記式(9C)で表される無色透明液体を得た。収量90.3g。NMR純度は98.1%であった。以下に
1H-NMRデータを示す。
0.0ppm(134H)、0.5ppm(4H)、1.6ppm(4H)、1.9ppm(6H)、2.0ppm(4H)、2.3ppm(4H)、3.2ppm(4H)、4.2ppm(4H)、5.6ppm(2H)、6.1ppm(2H)。
【化15】
【0056】
実施例2
実施例1において前記シロキサン化合物(9B)を合成例2で得られたシロキサン化合物(10B)に替えた他は実施例1を繰り返して下記式(10C)で表される無色透明液体を得た。収量91.6g。NMR純度は98.2%であった。以下に
1H-NMRデータを示す。尚、シロキサン単位の結合順は下記に制限されない。
0.0ppm(150H)、0.5ppm(8H)、1.6ppm(8H)、1.9ppm(12H)、2.0ppm(8H)、2.3ppm(8H)、3.2ppm(8H)、4.2ppm(8H)、5.6ppm(4H)、6.1ppm(4H)。
【化16】
(10C)
【0057】
実施例3
実施例1において前記シロキサン化合物(9B)を合成例3で得られたシロキサン化合物(11B)に替えた他は実施例1を繰り返して下記式(11C)で表される無色透明液体を得た。収量100.2g。NMR純度は98.2%であった。以下に
1H-NMRデータを示す。尚、シロキサン単位の結合順は下記に制限されない。
0.0ppm(650H)、0.5ppm(20H)、1.6ppm(20H)、1.9ppm(30H)、2.0ppm(20H)、2.3ppm(20H)、3.2ppm(20H)、4.2ppm(20H)、5.6ppm(10H)、6.1ppm(10H)。
【化17】
(11C)
【0058】
実施例4
実施例3において、トリエチルアミンおよびメタクリル酸クロライドの量を、水酸基に対して0.6当量に変えた他は実施例1を繰り返して下記式(12C)で表される無色透明液体を得た。収量97.0g。以下に
1H-NMRデータを示す。尚、シロキサン単位の結合順は下記に制限されない。
0.0ppm(648H)、0.5ppm(20H)、1.6ppm(20H)、1.9ppm(18H)、2.0ppm(20H)、2.3ppm(20H)、3.2ppm(20H)、4.2ppm(20H)、5.6ppm(6H)、6.1ppm(6H)。
【化18】
【0059】
実施例および比較例に使用した、他の重合性モノマー化合物は、以下の通りである。
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
【0060】
また、比較例1及び2では、本発明のシロキサン化合物に替えて下記シロキサン化合物を用いた。
DMA-PDMS:ジメタクリレートポリジメチルシロキサン(数平均分子量2,000)
【化19】
DAM-PDMS:ジアクリルアミドポリジメチルシロキサン(数平均分子量2,000)
【化20】
【0061】
上記実施例で得た各シロキサン化合物、DMA-PDMS、またはDAM-PDMSと、他の重合性モノマーであるHEMA及びMMAと、重合開始剤であるイルガキュア1173(Irg1173)とを、下記表1に示す配合比で混合し、10分間撹拌した。攪拌後、10分間静置させ、目視にて溶液の状態を観察した。下記指標に従い評価した結果を表1に示す。
[相溶性]
A:均一かつ透明であった
B:不均一あるいは白濁していた
[粘弾性変化]
上記相溶性の評価後、窒素ガスによるバブリングを5分間行い、十分に脱気を行った後、得られた溶液の粘弾性の変化をレオメーターで測定した。レオメーターの測定条件は上述の通りである。実施例2のシロキサン化合物を用いた重合反応と、比較例2のシロキサン化合物を用いた重合反応について、レオメーター測定結果を
図1に示す。
【0062】
【0063】
表1に示す通り、本発明の化合物はアミド結合および(メタ)アクリレートを有するために従来のシロキサンモノマーに比べ親水性モノマーを含む他の重合性モノマーとの相溶性に優れる。
【0064】
さらに、本発明のシロキサン化合物は、
図1に示す通り、1段階の重合挙動を示しており、他の(メタ)アクリルモノマーと均一に重合していると言える。これに対し、アクリルアミドを有するDAM-PDMSは、他の重合性モノマーとの相溶性には優れるが、
図1に示す通り、弾性率のグラフにおいて傾きが変化する2段階の重合挙動を示しており、他の(メタ)アクリルモノマーと均一に重合していないことがわかる。
以上の通り、本発明のシロキサン化合物は他の重合性モノマーとの相溶性及び反応性に優れ、且つ高純度を有するため、有益な透明性や強度を有する(メタ)アクリル樹脂を提供する。
本発明の化合物は(メタ)アクリルモノマーとの相溶性および反応性に優れる。本発明の化合物は、医療用材料、例えば、眼科用デバイス、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜、及び眼鏡レンズ製造用モノマーとして有用である。