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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143546
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】スマートテキスタイル及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/12 20060101AFI20220926BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20220926BHJP
   D03D 15/20 20210101ALI20220926BHJP
【FI】
B32B27/12
D03D1/00 Z
D03D15/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044102
(22)【出願日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】505300841
【氏名又は名称】株式会社ZOZO
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 康太郎
(72)【発明者】
【氏名】中丸 啓
(72)【発明者】
【氏名】筧 康明
【テーマコード(参考)】
4F100
4L048
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AB33A
4F100AD11B
4F100AK01B
4F100BA02
4F100CA21B
4F100DB07A
4F100DG01B
4F100DG11
4F100EH71B
4F100EJ282
4F100EJ302
4F100GB08
4F100GB71
4F100GB72
4F100JG01B
4F100JN08A
4L048AA04
4L048AA05
4L048AA52
4L048AA56
4L048AB17
4L048BA02
4L048DA01
4L048DA19
(57)【要約】
【課題】しなやかさとプロセス適合性とを確保しつつ、特定領域を適切に制御可能なスマートテキスタイルを提供すること。
【解決手段】本願に係るスマートテキスタイルは、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)からなる箔を含み、導電性繊維を含み、箔は、電極層を含む複数の層を有し、箔のうち、電極層までをカットし、カット部分が露出するように表面側に折り返すことで、露出された電極層が、前記導電性繊維の部分に接触するように配置されたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)からなる箔を含み、
導電性繊維を含み、
前記箔は、電極層を含む複数の層を有し、
前記箔のうち、電極層までをカットし、カット部分を電極層が露出するように表面側に折り返すことで、露出された電極層が、前記導電性繊維の部分に接触するように配置された
ことを特徴とするスマートテキスタイル。
【請求項2】
前記PDLCからなる箔を緯糸に含み、
前記導電性繊維を縦糸に含み、
露出された電極層が、前記縦糸に接触するように配置された
ことを特徴とする請求項1に記載のスマートテキスタイル。
【請求項3】
複数の前記緯糸及び前記縦糸を含み、
折り返された側の電極層に対し、列ごと、若しくは、画素ごとに前記縦糸を接触させる
ことを特徴とする請求項2に記載のスマートテキスタイル。
【請求項4】
複数の前記縦糸と印加元との接続に応じて、複数の前記電極層への印加をまとめて制御可能である
ことを特徴とする請求項3に記載のスマートテキスタイル。
【請求項5】
複数の前記縦糸と印加元との接続に応じて、複数の前記電極層への印加を個別に制御可能である
ことを特徴とする請求項3に記載のスマートテキスタイル。
【請求項6】
グランドへの接続に応じて、前記印加をまとめて制御可能である
ことを特徴とする請求項4又は5に記載のスマートテキスタイル。
【請求項7】
グランドへの接続に応じて、前記印加を個別に制御可能である
ことを特徴とする請求項4又は5に記載のスマートテキスタイル。
【請求項8】
前記電極層への印加に応じて透明度を変化させることを可能とする
ことを特徴とする請求項1に記載のスマートテキスタイル。
【請求項9】
前記カットされた部分間の透明度を変化させることを可能とする
ことを特徴とする請求項8に記載のスマートテキスタイル。
【請求項10】
前記縦糸は、金属メッキを施した化学繊維、金属を螺旋状に繊維に巻き付けた構造を有するもの、導電性ポリマを用いたもの、カーボン繊維を用いたもの、又は繊維に導電フィラーを添加したものを素材に含む
ことを特徴とする請求項2に記載のスマートテキスタイル。
【請求項11】
前記箔の裏面に、外光を取り込み透過させるものを含む
ことを特徴とする請求項1に記載のスマートテキスタイル。
【請求項12】
ラインスキャニング、又はAC50Hzによる制御によりインタレースに表示される
ことを特徴とする請求項1に記載のスマートテキスタイル。
【請求項13】
カーテン、バッグ、衣類、小物、又はライトシェードの構成の一部として含まれる
ことを特徴とする請求項1に記載のスマートテキスタイル。
【請求項14】
コンピュータが実行する製造方法であって、
PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)からなる箔を含み、
導電性繊維を含み、
前記箔は、電極層を含む複数の層を有し、
前記箔のうち、電極層までをカットし、カット部分を電極層が露出するように表面側に折り返すことで、露出された電極層が、前記導電性繊維の部分に接触するように配置された、スマートテキスタイルを製造する
製造方法。
【請求項15】
カッティングプロッタによる上面カット、レーザによるハーフカット、又はレーザによる絶縁化を用いて、前記電極層を分離し、当該電極層を表面側に折り返す
ことを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートテキスタイル及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インテリア(例えば、カーテンや小物)、ファッション(例えば、衣類)、車などの多くの業界において、電子回路を織物に、また、織物からつくられ得る物品に組み込む要望がある。このような要望に応えるために、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)を用いる方法が知られている。PDLCは、電界によって透明度を変化させることができる素材であり、例えば会議室の壁や車の屋根などに採用され得る。
【0003】
従来、例えば、PDLCを挟み込むように、導電性の糸を織り込む技術が知られている(下記特許文献1)。そして、下記特許文献1には、LED等を有する基板を縦糸とし、導電性の糸や絶縁性の糸ととともに編み込む技術が開示されている。また、例えば、同心円形状に形成したPDLCを含む、透明度を変化可能なファイバを織物に織り込み、衣類に組み込む技術が知られている(下記特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2005-524783号公報
【特許文献2】特表2008-512718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、しなやかさとプロセス適合性とを確保しつつ、特定領域を適切に制御可能なスマートテキスタイルを提供するための更なる向上の余地があった。例えば、従来の技術では、箔自体に剛性があるため、挟み込むなどのアプローチでは織物としてのしなやかさが損なわれる場合があった。また、例えば、従来の技術では、構造上、織り込めない場合があった。また、例えば、従来の技術では、大面積単位での制御が必要となる場合があった。
【0006】
本願は、上記に鑑みてなされたものであって、しなやかさとプロセス適合性とを確保しつつ、特定領域を適切に制御可能なスマートテキスタイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に係るスマートテキスタイルは、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)からなる箔を含み、導電性繊維を含み、前記箔は、電極層を含む複数の層を有し、前記箔のうち、電極層までをカットし、カット部分が露出するように表面側に折り返すことで、露出された電極層が、前記導電性繊維の部分に接触するように配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の一態様によれば、しなやかさとプロセス適合性とを確保しつつ、特定領域を適切に制御可能なスマートテキスタイルを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る情報処理の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係るPDLCの箔の断面を示す模式図である。
図3図3は、実施形態に係るPDLCの箔の上面の透明電極層の分離を示す模式図である。
図4図4は、実施形態に係るPDLCの箔の構造を示す模式図である。
図5図5は、実施形態に係るPDLCの箔の構造を示す模式図である。
図6図6は、従来のPDLCの箔の構造を示す模式図である。
図7図7は、実施形態に係る情報処理システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本願に係るスマートテキスタイル及び製造方法を実施するための形態(以下、「実施形態」と呼ぶ)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本願に係るスマートテキスタイル及び製造方法が限定されるものではない。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0011】
(実施形態)
〔1.情報処理の一例〕
従来、PDLCを挟み込むように、導電性の糸を織り込む技術が知られているが、上記特許文献1では、電極が理想的に両面で導通していることを前提とするため、現実的に作成するにはプロセスコストが高くなると考えられる。また、同心円形状に形成したPDLCを含む、透明度を変化可能なファイバを織物に織り込み、衣類に組み込む技術が知られているが、上記特許文献2では、部位を独立的に動作させることはできないと考えられる。
【0012】
また、スマートテキスタイルと呼ばれる、外部環境のセンシングや加えられた刺激に対して応答を示すテキスタイル素材を用いる技術が知られている。例えば、ストリップ状の箔をテキスタイル素材に用いて織り込む技術が知られている。しかしながら、ストリップ状の箔が柔軟であれば、テキスタイル全体の剛性を柔らかくすることができるが、導通を確保するためにはストリップ状に導電糸と繋がるような接続部位を配置する必要があると考えられる。これに伴い、接続部位を配置するための設置点を箔に形成するためのレイアウト設計や加工も必要になると考えられる。
【0013】
このように、従来の技術では、しなやかさとプロセス適合性とを確保しつつ、特定領域を適切に制御可能なスマートテキスタイルを提供することができないため、更なる改善の余地があった。
【0014】
以下実施形態では、テキスタイル100がスマートテキスタイルであるものとして説明する。具体的には、テキスタイル100が、PDLCの箔をテキスタイル素材に用いたスマートテキスタイルであるものとする。より具体的には、テキスタイル100が、PDLCからなる箔を緯糸に含み、導電性繊維を縦糸に含む構造からなるスマートテキスタイルであるものとする。
【0015】
ここで、PDLCの液晶分子は、電界によって方向性を有するため、外光の取り込みを調整することができる。具体的には、電界がオフの場合、液晶分子の方向性はまだらであるため、外光が遮られ易いが、電界がオンの場合、液晶分子は一定の方向性を有するため、外光の取り込み量が増える。このため、電界によって外光の取り込みを調整することができる。
【0016】
そして、外光の取り込みを調整することによって、PDLCの裏面の意匠などを透過させることができる。このため、テキスタイル100は、電界によって透明度を変化させることができるものとする。このように、PDLC層のみの透明度を変化させることで、スマートテキスタイルとしてみると下地を透けさせることができるため、テキスタイル100の反射率を変えることが可能である。また、以下実施形態では、テキスタイル100がマイコン10によって制御される場合を示すが、テキスタイル100の制御方法は特に限定されないものとする。
【0017】
図1は、実施形態に係る情報処理システム1の情報処理の一例を示す図である。図1では、テキスタイル100がマイコン10によって制御されるものとする。マイコン10は、ユーザの操作に従ってテキスタイル100へ制御情報を送信する(ステップS101)。テキスタイル100は、マイコン10から送信された制御情報に従って電極を印加するための処理を行う(ステップS102)。具体的には、テキスタイル100は、制御信号により変調を加えることにより、各PDLCの領域の透明度の階調を制御するための処理を行う。なお、図示されていないが、テキスタイル100は、マイコン10から送信された制御情報に基づく制御結果を、マイコン10へ送信してもよい。
【0018】
図1に示すように、テキスタイル100は、縦糸P1乃至P5と、緯糸W1乃至W5とが交互に織られた構造を有する。縦糸P1乃至P5は、PDLCからなる箔を含み、緯糸W1乃至W5は、導電性の糸であり、それぞれが、マイコン10によりグランドと所定の電圧元(印加元)に接続されている。
【0019】
ここで、テキスタイル100は、どのような対象物の構成の一部として採用されてもよい。具体的には、テキスタイル100は、カーテンや小物やライトシェードなどのインテリア製品、バッグや衣類などのファッション製品などの構成の一部として採用されてもよい。より具体的には、テキスタイル100は、調光カーテンや、意匠が変化可能な小物や衣類などの構成の一部として採用されてもよい。
【0020】
続いて、テキスタイル100のテキスタイル素材として用いたPDLCの箔の断面について説明する。図2は、実施形態に係るPDLCの箔の断面を示す模式図である。図2は、例えば、図1に示す(A)-(A)線の断面図と対応する。なお、図2は、実施形態に係るPDLCの箔の断面を簡易的に示す図であり、PDLCの箔の構造に基づく実際の断面の詳細は図4で後述する。
【0021】
実施形態に係るPDLCの箔は、保護層及び透明電極層の組み合わせ(PL11)と、PDLC層PL12とを有する。また、実施形態に係るPDLCの箔は、PDLC層PL12を中心とした、保護層及び透明電極層の組み合わせ(PL11)で挟んだサンドイッチ構造を有する。
【0022】
実施形態に係るPDLCの箔は、全体の厚みが200μm以下、且つ、PDLC層PL12の厚みが1~10μmであるものとする。具体的な例を挙げると、実施形態に係るPDLCの箔は、PDLC層PL12の厚さが10μmであり、PDLC層PL12の一方の面に位置する保護層及び透明電極層の組み合わせ(PL11)の全体の厚さが50μmであり、箔の全体の厚さが110μmであるものとする。従来の標準のPDLCの箔は、箔の全体の厚さが260μmのものもあるため、実施形態に係るPDLCの箔は、薄膜であると考えられる。
【0023】
箔の断面の2次モーメントは、下記式(1)を用いて算出される。
【0024】
【数1】
(式中、Iは、箔の断面2次モーメントを示す。bは、箔の幅を示す。hは、箔の厚みを示す。)
【0025】
上記式(1)に基づいて、実施形態に係るPDLCの箔は、従来の標準のPDLCの箔に比べて、厚みが薄く曲げ易いため、しなやかさの向上を促進することができる。
【0026】
なお、実施形態に係るPDLCの箔は、適切な印加電界強度が3~8MV/m程度であると考えられる。これは、電圧に換算すると、30~80V程度に相当する。
【0027】
実施形態に係るPDLCでは、箔の上面の透明電極層を分離することで、特定領域を制御することが可能となる。具体的には、実施形態に係るPDLCでは、PDLCの箔のうち、保護層と透明電極層までをカット(ハーフカット)し、ハーフカットされた保護層と透明電極層とを透明電極層が露出するように箔の表面側に折り返すことで、透明電極層が露出する。このように、実施形態に係る緯糸は、ハーフカットによって透明電極層が露出するように構成されている。
【0028】
ここで、透明電極層が露出するように表面側に折り返す際のPDLC層と透明電極層との分離は、例えば、カッティングプロッタによる上面カット、レーザによるハーフカット、レーザによる絶縁化などによって行われるものとする。そして、実施形態に係るPDLCでは、露出した透明電極層が、導電性の縦糸に接触するように配置されることで、特定領域を制御することが可能となる。以下、特定領域の制御について図3及び4を用いて説明する。
【0029】
図3は、実施形態に係るPDLCの箔の上面の透明電極層の分離を示す模式図である。図3は、例えば、図1に示す(A)-(A)線の断面図と対応する。図3(A)は、新たにハーフカットして画素を分離する分離前の状態のPDLCの箔を示す模式図である。図3(A)では、実施形態に係るPDLCの箔は、縦糸と緯糸の透明電極層PL22の露出部との接続部位AA1を有する。なお、縦糸は、グランドGN1に接続され、緯糸は、印加電圧VC1に接続される。
【0030】
ここで、印加電圧と信号波形について説明する。実施形態に係るPDLCの箔は、3~8MV/m程度の印加電界強度に加えて、耐久性が向上することから、周期信号(例えば、Sin波形や短形波)が適切であると考えられる。この際、正負両方向に電圧が加わるため、正負両方向で波形が振動すると考えられる。例えば、0~50Vの電圧間ではなく、-50~50Vの電圧間で波形が振動すると考えられる。このような波形の後段にトランジスタを挟み、スイッチングする際にトランジスタの開閉(ゲート電圧)をパルス幅変調(PWM)によって制御することで、PDLC層の透明度の階調を制御することができる。
【0031】
また、図3(A)では、接続部位AA1からの範囲AD1がグランドGN1に接続される。このため、縦糸のうち接続部位AA1からの範囲AD1が、電圧の印加により透明度が変化する領域、すなわち、1つのアクティブドメインとして動作することとなる。また、実施形態に係るPDLCの箔は、保護層PL21と、透明電極層PL22と、PLDC層(PL23)とを有する。
【0032】
図3(B)は、画素の分離時の状態のPDLCの箔を示す模式図である。図3(A)と同様の説明は適宜省略する。図3(B)では、範囲AD1に対して、所定の位置CU1にて、保護層PL21と、透明電極層PL22とを切断するハーフカットが行われる例について記載した。このように、位置CU1で保護層PL21と、透明電極層PL22とを切断した場合、透明電極層PL22のうち、接続部位AA1から位置CU1までがグランドGN1に接続されることとなる。この結果、縦糸のうち接続部位AA1から位置CU1までの範囲AD2が、電圧の印加により透過度が変化する領域、すなわち、1つのアクティブドメインとして動作することとなる。
【0033】
図3(C)は、画素の分離後の状態のPDLCの箔を示す模式図である。図3(A)及び(B)と同様の説明は適宜省略する。図3(C)では、実施形態に係るPDLCの箔は、ハーフカットによって新たに露出した透明電極層PL22の露出部と縦糸との接続部位AA2を有する。なお、接続部位AA1の縦糸と同様に、接続部位AA2の縦糸も、グランドGN1に接続される。この接続部位AA2も接続部位AA1と同様に、ハーフカットによって折り返された透明電極層PL22の露出部に導電性の縦糸が接触するように配置される。また、接続部位AA2からの新たな範囲もグランドGN1に接続されることとなり、縦糸のうち接続部位AA2からの新たな範囲も、電圧の印加により透明度が変化する領域、すなわち、1つのアクティブドメインとして動作することとなる。
【0034】
このように、ハーフカットによって画素を分離することができるため、実施形態に係るPDLCは、透明電極層PL22への印加に応じて、アクティブドメインとして動作する範囲AD1及び範囲AD2のような、ハーフカットされた部分間(折り返された端部からハーフカットされた部分まで)の透明度を変化させることができる。また、実施形態に係るPDLCは、複数の緯糸と縦糸とを含み、折り返された側の透明電極層PL22に対して、列ごと、若しくは、画素ごとに縦糸が接触するものとする。
【0035】
図4は、実施形態に係るPDLCの箔の構造を示す模式図である。図3と同様の説明は適宜省略する。図4(A)は、実施形態に係るPDLCの箔の断面(側面)を示す模式図である。図4(A)は、例えば、図1に示す(A)-(A)線の断面図と対応する。図4(B)は、実施形態に係るPDLCの箔の上面を示す模式図である。図4(B)は、例えば、図1に示す(B)-(B)線の断面図と対応する。ここで、図4では、複数の縦糸が印加元の印加電圧VC1にまとめて接続される場合を示す。このため、実施形態に係るPDLCでは、複数の透明電極層への印加をまとめて制御することができる。なお、この例に限らず、縦糸ごとに制御できるように構成されてもよいものとする。
【0036】
図4では、グランドGN1への接続において、印加をまとめて制御する場合を示す。なお、この例に限らず、例えばゲートなどを用いて、個別に制御できるように構成されてもよいものとする。
【0037】
図5は、実施形態に係るPDLCの箔の構造を示す模式図である。図5(A)は、印加がオフの場合の実施形態に係るPDLCの箔の構造を示す模式図である。図5(B)は、印加がオンの場合の実施形態に係るPDLCの箔の構造を示す模式図である。図5は、緯糸W1乃至W8と、縦糸P1乃至P10との関係性を示す。
【0038】
図5に示すように、実施形態に係るPDLCでは、縦糸P1乃至P10と緯糸W1乃至W8とが、折り返された側の透明電極層に対して、列ごと、若しくは、画素ごとに接触するように構成される。このような、折り返された側の透明電極層に接触するような構成によって、画素ごとに印加電圧VC1とグランドGN1との2つの導電性の糸を接続する必要性を回避することができる。また、実施形態に係るPDLCでは、縦糸P1乃至P10と緯糸W1乃至W8との接続部位を含む、ハーフカットされた部分間で透明度が変化するため、特定領域の制御が可能となる。
【0039】
一方、図6は、従来のPDLCの箔の構造を示す模式図である。図6(A)は、印加がオフの場合の従来のPDLCの箔の構造を示す模式図である。図6(B)は、印加がオンの場合の従来のPDLCの箔の構造を示す模式図である。図6では、図5と異なり、緯糸W1乃至W7のみが示される。このため、従来のPDLCでは、図5に示すような、縦糸P1乃至P10と緯糸W1乃至W8との関係性がないため、特定領域ごとの制御が難しい。
【0040】
なお、上記実施形態において、実施形態に係るPDLCの縦糸は、例えば、金属メッキを施した化学繊維、金属を螺旋状に繊維に巻き付けた構造を有するもの、導電性ポリマを用いたもの、カーボン繊維を用いたもの、又は繊維に導電フィラーを添加したものなどを素材に含むように構成されてもよいものとする。
【0041】
なお、上記実施形態において、実施形態に係るPDLCは、箔の裏面に、布を重ね合わせて下の意匠を透過させるものや、外光を取り込むものなどを含むように構成されてもよいものとする。
【0042】
なお、上記実施形態において、実施形態に係るPDLCは、ラインスキャニング、又はAC50Hzによる制御によりインタレースに表示されるように構成されてもよいものとする。
【0043】
なお、上記実施形態において、実施形態に係るPDLCは、縦糸の表と裏に交互、若しくは、所定のパターンで、アクティブドメインとして動作する部分が接触するように構成されてもよいものとする。また、上記実施形態において、織り方は特に限定されず、任意の織り方が採用可能であるものとする。このため、西陣折やジャガード折等の技術を用いて、所定の部分だけが表面に現れるように構成されてもよいものとする。例えば、アクティブドメインとして動作する部分に所定の柄が現れるように構成されてもよいものとする。
【0044】
〔2.情報処理システムの構成〕
図7に示す情報処理システム1について説明する。図7に示すように、情報処理システム1は、マイコン10と、テキスタイル100とが含まれる。マイコン10と、テキスタイル100とは所定の通信網(ネットワークN)を介して、有線または無線により通信可能に接続される。図7は、実施形態に係る情報処理システム1の構成例を示す図である。なお、図7に示した情報処理システム1には、複数台のマイコン10や、複数台のテキスタイル100が含まれてもよい。
【0045】
マイコン10は、ユーザによって利用される情報処理装置である。マイコン10は、実施形態における処理を実現可能であれば、どのような装置であってもよい。また、マイコン10は、スマートフォンや、タブレット型端末や、ノート型PCや、デスクトップPCや、携帯電話機や、PDA等の装置であってもよい。
【0046】
テキスタイル100は、スマートテキスタイルである。テキスタイル100は、マイコン10等からネットワークNを介して送信されてきた情報に基づいて処理を行う。
【0047】
なお、図7では、マイコン10とテキスタイル100とは、別装置である場合を示したが、マイコン10とテキスタイル100とが一体であってもよい。
【0048】
ここで、テキスタイル100の箔又は導電糸部分とマイコン10との接続方法について説明する。例えば、導電糸部分とマイコン10とは、導電の基板に導電糸を巻き付ける方式、機械的な部材でかしめる方式、又は半田や導電グリスなどを用いて接着させる方式などによって接続される。また、例えば、PDLCの箔とマイコン10とは、機械的にかしめる方式、半田や導電グリスなどを用いて接着させる方式、マグネットなどを用いて挟む方式、異方性導電膜(ACF)を用いた圧着による方式などによって接続される。なお、これらの接続方法は一例であり特に限定されないものとする。
【0049】
〔3.利用態様〕
以下、実際の利用態様について説明する。実施形態に係るPDLCの箔をテキスタイル素材に用いたテキスタイル100を特定の対象物に組み込むことにより、透明度が変化可能な対象物を提供することができる。具体的な例を挙げると、テキスタイル100がバッグやカーテン等の対象物に組み込まれた場合、PDLCの箔の透明電極層に掛かる印加の制御によって、対象物の透明度を適宜調整することができる。これにより、印加をオンすることによって、バッグの裏面から意匠が浮かび上がるように表示されるように制御することができる。具体的には、印加がオフの状態では無地であっても、印加をオンすることによって、無地の布に花柄の意匠が浮かび上がるように表示されるように制御することができる。
【0050】
また、印加の制御に応じて、テキスタイル100の一部のみが透過するような制御が可能であってもよい。例えば、画素ごとに印加電圧VC1とグランドGN1との接続を調整することによって画素ごとの印加の制御が可能になるため、部分的に透過して意匠が表示されるような制御が可能であってもよい。
【0051】
〔4.効果〕
上述してきたように、実施形態に係るテキスタイル100は、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)からなる箔を含み、導電性繊維を含み、箔は、電極層を含む複数の層を有し、箔のうち、電極層までをカットし、カット部分が露出するように表面側に折り返すことで、露出された電極層が、導電性繊維の部分に接触するように配置されたことを特徴とする。
【0052】
これにより、しなやかさとプロセス適合性とを確保しつつ、特定領域を適切に制御可能なテキスタイル100を提供することができる。
【0053】
また、実施形態に係るテキスタイル100は、PDLCからなる箔を緯糸に含み、導電性繊維を縦糸に含み、露出された電極層が、縦糸に接触するように配置されたことを特徴とする。
【0054】
これにより、しなやかさとプロセス適合性とを確保しつつ、特定領域を適切に制御可能なテキスタイル100を提供することができる。
【0055】
また、実施形態に係るテキスタイル100は、複数の緯糸及び縦糸を含み、折り返された側の電極層に対し、列ごと、若しくは、画素ごとに縦糸を接触させることを特徴とする。
【0056】
これにより、特定領域の独立性が向上するため、特定領域を適切に制御可能なテキスタイル100を提供することができる。
【0057】
また、実施形態に係るテキスタイル100は、複数の縦糸と印加元との接続に応じて、複数の電極層への印加をまとめて制御可能であることを特徴とする。
【0058】
これにより、複数の電極層への印加を適切に制御可能なテキスタイル100を提供することができる。
【0059】
また、実施形態に係るテキスタイル100は、複数の縦糸と印加元との接続に応じて、複数の電極層への印加を個別に制御可能であることを特徴とする。
【0060】
これにより、複数の電極層への印加を適切に制御可能なテキスタイル100を提供することができる。
【0061】
また、実施形態に係るテキスタイル100は、グランドへの接続に応じて、印加をまとめて制御可能であることを特徴とする。
【0062】
これにより、グランドへの接続に応じて印加を適切に制御可能なテキスタイル100を提供することができる。
【0063】
また、実施形態に係るテキスタイル100は、グランドへの接続に応じて、印加を個別に制御可能であることを特徴とする。
【0064】
これにより、グランドへの接続に応じて印加を適切に制御可能なテキスタイル100を提供することができる。
【0065】
また、実施形態に係るテキスタイル100は、電極層への印加に応じて透明度を変化させることを可能とすることを特徴とする。
【0066】
これにより、透明度を変化可能なテキスタイル100を提供することができる。
【0067】
また、実施形態に係るテキスタイル100は、カットされた部分間の透明度を変化させることを可能とする。
【0068】
これにより、特定領域の領域部分の透明度を変化可能なテキスタイル100を提供することができる。
【0069】
また、実施形態に係るテキスタイル100は、縦糸が、金属メッキを施した化学繊維、金属を螺旋状に繊維に巻き付けた構造を有するもの、導電性ポリマを用いたもの、カーボン繊維を用いたもの、又は繊維に導電フィラーを添加したものを素材に含むことを特徴とする。
【0070】
これにより、特定の材料を縦糸の素材に含むことを特徴とするテキスタイル100を提供することができる。
【0071】
また、実施形態に係るテキスタイル100は、箔の裏面に、外光を取り込み透過させるものを含むことを特徴とする。
【0072】
これにより、箔の裏面の下の意匠を適切に透過させることができるテキスタイル100を提供することができる。
【0073】
また、実施形態に係るテキスタイル100は、ラインスキャニング、又はAC50Hzによる制御によりインタレースに表示されることを特徴とする。
【0074】
これにより、特定の制御によりインタレースに表示可能なテキスタイル100を提供することができる。
【0075】
また、実施形態に係るテキスタイル100は、カーテン、バッグ、衣類、小物、又はライトシェードの構成の一部として含まれることを特徴とする。
【0076】
これにより、特定の対象物の構成の一部として機能可能なテキスタイル100を提供することができる。
【0077】
また、実施形態に係るテキスタイル100は、カッティングプロッタによる上面カット、レーザによるハーフカット、又はレーザによる絶縁化を用いて、PDLC層と電極層とを分離し、電極層を表面側に折り返すことで製造されることを特徴とする。
【0078】
これにより、PDLC層の上面の電極層が適切に分離されたテキスタイル100を提供することができる。
【0079】
〔5.その他〕
また、上記実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0080】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0081】
また、上述してきた実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0082】
以上、本願の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 情報処理システム
10 マイコン
100 テキスタイル
N ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-07-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スマートテキスタイルであって、
PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)を構成に含む箔を前記スマートテキスタイルの縦糸に含み、
前記スマートテキスタイルの緯糸に導電性繊維を含み、
前記箔は、電極層を含む複数の層を有し、
前記箔のうち、電極層と電極層までの層をカットし、カット部分を電極層が露出するように表面側に折り返すことで、露出された電極層が、前記導電性繊維の部分に接触するように配置された
ことを特徴とするスマートテキスタイル。
【請求項2】
前記PDLCからなる箔を緯糸に含み、
前記導電性繊維を縦糸に含み、
露出された電極層が、前記縦糸に接触するように配置された
ことを特徴とする請求項1に記載のスマートテキスタイル。
【請求項3】
複数の前記緯糸及び前記縦糸を含み、
折り返された側の電極層に対し、列ごと、若しくは、画素ごとに前記縦糸を接触させる
ことを特徴とする請求項2に記載のスマートテキスタイル。
【請求項4】
複数の前記縦糸と印加元との接続に応じて、複数の前記電極層への印加をまとめて制御可能である
ことを特徴とする請求項3に記載のスマートテキスタイル。
【請求項5】
複数の前記縦糸と印加元との接続に応じて、複数の前記電極層への印加を個別に制御可能である
ことを特徴とする請求項3に記載のスマートテキスタイル。
【請求項6】
グランドへの接続に応じて、前記印加をまとめて制御可能である
ことを特徴とする請求項4又は5に記載のスマートテキスタイル。
【請求項7】
グランドへの接続に応じて、前記印加を個別に制御可能である
ことを特徴とする請求項4又は5に記載のスマートテキスタイル。
【請求項8】
前記電極層への印加に応じて透明度を変化させることを可能とする
ことを特徴とする請求項1に記載のスマートテキスタイル。
【請求項9】
前記カットされた部分間の透明度を変化させることを可能とする
ことを特徴とする請求項8に記載のスマートテキスタイル。
【請求項10】
前記縦糸は、金属メッキを施した化学繊維、金属を螺旋状に繊維に巻き付けた構造を有するもの、導電性ポリマを用いたもの、カーボン繊維を用いたもの、又は繊維に導電フィラーを添加したものを素材に含む
ことを特徴とする請求項2に記載のスマートテキスタイル。
【請求項11】
前記箔の裏面に、外光を取り込み透過させるものを含む
ことを特徴とする請求項1に記載のスマートテキスタイル。
【請求項12】
ラインスキャニング、又はAC50Hzによる制御によりインタレースに表示される
ことを特徴とする請求項1に記載のスマートテキスタイル。
【請求項13】
カーテン、バッグ、衣類、小物、又はライトシェードの構成の一部として含まれる
ことを特徴とする請求項1に記載のスマートテキスタイル。
【請求項14】
コンピュータが実行する製造方法であって、
PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)を構成に含む箔をスマートテキスタイルの縦糸に含み、
前記スマートテキスタイルの緯糸に導電性繊維を含み、
前記箔は、電極層を含む複数の層を有する
前記スマートテキスタイルの製造方法であって、
前記箔のうち、電極層と電極層までの層をカットし、カット部分を電極層が露出するように表面側に折り返すことで、露出された電極層が、前記導電性繊維の部分に接触するように配置することで、前記スマートテキスタイルを製造する
製造方法。
【請求項15】
カッティングプロッタによる上面カット、レーザによるハーフカット、又はレーザによる絶縁化を用いて、前記電極層を分離し、当該電極層を表面側に折り返す
ことを特徴とする請求項14に記載の製造方法。