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特開2022-143251炉内反応の計算装置及び炉内反応の計算方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143251
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】炉内反応の計算装置及び炉内反応の計算方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 5/12 20060101AFI20220926BHJP
   C22B 1/02 20060101ALI20220926BHJP
   C22B 23/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C22B5/12
C22B1/02
C22B23/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043674
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 優子
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA19
4K001BA02
4K001CA16
4K001DA05
4K001GA07
4K001HA01
4K001HA09
4K001HA11
(57)【要約】
【課題】反応炉内のベッド層から発生するダストのガス領域での反応を考慮して、反応炉内の反応を高精度に計算できる炉内反応の計算装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る炉内反応の計算装置は、原料鉱石を燃焼ガスと接触させて、乾燥させると共に還元を行う炉内反応の計算装置であって、反応炉内のガス領域を流れる燃焼ガスを含む第1気相のうち、反応炉内の燃焼ガスを含むガス領域からベッド層へ移動する流入ガスの流量を計算するガス混合量計算部と、ガス領域を流れる気相と、ガス領域に存在する固体物質又は液体物質を少なくとも含む第1物質との平衡反応を計算するガス領域平衡反応計算部と、第1ベッド層に含まれる、固体物質又は液体物質を少なくとも含む第2物質のガス領域への移動量を除して修正第1ベッド層を算出するベッド層物量修正部と、修正第1ベッド層と流入ガスとの平衡反応を計算するベッド層平衡反応計算部とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応炉の一端側から供給した原料鉱石を他端側に向かって移動させながら、前記原料鉱石を前記他端側から供給された燃焼ガスと接触させて、乾燥させると共に還元を行う炉内反応の計算装置であって、
前記反応炉内のガス領域を流れる前記燃焼ガスを含む気相のうち、前記反応炉内の前記燃焼ガスを含むガス領域から前記原料鉱石を含むベッド層へ移動する流入ガスの流量を計算するガス混合量計算部と、
前記ベッド層を移動する前記原料鉱石を含む第1ベッド層に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む第2物質の前記ガス領域への移動量を除して前記第1ベッド層の物量を修正し、修正第1ベッド層を算出するベッド層物量修正部と、
前記流入ガスが除去された気相と、前記ガス領域に存在する固体物質及び液体物質の少なくとも一方を含む第1物質との平衡反応を計算するガス領域平衡反応計算部と、
前記修正第1ベッド層と、前記流入ガスとの平衡反応を計算するベッド層平衡反応計算部と、
を備える炉内反応の計算装置。
【請求項2】
前記気相の前記第1物質との平衡状態に寄与するガス反応量を計算して、前記気相の平衡反応に寄与するガス反応分を求めるガス反応量計算部と、
前記第1物質の、前記気相との平衡状態に寄与する第1物質反応量を計算して、前記第1物質の平衡反応に寄与する第1物質反応分を求める第1物質反応量計算部と、
を備える請求項1に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項3】
前記ガス反応量計算部で生じる前記ガス反応分以外のガス未反応分と、前記ガス領域平衡反応計算部で前記ガス反応分と前記第1物質反応分とが反応することで生じるガス生成分とを混合した混合気相の流量を少なくとも計算する混合気相計算部と、
前記第1物質反応量計算部で生じる前記第1物質反応分以外の第1物質未反応分と、前記ガス領域平衡反応計算部で前記ガス反応分と前記第1物質反応分が反応することで生じる第1物質生成分とを混合した第1混合物質の流量を少なくとも計算する第1混合物質計算部と、
を備える請求項2に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項4】
前記第1混合物質計算部で生じた前記第1混合物質に、前記ベッド層物量修正部で生じた前記第2物質の移動量を加えて、前記第1混合物質の物量を修正し、第1修正混合物質を算出する第1混合物質物量修正部を備える請求項3に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項5】
前記修正第1ベッド層の前記流入ガスとの平衡状態に寄与するベッド層反応量を計算して、前記修正第1ベッド層の平衡反応に寄与するベッド層反応分を求めるベッド層反応量計算部と、
前記流入ガスの、前記修正第1ベッド層との平衡状態に寄与する流入ガス反応量を計算して、前記流入ガスの平衡反応に寄与する流入ガス反応分を求める流入ガス反応量計算部と、
を備える請求項1~4の何れか一項に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項6】
前記ベッド層反応量計算部で生じる前記ベッド層反応分以外のベッド層未反応分と、前記ベッド層平衡反応計算部で前記ベッド層反応分と前記流入ガス反応分とが反応することで生じるベッド層生成分とを混合した混合ベッド層の流量を少なくとも計算する混合ベッド層計算部と、
前記流入ガス反応量計算部で生じる前記流入ガス反応分以外の流入ガス未反応分と、前記ベッド層平衡反応計算部で前記ベッド層反応分と前記流入ガス反応分が反応することで生じる流入ガス生成分とを混合した混合流入ガスの流量を少なくとも計算する混合流入ガス計算部と、
を備える請求項5に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項7】
前記ガス領域平衡反応計算部で生じるガス生成分に、前記混合流入ガス計算部で生じた前記混合流入ガスを混合するガス合算部を備える請求項6に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項8】
前記原料鉱石の移動の途中に投入された、添加気相及び添加ベッド層の少なくとも一方を含む燃焼用材料を前記添加気相と前記添加ベッド層とに質量流量で分配する分配部を備え、
前記ガス混合量計算部は、前記気相と前記添加気相を含む第2気相を用いて前記流入ガスの流量を計算し、
前記ベッド層物量修正部は、前記第1ベッド層と前記添加ベッド層とを含む第2ベッド層の物量を修正する請求項1~7の何れか一項に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項9】
前記反応炉内をその長軸方向に沿って複数の領域に分割すると仮定した時、
前記複数の領域に、前記原料鉱石の流れ又は前記燃焼ガスの流れに沿って繰り返し行い、所定の領域における計算値とその領域における前回の計算値との差が所定の範囲内に収まるまで繰り返し行う請求項1~8の何れか一項に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項10】
反応炉の一端側から供給した原料鉱石を他端側に向かって移動させながら、前記原料鉱石を前記他端側から供給された燃焼ガスと接触させて、乾燥させると共に還元を行う炉内反応の計算方法であって、
前記反応炉内のガス領域を流れる前記燃焼ガスを含む気相のうち、前記反応炉内の前記燃焼ガスを含むガス領域から前記原料鉱石を含むベッド層へ移動する流入ガスの流量を計算するガス混合量計算工程と、
前記ベッド層を移動する前記原料鉱石を含む第1ベッド層に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む第2物質の前記ガス領域への移動量を除して前記第1ベッド層の物量を修正し、修正第1ベッド層を算出するベッド層物量修正工程と、
前記流入ガスが除去された気相と、前記ガス領域に存在する固体物質及び液体物質の少なくとも一方を含む第1物質との平衡反応を計算するガス領域平衡反応計算工程と、
前記修正第1ベッド層と、前記流入ガスとの平衡反応を計算するベッド層平衡反応計算工程と、
を含む炉内反応の計算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉内反応の計算装置及び炉内反応の計算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化鉱石の一種であるリモナイト鉱石やサプロライト鉱石等のラテライト鉱石(ニッケル酸化鉱石)の製錬方法として、ロータリーキルンや移動炉床炉等を使用して、鉄とニッケルを主成分とする合金であるフェロニッケルを製造する乾式製錬方法が知られている。
【0003】
ロータリーキルンによる乾式製錬方法では、原料鉱石をロータリードライヤーにて乾燥させ、付着水分を例えば15%~25%とした後、付着水が低減された乾燥鉱石をロータリーキルンの装入端から投入する。その後、ロータリーキルンの装入端から供給する石炭の燃焼熱や、ロータリーキルンの排出端に設けられた微粉炭専焼バーナー又は微粉炭と重油の混焼バーナーにより、乾燥鉱石を加熱して、乾燥鉱石を乾燥させると共に焼成を行う。
【0004】
このようなロータリーキルンによる乾式製錬方法として、例えば、装入端より供給する石炭の燃焼熱やバーナーで微粉炭や重油等が燃焼して生じる燃焼熱の他に、ロータリーキルンの途中から投入した石炭の燃焼によって生じる燃焼熱を乾燥鉱石の乾燥及び部分還元に必要な熱を与える方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1には、ロータリーキルンの途中に設けたスクープフィーダから石炭をロータリーキルン内に投入して、ロータリーキルンの装入端から装入したニッケル酸化鉱の乾燥鉱石を、バーナーで化石燃料の燃焼により生じる燃焼熱で焼成すると共に部分的な還元処理を施すロータリーキルンの操業方法が開示されている。このロータリーキルンの操業方法では、スクープフィーダから投入された石炭は熱分解することで揮発分と固定炭素になり、揮発分は炉内の燃焼ガスと共に装入端より排出され、固定炭素は、乾燥鉱石が乾燥・還元処理されて産出された焼鉱と共に排出端から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5967616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1に記載のロータリーキルンの操業方法のような周知の操業方法では、原料鉱石からダストが発生し、排ガスと共に炉外に排出されることが知られている。原料鉱石から発生するダストが気相(ガス相)に飛散すると、気相の組成や温度が変化し、ベッド層の反応にも影響する。そのため、ロータリーキルン等の反応炉内の乾燥鉱石等の挙動をシミュレーションする際、気相に飛散するダストの反応挙動を考慮しなければ、炉内反応を正確に計算できなかった。
【0008】
本発明の一態様は、反応炉内のベッド層から発生するダストのガス領域での反応を考慮して、反応炉内の反応を高精度に計算できる炉内反応の計算装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る炉内反応の計算装置の一態様は、反応炉の一端側から供給した原料鉱石を他端側に向かって移動させながら、前記原料鉱石を前記他端側から供給された燃焼ガスと接触させて、乾燥させると共に還元を行う炉内反応の計算装置であって、
前記反応炉内のガス領域を流れる前記燃焼ガスを含む気相のうち、前記反応炉内の前記燃焼ガスを含むガス領域から前記原料鉱石を含むベッド層へ移動する流入ガスの流量を計算するガス混合量計算部と、
前記ベッド層を移動する前記原料鉱石を含む第1ベッド層に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む第2物質の前記ガス領域への移動量を除して前記第1ベッド層の物量を修正し、修正第1ベッド層を算出するベッド層物量修正部と、
前記流入ガスが除去された気相と、前記ガス領域に存在する固体物質及び液体物質の少なくとも一方を含む第1物質との平衡反応を計算するガス領域平衡反応計算部と、
前記修正第1ベッド層と、前記流入ガスとの平衡反応を計算するベッド層平衡反応計算部と、
を備える。
【0010】
本発明に係る炉内反応の計算方法の一態様は、反応炉の一端側から供給した原料鉱石を他端側に向かって移動させながら、前記原料鉱石を前記他端側から供給された燃焼ガスと接触させて、乾燥させると共に還元を行う炉内反応の計算方法であって、
前記反応炉内のガス領域を流れる前記燃焼ガスを含む気相のうち、前記反応炉内の前記燃焼ガスを含むガス領域から前記原料鉱石を含むベッド層へ移動する流入ガスの流量を計算するガス混合量計算工程と、
前記ベッド層を移動する前記原料鉱石を含む第1ベッド層に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む第2物質の前記ガス領域への移動量を除して前記第1ベッド層の物量を修正し、修正第1ベッド層を算出するベッド層物量修正工程と、
前記流入ガスが除去された気相と、前記ガス領域に存在する固体物質及び液体物質の少なくとも一方を含む第1物質との平衡反応を計算するガス領域平衡反応計算工程と、
前記修正第1ベッド層と、前記流入ガスとの平衡反応を計算するベッド層平衡反応計算工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る炉内反応の計算装置の一態様は、反応炉内のベッド層から発生するダストのガス領域での反応を考慮して、反応炉内の反応を高精度に計算できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る炉内反応の計算装置が適用されるロータリーキルンの概略構成を示す。
図2】本発明の実施形態に係る炉内反応の計算装置の機能を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る炉内反応の計算方法を説明するフローチャートである。
図4図3のガス領域平衡反応の実施工程(ステップS17)の動作を示すフローチャートである。
図5図3の第2平衡反応の実施工程(ステップS18)の動作を示すフローチャートである。
図6】炉内反応の計算装置のハードウェア構成図である。
図7】ロータリーキルン内の燃焼ガスと原料鉱石との流れを示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る炉内反応の計算方法をロータリーキルンの全体に適用する場合のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する。また、図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。
【0014】
本発明の実施形態に係る炉内反応の計算装置について説明するに当たり、本実施形態に係る炉内反応の計算装置が適用されるロータリーキルンの構成について説明する。
【0015】
<ロータリーキルン>
図1は、本実施形態に係る炉内反応の計算装置が適用されるロータリーキルンの概略構成を示す。図1に示すように、ロータリーキルン1は、回転自在で略円筒形状のキルン本体11と、キルン本体11の途中に設けられる燃焼用材料供給管12とを有する。
【0016】
キルン本体11は、円筒形状の中空構造物からなる窯であり、キルン本体11は、厚さ15~30mmの炭素鋼からなる。キルン本体11は、その内周側の壁面に、耐熱性を高めるための耐火物を備えることが好ましい。
【0017】
キルン本体11の大きさとしては、例えば、内径が4.5m~5.5m、長軸方向の長さ(全長)が100m~110mの大きさのものを用いることが好ましい。
【0018】
キルン本体11は、その一端側(図1中の左側)の開口端部11aが、ロータリーキルン装入端(以下、単に「装入端」ともいう。)14Aに挿入して閉じられると共に、他端側(図1中の右側)の開口端部11bが、ロータリーキルン排出端(以下、「排出端」ともいう。)14Bに挿入して閉じられている。キルン本体11は、装入端14Aから排出端14Bに向かってわずかに傾斜した状態で配設されており、軸回りに回転自在に支持されている。
【0019】
装入端14Aには、原料鉱石をキルン本体11内に導入する原料供給管15が貫設されている。排出端14Bには、開口端部11bを貫通してキルン本体11内に導入されるバーナー16が設けられる。
【0020】
原料鉱石は、ニッケル酸化鉱石(酸化ニッケル鉱石)等を用いることができる。原料鉱石は、例えば、ニッケル酸化鉱石等をドライヤー(ロータリードライヤー)により予備乾燥して、付着水分の一部を除去した乾燥鉱石等を用いることができる。乾燥鉱石中の水分量としては、15質量%~25質量%程度である。
【0021】
原料鉱石であるニッケル酸化鉱石としては、特に限定されないが、鉄とニッケルを主成分とする合金であるフェロニッケルの製錬においては、ガーニエライト鉱等が好ましく用いられる。ガーニエライト鉱の代表的な組成としては、乾燥鉱石での換算で、Ni品位が2.1質量%~2.5質量%、Fe品位が11質量%~23質量%、MgO品位が20質量%~28質量%、SiO2品位が29質量%~39質量%、CaO品位が0.5質量%未満であり、灼熱減量が10質量%~15質量%である。
【0022】
バーナー16は、微粉炭専焼バーナー又は微粉炭と重油の混焼バーナー等を用いることができる。バーナー16は、微粉炭又は微粉炭及び重油等を含む燃料を燃焼して、ロータリーキルン1内に燃焼熱を発生させる。
【0023】
燃焼用材料供給管12は、キルン本体11の外周面の途中に設けられ、キルン本体11内に燃焼用材料を供給できる。燃焼用材料は、揮発分等の主に気相に入る物質及び固定炭素等の主にベッド層に入る固体物質の少なくとも一方を含み、例えば、石炭等の炭材を用いることができる。
【0024】
揮発分は、炭化水素化合物、硫黄及びハロゲン等の揮発物質等である。
【0025】
固定炭素は、石炭から水分・揮発分が抜けた後の、熱分解後残渣であるチャー粒子(主に固定炭素及び灰分)のうち、灰分を除いた主に炭素から構成される燃焼分である。
【0026】
なお、図1では、燃焼用材料供給管12は、キルン本体11の外周面に1つだけ設けられているが、キルン本体11の外周面に、キルン本体11の軸方向又は軸回りに沿って複数設けてもよい。
【0027】
燃焼用材料は、単一品種の炭材ではなく、複数の異なる品種の炭材等を混合して用いることが多く、さらに投入する炭材の粒子径の大きさも分布を持つことが多い。なお、粒子径とは、有効径による体積平均粒径をいい、粒子径は、例えば、レーザ回折・散乱法、動的光散乱法又は分級法等によって測定される。レーザ回折・散乱法を用いる場合、レーザ回折・散乱法により測定した体積基準の粒度分布において小粒径側からの積算粒径分布が50%となる粒子径(D50)を平均粒子径として用いることができる。
【0028】
原料鉱石は、装入端14Aに設けた原料供給管15からキルン本体11内に装入され、燃焼用材料は燃焼用材料供給管12からキルン本体11内に投入される。排出端14B側からは、排出端14Bに設置したバーナー16により微粉炭や重油等を燃焼させることにより発生した高温の燃焼ガスが、排出端14B側から装入端14A側に向けて、即ち原料鉱石の流れと反対の方向に吹き込まれる。
【0029】
キルン本体11内では、原料鉱石は、装入端14Aから装入され、キルン本体11が所定の速度で回転することで、装入端14Aから原料供給管15を通してキルン本体11内に装入された原料鉱石を一端側である開口端部11a側から他端側である排出端14Bに向かって搬送する。このとき、原料鉱石は、キルン本体11内を移動しながら、排出端14Bから装入端14A側に向かって流れる燃焼ガスと向流接触し、バーナー16で微粉炭や重油等の燃料を燃焼させることにより発生させた高温の燃焼ガスの燃焼熱及び火炎によって加熱される。また、燃焼用材料供給管12からキルン本体11内に投入される燃焼用材料が、キルン本体11内の燃焼ガスにより燃焼する。原料鉱石は、燃焼用材料供給管12から投入された燃焼用材料の燃焼により生じさせた燃焼熱によっても加熱される。そのため、原料鉱石は、キルン本体11の回転に連れてキルン本体11の装入端14Aから排出端14Bに向けて移動しながら、バーナー16で燃料が燃焼することで生じた燃焼ガスの燃焼熱及び火炎と、燃焼用材料が燃焼することで生じた燃焼熱とにより加熱され、徐々に温度を上げて行く。
【0030】
キルン本体11内では、原料鉱石と燃焼ガスとの間で、原料鉱石や燃焼用材料に含まれる水分の蒸発、燃焼用材料に含まれる揮発分の揮発、凝集と、バーナー燃料及び燃焼用材料に含まれる灰分の飛散、落下等により、物質の移動が生じる。ロータリーキルン1の途中から供給される燃焼用材料が熱分解することで生じる水分や揮発分は装入端14A側に燃焼ガスと共に移動し、チャー粒子は排出端14Bに原料鉱石と共に移動する。
【0031】
キルン本体11内の原料鉱石が排出端14Bに到達するまでに、原料鉱石は、その原料鉱石中に含まれる水分がほぼ完全に除去されて焼成すると共に部分還元されて、焼鉱となる。焼鉱は、排出端14Bから排出される。
【0032】
焼鉱は、例えば、温度800~900℃、粒子径が10mm~100mm程度の大きさからなる。
【0033】
排出端14Bの排出口には、粒子径10mm~100mm程度の焼鉱と、ロータリーキルン1内に発生した焼結塊(粒子径100mm~500mm程度)とを分離するためのロストル(篩分装置)17が設けられている。ロストル17は、例えば、目開き100mm程度の鉄製の格子で構成されている。排出端14Bから排出された焼鉱は、ロストル17を通過した後、焼鉱排出用シュート18を通って、次工程に搬送される。
【0034】
<炉内反応の計算装置>
次に、本実施形態に係る炉内反応の計算装置について説明する。図2は、本実施形態に係る炉内反応の計算装置の機能を示すブロック図である。なお、図2では、炉内反応の計算装置が、ロータリーキルン1内を複数の領域に分割した時の、燃焼用材料供給管12から燃焼用材料が供給される領域Aにおける単位操作モデルであるとして説明する。また、図2では、領域Aから見て燃焼ガスが吹き込まれる側の隣接領域を領域(A+1)とし、原料鉱石が装入される側の隣接領域を領域(A-1)とする。
【0035】
なお、以下の説明において、ガス領域は、ロータリーキルン1内のガス及びダストを含む気相が流れる領域を意味し、ベッド層は、原料鉱石が移動する領域を意味する。
【0036】
領域A内の気相は、第1気相G1、第2気相G2、第3気相G3又は第3混合気相G3'として記載する。領域A内の各気相は、それぞれ、以下の通り定義する。
「第1気相G1」とは、一方の隣接領域(領域(A+1))から領域Aに流入する燃焼ガスである。燃焼ガスは、揮発分、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素等の平衡反応に寄与するガスを含み、反応に寄与しない不活性な物質(例えば、窒素等)等を含んでもよい。
「第2気相G2」とは、燃焼用材料から分配された添加気相と第1気相とが合算された気相である。
「第3気相G3」とは、後述する混合気相計算部209で生じる気相である。
「第3混合気相G3'」とは、後述するガス合算部213で生じる気相である。
【0037】
領域A内のベッド層は、第1ベッド層S1、第2ベッド層S2又は第3ベッド層S3として記載する。領域A内の各ベッド層は、それぞれ、以下の通り定義する。
「第1ベッド層S1」とは、他方の隣接領域(領域(A-1))から領域Aに流入する原料鉱石である。原料鉱石は、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化マグネシウム等の鉱石中化合物、固定炭素等を含む固体物質と、液体物質を含み、後述するベッド層平衡反応計算部208-2おいて反応に寄与しない不活性な物質等を含んでもよい。
「第2ベッド層S2」とは、燃焼用材料から分配された添加ベッド層と第1ベッド層とが合算されたベッド層である。
「第3ベッド層S3」とは、後述する混合ベッド層計算部211で生じるベッド層である。
【0038】
領域Aに存在する物質は、第1物質M1、第2物質M2、第1混合物質M11又は第1修正混合物質M12として記載する。以下の説明において、領域A内の各物質は、それぞれ、以下の通り定義する。
「第1物質M1」は、ガス領域に存在する、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含むものである。
「第2物質M2」は、ベッド層に存在する、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含むものであり、例えば、ダスト等を含む。
「第1混合物質M11」は、後述する第1混合物質計算部210で生じる第1物質M1の混合物である。
「第1修正混合物質M12」は、後述する第1混合物質物量修正部214で生じる第1物質M1の混合物である。
【0039】
また、領域A内で算出される、反応分、未反応分及び生成分は、ガス反応分GR1、ガス未反応分Gr1、ガス生成分GP1、第1物質反応分MR1、第1物質未反応分Mr1、第1物質生成分MP1、流入ガス反応分GR11、流入ガス未反応分Gr11、流入ガス生成分GP11、ベッド層反応分SR1、ベッド層未反応分Sr1又はベッド層生成分SP1と記載する。これらは、図2に示す炉内反応の計算装置を構成する各部の何れかで算出される。
【0040】
図2に示すように、炉内反応の計算装置20は、燃焼用材料分配部(分配部)201、ガス混合量計算部202、ベッド層物量修正部203、ガス反応量計算部204、第1物質反応量計算部205、ベッド層反応量計算部206、流入ガス反応量計算部207、ガス領域平衡反応計算部208-1、ベッド層平衡反応計算部208-2、混合気相計算部209、第1混合物質計算部210、混合ベッド層計算部211、混合流入ガス計算部212、ガス合算部213及び第1混合物質物量修正部214を備える。
【0041】
炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1内において、ベッド層内を移動する固体物質又は液体物質のうちの一部のガス領域への物質移動と、ガス領域内を流れるガスのうちの一部のベッド層への混入を考慮して、ガス領域内を流れるガスとガス領域内に存在する固体物質又は液体物質の反応を計算するガス領域平衡反応計算と、ベッド層内を移動する固体物質又は液体物質とベッド層に混入したガスの反応を計算するベッド層平衡反応計算を行う。これにより、炉内反応の計算装置20は、炉内反応を高精度に解析し、ロータリーキルン1内の反応の計算精度を高めたものである。よって、炉内反応の計算装置20は、反応炉内のベッド層から発生するダストのガス領域での反応を考慮して、反応炉内の反応を高精度に解析できるので、ロータリーキルン1内の反応を高精度に計算できる。
【0042】
即ち、炉内反応の計算装置20は、ギブズエネルギー最小化法に基づく炉内反応のシミュレーションを行うに当たり、例えば、ダスト等のような、ベッド層内を移動する固体物質及び液体物質の少なくとも一方を含む物質(第2物質M2)の移動量を考慮して、ベッド層とベッド層内に混入したガスの反応と、ガス領域内を流れるガスと、ガス領域内に存在する固体物質又は液体物質との反応を計算する。炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1内で発生するダストを、ガス領域内を移動する固体物質及び液体物質の少なくとも一方を含む物質(第1物質M1)として扱うことで、ロータリーキルン1内で発生するダストのガス領域中での反応を計算できる。これにより、炉内反応の計算装置20は、ガス領域のガス組成、温度等の変化に伴うベッド層での反応への影響を考慮でき、炉内反応の予測精度を向上させることができる。
【0043】
図2に示すように、炉内反応の計算装置20は、領域Aのベッド層に流入する第1ベッド層S1と、ガス領域に流入する第1気相G1との物量、温度、圧力等を入力する。炉内反応の計算装置20は、これらの入力値を用いて、分割した各領域A内での物質移動及び反応計算を実施する。
【0044】
炉内反応の計算装置20は、領域A内での物質移動及び反応計算を行うに当たり、ガス領域内を流れる第1気相G1のうち、ベッド層へ混入するガス(流入ガスG11)の量を定義する。このガス混入量の定義方法としては、例えば、ガス総量のうちベッド層に混入する量の割合を、固定値で与える方法等がある。
【0045】
また、炉内反応の計算装置20は、ベッド層内を移動する固体物質又は液体物質の、飛散又は揮発に伴うガス領域への物質移動量を定義する。また、ガス領域内を移動する固体物質又は液体物質の、落下(沈降)又は凝集に伴うベッド層への物質移動量を含めて定義してもよい。この物質移動量の定義方法としては、例えば、固体物質又は液体物質の、比重、粒径等から算出される、飛散速度、沈降速度等を基に、計算物質毎に定義する方法等がある。
【0046】
図2に示すように、分配部201は、燃焼用材料の種類や成分等を予め設置しておくことにより、燃焼用材料を、燃焼用材料に含まれる気相とベッド層とに質量流量で分配する機能を有する。
【0047】
分配された気相及びベッド層は、添加気相AG11及び添加ベッド層AS11として領域A内に供給される。
【0048】
ガス混合量計算部202は、一方の隣接領域(領域(A+1))から炉内の領域Aのガス領域に流入する燃焼ガスである第1気相G1と、分配部201で分配された燃焼用材料の添加気相AG11とを含む第2気相G2のうち、ガス領域からベッド層へ移動する流入ガスG11の質量流量を計算する。
【0049】
ベッド層物量修正部203は、第2ベッド層S2に含まれる固体物質及び液体物質の少なくとも一方を含む第2物質M2のガス領域への移動量を除して第2ベッド層S2の物量を修正し、修正第2ベッド層S2Aを算出する。
【0050】
本実施形態では、ベッド層物量修正部203は、第2物質M2のガス領域への移動量の他に、ガス領域から第2ベッド層S2への第2物質M2の移動量も考慮して、第2物質M2のガス領域への移動量を算出し、第2ベッド層S2の物量を修正してもよい。
【0051】
ガス反応量計算部204は、第2気相G2の第1物質M1との平衡状態に寄与するガス反応量を計算する。即ち、ガス反応量計算部204は、領域Aにおける、ガス領域に存在する第2気相G2の滞留時間において、第2気相G2が第1物質反応分MR1と平衡反応すると見込まれるガス反応量を計算する。領域Aにおける第2気相G2の滞留時間での反応量は、個々の物質毎に設定した反応速度パラメータと、領域A内の滞留時間を用いて計算する。ガス反応量は、領域A内の滞留時間にて反応する量を、反応速度式を用いて算出できる。そして、ガス反応量計算部204は、ガス反応量から、第2気相G2のうちの、第1物質反応分MR1との平衡状態に寄与するガス反応分GR1を求める。
【0052】
なお、本明細書において、反応分とは、領域A内の第2気相G2、又はガス領域中に存在する第1物質M1が通過する滞留時間において、第2気相G2、又は第1物質M1との接触により、反応に寄与する流量をいう。
【0053】
即ち、ガス反応分GR1は、第2気相G2のうちのガス領域に存在する第1物質M1との平衡反応に寄与する反応分である。第1物質反応分MR1は、一方の隣接領域(領域(A+1))から流入するガス領域中に存在する第1物質M1のうちの第2気相G2との平衡状態に寄与する反応分である。
【0054】
ガス反応量計算部204は、第2気相G2と、第1物質M1中に存在する固体物質又は液体物質との平衡状態に達する量を、例えば、アレニウス型の反応速度式に従う反応速度と、領域A内の第2気相G2の滞留時間から算出できるモデル等を採用して求めることができる。そして、ガス反応量計算部204は、ガス反応量に相当するガス反応分GR1と、残りの未反応の質量流量に相当するガス未反応分Gr1とに分割する。
【0055】
ロータリーキルン1では、第2気相G2と、ガス領域中に存在する第1物質M1の流れが並流となっている。第2気相G2の流速は、ガス領域中に存在する第1物質M1の流れよりも大きく、第2気相G2とガス領域中に存在する第1物質M1とは平衡状態に達していない。本実施形態では、ガス反応量計算部204は、ロータリーキルン1内のある領域(領域A)の第2気相G2の一部のみがガス領域中に存在する第1物質M1と平衡状態に達するとみなして、それに対応するガス反応量に応じて、第2気相G2を、ガス反応分GR1と、それ以外のガス未反応分Gr1とに分割する。
【0056】
第1物質反応量計算部205は、第1物質M1の、第2気相G2との平衡状態に寄与する第1物質反応量を計算する。即ち、第1物質反応量計算部205は、領域Aにおける、ガス領域に存在する第1物質M1の滞留時間において、第1物質M1が第2気相G2と平衡反応すると見込まれる第1物質反応量を計算する。第1物質反応量は、反応速度式から算出できる。そして、第1物質反応量計算部205は、第1物質反応量から、第1物質M1のうちの、第2気相G2との平衡状態に寄与する第1物質反応分MR1を求める。
【0057】
第1物質反応量計算部205は、ガス反応量計算部204と同様、第2気相G2と、ガス領域中に存在する第1物質M1との平衡状態に達する量を、例えば、アレニウス型の反応速度式に従う反応速度と、領域A内の第1物質M1の滞留時間から算出できるモデルを採用して求めることができる。そして、第1物質反応量計算部205は、第1物質反応量に相当する第1物質反応分MR1と、残りの未反応の質量流量に相当する第1物質未反応分Mr1とに分割する。
【0058】
ロータリーキルン1では、上述の通り、第2気相G2と第1物質M1の流れが並流となっており、第2気相G2の流速は第1物質M1の流れよりも大きく、第2気相G2と第1物質M1とは平衡状態に達していない。本実施形態では、第1物質反応量計算部205は、ロータリーキルン1内のある領域(領域A)の第2気相G2の一部のみが第1物質M1と平衡状態に達するとみなして、それに対応する第1物質反応量に応じて、第1物質M1を、第1物質反応分MR1と、それ以外の第1物質未反応分Mr1とに分割する。
【0059】
ベッド層反応量計算部206は、修正第2ベッド層S2Aの流入ガスG11との平衡状態に寄与するベッド層反応量を計算する。即ち、ベッド層反応量計算部206は、領域Aにおける修正第2ベッド層S2Aの移動時間において、修正第2ベッド層S2Aが流入ガスと平衡反応すると見込まれるベッド層反応量を計算する。領域Aにおける修正第2ベッド層S2Aの移動時間での反応量は、修正第2ベッド層S2Aに含まれる、個々の物質毎に設定した反応速度パラメータと、領域A内の滞留時間を用いて計算する。ベッド層反応量は、領域A内の移動時間にて反応する量を、反応速度式を用いて算出できる。そして、ベッド層反応量計算部206は、ベッド層反応量から、修正第2ベッド層S2Aのうちの、流入ガスG11との平衡状態に寄与するベッド層反応分SR1を算出する。
【0060】
ベッド層反応量計算部206は、ガス反応量計算部204と同様、修正第2ベッド層S2Aと、ガス領域中に存在する流入ガスG11との平衡状態に達する量を、例えば、アレニウス型の反応速度式に従う反応速度と、領域A内の修正第2ベッド層S2Aの滞留時間から算出できるモデル等を採用して求めることができる。ベッド層反応量計算部206は、アレニウス型の反応速度式で修正第2ベッド層S2Aの滞留時間により修正第2ベッド層S2Aと流入ガスとが平衡状態に達していると見積もった分量だけについて、流入ガスG11との反応に寄与する修正第2ベッド層S2Aのベッド層反応量を計算する。そして、ベッド層反応量計算部206は、修正第2ベッド層S2Aを、ベッド層反応量に相当するベッド層反応分SR1と、残りの未反応の質量流量に相当するベッド層未反応分Sr1とに分割する。
【0061】
即ち、ベッド層反応分SR1は、修正第2ベッド層S2Aのうちの流入ガスG11との平衡反応に寄与する反応分である。
【0062】
ロータリーキルン1では、修正第2ベッド層S2Aと流入ガスG11の流れが向流となっている。流入ガスG11の流速は修正第2ベッド層S2ACの移動よりも速く、修正第2ベッド層S2Aと流入ガスG11とは平衡状態に達していない。本実施形態では、ベッド層反応量計算部206は、ロータリーキルン1内のある領域(領域A)の修正第2ベッド層S2Aの一部のみが流入ガスG11と平衡状態に達するとみなして、それに対応するベッド層反応量に応じて、修正第2ベッド層S2Aを、ベッド層反応分SR1と、それ以外のベッド層未反応分Sr1とに分割する。
【0063】
流入ガス反応量計算部207は、ベッド層に存在する流入ガスG11の、修正第2ベッド層S2Aとの平衡状態に寄与する流入ガス反応量を計算する。即ち、流入ガス反応量計算部207は、領域Aにおける、ベッド層に存在する流入ガスの滞留時間において、流入ガスG11が修正第2ベッド層S2Aと平衡反応すると見込まれる流入ガス反応量を計算する。領域Aにおける流入ガスG11の滞留時間での反応量は、個々の物質毎に設定した反応速度パラメータと、領域A内の滞留時間を用いて計算する。流入ガス反応量は、反応速度式から算出できる。そして、流入ガス反応量計算部207は、流入ガスG11の平衡反応に寄与する流入ガス反応分GR11を算出する。
【0064】
即ち、流入ガス反応分GR11は、流入ガスG11のうちの第2修正ベッド層S2Aの平衡状態に寄与する流入ガスG11の反応分である。
【0065】
流入ガス反応量計算部207は、第1流入ガスG111と修正第2ベッド層S2Aとの平衡状態に達する量を、例えば、アレニウス型の反応速度式に従う反応速度と、領域A内の流入ガスG11の滞留時間から算出できるモデルを採用して求めることがする。そして、流入ガス反応量計算部207は、流入ガス反応量に相当する流入ガス反応分GR11と、残りの流入ガス反応分GR11以外の未反応の質量流量に相当する流入ガス未反応分Gr11とに分割する。
【0066】
ロータリーキルン1では、上述の通り、流入ガスG11と修正第2ベッド層S2Aとの流れが向流となっており、流入ガスG11の流速は、修正第2ベッド層S2Aの流れよりも大きく、流入ガスG11と修正第2ベッド層S2Aとは平衡状態に達していない。本実施形態では、流入ガス反応量計算部207は、ロータリーキルン1内のある領域(領域A)の流入ガスG11の一部のみが修正第2ベッド層S2Aと平衡状態に達するとみなして、それに対応するガス反応量に応じて、流入ガスG11を、流入ガス反応分GR11と、それ以外の流入ガス未反応分Gr11とに分割する。
【0067】
ガス領域平衡反応計算部208-1は、領域A内のガス領域を流れる第2気相G2と、ガス領域に存在する第1物質M1との平衡反応を計算する。即ち、ガス領域平衡反応計算部208-1は、第2気相G2のうちのガス領域に存在する第1物質M1との平衡反応に寄与するガス反応分GR1と、第1物質反応分MR1のうちのガス反応分GR1との平衡反応に寄与する第1物質反応分MR1を用いて、ガス領域の平衡反応計算を行い、ガス反応物GR1及び第1物質反応物MR1の組成、量等、ガス反応物GR1及び第1物質反応物MR1とが平衡状態に達した時のそれぞれの熱量の変化及び流量を少なくとも計算する。
【0068】
ガス領域平衡反応計算部208-1は、ガス反応分GR1と第1物質反応分MR1との反応により生成される可能性のある物質(生成物質)の種類、相、流量等を予め設定しておくことにより、生成物質の自由エネルギーが最小となるように、平衡反応計算を行って、生成物質の種類、相、流量等を決定する機能を有する。即ち、ガス領域平衡反応計算部208-1は、ギブズエネルギー最小化法に基づく平衡反応計算を行うことができる。ガス領域平衡反応計算部208-1は、ガス反応分GR1と第1物質反応分MR1とが平衡状態に達したときの、それぞれの熱量の変化、流量、生成物質の種類、組成、量及び相等を計算して出力する。
【0069】
ガス領域平衡反応計算部208-1は、ガス反応分GR1と第1物質反応分MR1とが反応することで生じる生成ガスと、ガス反応分GR1の未使用分とを、ガス生成分GP1として計算する。また、ガス領域平衡反応計算部208-1は、ガス反応分GR1と第1物質反応分MR1とが反応することで生じる生成物質と、第1物質反応分MR1の未使用分とを、第1物質生成分MP1として計算する。
【0070】
即ち、ガス生成分GP1は、ガス反応分GR1と第1物質反応分MR1とが反応することで生じる気相と、ガス反応分GR1の未使用分とを合算した気相である。第1物質生成分MP1は、ガス反応分GR1と第1物質反応分MR1とが反応することで生じる生成物質と、第1物質反応分MR1の未使用分とを合算したものである。
【0071】
ベッド層平衡反応計算部208-2は、領域A内のベッド層を移動する修正第2ベッド層S2Aと、ベッド層に存在する流入ガスとの平衡反応を計算する。即ち、ベッド層平衡反応計算部208-2は、修正第2ベッド層S2Aのうちの流入ガスG11との平衡反応に寄与するベッド層反応分SR1と、流入ガスG11のうちの修正第2ベッド層S2Aとの平衡状態に寄与する流入ガス反応分GR1を用いて、ベッド層の平衡反応計算を行い、ベッド層反応物SR1及び流入ガス反応物GR11の組成、量等、ベッド層反応物SR1及び流入ガス反応物GR11とが平衡状態に達した時のそれぞれの熱量の変化及び流量を少なくとも計算する。
【0072】
ベッド層平衡反応計算部208-2は、ベッド層反応分SR1と流入ガス反応分GR11との反応により生成される可能性のある物質(生成物質)の種類、相、流量等を予め設定しておくことにより、生成物質の自由エネルギーが最小となるように、平衡反応計算を行って、生成物質の種類、相、流量等を決定する機能を有する。即ち、ベッド層平衡反応計算部208-2は、ガス領域平衡反応計算部208-1と同様、ギブズエネルギー最小化法に基づく平衡反応計算を行うことができる。ベッド層平衡反応計算部208-2は、ベッド層反応分SR1と流入ガス反応分GR11とが平衡状態に達したときの、それぞれの熱量の変化、流量、生成物質の種類、組成、量及び相等を計算して出力する。
【0073】
ベッド層平衡反応計算部208-2は、ベッド層反応分SR1と流入ガス反応分GR11とが反応することで生じる生成物質と、ベッド層反応分SR1の未使用分とを、ベッド層生成分SP1として計算する。また、ベッド層平衡反応計算部208-2は、ベッド層反応分SR1と流入ガス反応分GR11とが反応することで生じる生成ガスと、流入ガス反応分GR11の未使用分とを、流入ガス生成分GP11として計算する。
【0074】
即ち、ベッド層生成分SP1は、ベッド層反応分SR1と流入ガス反応分GR11とが反応することで生じる生成物質と、ベッド層反応分SR1の未使用分とを合算したものである。流入ガス生成分GP11は、ベッド層反応分SR1と流入ガス反応分GR11とが反応することで生じる生成ガスと、流入ガス反応分GR11の未使用分とを合算したものである。
【0075】
混合気相計算部209は、複数の流れを混合する機能を有しており、ガス反応量計算部204で分割されたガス未反応分Gr1と、ガス領域平衡反応計算部208-1で生じたガス生成分GP1とをそれぞれ混合した混合気相である第3気相G3の流量、組成データ等を計算する。
【0076】
第1混合物質計算部210は、複数の流れを混合する機能を有しており、第1物質未反応分Mr1と、ガス領域平衡反応計算部208-1で生じた第1物質生成分MP1とを混合した第1混合物質M11の流量、組成データ等を計算する。
【0077】
混合ベッド層計算部211は、複数の流れを混合する機能を有しており、ベッド層反応量計算部206で分割されたベッド層未反応分Sr1と、ベッド層平衡反応計算部208-2で生じたベッド層生成分SP1とを混合した混合ベッド層である第3ベッド層S3の流量、組成データ等を計算する。
【0078】
混合流入ガス計算部212は、複数の流れを混合する機能を有しており、流入ガス未反応分Gr1と、ベッド層平衡反応計算部208-2で生じた流入ガス生成分GP11とを混合した混合流入ガスG12の流量や組成データ等を計算する。
【0079】
ガス合算部213は、複数の流れを混合する機能を有しており、混合気相計算部209で生じた第3気相G3に、混合流入ガス計算部212で生じた混合流入ガスG12を混合する。
【0080】
第1混合物質物量修正部214は、第1混合物質計算部210で生じた第1混合物質M11に、ベッド層物量修正部203で生じた第2物質M2の移動量を加えて、第1混合物質M11の物量を修正し、第1修正混合物質M12を算出する。
【0081】
なお、本実施形態では、炉内反応の計算装置20は、燃焼用材料230をロータリーキルン1内に投下しない場合には、分配部201を備えなくてもよい。この場合、ガス反応分GR1は、第1気相G1のうちのベッド層S1との平衡反応に寄与する反応分とし、ベッド層反応分SR1は、ベッド層S1のうちの第1気相G1との平衡状態に寄与する反応分とする。
【0082】
本実施形態では、炉内反応の計算装置20は、炉内の熱伝導を、必要に応じて、放射、伝導及び対流等のモデルで計算するようにしてもよい。
【0083】
<炉内反応の計算方法>
次に、本実施形態に係る炉内反応の計算装置を用いて、本実施形態に係る炉内反応の計算方法について説明する。本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、図1に示すような構成を有するロータリーキルン1において、ロータリーキルン1の装入端14A側から供給した原料鉱石を排出端14B側に向かって移動させながら、移動の途中から燃焼用材料を投入し、原料鉱石を排出端14B側に設けられるバーナー16から供給された燃焼ガスと接触させて、乾燥させると共に還元を行う。
【0084】
図3は、本実施形態に係る炉内反応の計算方法を説明するフローチャートである。図3に示すように、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1内に燃焼用材料230を投下しているか否かを確認する(確認工程:ステップS11)。
【0085】
ロータリーキルン1内に燃焼用材料が投下されている場合(ステップS11:Yes)、炉内反応の計算装置20は、気相を想定した揮発分等の物質と、ベッド層を想定した固体物質を入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、分配部201を用いて、ロータリーキルン1内に添加される燃焼用材料230を、気相である添加気相AG11とベッド層である添加ベッド層AS11とに質量流量で分配する(分配工程:ステップS12)。
【0086】
次に、炉内反応の計算装置20は、一方の隣接領域(領域(A+1))から領域Aに流入する燃焼ガスである第1気相G1と、分配部201で分配された燃焼用材料230の添加気相AG11とを入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、第1気相G1と添加気相AG11とを混合して、第1気相G1及び添加気相AG11を含む第2気相G2を算出する(第1気相と添加気相の気相混合工程:ステップS13)。
【0087】
次に、炉内反応の計算装置20は、ガス混合量計算部202を用いて、第1気相G1及び添加気相AG11を含む第2気相G2からベッド層へ移動する流入ガスG11の流量を計算する(ガス混合量計算工程:ステップS14)。
【0088】
次に、炉内反応の計算装置20は、他方の隣接領域(領域(A-1))から領域Aに流入するベッド層S1と、分配部201で分配された燃焼用材料のベッド層である添加ベッド層AS11とを入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、ベッド層S1と添加ベッド層AS11とを混合して、第2ベッド層S2を算出する(第1ベッド層と添加ベッド層のベッド層混合工程:ステップS15)。
【0089】
次に、炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層S2と、第2ベッド層S2に含まれる第2物質M2のガス領域への移動量とを入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、ベッド層物量修正部203を用いて、第2ベッド層S2に含まれる第2物質M2のガス領域への移動量を除して第2ベッド層S2の物量を修正し、修正第2ベッド層S2Aを算出する(第2ベッド層の物量修正工程:ステップS16)。
【0090】
次に、炉内反応の計算装置20は、ガス領域衡反応を行う(ガス領域平衡反応の実施工程:ステップS17)。
【0091】
次に、炉内反応の計算装置20は、ベッド層平衡反応を行う(ベッド層平衡反応の実施工程:ステップS18)。
【0092】
次に、炉内反応の計算装置20は、ガス合算部213を用いて、ガス領域平衡反応の実施工程(ステップS17)で生じる第3気相G3に、ベッド層平衡反応の実施工程(ステップS18)で生じる混合流入ガスG12を混合し、第3合算気相G3'を得る(ガス合算工程:ステップS19)。
【0093】
炉内反応の計算装置20は、第3合算気相G3'を領域Aよりも装入端14A側の領域(領域(A-1))に移動する。
【0094】
次に、炉内反応の計算装置20は、第1混合物質物量修正部214を用いて、ガス領域平衡反応の実施工程(ステップS17)で生じる第1混合物質M11に、第2ベッド層の物量の修正工程(ステップS16)で生じる第2物質M2の移動量を加えて、第1混合物質M11の物量を修正し、第1修正混合物質M12を算出する(第1混合物質物量修正工程:ステップS20)。
【0095】
炉内反応の計算装置20は、第1修正混合物質M12を領域Aよりも装入端14A側の領域(領域(A-1))に移動させる。
【0096】
次に、ガス領域平衡反応の実施工程(ステップS17)について説明する。図4は、図3のガス領域平衡反応の実施工程(ステップS17)の動作を示すフローチャートである。図4に示すように、ガス領域平衡反応の実施工程(ステップS17)では、炉内反応の計算装置20は、ガス反応量計算部204を用いて、第2気相G2のうちの、第1物質反応分MR1との平衡状態に寄与するガス反応量を計算する(ガス反応量計算工程:ステップS171)。
【0097】
即ち、炉内反応の計算装置20は、第2気相G2とガス領域中に存在する第1物質M1とが反応して平衡状態に達すると仮定したときに、第2気相G2がガス領域中に存在する第1物質M1と反応して平衡状態に達する時の反応に寄与するガス反応量を計算する。
【0098】
そして、炉内反応の計算装置20は、ガス反応量計算結果に基づいて、ガス反応量に相当するガス反応分GR1と、残りの未反応量に相当するガス未反応分Gr1とに分割する。
【0099】
次に、炉内反応の計算装置20は、第1物質反応量計算部205を用いて、ガス領域に存在する第1物質M1のうち、第2気相G2との平衡状態に寄与する第1物質反応量を計算する(第1物質反応量計算工程:ステップS172)。
【0100】
即ち、炉内反応の計算装置20は、ガス領域に存在する第1物質M1と第2気相G2とが反応して平衡状態に達すると仮定したときに、ガス領域に存在する第1物質M1が第2気相G2と反応して平衡状態に達する時の反応に寄与する第1物質反応量を計算する。
【0101】
そして、炉内反応の計算装置20は、第1物質反応量の計算結果に基づいて、第1物質反応量に相当する第1物質反応分MR1と、残りの未反応量に相当する第1物質未反応分Mr1とに分割する。
【0102】
次に、炉内反応の計算装置20は、ガス反応量計算工程(ステップS171)で得られたガス反応分GR1と、第1物質反応量計算工程(ステップS172)で得られた第1物質反応分MR1とを入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、ガス領域平衡反応計算部208-1を用いて、ガス反応分GR1と第1物質反応分MR1との平衡反応を計算し、ガス反応分GR1と第1物質反応分MR1とが平衡状態に達した時のそれぞれの熱量の変化及び流量を少なくとも計算する(ステップS173)。
【0103】
平衡反応の計算には、例えば、ギブズエネルギー最小化法等を用いることができる。
【0104】
炉内反応の計算装置20は、ガス反応分GR1と第1物質反応分MR1とが反応することで生じる生成ガスと、ガス反応分GR1の未使用分とを、ガス生成分GP1として計算し、ガス反応分GR1と第1物質反応分MR1とが反応することで生じる生成物質と、第1物質反応分MR1の未使用分とを、第1物質生成分MP1として計算する。
【0105】
次に、炉内反応の計算装置20は、ガス反応量計算工程(ステップS171)で得られたガス未反応分Gr1と、ガス領域平衡反応計算工程(ステップS17)で得られたガス生成分GP1とを入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、混合気相計算部209を用いて、ガス未反応分Gr1とガス生成分GP1とを含む第3気相G3の流量、組成データ等を計算する(混合気相計算工程:ステップS174)。
【0106】
ガス反応量計算工程(ステップS171)で計算したガス反応分GR1は、第2気相G2と第1物質M1とが平衡状態に達したと仮定した時の反応量であるため、通常、全て使用される。しかし、気相であるガス反応分GR1には、反応の量論比以上に存在する物質や反応に寄与しない不活性な物質が存在している場合がある。不活性な物質は、例えば、窒素等である。混合気相計算工程(ステップS174)では、反応の量論比以上に存在し、結果として平衡反応後に残る物質や不活性な物質が存在する。ガス領域平衡反応計算部208-1で使用されずに残った未使用分は、ガス生成分GP1として計算する。
【0107】
次に、炉内反応の計算装置20は、第1物質反応量計算工程(ステップS172)で得られた第1物質未反応分Mr1と、ガス領域平衡反応計算工程(ステップS173)で得られた第1物質生成分MP1とを入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、第1混合物質計算部210を用いて、第1物質未反応分Mr1と第1物質生成分MP1とを混合した第1混合物質M11の流量や組成データ等を計算する(第1混合物質計算工程:ステップS175)。
【0108】
次に、第2平衡反応の実施工程(ステップS18)について説明する。図5は、図3の第2平衡反応の実施工程(ステップS18)の動作を示すフローチャートである。図5に示すように、第2平衡反応の実施工程(ステップS18)では、炉内反応の計算装置20は、ベッド層反応量計算部206を用いて、修正第2ベッド層S2Aのうち、流入ガス反応分GR11との平衡状態に寄与するベッド層反応量を計算する(ベッド層反応量計算工程:ステップS181)。
【0109】
なお、流入ガス反応分GR11は、ガス領域からベッド層へ移動した流入ガスのうちの修正第2ベッド層S2Aとの平衡状態に寄与する反応分である。
【0110】
即ち、炉内反応の計算装置20は、修正第2ベッド層S2Aと流入ガスとが反応して平衡状態に達すると仮定したときに、修正第2ベッド層S2Aが流入ガスと反応して平衡状態に達する時の反応に寄与するベッド層反応量を計算する。
【0111】
そして、炉内反応の計算装置20は、ベッド層反応量の計算結果に基づいて、ベッド層反応量に相当するベッド層反応分SR1と、残りの未反応量に相当するベッド層未反応分Sr1とに分割する。
【0112】
次に、炉内反応の計算装置20は、流入ガス反応量計算部207を用いて、流入ガスのうち、修正第2ベッド層S2Aとの平衡状態に寄与する流入ガス反応量を計算する(ベッド層反応量計算工程:ステップS18)。
【0113】
即ち、炉内反応の計算装置20は、ガス領域に存在するガス成分である流入ガスと修正第2ベッド層S2Aとが反応して平衡状態に達すると仮定したときに、流入ガスが修正第2ベッド層S2Aと反応して平衡状態に達する時の反応に寄与する流入ガス反応量を計算する。
【0114】
そして、炉内反応の計算装置20は、流入ガス反応量計算結果に基づいて、流入ガス反応量に相当する流入ガス反応分GR11と、残りの未反応量に相当する流入ガス未反応分Gr11とに分割する。
【0115】
次に、炉内反応の計算装置20は、ベッド層反応量計算工程(ステップS18)で得られたベッド層反応分SR1と、流入ガス反応量計算工程(ステップS182)で得られた流入ガス反応分GR11とを入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、ベッド層平衡反応計算部208-2を用いて、ベッド層反応分SR1と流入ガス反応分GR11との平衡反応を計算し、ベッド層反応分SR1と流入ガス反応分GR11とが平衡状態に達した時のそれぞれの熱量の変化及び流量を少なくとも計算する(ステップS183)。
【0116】
炉内反応の計算装置20は、ベッド層反応分SR1と流入ガス反応分GR11とが反応することで生じる生成物質と、ベッド層反応分SR1の未使用分とを、ベッド層生成分SP1として計算し、ベッド層反応分SR1と流入ガス反応分GR11とが反応することで生じる生成ガスと、流入ガス反応分GR11の未使用分とを、流入ガス生成分GP11として計算する。
【0117】
次に、炉内反応の計算装置20は、ベッド層反応量計算工程(ステップS181)で得られたベッド層未反応分Sr1と、ベッド層平衡反応計算工程(ステップS183)で得られたベッド層生成分SP1とを入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、混合ベッド層計算部211を用いて、ベッド層未反応分Sr1とベッド層生成分SP1とを含む第3ベッド層S3の流量、組成データ等を計算する(混合ベッド層計算工程:ステップS184)。
【0118】
ベッド層反応量計算工程(ステップS181)で計算したベッド層であるベッド層反応分SR1には、反応の量論比以上に存在する物質や反応に寄与しない不活性な物質が存在している場合がある。混合ベッド層計算工程(ステップS184)では、ベッド層反応分SR1のうち、反応の量論比以上に存在し結果として反応で使用されなかった部分及び不活性な部分が存在する。ベッド層平衡反応計算工程(ステップS183)で使用されずに残った未使用分を、ベッド層生成分SP1として計算する。
【0119】
炉内反応の計算装置20は、第3ベッド層S3を領域Aよりも排出端14B側の領域(領域(A+1))に移動させる。
【0120】
次に、炉内反応の計算装置20は、流入ガス反応量計算工程(ステップS182)で得られた流入ガス未反応分Gr11と、ベッド層平衡反応計算工程(ステップS183)で得られた流入ガス生成分GP11とを入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、混合流入ガス計算部212を用いて、流入ガス未反応分Gr11と流入ガス生成分GP11とを含む混合流入ガスG12の流量、組成データ等を計算する(混合流入ガス計算工程:ステップS185)。
【0121】
なお、本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、ガス領域平衡反応の計算工程(ステップS17)とベッド層平衡反応の計算工程(ステップS18)とを並行して行ってもよい。
【0122】
本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、ガス合算工程(ステップS19)と第1混合物質物量修正工程(ステップS20)とを並行して行ってもよいし、ガス合算工程(ステップS19)を第1混合物質物量修正工程(ステップS20)の後に行ってもよい。
【0123】
本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、ガス反応量計算工程(ステップS171)と第1物質反応量計算工程(ステップS172)とを並行して行ってもよいし、ガス反応量計算工程(ステップS171)を第1物質反応量計算工程(ステップS172)の後に行ってもよい。
【0124】
本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、第1の混合計算工程(ステップS174)と第1物質未反応分Mr1と第1物質生成分MP1との混合工程(ステップS17)とを並行して行ってもよいし、第1の混合計算工程(ステップS174)を第1物質未反応分Mr1と第1物質生成分MP1との混合工程(ステップS175)の後に行ってもよい。
【0125】
本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、ベッド層反応量計算工程(ステップS181)とベッド層反応量計算工程(ステップS182)とを並行して行ってもよいし、ベッド層反応量計算工程(ステップS181)をベッド層反応量計算工程(ステップS182)の後に行ってもよい。
【0126】
本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、混合ベッド層計算工程(ステップS184)とベッド層未反応分Sr1と流入ガス生成分GP11との混合工程(ステップS18)とを並行して行ってもよいし、混合ベッド層計算工程(ステップS184)をベッド層未反応分Sr1と流入ガス生成分GP11との混合工程(ステップS185)の後に行ってもよい。
【0127】
本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、炉内の熱伝導を、必要に応じて、放射、伝導及び対流等のモデルで計算してもよい。
【0128】
<炉内反応の計算装置のハードウェア構成>
次に、炉内反応の計算装置のハードウェア構成の一例について説明する。図4は、炉内反応の計算装置のハードウェア構成図である。図4に示すように、炉内反応の計算装置20は、例えば、情報処理装置(コンピュータ)で構成され、物理的には、演算処理部であるCPU(Central Processing Unit:プロセッサ)21と、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)22及びROM(Read Only Memory)23と、補助記憶装置24と、入出力インタフェース25と、出力装置である表示装置26等を含むコンピュータシステムとして構成することができる。これらは、バス27で相互に接続されている。なお、補助記憶装置24及び表示装置26は、外部に設けられていてもよい。
【0129】
CPU21は、炉内反応の計算装置20の全体の動作を制御し、各種の情報処理を行う。CPU21は、ROM23または補助記憶装置24に格納された原料鉱石の反応計算プログラムを実行して、測定収録画面と解析画面の表示動作を制御する。
【0130】
RAM22は、CPU21のワークエリアとして用いられ、主要な制御パラメータや情報を記憶する不揮発RAMを含んでもよい。
【0131】
ROM23は、基本入出力プログラム等を記憶する。原料鉱石の反応計算プログラムはROM23に保存されてもよい。
【0132】
補助記憶装置24は、SSD(Solid State Drive)、及びHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置であり、例えば、原料鉱石の反応計算プログラムや炉内反応の計算装置20の動作に必要な各種のデータ、ファイル等を格納する。
【0133】
入出力インタフェース25は、タッチパネル、キーボード、表示画面、操作ボタン等のユーザインタフェースと、外部のデータ収録サーバ等からの情報を取り込み、他の電子機器に解析情報を出力する通信インタフェースとの双方を含む。
【0134】
表示装置26は、モニタディスプレイ等である。表示装置26では、測定収録画面と解析画面が表示され、入出力インタフェース25を介した入出力操作に応じて画面が更新される。
【0135】
図4に示す炉内反応の計算装置20の各機能は、RAM22やROM23等の主記憶装置又は補助記憶装置24にシミュレーションソフトウェア(炉内反応の計算プログラムを含む)等を読み込ませ、RAM22、ROM23又は補助記憶装置24に格納された原料鉱石の反応計算プログラム等をCPU21により実行することにより、RAM22等におけるデータの読み出し及び書き込みを行うと共に、入出力インタフェース25及び表示装置26を動作させることで実現される。
【0136】
炉内反応の計算プログラムは、以下の構成のプログラムを用いることができる。
即ち、炉内反応の計算プログラムは、反応炉の一端側から供給した原料鉱石を他端側に向かって移動させながら、前記原料鉱石を前記他端側から供給された燃焼ガスと接触させて、乾燥させると共に還元を行う炉内反応の計算を少なくともコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記炉内のガス領域を流れる前記燃焼ガスを含む第1気相のうち、前記反応炉内の燃焼ガスを含むガス領域から前記原料鉱石を含むベッド層へ移動する流入ガスの流量を計算するガス混合量計算工程と、
前記ガス領域を流れる前記燃焼ガスを含む気相と、前記ガス領域に存在する固体物質及び液体物質の少なくとも一方を含む第1物質との平衡反応を計算するガス領域平衡反応計算工程と、
前記ベッド層を移動する前記原料鉱石を含むベッド層に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む第2物質の前記ガス領域への移動量を除して前記ベッド層の物量を修正し、修正ベッド層を算出するベッド層の物量修正工程と、
前記修正ベッド層と、前記流入ガスとの平衡反応を計算するベッド層平衡反応計算工程とを少なくともコンピュータに実行させるプログラムを用いることができる。
【0137】
炉内反応の計算プログラムは、例えば、RAM22やROM23の主記憶装置又は補助記憶装置24等のコンピュータが備える記憶装置内に格納される。なお、原料鉱石の反応計算プログラムは、その一部又は全部が、通信回線等の伝送媒体を介して伝送され、コンピュータが備える通信モジュール等により受信されて記録(インストールを含む)される構成としてもよい。また、原料鉱石の反応計算プログラムは、その一部又は全部が、CD-ROM、DVD-ROM、フラッシュメモリ等の携帯可能な記憶媒体に格納された状態から、コンピュータ内に記録(インストールを含む)される構成としてもよい。
【0138】
以上の通り、本実施形態に係る炉内反応の計算装置20は、ガス混合量計算部202、ガス領域平衡反応計算部208-1及びベッド層平衡反応計算部208-2を備える。炉内反応の計算装置20は、ガス混合量計算部202において、第2気相G2のうち、ガス領域からベッド層へ移動する流入ガスの流量を計算する。そして、炉内反応の計算装置20は、ガス領域平衡反応計算部208-1において、ガス反応量計算部204及び第1物質反応量計算部205で得られたガス反応分GR1及び第1物質反応分MR1を用いて平衡反応を計算する。これにより、炉内反応の計算装置20は、第2気相G2と、第1物質M1との平衡反応を計算できる。また、炉内反応の計算装置20は、ベッド層平衡反応計算部208-2において、ベッド層反応量計算部206及び流入ガス反応量計算部207で得られたベッド層反応分SR1及び流入ガス反応分GR11を用いて平衡反応を計算する。これにより、炉内反応の計算装置20は、第2修正固相S2'と、ガス領域からベッド層へ一部移動した流入ガスG11との平衡反応を計算できる。
【0139】
ガス領域中の第1物質M1は、隣接領域(A+1)において、ベッド層内からガス領域へ移動した第2物質M2を含んでいる。ベッド層の流入ガスG11は、ガス領域からベッド層に混入したガスである。そのため、炉内反応の計算装置20は、ベッド層内を移動する第2物質M2のガス領域への物質移動と、ガス領域内を流れるガスのベッド層への混入を考慮して、ガス領域及びベッド層のそれぞれにおいて、ギブズエネルギー最小化法に基づいて平衡反応を計算できる。よって、炉内反応の計算装置20は、ベッド層で発生するダストのガス領域中での反応を計算できる。したがって、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1内のベッド層から発生するダストのガス領域での反応を考慮して、ロータリーキルン1内の反応を高精度に計算できる。
【0140】
よって、炉内反応の計算装置20は、ガス組成や温度の変化によるベッド層反応への影響を考慮できるので、炉内反応の予測精度を向上させることができる。
【0141】
ダストは鉱石と同程度のニッケル分を含有するため、排ガス処理設備などで回収され、ロータリーキルンに繰り返し装入されている。ダストは、未焼成の鉱石及び繰り返しダストのうち再飛散したもの、さらに炉内に投入された石炭の灰分や燃え残りの炭素等を含んでいる。このダストは、ガス領域ではガス流れに乗って炉内を短時間で移動し、ガス領域でのダストの炉内滞留時間はベッド層中を移動する場合と比べて非常に短いが、ガス領域中のダストの一部は熱分解や周囲のガスとの反応も生じると考えられる。
【0142】
例えば、ダスト中に含まれる燃え残りの炭素は、周囲のCO2やH2Oガスによってガス化され、下記式(1)、(2)等のような反応が生じる可能性がある。また、バーナーから供給される酸素が残存している箇所では、下記式(3)、(4)等のような燃焼反応が生じると考えられる。これらの反応により、ガス領域でのガスの組成や温度が変化することは、ベッド層の反応にも影響し、ガス領域に飛散するダストの反応挙動を詳細に把握することが重要である。
C+CO2→2CO ・・・(1)
C+H2O→CO+H2 ・・・(2)
C+0.5O2→CO ・・・(3)
C+O2→CO2 ・・・(4)
【0143】
ロータリーキルン1内の反応をシミュレーションする際、このベッド層から発生するダストを他のガス領域中のガスと同様に扱うと、詳細な把握が困難である。本実施形態に係る炉内反応の計算装置20は、ベッド層から発生するダストの、ガス領域での反応を考慮しながら反応を高精度に計算できる。
【0144】
炉内反応の計算装置20は、ガス反応量計算部204及び第1物質反応量計算部205を備えることができる。これにより、炉内反応の計算装置20は、ガス反応量計算部204において、第2気相G2から平衡反応に寄与するガス反応分GR1を求め、第1物質反応量計算部205において、第1物質M1から平衡反応に寄与する第1物質反応分MR1を求めることができる。そのため、炉内反応の計算装置20は、第2気相G2と第1物質M1のうちの、ガス領域平衡反応計算部208-1において使用される反応分を求めることができるため、必要な反応分を用いてガス領域における平衡反応計算を確実に行うことができる。
【0145】
炉内反応の計算装置20は、混合気相計算部209と、第1混合物質計算部210を備えることができる。混合気相計算部209は、ガス未反応分Gr1と、ガス領域平衡反応計算部208-1で生成したガス生成分GP1とを混合した第3気相G3の流量を少なくとも計算できる。第1混合物質計算部210は、第1物質未反応分Mr1と、ガス領域平衡反応計算部208-1で生成した第1物質生成分MP1とを混合した第1物質M1の流量を少なくとも計算できる。よって、炉内反応の計算装置20は、第1気相G及び第1物質M1の装入端14Aへの移動量をより正確に計算できる。
【0146】
炉内反応の計算装置20は、第1混合物質物量修正部214を備えることができる。これにより、炉内反応の計算装置20は、ガス領域に存在する第1混合物質M11に、ベッド層から移動する第2物質M2を含めることができる。第2物質M2には、主に、ベッド層から発生するダスト等が含まれる。よって、炉内反応の計算装置20は、ベッド層から発生するダストの装入端14Aへの移動量をより正確に計算できる。
【0147】
炉内反応の計算装置20は、ベッド層反応量計算部206及び流入ガス反応量計算部207を備えることができる。これにより、炉内反応の計算装置20は、ベッド層反応量計算部206において、第2ベッド層S2から平衡反応に寄与するベッド層反応分SR1を求め、流入ガス反応量計算部207において、第1物質M1から平衡反応に寄与する流入ガス反応分GR11を求めることができる。よって、炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層S2及び第1物質M1のうち、ベッド層平衡反応計算部208-2において使用される反応分を求めることができるため、必要な反応分を用いてベッド層における平衡反応計算を確実に行うことができる。
【0148】
炉内反応の計算装置20は、混合ベッド層計算部211と、混合流入ガス計算部212を備えることができる。混合ベッド層計算部211は、ベッド層未反応分Sr1と、ベッド層平衡反応計算部208-2で生成したベッド層生成分SP1とを混合した第3ベッド層S3の流量を少なくとも計算できる。混合流入ガス計算部212は、流入ガス未反応分Gr11と、ベッド層平衡反応計算部208-2で生成した流入ガス生成分GP11とを混合した、ベッド層に存在する流入ガスの流量を少なくとも計算できる。よって、炉内反応の計算装置20は、第3ベッド層S3の排出端14Bへの移動量をより正確に計算できると共に、ベッド層に残る流入ガスG11の流量を求めることができる。
【0149】
炉内反応の計算装置20は、ガス合算部213を備えることができる。これにより、炉内反応の計算装置20は、第3気相G3にベッド層で生じた混合流入ガスG12を混合できるため、ベッド層に存在するガス成分も第3気相G3に含めることができる。よって、炉内反応の計算装置20は、領域A内に存在するガス成分を確実に領域(A-1)に移動できる。
【0150】
炉内反応の計算装置20は、分配部201を備え、分配部201において、原料鉱石の移動の途中に投入された燃焼用材料230に含まれる気相とベッド層とを添加気相AG11と添加ベッド層AS11とに質量流量で分配できる。炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1の途中から投入される燃焼用材料230を第1気相G1及び第1ベッド層S1に分配してそれぞれ別々の燃料として扱い、添加気相AG11は第2気相を構成する成分とし、添加ベッド層AS11は第2ベッド層を構成する成分にできる。これにより、炉内反応の計算装置20は、第2気相G2からガス反応分GR1を求めると共に、第2ベッド層S2からベッド層反応分SR1を求めることで、ベッド層平衡反応計算部208-2において、第2気相G2と第2ベッド層S2とから平衡反応に必要な反応分に基づいて平衡反応を計算できる。よって、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1の途中から投入される燃焼用材料230を考慮して、ロータリーキルン1内の物質の挙動を解析できるため、燃焼用材料230を用いる場合でも、炉内反応の計算を高精度に行うことができる。
【0151】
このように、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1内のベッド層から発生するダストのガス領域での反応を考慮して、炉内で生じる平衡反応計算を高精度に計算できる。よって、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1内の全領域に適用することで、ロータリーキルン1内の全体の反応プロセスを高精度に計算することを可能にできる。
【0152】
炉内反応の計算装置20をロータリーキルン1の全体に適用する場合について説明する。炉内反応の計算装置20は、例えば、図7に示すように、ロータリーキルン1内を複数の領域に分割した時の1つの領域Aにおける反応プロセスを単位操作モデルと仮定した時、単位操作モデルの組合せによってロータリーキルン1内の反応プロセスをモデル化できる。そして、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1内の複数の領域に、原料鉱石の流れ又は燃焼ガスの流れ(仮定した流れを含む。)に沿って繰り返し実施する(図7中の矢印参照)。そして、炉内反応の計算装置20は、所定の領域における計算値とその領域における前回の計算値との差が所定の範囲内に収まるまで繰り返し実施する。
【0153】
炉内反応の計算装置20をロータリーキルン1の全体に適用する場合のフローチャートを図8に示す。図8に示すように、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1で起こる反応プロセスを複数の単位操作モデルの組合せによってモデル化する(モデル化工程:ステップS21)。
【0154】
単位操作モデルには、上記の図2に示す炉内反応の計算装置20が適用される。それぞれの単位操作モデル毎に、単位操作モデルを構成する、ガス混合量計算部202、ベッド層物量修正部203、ガス領域平衡反応計算部208-1、ベッド層平衡反応計算部208-2等が予め用意される。
【0155】
各単位操作モデルは、原料鉱石や燃焼ガスの流れ(仮定した流れを含む。)に沿って相互に接続される。
【0156】
次に、炉内反応の計算装置20は、ステップS21においてモデル化された単位操作モデルの計算を行う(計算工程:ステップS22)。単位操作モデルには、流れの情報が入力される。
【0157】
流れの情報は、原料鉱石、燃焼ガス、及び燃焼用材料の成分、流量、温度、回転数等のデータである。流れの情報が入力されると、単位操作モデルは所定の計算を行い、その計算値(原料鉱石、燃焼ガス、及び燃焼用材料の成分、流量、温度等)が出力される。これらの計算結果から、図2に示す炉内反応の計算装置20の各構成に用いる値が計算される。炉内反応の計算装置20の各モデルに用いる値としては、第1気相G1等の領域A内の各種気相の流量、第1ベッド層S1等の領域A内の各種ベッド層の流量、第1物質M1の流量等の各種物質の流量、ガス反応分GR1、ガス未反応分Gr1、ガス生成分GP1等の領域A内の各種反応分、未反応分及び生成分の流量等である。
【0158】
本実施形態では、単位操作モデルの計算は、最も装入端14A側に位置する単位操作モデルから行う。
【0159】
次に、炉内反応の計算装置20は、最終の単位操作モデルまで計算したか否か判断する(ステップS23)。
【0160】
最終の単位操作モデルまで計算した場合(ステップ23:Yes)は、炉内反応の計算装置20は、単位操作モデルの前回の計算値があるか否か判断する(ステップS24)。
【0161】
前回の計算値がある場合(ステップS24:Yes)には、炉内反応の計算装置20は、計算工程(ステップS22)において計算された計算値と、前回の計算値とを比較する(ステップS25)。
【0162】
次に、炉内反応の計算装置20は、計算値と前回の計算値との差が収束条件を満たすか否か判断する(比較工程:ステップS26)。
【0163】
収束条件としては、例えば、計算値と前回の計算値との差が数℃(例えば、1℃)以下の範囲内である。
【0164】
計算値と前回の計算値との差が収束条件を満たす場合(ステップS26:Yes)には、炉内反応の計算装置20は、計算を終了する。これにより、ロータリーキルン1のキルン本体11内の全体で起こる反応プロセスが解析される。
【0165】
一方、ステップS23において、最終の単位操作モデルまで計算していない場合(ステップS23:No)は、炉内反応の計算装置20は、隣接する他の単位操作モデルである領域(A+1)又は領域(A-1)に位置する単位操作モデルに移行する(ステップS27)。そして、炉内反応の計算装置20は、領域(A+1)又は領域(A-1)に位置する単位操作モデルの計算を行う(ステップS22)。
【0166】
ステップS24において、前回の計算値がない場合(ステップS24:No)、又はステップS26において、計算値と前回の計算値との差が収束条件を満たさない場合(ステップS26:No)には、炉内反応の計算装置20は、先頭の単位操作モデルに移行する(ステップS28)。
【0167】
よって、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1で起こる反応プロセスを複数の単位操作モデルの組合せによってモデル化し、単位操作モデルの接続順序に沿って、単位操作モデルの各々に設定された値に基づいて計算を行う。本実施形態では、それぞれの単位操作モデルの計算をロータリーキルン1の装入端14A側から排出端14B側に向かって順じ行った後、排出端14B側から装入端14A側に向かって行う(図5参照)。そして、一連の操作を、所定の領域Aにおける計算値が所定の収束条件が満たされるまで繰り返す。その結果、ロータリーキルン1内のそれぞれの領域における、燃焼ガスと原料鉱石の流量等の計算結果が導き出される。これにより、ロータリーキルン1のキルン本体11内の全体での燃焼ガス及び原料鉱石を構成する各物質の挙動をより正確に解析することが可能となる。
【0168】
このように、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1内の全体の反応プロセスを反応炉内のベッド層から発生するダストのガス領域での反応を考慮して反応炉内の反応を高精度に解析できるため、ロータリーキルン1の運転条件(例えば、ロータリーキルン1の大きさや回転数、原料鉱石の種類、供給量)等を変えながら、ロータリーキルン1内の各物質の挙動をより正確に解析できる。よって、炉内反応の計算装置20は、原料鉱石の種類及び供給量の変更、ロータリーキルン1の設備改善の事前検討、操業条件等による影響調査等に有効に活用することが可能である。
【0169】
なお、本実施形態では、ロータリーキルン1内に供給される原料は、原料鉱石以外の原料でもよい。
【0170】
本実施形態では、図1に示すロータリーキルン1の途中から投下される燃焼用材料は、気相及びベッド層の両方を必ずしも含んでいなくてもよいし、気相及びベッド層以外に、灰分等の他の物質を含んでいてもよい。
【0171】
本実施形態では、図1に示すロータリーキルン1以外に、原料鉱石を装入端14A側から排出端14B側に向かって移動させながら加熱する反応炉であればよい。
【0172】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0173】
1 ロータリーキルン
11 キルン本体
16 バーナー
20 炉内反応の計算装置
201 燃焼用材料分配部(分配部)
202 ガス混合量計算部
203 ベッド層物量修正部
204 ガス反応量計算部
205 第1物質反応量計算部
206 ベッド層反応量計算部
207 流入ガス反応量計算部
208-1 ガス領域平衡反応計算部
208-2 ベッド層平衡反応計算部
209 混合気相計算部
210 第1混合物質計算部
2 混合ベッド層計算部
212 混合流入ガス計算部
213 ガス合算部
214 第1混合物質物量修正部
G1 第1気相
G2 第2気相
G3 第3気相
G3' 第3混合気相
G11 流入ガス
G12 混合流入ガス
S1 第1ベッド層
S2 第2ベッド層
S2A 第2修正ベッド層
S3 第3ベッド層
M1 第1物質
M2 第2物質
M11 第1混合物質
GR1 ガス反応分
Gr1 ガス未反応分
GP1 ガス生成分
MR1 第1物質反応分
Mr1 第1物質未反応分
MP1 第1物質生成分
GR11 流入ガス反応分
Gr11 流入ガス未反応分
GP11 流入ガス生成分
SR1 ベッド層反応分
Sr1 ベッド層未反応分
SP1 ベッド層生成分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8