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特開2022-143344導電性シリコーン組成物、導電性シリコーン硬化物及び積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143344
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】導電性シリコーン組成物、導電性シリコーン硬化物及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20220926BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20220926BHJP
   C08K 5/07 20060101ALI20220926BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20220926BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20220926BHJP
   C08K 5/1539 20060101ALI20220926BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K5/07
C08K5/14
C08K3/08
C08K5/1539
H01B1/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021043808
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 将太
【テーマコード(参考)】
4J002
5G301
【Fターム(参考)】
4J002CP04X
4J002CP14W
4J002DA077
4J002EE046
4J002EK038
4J002EK058
4J002EK088
4J002EL039
4J002EL049
4J002EL139
4J002EX069
4J002FD117
4J002FD149
4J002FD159
4J002FD206
4J002GF00
4J002GQ00
4J002GQ02
5G301DA03
5G301DA04
5G301DA05
5G301DA06
5G301DA10
5G301DA11
5G301DA12
5G301DA23
5G301DA42
5G301DD01
5G301DD02
5G301DD03
(57)【要約】
【課題】高導電性であり、アルミニウムや銅などの金属との良好な接着性を有する付加硬化型導電性シリコーン組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)ヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合を有する基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、(B)SiH基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)ビス(β-ジケトナト)白金錯体、(D)導電性粒子、(E)有機過酸化物、(F)オキサシクロプロパン構造を有する化合物、及び(G)カルボン酸無水物を含むものであることを特徴とする導電性シリコーン組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合を有する基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、
(B)SiH基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)ビス(β-ジケトナト)白金錯体、
(D)導電性粒子、
(E)有機過酸化物、
(F)オキサシクロプロパン構造を有する化合物、及び
(G)カルボン酸無水物
を含むものであることを特徴とする導電性シリコーン組成物。
【請求項2】
前記(B)成分中のSiH基の数が、前記(A)成分中のヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合1個に対して0.5~10.0個となる量であることを特徴とする請求項1に記載の導電性シリコーン組成物。
【請求項3】
前記(D)成分が銀粉であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の導電性シリコーン組成物。
【請求項4】
前記(D)成分の含有量が、組成物の全質量に対し50~99質量%であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の導電性シリコーン組成物。
【請求項5】
前記(E)成分がパーオキシカーボネート構造、アルキルパーエステル構造、又はジアルキルパーオキサイド構造を有する有機過酸化物であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の導電性シリコーン組成物。
【請求項6】
前記(G)成分がテトラヒドロ-2,5-ジオキソフラン構造を有する分子内カルボン酸無水物であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の導電性シリコーン組成物。
【請求項7】
更に(H)下記一般式(3)~(5)に示される化合物及びその立体異性体から選ばれる少なくとも1種の有機ケイ素化合物を含むものであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の導電性シリコーン組成物。
【化1】
(式中、Rは置換もしくは非置換の1価炭化水素基又は水素原子であり、Rは置換又は非置換の1価炭化水素基であり、Rは互いに同一又は異なっていても良い置換もしくは非置換の1価炭化水素基又はアルコキシ基である。)
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の導電性シリコーン組成物の硬化物であって、体積抵抗率が1.0×10-3Ω・cm以下のものであることを特徴とする導電性シリコーン硬化物。
【請求項9】
請求項8に記載の導電性シリコーン硬化物を有するものであることを特徴とする積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性シリコーン組成物、その硬化物、及び該硬化物を有する積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体や水晶振動子の基盤への接着や回路の形成等の用途に対して、高温での実装を要求する半田の代替として導電性粒子を溶剤や樹脂中に分散させた導電性接着剤や導電ペーストなどと呼称される導電性組成物が広く用いられている(特許文献1)。
【0003】
これらの導電性組成物のバインダーとして汎用されてきたエポキシ樹脂は、接着強度等の機械強度に優れるものの、可撓性や伸縮性に劣り、いわゆるウェアラブルデバイスのような回路を形成する基材自体が屈曲、伸縮する用途への応用が難しかった。
【0004】
このような問題に対して、より柔軟性に優れるバインダーとしてシリコーン樹脂などの利用が検討されている(特許文献2)。シリコーン樹脂の硬化方法としては、主に不飽和炭素基とSiH基との間のヒドロシリル化反応を利用した付加硬化が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-319622号公報
【特許文献2】特開2004-119254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
導電性粒子を高い割合で含む付加硬化型シリコーン組成物は、酸素欠乏条件下で硬化性が悪化する傾向があり、このような導電性組成物を接着剤として使用した場合、80~120℃程度の比較的低温で加熱した際に貼り合わせ部の内部が硬化せず、導電性接着剤の被着体として用いられる銅などの金属に対しての接着性が不足するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、高導電性であり、アルミニウムや銅などの金属との良好な接着性を有する付加硬化型導電性シリコーン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、
(A)ヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合を有する基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、
(B)SiH基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)ビス(β-ジケトナト)白金錯体、
(D)導電性粒子、
(E)有機過酸化物、
(F)オキサシクロプロパン構造を有する化合物、及び
(G)カルボン酸無水物
を含むものである導電性シリコーン組成物を提供する。
【0009】
このようなものであれば、金属との良好な接着性を有する付加硬化型導電性シリコーン組成物とすることができる。
【0010】
また、前記(B)成分中のSiH基の数が、前記(A)成分中のヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合1個に対して0.5~10.0個となる量であることが好ましい。
【0011】
このようなものであれば、機械特性に優れる硬化物が得られる。
【0012】
また、前記(D)成分が銀粉であることが好ましい。
【0013】
このようなものであれば、硬化物に更に高い導電性を与えることができる。
【0014】
また、前記(D)成分の含有量が、組成物の全質量に対し50~99質量%であることが好ましい。
【0015】
このようなものであれば、更に硬化性及び取り扱い性に優れる組成物が得られ、また、硬化物に十分な導電性を与えることができる。
【0016】
また、前記(E)成分がパーオキシカーボネート構造、アルキルパーエステル構造、又はジアルキルパーオキサイド構造を有する有機過酸化物であることが好ましい。
【0017】
このようなものであれば、ヒドロシリル化触媒をより低温で活性化することができ、より一層、硬化性、接着性に優れた付加硬化型導電性シリコーン組成物とすることができる。
【0018】
また、前記(G)成分がテトラヒドロ-2,5-ジオキソフラン構造を有する分子内カルボン酸無水物であることが好ましい。
【0019】
このようなものであれば、金属に対する接着性を更に高めることができる。
【0020】
更に(H)下記一般式(3)~(5)に示される化合物及びその立体異性体から選ばれる少なくとも1種の有機ケイ素化合物を含むものであることが好ましい。
【化1】
(式中、Rは置換もしくは非置換の1価炭化水素基又は水素原子であり、Rは置換又は非置換の1価炭化水素基であり、Rは互いに同一又は異なっていても良い置換もしくは非置換の1価炭化水素基又はアルコキシ基である。)
【0021】
このようなものであれば、硬化の際の発泡を抑制することができる。
【0022】
また本発明では、上記の導電性シリコーン組成物の硬化物であって、体積抵抗率が1.0×10-3Ω・cm以下のものである導電性シリコーン硬化物を提供する。
【0023】
このようなものであれば、高い導電性の硬化物とすることができる。
【0024】
また本発明では、上記の導電性シリコーン硬化物を有するものである積層体を提供する。
【0025】
このようなものであれば、高い導電性を有する積層体とすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の導電性シリコーン組成物は、高い導電性を有すると共にアルミニウムや銅などの金属に対する接着性に優れるシリコーン硬化物を与える。このような特性を有する本発明の導電性シリコーン組成物は、導電性接着剤や導電ペーストとして、電子部品や素子の基板への接着、電子回路の形成等に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
上述のように、高導電性であり金属に対する接着性に優れる付加硬化型導電性シリコーン組成物の開発が求められていた。
【0028】
本発明者は、上記問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、付加硬化型液状シリコーンゴムに導電性フィラーを充填した導電性接着剤において、特定の構造を有するヒドロシリル化触媒、有機過酸化物、オキサシクロプロパン構造を有する化合物及びカルボン酸無水物を配合することによってアルミニウムや銅などの金属との良好な接着性を有する導電性接着剤が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0029】
即ち、本発明は、
(A)ヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合を有する基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、
(B)SiH基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)ビス(β-ジケトナト)白金錯体、
(D)導電性粒子、
(E)有機過酸化物、
(F)オキサシクロプロパン構造を有する化合物、及び
(G)カルボン酸無水物
を含むものである導電性シリコーン組成物である。
【0030】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
[導電性シリコーン組成物]
本発明の導電性シリコーン組成物は、下記(A)~(G)成分を含むものである。
【0032】
[(A)成分]
本発明の導電性シリコーン組成物における(A)成分は、ヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合を有する基を1分子中に少なくとも2個有する、オルガノポリシロキサンである。
【0033】
(A)成分としては、例えば、下記平均式(1)で示されるオルガノポリシロキサンを用いることができる。
【化2】
【0034】
平均式(1)中、Rはヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合を有する基であり、Rはヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合を含まない同一又は異なっていても良い、置換又は非置換の1価の炭化水素基である。ただし、a,b,c,d,e,f,gはそれぞれ、a≧0、b≧0、c≧0、d≧0、e≧0、f≧0及びg≧0を満たす数であり、ただし、b+c+e>0であり、かつ、a+b+c+d+e+f+g=1を満たす数である。また、各シロキサン単位の配列順は任意である。
【0035】
のヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合を有する基としては、ビニル基、アリル基、オクテニル基、ドデセニル基、ノルボルネニル基、イソノルボルネニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられ、好ましくは炭素原子数2~10、より好ましくは2~6のアルケニル基であり、特にビニル基が好ましい。
【0036】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1分子中に少なくとも2個、好ましくは2~6個の、ヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合を有する基を含む。これらの基は、(A)成分の分子鎖末端及び分子鎖側鎖(分子鎖非末端)のどちらか一方にのみ位置していても、その両方に位置していてもよい。
【0037】
としては、ヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合を含まないものであれば特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、s-ペンチル基、2-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基、トリフルオロメチル基、3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等の、好ましくは炭素原子数が1~12、より好ましくは1~10、更に好ましくは1~8の、非置換又はハロゲン置換の1価の炭化水素基が挙げられ、特にメチル基が好ましい。
【0038】
(A)成分の具体的な例としては、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン、両末端ジメチルビニルシロキサン・環状メチルビニルシロキサン共重合体、環状メチルビニルシロキサン、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・環状ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・環状メチルフェニルシロキサン共重合体、両末端メチルフェニルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン、両末端メチルフェニルビニルシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン、両末端メチルフェニルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルシロキサン、両末端メチルフェニルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・環状ジフェニルシロキサン共重合体、(CH=CH)(CHSiO1/2単位と(CHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。(A)成分は一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0039】
(A)成分の動粘度は特に限定されないが、好ましくは10~100,000mm/s、より好ましくは100~10,000mm/sの範囲である。なお、動粘度は、例えば、ウベローデ粘度計又はキャノン・フェンスケ型粘度計を用いた25℃における測定値とすることができる。このような範囲であれば組成物の取り扱い性に優れる。
【0040】
[(B)成分]
本発明の導電性シリコーン組成物における(B)成分は、(A)成分中に含まれるヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合とヒドロシリル化反応により架橋する架橋剤として作用する。(B)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【0041】
(B)成分としては、例えば、下記平均式(2)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることができる。
【化3】
【0042】
平均式(2)中、Rはヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合を含まない同一又は異なっていても良い、置換又は非置換の1価の炭化水素基である。ただし、h,i,j,k,l,m,nはそれぞれ、h≧0、i≧0、j≧0、k≧0、l≧0、m≧0及びn≧0を満たす数であり、i+j+l>0であり、かつ、h+i+j+k+l+m+n=1を満たす数である。また、各シロキサン単位の配列順は任意である。
【0043】
の具体例としては、上記Rと同様の基が挙げられ、好ましくは炭素原子数が1~12、より好ましくは1~10、更に好ましくは1~8の、非置換又はハロゲン置換の1価の炭化水素基が挙げられ、特にメチル基が好ましい。
【0044】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン化合物は、1分子中に少なくとも2個、好ましくは3~300個、特に好ましくは3~100個のケイ素原子に結合した水素原子を有する。(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが直鎖状構造を有する場合、これらのSiH基は、分子鎖末端及び分子鎖側鎖(分子鎖非末端)のどちらか一方にのみ位置していても、その両方に位置していてもよい。
【0045】
(B)成分の具体的な例としては、例えば、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・環状メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンシロキサン、両末端ジメチルフェニルシロキシ基封鎖メチルフェニルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端ジメチルフェニルシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端メチルフェニルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサン、両末端メチルフェニルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジフェニルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、片末端メチルフェニルハイドロジェン基片末端ジメチルハイドロジェン基封鎖ジフェニルポリシロキサン等が挙げられる。
【0046】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン化合物は、単独で用いても二種以上併用してもよい。
【0047】
(B)成分の動粘度は、特に限定されないが、好ましくは10~1,000mm/s、より好ましくは10~100mm/sの範囲である。なお、動粘度は、例えば、ウベローデ粘度計又はキャノン・フェンスケ型粘度計を用いた25℃における測定値とすることができる。このような範囲であれば組成物の取り扱い性に優れる。
【0048】
(B)成分の配合量は、(A)成分中のヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合1個に対して(B)成分中のケイ素原子結合水素原子(SiH基)の数が、好ましくは0.5~10.0個、より好ましくは1.0~6.0の範囲内となる量である。このような範囲であれば機械特性に優れる硬化物が得られる。
【0049】
[(C)成分]
本発明の導電性シリコーン組成物における(C)成分は、ビス(β-ジケトナト)白金錯体であり、(A)成分中のヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合と、(B)成分中のケイ素原子結合水素原子とのヒドロシリル化反応を促進するためのヒドロシリル化触媒として作用する。さらに、ヒドロシリル化触媒としてこのような(C)成分を用いることにより、本発明の導電性シリコーン組成物は反応制御剤を配合しなくても優れた保存性を有する組成物となる。
【0050】
ビス(β-ジケトナト)白金錯体としては、例えば、ビス(1,3-プロパンジオナト)白金錯体、ビス(2,4-ペンタンジオナト)白金錯体、ビス(2,4-へキサンジオナト)白金錯体、ビス(2,4-へプタンジオナト)白金錯体、ビス(3,5-ヘプタンジオナト)白金錯体、ビス(1-フェニル-1,3-ブタンジオナト)白金錯体、ビス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)白金錯体などが挙げられ、好ましくはビス(1,3-プロパンジオナト)白金錯体である。
【0051】
(C)成分の含有量は、上記(A)成分100質量部に対して白金原子質量として0.001~0.5質量部が好ましく、0.01~0.1質量部であることがより好ましい。このような範囲であれば、優れた硬化性と保存性を有する組成物が得られる。
【0052】
[(D)成分]
本発明の導電性シリコーン組成物における(D)成分は、導電性粒子である。
【0053】
(D)成分としては、導電性を有するものであればいかなるものであってもよいが、例えば、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、パラジウムなどの金属粒子又はこれらの合金ないしこれらの金属をメッキした粒子、酸化亜鉛、酸化チタン、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、リンドープ酸化スズ(PTO)、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)などを用いることができ、導電性の観点から銀粉及び銀メッキ粉が好ましい。
【0054】
銀粉としては、例えば、三菱マテリアル社製、福田金属箔粉社製、徳力本店社製、DOWAエレクトロニクス社製、田中貴金属社製などを使用することができる。
【0055】
導電性粒子は、球状、フレーク状、樹状、不定形などいかなる形状でもよく、それらの混合物であってもよいが、フレーク状が特に好ましい。ここで、フレーク状とは、扁平状、薄片状、鱗片状などと呼称されるものも含まれる。
【0056】
導電性粒子の平均粒径は、0.1~100μmの範囲が好ましく、0.1~50μmの範囲がより好ましい。このような範囲の平均粒径の導電性粒子であれば、組成物の均一性がより向上し、塗布性もより向上し、更に導電性をより高くすることができる。なお、本発明において、平均粒径は、体積基準の粒度分布における50%累積径(メジアン径)を意味し、例えば日機装(株)製マイクロトラックMT330OEX等により測定が可能である。
【0057】
(D)成分のタップ密度は、1.0~7.0g/cmが好ましい。なお、タップ密度の測定方法は、JIS Z 2512:2012に準ずる。
【0058】
(D)成分の充填量は、好ましくは導電性シリコーン組成物の全質量に対し50~99質量%の範囲であり、より好ましくは60~95質量%、更に好ましくは75~93質量%の範囲である。このような範囲であれば、硬化性及び取り扱い性に優れる組成物が得られ、また、硬化物に十分な導電性を与えることができる。
【0059】
[(E)成分]
本発明の導電性シリコーン組成物における(E)成分は、有機過酸化物である。
【0060】
有機過酸化物は、ビス(β-ジケトナト)白金錯体構造を有するヒドロシリル化触媒を活性化する効果を有する。これにより、組成物の保存性を維持しつつ、硬化性を高めることができる。有機過酸化物としては、特に限定されないが、銀粉と共存する場合の安定性の観点から、アルキルパーエステル、パーオキシカーボネート、ジアルキルパーオキサイドが好ましい。
【0061】
有機過酸化物のベンゼン中における1時間半減期温度は好ましくは70~150℃であり、より好ましくは80~140℃であり、更に好ましくは90~130である。このような範囲であれば、組成物の保存性に優れ、ヒドロシリル化触媒の活性化が十分なものとなる。
【0062】
有機過酸化物としては、例えば、アルキルパーエステル、パーオキシカーボネート、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ケトンパーオキサイド等が挙げられる。アルキルパーエステルとしてはクミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-アミルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシジエチルアセテート、t-アミルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエートなどが挙げられる。パーオキシカーボネートとしては、ビス(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジn-プロピルパーオキシジカーボネート、ジセチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、ビス(t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどが挙げられる。ジアルキルパーオキサイドとしてはジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジt-ブチルパーオキサイド、ジt-ヘキシルパーオキサイドなどが挙げられる。ジアシルパーオキサイドとしては、イソブチロイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどが挙げられる。パーオキシケタールとしては、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(t-アミルパーオキシ)ブタン、n-ブチル4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)ペンタノエートなどが挙げられる。ハイドロパーオキサイドとしては、イソプロピルクミルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クミルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-アミルハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。ケトンパーオキサイドとしては、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイドなどが挙げられる。
【0063】
有機過酸化物の量としては、上記(C)成分の白金原子質量100質量部に対して100~5,000質量部であることが好ましく、より好ましくは200~2,000質量部、更に好ましくは300~1,000質量部である。このような範囲であれば、十分な組成物の硬化性が得られ、硬化時における発泡を抑制することができる。
【0064】
有機過酸化物は1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0065】
[(F)成分]
本発明の導電性シリコーン組成物における(F)成分はオキサシクロプロパン構造を有する化合物である。(F)成分は、本発明の導電性シリコーン組成物にアルミニウムや銅などの金属との良好な接着性を付与する成分である。
【0066】
このような(F)の具体例としては、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸グリシジルオキシエチル、2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジル基を有する化合物の他、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、アクリル酸(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボン酸(3’,4’―エポキシシクロヘキシル)メチルなどの脂環式エポキシ構造を有する化合物が挙げられる。また、(A)成分及び(B)成分のポリシロキサンとの反応性の観点から、(F)成分はオキサシクロプロパン構造を含むシラン、シロキサン等の有機ケイ素化合物であることが好ましい。このような化合物の例としては下記構造式で表されるものが挙げられる。
【0067】
【化4】
(なお、式中においてMeはメチル基を表す。)
【0068】
(F)成分の配合量は、好ましくは(A)成分100質量部に対し0.01~20質量部の範囲であり、より好ましくは0.1~10質量部の範囲である。このような範囲であれば、金属との接着性がより良好なものとなる。
【0069】
(F)成分は1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0070】
[(G)成分]
本発明の導電性シリコーン組成物における(G)成分は、カルボン酸無水物である。(G)成分は、本発明の導電性シリコーン組成物にアルミニウムや銅などの金属との良好な接着性を付与する成分である。
【0071】
カルボン酸無水物は分子間酸無水物でも分子内酸無水物でもよいが、特にテトラヒドロ-2,5-ジオキソフラン構造を有する分子内酸無水物であることが好ましく、無水フタル酸構造を有する酸無水物であることがより好ましい。このような分子内酸無水物の例として下記構造式で表されるものが挙げられる。
【0072】
【化5】
【0073】
(G)成分の配合量は(F)成分1質量部に対し0.01~5.0質量部であることが金属との接着及び硬化性の点から好ましく、0.05~3.0質量部であることがより好ましく、0.1~2.0質量部であることが更に好ましい。
【0074】
(G)成分は1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0075】
[(H)成分]
本発明の導電性シリコーン組成物には、(H)成分として、下記一般式(3)~(5)に示される化合物及びその立体異性体から選ばれる少なくとも1種の有機ケイ素化合物を添加してもよい。
【0076】
【化6】
(式中、Rは置換もしくは非置換の1価炭化水素基又は水素原子であり、Rは置換又は非置換の1価炭化水素基であり、Rは互いに同一又は異なっていても良い置換もしくは非置換の1価炭化水素基又はアルコキシ基である。)
【0077】
、R及びRの置換もしくは非置換の1価炭化水素基としては、上記Rと同様の基が挙げられ、好ましくは炭素原子数が1~12、より好ましくは1~10、更に好ましくは1~8の、非置換又はハロゲン置換の1価の炭化水素基が挙げられ、特にメチル基が好ましい。
【0078】
のアルコキシ基としては、好ましくは炭素原子数が1~12、より好ましくは1~10、更に好ましくは1~8のアルコキシ基が挙げられ、特にメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0079】
これらの(H)成分は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルとトリアルコキシシランのヒドロシリル化反応によって得ることが出来る。
【0080】
(H)成分を使用する場合の配合量は、(E)成分1質量部に対して0.01~10質量部であることが好ましい。このような範囲であれば、硬化の際の発泡を抑制することができる。
【0081】
(H)成分は1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0082】
[その他の成分]
<接着性向上剤>
本発明の導電性シリコーン組成物には、上記(A)~(H)成分以外にも、樹脂や金属に対する接着性を高めるために、他の接着性向上剤を添加してもよい。接着性向上剤としては、付加反応硬化型である本発明の組成物に自己接着性を付与する観点から、接着性を付与する官能基を含有するシラン、シロキサン等の有機ケイ素化合物、非シリコーン系有機化合物等を用いることができる。
【0083】
上記の接着性向上剤のうち、オルガノシロキサン骨格を含む化合物の例として、下記構造式で表されるものが挙げられる。
【0084】
【化7】
(なお、式中においてMeはメチル基を表す。)
【0085】
また、非シリコーン系有機化合物としては、例えば、下記構造式で表される有機酸アリルエステル化合物及びアリルエーテル化合物などが挙げられる。
【0086】
【化8】
【0087】
その他の非シリコーン系接着助剤としては、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物等が挙げられる。
【0088】
有機チタン化合物の例としては、チタン酸テトラエチル、チタン酸テトラプロピル、チタン酸テトラブチル、チタニウムテトラアセチルアセトネート、ジイソプロポキシチタニウムビス(アセチルアセトナト)などが挙げられる。
【0089】
有機ジルコニウム化合物の例としては、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムプロポキシド、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセチルアセトネート、ビスアセタトオキソジルコニウムなどが挙げられる。
【0090】
有機アルミニウム化合物の例としては、アルミニウムエトキシド、アルミニウムプロポキシド、アルミニウムブトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトネートなどが挙げられる。
【0091】
<補強材>
本発明の導電性シリコーン組成物には引張強度、伸び、引き裂き強度などを向上させるために補強材として微粉末シリカを配合してもよい。
【0092】
この微粉末シリカは、比表面積(BET法)が50m/g以上であることが好ましく、より好ましくは50~400m/g、特に好ましくは100~300m/gである。比表面積が50m/g以上の場合には、硬化物に十分な補強性を付与することができる。
【0093】
本発明において、このような微粉末シリカとしては、比表面積が上記範囲内(50m/g以上)である、従来からシリコーンゴムの補強性充填剤として使用されている公知のものでもよく、例えば、煙霧質シリカ(乾式シリカ)、沈降シリカ(湿式シリカ)等が挙げられる。微粉末シリカはそのまま使用してもよいが、組成物に良好な流動性を付与するため、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン等のメチルクロロシラン類、ジメチルポリシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルテトラビニルジシラザン等のヘキサオルガノジシラザン等の有機ケイ素化合物で処理したものを使用することが好ましい。補強性シリカは単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0094】
<希釈剤>
本発明の導電性シリコーン組成物は、非反応性の希釈剤を使用することが出来る。希釈剤を使用することによって硬化後の導電性を損なうことなく組成物硬化前の粘度を低減することが出来、作業性を高めることが出来る。希釈剤の例としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤のほか、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、イソドデカンなどの脂肪族炭化水素溶剤等が挙げられる。
【0095】
<反応制御剤>
本発明の導電性シリコーン組成物は、反応性制御剤を使用することなく良好な保存性を有するが、(C)成分の付加反応触媒に対して反応制御効果を持つ公知の反応制御剤を使用してもよい。反応制御剤としては、トリフェニルホスフィン等のリン含有化合物;トリブチルアミンやテトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール等の窒素含有化合物;硫黄含有化合物;アセチレン系化合物;ハイドロパーオキシ化合物;マレイン酸誘導体等が例示される。
【0096】
[導電性シリコーン硬化物]
本発明では、上記の導電性シリコーン組成物の硬化物であって、体積抵抗率が1.0×10-3Ω・cm以下のものである導電性シリコーン硬化物を提供する。
【0097】
本発明の導電性シリコーン組成物の硬化物は、その体積抵抗率が1.0×10-3Ω・cm以下であることが好ましい。このような導電性シリコーン硬化物であれば、柔軟性・伸張性と共に、十分な導電性を有するものとなり、電子部品や素子の基板への実装、印刷による電子回路の形成等に有用なものとなる。
【0098】
[積層体]
本発明では、上記の導電性シリコーン硬化物を有するものである積層体を提供する。
【0099】
本発明の導電性シリコーン組成物は、例えば、基材に塗布又は印刷した後に硬化させることによって高い導電性を有する積層体を形成することができる。上記基材は特に制限されず、例えば、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、シリコーン樹脂等の有機材料及びアルミナ、ジルコニア、チタン酸バリウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ガラス、金属等の無機材料など公知の材料を用いることができる。
【0100】
本発明の導電性シリコーン組成物を塗布又は印刷する前処理として、上記各種基材について表面処理を行ってもよい。表面処理の具体的な例としては、紫外線、X線、γ線、α線、β線、電子線等の活性エネルギー線の照射及びプラズマ処理、コロナ処理、オゾン処理などが挙げられる。
【0101】
[塗布方法]
本発明の導電性シリコーン組成物は、例えば、基材上に、メッシュスクリーン印刷、メタルマスク印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、反転オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷などの印刷方法、ローラーコーター、スリットコーター、ディスペンサー、ディッピングなどの塗布方法により使用することができる。
【0102】
[導電性シリコーン硬化物の製造方法]
本発明の導電性シリコーン組成物は、80~120℃、特に100~120℃で10~120分間加熱することにより硬化させることが好ましい。このような範囲であれば、十分に硬化が進行し、また、組成物が脆くなることを抑制できる。
【実施例0103】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、25℃における粘度は回転粘度計により、25℃における動粘度はウベローデ粘度計又はキャノン・フェンスケ型粘度計により測定した。
【0104】
[実施例1,2、比較例1~3]
下記に示される(A)~(F)成分及びその他の成分を、表1に示す配合量にて自転・公転式ミキサー((株)THINKY社製)を用いて5分間混合し、シリコーン組成物を調製した。なお、表1中の各成分の数値は質量部を示す。なお、銀粉充填率は組成物全体に占める銀粉の質量百分率である。また、以下の式中においてViはビニル基、Meはメチル基を表す。
【0105】
[(A)成分]
a-1:両末端ジメチルビニルシリル基封鎖ジメチルポリシロキサン(25℃における動粘度600mm/s)
a-2:下記平均式で表される、重量平均分子量4,500のオルガノポリシロキサン。
(ViMeSiO1/20.07(MeSiO1/20.39(SiO4/20.54
【0106】
[(B)成分]
b-1:下記式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン。
【化9】
(式中、括弧内のシロキサン単位の配列順は不定である。)
【0107】
[(C)成分]
c-1: ビス(1,3-プロパンジオナト)白金錯体のブチルカルビトールアセテート溶液(白金原子として0.5質量%含有)(Umicore社製)
【0108】
[(D)成分]
d-1:体積メジアン径が5.8μm、タップ密度が5.3g/cmの銀粉末
【0109】
[(E)成分]
e-1:1,6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサンの70質量%クエン酸トリブチルアセテート溶液(化薬ヌーリオン(株)製、商品名:カヤレン6-70、ベンゼン中0.2モル/Lにおける1時間半減期温度115℃)
【0110】
[(F)成分]
f-1:下記式で表される化合物
【化10】
【0111】
[(G)成分]
g-1:3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
【0112】
[(H)成分]
h-1:下記式で表される化合物
【化11】
【0113】
導電性シリコーン組成物、及びその硬化物の特性は次のようにして評価した。その結果を表1に示す。
【0114】
[剪断接着力]
実施例1、2、比較例1~3のシリコーン組成物をそれぞれ厚み0.3mmのアルミニウム板2枚又は銅板2枚の間に厚み1mm、接着面が25mm×10mmとなるように挟み込み、120℃で1時間加熱して試験片を作製した。得られた試験片の引張剪断接着強さ試験をJIS-K6850:1999に準じて行った。
【0115】
[破断部の状態]
上記剪断接着力試験後の試験片について、破断部の状態(凝集破壊/界面剥離、及び発泡がある場合にはその程度)を目視で観察した。なお、破断部の状態が凝集破壊である場合は、界面剥離の場合と比べて金属板との接着力が高いことが示唆される。
【0116】
[体積抵抗率]
実施例1、2、比較例1~3のシリコーン組成物をそれぞれスライドガラス上に厚み150μmでスキージ塗布し、120℃のオーブン中で1時間の加熱を行った。得られた測定サンプルについて、三菱化学アナリテック社製ロレスターGXを使用して四探針法での体積抵抗率測定を行った。
【0117】
【表1】
【0118】
表1に示すように、実施例1、2においてはアルミニウム及び銅に対する接着性も良好である。更に、(H)成分を添加した組成物を用いた実施例1では、硬化の際の発泡が抑制されていた。
【0119】
一方、酸無水物を含まない組成物を使用した比較例1及び比較例2では、アルミニウムへの接着性は良好であるものの、銅に対する接着性に劣る結果となった。更に、オキサシクロプロパン構造を有する化合物を含まない組成物を用いた比較例3では、アルミニウムと銅の両者に対する接着性が不十分となった。
【0120】
上記のように、本発明の導電性シリコーン組成物は、高導電性であり、アルミニウムや銅などの金属との良好な接着性を有する材料となる。
【0121】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。